説明

印刷装置

【課題】用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させる。
【解決手段】記録媒体を送り出す記録媒体送り手段と、前記記録媒体の搬送方向における前記記録媒体送り手段の下流に配設され、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記記録媒体送り手段と前記記録媒体搬送手段との間に配設され、記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動しながら記録媒体に印字を行う印字手段とを備え、記録媒体の端部の位置に応じて前記記録媒体送り手段または前記記録媒体搬送手段による該記録媒体の搬送量を補正する搬送量補正制御部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送する用紙搬送機構を有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置は、印刷を行う印字ヘッドと、その印字ヘッドに対向配置されたプラテンと、印字ヘッドをプラテンの長手方向に移動可能にするキャリッジと、印刷媒体としての用紙を繰出すトラクタと、印刷された用紙を引き込み、搬送するプルアップローラとを備え、用紙をトラクタにより印字ヘッドとプラテンとの間に送り込み、また用紙をプルアップローラで引き込んで搬送し、その用紙に印字ヘッドで印刷するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
このようにトラクタおよびプルアップローラ等からなる用紙搬送機構を有する従来の印刷装置を図18および図19に基づいて詳細に説明する。
【0003】
図18において、印字ヘッド101は、受信したデータを印字ヘッドピンのレイアウトに基づいて展開したドットマトリクスデータに従って印字ヘッドピンによりインクリボンを押圧して用紙にインクを転写する。
プラテン102は、ゴム製の部材であり、回転することにより用紙を図における上部方向または下部方向へ送るフィード動作を行うものである。また、印字ヘッド101により押圧された印字ドットピンを受けてインクリボンを通して用紙へインクを転写させる土台(ベース)の役割も果たす。
【0004】
プルアップローラアセンブリ103は、内部にプルアップローラが配置され、給紙された用紙をそのプルアップローラで引き上げる機構である。このプルアップローラアセンブリ103が用紙を引き上げることにより、その用紙がプラテン102に密着して印刷することができる。このように用紙をプラテン102に密着させるため、プルアップローラは用紙の引き込み量をプラテン102が用紙を搬送する量より大きくしている。
【0005】
リーフスプリング104は、後述するトラクタにより送り出された用紙をプラテン102に密着させ、用紙の浮きを防止するための機構である。
フロント用紙検出センサ105は、フロント給紙ルートより給紙する用紙の上端および下端を検出するセンサであり、フロントプッシュトラクタ106は、フロント給紙ルートより給紙する連続用紙の搬送を行う機構である。
リア用紙検出センサ107は、リア給紙ルートより給紙する用紙の上端および下端を検出するセンサであり、リアプッシュトラクタ108は、リア給紙ルートにセットされた連続用紙の搬送を行う機構である。
【0006】
従来の印刷装置の動作を図19に基づき、図中Sで表すステップに従って図18を参照しながら説明する。なお、フロントプッシュトラクタまたはリアプッシュトラクタにより用紙を送り出す給紙動作の直後は、用紙の上端部は図18におけるプルアップローラアセンブリ103に備えられたプルアップローラまで到達していない位置で停止しているものとする。
【0007】
S1001:給紙された用紙の上端部の位置に関わらず、フロントプッシュトラクタまたはリアプッシュトラクタにより用紙を送り出し、印字ヘッド101により印刷動作を行う。
【0008】
S1002:用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいるか否かを図示しないセンサ等により判定し、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいると判定すると処理をS1004へ移行し、一方、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいないと判定すると処理をS1003へ移行する。
【0009】
S1003:上述したS1002において、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいないと判定された状態で印刷データおよびフィード実行コマンド(改行指令)を受信した場合、印刷動作を実行した後、フィード動作前に印字ヘッド101を所定の位置に移動するセンタリング動作を行う。
【0010】
ここで、センタリング動作を行う理由は、用紙上端がプルアップローラアセンブリ103に入り込んでいない状態では、用紙上端部はプラテン102からの浮きが生じているので、その状態でフィード動作を行うと、送られた用紙の上端部がプルアップアセンブリ103に引っ掛かり、その結果として用紙の詰まり(ジャム)が発生してしまうためであり、フィード動作前に印字ヘッド101を所定の位置(例えば、用紙中央)へ移動することにより用紙上端部の浮きによる用紙の詰まりを極力防止するためである。このセンタリング動作を行うことにより、フィード動作を行っても送られた用紙の上端部がプルアップアセンブリ103に引っ掛かることなく、円滑にフィード動作を行うことができるようになる。
【0011】
S1004:上述したS1002において、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいないと判定された場合、上述した印刷動作およびフィード動作を、用紙上端部がプルアップローラアセンブリ103内のプルアップローラに入り込むまで継続して実行する。
【0012】
一方、上述したS1002において、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいると判定された場合は、センタリング動作を実行することなくフィード動作を行い用紙上端部の制御を終了する。
なお、用紙下端部の印刷動作およびフィード動作においては特段の制御を実施していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−343643号公報(段落「0014」〜段落「0019」、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した従来の技術においては、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ103内に配置されたプルアップローラまで入り込んでいない場合、フロントプッシュトラクタ106またはリアプッシュトラクタ108による用紙の押し出しのみによるフィード動作となり、用紙上端部がプルアップローラアセンブリ103内のプルアップローラによる引張りがないため、用紙の遊びとフィード量の詰まり(フィード量不足)が発生し、用紙の搬送精度が低下して印刷品位を低下させてしまうという問題がある。
【0015】
また、用紙の下端部がフロントプッシュトラクタ106またはリアプッシュトラクタ108から外れた場合、プルアップローラアセンブリ103内のプルアップローラの引張りによるフィード動作になるため、用紙下端部の遊びとフィード量の伸び(フィード量過多)が発生してフィード量の精度が低下し、用紙の搬送精度が低下して印刷品位を低下させてしまうという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのため、本発明は、記録媒体を送り出す記録媒体送り手段と、前記記録媒体の搬送方向における前記記録媒体送り手段の下流に配設され、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記記録媒体送り手段と前記記録媒体搬送手段との間に配設され、記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動しながら記録媒体に印字を行う印字手段とを備え、記録媒体の端部の位置に応じて前記記録媒体送り手段または前記記録媒体搬送手段による該記録媒体の搬送量を補正する搬送量補正制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このようにした本発明は、用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施例における印刷装置の制御構成を示すブロック図
