説明

印刷装置

【課題】インキの消費を抑えつつも、より確実にゴースト画像の発生を抑えられる印刷装置を提案する。
【解決手段】1つの版64に対し第1の製版画像と第2の製版画像を並べて、あるいは2面分の画像領域を有する第3の製版画像を製版する製版部3と、製版された版を巻装された版胴12に対して印圧部材13を接離動作することで用紙Pに印刷を行う印刷部2を有し、第1と第2の製版画像の両面印刷機能、何れかの画像の片面選択印刷機能、第3の製版画像の片面印刷機能を備えた印刷装置において、製版の画像領域を記憶する記憶手段と、印刷終了後の経過時間を計測する計測手段と、計測手段で計測された経過時間が予め設定された設定時間を経過したか否かを判定し、設定時間を経過した場合には設定時間経過後に実行される製版時において記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に限定して製版を行うように製版部3の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚の版に第1の製版画像と第2の製版画像を製版可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
簡便な印刷方式としてデジタル式感熱孔版印刷装置が良く知られている。このような孔版印刷装置は、版となるマスタのフィルム面を、製版部を構成する微細な発熱素子が一列に配置されたサーマルヘッドに接触させ、その発熱素子にパルス的に通電しながら搬送し、画像情報に応じて溶融穿孔させ、この穿孔製版された製版済マスタを、多孔性円筒状の支持体と樹脂若しくは金属繊維の網体であるメッシュスクリーン層とから構成される印刷ドラムの外周面に巻装し、製版済マスタを介して版胴に対して用紙をプレスローラ等の押圧部材で押圧し、ドラム開孔部、製版済マスタの穿孔部を介して滲み出たインキを用紙に転移させて印刷を行うように構成されている。
このような孔版印刷装置においては、製版済マスタの穿孔された部分、すなわち画像形成部分においては常にインキが消費されるが、穿孔されていなくて画像の形成されていない非画像形成部分においてはインキが全く消費されないので、非画像形成部分には、常にインキが消費される画像形成部分に比べて、多量のインキが溜ってしまう。非画像形成部分は、この状態で印刷中、プレスローラとインキローラとに挾まれてその押圧力を受けるので、大量に又は長時間印刷を続けるとその部分のインキが軟化して、インキの流動性が良くなってしまう。
印刷が終了し、新しい原稿をセットして次のマスタが穿孔製版され、この次の製版済マスタが版胴に巻装された時に、次の製版済マスタの画像形成部分が前の製版済マスタの非画像形成部分に重ねて装着されると、前の製版済マスタの非画像形成部分に溜った、流動性の高くなったインキにより、その部分のインキが多く滲み出てしまうので、次の製版済マスタの画像形成部分の画像濃度が高くなり前の製版済マスタの画像形成部分が、例えば白黒印刷の場合その白黒印刷部分が反転してゴースト画像となる不具合があった。
そこで、特許文献1においては、印刷ドラムの外周面あるいは内周面に適宜、ローラやブレード部材を接触させた状態で印刷ドラムを回転させることで、印刷ドラムの流動性の高くなったインキの均一化を図って、ゴースト画像の低減を図っている。
【0003】
【特許文献1】特許第3143281号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、消費されなくなって流動性の高くなったインキの均一化を図るために、ローラやブレード部材を接触させた状態で印刷ドラムを回転させているので、ローラやブレード部材によってインキがドラム内周面から押し出されて廃棄される製版済みのマスタに付着して消費されてしまうので、インキ消費量が多くなってしまう。
また、ローラやブレード部材によってインキの均一化を図る場合、製版画像があった場所となかった場所でのインキの状態には差があるため、均一化するためには多くの時間を要してしまうとともに、ゴースト画像の発生を十分に抑制するには至らない場合もある。
本発明は、インキの消費を抑えつつも、より確実にゴースト画像の発生を抑えられる印刷装置を提案することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明に係る、1つの版に対して第1の製版画像と第2の製版画像を並べて、あるいは第1の製版画像と第2の製版画像の2面分の画像領域を有する第3の製版画像を製版する製版部と、前記製版部で製版された版を外周面に巻装された印刷ドラムに対して印圧部材を接離動作することで、前記印刷ドラムと印圧部材との間に搬送される用紙に印刷を行う印刷部とを有し、前記用紙の異なる面にそれぞれ第1の製版画像と第2の製版画像を連続して印刷する両面印刷機能、第1の製版画像と第2の製版画像の何れかを選択して用紙の片面に印刷する片面選択印刷機能、第3の製版画像のみが製版された版を用いて用紙の片面に印刷する片面印刷機能を備えた印刷装置では、版に対して行われた製版の画像領域を記憶する記憶手段と、版を用いた印刷終了後の経過時間を計測する計測手段と、計測手段で計測された経過時間が予め設定された設定時間を経過したか否かを判定し、設定時間を経過した場合には設定時間経過後に実行される製版時において記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に限定して製版を行うように、製版部の作動を制御する制御手段を有することを特徴としている。このような構成により、前回の製版画像を用いた印刷時のインキ画像が残っている印刷ドラムの領域に、新たな版に製版された製版画像が位置しなくなる。
【0006】
本発明に係る印刷装置において、制御手段は、設定時間経過後に実行される製版時における当該製版動作の開始前に、記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に対してのみ印圧を与えるように印圧部材の接離動作を制御するとともに、印圧部材により印刷ドラムに印圧を与えた状態で、当該印刷ドラムを複数回回転させるように、印刷ドラムの駆動源の作動を制御することを特徴としている。
【0007】
本発明に係る印刷装置は、印刷設定枚数を入力する入力手段を有し、制御手段が、入力手段から入力される設定時間経過後に実行される印刷時の印刷設定枚数が、予め設定された最低印刷枚数に満たない場合には前記最低印刷枚数の印刷を実行するように前記印刷部の作動を制御することを特徴としている。
本発明に係る印刷装置において、最低印刷枚数の印刷を実行する場合には、その印刷を両面印刷に制限することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、計測手段で計測された印刷終了後の経過時間が予め設定された設定時間を経過した場合には設定時間経過後に実行される製版時に、記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に限定して製版を行うので、前回の製版画像を用いた印刷時のインキ画像が残っている印刷ドラムの領域に、新たな版に製版された製版画像が位置しなくなる。このため、新たな版による印刷時に、前回の印刷時のインキ画像が印刷されることがなくなり、残像(ゴースト)の発生を防止することができる。また、従来のようにローラやブレードなどで印刷ドラムのインキの均一化を図らないので、版に付着して廃棄されるインキ量を少なくできインキ消費量を低減することができる。
【0009】
本発明によれば、設定時間経過後に実行される製版時における当該製版動作の開始前に、記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に対してのみ印圧が与えられた状態で印刷ドラムが複数回回転することで、印刷ドラムの回転により前回の印刷時の残インキが他のインキと混合されてインキの均一化を図れるので、従来のように、版に付着して廃棄されるインキ量を少なくできインキ消費量を低減することができる。
【0010】
本発明によれば、入力手段から入力される設定時間経過後に実行される印刷時の印刷設定枚数が、予め設定された最低印刷枚数に満たない場合には最低印刷枚数の印刷が実行されるので、入力された印刷枚数に関わらず、印刷ドラムが予め設定された最低印刷枚数分だけ回転するので、印刷ドラムの回転により前回の印刷時の残インキが他のインキと混合されてインキの均一化を図れるので、従来のように、版に付着して廃棄されるインキ量を少なくできインキ消費量を低減することができる。
【0011】
本発明によれば、設定時間経過後に実行される印刷を両面印刷に制限することで、片面印刷時と同一枚数の印刷を行う場合、印刷ドラムの回転数を増加することができ、よりインキの画像ムラを均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。本形態に係る印刷装置は、特許第3940036号に記載の両面印刷装置1同様なメカ的構成を採る。以下、詳細な構成は特許第3940036号の記載内容を参酌するものとして、両面印刷装置1の基本構成と動作について説明する。
【0013】
図1に示す両面印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、補助トレイ8、再給紙手段9、切換部材10等を有している。印刷部2は、装置本体11の略中央に配設され、印刷ドラムとなる版胴12と印圧部材となるプレスローラ13とを有している。
【0014】
両面印刷装置1は、用紙Pの異なる面となる表面と裏面に、それぞれ図6(a)に示すような第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bとが形成された版となる製版済みマスタ65を用いて、第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bを連続して印刷する両面印刷機能、図6(b)に示すような第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bとの2面分の画像領域を有する第3の製版画像66Aのみが製版された版となる製版済みマスタ66を用いて用紙Pの片面に印刷する片面印刷機能と、図7(a)に示すような第1の製版画像65Aまたは図7(b)に示すような第2の製版画像65Bが形成された版となる製版済マスタ67を用いて用紙Pの片面に印刷する片面選択印刷機能を備えている。
【0015】
版胴12は、インキ供給パイプを兼ねた支軸14に回転自在に支持された図示しない一対の端板と、各端板の外周面に巻装された図示しない多孔性支持板と、図示しない多孔性支持板の外周面に巻装された図示しないメッシュスクリーンとから主に構成されており、駆動源となる版胴駆動手段121(図9参照)によって回転駆動される。本形態において版胴12は、片面印刷時において最大でA3サイズの印刷物を得ることが可能な大きさを有している。
【0016】
版胴12の内部にはインキ供給手段15が配設されている。インキ供給手段15は、インキ供給穴が形成された支軸14と、周知のインキローラ16とドクターローラ17を有し、支軸14から供給されたインキがインキローラ16とドクターローラ17との近接部に形成される断面楔形状の空間に溜まることによりインキ溜まり18が形成される。
【0017】
版胴12の外周面上には、版胴12の一母線に沿った平面をなすステージ部19aが形成されており、この上には版胴12の外周面上に後述する版となるマスタ64の先端を保持するクランパ19bが配設されている。
【0018】
版胴12の下方にはプレスローラ13が配設されている。プレスローラ13は金属製の芯部13aにゴム等の弾性体を巻成して構成されており、版胴12の軸方向に延在して設けられている。プレスローラ13は、図2に示すように芯部13aの両端部を一対のアーム部材20によって回転自在に支持されている。ほぼL字形状を呈する各アーム部材20は、その曲折部近傍の部位に取り付けられた揺動軸21によってそれぞれ一体化されており、揺動軸21は装置本体11によって回動自在に支持されている。本実施例においてプレスローラ13は、少なくともその周面がポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性を有する部材によって構成されている。各アーム部材20間には、プレスローラ13の他、再給紙案内部材22、再給紙レジストローラ23、再給紙位置決め部材24、再給紙搬送ユニット25、クリーニングローラ26、ガイド板27等が設けられている。
