説明

印刷装置および印刷装置のリセット処理方法

【目的】 意味のない乱れたページの出力を極力押え、かつ次のジョブのデータを読み飛ばすことなく適切なデータキャンセル処理を行うことができる。
【構成】 操作部1012による取消指示後、CPU12がRAM19に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで、CPU12がRAM19に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄する構成を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホストコンピュータから受信する印字データを描画する印刷装置に係り、特に操作パネルからのリセット指示に基づくリセット処理を実行可能な印刷装置および印刷装置のリセット処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の印刷装置では、操作パネルに配設されたリセットキーを操作する等により処理中のデータをキャンセルする機能を備えている。このようしてデータのキャンセル処理が行われると、処理中のデータや入力バッファ中に取り込まれているデータ、場合によっては、さらにデータを受信し、しかるべきデータを受信するまで、データを読み捨てる処理を実行することとなる。
【0003】また、ジョブオリエンテッドなジョブ終了命令を持つPDLを処理可能な印刷装置においては、該ジョブ終了命令までのデータを読み捨てることによって、処理中のジョブの残り全てを読み捨てることができるように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ジョブ終了命令を持たないジョブオリエンテッドでないPDL言語を処理している場合、ジョブの終端を認識することができない。その場合、従来技術では、入力バッファ中のデータを捨てる処理のみを行い、その後、受信するデータに関しては印字処理を行うなどしていた。
【0005】その結果、本来のデータの途中の極めてイレギュラーなデータから処理を再開することになり、崩れた画像,乱れたページを出力してしまうという問題があった。
【0006】また、入力バッファの大きさ,ジョブデータの大きさによっては、次のジョブの一部、あるいは次の次のジョブの一部までデータを捨ててしまうこともあった。
【0007】本発明は、上記の問題点を解消するためになされたもので、本発明に係る第1〜第4の発明の目的は、入力されるデータキャンセル指示後、既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで入力されたデータを読み飛ばして破棄することにより、意味のない乱れたページの出力を極力押え、かつ次のジョブのデータを読み飛ばすことなく適切なデータキャンセル処理を行うことができる印刷装置および印刷装置のリセット処理方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1の発明は、ホストコンピュータから送信される印刷データを蓄える記憶手段を有し、この記憶手段に記憶された印刷データを処理して印刷を行う印刷装置において、前記印刷データの処理を取り消す取消指示を入力する入力手段と、この入力手段による取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別する識別手段と、この識別手段が前記排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するリセット手段とを設けたものである。
【0009】本発明に係る第2の発明は、リセット手段は、入力手段による取消指示後、所定のリセット処理を行うように構成したものである。
【0010】本発明に係る第3の発明は、所定のリセット処理は、不揮発性メモリに記憶された印刷条件設定情報を参照して各部の初期化を行うリセット手段は、不揮発性メモリに記憶された印刷条件設定情報を参照して各部の初期化を行うように構成したものである。
【0011】本発明に係る第4の発明は、ホストコンピュータから送信される印刷データを蓄える記憶手段を有し、この記憶手段に記憶された印刷データを処理して印刷を行う印刷装置のリセット処理方法において、前記印刷データの処理を取り消す取消指示を入力する入力工程と、該取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別する識別工程と、この識別工程により前記排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するリセット工程とを有するものである。
【0012】
【作用】第1の発明においては、入力手段による取消指示後、識別手段が記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで、リセット手段が記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄して、次の正常なページ区切りから記憶された印刷データを処理する。
【0013】第2の発明においては、リセット手段は、入力手段による取消指示後、所定のリセット処理を行い、次の印刷データ処理に対するデータ処理環境を調整する。
