説明

印刷装置の制御方法

【課題】印刷処理の実行前に印刷方法を設定しなくても、両面印刷と片面印刷とを印刷データの内容に応じて、自在に切り替えることを可能にする。
【解決手段】予め印刷装置に特定文字列が設定されている場合に、ホストコンピュータから送信される印刷データを解析して印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれているか否かを判定する判定ステップ(ステップS24)と、判定ステップにおいて、特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合は両面印刷を実行し、特定文字列と一致するデータが含まれていない場合には片面印刷を実行する印刷ステップ(ステップS27)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷対象物に対する片面印刷及び両面印刷が可能な印刷装置及び印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙の両面に印刷可能な印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2には、ホストコンピュータが両面印刷を指示するとページ通しNoを更新するページ通しNo更新部と、ページ通しNoが奇数か偶数かを判定する奇数ページ・偶数ページ判定部と、ページ通しNoが奇数の場合に用紙表面への印刷を行い、表面印刷が終わった用紙を一旦中間トレイに格納する奇数ページ処理部と、ページ通しNoが偶数の場合に偶数ページ用の印刷コマンド列の先頭アドレスと長さを制御テーブルに設定する偶数ページ処理部と、中間トレイに格納されている表面印刷済みの用紙に対して、各偶数ページについての裏面印刷を行う裏面印刷処理部と、を備えた印刷システムが記載されている。
【0003】
上記印刷システムにおいて、両面印刷を実行する場合は予めホストコンピュータから両面印刷指定コマンドによって両面印刷を指示する。表面印刷処理の実行中に、中間トレイの格納容量を超える、又は文書の終了を検出すると、表面印刷処理から裏面印刷処理へ切り替える。つまり、片面印刷と両面印刷とを切り替えるには、ホストコンピュータからコマンドによって指示する必要がある。
また、印刷装置のディップスイッチのオン/オフによって両面印刷あるいは片面印刷の切り替えを行うものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−027434号公報
【特許文献2】特開平04−001067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような切り替え方法だと、印刷方法を片面印刷から両面印刷へ変更したいとき、両面印刷から片面印刷へ変更したいときは、印刷処理を実行する前にそのつど、オペレータが設定変更を行わなければならない。
例えば、連続紙に対して印刷するようなレシート印刷を行う場合には、会計ごとに発行されるレシート長は異なる。購入商品が多い場合は発行されるレシート長は長くなり、少ない場合は短くなる。購入商品が多い場合は両面印刷を行ってレシート長を短くしたい。従来の方法では、両面印刷と片面印刷とを切り替える度にオペレータが設定変更を行わなければならず煩わしい。特に、迅速な処理が求められるレシート発行業務に適用するには課題となるところである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、片面印刷及び両面印刷が可能な印刷装置において、印刷処理の実行前に印刷方法を設定しなくても、両面印刷と片面印刷とを印刷データの内容に応じて、自在に切り替えることが可能な印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、印刷対象物に対して片面印刷または両面印刷を行う印刷装置であって、ホストコンピュータからの特定文字列設定指示に応じて、特定文字列を設定する特定文字列設定部と、当該印刷装置に前記特定文字列が設定されている場合に、ホストコンピュータから送信される印刷データを解析して前記印刷データ中に前記特定文字列と一致するデータが含まれているか否かを判定する特定文字列判定部と、前記特定文字列判定部が、前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合は前記両面印刷を実行し、前記特定文字列と一致するデータが含まれていないと判定した場合は前記片面印刷を実行する印刷部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、印刷対象物に対して片面印刷または両面印刷を行う印刷装置の制御方法であって、予め当該印刷装置に特定文字列が設定されている場合に、ホストコンピュータから送信される印刷データを解析して前記印刷データ中に前記特定文字列と一致するデータが含まれているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて、前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合は前記両面印刷を実行し、前記特定文字列と一致するデータが含まれていない場合には前記片面印刷を実行する印刷ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、特定文字列設定指示に従って特定文字列を設定し、この特定文字列を設定した状態で、ホストコンピュータから送信されてきた印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれている場合は両面印刷を実行し、特定文字列と一致するデータが含まれていない場合は片面印刷を実行する。