【0019】
プレスローラ13の右方近傍に配設された再給紙案内部材22は、各支軸28a,29a,30a上にそれぞれ一体的に設けられそれぞれの周面をプレスローラ13の周面に圧接させた複数のころ状のローラ28,29,30と、表面印刷済み用紙PAをプレスローラ13の周面に沿わせるための曲面状に形成された用紙ガイド板31とを有している。各支軸28a,29a,30aはそれぞれの両端部を各アーム部材20に回転自在に支持されており、図示しない付勢手段によってそれぞれ芯部13aに向けて付勢されている。各ローラ28,29,30は、対応する支軸28a,29a,30aに、プレスローラ13のほぼ全幅にわたってそれぞれ所定の間隔をもって一体的に取り付けられている。
【0020】
用紙ガイド板31はプレスローラ13の周面から各ローラ28,29,30の半径よりも小さな距離である所定距離だけ離れた位置に配設されており、その両端部を各アーム部材20に固着されている。用紙ガイド板31は芯部13aを中心とした曲面となるように形成されており、用紙ガイド板31には各ローラ28,29,30の周面をプレスローラ13の周面に当接させるための図示しない複数の開口部が形成されている。
【0021】
プレスローラ13の下方には再給紙レジストローラ23が配設されている。再給紙レジストローラ23は支軸23aに回転自在に支持されており、支軸23aは揺動アーム32の一端に取り付けられている。略へ字形状を呈する揺動アーム32は、各アーム部材20間に固設された支軸32aにその曲折部を揺動自在に支持されており、その配設位置は再給紙レジストローラ23がプレスローラ13の幅方向のほぼ中央部に位置し、かつ自身が各ローラ30の配設位置の中間に位置するように定められている。
【0022】
揺動アーム32の他端には、図示しないブラケットを介して一方のアーム部材20に取り付けられたソレノイド33のプランジャ33aと、一端を一方のアーム部材20に固着され揺動アーム32に対して支軸32aを中心に図2において反時計回り方向への回動付勢力を付与する引張ばね34の他端とが取り付けられている。この構成より再給紙レジストローラ23は、ソレノイド33が作動されるとその周面を所定の圧接力でプレスローラ13の周面に圧接する図2に実線で示す圧接位置を占め、ソレノイド33の作動が解除されると引張ばね34の付勢力によってその周面がプレスローラ13の周面から離間する図2に二点鎖線で示す離間位置を占める。
【0023】
プレスローラ13の左下方には再給紙搬送ユニット25が配設されている。再給紙搬送ユニット25は、搬送ユニット本体35、駆動ローラ36、従動ローラ37、用紙搬送部材としての無端ベルト38、吸引ファン39等を有しており、その上面に補助トレイ8を一体的に有している。
【0024】
上面が開放され、その幅が各アーム部材20間の間隔よりも若干小さくなるように形成された筐体である搬送ユニット本体35は、その用紙搬送方向上流側及び下流側の両側面に図示しない軸受を有しており、図示しない各軸受は駆動軸36a及び従動軸37aをそれぞれ回転自在に支持している。駆動軸36aはその両端部が搬送部材本体35の両側面を貫通しており、貫通した両端部は装置本体11に設けられた図示しない軸受部材によって回転自在に支持されている。また、駆動軸36aの一端には図示しない駆動ギヤが取り付けられており、駆動軸36aは装置本体11に設けられた搬送ユニット駆動モータ122(図9参照)によって回転駆動される。従動軸37aはその両端部が搬送ユニット本体35の両側面を貫通しないように構成されている。
【0025】
搬送ユニット本体35の用紙搬送方向上流側端部の両側面外側にはボス35aがそれぞれ一体的に設けられており、各ボス35aは各アーム部材20に形成された図示しない長穴にそれぞれ嵌合されている。この構成より搬送ユニット本体35は、後述するプレスローラ接離機構55によりプレスローラ13が版胴12に対して接離される際に、各アーム部材20の揺動に伴って駆動軸36aを中心とした揺動が可能となっている。
【0026】
複数の駆動ローラ36はそれぞれ駆動軸36aに一体的に取り付けられており、各駆動ローラ36間にはそれぞれ所定の間隔が設けられている。駆動ローラ36と同形状である複数の従動ローラ37は、各駆動ローラ36と同じ間隔でそれぞれ従動軸37aに一体的に取り付けられている。各駆動ローラ36とこれに対応した各従動ローラ37との間には、無端ベルト38が所定の張力でそれぞれ掛け渡されている。摩擦抵抗部材からなる無端ベルト38は、搬送ユニット駆動モータ122によって駆動軸36aが回転駆動されることにより図2に矢印で示す方向に移動される。
【0027】
搬送ユニット本体35の下面には吸引ファン39が一体的に取り付けられており、搬送ユニット本体35の上面には補助トレイ8が一体的に取り付けられている。補助トレイ8は、図3に示すように各ローラ36,37の周面の一部が用紙搬送面に臨むように構成されており、用紙搬送面上の各無端ベルト38の両側部にはそれぞれ複数の開孔8bが穿設され、その用紙搬送方向下流側端部には印刷部2より送られた表面印刷済み用紙PAの一端を受け止めるための2個のエンドフェンス8aがそれぞれ一体的に設けられている。
【0028】
補助トレイ8の用紙搬送方向上流側端部には、再給紙搬送ユニット25によって印刷部2へと再給紙される表面印刷済み用紙PAの他端を定位置で一時停止させるための再給紙位置決め部材24が配設されている。本形態において再給紙位置決め部材24は2個設けられており、それぞれ補助トレイ8に一体的に取り付けられている。補助トレイ8には、表面印刷済み用紙PAの他端が再給紙位置決め部材24に近接したことを検知する表面印刷済み用紙検知部材としてのセンサ8cが配設されている。センサ8cは、表面印刷済み用紙PAの他端を検知した際に後述する制御手段129(図9参照)へ向けて信号を出力する。
【0029】
吸引ファン39の取付面である搬送ユニット本体35の下面には図示しない穴部が設けられており、これにより吸引ファン39が作動することで筐体である搬送ユニット本体35の内部に負圧を発生させ、移動する各無端ベルト38の上面に表面印刷済み用紙PAを吸引させる。吸引ファン39の吸引力及び無端ベルト38の摩擦抵抗力は、表面印刷済み用紙PAの他端が再給紙位置決め部材24に当接した際に、表面印刷済み用紙PAと各無端ベルト38との間で滑りが発生する程度の強さにそれぞれ設定されている。
上述した補助トレイ8、再給紙案内部材22、再給紙レジストローラ23、再給紙位置決め部材24、及び再給紙搬送ユニット25によって再給紙手段9が構成されている。
【0030】
プレスローラ13の近傍であって再給紙搬送ユニット25の上方に位置する部位には、プレスローラ13の周面をクリーニングするクリーニングローラ26が配設されている。プレスローラ13の幅とほぼ同じ幅を有するクリーニングローラ26は、少なくともその表面が和紙やスポンジ等の吸湿性の高い材質によって構成されており、その中心に芯部26aを一体的に有している。クリーニングローラ26は芯部26aを各アーム部材20に形成された図示しない長穴に嵌合されることで回転自在に支持されており、この長穴内に設けられた図示しない付勢手段によってプレスローラ13に向けて付勢され、その周面をプレスローラ13の周面に所定の圧接力で常時圧接されている。クリーニングローラ26は、一方のアーム部材20に設けられた図示しないクリーニングローラ駆動手段によって、プレスローラ13の回転時においてプレスローラ13と同方向に、プレスローラ13の周速度の10分の1程度の周速度で回転駆動される。
【0031】
クリーニングローラ26の左上方にはガイド板27が配設されている。板材であるガイド板27はその両端部を各アーム部材20に固設されており、印刷部2より送られる表面印刷済み用紙PAがクリーニングローラ26に触れないように、かつ補助トレイ8に向かうように案内する。ガイド板27はプレスローラ13及びクリーニングローラ26の各周面に近接する位置に配設されている。
【0032】
各アーム部材20の、プレスローラ13が支持された一端側と対向する他端側には、それぞれ回転自在なカムフォロア41が互いに外側を向く態様で配設されている。また、各アーム部材20のカムフォロア41が配設された位置の近傍には、一端を装置本体11に固着された印圧ばね42の他端がそれぞれ取り付けられている。これにより各アーム部材20は、揺動軸21を中心に図において時計回り方向への回動付勢力をそれぞれ付与されている。
【0033】
各カムフォロア41の左方近傍には、3枚のカム板43A,43B,43Cを有する多段カム43がそれぞれ配設されている。各カム板43A,43B,43Cは、両端を装置本体11に回転自在かつ図2の紙面方向に移動自在に支持されたカム軸44にそれぞれ所定の間隙をもって固着されており、装置手前側からカム板43B、カム板43A、カム板43Cの順に配設されている。各カム板43A,43B,43Cは、カム軸44と同心の円板である基部とそれぞれ同一突出量の凸部とを有している。多段カム43は、図4に示すように、カム軸44に取り付けられた駆動ギヤ45及び装置本体11に回転自在に支持された支軸46に取り付けられた伝達ギヤ47を介して版胴駆動手段121からの回転力を伝達され、図2において時計回り方向に回転駆動される。
【0034】
プレスローラ13は、各カム板43A,43B,43Cの何れかの凸部がカムフォロア41と当接したときにその周面が版胴12の周面より離間する図2に示す離間位置を占め、何れかの凸部とカムフォロア41との当接が解除されたときに印圧ばね42の付勢力によってその周面が版胴12の周面に圧接する図5に示す圧接位置を占める。各カム板43A,43B,43Cは、プレスローラ13が圧接位置を占めたときにその基部とカムフォロア41とが接触しないように構成されている。各カム板43A,43B,43Cの凸部の形状は、プレスローラ13と版胴12との接触範囲が、カム板43Aでは図1に示す表面領域と中間領域と裏面領域とを全て合わせた範囲となるように、カム板43Bでは表面領域と同じ範囲となるように、カム板43Cでは表面領域の下流側部分と中間領域と裏面領域とを合わせた範囲となるようにそれぞれ形成されている。また、各カム板43A,43B,43C間の間隔は、アーム部材20の板厚よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0035】
図2において、各アーム部材20の右方近傍には、プレスローラ13が離間位置を占めた状態で各アーム部材20の揺動を禁止する、図示しないプレスローラ係止手段が配設されている。図示しないプレスローラ係止手段は図示しないソレノイドを有しており、この図示しないソレノイドのオン・オフの切り換えによって各アーム部材20を保持する状態と保持を解除する状態とが選択的に切り換えられる。図示しないソレノイドは、カムフォロア41が各カム板43A,43B,43Cの何れかの凸部と当接した状態で作動される。
【0036】
カム軸44の下方近傍には、図4に示すように移動アーム48と段差カム49とが配設されている。ほぼL字形状を呈する移動アーム48は、装置本体11に回転自在に支持された支軸48aにその曲折部を取り付けられており、移動アーム48の一端にはローラ48bが、また他端にはカムフォロア48cがそれぞれ回転自在に取り付けられている。さらに移動アーム48の他端と曲折部との間の部位には、一端を装置本体11に取り付けられた引張ばね50の他端が取り付けられており、移動アーム48には支軸48aを中心に、図において時計回り方向への回動付勢力が付与されている。
【0037】
ローラ48bはカム軸44の中程に間隔をおいて固着された円板44a,44b間に配置されており、カムフォロア48cは引張ばね50の付勢力によってその周面を段差カム49の周面に当接させている。各円板44a,44b間の間隔は、ローラ48bの直径よりも僅かに大きくなるように設定されている。
【0038】
段差カム49はその周面に3箇所のカム部49a,49b,49cを有しており、装置本体11に回転自在に支持された支軸51に固着されている。支軸51には、装置本体11に取り付けられたステッピングモータ52の出力軸に取り付けられたギヤ53と噛合するギヤ54が取り付けられており、ステッピングモータ52の作動により段差カム49は図4の矢印方向に回転駆動される。この構成より、ステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転すると移動アーム48が支軸48aを中心に揺動し、ローラ48bが円板44aあるいは円板44bを押すことでカム軸44が図4の左右方向に移動する。