【図2】第1の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図
【図3】第1の実施例における印刷装置の用紙搬送機構の構成を示す概略側面図
【図4】第1の実施例における印刷装置の用紙搬送の説明図
【図5】第1の実施例における用紙フィード制御処理を示すフローチャート
【図6】第1の実施例における用紙上端制御処理を示すフローチャート
【図7】第1の実施例におけるフィード量補正テーブルを示す説明図
【図8】第1の実施例における印刷制御処理を示すフローチャート
【図9】第1の実施例における印刷速度減速比テーブルを示す説明図
【図10】第2の実施例における印刷装置の用紙搬送機構の構成を示す概略側面図
【図11】第2の実施例における印刷装置の用紙搬送の説明図
【図12】第2の実施例における用紙フィード制御処理を示すフローチャート
【図13】第2の実施例における用紙下端制御処理を示すフローチャート
【図14】第2の実施例におけるフィード量補正テーブルを示す説明図
【図15】第2の実施例におけるフィード量補正テーブルを示す説明図
【図16】第2の実施例における印刷制御処理を示すフローチャート
【図17】第2の実施例における印刷速度減速比テーブルを示す説明図
【図18】従来例における印刷装置の用紙搬送機構の構成を示す概略側面図
【図19】従来例における用紙フィード制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明による印刷装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は第1の実施例における印刷装置の制御構成を示すブロック図、図2は第1の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図、図3は第1の実施例における印刷装置の用紙搬送機構の構成を示す概略側面図である。
【0021】
図2において、100は印刷装置としてのドットインパクトプリンタ(以下、「プリンタ」という。)であり、CPU(Central Processing Unit)1と、ROM(Read Only Memory)2と、RAM(Random Access Memory)3と、LSI(Large Scale Integration)4と、印字ヘッド駆動回路5と、スペースモータ駆動回路6と、フィードモータ駆動回路7と、印字ヘッド8と、スペースモータ9と、フィードモータ10と、ヘッドギャップ検出センサ11と、リア用紙検出センサ12と、フロント用紙検出センサ13とから構成されている。
【0022】
CPU1は、プリンタ100の動作を制御する中央処理装置である。CPU1は、プリンタ100を制御するための制御プログラム(ソフトウェア)を記憶する不揮発性メモリであるROM2および揮発性メモリであるRAM3、ならびに集積回路であるLSI4に接続されている。
【0023】
ROM2は、プリンタ100を制御するプログラム命令、そのプログラム命令によってアクセスされるデータ、印刷速度やフィード量の補正値等の各種動作を補正するデータおよびCGデータ等を記憶する。RAM3は、プログラム命令によってプリンタ100を制御するための制御情報や図示しないホストコンピュータから受信したデータ等を記憶する。
【0024】
LSI4は、プリンタ100を制御するためのI/O(Input/Output)信号制御部を有した集積回路であり、印字ヘッド駆動回路5、スペースモータ駆動回路6、フィードモータ駆動回路7、ヘッドギャップ検出センサ11、リア用紙検出センサ12、およびフロント用紙検出センサ13と接続されている。
印字ヘッド駆動回路5は、印字ヘッド8を駆動するための回路であり、スペースモータ駆動回路6は、スペースモータ9を駆動するための回路であり、フィードモータ駆動回路7は、フィードモータ10を駆動するための回路である。
印字手段としての印字ヘッド8は、備えられたドットインパクトピンを用いて予め用意された記録媒体としての用紙に対して予め用意されたインクリボンに接触してインクを用紙に転写することにより印刷を行うユニットである。
【0025】
スペースモータ9は、印刷するために印字ヘッド8を用紙の搬送方向(改行方向)と直交する方向(以下、「水平方向」という。)に移動させるモータであり、プーリとタイミングベルトを介して回転運動を往復運動に変換して印字ヘッド8を往復移動させる。
フィードモータ10は、用紙を印字ヘッド8が移動する方向と直交する方向(以下、「垂直方向」という。)へ移動させるモータであり、用紙を搬送して移動させる改行動作(以下、「フィード動作」という。)を行うためのものである。
【0026】
ヘッドギャップ検出センサ11は、用紙の厚さに応じて印字ヘッド8とプラテン間の距離を調節するヘッドギャップ切り替えレバーに実装されたセンサであり、印字ヘッドとプラテンとの間の距離としてのヘッドギャップポジションを検出するセンサである。なお、ヘッドギャップ検出センサ11により検出されたヘッドギャップポジションは、CPU1によりヘッドギャップ設定情報として読み出される。
【0027】
リア用紙検出センサ12は、後述するリア給紙ルートから用紙を給紙した場合に用紙の上端(先端)部と用紙の下端(後端)部を検出するセンサである。
フロント検出センサ13は、後述するフロント給紙ルートから用紙を給紙した場合に用紙の上端部と用紙の下端部を検出するセンサである。
【0028】
このように構成されたプリンタ100は、CPU1によりその全体の動作が制御され、スペースモータ9の回転速度を制御することにより印字ヘッド8による印刷速度を制御することができ、またフィードモータ10の回転量を制御することにより用紙の搬送量としてのフィード量を制御することができるようになっている。さらに、CPU1はリア用紙検出センサ12またはフロント検出センサ13による用紙の上端部および下端部の検出、ならびにフィードモータ10による用紙のフィード量から用紙の上端部および下端部の位置を把握し、その位置情報をRAM3に記憶する。
【0029】
次に、印刷装置の用紙搬送機構の構成を説明する。
図3において、印刷装置の用紙搬送機構は、リア用紙検出センサ12と、フロント用紙検出センサ13と、プラテン14と、プルアップローラアセンブリ15と、リーフスプリング16と、リアプッシュトラクタ17と、フロントプッシュトラクタ18とから構成され、用紙を搬送して印字ヘッド8による印刷を可能としている。
【0030】
印字手段としての印字ヘッド8は、図2に示すスペースモータ9の駆動により移動しながら、受信したデータを図示しない印字ヘッドピンのレイアウトに基づいて展開したドットマトリクスデータに従って印字ヘッドピンによりインクリボンを押圧して用紙にインクを転写する。
この印字ヘッド8は、リアプッシュトラクタ17およびフロントプッシュトラクタ18と、プルアップローラアセンブリ15のプルアップローラ対151との間に配設され、用紙の搬送方向と直交する方向に移動しながら印刷を行う。
【0031】
プラテン14は、印字ヘッド8の印字ドットピンと対向配置されたゴム製の円筒状または円柱状の回転部材であり、図2に示すフィードモータ10の駆動により図中矢印Aが示す方向へ回転することにより用紙を図における上部方向または下部方向(垂直方向)へ送るフィード動作を行うものである。また、プラテン14は、印字ヘッド8により押圧された印字ドットピンを受けてインクリボンを通して用紙へインクを転写させる土台(ベース)の役割も果たす。なお、印字ヘッド8は、プラテン14が回転して用紙を送る方向と直交する水平方向(プラテン14の長手方向である回転軸方向)へ往復移動(スペーシング動作)して印刷動作を行う。
【0032】
プルアップローラアセンブリ15は、図2に示すフィードモータ10の駆動により回転する記録媒体搬送手段としてのプルアップローラ対151が内部に配置され、給紙された用紙をそのプルアップローラ対151で挟持して引き上げる機構であり、用紙搬送方向におけるリアプッシュトラクタ17およびフロントプッシュトラクタ18の下流に配設されているものである。このプルアップローラアセンブリ15が用紙を引き上げて搬送することにより、その用紙がプラテン14に密着して印刷することができる。このように用紙をプラテン14に密着させるため、プルアップローラ対151は用紙の引き込み量をプラテン14が用紙を搬送する量より大きくしている。
