説明

印刷装置

【課題】装置の大型化を生じることなく、中間転写媒体の剥離不良、印刷媒体の損傷を防止することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、印刷装置は、中間転写フィルムの受像層に情報を印刷する印刷ユニットと、ヒートローラ42とこのヒートローラを覆う断熱カバー46とを有し、ヒートローラにより前記情報が印刷された中間転写フィルム12の受像層を印刷媒体に転写する転写ユニット40と、印刷情報が転写された中間転写フィルムに冷却風を当てて冷却する冷却機構70と、前記断熱カバーに開口形成され、前記冷却風を前記ヒートローラと中間転写フィルムとの間に導く通風口76と、前記通風口を開閉するシャッタ78と、前記シャッタの開閉を制御する制御部と、を有するシャッタ機構と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、中間転写媒体を用いて紙葉類などに印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類など表面の平滑性が良くない印刷媒体にも印刷できる印刷方法のひとつに中間転写フィルムを用いた印刷方法がある。一般に、中間転写フィルムは、基材上に受像層(必要に応じて剥離層、接着層)などの薄膜層が塗布され、印刷部にて中間転写フィルムの受像層に、インクリボンとサーマルヘッドで画像を形成される。その後、転写部にてヒートローラとバックアップローラ間に中間転写フィルムと印刷媒体を挟み込んで圧力と熱を与え、形成された画像を薄膜層と一緒に印刷媒体表面に転写する。次いで、剥離部にて薄膜層が転写された印刷媒体から中間転写フィルムの基材をそれぞれ別の方向へ搬送することにより剥離する。ヒートローラは立ち上げ時間短縮と保温、装置内温度上昇を防ぐ目的で断熱カバーにより覆われている。
【0003】
剥離時、中間転写フィルムの薄膜層と基材と間の温度が高いと、中間転写フィルムの薄膜層が基材と剥離するときの剥離力が強い状態にあるため、剥離不良や印刷媒体破損が生じることがある。そのため、温度が十分下がってから剥離を行うことが必要である。このことから、剥離シャフトをヒートローラから転写長さ以上に離して搬送方向下流に配置し、転写が終了した印刷媒体を中間転写フィルムと重ねあわせた状態で停止させ冷却する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−103811号公報
【特許文献2】特開2008−055731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷装置において、ヒートローラは断熱カバーで覆われているため、特にヒートローラ下部はその熱により雰囲気温度が高温になっている。そのため、この部分を十分に冷却することが難しい。冷却性を向上するために、断熱カバーを廃止するとヒートローラ下部の温度はあまり上昇しない。しかし、この場合、ヒートローラの放熱が大きくなるため、加熱時間が延長し、また温度を一定に保つために過大な電力が必要になる。また、ヒートローラ下部から離れた位置で冷却する構造にすると、ヒートローラから剥離シャフトの距離が大きくなり、印刷装置全体が大型化する問題がある。
【0006】
この発明の課題は、装置の大型化を生じることなく、中間転写媒体の剥離不良、印刷媒体の損傷を防止することが可能な印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、印刷装置は、中間転写フィルムの受像層に情報を印刷する印刷ユニットと、ヒートローラとこのヒートローラを覆う断熱カバーとを有し、ヒートローラにより前記情報が印刷された中間転写フィルムの受像層を印刷媒体に転写する転写ユニットと、前記印刷情報が転写された中間転写フィルムに冷却風を当てて冷却する冷却機構と、前記断熱カバーに開口形成され、前記冷却風を前記ヒートローラと中間転写フィルムとの間に導く通風口と、前記通風口を開閉するシャッタと、前記シャッタの開閉を制御する制御部と、を有するシャッタ機構と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る印刷装置を概略的に示す側面図。
【図2】図2は、前記印刷装置におけるヒートローラ、断熱カバー、シャッタおよびシャッタ駆動機構を示す斜視図。
【図3】図3は、印刷媒体としての通帳の頁に転写媒体から印刷画像を転写する工程を示す断面図。
【図4】図4は、印刷媒体の一例である通帳の頁を示す平面図。
【図5】図5は、前記シャッタが閉じた状態の断熱カバー回りの構造および冷却機構を示す側面図。