【0039】
各カム部49a,49b,49cは、カムフォロア48cとカム部49aとが当接したときにカム板43Bがカムフォロア41と当接可能位置となるように、カムフォロア48cとカム部49bとが当接したときにカム板43Aがカムフォロア41と当接可能位置となるように、カムフォロア48cとカム部49cとが当接したときにカム板43Cがカムフォロア41と当接可能位置となるようにカム軸44を移動させる形状にそれぞれ形成されている。
【0040】
上述したカムフォロア41、印圧ばね42、多段カム43、図示しないプレスローラ係止手段、移動アーム48、段差カム49によってプレスローラ接離機構55が構成されており、このプレスローラ接離機構55の作動によってプレスローラ13は図2に示す離間位置と図5に示す圧接位置とを選択的に占める。
【0041】
版胴12とプレスローラ13との接触位置の左方であって用紙Pの搬送経路上には、用紙Pの搬送経路を切り換える切換部材10が配設されている。版胴12及びプレスローラ13とほぼ同じ幅を有する板材からなる切換部材10は、その用紙搬送方向下流側端部を装置本体11に回動自在に支持された支軸に固着されており、ソレノイド123(図9参照)が作動することによって断面鋭角状に形成された用紙搬送方向上流側端部を図1に実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置とに選択的に位置決めされる。
【0042】
切換部材10は、第1の位置を占めたときにその先端がプレスローラ13の周面に近接すると共に版胴12上のクランパ19bと干渉しない位置に置かれ、第2の位置を占めたときにその先端が版胴12の周面に近接する位置に置かれる。版胴12とプレスローラ13との間を通過した表面印刷済み用紙PAは、切換部材10が第1の位置を占めたときに排紙部6へと案内され、切換部材10が第2の位置を占めたときにガイド板27と装置本体11に固着されたガイド板56との間を通って補助トレイ8へと案内される。
【0043】
図1に示すように、装置本体11の右上部には製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ保持部材57,プラテンローラ58,サーマルヘッド59,切断手段60,マスタストック部61,テンションローラ対62,反転ローラ対63等を有している。製版部3は後述する版となるマスタ64に製版を行い、図6(a)に示すような第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bとを有する製版済みマスタ65、図6(b)に示すような第3の製版画像66Aを有する製版済みマスタ66、あるいは図7(a)、図7(b)に示す第1の製版画像65Aまたは第2の製版画像65Bが製版された製版済みマスタ67を作成する。第1の製版画像65Aは、製版済みマスタ65が版胴12の外周面上に巻装されたときに図1に示す表面領域と対応する位置に形成され、第2の製版画像65Bは裏面領域と対応する位置に形成される。マスタ保持部材57は、製版部3の図示しない側板対にそれぞれ設けられており、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせたマスタ64をロール状に巻成してなるマスタロール64aの芯部64bの両端を回転自在かつ着脱自在に支持する。
【0044】
マスタ保持部材57の左方に設けられたプラテンローラ58は製版部3の図示しない側板に回転自在に支持されており、ステッピングモータを含む製版駆動手段124(図9参照)によって回転駆動される。プラテンローラ58の下方に位置し多数の発熱素子を有するサーマルヘッド59も製版部3の図示しない側板に取り付けられており、図示しない付勢手段の付勢力によってその発熱素子面をプラテンローラ58に圧接されている。サーマルヘッド59はマスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に接触しつつ発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ64に対して熱溶融穿孔製版を行う。
【0045】
プラテンローラ58及びサーマルヘッド59の左方には切断手段60が配設されている。製版部3の図示しないフレームに固設された固定刃60aと、この固定刃60aに移動自在に支持された可動刃60bとを有する切断手段60は、固定刃60aに対して可動刃60bが回転移動することによりマスタ64を切断する周知の構成である。
【0046】
切断手段60のマスタ搬送方向下流側下方にはマスタストック部61が配設されている。製版済みマスタ65あるいは製版済みマスタ66を一時的に貯容する空間であるマスタストック部61は複数の板部材によってその内部を仕切られており、その最奥部には図示しない吸引ファンが配設されている。この吸引ファンが作動することにより密閉された空間であるマスタストック部61の内部に負圧が発生し、製版搬送されてきた製版済みマスタ65あるいは製版済みマスタ66はマスタストック部61の最奥部に向けて貯容される。
【0047】
切断手段60とマスタストック部61との間の部位にはテンションローラ対62が配設されている。それぞれ製版部3の図示しない側板に回転自在に支持された駆動ローラ62aと従動ローラ62bとからなるテンションローラ対62は、従動ローラ62bが図示しない付勢手段によってその周面を駆動ローラ62aの周面に圧接されており、製版駆動手段124(図9参照)によって駆動ローラ62aが回転駆動されることによりマスタ64を挟持して搬送する。駆動ローラ62aは、その周速度がプラテンローラ58の周速度よりも若干速く設定されていると共にその内部には図示しないトルクリミッタが設けられており、プラテンローラ58とテンションローラ対62との間においてマスタ64に対して所定の張力が付与されるように構成されている。
【0048】
マスタストック部61のマスタ搬送方向下流側には、それぞれ製版部3の図示しない側板に回転自在に支持された駆動ローラ63aと従動ローラ63bとからなる反転ローラ対63が配設されている。反転ローラ対63は、製版駆動手段124によって回転駆動される駆動ローラ63aと、図示しない付勢手段によってこれに圧接配置された従動ローラ63bとによってマスタ64を挟持して搬送する。駆動ローラ63aの内部には図示しないワンウェイクラッチが設けられている。
また、テンションローラ対62と反転ローラ対63との間の部位には、図示しない可動マスタガイド板が配設されている。この可動マスタガイド板は図示しない支持部材に揺動自在に支持されており、図示しないソレノイドによってその上面がマスタ64の搬送路を構成する搬送位置と、マスタ64のマスタストック部61への進入を妨げない退避位置とに選択的に位置決めされる。
【0049】
製版部3の下方には給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙トレイ670、給紙ローラ68、分離ローラ69、分離パッド70、レジストローラ対71等を有している。上面に多数の用紙Pを積載可能な給紙トレイ670は装置本体11に上下動自在に支持されており、昇降手段を含む給紙駆動手段125(図9参照)によって上下動される。A3サイズの用紙Pを縦置き可能な給紙トレイ670の上面には、図示しないレール部材によって用紙搬送方向と直行する用紙幅方向に移動自在に支持された一対のサイドフェンス72が設けられている。また、給紙トレイ670の自由端部側には、積載された用紙Pのサイズを検知する複数の用紙サイズ 検知センサ73が設けられている。
【0050】
給紙トレイ670の上方には、給紙ローラ68が配設されている。給紙ローラ68は装置本体11に揺動自在に支持された図示しないブラケットに回転自在に支持されており、給紙トレイ670が図示しない昇降手段によって上昇されたときに所定の圧接力で給紙トレイ670上の最上位の用紙Pに圧接する。給紙ローラ68は給紙駆動手段125(図9参照)によって回転駆動される。給紙ローラ68の左方には、分離ローラ69と分離パッド70とが配設されている。分離ローラ69はタイミングベルト69aを介して給紙ローラ68に駆動連結されており、給紙ローラ68の回転駆動時にこれと同期して同方向に回転駆動される。分離パッド70は図示しない付勢手段の付勢力によって分離ローラ69に圧接されている。
【0051】
分離ローラ69及び分離パッド70の左方にはレジストローラ対71が配設されている。駆動ローラ71aと従動ローラ71bとからなるレジストローラ対71は、版胴駆動手段121からの回転駆動力をギヤやカム等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで駆動ローラ71aが版胴12と同期した所定のタイミングで回転し、駆動ローラ71aに圧接された従動ローラ71bとによって用紙Pを印刷部2に向けて所定のタイミングで給送する。
【0052】
印刷部2の左上方には排版部5が配設されている。排版部5は、上排版部材74、下排版部材75、排版ボックス76、圧縮板77等を有している。上排版部材74は、駆動ローラ78、従動ローラ79、無端ベルト80等を有し、排版駆動手段126(図9参照)によって駆動ローラ78が図の時計回り方向に回転駆動されることにより無端ベルト80が図1の矢印方向に移動する。下排版部材75は、駆動ローラ81、従動ローラ82、無端ベルト83等を有し、駆動ローラ78を回転駆動する排版駆動手段126の駆動力をギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで駆動ローラ81が図の反時計回り方向に回転駆動されることにより、無端ベルト83が図1の矢印方向に移動する。下排版部材75は排版駆動手段126に含まれる図示しない移動手段によって移動自在に設けられており、図に示す位置と従動ローラ82の外周面上に位置する無端ベルト83が版胴12の外周面に当接する位置とを選択的に占める。
【0053】
内部に使用済みマスタ64cを貯容する排版ボックス76は、装置本体11に対して着脱自在に設けられている。上排版部材74と下排版部材75とによって運ばれた使用済みマスタ64cを排版ボックス76の内部に押し込む圧縮板77は装置本体11に上下動自在に支持されており、排版駆動手段126に含まれる図示しない昇降手段によって上下動される。
【0054】
排版部5の下方には排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪84、排紙搬送ユニット85、排紙トレイ86等を有している。
剥離爪84は版胴12の幅方向に複数配置され、装置本体11に揺動自在に支持された支軸にそれぞれ一体的に取り付けられている。複数の剥離爪84は図示しない爪揺動手段によって揺動され、その先端が版胴12の周面に近接する図に示す位置と、クランパ19b等の障害物を回避するためにその先端が版胴12の外周面から離間する位置とを選択的に占める。図示しない爪揺動手段は、版胴駆動手段121からの駆動力を図示しない駆動力伝達手段により伝達され、版胴12の回転と同期して剥離爪84を揺動させる。
【0055】
剥離爪84の下方であって切換部材10の左方に配設された排紙搬送ユニット85は、駆動ローラ87、従動ローラ88、無端ベルト89、吸引ファン90等を有している。ころ状の駆動ローラ87は図示しないユニット側板に回転自在に支持された図示しない支軸に所定の間隔で複数取り付けられており、排紙駆動手段127(図9参照)によってそれぞれ一体的に回転駆動される。従動ローラ88も同側板に回転自在に支持された図示しない支軸に各駆動ローラ87と等間隔で複数設けられており、各駆動ローラ87及びこれと対応する各従動ローラ88には無端ベルト89がそれぞれ掛け渡されている。駆動ローラ87、従動ローラ88、無端ベルト89の下方には吸引ファン90が配設されている。排紙搬送ユニット85は、吸引ファン90の吸引力によって各無端ベルト89上に用紙Pを吸引し、各駆動ローラ87の回転によって印刷済み用紙PBを図1の矢印方向に搬送する。排紙搬送ユニット85によって搬送された印刷済み用紙PBをその上面に積載する排紙トレイ86は、用紙搬送方向に移動自在な1個のエンドフェンス91と用紙幅方向に移動自在な一対のサイドフェンス92とを有している。
