説明

印刷装置

【課題】 ロール紙の装着が簡単で抜けの生じない印刷装置を提供する。
【解決手段】 ツメ25は、先端面20と繰出し方向S側の前側端面30と反対側の後側端面31とを有する台形状をなし、前側端面30と後側端面31は先端面20方向に向かって互いに接近するように傾斜し、θ1<<90゜の鋭角である。先端面20は切欠26よりも十分に小さくなるように構成し、L1<<L2となる。前側端面30は繰出し方向S方向に軸線Jに対して傾斜しており、前側端面30と切欠底端面27とがなす鋭角部分が係合部35になり、この係合部35に突起45が係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラベル等のロール状に巻かれたロール状印刷対象物に印刷するための印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
瓶などに貼着するためのラベルに印刷を施すラベルプリンタ等においては、ラベルを台紙に貼着し、該ラベルと台紙をロール状にしたロール紙を回転可能な装着軸に軸支しておき、プラテン等の駆動ロールを備えた繰出装置でロール紙を順次繰り出して、ラベル部分に印刷した上、該台紙からラベルを剥がして次工程に送る構成になっている。
このロール紙を装着する装着軸は、装着の容易性のために片持ちになっており、一方が開放端になっているため、ロール紙の抜けを防止するために、装着軸とロール紙を係合する必要がある。
またラベルプリンタなどにおいては、装着軸にスプリングなどにより繰り出し方向と逆方向のテンションを掛け、ロール紙にテンションを加え常に張った状態にして、ラベルの剥離を容易に行えるように構成している。また印刷内容の変更時などにおいては、ロール紙を逆転させラベル一枚分戻してプリントする必要があり、この場合にも逆方向のテンションを掛ける必要があり、これらの逆方向へのテンションを掛けるために、ロール紙と装着軸とを係合する必要がある。
ロール紙と装着軸とを係合するために、従来はロール紙のコアに切欠を設けたり、或いは装着軸側にバネを備えた羽根を設けてコアとの摩擦を大きくして係合する構造を採用していた。
【0003】
【特許文献1】特開2006−248565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロール紙のコアに切欠を設ける構成の場合、装着軸に装着する際に該切欠を係合手段と位置合わせする作業が難しい問題があった。また、切欠だけでは抜け落ちを防止できず、なんらかの抜け落ち防止の構成が必要であった。
またバネを備えた羽根の摩擦による構成の場合には、羽根の摩擦のために装着作業が難しい等の問題があった。また装着軸に羽根やバネなどをもうけるために、コスト上昇を招き、装着軸が複雑化する問題があった。また、抜け落ち防止の機構を設ける場合には、この機構のためにロール紙の幅が制限され、自由なサイズのロール紙を使用できないなどの欠点があった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ロール状に巻かれたロール状印刷対象物と、該ロール状印刷対象物を回転可能に装着し支持し、一端側が固定支持された固定端であり他端側が開放された開放端である装着軸と、該ロール状印刷対象物を把持して繰り出す繰り出し装置と、該繰り出された印刷対象物を印刷する印刷部と、を備えた印刷装置において、前記ロール状印刷対象物を装着し、前記装着軸に該装着軸の開放端側から嵌挿される円筒形のコアと、該装着軸への嵌挿時に先に嵌挿されるコアの先端側に形成され、該コアの軸線方向に伸びる複数のツメと、前記装着軸に設けられ、前記ツメと係合する突起と、を備え、前記ロール状印刷対象物とコアは前記繰り出し装置による繰り出しにより、繰り出し方向に回動し、前記ツメは、コアの軸線に対してコアの先端側方向に向けて互いに接近するように傾斜する2つの側端面を有し、該側端面の中の前記繰り出し方向側の側端面は該繰り出し方向側にコアの軸線に対して傾斜する、ことを特徴とする。
上記構成によれば、コアの先端側にツメを設けているため、装着軸への装着は容易であり、装着時の突起との係合に手間を要しない。また、装着軸には突起を設けるだけであり、従来のような羽根などの大きな部品を必要としない。
またコアの繰り出し方向に傾斜する側端面が装着軸の突起に係合するため、繰り出し動作や逆転動作において、コアは装着軸の固定端方向に力を受け、抜けなどが生ずることがない。
【発明の効果】
【0006】