【0033】
リーフスプリング16は、プラテン14の外周面に僅かに接触するように配設され、後述するトラクタにより送り出された用紙をプラテン14に密着させ、用紙の浮きを防止するための機構である。
【0034】
記録媒体送り手段としてのリアプッシュトラクタ17は、図2に示すフィードモータ10の駆動により回転し、リア給紙ルート171にセットされた連続用紙の搬送を行う機構であり、連続用紙を印字ヘッド8とプラテン14との間に送り出す機構である。このリアプッシュトラクタ17と印字ヘッド8およびプラテン14との間には、リア給紙ルートより給紙する用紙の上端および下端を検出する用紙端部検出手段としてのリア用紙検出センサ12が配設されている。
【0035】
記録媒体送り手段としてのフロントプッシュトラクタ18は、図2に示すフィードモータ10の駆動により回転し、フロント給紙ルート181より給紙する連続用紙の搬送を行う機構であり、連続用紙を印字ヘッド8とプラテン14との間に送り出す機構である。このフロントプッシュトラクタ18と印字ヘッド8およびプラテン14との間には、フロント給紙ルートより給紙する用紙の上端および下端を検出する用紙端部検出手段としてのフロント用紙検出センサ13が配設されている。
【0036】
次に、印刷装置の制御構成を説明する。
図1において、プリンタ100は、パワーオン制御部30と、データ受信部35と、受信バッファ36と、受信データ解析部37と、メカ制御部40と、スペース制御部50と、印刷位置計算部51と、キャリッジ移動制御部52と、印字制御部60と、印刷速度決定部61と、フィード制御部70と、フィード量補正制御部71とから構成されている。
【0037】
パワーオン制御部30は、プリンタ100の電源投入時に実行される制御であり、プリンタの制御回路や機構を初期化する。
データ受信部35は、図示しない上位装置(例えば、パーソナルコンピュータや窓口業務端末等のホストコンピュータ)から1バイト単位で送信されたデータを受信し、図2に示すRAM3で構成される受信バッファ36に受信したデータを格納する。受信したデータは、順次、受信データ解析部37により読み出され、処理される。
【0038】
受信データ解析部37は、データ受信部35で受信され、受信バッファ36に格納されたデータを受信バッファ36から1バイトずつ読み出して解析を行い、印刷を指示する印刷データか、またはプリンタの制御を指示するプリンタ制御コマンドかを判別してデータの処理を行う。処理されたデータはメカ制御部40へ渡される。
【0039】
メカ制御部40は、受信データ解析部37で処理されたデータに基づき、印刷速度や印刷密度等を決定し、印刷機構を構成する印字ヘッド8、スペースモータ9、フィードモータ10等の制御指示をスペース制御部50、印字制御部60およびフィード制御部70に通知する。
【0040】
印字手段移動制御部としてのスペース制御部50は、印刷位置計算部51およびキャリッジ移動制御部52から構成されている。印刷位置計算部51は、図示しない上位装置から受信したデータの印刷位置および印刷する幅を求め、印字ヘッド8の最短距離の移動で印刷動作を行う方法を決定する。キャリッジ移動制御部52は、印刷位置計算部51からの指示を受け、指示された位置への印字ヘッド8の移動および停止を実行する。
【0041】
印字制御部60は、印刷の解像度や印刷の属性、印刷データを印字ヘッドのピン配置に対応させて展開したインパクトデータの生成等、印刷動作に必要な情報を生成する。印刷速度決定部61は、生成されたインパクトデータの印刷密度等に基づいて印刷速度を決定する。ここで、印刷密度とは、生成されたインパクトデータの全ドット中における印刷に寄与するドット(インパクトが必要なドット)の密度である。
【0042】
フィード制御部70は、図2に示すフィードモータ10による用紙を搬送するフィード動作を制御するものであり、垂直方向の現在の印字位置の管理や実行フィード量の生成、フィード速度等を決定する。また、用紙の上端部および下端部を図3に示すリア用紙検出センサ12またはフロント検出センサ13で検出したときのフィード動作の制御も行う。このフィード制御部70は、図2に示すフィードモータ10の回転量および回転速度を制御することにより実行フィード量やフィード速度を制御する。
【0043】
搬送量補正制御部としてのフィード量補正制御部71は、用紙の端部の位置に応じて図3に示すリアプッシュトラクタ17、フロントプッシュトラクタ18、およびプルアップローラ対151による用紙の搬送量を補正するものであり、図3に示すリア用紙検出センサ12またはフロント検出センサ13を利用し、用紙の上端部および下端部の位置を検出し、それぞれの状態に最も適したフィード動作量を計算するものである。
【0044】
このフィード量補正制御部71が行う制御は、フィード動作実行時に、検出した用紙の上端部または下端部の位置に基づいて用紙の上端部または用紙の下端部のフィード動作におけるフィード量の補正を行うものであり、その制御について図3を参照しながら以下に説明する。
【0045】
用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内に配置されているプルアップローラ対151まで到達していない場合、リアプッシュトラクタ17やフロントプッシュトラクタ18による押し込みによるフィード量と用紙の上端部の位置およびヘッドギャップポジションとから最適なフィードを行なうためのフィード量の補正を行う。
【0046】
このフィード量の補正は、リアプッシュトラクタ17やフロントプッシュトラクタ18による押し込みによるフィード量を、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内に配置されているプルアップローラ対151まで到達している場合のフィード量より、多くする。
【0047】
また、用紙の下端部がリア用紙検出センサ12またはフロント検出センサ13で検出され、リアプッシュトラクタ17またはフロントプッシュトラクタ18から外れた場合、プルアップローラアセンブリ15内に配置されているプルアップローラ対151の引っ張りによるフィード量と用紙の下端部の位置およびヘッドギャップポジションとから最適なフィードを行なうためのフィード量の補正を行う。
【0048】
このフィード量の補正は、プルアップローラアセンブリ15内に配置されているプルアップローラ対151の引っ張りによるフィード量を、用紙の下端部がリアプッシュトラクタ17またはフロントプッシュトラクタ18に架かっている場合のフィード量より、少なくする。
【0049】
このように構成されたプリンタ100の制御系は、図2に示すCPU1、ROM2、RAM3、LSI4、印字ヘッド駆動回路5、スペースモータ駆動回路6、フィードモータ駆動回路7、印字ヘッド8、スペースモータ9、フィードモータ10、ヘッドギャップ検出センサ11、リア用紙検出センサ12、およびフロント用紙検出センサ13によりプリンタ100全体の動作を制御する。
【0050】
上述した構成の作用について説明する。
まず、用紙の上端部の位置による用紙の状態について図3および図4に基づいて説明する。ここでは、リア給紙ルート171から用紙を給紙した場合の例を説明する。
【0051】
図3において、用紙の上端部の位置が、リーフスプリング16とプラテン14との接触部における用紙搬送方向(印字ヘッド8方向)の最下流の部位からプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部までの領域L1に存在する場合、その用紙はリアプッシュトラクタ17による押し出し方向のフィードのみにより搬送される。用紙の上端部は、未だプルアップローラ対151の接触部まで到達していないのでプルアップローラ対151による用紙の引張りによるフィードが無い状態である。
【0052】
図4は第1の実施例における印刷装置の用紙搬送の説明図であり、用紙の上端部が未だプルアップローラ対の接触部まで到達していない状態を示している。なお、図4は、図3におけるリーフスプリング16、印字ヘッド8およびプルアップローラアセンブリ15を図中矢印Bが示す方向から見た図である。
【0053】