【0056】
装置本体11の上部には画像読取部7が配設されている。画像読取部7は、原稿を載置するコンタクトガラス93、コンタクトガラス93に対して接離自在に設けられた圧板94、原稿画像を走査して読み取る反射ミラー95,96,97,98及び蛍光灯99、走査された原稿画像を集束するレンズ100、集束された画像を処理するCCD等の画像センサ101、原稿のサイズを検知する複数の原稿サイズ検知センサ102、読み取られた画像データを記憶する画像メモリ135等を有しており、原稿画像の読取動作は読取駆動手段128(図9参照)の作動によって行われる。
【0057】
図1に示すように、版胴12を構成する図示しない端板の外面にはドグ133が取り付けられており、版胴12の周囲近傍には装置本体11に取り付けられたホームポジションセンサ134が配設されている。ホームポジションセンサ134は、クランパ19bがプレスローラ13と対向する位置を版胴12が占めたときにドグ133を検知して後述する制御手段129に向けて信号を出力する。
【0058】
図8は両面印刷装置1の操作パネルを示している。同図において装置本体11の上部前面に設けられた操作パネル103は、その上面に製版スタートキー104、印刷スタートキー105、クリア/ストップキー108、入力手段となるテンキー109、セキュリティーモード設定キー110、製版画像位置設定手段となる製版位置設定キー111,112、両面印刷キー117、片面印刷キー118、7セグメントLEDからなる表示装置119、LCDからなる表示装置120等を有している。
【0059】
製版スタートキー104は両面印刷装置1に製版動作を行わせる際に押下され、製版スタートキー104が押下されると排版動作及び原稿読取動作が行われた後に製版動作が行われ、その後、版付け動作が行われて両面印刷装置1は印刷待機状態となる。印刷スタートキー105は両面印刷装置1に印刷動作を行わせる際に押下され、両面印刷装置1が印刷待機状態となり各種印刷条件が設定された後に印刷スタートキー105が押下されることにより印刷動作が行われる。クリア/ストップキー108は両面印刷装置1の動作を停止させる際あるいは置数のクリア時に押下され、テンキー109は数値入力に用いられる。
【0060】
両面印刷キー117は、両面印刷装置1に両面印刷動作を行わせる際に製版スタートキー104の押下前に押下され、両面印刷キー117が押下されるとその近傍に配置されたLED117aが点灯してオペレータに両面印刷モードであることが表示される。片面印刷キー118も両面印刷キー117と同様に両面印刷装置1に片面印刷動作あるいは片面選択印刷動作を行わせる際にスタートキー104の押下前に押下され、片面印刷キー118が押下されるとその近傍に配置されたLED118aが点灯してオペレータに片面印刷モードであることが表示される。両面印刷装置1は初期状態時においてLED118aが点灯しており、片面印刷モードとなっている。
【0061】
7セグメントLEDからなる表示装置119は、主に印刷枚数等の数字を表示する。LCDからなる表示装置120は、図示したように「製版・プリントできます」のような両面印刷装置1の状態が表示される他、製版あるいは排版ジャム、給紙あるいは排紙ジャム等のアラーム、印刷用紙、マスタ、インキ等のサプライの供給指示等も表示される。
【0062】
セキュリティーモード設定キー110は、本発明特有の構成であり、オペレータによりセキュリティーモード設定キー110が押下されると、制御手段129は、セキュリティーモードを設定し、後述するセキュリティーモードの内容を実行する。製版位置設定キー111,112は、図10に示す第1の製版画像領域67Aあるいは第2の製版画像領域67Bの何れかの領域を選択し、選択された領域に第1の製版画像65A又は第2の製版画像65Bの何れの画像が製版される製版済みマスタ67を製版し、この製版済みマスタ67を用いた片面選択印刷モードで印刷する際に用いる。片面選択印刷モードは、片面印刷キー116が操作されて、製版位置設定キー111または製版位置設定キー112が操作されることで制御手段129に設定される。製版位置設定キー111は、第1の製版画像領域67Aに、製版位置設定キー112は第2の製版画像領域67Bに、製版画像を形成する際に操作される。
【0063】
図9は、両面印刷装置1に用いられる制御手段129のブロック図を示している。同図において制御手段129は、内部にCPU130、ROM131、RAM132を有する周知のマイクロコンピュータであり、装置本体11の内部に設けられている。制御手段129には、計測手段となるタイマ113と、製版部3で行われた製版の画像領域を記憶する記憶手段114とが接続されている。
【0064】
CPU130は、操作パネル103からの各種信号及び装置本体11に設けられた各種センサからの検知信号及びROM131から呼び出された動作プログラムに基づいて、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7に設けられた各駆動手段、再給紙手段9に設けられたソレノイド33及び搬送部材駆動モータ122、切換部材10を作動させるソレノイド123の作動等を制御し、両面印刷装置1全体の動作を制御する。ROM131には両面印刷装置1全体の動作プログラムとなる片面印刷モード、両面印刷モード、片面選択印刷モード及び本発明特有のモードとなるセキュリティーモード及び設定時間Тと版胴12の所定回転数Nが記憶されており、これら各プログラムや各種設定値は、CPU130によって適宜呼び出される。RAM132は、CPU130の計算結果やタイマ113による計測結果を一時的に記憶する機能、操作パネル103上の各種キー及び各種センサから設定及び入力されたデータ信号及びオン・オフ信号を随時記憶する機能等を有している。制御手段129は、ホームポジションセンサ134からのホームポジション信号と、版胴駆動手段121に設けられた図示しないエンコーダからの信号とに基づいて、版胴12の位置の把握も行っている。
【0065】
次に、セキュリティーモードの内容について説明する。制御手段129は、セキュリティーモード設定キー110が操作されてセキュリティーモードが設定されると、セキュリティーモードが設定された時の印刷終了後からタイマ113を作動して経過時間Т1を計測する。そして、計測された経過時間Т1が予め設定された設定時間Тを経過したか否かを判定し、設定時間Тを経過した場合には設定時間経過後に実行される製版時において記憶手段114に記憶されている製版領域以外の領域に限定して製版を行うように製版部3の作動を制御するとともに、設定時間Т経過後に実行される製版時における当該製版動作の開始前に、記憶手段114に記憶されている製版領域以外の領域に対してのみ印圧を与えるようにプレスローラ接離機構55の作動を制御することでプレスローラ13の接離動作を制御するとともに、プレスローラ13により版胴12に印圧を与えた状態で、版胴12を複数回回転、すなわち所定回転数Nだけ回転するように、版胴駆動手段121の作動を制御する。印刷終了後の判断は、入力された印刷設定枚数分の印刷枚数をカウントし、当該印刷枚数になったことで判定する。
【0066】
次に、上述の構成に基づき、両面印刷装置1の動作について説明する。オペレータは給紙トレイ670上に印刷に使用される用紙Pを積載し、圧板94を開放してコンタクトガラス93上に印刷すべき原稿を載置した後、再び圧板94を閉じる。その後、操作パネル103上の各種キーによって製版条件を設定した後、両面印刷キー117あるいは片面印刷キー118を押下して印刷モードを設定して製版スタートキー104を押下する。
(片面印刷動作)
先ず、片面印刷キー118を押下して片面印刷を行う場合を説明する。オペレータは片面印刷モードであることをLED118aの点灯によって確認した後、製版スタートキー104を押下する。製版スタートキー104が押下されると、用紙サイズ検知センサ73から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ102から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御手段129に送られ、信号を受けた制御手段129は各信号を比較する。このとき、用紙サイズと原稿サイズとが同じ場合は直ちに画像読取動作が行われ、用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合には、制御手段129はその旨を表示装置120に表示してオペレータに注意を促す。
【0067】
製版スタートキー104が押下されると、画像読取部7では原稿画像の読取動作が行われ、読取動作で読み取られた原稿画像はレンズ100で集束された後に画像センサ101に入射されて光電変換される。光電変換された電気信号は装置本体11内の図示しないA/D変換器に入力された後、画像メモリ135内に画像データ信号として格納される。
【0068】
画像読取部7での画像読取動作と並行して、排版部5では版胴12の外周面から使用済みマスタを剥離する排版動作が行われる。排版動作では、製版スタートキー104が押下されると版胴12が回転を開始し、版胴12が図1に示すホームポジションに達するとドグ133がホームポジションセンサ134に検知され、ホームポジションセンサ134から制御手段129に向けてホームポジション信号が送られる。ホームポジション信号を受けた制御手段129は、このホームポジションを基点として図示しないエンコーダが発するパルス数を計測し、版胴12の外周面上に巻装された使用済みマスタの先端が従動ローラ82の外周面上に位置する無端ベルト83と対応する所定の排版位置に達したと判断すると、版胴駆動手段121の作動を停止させる。そして、版胴12が所定の排版位置で停止すると、版胴駆動手段121及び排版駆動手段126を作動して版胴12を回転させつつ排版部5を作動して版胴12の外周面から使用済みマスタ64cを取り除いて排版ボックス76内に入れ、圧縮板77によって圧縮される。
【0069】
版胴12の外周面上より使用済みマスタ64cが全て剥離された後も版胴12は回転を継続し、クランパ19bが右上方に位置する所定の給版待機位置まで回転して停止する。版胴12が給版待機位置で停止すると図示しない開閉手段が作動してクランパ19bが開放され、両面印刷装置1は給版待機状態となる。
【0070】
排版動作と並行して、製版部3では製版動作が行われる。製版スタートキー104が押下されると、プラテンローラ58、テンションローラ対62、反転ローラ対63がそれぞれ回転駆動されてマスタロール64aよりマスタ64が引き出される。このとき図示しない可動マスタガイド板は搬送位置に位置決めされている。マスタ64が引き出されてその画像形成領域がサーマルヘッド59の発熱素子と対応する位置に達すると、画像メモリ135内に格納されている画像データ信号が画像処理を施された後に呼び出され、図示しないサーマルヘッドドライバがサーマルヘッド59の各発熱素子を選択的に発熱させることにより、マスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に第3製版画像66Aが形成される。マスタ64は製版されつつ搬送されその先端部が反転ローラ対63に挟持されると、図示しない可動マスタガイド板が退避位置に移動されると共に反転ローラ対63の回転が停止される。
【0071】
反転ローラ対63の回転停止後もプラテンローラ58及びテンションローラ対62は回転を継続しており、サーマルヘッド59によって製版された製版済みマスタ66はマスタストック部61内に貯容される。反転ローラ対63の停止時においてマスタストック部61に設けられた図示しない吸引ファンが作動されており、製版済みマスタ66は図示しない吸引ファンに吸引されることによって良好にマスタストック部61内に貯容される。
【0072】
上述の製版動作中、排版動作が完了して両面印刷装置1が給版待機状態となると、反転ローラ対63が回転を開始してマスタストック部61内に貯容されている製版済みマスタ66がステージ部19aと開放されているクランパ19bとの間に向けて搬送される。そして、製版済みマスタ66の先端部がクランパ19bによって挟持可能な所定位置まで搬送されると、図示しない開閉手段が作動してクランパ19bが閉じられ、製版済みマスタ66はその先端部をステージ部19aとクランパ19bとによって版胴12の外周面上に保持される。