したがって、印刷処理の実行前に印刷方法を設定しなくても、特定文字列を含む印刷データであれば両面印刷を実行し、特定文字列を含まない印刷データであれば片面印刷を実行するので、両面印刷と片面印刷とを印刷データの内容に応じて、自在に切り替えることが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記印刷データのうち、前記印刷対象物の一方の面のデータが展開される第1のデータ記憶領域と、前記印刷データのうち、前記印刷対象物の他方の面のデータが展開される第2のデータ記憶領域と、前記特定文字列判定部が前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで前記第1のデータ記憶領域に前記印刷データを展開するとともに、前記特定文字列に続く印刷データを前記第2のデータ記憶領域に展開する印刷データ展開部と、を有し、前記印刷部は、印刷開始指示に応じて、展開された前記一方の面のデータと前記他方の面のデータとを同時に両面印刷することを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記判定ステップにおいて前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで前記印刷データを第1のデータ記憶領域へ展開する第1のデータ展開ステップと、前記特定文字列に続く印刷データを第2のデータ記憶領域へ展開する第2のデータ展開ステップと、を有し、前記印刷ステップにおいて、展開された前記一方の面のデータと前記他方の面のデータとを印刷開始指示に応じて、同時に両面印刷することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで、第1のデータ記憶領域に印刷データを展開し、印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合には、特定文字列に続く印刷データを第2のデータ記憶領域に展開し、第2の記憶領域に印刷データを展開した後、印刷開始指示に応じて、第1の記憶領域と第2の記憶領域のそれぞれに展開した印刷データにより印刷対象物の両面に対して同時に印刷を行う。したがって、印刷対象物の両面に対して同時に印刷を行うので、印刷対象物の一方の面に印刷を行った後、印刷対象物の他方の面に印刷を行う場合と比べて、短時間で印刷を行うことができると共に印刷対象物を節約することができる。
【0013】
また、本発明において、前記印刷対象物である連続紙をカットするカット指示に応じて前記連続紙をカットするカット部、を有し、前記印刷開始指示となるカット指示を受信する前に、前記特定文字列判定部が前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定できなかった場合に、前記印刷部は、前記第1のデータ記憶領域に展開された前記一方の面のデータに基づき片面印刷を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明において、前記印刷対象物である連続紙をカットするカット指示に応じて前記連続紙をカットするカットステップ、を有し、前記印刷開始指示となるカット指示を受信する前に、前記判定ステップにおいて前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定できなかった場合に、前記印刷ステップにおいて、前記第1のデータ記憶領域に展開された一方の面のデータに基づき片面印刷を行うことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、カット指示を受信する前に特定文字列を受信できなかった場合は、印刷データは第1のデータ展開領域に展開されるが第2のデータ展開領域にデータを展開することなく、印刷処理を実行する。つまり、カット指示を受信すると第1のデータ展開領域に展開された一方の面のデータに基づき片面印刷を行う。したがって、印刷処理の実行前に印刷方法を片面印刷に設定しなくても片面印刷を行うことができる。
【0016】
また、本発明において、前記特定文字列は、前記ホストコンピュータから送信される特定文字列設定指示によって複数種類設定可能であることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、特定文字列設定の自由度が高まり、使用者のニーズに合わせた特定文字列を設定することができる。
【0018】
また、本発明は、前記特定文字列は、特定文字列毎に消去する、または一括消去することも可能であることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、複数種類の特定文字列を、特定文字列毎に、または一括して消去することができるので、印刷装置の使用用途の変更により一部の特定文字列だけを変更したり、設定した特定文字列が不要になった場合でも一括して消去することも可能である。
【0020】
また、本発明において、前記特定文字列設定部が前記特定文字列を設定していない場合に、前記印刷部は、前記カット指示の受信を待つことなく、前記印刷データの展開処理と印刷処理とを繰り返し実行し、前記連続紙に対する片面印刷を行うことを特徴とする。
【0021】