【0014】第3の発明においては、所定のリセット処理は、不揮発性メモリに記憶された印刷条件設定情報を参照して各部の初期化を行い、ユーザが設定したデフォルトのデータ処理環境に戻して、次の印刷データ処理に対するデータ処理環境をデフォルト状態に調整する。
【0015】第4の発明においては、印刷データの処理を取り消す取消指示を入力し、該取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄して、記憶手段に蓄えられたページ単位の印刷データ中の無意味な印刷データを破棄して、次のページに対する印刷データを先頭から処理可能とする。
【0016】
【実施例】本実施例の構成を説明する前に、本実施例を適用するに好適なレーザビームプリンタの構成について図1を参照しながら説明する。なお、本実施例を適用するプリンタは、レーザビームプリンタに限られるものではなく、他のプリント方式のプリンタでも良いことは言うまでもない。
【0017】図1は本発明を適用可能な印刷装置の構成を示す断面図であり、例えばレーザビームプリンタ(LBP)の場合を示す。
【0018】図において、1000はLBP(プリンタ)本体であり、外部に接続されているホストコンピュータから供給される印刷情報(文字コード等)やフォーム情報あるいはマクロ命令等を入力して記憶するとともに、それらの情報に従って対応する文字パターンやフォームパターン等を作成し、記録媒体である記録紙等に像を形成する。1012は操作のためのスイッチ等およびLED表示器等が配されている操作パネル、1001はLBP本体1000全体の制御およびホストコンピュータから供給される文字情報等を解析するプリンタ制御ユニットである。
【0019】このプリンタ制御ユニット1001は、主に文字情報を対応する文字パターンのビデオ信号に変換してレーザドライバ1002に出力する。レーザドライバ1002は半導体レーザ1003を駆動するための回路であり、入力されたビデオ信号に応じて半導体レーザ1003から発射されるレーザ光1004をオン・オフ切り換えする。レーザ光1004は回転多面鏡1005で左右方向に振らされて静電ドラム1006上を走査露光する。
【0020】これにより、静電ドラム1006上には文字パターンの静電潜像が形成されることになる。この潜像は、静電ドラム1006周囲に配設された現像ユニット1007により現像された後、記録紙に転写される。この記録紙にはカットシートを用い、カットシート記録紙はLBP1000に装着した用紙カセット1008に収納され、給紙ローラ1009および搬送ローラ1010と搬送ローラ1011とにより、装置内に取り込まれて、静電ドラム1006に供給される。
【0021】また、LBP本体1000には、図示しないカードスロットを少なくとも1個以上備え、内蔵フォントに加えてオプションフォントカード,言語系の異なる制御カード(エミュレーションカード)を接続できるように構成されている。
【0022】図2は本発明の一実施例を示す印刷装置の制御構成を説明するブロック図である。ここでは、図1に示したレーザビームプリンタ(図1)を例にして説明する。
【0023】図2において、3000はホストコンピュータ、またプリンタ1000において、12はプリンタCPUで、ROM13のプログラム用ROMに記憶された制御プログラム等あるいは外部メモリ14に記憶された制御プログラム等に基づいてシステムバス15に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御し、印刷部インタフェース16を介して接続される印刷部(プリンタエンジン)17に出力情報としての画像信号を出力する。
【0024】また、このROM13のプログラムROMには、図3に示すフローチャートの各ステップを含むCPU12が実行する各種の制御プログラム等を記憶する。ROM13のフォント用ROMには上記出力情報を生成する際に使用するフォントデータ等を記憶し、ROM13のデータ用ROMにはハードディスク等の外部メモリ14がないプリンタの場合には、ホストコンピュータ上で利用される情報等を記憶している。
【0025】CPU12はインタフェース21,入力部18を介してホストコンピュータとの通信処理が可能となっており、プリンタ1000内の情報等をホストコンピュータ3000に通知可能に構成されている。19はCPU12の主メモリ,ワークエリア等として機能するRAMで、図示しない増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。
【0026】なお、RAM19は、入力バッファ,出力情報展開領域,環境データ格納領域,NVRAM等に用いられる。前述したハードディスク(HD),ICカード等の外部メモリ14は、メモリコントローラ(MC)20によりアクセスを制御される。外部メモリ14は、オプションとして接続され、フォントデータ,エミュレーションプログラム,フォームデータ等を記憶する。
【0027】また、1012は前述した操作パネルで、操作のためのスイッチおよびLED表示器等が配されている。この操作パネル1012を介して、ユーザは印字ジョブのキャンセル操作を行うことができる。