【0073】
その後、版胴12が図1において時計回り方向に間欠的に回転駆動され、製版済みマスタ66の版胴12への巻装動作が行われる。このとき反転ローラ対63は回転を停止しており、駆動ローラ63aは内部に設けられた図示しないワンウェイクラッチによって製版済みマスタ66の引き出しに伴い連れ回りする。そして、画像メモリ135からの画像データ信号が途絶えるとサーマルヘッド59の作動が停止し、1版分の製版済みマスタ66が製版搬送されるとプラテンローラ58、テンションローラ対62、反転ローラ対63の回転がそれぞれ停止されると共に切断手段60が作動して製版済みマスタ66が切断される。切断された製版済みマスタ66は版胴12の回転によって製版部3より引き出され、版胴12がホームポジションまで回転して停止することで製版動作及び給版動作が完了する。
【0074】
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴12がホームポジションで停止するとソレノイド123が作動して切換部材10が第1の位置に位置決めされた後、図示しないプレスローラ係止手段が作動すると共にステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転され、そのカム部49bをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動されてカム軸44がカム板43Aをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。
【0075】
その後、給紙ローラ68、分離ローラ69、駆動ローラ87、吸引ファン90がそれぞれ駆動されると共に版胴12が低速で図1の時計回り方向に回転駆動され、給紙トレイ670上に積載された用紙Pの最上位の1枚が引き出されてその先端をレジストローラ対71に挟持される。そして、版胴12上に巻装された製版済みマスタ66の版胴回転方向における第3製版画像66Aの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動され、引き出された用紙Pは版胴12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0076】
版胴12の回転に同期して、プレスローラ接離機構55ではカム軸44及びこれと一体に設けられた多段カム43が回転駆動されており、上述したようにカムフォロア41と当接可能となる位置に移動されたカム板43Aは、上記所定のタイミングにおいてその凸部をカムフォロア41から離脱させる。これによりプレスローラ13がその周面を版胴12の外周面に印圧ばね42の付勢力によって圧接させ、レジストローラ対71によって給送された用紙Pが版胴12に巻装された製版済みマスタ66に押圧される。この押圧動作によりプレスローラ13と用紙Pと製版済みマスタ66と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部より滲出し、版胴12を構成する図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、及び版胴12に巻装された製版済みマスタ66の多孔性支持体に充填された後に製版済みマスタ66の穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。
【0077】
版付けにより第3の製版画像66Aに応じた画像を印刷された用紙Pは、印刷済み用紙PBとなって第1の位置を占めた切換部材10により排紙搬送ユニット85へと案内されると共に、剥離爪84によってその先端部から版胴外周面上の製版済みマスタ66より剥離される。剥離された印刷済み用紙PBは下方へと落下して排紙搬送ユニット85へと送られ、吸引ファン90の吸引力によって無端ベルト89の上面に引きつけられつつ左方へと搬送されて排紙トレイ86上に排出される。その後、版胴12が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0078】
両面印刷装置1が印刷待機状態となった後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力した後にテンキー109によって印刷設定枚数が入力された後に印刷スタートキー105が押下されると、版胴12が回転駆動されると共に給紙部4から用紙Pが連続的に給紙される。給送された用紙Pはレジストローラ対71で一時停留された後に版付け時と同じタイミングで給送され、プレスローラ13によって版胴外周面上の製版済みマスタ66に圧接される。画像を印刷された印刷済み用紙PBは切換部材10によって排紙部6へと案内された後、剥離爪84によって版胴外周面上の製版済みマスタ66より剥離され、排紙搬送ユニット85により搬送されて排紙トレイ86上に排出される。このような片面印刷動作は、設定された印刷枚数が消化されるまで継続され、印刷枚数が消化されると版胴12がホームポジションで停止し、両面印刷装置1は再び印刷待機状態となる。
(両面印刷動作)
次に、両面印刷キー117を押下して両面印刷を行う場合を説明する。オペレータは両面印刷モードであることをLED117aの点灯によって確認した後、製版スタートキー104を押下する。製版スタートキー104が押下されると、片面印刷時と同様に各センサ73,102から用紙サイズ検知信号及び原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御手段129に送られ、制御手段129は入力された各信号を比較する。本実施例では、版胴12で印刷可能な最大用紙サイズがA3サイズであるため、両面印刷時において使用可能な用紙サイズはA4横置きまでである。原稿サイズと用紙サイズとを比較した結果、両サイズが同じ場合には直ちに画像読取動作が行われ、両サイズが異なる場合には、制御手段129はその旨を表示装置120に警告として表示してオペレータに注意を促す。用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合に、制御手段129からの指令で自動的に拡大または縮小の変倍を行って原稿サイズと画像サイズとを整合させる構成、表示装置120に縮小や画像データの回転等の手順を表示してオペレータの操作の手助けを行う構成としてもよい。また、用紙サイズがA4横置きを超える大きさの場合には、制御手段129は両面印刷を禁止して片面印刷を促す旨を表示装置120に表示させてもよい。
【0079】
製版スタートキー104が押下されると、画像読取部7では片面印刷時と同様に1枚目の原稿画像が読み取られる。読み取られた原稿画像は画像メモリ135内に1枚目の画像データ信号として格納される。1枚目の原稿の読取動作が完了して画像データ信号が画像メモリ135内に格納されると、制御手段129は表示装置120に2枚目の原稿をセットして下さいという旨の表示を行わせる。オペレータはこの表示に従って圧板94を開放してコンタクトガラス93上より1枚目の原稿を取り除き、2枚目の原稿を載置して再び圧板94を閉じる。圧板94が閉じられたことを図示しないセンサが検知し、コンタクトガラス93上に原稿があることを他の図示しないセンサが検知すると、1枚目と同様に2枚目の原稿の読取動作が行われる。読み取られた原稿画像は画像メモリ135内に2枚目の画像データ信号として格納される。
【0080】
なお、本形態において、片面印刷モード時及び両面印刷モード時における原稿の読取動作はオペレータが圧板94を開閉してコンタクトガラス93上に読み取られる原稿をセットする構成としたが、ADFを用いて自動的に原稿をコンタクトガラス93上に搬送する構成、あるいは図示しない外部装置から画像データを取り込む構成としてもよい。また、両面印刷モード時において1枚の原稿を反転させて搬送し、その表面及び裏面から2枚分の画像データを取得する構成としてもよい。
【0081】
画像読取部7での画像読取動作と並行して、排版部5では片面印刷時と同様に排版動作が行われる。外周面上より使用済みマスタ64cを剥離された版胴12は給版待機位置で停止し、図示しない開閉手段によってクランパ19bが開放される。また、この排版動作と並行して製版部3では製版動作が行われる。製版動作は片面印刷モード時と同様の手順で行われるが、マスタ64にはその熱可塑性樹脂フィルム面に第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bとが形成される。このとき第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bとの間には、図6に示すように所定の空白部Sが設けられるように各画像65A,65Bが製版される。この所定の空白部Sは、製版済みマスタ65が版胴12の外周面上に巻装されたときに、図1に示す中間領域と対応する位置に設けられる。
【0082】
各画像65A,65Bが形成された製版済みマスタ65はマスタストック部61内に貯容され、排版動作が完了して両面印刷装置1が給版待機状態となると、反転ローラ対63の作動によって製版済みマスタ65がステージ部19aと開放されているクランパ19bとの間に向けて搬送される。その後、版胴12が片面印刷モード時と同様に間欠回転され、製版済みマスタ65の版胴12への巻装が行われる。そして、画像メモリ135から2枚分の画像データが全て送られると、切断手段60が作動して製版済みマスタ65が切断される。切断された製版済みマスタ65は版胴12の回転によって製版部3より引き出され、版胴12がホームポジションで停止して製版動作及び給版動作が完了する。
【0083】
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴12がホームポジションで停止するとステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転されると共に図示しないプレスローラ係止手段が作動され、カム部49aをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動されてカム軸44がカム板43Bをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。
【0084】
その後、給紙ローラ68、分離ローラ69、各駆動ローラ36,87、各吸引ファン39,90がそれぞれ駆動されると共に版胴12が低速で図1において時計回り方向に回転駆動され、給紙トレイ670上から1枚目の用紙Pが引き出されてその先端をレジストローラ対71に挟持される。そして、クランパ19bが切換部材10と対応する位置を通過するとソレノイド123が作動して切換部材10が第2の位置に位置決めされ、その後、版胴12上に巻装された製版済みマスタ65の版胴回転方向における第1製版画像65Aの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動されることで、引き出された1枚目の用紙Pは版胴12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0085】
上記所定のタイミングにおいて、カムフォロア41と当接可能である位置に移動されたカム板43Bはその凸部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を版胴12の外周面に圧接させる。これによりプレスローラ13と1枚目の用紙Pと製版済みマスタ65の第1の製版画像65A形成部と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部より滲出し、版胴12に巻装された図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、及び製版済みマスタ65の多孔性支持体に充填された後に第1の製版画像65Aの穿孔部を介して1枚目の用紙Pに転写され、製版済みマスタ65のうちの第1の製版画像65Aが形成された部分の版付けが行われる。
【0086】