図4に示すように、用紙19の上端部が未だプルアップローラ対151の接触部まで到達していない状態、かつ用紙19の下端部がリアプッシュトラクタから外れている状態で印刷動作を行った場合、用紙19はリーフスプリング16と図示しないプラテンとの間のみで挟まれて固定された状態となっている。この状態では、リーフスプリング16と図示しないプラテンとによる用紙保持力は強くないため、印刷動作時の図中矢印Cが示す水平方向の印字ヘッド8の移動により、用紙19のフィード方向(図中矢印Dが示す方向)と略直交する方向(図中矢印Eが示す方向)に用紙19が容易に移動してしまう。
【0054】
なお、用紙19の上端部が未だプルアップローラ対151の接触部まで到達していない状態、かつ用紙19の下端部がリアプッシュトラクタに架かった状態で印刷動作を行った場合、用紙19はリアプッシュトラクタと、リーフスプリング16および図示しないプラテンとによる2箇所で保持されるため、用紙19の下端部がリアプッシュトラクタから外れている状態と比較すると用紙保持力は強い状態であるため、印刷動作時の印字ヘッドの移動による図中矢印Eが示す方向の用紙19の振れは少なくなる。
【0055】
次に、図1におけるフィード制御部70およびフィード量補正制御部71が行う用紙フィード制御処理を図5の第1の実施例における用紙フィード制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1を参照しながら説明する。
【0056】
S101:プリンタが用紙搬送のためのフィード動作を実行する際、フィード制御部70は用紙の実行フィード量を求め、その実行フィード量から用紙上端部の用紙搬送方向における垂直現在位置を計算し、RAMに記憶した垂直現在位置情報を更新する。なお、垂直現在位置は、用紙の上端部がリア用紙検出センサ12により検出されてからの移動量(フィード量)を積算して管理するものとする。
【0057】
S102:垂直現在位置情報を更新したフィード制御部70は、用紙上端制御処理を実行する。なお、用紙上端制御処理の詳細は後述する。
S103:用紙上端制御処理を実行したフィード制御部70は、フィード動作を実行する。
S104:フィード制御部70は、フィード動作が終了するまでフィード動作の監視を行い、フィード動作が終了すると用紙フィード制御処理を終了する。
【0058】
次に、図1におけるフィード制御部70およびフィード量補正制御部71が行う用紙上端制御処理を図6の第1の実施例における用紙上端制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1および図3を参照しながら説明する。
【0059】
S201:フィード制御部70は、これから実行する用紙の実行フィード量、すなわち用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に入り込んでおり、用紙がリアプッシュトラクタにより送り出される場合の実行フィード量を求め、その実行フィード量および垂直現在位置情報からフィード動作実行後の用紙搬送方向における用紙上端位置を計算し、RAMに記憶した用紙上端位置情報を更新する。
【0060】
S202:フィード制御部70は、更新された用紙上端位置情報に基づいて用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に入り込んで挟持されるか否かを判定し、プルアップローラ対151の接触部に入り込むと判定すると処理をS204へ移行し、一方プルアップローラ対151の接触部に入り込まないと判定すると処理をS203へ移行する。
【0061】
S203:用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込まない場合、フィード量補正制御部71は、S201で算出された実行フィード量を図7に示すフィード量補正テーブルを用いて補正し、リアプッシュトラクタによる最適な実行フィード量を算出する。これにより、フィード制御部70は補正された実行フィード量でリアプッシュトラクタによるフィード動作を行うことになる。
【0062】
ここで、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151による引張りによるフィード動作がない場合、リアプッシュトラクタまたはフロントプッシュトラクタの押し込みによるフィード動作において用紙が実際に移動するフィード量は、用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151による引張りによるフィード動作がある場合のフィード量と比較して少なくなる。
【0063】
したがって、実行フィード量の補正は、不足分のフィード量を図7に示すフィード量補正テーブルからフィード補正量として抽出し、抽出したフィード補正量をS201において算出した実行フィード量に加算して行っている。
【0064】
また、印刷に使用する用紙(例えば、複写紙や葉書など)の厚さによって実際に移動するフィード量が異なるため、実行フィード量の補正は、ヘッドギャップ検出センサによって読み出されたヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙の厚さを判別し、用紙の厚さに応じて最適な実行フィード量の補正を行うようにしている。
【0065】
図7はフィード量補正テーブルであり、例えばヘッドギャップ設定情報が「1」のとき、フィード補正量は「0.3インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「2」のとき、フィード補正量は「0.275インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「3〜4」のとき、フィード補正量は「0.25インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「5〜8」のとき、フィード補正量は「0.225インチフィード毎に1/360インチ」とし、それぞれのフィード補正量を実行フィード量に加算するようにしている。なお、フィード補正量は用紙給紙後から用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に到達するまで加算される。
【0066】
例えば、ヘッドギャップ設定情報が「1」、補正前の実行フィード量が1インチの場合、補正後の実行フィード量は(1+1/120)インチとなる。
ここで、ヘッドギャップ設定情報は、例えば「1」から「8」までの8段階の設定が可能なものとし、「1」は用紙の厚さが最も薄く(例えば、普通紙)、「8」は用紙の厚さが最も厚いことを示すものとする(以下、同じ)。
【0067】
S204:フィード制御部70は、補正後の実行フィード量がnインチ(例えば、1インチ)を超えるか否か判定を行い、超えていると判定すると処理をS205へ移行し、超えていないと判定すると処理を終了する。
S205:フィード制御部70は、補正後の実行フィード量がnインチを超えたことを、メカ制御部40を介してスペース制御部50へ通知し、スペース制御部50はセンタリング動作を実行し、フィード動作に最適な位置(例えば、印字ヘッドが移動可能な水平方向における中央部)へ印字ヘッドを移動する。このようにして用紙上端制御処理を終了する。
【0068】
次に、図1におけるスペース制御50および印字制御部60が行う印字制御処理を図8の第1の実施例における印字制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1および図3を参照しながら説明する。
【0069】
本実施例の印字制御処理は、用紙の上端部における印字位置のずれ等の印刷品位の低下を防止するための処理である。用紙の上端部が未だプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に到達していない場合、プルアップローラ対151による引張りによるフィード動作ができないため、リアプッシュトラクタ17またはフロントプッシュトラクタ18のみの押し込みによるフィード動作となり、用紙の上端部は固定されず印刷動作による印字ヘッド8の移動により用紙の上端部が移動してしまい、その結果として用紙の上端部における印字位置のずれ等の印刷品位の低下が発生する。
【0070】
このような印刷品位の低下を低減するため、本実施例の印字制御処理では、用紙の上端部が未だプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に到達していない場合、印刷速度(印字ヘッド8の移動速度)の抑制や印刷方向(印字動作を行う印字ヘッド8の移動方向)を片方向とする制限を実行する。
なお、以下に説明する印字制御処理は1行分の印字制御処理である。