また、本発明において、前記特定文字列が設定されていない場合には、前記印刷ステップにおいて、前記カット指示の受信を待つことなく、前記印刷データの展開処理と印刷処理とを繰り返し実行し、前記連続紙に対する片面印刷を行うことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、特定文字列設定部が特定文字列を設定していない状況で、カット指示を受信する前に受信した印刷データについて片面印刷を行う。これにより、本発明の印刷装置は、特定文字列が設定されていなければ、カット指示を待つことなく片面印刷を実行する。また、特定文字列が設定されていても、印刷データに特定文字列が含まれていない場合には、カット指示が来るまで印刷データを第1のデータ記憶領域に展開し続け、カット指示が来ると片面印刷を実行する。このように、少なくとも2通りの片面印刷を実行することができる。
【0023】
例えば、使用者が片面印刷機能だけを使用したい場合は、特定文字列を設定することなく、展開処理を行いながら印刷処理を行う方法(片面印刷モード)で使用すれば、印刷結果を出力するまでの時間を気にすることなく高速印刷処理を行うことができる。
一方、使用者が片面印刷機能と両面印刷機能とを適宜使い分けて使用したい場合は、特定文字列を設定し印刷データの展開処理の終了後、カット指示に応じて印刷処理を行う方法(両面印刷対応モードにおける片面印刷)で使用すれば、片面印刷と両面印刷の切り替えを特定文字列の有無だけでと容易に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す印刷装置における特定文字列を設定していない時の印刷処理を示 すフローチャートである。
【図3】図1に示す印刷装置における特定文字列を設定した時の両面印刷処理を示す フローチャートである。
【図4】図1に示す印刷装置における特定文字列を設定していない時の片面印刷結果 の一例を示す図である。
【図5】図1に示す印刷装置における特定文字列を設定した時の両面印刷結果の一例 を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の印刷装置10は、ホストコンピュータ20からの印刷指示に応じて印刷対象物(ロール紙のような連続紙)に対して片面印刷または両面印刷を行うラインサーマルプリンタである。
【0027】
本実施形態の印刷装置10は、データ受信部101と、特定文字列設定部102と、特定文字列判定部103と、印刷データ展開部104と、印刷データ記憶部105と、印刷部106とを備えている。データ受信部101は、ホストコンピュータ10から送信される印刷データを受信して特定文字列判定部103に入力する。また、データ受信部101は、受信した印刷データを解析して、特定文字列設定指示CA(特定文字列設定機能により設定した文字列)が含まれていれば、その指示を特定文字列設定部102に入力する。また、特定文字列が設定されている場合に印刷データを解析した結果、印刷開始指示CB(カット実行契機)が含まれていれば、その指示を印刷部106に入力する。
【0028】
特定文字列設定部102は、データ受信部101から特定文字列設定指示CAが入力されると、その指示に応じて特定文字列を設定する。特定文字列としては、例えば”----------------“LF(ラインフィード)が用いられる。特定文字列判定部103は、特定文字列設定部102で特定文字列が設定された場合に、ホストコンピュータ20から送信された印刷データを解析して該印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれているか否かを判定する。印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合は、その旨を印刷データ展開部104と印刷部106に通知する。
【0029】
印刷データ展開部104は、特定文字列判定部103が、印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで、印刷データ記憶部105の第1のデータ記憶領域105aに印刷データを展開し、特定文字列判定部103が特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合には、特定文字列に続く印刷データを印刷データ記憶部105の第2のデータ記憶領域105bに展開する。すなわち、印刷データ展開部104は、ホストコンピュータ20から特定文字列と一致するデータが送られてくるまでの印刷データを第1のデータ記憶領域105に展開し、特定文字列と一致するデータが送られてくるとそれに続く印刷データを第2のデータ記憶領域105bに展開する。
【0030】
印刷データ記憶部105は、上述したように第1のデータ記憶領域105aと第2のデータ記憶領域105bを有している。本実施形態では、印刷データ記憶部105の第1のデータ記憶領域105aには、印刷データのうち、印刷対象物である連続紙30の表面に印刷を行うためのデータを展開し、第2のデータ記憶領域105bには、印刷データのうち、連続紙30の裏面に印刷を行うためのデータを展開するようにしている。なお、印刷データ記憶部105にはRAM等の揮発性メモリが用いられる。
【0031】
印刷部106は、ホストコンピュータ20からの印刷開始指示CBに応じて、連続紙30に対して片面印刷または両面印刷を行う。印刷部106は、連続紙30を挟む形で対向配置された2つの印刷ヘッド1061a、1061bと、連続紙30をカットするカット部1062とを有する。印刷部106は、2つの印刷ヘッド1061a、1061bのうち、印刷ヘッド1061aで第1のデータ記憶領域105aに展開されたデータに基づき連続紙30の一方の面に対して印刷を行い、印刷ヘッド1061bで第2のデータ記憶領域105bに展開されたデータに基づき連続紙30の他方の面に対して印刷を行う。