【図6】図6は、前記シャッタが開いた状態の断熱カバー回りの構造および冷却機構を示す側面図。
【図7】図7は、前記印刷装置における転写動作、冷却動作を概略的に示す図。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る印刷装置を示す断面図。
【図9】図9は、前記第3の実施形態に係る印刷装置のヒートローラ回りの構造および冷却機構を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る印刷装置全体を概略的に示す側面図、図2は、ヒートローラ回りの構造、シャッタ機構を示す斜視図、図3は中間転写フィルムおよびその転写状態を示す断面図、図4は、印刷媒体の一例として通帳およびその印刷頁を示す平面図である。
【0010】
図1に示すように、印刷装置10は、中間転写フィルム12を所定の搬送路に沿って搬送し、転写後に、中間転写フィルムを巻き取るフィルム搬送機構14と、中間転写フィルムの転写層表面に所望の情報を印刷する印刷ユニット30と、中間転写フィルムに印刷された所望情報を印刷媒体としての通帳16の印刷頁Pの表面に重ね合わせ、圧力と熱によって印刷情報を印刷頁Pの表面に転写する転写ユニット40と、印刷媒体と転写位置へ搬送する媒体搬送機構60と、転写後、剥離位置において、中間転写フィルムおよび印刷媒体を冷却する冷却機構70と、を備えている。
【0011】
図3に示すように、中間転写フィルム12は、例えば、PETフィルムからなる基材13aと、この基材表面に順に塗布された剥離層13b、および受像層13c兼接着層とを有している。剥離層13bは、例えば、フェノキシ系樹脂で形成され、受像層13c兼接着層は、例えば、ポリエステル系樹脂で形成されている。また、中間転写フィルム12には、ホログラム層や紫外線によって発光する蛍光発色層などの機能層を設けて、転写対象への転写と同時にこれらの機能層も転写することが可能である。
【0012】
図1に示すように、フィルム搬送機構14は、中間転写フィルム12が巻き付けられた送り出しロール17と、転写後の中間転写フィルム12を巻き取る巻取りロール18と、送り出しロール17から送り出された中間転写フィルム12を所定の搬送路に沿って走行させるプラテンローラ20、駆動ローラ22、テンショナ24、ガイドローラ25,26、剥離ローラ27を備えている。ガイドローラ26と剥離ローラ27との間において、中間転写フィルム12は、転写位置を通してほぼ水平に案内、走行される。
【0013】
また、フィルム搬送機構14は、駆動ローラ22を駆動して中間転写フィルム12を走行させる駆動機構28を備え、この駆動機構28は、例えば、5相ステッピングモータ28aおよびモータの駆動力を減速して駆動ローラ22に伝える減速機構28bを有している。更に、フィルム搬送機構14は、送り出しロール17とプラテンローラ20との間に設けられ、中間転写フィルム12上のホログラム形成位置マークを検知する第1位置センサ29a、および、ガイドローラ25、26間に設けられ、中間転写フィルム12に形成された転写位置マークを検知する第2位置センサ(透過センサ)29bを備えている。
【0014】
図1に示すように、印刷ユニット30は、プラテンローラ20に隣接対向して設けられたサーマルヘッド32と、プラテンローラとサーマルヘッドとの間を通してインクリボン35を送るリボン搬送機構34と、インクリボンの送り量を検知する送り量センサ36と、を備えている。
【0015】
印刷ユニット30では、サーマルヘッド32とプラテンローラ20との間に、インクリボン35と中間転写フィルム12とを重ねて挟み込み、中間転写フィルム12の受像層13c表面に、サーマルヘッド32と溶融インクリボン35によって文字や画像等の印刷情報の鏡像を印刷する。中間転写フィルム12の搬送は、主に駆動ローラ22によって速度が決まるため、駆動ローラ22の駆動は前述した駆動機構28により正確に行われる。また、印刷される情報は、反転画像であるという特徴がある。
【0016】
印刷される情報は、黒などの単色印刷でも、Y、M、C、黒の4色重ねあわせによるカラー印刷でも良く、必要に応じてインクリボン35を単色や複数色繰り返し塗布にすれば良い。また、文字印刷のために溶融黒インク、カラー印刷のためにY、M、Cの昇華染料が繰り返し塗布されていても良い。複数色の重ね合わせ印刷の場合は、中間転写フィルム12がサーマルヘッド32を色数と同じ回数往復することで、重ね合わせ印刷が行われる。
【0017】
また、印刷ユニット30は、転写する印刷情報に加えて「転写位置マーク」を中間転写フィルム12に印刷する機能を有している。この転写位置マークは、転写時、第2位置センサ29bによって検知され、転写の位置合わせに用いる。