版付けにより第1の製版画像65Aに応じた画像をその表面に印刷され表面印刷済み用紙PAとなった1枚目の用紙Pは、切換部材10の先端によってその一端から版胴外周面上の製版済みマスタ65から剥離されつつ、第2の位置を占めた切換部材10によって再給紙手段9へと案内される。切換部材10によって下方へと導かれた表面印刷済み用紙PAは、各ガイド板27,56間を通ってその一端をエンドフェンス8aに当接させ、補助トレイ8上に載置される。補助トレイ8上に搬送された表面印刷済み用紙PAは、吸引ファン39の吸引力によって無端ベルト38に保持されつつ図1の矢印方向に搬送され、その他端(第1の製版画像65Aの印刷時における後端)を再給紙位置決め部材24に当接される。このときセンサ8cが表面印刷済み用紙PAの他端を検知し、センサ8cからの検知信号が制御手段129へ向けて出力されることにより、制御手段129から指令が送られて駆動ローラ36及び吸引ファン39の作動が停止される。
【0087】
1枚目の用紙Pが補助トレイ8上に案内されている間も版胴12は回転を継続しており、プレスローラ13は版胴12の表面領域との接触を終えるとカム板43Bの凸部がカムフォロア41に当接することで離間位置を占める。このカム板43Bの働きにより、用紙Pが存在しない状態で版胴12の裏面領域とプレスローラ13とが圧接することがなく、プレスローラ13の周面へのインキの転移を防止できる。このとき図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13を離間位置で保持した後、ステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転され、そのカム部49bをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動され、カム軸44がカム板43Aをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動される。
【0088】
また、上述の動作とほぼ同時に給紙ローラ68及び分離ローラ69が駆動され、給紙トレイ670上から2枚目の用紙Pが引き出されてその先端をレジストローラ対71に挟持される。そして、上述と同様の所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動され、引き出された2枚目の用紙Pは版胴12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0089】
一方、プレスローラ接離機構55では、移動されたカム板43Aの凸部がカムフォロア41と当接可能な位置までカム軸44が回転すると、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。このときカム軸44と同期して回転している版胴12は、表面領域及び裏面領域及び中間領域以外の部位である非開孔部がプレスローラ13と対向する位置を占めている。また、版胴12の表面領域がプレスローラ13との対向部を通過し、クランパ19bが再び切換部材10と対応する位置を占めるまでの間にソレノイド123が作動され、切換部材10が第2の位置から第1の位置に変位される。
【0090】
2枚目の用紙Pがレジストローラ対71によって給送される所定のタイミングにおいて、カム板43Aがその凸部をカムフォロア41から離脱させることによりプレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を版胴12の外周面に圧接させる。これによりプレスローラ13と2枚目の用紙Pと製版済みマスタ65の第1の製版画像65A形成部と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部、図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、第1の製版画像65Aの穿孔部を介して2枚目の用紙Pに転写される。
【0091】
第1の製版画像65Aに応じた画像を印刷され印刷済み用紙PBとなった2枚目の用紙Pは、第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送ユニット85へと案内されると共に、剥離爪84によってその一端から版胴外周面上の製版済みマスタ65より剥離される。剥離された印刷済み用紙PBは下方へと落下して排紙搬送ユニット85へと送られた後に排紙トレイ86上に排出される。
【0092】
また、レジストローラ対71によって2枚目の用紙Pが給送された後、製版済みマスタ65の版胴回転方向における第2の製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングである所定のタイミングでソレノイド33が作動され、揺動アーム32が支軸32aを中心に図2における時計回り方向に揺動される。これにより再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置に揺動され、他端を再給紙位置決め部材24に当接させた状態で停留されていた表面印刷済み用紙PAが版胴12と当接して従動回転しているプレスローラ13の周面に当接される。
【0093】
再給紙レジストローラ23によりプレスローラ13の周面に当接された表面印刷済み用紙PAは、プレスローラ13の回転力によってその回転方向下流側へと搬送され、用紙ガイド板31及び各ローラ28,29,30によってプレスローラ13の周面に密着した状態で版胴12との当接部に向けて搬送される。このとき表面印刷済み用紙PAの表面には第1の製版画像65Aに応じた画像が印刷されているが、再給紙案内部材22の働きによって表面印刷済み用紙PAがプレスローラ13の周面に密着されているので、一度プレスローラ13の周面に接触した表面印刷済み用紙PAがずれることがなく、擦れ汚れあるいは画線の太りといった不具合の発生が防止される。そして、2枚目の用紙Pの後端及び中間領域がプレスローラ13と対応する位置を通過した後、裏面領域の先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するタイミングで表面印刷済み用紙PAが版胴12とプレスローラ13との当接部に送り込まれる。
【0094】
これによりプレスローラ13と表面印刷済み用紙PAと製版済みマスタ65の第2の製版画像65B形成部と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部、図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、第2の製版画像65Bの穿孔部を介して表面印刷済み用紙PAの裏面に転写され、製版済みマスタ65のうちの第2の製版画像65Bが形成された部分の版付けが行われる。
【0095】
第1の製版画像65Aに応じた画像を表面に、第2の製版画像65Bに応じた画像を裏面にそれぞれ印刷され印刷済み用紙PBとなった1枚目の用紙Pは、第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送ユニット85へと案内されると共に、剥離爪84によってその一端から版胴外周面上の製版済みマスタ65より剥離される。剥離された印刷済み用紙PBは下方へと落下して排紙搬送ユニット85へと送られた後に排紙トレイ86上に排出され、これにより製版済みマスタ65の版付け動作が完了して両面印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0096】
上述の版付け時において、製版済みマスタ65の第1の製版画像65Aと第2の製版画像65Bとの間に所定の空白部Sが設けられ、製版済みマスタ65が版胴12の外周面上に巻装された際に中間領域が形成されるので、給紙部4から送られた2枚目の用紙Pの後端と再給紙手段9から送られた表面印刷済み用紙PAの先端とが重合することが防止され、良好な版付けを行うことができる。また、再給紙手段9からの表面印刷済み用紙PAの再給紙時において、表面印刷済み用紙PAの印刷面と接触することでプレスローラ13の表面に表面印刷済み用紙PAからのインキが再転移するが、プレスローラ13の周面が撥インキ性を有すると共にクリーニングローラ26がプレスローラ13の周面をクリーニングするので、表面印刷済み用紙PAからプレスローラ13の周面への再転移インキ量が減少されると共にプレスローラ13の周面からの再転移インキの除去が促進され、以下の印刷時においてプレスローラ13から用紙Pの裏面へのインキの再転移を防止できる。
【0097】
両面印刷装置1が印刷待機状態となった後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力し、テンキー109によって印刷設定枚数が入力された後に印刷スタートキー105が押下されると印刷動作が行われる。ここでは、版付け時と同様にカム板43Bがカムフォロア41に当接可能となる位置にカム軸44が移動された後に設定された印刷速度で版胴12が回転駆動され、さらに版付け時と同様に切換部材10が第2の位置に位置決めされる。版胴12の回転開始後、給紙部4から1枚目の用紙Pが給送され、給送された1枚目の用紙Pはレジストローラ対71で一時停留された後に版付け時と同じタイミングで給送され、プレスローラ13によって製版済みマスタ65の第1の製版画像65Aに圧接される。表面に第1の製版画像65Aに対応した画像を印刷されて表面印刷済み用紙PAとなった1枚目の用紙Pは、切換部材10によって版胴外周面上の製版済みマスタ65より剥離されつつ補助トレイ8へと案内される。補助トレイ8上に搬送された表面印刷済み用紙PAは、吸引ファン39の吸引力によって無端ベルト38上に保持されつつ他端を再給紙位置決め部材24に当接させた状態で停留される。
【0098】
その後、図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13が離間位置で保持され、段差カム49が回転してカム板43Aをカムフォロア41に対して当接可能となる位置にカム軸44が移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。切換部材10は、クランパ19bが再び切換部材10と対応する位置を占めるまでの間に第2の位置から第1の位置に変位される。また、この動作とほぼ同時に給紙部4から2枚目の用紙Pが給送され、給送された2枚目の用紙Pはレジストローラ対71で一時停留された後、1枚目の用紙Pと同じタイミングで印刷部2に向けて給送される。
【0099】
給送された2枚目の用紙Pは揺動するプレスローラ13によって製版済みマスタ65の第1の製版画像65Aに圧接され、表面に第1の製版画像65Aに対応した画像を印刷されて印刷済み用紙PBとなった2枚目の用紙Pは第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送ユニット85へと案内される。印刷済み用紙PBは剥離爪84によって製版済みマスタ65より剥離され、下方へと落下して排紙搬送ユニット85によって搬送されて排紙トレイ86上に排出される。
【0100】
レジストローラ対71によって2枚目の用紙Pが給送された後、版付け時と同じタイミングでソレノイド33が作動されて再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置へと変位され、補助トレイ8上で一時停留されていた表面印刷済み用紙PAが回転しているプレスローラ13の周面に当接される。表面印刷済み用紙PAはプレスローラ13の回転力によって搬送され、再給紙案内部材22によってプレスローラ13の周面に密着した状態で印刷部2へと搬送される。
【0101】
搬送された表面印刷済み用紙PAは揺動するプレスローラ13によって製版済みマスタ65の第2の製版画像65Bに圧接され、その裏面に第2の製版画像65Bに対応する画像を転写される。両面に各製版画像65A,65Bに対応した画像を印刷されて印刷済み用紙PBとなった1枚目の用紙Pは、切換部材10によって排紙搬送ユニット85へと案内される。その後、印刷済み用紙PBが剥離爪84によって製版済みマスタ65より剥離され、排紙搬送ユニット85によって搬送されて排紙トレイ86上に排出される。
【0102】
その後、給紙部4から3枚目の用紙Pが給送され、3枚目の用紙Pはレジストローラ対71で一時停留された後に1枚目及び2枚目の用紙Pと同じタイミングで印刷部2に向けて給送される。切換部材10はクランパ19bとの衝突を回避すべく第1の位置に位置決めされ、クランパ19bの通過後に再び第2の位置に位置決めされる。給送された3枚目の用紙Pは表面に第1製版画像65Aに対応した画像を印刷されて表面印刷済み用紙PAとなった後、切換部材10によって補助トレイ8上に案内される。そして所定のタイミングでソレノイド33が作動され、補助トレイ8上に停留されていた2枚目の表面印刷済み用紙PAが印刷部2へと搬送される。