【0071】
S301:スペース制御部50の指示により印字位置計算部51は、受信データに基づいて、これから印刷する印刷領域(以下、「印刷ブロック」という。)の水平方向における左端位置および右端位置を求める。ここで求めた印刷ブロックの左端位置および右端位置、ならびに現在の印字ヘッドの待機位置から後述する印刷方向の判定を行う。
【0072】
S302:次に、印字制御部60の指示により印刷速度決定部61は、これから印刷する印刷ブロックの印刷速度を決定し、RAMに記憶させて印刷速度を設定する。この印刷速度は、これから印刷する印刷ブロックの印刷密度から決定され、例えば印刷密度が45%のとき、印刷速度を標準の印刷速度に対して83%に減速し、印刷密度が50%のとき、印刷速度を標準の印刷速度に対して75%に減速する。
【0073】
S303:印字制御部60は、印刷する印刷ブロックにおける印字ヘッド8のインパクト条件を設定する。ここで、インパクト条件とは、印刷密度および印刷速度に基づいて決定された印字ヘッド8のヘッドピンを駆動するタイミングを表すものであり、例えばヘッドピンの押し出しタイミング、押し出し時間、引き込みタイミング等である。
【0074】
S304:印字制御部60は、現在の用紙上端位置に基づいて用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に入り込んで挟持されているか否かを判定し、プルアップローラ対151の接触部に入り込んでいると判定すると処理をS309へ移行し、一方プルアップローラ対151の接触部に入り込んでいないと判定すると処理をS305へ移行する。
【0075】
S305:用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込んでいないと判定した印字制御部60は、用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部で固定されていないため、ROMに記憶されている印刷速度減速テーブルから印刷速度減速比を抽出し、S302で決定した印刷速度を変更(補正)する。この印刷速度減速テーブルは、ヘッドギャップ検出センサにより読み出されたヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙を判別し、用紙の厚さに応じて最適な印刷速度に補正を行うためのものであり、例えば図9に示すように、ヘッドギャップ設定情報が「1」のとき、印刷速度減速比を95%、ヘッドギャップ設定情報が「2」のとき、印刷速度減速比を90%、ヘッドギャップ設定情報が「3〜4」のとき、印刷速度減速比を80%、ヘッドギャップ設定情報が「5〜8」のとき、印刷速度減速比を70%とし、この印刷速度減速比に基づいてS302で決定した印刷速度を減速補正する。
【0076】
本印刷制御処理においても上述した用紙上端制御処理の実行フィード量補正と同様に、印刷に使用する用紙(例えば、複写紙や葉書など)によって印刷方向の摩擦や負荷が異なるため、印刷速度の決定は、ヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙を判別し、用紙の厚さに応じて最適な印刷速度を計算して減速補正し、印刷による印字ヘッドの移動に伴う用紙の上端部の水平方向の振れを低減させるようにしている。
【0077】
S306:また、スペース制御部50は、用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込んでいないため、印刷を行わない場合の印字ヘッド8のハイスキップ移動による高速移動を抑制する制御も行う。この高速移動の抑制は、印字ヘッド8が用紙上で水平方向に高速移動することにより用紙の上端部が水平方向に振られることを極力低減させるために行うものである。
【0078】
S307:スペース制御部50は、印刷方向を片方向印刷として両方向印刷動作を抑制し、印字ヘッド8の水平方向における往復移動および印刷による用紙のずれを低減させる。
S308:スペース制御部50は、印刷方向を往方向として印字ヘッド8を移動させながら印刷(Fow印字)を実行し、印刷制御処理を終了する。
【0079】
S309:一方、S304において用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込んでいると判定した印字制御部60は、現在の印字ヘッド8の位置およびS301で求めた印刷ブロックの左端位置と右端位置から最短時間で印刷するための印刷方向を判定する。印字制御部60は、現在の印字ヘッド8がこれから印刷する印刷ブロックの中心位置より左側または中心に位置すると判定すると処理をS310へ移行し、右側に位置すると判定すると処理をS311へ移行する。
【0080】
S310:現在の印字ヘッド8がこれから印刷する印刷ブロックの中心位置より左側または中心に位置すると判定されるとスペース制御部50は、印刷方向を往方向として印字ヘッド8を移動させながら印刷ブロックを左端から印刷(Fow印字)し、印刷制御処理を終了する。
【0081】
S311:現在の印字ヘッド8がこれから印刷する印刷ブロックの中心位置より右側に位置すると判定されるとスペース制御部50は、印刷方向を復方向として印字ヘッド8を移動させながら印刷ブロックを右端から印刷(Rev印字)し、印刷制御処理を終了する。
【0082】
このように、用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込んでいない場合、フィード量補正制御部71は、受信データに基づいて算出した実行フィード量に補正値を加算して最適な実行フィード量に補正するようにしたことにより、フィード量の詰まりによる用紙の位置ずれを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができる。
【0083】
また、用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込んでいない場合、印字制御部60は、受信データに基づいて決定した印刷速度を減速補正するようにしたことにより、印字動作時の印字ヘッド8の移動による用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができる。
【0084】
さらに、用紙の上端部がプルアップローラ対151の接触部に入り込んでいない場合、スペース制御部50は、印字ヘッド8のハイスキップ移動による高速移動を抑制するようにしたことにより、印字ヘッド8の高速移動による用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができる。
【0085】
以上説明したように、第1の実施例では、用紙の上端部がプルアップローラ対の接触部に入り込んでいない場合、受信データに基づいて算出した実行フィード量に補正値を加算して最適な実行フィード量に補正するようにしたことにより、フィード量の詰まりによる用紙の位置ずれを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
【0086】
また、受信データに基づいて決定した印刷速度を減速補正するようにしたことにより、印字動作時の印字ヘッドの移動による用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
さらに、印字ヘッドの高速移動を抑制するようにしたことにより、用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0087】
第2の実施例の印刷装置の構成、印刷装置の用紙搬送機構の構成および印刷装置の制御構成は、図1、図2および図3に示す第1の実施例の印刷装置の構成、印刷装置の用紙搬送機構の構成および印刷装置の制御構成と同様であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
上述した構成の作用について説明する。
まず、用紙の下端部の位置による用紙の状態について図10および図11に基づいて説明する。ここでは、リア給紙ルート171から用紙を給紙した場合の例を説明する。
【0088】
図10において、リア用紙検出センサ12からリーフスプリング16とプラテン14との接触部における用紙搬送方向(印字ヘッド8方向)の最下流の部位までの領域をL1、