【0032】
印刷ヘッド1061a、1061bにはラインサーマル式の印刷ヘッドが用いられ、印刷ヘッドの1ライン分の印刷を行うと連続紙30を1ライン分に相当する搬送量だけ搬送する。1ライン分の印刷処理と搬送処理とを繰り返し、連続紙30の両面に同時に連続印刷を行う。
また、片面印刷を実行する場合には、印刷ヘッド1061a、1061bのいずれか一方を駆動させて片面印刷を実行する。
なお、連続紙30として感熱紙が用いられる。連続紙30は帯状の用紙を円筒状に巻回したものであり、印刷部106に装着して使用される。
【0033】
本実施形態において、印刷開始指示CBは、連続紙30をカットするカット指示CCである。印刷部106は、特定文字列判定部103が特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合で、カット指示CCを受信すると、第1のデータ記憶領域105aに展開された一方の面のデータと第2のデータ記憶領域105bに展開された他方の面のデータとを同時に両面印刷する。
【0034】
また、印刷部106は、印刷開始指示となるカット指示CCを受信する前に、特定文字列判定部103が特定文字列と一致するデータが含まれていると判定できなかった場合は、既に第1のデータ記憶領域105aに展開されている一方の面のデータに基づき片面印刷を行う。また、印刷部106は、片面印刷または両面印刷を行った後、カット部1062を制御して連続紙30をカットする。
【0035】
さらに、特定文字列設定部102に特定文字列が設定されていない場合、印刷部106はデータ記憶領域105に少なくとも2ライン分のデータが展開され、印刷処理の実行契機がくると印刷を行い、展開処理と印刷処理を繰り返し行う。つまり、印刷ヘッド1061aあるいは1061bの1ライン分の印刷処理と、1ライン分の連続紙30の搬送処理とを交互に繰り返し実行する。
【0036】
次に、本実施の形態の印刷装置10の動作を説明する。
本実施形態における特定文字列設定部102は、ホストコンピュータ20から特定文字列設定指示CAが送信されると、その指示に応じて特定文字列を設定する。なお、特定文字列の設定は予め印刷装置10の工場出荷時に設定されていてもよいが、後に使用者が設定することも可能である。以下では、特定文字列が設定されている場合を両面印刷対応モード、特定文字列が設定されていない場合を片面印刷モードとして、それぞれのモードにおける印刷処理について説明する。
【0037】
(片面印刷モードにおける印刷処理)
図2は、片面印刷モード、すなわち特定文字列を設定していない時の印刷処理を示すフローチャートである。
まず、特定文字列判定部103は、特定文字列設定部102に特定文字列が設定されているか否かを判断する(ステップS11)。特定文字列が設定されていれば後述する両面印刷対応モードへ移行する。一方、特定文字列が設定されていない場合には(ステップS11:No)、片面印刷モードへ移行する。片面印刷モードへ移行し、ホストコンピュータ20から印刷データを受信すると(ステップS12)、データ解析し受信した印刷データを印刷データ記憶部105の第1の記憶領域105aに展開する(ステップS13)。
【0038】
第1の記憶領域105aに対して印刷データの展開を開始すると、印刷処理実行の契機が発生するまで(ステップS14:No)、ステップS12に戻り印刷データの受信を継続する。一方、印刷処理実行の契機が発生した場合には(ステップS14:Yes)、連続紙30に対して印刷ヘッド1061の1ライン分の印刷処理を行い、連続紙30を1ライン分に相当する搬送量だけ搬送する(ステップS15)。
【0039】
ここで、印刷処理実行の契機とは、改行指示、バッファフル状態、連続紙30のカット指示等がある。改行指示であれば、改行指示を実行するまでの間に第1のデータ記憶領域105aに展開されている1ライン分の印刷データを印刷する。また、バッファフル状態であれば、第1のデータ記憶領域105aに2ライン分の印刷データが展開されてバッファフル状態になるまでの間に第1の記憶領域105aに展開されている1ライン分の印刷データを印刷する。さらに、カット指示の実行であれば、カット指示を実行するまでの間に第1のデータ記憶領域105aに展開された1ライン分の印刷データを印刷する。
【0040】
カット指示がくれば(ステップS16:Yes)、印刷が行われた連続紙30をカット位置まで送り出し、カット位置でカットする。一方、上述した改行指示やバッファフル状態では、カットは実行されないので、カット指示がくるまではステップS12に戻りデータ受信、解析、印刷・搬送処理を繰り返す。このように、印刷処理実行の契機で印刷が行われ、更にカット指示がくると連続紙30をカットする(ステップS17)。
【0041】
図4は、図2のフローにしたがって印刷された印刷結果の一例を示す図である。この例は、片面印刷なので、連続紙30をカットした連続紙片30aの表面に印刷結果1及び文字列”----------------“LF、及び印刷結果2とが印刷されている。
【0042】
(両面印刷対応モードにおける印刷処理)
前提として、ホストコンピュータ20から特定文字列設定指示CAが送られ、特定文字列設定部102に特定文字列”----------------“LFが設定されているものとして説明する。図3は、両面印刷対応モード、すなわち特定文字列を設定した時の両面印刷処理を示すフローチャートである。