【0103】
2枚目の表面印刷済み用紙PAは1枚目の表面印刷済み用紙PAと同様のタイミングで版胴12とプレスローラ13との当接部に送られ、その裏面に第2製版画像65Bに対応した画像を印刷されて2枚目の印刷済み用紙PBとなる。切換部材10は上述と同様のタイミングで第2の位置から第1の位置に変位され、3枚目の表面印刷済み用紙PAの後端(他端)は切換部材10の下面10aとプレスローラ13の周面との間の僅かな隙間を通って補助トレイ8上に案内される。また、これに続いて補助トレイ8上より搬送された2枚目の印刷済み用紙PBの先端(一端)は、切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送ユニット85へと案内され、2枚目の印刷済み用紙PBは剥離爪84によって製版済みマスタ65より剥離された後に排紙搬送ユニット85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。
【0104】
以下、上述と同様の印刷動作が(N−1)枚目まで行われる。そして、N枚目の用紙Pが給紙部4から給送されその表面に第1の製版画像65Aに対応した画像を印刷され、N枚目の表面印刷済み用紙PAとして補助トレイ8上に案内された後、(N−1)枚目の表面印刷済み用紙PAがその裏面に第2の製版画像に対応した画像を印刷されて(N−1)枚目の印刷済み用紙PBとして排紙トレイ86上に排出されると、図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13が離間位置で保持され、カム板43Cをカムフォロア41に対して当接可能となる位置にカム軸44が移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。このとき切換部材10は第1の位置を占めた状態を維持している。
【0105】
そして、製版済みマスタ65の版胴回転方向における第2の製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりも早い第1のタイミングでカムフォロア41と当接可能である位置に移動されたカム板43Cはその凸部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を版胴12の外周面に圧接させる。その後、製版済みマスタ65の版胴回転方向における第2製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりもやや早い第2のタイミングでソレノイド33が作動され、揺動アーム32が支軸32aを中心に図2における時計回り方向に揺動される。これにより再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置に揺動され、他端を再給紙位置決め部材24に当接させた状態で停留されていたN枚目の表面印刷済み用紙PAが版胴12と当接して従動回転しているプレスローラ13の周面に当接される。
【0106】
N枚目の表面印刷済み用紙PAは1枚目の表面印刷済み用紙PAと同様のタイミングで版胴12とプレスローラ13との当接部に送られ、その裏面に第2製版画像65Bに対応した画像を印刷されてN枚目の印刷済み用紙PBとなる。N枚目の印刷済み用紙PBは切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送ユニット85へと案内され、剥離爪84によって製版済みマスタ65より剥離された後に排紙搬送ユニット85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。その後、プレスローラ13は版胴12の裏面領域との接触を終えるとカム板43Cの凸部がカムフォロア41に当接することで離間位置を占める。このカム板43Cの働きにより、用紙Pが存在しない状態で版胴12の表面領域とプレスローラ13とが圧接することがなく、プレスローラ13の周面へのインキの転移を防止できる。このとき図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13が離間位置で保持され、その後に版胴12がホームポジションで停止して両面印刷装置1は印刷動作を終えて再び印刷待機状態となる。
【0107】
この両面印刷装置1によれば、片面印刷時には製版部3が製版済みマスタ66を作成してこれを版胴12に巻装し、給紙部4より用紙Pを給送してこれをプレスローラ13によって版胴12に圧接させるので、マスタ64を無駄に使用することなく通常の孔版印刷装置と同様に片面印刷を行うことができる。また、両面印刷時には製版部3が製版済みマスタ65を作成してこれを版胴12に巻装し、給紙部4より1枚目の用紙Pを給送してこの表面をプレスローラ13によって版胴12に圧接させた後に補助トレイ8上に排出し、給紙部4より2枚目の用紙Pを給送してこの表面をプレスローラ13によって版胴12に圧接させた後に補助トレイ8上に排出すると共に、再給紙手段9によって1枚目の表面印刷済み用紙PAを反転給送してこの裏面をプレスローラ13によって版胴12に圧接させた後に印刷済み用紙PBとして排紙トレイ86上に排出するので、用紙Pに印刷される表面画像及び裏面画像が共にプレスローラ13により版胴12から転移されるインキによって形成され、良好な両面印刷物を得ることができる。
(片面選択印刷)
片面印刷キー118を押下し、設定キー111または設定キー112を押下すると、片面選択印刷モードが設定される。そして、製版スタートキー104が押下されると、用紙サイズ検知センサ73から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ102から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御手段129に送られる。本形態では原稿サイズと用紙サイズをA4とし、設定キー112が操作されて、第2の製版画像領域に製版画像の位置が設定されているものとする。
【0108】
画像読取部7の読取動作で読み取られたA4サイズの原稿画像は、画像センサ101に入射されて光電変換されA/D変換器に入力された後、画像メモリ135内に画像データ信号として格納される。
【0109】
画像読取部7での画像読取動作と並行して、排版部5では版胴12の外周面から使用済みマスタを剥離する排版動作が片面印刷時同様に行われる。版胴12の外周面上より使用済みマスタ64cが全て剥離された後、版胴12は所定の給版待機位置まで回転して停止し、給版待機状態となる。
【0110】
排版動作と並行して、製版部3では製版動作が行われる。ここでは、プラテンローラ58、テンションローラ対62、反転ローラ対63がそれぞれ回転駆動されてマスタロール64aよりマスタ64が引き出され、第2の製版画像領域がサーマルヘッド59の発熱素子と対応する位置に達すると、画像メモリ135内に格納されている画像データ信号が画像処理を施された後に呼び出され、図示しないサーマルヘッドドライバがサーマルヘッド59の各発熱素子を選択的に発熱させることにより、マスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に第2の製版画像66Aが形成される。この第2の製版画像66Aが形成された製版済みマスタ67は、給版待機状態の版胴12に対して搬送され、その先端部がクランパ19bによって挟持可能な所定位置まで搬送されると、クランパ19bによってステージ部19aとクランパ19bとに挟まれて版胴12の外周面上に保持される。
【0111】
その後、版胴12が図1において時計回り方向に間欠的に回転駆動され、製版済みマスタ67の版胴12への巻装動作が行われる。そして、画像メモリ135からの画像データ信号が途絶えるとサーマルヘッド59の作動が停止し、1版分の製版済みマスタ67が製版搬送されるとプラテンローラ58、テンションローラ対62、反転ローラ対63の回転がそれぞれ停止されると共に切断手段60が作動して製版済みマスタ67が切断される。切断された製版済みマスタ67は版胴12の回転によって製版部3より引き出され、版胴12がホームポジションまで回転して停止することで製版動作及び給版動作が完了する。
【0112】
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴12がホームポジションで停止するとソレノイド123が作動して切換部材10が第1の位置に位置決めされた後、図示しないプレスローラ係止手段が作動すると共にステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転され、そのカム部49bをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動されてカム軸44がカム板43Aをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。
【0113】
その後、給紙ローラ68、分離ローラ69、駆動ローラ87、吸引ファン90がそれぞれ駆動されると共に版胴12が低速で図1の時計回り方向に回転駆動され、給紙トレイ670上に積載された用紙Pの最上位の1枚が引き出されてその先端をレジストローラ対71に挟持される。そして、版胴12上に巻装された製版済みマスタ67の版胴回転方向における第2の製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動され、引き出された用紙Pは版胴12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0114】
版胴12の回転に同期して、プレスローラ接離機構55ではカム軸44及びこれと一体に設けられた多段カム43が回転駆動されており、上述したようにカムフォロア41と当接可能となる位置に移動されたカム板43ACは、上記所定のタイミングにおいてその凸部をカムフォロア41から離脱させる。これによりプレスローラ13がその周面を版胴12の外周面に印圧ばね42の付勢力によって圧接させ、レジストローラ対71によって給送された用紙Pが版胴12に巻装された製版済みマスタ66に押圧される。この押圧動作によりプレスローラ13と用紙Pと製版済みマスタ66と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部より滲出し、版胴12を構成する図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、及び版胴12に巻装された製版済みマスタ67の多孔性支持体に充填された後に製版済みマスタ67の穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。
【0115】
版付けにより第2の製版画像65Bに応じた画像を印刷された用紙Pは、印刷済み用紙PBとなって第1の位置を占めた切換部材10により排紙搬送ユニット85へと案内されると共に、剥離爪84によってその先端部から版胴外周面上の製版済みマスタ66より剥離される。そして、この剥離された印刷済み用紙PBは排紙搬送ユニット85を介して左方へと搬送されて排紙トレイ86上に排出される。その後、版胴12が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0116】
両面印刷装置1が印刷待機状態となった後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力した後にテンキー109によって印刷設定枚数が入力された後に印刷スタートキー105が押下されると、片面印刷同様の工程で印刷が行われる。そして、この片面選択印刷は、設定された印刷枚数が消化されるまで継続され、印刷枚数が消化されると版胴12がホームポジションで停止し、両面印刷装置1は再び印刷待機状態となる。
【0117】
本形態では、片面選択印刷において第2の製版画像領域67Bに製版画像を形成したが、第1の製版画像領域67Aに製版画像を形成してもよい。この場合には製版される製版画像は第1あるいは第2の製版画像の何れであってもよい。
【0118】
(セキュリティーモード)