リーフスプリング16とプラテン14との接触部における用紙搬送方向(印字ヘッド8方向)の最下流の部位からプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部までの領域をL2とする。
【0089】
用紙の下端部の位置が領域L1に存在する場合、その用紙はプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の引っ張り方向のフィードのみにより搬送される。用紙の下端部は、未だリーフスプリング16から外れていないのでリーフスプリング16とプラテン14との間で押さえられている状態である。
【0090】
また、用紙の下端部の位置が領域L2に存在する場合も、その用紙はプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の引っ張り方向のフィードのみにより搬送される。しかし、用紙の下端部は、リーフスプリング16から外れているのでリーフスプリング16とプラテン14との間で押さえられていない状態である。
【0091】
図11は第2の実施例における印刷装置の用紙搬送の説明図であり、用紙の下端部がリーフスプリング16から外れている状態を示している。なお、図11は、図10におけるリーフスプリング16、印字ヘッド8およびプルアップローラアセンブリ15を図中矢印Bが示す方向から見た図である。
【0092】
図11に示すように、用紙19の下端部が既にリーフスプリング16から外れている状態で印刷動作を行った場合、用紙19はプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部のみで固定された状態となっている。この状態では、プルアップローラ対151の接触部による用紙保持力は強くないため、印刷動作時の図中矢印Cが示す水平方向の印字ヘッド8の移動により、用紙19のフィード方向(図中矢印Dが示す方向)と略直交する方向(図中矢印Eが示す方向)に用紙19が容易に移動してしまう。
【0093】
なお、用紙19の下端部がリーフスプリング16とプラテン14との間で押さえられている状態で印刷動作を行った場合、用紙19はプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部およびリーフスプリング16とプラテン14との間の2箇所で保持されるため、用紙19の下端部がリーフスプリング16から外れている状態と比較すると用紙保持力は強い状態であるため、印刷動作時の印字ヘッドの移動による図中矢印Eが示す方向の用紙19の振れは少なくなる。
【0094】
次に、図1におけるフィード制御部70およびフィード量補正制御部71が行う用紙フィード制御処理を図12の第2の実施例における用紙フィード制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1を参照しながら説明する。
【0095】
S401:プリンタが用紙搬送のためのフィード動作を実行する際、フィード制御部70は用紙の実行フィード量を求め、その実行フィード量から用紙搬送方向における用紙下端部の垂直現在位置を計算し、RAMに記憶した垂直現在位置情報を更新する。なお、垂直現在位置は、用紙の下端部がリア用紙検出センサ12により検出されてからの移動量(フィード量)を積算して管理するものとする。
【0096】
S402:垂直現在位置情報を更新したフィード制御部70は、用紙下端制御処理を実行する。なお、用紙下端制御処理の詳細は後述する。
S403:用紙下端制御処理を実行したフィード制御部70は、フィード動作を実行する。
S404:フィード制御部70は、フィード動作が終了するまでフィード動作の監視を行い、フィード動作が終了すると用紙フィード制御処理を終了する。
【0097】
次に、図1におけるフィード制御部70およびフィード量補正制御部71が行う用紙下端制御処理を図13の第2の実施例における用紙下端制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1および図10を参照しながら説明する。
【0098】
S501:フィード制御部70は、これから実行する用紙のフィード量、すなわち用紙の上端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に入り込んでおり、用紙がリアプッシュトラクタにより送り出される場合の実行フィード量を求め、その実行フィード量および垂直現在位置情報からフィード動作実行後の用紙搬送方向における用紙下端位置を計算し、RAMに記憶した用紙下端位置情報を更新する。
【0099】
S502:フィード制御部70は、更新された用紙下端位置情報に基づいて用紙の下端部が用紙検出センサを通過してトラクタ(本実施例では、リアプッシュトラクタ17)から外れるか否かを判定し、トラクタから外れると判定すると処理をS503へ移行し、一方トラクタから外れない、すなわちトラクタによる用紙搬送が可能であると判定すると処理をS506へ移行する。
【0100】
S503:トラクタから外れると判定したフィード制御部70は、更新された用紙下端位置情報に基づいて用紙の下端部がリーフスプリング16から外れるか否かを判定し、リーフスプリング16から外れると判定すると処理をS505へ移行し、一方リーフスプリング16から外れないと判定すると処理をS504へ移行する。
【0101】
S504:用紙の下端部がリーフスプリング16から外れない場合、フィード量補正制御部71は、S501で算出された実行フィード量を図14に示すフィード量補正テーブルを用いて補正し、最適な実行フィード量を算出して処理をS506へ移行する。これにより、フィード制御部70は補正された実行フィード量でプルアップローラ対151によるフィード動作を行うことになる。
【0102】
S505:用紙の下端部がリーフスプリング16から外れる場合、フィード量補正制御部71は、S501で算出された実行フィード量を図15に示すフィード量補正テーブルを用いて補正し、最適な実行フィード量を算出して処理をS506へ移行する。これにより、フィード制御部70は補正された実行フィード量でプルアップローラ対151によるフィード動作を行うことになる。
【0103】
ここで、用紙がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151による引張りによるフィード動作が行われ、その用紙の下端部がトラクタから外れている場合の実際に用紙が移動するフィード量は、用紙の下端部がトラクタに架かっている場合のフィード量と比較して多くなる。
【0104】
したがって、実行フィード量の補正は、過剰分のフィード量を図14または図15に示すフィード量補正テーブルからフィード補正量として抽出し、抽出したフィード補正量をS501において算出した実行フィード量から減算して行っている。
なお、用紙がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151による引張りによるフィード動作が行われ、その用紙がリーフスプリング16によって押さえられている場合のフィード量は、リーフスプリング16の押さえによる抵抗があるため、用紙の下端部がリーフスプリング16から外れた状態の場合と比較してフィード量が少なくなる。
【0105】
したがって、用紙がリーフスプリング16によって押さえられている場合の実行フィード量の補正は、用紙の下端部がリーフスプリング16から外れた状態の場合の実行フィード量より少なくなるようにしている。
このように用紙の下端部がリーフスプリング16から外れる場合、プルアップローラ対151の引張りのみによるフィードとなるため、細かい単位でフィード量のマイナス補正を行い、フィード量が過剰にならないようにする。
【0106】
また、印刷に使用する用紙(例えば、複写紙や葉書など)によって実際に移動するフィード量が異なるため、実行フィード量の補正は、ヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙を判別し、用紙の厚さに応じて最適な実行フィード量の補正を行うようにしている。
【0107】
図14は用紙の下端部がリーフスプリング16から外れない場合のフィード量補正テーブルであり、例えばヘッドギャップ設定情報が「1」のとき、フィード補正量は「0.3インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「2」のとき、フィード補正量は「0.275インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「3〜4」のとき、フィード補正量は「0.25インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「5〜8」のとき、フィード補正量は「0.225インチフィード毎に1/360インチ」とし、それぞれのフィード補正量を実行フィード量から減算するようにしている。なお、フィード補正量はトラクタから外れて25mmフィードした後からリーフスプリング16に到達するまで減算される。