【0043】
データ記憶部105の第1のデータ記憶領域105aの初期化を行い(ステップS21)、ホストコンピュータ20から送られてきた印刷データを受信し(ステップS22)、データ解析を行って印刷データ記憶部105の第1の記憶領域105aに展開する(ステップS23)。
【0044】
第1の記憶領域105aに対して印刷データを展開しつつ、受信した印刷データが特定文字列と一致するか否かを判定し(ステップS24)、特定文字列と一致しない場合(ステップS24:No)は、カット指示があるかどうか判定する(ステップS25)。カット指示でなければ(ステップS25:No)は、ステップS22に戻り、印刷データの受信、展開を継続する。ステップS22、ステップS23、ステップS24及びステップS25の各処理を、特定文字列と一致するデータを受信するまで繰り返し行う。特定文字列と一致するデータを受信した場合(ステップS24:Yes)、データ記憶部105の第2のデータ記憶領域105bを初期化し(ステップS26)、この初期化後、ステップS22に戻ってデータ受信を継続する。
【0045】
特定文字列と一致するデータを受信した場合は、該データに続く印刷データを第2のデータ記憶領域105bに展開する。すなわち、特定文字列を受信するまでは、受信した印刷データを第1のデータ記憶領域105aに展開し、特定文字列を受信した場合は、該特定文字列に続くデータを第2のデータ記憶領域105bに展開する。印刷データの第2のデータ記憶領域105bへの展開はカット指示CCが送られてくるまで継続する。
【0046】
カット指示CCが送られてくると、連続紙30の表面と裏面それぞれに対して同時に印刷を行う(ステップS27)。すなわち、データ記憶部105の第1のデータ記憶領域105aに展開された一方の面のデータを連続紙30の表面に印刷すると共に、データ記憶部105の第2のデータ記憶領域105bに展開された他方の面のデータを連続紙30の裏面に印刷する。両面印刷を行った後、連続紙30に対してカットを実行する(ステップS28)。連続紙30に対するカットを実行した後、データ記憶部105の第1のデータ記憶領域105aの初期化を行って(ステップS18)、ステップS29に戻り、ホストコンピュータ20から引き続き送られてくる印刷データに対して上記同様の処理を行う。
【0047】
ここで、図5は、本処理による印刷結果の一例を示す図である。この例は、印刷結果1と印刷結果2を印刷してカットしたものである。図5の(a)は表面側であり、(b)は裏面側である。本処理では両面印刷を行うので、連続紙30をカットした連続紙片30aは、印刷行数の多い方の印刷1の長さとなる。本処理で得られた両面印刷の連続紙片30aは、前述した片面印刷の連続紙片30aと比較して短くなる。
【0048】
このように、本実施の形態の印刷装置10によれば、特定文字列設定指示CAに従って特定文字列を設定し、この特定文字列を設定した状態で、ホストコンピュータ20から送信されてきた印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで、データ記憶部105の第1のデータ記憶領域105aに印刷データを展開し、印刷データ中に特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合には、特定文字列に続く印刷データをデータ記憶部105の第2のデータ記憶領域105bに展開する。第1の記憶領域105aと第2の記憶領域105bに印刷データを展開した後、カット指示がくると、第1の記憶領域105aと第2の記憶領域105bのそれぞれに展開した印刷データにより連続紙30の両面に対して同時に印刷を行う。このため、印刷処理の実行前に印刷方法を設定しなくても、両面印刷と片面印刷とを印刷データの内容に応じて、自在に切り替えることが可能となる。また、連続紙30の一方の面に印刷を行った後、連続紙30の他方の面に印刷を行う場合と比べて、短時間で印刷を行うことができると共に連続紙30の節約ができる。
【0049】
一方、印刷開始指示となるカット指示CCを受信する前に、特定文字列と一致するデータが含まれていると判定できなかった場合は、ステップS27において第1のデータ記憶領域105aに展開された一方の面のデータに基づき片面印刷を行う。このため、片面印刷をするための設定をしなくても片面印刷を行うことができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、特定文字列を1つ設定するようにしたが、複数種類の特定文字列を容易し、その中から任意の1つを選択できるようにしても良い。このようにすることで、特定文字列設定の自由度が高まり、使用者のニーズに合わせた特定文字列を設定することができる。また、複数種類の特定文字列を、特定文字列毎に、または一括して消去できるようにすることで、印刷装置の使用用途の変更により一部の特定文字列だけを変更したり、設定した特定文字列が不要になった場合でも一括して消去することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10:印刷装置、20:ホストコンピュータ、30:連続紙、30a:連続紙片、101:データ受信部、102:特定文字列設定部、103:特定文字列判定部、104:印刷データ展開部、105:データ記憶部、105a:第1のデータ記憶領域、105b:第2のデータ記憶領域、106:印刷部、1061a:第1の印刷ヘッド、1061b:第2の印刷ヘッド、1062:カット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物に対して片面印刷または両面印刷を行う印刷装置であって、