【0028】また、前述した外部メモリ14は1個に限らず、少なくとも1個以上備え、内蔵フォントに加えてオプションフォントカード,言語系の異なるプリンタ制御言語を解釈するプログラムを格納した外部メモリを複数接続できるように構成されていてもよい。さらに、図示しないNVRAMを有し、操作パネル1012からのプリンタモード設定条件を記憶するようにしてもよい。
【0029】このように構成された印刷装置において、印字データは入力部18を経てRAM19内の入力バッファに格納され、その後、CPU12によって解析処理され描画される。
【0030】さて、操作部1012で印字ジョブのキャンセル操作が行われると、プリンタ1000は所定のリセット動作を行い、RAM19内の入力バッファ内のデータを解析し、排紙命令までのデータを読み捨てて、次のデータから描画処理を行う。すなわち、次のページ先頭から入力データのバッファリングを開始し、ページとページの中間に対応するデータを入力バッファの先頭位置からバッファリングするような事態を回避するわけである。以下、本実施例と本発明に係る第1〜第3の発明の各手段との対応およびその作用について説明する。
【0031】第1の発明は、ホストコンピュータ3000から送信される印刷データを蓄える記憶手段(本実施例ではRAM19)を有し、この記憶手段に記憶された印刷データを処理して印刷を行う印刷装置において、前記印刷データの処理を取り消す取消指示を入力する入力手段(本実施例では操作パネル1012)と、この入力手段による取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別する識別手段(本実施例ではCPU12による)と、この識別手段が前記排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するリセット手段(本実施例ではCPU12による)とを設け、操作ぱねる1012による取消指示後、CPU12がRAM19に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで、CPU12がRAM19に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄して、次の正常なページ区切りから記憶された印刷データを処理する。
【0032】第2の発明は、リセット手段は、入力手段による取消指示後、所定のリセット処理を行い、次の印刷データ処理に対するデータ処理環境を調整する。
【0033】第3の発明は、所定のリセット処理は、不揮発性メモリ(NVRAM)に記憶された印刷条件設定情報を参照して各部の初期化を行い、ユーザが設定したデフォルトのデータ処理環境に戻して、次の印刷データ処理に対するデータ処理環境をデフォルト状態に調整する。
【0034】図3は本発明に係る印刷装置のリセット処理方法の一実施例を示すフローチャートである。なお、(1)〜(5)は各ステップを示す。
【0035】先ず、ステップ(1)で、プリンタ1000は通常の印字動作をする。通常の印字動作とは、キャンセル処理を行わない場合の印字処理のことである。データの入力バッファからのデータ取得(GET)やそれの解釈,描画処理などが含まれる。
【0036】ステップ(2)で、操作パネル1012においてキャンセル操作がなされたかをCPU12が判別する。なされていない場合、ステップ(1)に戻り、キャンセル操作が行われるまでこれを繰り返す。
【0037】一方、ステップ(2)でキャンセル操作が行われたとCPU12が判定した場合、ステップ(3)で、以下に示すリセット処理を行う。
【0038】本実施例において、リセット処理とは、既に解析済みの印刷データを描画せずに捨て、RAM19内部の各種テーブルを必要に応じてクリアするとか、ページ上の現在位置をページの始めに戻すとか、すでに描画メモリ上に描画され用紙に出力されるのを待っているページを強制的に排紙するなどの処理である。
【0039】もちろんこれらは一実施例であり、本発明は今述べたように既にメモリ上に描画されているページを排紙することを条件とするわけでない。
【0040】同様に、排紙待ちしているページは排紙せずに無視してもよいし、また、使用フォントをデフォルトフォントに戻すなどしてもよいし、例えば自動改行や自動改ページなどの設定をデフォルト状態に戻してもよいし、あるいは戻さなくとよい。これらの処理の内容は本発明の本質ではない。
【0041】さて、次にステップ(4)に進み、RAM19に確保される入力バッファからデータをGETし、ステップ(5)で、取得したデータが排紙命令であるか否かをCPU12が判別する。この判別で、取得したデータが排紙命令でない場合、ステップ(4)に戻り、排紙命令を検知するまでステップ(4),ステップ(5)を繰り返して、入力バッファに入力された既に無意味なデータと認識されたデータを次々と読み飛ばして行く。
【0042】一方、排紙命令を検知するとステップ(1)に進み、通常の印字動作に戻る。
【0043】以下、本実施例と本発明に係る第4の発明の各手段との対応およびその作用について説明する。