【0108】
図15は用紙の下端部がリーフスプリング16から外れる場合のフィード量補正テーブルであり、例えばヘッドギャップ設定情報が「1」のとき、フィード補正量は「0.25インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「2」のとき、フィード補正量は「0.2インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「3〜4」のとき、フィード補正量は「0.175インチフィード毎に1/360インチ」、ヘッドギャップ設定情報が「5〜8」のとき、フィード補正量は「0.15インチフィード毎に1/360インチ」とし、それぞれのフィード補正量を実行フィード量から減算するようにしている。なお、フィード補正量はリーフスプリング16から外れてから用紙の下端部がプルアップローラアセンブリ15内のプルアップローラ対151の接触部に到達するまで減算される。
【0109】
S506:フィード制御部70は、補正後の実行フィード量がnインチ(例えば、1インチ)を超えるか否か判定を行い、超えていると判定すると処理をS507へ移行し、超えていないと判定すると処理を終了する。
【0110】
S507:フィード制御部70は、補正後の実行フィード量がnインチを超えたことを、メカ制御部40を介してスペース制御部50へ通知し、スペース制御部50はセンタリング動作を実行し、フィード動作に最適な位置(例えば、印字ヘッドが移動可能な水平方向における中央部)へ印字ヘッドを移動する。このようにして用紙上端制御処理を終了する。
【0111】
次に、図1におけるスペース制御50および印字制御部60が行う印字制御処理を図16の第2の実施例における印字制御処理を示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって図1および図10を参照しながら説明する。
【0112】
本実施例の印字制御処理は、用紙の下端部における印字位置のずれ等の印刷品位の低下を防止するための処理である。用紙の下端部がリアプッシュトラクタ17またはフロントプッシュトラクタ18から外れた場合、リアプッシュトラクタ17またはフロントプッシュトラクタ18によるフィード動作ができないため、プルアップローラ対151による引張りのみのフィード動作となり、用紙の下端部は固定されず印刷動作による印字ヘッド8の移動により用紙の下端部が移動してしまい、その結果として用紙の下端部における印字位置のずれ等の印刷品位の低下が発生する。
【0113】
このような印刷品位の低下を低減するため、本実施例の印字制御処理では、用紙の下端部がリアプッシュトラクタ17またはフロントプッシュトラクタ18から外れた場合、第1の実施例と同様に、印刷速度(印字ヘッド8の移動速度)の抑制や印刷方向(印字動作を行う印字ヘッド8の移動方向)を片方向とする制限を実行する。
なお、以下に説明する印字制御処理は1行分の印字制御処理である。
【0114】
S601〜S603:図8におけるS301〜S303と同様の処理なのでその説明を省略する。
S604:印字制御部60は、現在の用紙下端位置に基づいて用紙の下端部が用紙検出センサを通過してトラクタ(本実施例では、リアプッシュトラクタ17)から外れるか否かを判定し、トラクタから外れると判定すると処理をS605へ移行し、一方トラクタから外れない、すなわちトラクタによる用紙搬送が可能であると判定すると処理をS612へ移行する。
【0115】
S605:トラクタから外れると判定した印字制御部60は、現在の用紙下端位置に基づいて用紙の下端部がリーフスプリング16から外れるか否かを判定し、リーフスプリング16から外れると判定すると処理をS606へ移行し、一方リーフスプリング16から外れないと判定すると処理をS608へ移行する。
【0116】
S606:用紙の下端部がリーフスプリング16から外れると判定した印字制御部60は、プルアップローラ対151の接触部のみで固定されている用紙が印刷動作時の印字ヘッド8の移動によって発生する用紙のずれを防止するため、ROMに記憶されている印刷速度減速テーブルから印刷速度減速比を抽出し、S602で決定した印刷速度を変更(補正)する。この印刷速度減速テーブルは、ヘッドギャップ検出センサによって読み出されたヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙の厚さを判別し、用紙の厚さに応じて最適な印刷速度に補正を行うためのものであり、例えば図17(a)に示すように、ヘッドギャップ設定情報が「1」のとき、印刷速度減速比を75%、ヘッドギャップ設定情報が「2」のとき、印刷速度減速比を70%、ヘッドギャップ設定情報が「3〜4」のとき、印刷速度減速比を60%、ヘッドギャップ設定情報が「5〜8」のとき、印刷速度減速比を50%とし、この印刷速度減速比に基づいてS602で決定した印刷速度を減速補正する。
【0117】
本印刷制御処理においても上述した用紙下端制御処理の実行フィード量補正と同様に、印刷に使用する用紙(例えば、複写紙や葉書など)によって印刷方向の摩擦や負荷が異なるため、印刷速度の決定は、ヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙を判別し、用紙の厚さに応じて最適な印刷速度を計算して減速補正し、印刷による印字ヘッドの移動に伴う用紙の下端部の水平方向の振れを低減させるようにしている。
【0118】
S607:印字制御部60は、印字ヘッド8の複数パスによる印刷動作を抑制する設定を行い、処理をS609へ移行する。ここで、複数パスによる印刷動作とは、1行の印刷を複数回の印字ヘッド8の水平方向の移動動作により行う動作であり、主に複写紙を使った印刷で鮮明に複写する場合や強調印字等の印字モディファイ設定により発生する複数パスによる印刷で適用される。なお、本制御による複数パスによる印刷動作の抑制は、複数パスによる印刷動作を実行しないと正しい印刷結果が得られない場合を除き、適用するものとする。
【0119】
S608:一方、S605において用紙の下端部がリーフスプリング16から外れないと判定した印字制御部60は、プルアップローラ対151の接触部およびリーフスプリング16とプラテン14との間の2箇所で固定されている用紙が印刷動作時の印字ヘッド8の移動によって発生する用紙のずれを防止するため、ROMに記憶されている印刷速度減速テーブルから印刷速度減速比を抽出し、S602で決定した印刷速度を変更(補正)する。この印刷速度減速テーブルは、ヘッドギャップ検出センサによって読み出されたヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙の厚さを判別し、用紙の厚さに応じて最適な印刷速度に補正を行うためのものであり、例えば図17(b)に示すように、ヘッドギャップ設定情報が「1」のとき、印刷速度減速比を95%、ヘッドギャップ設定情報が「2」のとき、印刷速度減速比を90%、ヘッドギャップ設定情報が「3〜4」のとき、印刷速度減速比を80%、ヘッドギャップ設定情報が「5〜8」のとき、印刷速度減速比を70%とし、この印刷速度減速比に基づいてS602で決定した印刷速度を減速補正する。
【0120】
このように用紙の下端部がリーフスプリング16から外れない場合は、用紙がプルアップローラ対151の接触部およびリーフスプリング16とプラテン14との間の2箇所で固定されているため、リーフスプリング16から外れる場合と比較して印刷速度を僅かに速くしている。
【0121】
本印刷制御処理においても上述した用紙下端制御処理の実行フィード量補正と同様に、印刷に使用する用紙(例えば、複写紙や葉書など)によって印刷方向の摩擦や負荷が異なるため、印刷速度の決定は、ヘッドギャップ設定情報を用いて使用する用紙を判別し、用紙の厚さに応じて最適な印刷速度を計算して減速補正し、印刷による印字ヘッドの移動に伴う用紙の下端部の水平方向の振れを低減させるようにしている。
【0122】