ホストコンピュータからの特定文字列設定指示に応じて、特定文字列を設定する特定文字列設定部と、
当該印刷装置に前記特定文字列が設定されている場合に、ホストコンピュータから送信される印刷データを解析して前記印刷データ中に前記特定文字列と一致するデータが含まれているか否かを判定する特定文字列判定部と、
前記特定文字列判定部が、前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合は前記両面印刷を実行し、前記特定文字列と一致するデータが含まれていないと判定した場合は前記片面印刷を実行する印刷部と、を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷データのうち、前記印刷対象物の一方の面に印刷を行うためのデータが展開される第1のデータ記憶領域と、
前記印刷データのうち、前記印刷対象物の他方の面に印刷を行うためのデータが展開される第2のデータ記憶領域と、
前記特定文字列判定部が前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで前記第1のデータ記憶領域に前記印刷データを展開するとともに、前記特定文字列に続く印刷データを前記第2のデータ記憶領域に展開する印刷データ展開部と、を有し、
前記印刷部は、印刷開始指示に応じて、展開された前記一方の面のデータと前記他方の面のデータとを同時に両面印刷することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷対象物である連続紙をカットするカット指示に応じて前記連続紙をカットするカット部、を有し、
前記印刷開始指示となるカット指示を受信する前に、前記特定文字列判定部が前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定できなかった場合に、前記印刷部は、前記第1のデータ記憶領域に展開された前記一方の面のデータに基づき片面印刷を行うことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記特定文字列は、前記ホストコンピュータから送信される特定文字列設定指示によって複数種類設定可能であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記特定文字列は、特定文字列毎に消去する、または一括消去することも可能であることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記特定文字列設定部が前記特定文字列を設定していない場合に、前記印刷部は、前記カット指示の受信を待つことなく、前記印刷データの展開処理と印刷処理とを繰り返し実行し、前記連続紙に対する片面印刷を行うことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷対象物に対して片面印刷または両面印刷を行う印刷装置の制御方法であって、
予め当該印刷装置に特定文字列が設定されている場合に、ホストコンピュータから送信される印刷データを解析して前記印刷データ中に前記特定文字列と一致するデータが含まれているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定した場合は前記両面印刷を実行し、前記特定文字列と一致するデータが含まれていない場合には前記片面印刷を実行する印刷ステップと、を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項8】
前記判定ステップにおいて前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定するまで前記印刷データを第1のデータ記憶領域へ展開する第1のデータ展開ステップと、
前記特定文字列に続く印刷データを第2のデータ記憶領域へ展開する第2のデータ展開ステップと、を有し、
前記印刷ステップにおいて、展開された前記一方の面のデータと前記他方の面のデータとを印刷開始指示に応じて、同時に両面印刷することを特徴とする請求項7に記載の印刷装置の制御方法。
【請求項9】
前記印刷対象物である連続紙をカットするカット指示に応じて前記連続紙をカットするカットステップ、を有し、
前記印刷開始指示となるカット指示を受信する前に、前記判定ステップにおいて前記特定文字列と一致するデータが含まれていると判定できなかった場合に、前記印刷ステップにおいて、前記第1のデータ記憶領域に展開された一方の面のデータに基づき片面印刷を行うことを特徴とする請求項8に記載の印刷装置の制御方法。
【請求項10】
前記特定文字列が設定されていない場合には、前記印刷ステップにおいて、前記カット指示の受信を待つことなく、前記印刷データの展開処理と印刷処理とを繰り返し実行し、前記連続紙に対する片面印刷を行うことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179905(P2012−179905A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−81550(P2012−81550)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−310648(P2007−310648)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】