次にセキュリティーモードが設定された時の動作と制御について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0119】
例えば、ステップS1において、片面選択印刷の設定時にオペレータによってセキュリティーモード設定キー110が押下されると、制御手段129はセキュリティーモードを設定し、ここでは通常の片面選択印刷を上述のように実行する。セキュリティーモードが設定されている場合と設定されていない場合の違いは、片面選択印刷において製版した製版画像の位置がステップS2において記憶手段114に記憶されるとともに、ステップS3において片面選択印刷終了後するとステップS4においてタイマ113を作動して経過時間Т1を計測する点にある。
【0120】
ステップS5では、計測された経過時間Т1が予め設定された設定時間Тを経過したか否かを判定する。この設定時間Тとは、版胴12の内周面や開口部に溜まったインキの流動性の高くなる時間である。ステップS5において、経過時間Т1が設定時間Тを経過した場合には、ステップS6において設定時間経過後に実行される製版の前に、記憶手段114に記憶されている製版領域以外の領域に対してのみ印圧を与えるようにプレスローラ接離機構55の作動を制御してプレスローラ13の接離動作を制御するとともに、ステップS7において版胴12を所定回転数Nだけ回転させるべく版胴駆動手段121を作動する。所定回転数Nとは、所定時間Tを経過して流動性が高くなったインキを版胴12内の他のインキと混合して均一化を図れる時間に相当する回転数である。
【0121】
つまり、記憶手段114に記憶されている製版画像領域が、図10(b)に示すような第2の製版画像領域67Bの場合には、同図に示す領域67Cは未製版領域となる。このため、図示しないプレスローラ係止手段やステッピングモータ52を作動して段差カム49を回させ、そのカム部49bをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動されてカム軸44がカム板43Bをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除されることで、この領域67Cにプレスローラ13が圧接する。このため、プレスローラ13は、版胴12に巻着されている製版済みマスタ67の未製版領域(67C)に印圧を与えるので、プレスローラ13にインキが付着することなく、版胴12の内側にインキが押し戻される。この押し戻されたインキは版胴12が回転することで、他のインキと混合されるため、版胴12内でのインキの均一化を図ることができる。所定回転数N、版胴12を回転させる場合の速度は、通常の印刷速度と同一の速度であってもよいし、給版時のように低速で回転させてもよい。
【0122】
このようなプレスローラ12の接離動作は、版胴12の回転と連動し、ステップS8において版胴12が所定回転数Nだけ回転すると、ステップS9において版胴12を停止するとともにプレスローラ13による印圧を解除して待機状態となる。
【0123】
ステップS10では、新たな製版を実行すべく、製版スタートキー104が押下されてオンすると、ステップS11において記憶手段114に記憶されている製版領域以外の領域に新たな製版を実行する。つまり、記憶手段114に記憶されている製版画像領域が、図10(b)に示すような第2の製版画像領域67Bの場合、この領域を用いて新たな印刷を行うと残像が発生し易いので、第2の製版画像領域ではない第1の製版画像領域67Aに新たな製版を行うようにする。具体的には、ステップS9において製版スタートキー104が押下されると、ステップS11においてマスタ64の残像発生領域となる第2の製版画像領域67Bではなく、第1の製版画像領域67Aに新たな製版動作を実行し、ステップS12において、上述のように給版動作と版付動作を実行する。
【0124】
ステップS13においてテンキー109で印刷設定枚数が入力されて、ステップS14において印刷スタートキー105が押下されると、ステップS15において第1の製版画像領域67Aに製版画像が製版された新たな製版済みマスタ67による印刷が実行され、ステップS16において印刷設定枚数分の印刷が終了すると、ステップS17において印刷動作を停止して、この制御を終える。
【0125】
このように、本形態によれば、設定時間経過後に実行される製版時における当該製版動作の開始前に、記憶手段114に記憶されている製版領域以外の領域に対してのみ印圧が与えられた状態で版胴12が所定回数回転するので、版胴12の回転により前回の印刷時の残インキが他のインキと混合されてインキの均一化を図れる。このため、従来のように、版に付着して廃棄されるインキ量を少なくできインキ消費量を低減することができる。
【0126】
また、タイマ113で計測された印刷終了後の経過時間T1が予め設定された設定時間Tを経過した場合には設定時間経過後に実行される製版時に、記憶手段114に記憶されている製版領域以外の領域に限定して製版を行うので、前回の製版画像を用いた印刷時のインキ画像が残っている版胴12の領域に、新たな版に製版された製版画像が位置しなくなる。このため、ステップS11で新たに製版された製版済みマスタ67による印刷時に、前回の印刷時のインキ画像が印刷されることがなくなり、残像(ゴースト)の発生を防止することができる。また、従来のようにローラやブレードなどで版胴12のインキの均一化を図らないので、廃棄されるマスタに付着して廃棄されるインキ量を少なくできインキ消費量を低減することができる。
【0127】
本形態では、所定時間経過後に行われる新たな製版動作によって得られた製版済みマスタ67を用いた印刷時に上記ステップS13において、印刷すべき設定印刷枚数をテンキー109で入力したが、印刷設定枚数が少ないと版胴12の回転が少ない。そこで、制御手段129のROM131に、予め最低印刷枚数Nを設定しておき、ステップS12で入力された印刷設定枚数が、ステップS22において予め設定された最低印刷枚数Nに満たない場合には、ステップS23に進んで最低印刷枚数Nの印刷を実行するようにしてもよい。
【0128】
このような制御形態とすると、テンキー109で入力された設定枚数に関わらず、版胴12の回転が最低印刷枚数N分だけ確保されることになり、版胴12の回転により前回の印刷時の残インキが他のインキと混合されてインキの均一化を図れるので、従来のように、マスタに付着して廃棄されるインキ量を少なくできインキ消費量を低減することができる。
【0129】
図11に示す制御形態では、第2の製版画像領域67Bに製版画像が製版された製版済みマスタ67による片面選択印刷のあとに、これとは異なるように第1の製版画像領域67Aに製版画像が製版された製版済みマスタ67による片面選択印刷を実行するようにしたが、設定時間経過後に実行される印刷としては両面印刷に制限してもよい。このようにすると、片面選択印刷時と同一枚数の印刷を行う場合、版胴12の回転数を増加することができ、よりインキの画像ムラを均一にすることができるので望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施の形態を適用可能な両面印刷装置の概略正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に用いられるプレスローラ接離機構及び版胴外周面から離間したプレスローラを説明する概略正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に用いられる再給紙搬送ユニット及び第1の実施の形態に用いられる用紙受け板を説明する概略平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に用いられるプレスローラ接離機構を説明する概略側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に用いられるプレスローラ接離機構及び版胴外周面に接触したプレスローラを説明する概略正面図である。
【図6】(a)は本発明の一実施の形態に用いられる分割製版済みマスタを説明する概略図、(b)は片面印刷時の製版済みマスタを説明する概略図である。
【図7】(a)は第1の製版画像が製版された製版済みマスタを説明する概略図、(b)は第2の製版画像が製版された製版済みマスタを説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施の形態に用いられる操作パネルを示す概略図である。
【図9】本発明の一実施の形態に用いられる制御手段のブロック図である。
【図10】(a)はマスタ上の第1の製版画像領域を説明する概略図、(b)はマスタ上の第2の製版画像領域を説明する概略図である。
【図11】本発明の特徴的な内容であるセキュリティーモード時の制御内容を示すフローチャートである。
【図12】図11に示すセキュリティーモード時の制御内容の一部分を変更した内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0131】
1 両面印刷装置
2 印刷部
3 製版部
12 印刷ドラム
13 印圧部材
64 版
65A 第1の製版画像
65B 第2の製版画像
66A 第3の製版画像
67A 第1の製版画像領域
67B 第2の製版画像領域
67A 第1の製版画像領域
67B 第2の製版画像領域
109 入力手段
113 計測手段
114 記憶手段
129 制御手段
P 用紙
T1 経過時間
T 設定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの版に対して第1の製版画像と第2の製版画像を並べて、あるいは第1の製版画像と第2の製版画像の2面分の画像領域を有する第3の製版画像を製版する製版部と、前記製版部で製版された版を外周面に巻装された印刷ドラムに対して印圧部材を接離動作することで、前記印刷ドラムと印圧部材との間に搬送される用紙に印刷を行う印刷部とを有し、前記用紙の異なる面にそれぞれ第1の製版画像と第2の製版画像を連続して印刷する両面印刷機能、第1の製版画像と第2の製版画像の何れかを選択して用紙の片面に印刷する片面選択印刷機能、第3の製版画像のみが製版された版を用いて用紙の片面に印刷する片面印刷機能を備えた印刷装置において、
前記版に対して行われた製版の画像領域を記憶する記憶手段と、
前記版を用いた印刷終了後の経過時間を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測された経過時間が予め設定された設定時間を経過したか否かを判定し、設定時間を経過した場合には設定時間経過後に実行される製版時において前記記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に限定して製版を行うように、前記製版部の作動を制御する制御手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記設定時間経過後に実行される製版時における当該製版動作の開始前に、前記記憶手段に記憶されている製版領域以外の領域に対してのみ印圧を与えるように前記印圧部材の接離動作を制御するとともに、前記印圧部材により前記印刷ドラムに印圧を与えた状態で、当該印刷ドラムを複数回回転させるように、前記印刷ドラムの駆動源の作動を制御することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷設定枚数を入力する入力手段を有し、
前記制御手段は、前記入力手段から入力される設定時間経過後に実行される印刷時の印刷設定枚数が、予め設定された最低印刷枚数に満たない場合には前記最低印刷枚数の印刷を実行するように前記印刷部の作動を制御することを特徴とする請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記設定時間経過後に実行される印刷を両面印刷に制限することを特徴とする請求項3記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−286079(P2009−286079A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143853(P2008−143853)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)