S609:また、スペース制御部50は、用紙の下端部がトラクタから外れているため、印刷を行わない場合の印字ヘッド8のハイスキップ移動による高速移動を抑制する制御も行う。この高速移動の抑制は、印字ヘッド8が用紙上で水平方向に高速移動することにより用紙の上端部が水平方向に振られることを極力低減させるために行うものである。
S610:スペース制御部50は、印刷ブロックの印刷密度が高い高Duty印刷か否か、すなわち印刷ブロックの印刷密度が閾値を超えているか否かを判定し、超えていると判定すると処理をS611へ移行し、超えていないと判定すると処理をS612へ移行する。
【0123】
S611:高Duty印刷であると判定したスペース制御部50は、印刷方向を片方向印刷として両方向印刷動作を抑制し、印字ヘッド8の水平方向における往復移動および印刷による用紙のずれを低減させる。
S612:印字制御部60は、現在の印字ヘッド8の位置を求める。
【0124】
S613:印字制御部60は、現在の印字ヘッド8の位置およびS601で求めた印刷ブロックの左端位置と右端位置から最短時間で印刷するための印刷方向を判定する。印字制御部60は、現在の印字ヘッド8がこれから印刷する印刷ブロックの中心位置より左側または中心に位置すると判定すると処理をS614へ移行し、右側に位置すると判定すると処理をS615へ移行する。
【0125】
S614:現在の印字ヘッド8がこれから印刷する印刷ブロックの中心位置より左側または中心に位置すると判定されるとスペース制御部50は、印刷方向を往方向として印字ヘッド8を移動させながら印刷ブロックを左端から印刷(Fow印字)し、印刷制御処理を終了する。
S615:現在の印字ヘッド8がこれから印刷する印刷ブロックの中心位置より右側に位置すると判定されるとスペース制御部50は、印刷方向を復方向として印字ヘッド8を移動させながら印刷ブロックを右端から印刷(Rev印字)し、印刷制御処理を終了する。
【0126】
このように、用紙の下端部がトラクタから外れる場合、フィード量補正制御部71は、受信データに基づいて算出した実行フィード量から補正値を減算して最適な実行フィード量に補正するようにしたことにより、フィード量の伸びによる用紙の位置ずれを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができる。
【0127】
また、用紙の下端部がトラクタから外れる場合、印字制御部60は、受信データに基づいて決定した印刷速度を減速補正するようにしたことにより、印字動作時の印字ヘッド8の移動による用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができる。
【0128】
さらに、用紙の下端部がトラクタから外れる場合、スペース制御部50は、印字ヘッド8のハイスキップ移動による高速移動を抑制するようにしたことにより、印字ヘッド8の高速移動による用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができる。
【0129】
以上説明したように、第2の実施例では、用紙の下端部がトラクタから外れる場合、受信データに基づいて算出した実行フィード量から補正値を減算して最適な実行フィード量に補正するようにしたことにより、フィード量の詰まりによる用紙の位置ずれを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
【0130】
また、受信データに基づいて決定した印刷速度を減速補正するようにしたことにより、印字動作時の印字ヘッドの移動による用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
さらに、印字ヘッドの高速移動を抑制するようにしたことにより、用紙の水平方向の振れを抑制して用紙の搬送精度を向上させ、印刷品位を向上させることができるという効果が得られる。
【0131】
なお、第1の実施例では、用紙上端部におけるフィード制御および印字制御を行い、第2の実施例では、用紙下端部におけるフィード制御および印字制御を行うものとして説明したが、第1の実施例と第2の実施例とを組み合わせて、用紙上端部および用紙下端部においてそれぞれフィード制御および印字制御を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0132】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 LSI
5 印字ヘッド駆動回路
6 スペースモータ駆動回路
7 フィードモータ駆動回路
8 印字ヘッド
9 スペースモータ
10 フィードモータ
11 ヘッドギャップ検出センサ
12 リア用紙検出センサ
13 フロント用紙検出センサ
14 プラテン
15 プルアップローラアセンブリ
151 プルアップローラ対
16 リーフスプリング
17 リアプッシュトラクタ
18 フロントプッシュトラクタ
30 パワーオン制御部
35 データ受信部
36 受信バッファ
37 受信データ解析部
40 メカ制御部
50 スペース制御部
51 印刷位置計算部
52 キャリッジ移動制御部
60 印字制御部
61 印刷速度決定部
70 フィード制御部
71 フィード量補正制御部
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を送り出す記録媒体送り手段と、
前記記録媒体の搬送方向における前記記録媒体送り手段の下流に配設され、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
前記記録媒体送り手段と前記記録媒体搬送手段との間に配設され、記録媒体の搬送方向と直交する方向に移動しながら記録媒体に印字を行う印字手段とを備え、
記録媒体の端部の位置に応じて前記記録媒体送り手段または前記記録媒体搬送手段による該記録媒体の搬送量を補正する搬送量補正制御部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1の印刷装置において、
前記搬送量補正制御部は、
前記記録媒体の先端が前記記録媒体搬送手段に到達していないとき、前記記録媒体送り手段による記録媒体の搬送量を、前記記録媒体の先端が前記記録媒体搬送手段に到達しているときの搬送量より多くすることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の印刷装置において、
前記記録媒体の先端が前記記録媒体搬送手段に到達していないとき、前記印字手段が印字を行う方向を片方向とする印字手段移動制御部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3の印刷装置において、
前記印字手段移動制御部は、前記記録媒体の先端が前記記録媒体搬送手段に到達していないとき、前記印字手段の高速移動を抑制することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1の印刷装置において、
前記搬送量補正制御部は、
前記記録媒体の後端が前記記録媒体送り手段から外れているとき、前記記録媒体搬送手段による記録媒体の搬送量を、記録媒体の後端が前記記録媒体送り手段から外れていないときの搬送量より少なくすることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1または請求項5の印刷装置において、
前記記録媒体の後端が前記記録媒体送り手段から外れているとき、前記印字手段が印字を行う方向を片方向とする印字手段移動制御部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項6の印刷装置において、
前記印字手段移動制御部は、前記記録媒体の後端が前記記録媒体送り手段から外れているとき、前記印字手段の高速移動を抑制することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項の印刷装置において、
前記搬送量補正制御部は、前記記録媒体の厚さに応じて前記記録媒体送り手段または前記記録媒体搬送手段による該記録媒体の搬送量の補正量を変化させることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−131126(P2012−131126A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285444(P2010−285444)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】