【0044】第4の発明は、ホストコンピュータ3000から送信される印刷データを蓄える記憶手段(本実施例ではRAM19)を有し、この記憶手段に記憶された印刷データを処理して印刷を行う印刷装置のリセット処理方法において、前記印刷データの処理を取り消す取消指示を入力する入力工程(図3のステップ(1)とステップ(2)の間に行われるユーザからの入力に基づく図示しないステップ)と、該取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別する識別工程(図3のステップ図2)と、この識別工程により前記排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するリセット工程(図3のステップ(3)〜(5))とを実行して、RAM19に蓄えられたページ単位の印刷データ中の無意味な印刷データを破棄して、次のページに対する印刷データを先頭から処理可能とする。
【0045】なお、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器から成る装置に適用しても良い。また、本発明はシステムあるいは装置にプログラムを供給することによって達成させる場合にも適用できることは言うまでもない。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る第1の発明によれば、入力手段による取消指示後、識別手段が記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで、リセット手段が記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するので、次の正常なページ区切りから記憶された印刷データを処理することができる。
【0047】第2の発明によれば、リセット手段は、入力手段による取消指示後、所定のリセット処理を行うので、次の印刷データ処理に対するデータ処理環境を調整することができる。
【0048】第3の発明によれば、所定のリセット処理は、不揮発性メモリに記憶された印刷条件設定情報を参照して各部の初期化を行うので、ユーザが設定したデフォルトのデータ処理環境に戻して、次の印刷データ処理に対するデータ処理環境をデフォルト状態に調整することができる。
【0049】第4の発明によれば、印刷データの処理を取り消す取消指示を入力し、該取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するので、記憶手段に蓄えられたページ単位の印刷データ中の無意味な印刷データを破棄して、次のページに対する印刷データを先頭から処理することができる。
【0050】従って、意味のない乱れたページの出力を極力押え、かつ次のジョブのデータを読み飛ばすことなく適切なデータキャンセル処理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明を適用可能な印刷装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す印刷装置の制御構成を説明するブロック図である。
【図3】本発明に係る印刷装置のリセット処理方法の一実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
12 CPU
13 ROM
14 外部メモリ
19 RAM
20 メモリコントローラ(MC)
1000 プリンタ
1001 プリンタ制御ユニット
1012 操作パネル
3000 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホストコンピュータから送信される印刷データを蓄える記憶手段を有し、この記憶手段に記憶された印刷データを処理して印刷を行う印刷装置において、前記印刷データの処理を取り消す取消指示を入力する入力手段と、この入力手段による取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別する識別手段と、この識別手段が前記排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するリセット手段とを具備したことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】 リセット手段は、入力手段による取消指示後、所定のリセット処理を行うことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】 所定のリセット処理は、不揮発性メモリに記憶された印刷条件設定情報を参照して各部の初期化を行うことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】 ホストコンピュータから送信される印刷データを蓄える記憶手段を有し、この記憶手段に記憶された印刷データを処理して印刷を行う印刷装置のリセット処理方法において、前記印刷データの処理を取り消す取消指示を入力する入力工程と、該取消指示後、前記記憶手段に既に記憶された印刷データ中の排紙命令を識別する識別工程と、この識別工程により前記排紙命令を識別するまで、前記記憶手段に記憶された印刷データを読み飛ばして破棄するリセット工程とを有することを特徴とする印刷装置のリセット処理方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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