本発明の印刷装置によれば、ロール紙などのロール状印刷対象物を装着軸に装着するのが容易であり、抜けなども生ずることがない。また構造も簡単であり、装置の簡単化、コスト低減などを実現できる。更にロール紙の幅の制限も少ない等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1及び図2に本発明をラベルプリンタに適用した実施形態を示す。
ロール紙1はコア2に巻かれており、コア2が装着軸4に嵌挿してラベルプリンタ本体Aに装着されている。ロール紙1は、台紙10と該台紙10上に剥離可能に貼着されたラベル11から構成されている。ロール紙1とコア2は互いに固定されており、一体的に回転するように構成されている。
【0008】
ロール紙1は繰り出し装置であるプラテン6に引っ張られて繰り出され、ラベル11は印刷ヘッド7により印刷され、剥離部8で台紙10が屈曲し、ラベル11が剥がされて貼着部9に送られる構成になっている。
70はインクリボンである。
【0009】
装着軸4は、図3に示すように一端側がラベルプリンタ本体Aに固定された固定端40になっており、他端側が開放された開放端41になっている。装着軸4の外周はベアリングなどにより回転可能な回転部42になっており、図4に示すようにこの回転部42にロール紙1のコア2を嵌挿し、前記プラテン6によりロール紙1を引っ張ると回転部42が回転してロール紙1が繰り出されるようになっている。
回転部42は引張装置であるスプリング43により繰り出し方向と逆方向のテンションを掛けられ、これによりロール紙1のたるみが防止されるように構成されている。
【0010】
回転部42上には装着軸4の軸半径方向(図3において手前方向)に突出する突起45を設けてあり、また装着軸4の固定端40側の基部には更に保持リング44が設けられており、ここにコア2を嵌挿するようになっている。
【0011】
図4に示すように、上記装着軸4の開放端41にコア2の先端面20側を挿通し、先端面20側を保持リング44に嵌挿してロール紙1を装着軸4に装着するように構成されている。
後に詳述するように、ロール紙1が装着軸4に装着されると、突起45はコア2に形成したツメ25に係合するようになっている。
【0012】
ロール紙1は図5に示すようにコア2に装着され固定されている。即ち、コア2はロール紙1の中心の芯になっており、一体的に回転するようになっている。
図5乃至8に示すように、コア2の先端面20側は、複数の切欠26により切り欠かれており、この切欠26により複数のツメ25がコア2に一体的に形成されている。コア2の先端面20はツメ25の先端面20としてそのまま残っている。
この実施形態では3つのツメ25が形成されているが、その数は適宜増減可能である。
【0013】
ツメ25は、先端面20と繰出し方向S側の前側端面30と反対側の後側端面31とを有する台形状をなしており、該前側端面30と後側端面31は先端面20方向に向かって互いに接近するように傾斜している。即ち図6におけるθ1<<90゜の鋭角になっている。このようにツメ25は先端が鋭角であるため、無理なくロール紙1を装着軸4に装填する操作を行える。
【0014】
切欠26はツメ25よりも十分に大きくしてあり、特に先端面20の大きさが切欠26よりも十分に小さくなるように構成している。即ち図6においてL1<<L2となっている。この構成により、同様にロール紙1の装着軸4への装填操作を簡単に行えるようにすることができる。
【0015】
切欠26の切欠底端面27はコア2の先端面20、後端面21と平行な端面になっている。また、前側端面30は繰出し方向S方向に軸線Jに対して傾斜しており、前側端面30と切欠底端面27とがなす角度θ2は直角以下となっている。即ちθ2<90°になっている。
一方後側端面31と切欠底端面27とがなす角度は鈍角、即ちθ3>90°となっている。
【0016】
上記した前側端面30と切欠底端面27のなす鋭角部分が係合部35になっており、この係合部35に前記装着軸4の突起45が係合するようになっている。
【0017】
図9と図10に係合状態を示す。
図9はプラテン6によりロール紙1が引っ張られ、繰り出される時の状態を示すもので、コア2が繰出し方向Sに回転すると、係合部35が突起45に係合し、回転部42もコア2と共に繰出し方向Sに回転し、ロール紙1が順次繰り出される。