【0018】
図1および図5に示すように、印刷媒体としての通帳16を転写位置へ搬送する媒体搬送機構60は、転写位置を含む水平な搬送路61に沿って配置された複数のガイド板62と、通帳を挟んで搬送する複数の搬送ローラ64と、搬送ローラを駆動する図示しない駆動機構と、を備えている。搬送路の入口には、所望の印刷頁Pを開いて搬送路に挿入された通帳の挿入を検知する挿入センサ66と、転写位置の取込み搬送下流側に設けられ、印刷媒体の転写位置制御のために通帳16の先端を検知する通帳位置センサ68と、を備えている。
【0019】
通帳16等の被転写媒体は、転写される印刷頁Pがオペレータによって開かれた状態で印刷装置取込口から取り込まれ、挿入センサ66により通帳の挿入が検知されると、媒体搬送機構60は搬送ローラ64を駆動して印刷頁Pを所定の速度で転写位置を通して搬送する。転写後、印刷頁Pの搬送方向先端部が通帳位置センサ68により検知されると、媒体搬送機構60は、搬送ローラ64を逆転駆動し、転写、剥離後、取込み口方向に搬送して通帳16を取込み口から排出する。
【0020】
図1、図2および図5に示すように、転写ユニット40は、ガイドローラ26と剥離ローラ27との間、水平なフィルム搬送路の一方側に設けられたヒートローラ42と、フィルム搬送路を挟んでヒートローラ42に対向して配設されたバックアップローラ44と、フィルム搬送路側を除いて、ヒートローラの周囲を覆った断熱カバー46と、を備えている。ヒートローラ42は、その内部にヒータ43が内蔵されているとともに、外周部の一部は、平坦に切除されている。転写の開始位置と終了位置は、ヒートローラ42の切除された平坦カット面42aの両側エッジ部分により規定される。断熱カバー46は、ヒートローラ42の熱で印刷装置内が高温になるのを防止する機能と、ヒートローラ42自体を保温する機能とを有している。断熱カバー46の内面側に断熱材を貼り付けても良い。
【0021】
ヒートローラ42は、図示しないDCサーボモータもしくはステッピングモータにより正確な速度で回転される。バックアップローラは自由に回転可能に支持され、コイルばね47により、ヒートローラ42に向かって付勢されている。
【0022】
転写ユニット40では、印刷ユニット30で印刷情報が付与された中間転写フィルム12の印刷面(受像層13c)と通帳16の印刷頁Pとを重ね合わせ、ヒートローラ42による加圧、加熱を行い、印刷情報を被転写媒体である印刷頁Pに転写する。この時、中間転写フィルム12と印刷頁Pとの位置合わせは次のように行われる。
【0023】
1)中間転写フィルム12の該当転写エリアに印刷完了後、中間転写フィルム12はヒートローラ42方向に送られ、印刷ユニット30にて新たに形成された印刷インクによる「転写位置マーク」を経路途中の第2位置センサ29bによって検出することにより、ヒートローラ42に対して決められた転写位置に中間転写フィルム12が搬送される。
【0024】
2)一方、通帳16は、転写される印刷頁Pがオペレータによって開かれた状態で印刷装置取込口から取り込まれ、通帳位置センサ65によって印刷頁Pの挿入端を検知することにより、ヒートローラ42に対して決められた転写位置に通帳16が搬送される。
【0025】
互いに位置決めが行われた中間転写フィルム12と印刷頁Pは、ヒートローラ42とバックアップローラ44との間に挟まれ、ヒートローラ42の回転に合わせて、加圧、加熱される。ヒートローラ42はDCサーボモータもしくはステッピングモータにより正確な速度で駆動され、また、回転自由なバックアップローラ44との間にはコイルバネ47で発生された圧力がかかるようになっている。
【0026】
図3は、転写動作を模式的に示している。この図に示すように、ヒートローラ42による加圧、加熱動作により、中間転写フィルム12の剥離層13b、受像層13c、および印刷ユニット30で付与された印刷情報が印刷頁Pの表面に転写される。転写後、中間転写フィルム12の基材13aは、剥離ローラにガイドされて剥離した後、巻取りロール18に巻き取られる。
【0027】
巻取りロール18の巻取り軸にはその回転量を計測するための図示しないロータリーエンコーダが接続され、トルクリミッタを介してパルスモータで回転動作する。ロータリーエンコーダの計測結果に基づき巻き取り回転速度を制御する巻取り回転速度制御手段を備えている。
【0028】
印刷情報の転写が完了した通帳16は、剥離した後、印刷頁Pが開かれた状態のままの状態でスイッチバックされ、再び取込口からオペレータに向けて排出される。
【0029】