この時、図9に示すように、係合部35に働く力をA、係合部35が突起45を押す力をBとすると、軸線J方向に突起を押付ける力の反作用Cがコア2の装着軸4からの抜けを防止する力となって働く。この構成により、ロール紙1は装着軸4に確実に装着され、繰り出し動作中に抜けなどが生ずることがない。
【0018】
図10はプラテン6が逆転し、回転部42がスプリング43により逆回転する場合の状態を示している。この場合は、突起45に働く力をA’、係合部35が突起45を押す力をB’、とすると抜けを防止する力C’が働く。即ち突起45が係合部35を押し、その分力が係合部35と突起45の係合を保持する方向に働くため、同様にロール紙1は装着軸4に確実に装着され、繰り出し動作中に抜けなどが生ずることがない。
【0019】
動作を説明する。
コア2に装着されたロール紙1を装着軸4に装着する。この際に先端面20側から装着軸4に装着すれば、先端面20側にはツメ25が形成されているため、簡単に装着が行える。プラテン6によりロール紙1が引っ張られると、コア2が回転し、係合部35が突起45と係合し、回転部42が回転して繰り出しが行われる。該係合部35と突起45の係合は自動的に行われるため、従来のように切欠の位置あわせなどを必要としない。
繰り出し動作中は係合部35において、コア2を固定端40側に押す力が働くため、コア2の抜けが防止される。
【0020】
また、装着軸4が逆転する時も係合部35において、コア2を固定端40側に押す力が働くため、コア2の抜けが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略斜視図。
【図2】本発明の一実施形態を示す模式図。
【図3】本発明の一実施形態の装着軸4の説明図。
【図4】本発明の一実施形態におけるロール紙1と装着軸4の装着状態の説明図。
【図5】本発明の一実施形態におけるロール紙1の概略斜視図。
【図6】本発明の一実施形態におけるコア2の斜視図。
【図7】本発明の一実施形態におけるコア2の正面図。
【図8】本発明の一実施形態におけるコア2の側面図。
【図9】本発明の一実施形態の動作説明図。
【図10】本発明の一実施形態の動作説明図。
【符号の説明】
【0022】
1:ロール紙、2:コア、4:装着軸、6:プラテン、7:印刷ヘッド、8:剥離部、9:貼着部、10:台紙、11:ラベル、20:先端面、21:後端面、25:ツメ、26:切欠、27:切欠底端面、30:前側端面、31:後側端面、35:係合部、40:固定端、41:開放端、42:回転部、43:スプリング、44:保持リング、45:突起、70:インクリボン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれたロール状印刷対象物と、該ロール状印刷対象物を回転可能に装着し支持し、一端側が固定支持された固定端であり他端側が開放された開放端である装着軸と、該ロール状印刷対象物を把持して繰り出す繰り出し装置と、該繰り出された印刷対象物を印刷する印刷部と、を備えた印刷装置において、
前記ロール状印刷対象物を装着し、前記装着軸に該装着軸の開放端側から嵌挿される円筒形のコアと、
該装着軸への嵌挿時に先に嵌挿されるコアの先端側に形成され、該コアの軸線方向に伸びる複数のツメと、
前記装着軸に設けられ、前記ツメと係合する突起と、を備え、
前記ロール状印刷対象物とコアは前記繰り出し装置による繰り出しにより、繰り出し方向に回動し、
前記ツメは、コアの軸線に対してコアの先端側方向に向けて互いに接近するように傾斜する2つの側端面を有し、該側端面の中の前記繰り出し方向側の側端面は該繰り出し方向側にコアの軸線に対して傾斜する、
印刷装置。
【請求項2】
前記ツメは、コアの先端部を切り欠いて形成され、該ツメはコアと一体的である、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置は、
前記繰り出された印刷対象物を繰り出し方向と逆方向に戻す戻し装置と、
該戻し装置による戻しの際にロール状の印刷対象物に巻取り方向のテンションを掛ける引張装置と、
を更に備えた請求項1又は2の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−113270(P2009−113270A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287161(P2007−287161)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591101032)株式会社オートニクス (4)
【Fターム(参考)】