転写後に中間転写フィルム12は、未使用部分が装置内に引き出されているため、中間転写フィルムのムダを防止するため、未使用部分に次の印刷が行えるような位置に中間転写フィルム12を巻き戻す。この際も、印刷ユニット30にて印刷した「転写位置マーク」をプラテンローラ20の上流側に位置するセンサ、例えば、第1位置センサとほぼ同列に配置された第3位置センサ29cで検知し、戻し量を制御する。
【0030】
図4は、印刷後の通帳16の一例を示している。印刷頁Pには、中間転写印刷方式で印刷された、通帳所持人のカラー顔画像Fと、所持人やその他のセキュリティ情報Sに加えて通帳類シリアル番号が黒文字で印刷されている。これら顔画像Fやセキュリティ情報Sは、ホログラムパターンを持つ薄膜オーバーコート層45で覆われている。
【0031】
次に、冷却機構70について説明する。図1、図2、図5に示すように、冷却機構70は、冷却ファン72と、冷却ファンからの冷却風を断熱カバー46と剥離ローラ27との間の中間転写フィルム12に導く、すなわち、転写後、剥離位置にある中間転写フィルム12に吹き付ける通風ダクト74と、を有している。
【0032】
また、冷却機構70は、断熱カバー46の下流側側壁、つまり、剥離ローラ27側の側壁に形成された複数の通風口76と、これらの通風口76を開閉するシャッタ機構と、を備えている。シャッタ機構は、通風口76を開閉するシャッタ78と、シャッタを昇降駆動するシャッタ駆動部80、例えば、ソレノイド80aおよびプランジャ80bと、シャッタ駆動部の開閉動作を制御する制御部82と、を備えている。
【0033】
複数の通風口76は、断熱カバー46の下流側側壁において、搬送路側の下端近傍に形成され、下端縁に沿って並んで位置している。シャッタ78は、複数の通風口76を同時に閉塞可能な大きさの細長い板状に形成され、断熱カバー46の側壁に昇降自在に取り付けられている。また、シャッタ駆動部80のプランジャ80bは、シャッタ78に連結され、ソレノイド80aを励起することにより、プランジャ80bが上方に引き込まれ、これによりシャッタ78が開放位置に引き上げられ、通風口76を開放する。また、ソレノイド80aの励起を停止することにより、図示しないバネ等によりプランジャ80bが押し下げられ、シャッタ78は通風口76を閉じる閉塞位置に下降される。
【0034】
図5に示すように、シャッタ78を閉じている間、冷却ファン72から供給される冷却風は、シャッタ78および断熱カバー46により遮蔽され、断熱カバー内にはほとんど流入しない。図6に示すように、シャッタ78が開けられ通風口76が開放されると、冷却ファン72から供給される冷却風は、通風口76を通ってヒートローラ42の下部と中間転写フィルム12との間に通風され、中間転写フィルム12を冷却する。
【0035】
以上のように構成された印刷装置10の動作について説明する。
中間転写印刷の基本動作
1)中間転写フィルム12の巻き取り軸は、印刷ユニット30で印刷動作中、中間転写フィルム12に適度な張力を与えるためトルクリミッタを介してその周速が印刷搬送速度より速くなるように設定された速度で駆動される。中間転写フィルム12の巻取り周速はトルクリミッタの作用で印刷速度と同じになるが、巻取り回転量をロータリーエンコーダで計測してその結果と印刷速度より巻き取り径を計算する。
【0036】
2)ヒートローラ42を初期位置である平坦カット面42aが印刷媒体の搬送路61と平行の状態になるまで回転させる。
3)図7(a)、図7(b)に示すように、印刷媒体である通帳16の印刷頁Pを挿入口から搬送路61に差し込み、媒体搬送機構60により搬送して、ヒートローラ42下の転写動作開始位置にセットする。この際、印刷頁Pの先端が通帳位置センサ68に検知された時点で、通帳16を所定距離だけ挿入口側へ戻し、転写開始位置を微調整する。また、バックアップローラ44は解放状態にして中間転写フィルム12と印刷頁Pとが強く接触しないようにすることが望ましい。
【0037】
4)図7(c)に示すように、バックアップローラ44を上昇させて、ヒートローラ42との間に中間転写フィルム12および印刷頁Pを挟んだ後、搬送ローラ64とヒートローラ42をそれぞれ転写速度の周速で回転させる。これにより、通帳16とじ目近くにヒートローラ42の平坦カット面42aのサイドエッジが接触し、転写動作が開始される。同時に、中間転写フィルム12は巻取り回転速度制御手段によって上記1)で得られた巻き径より転写搬送速度とほぼ同じ速度になるような搬送速度に制御され巻き取られる。
【0038】
5)ヒートローラ42の円弧状外周面で、中間転写フィルム12上の印刷情報(例えば、印刷画像)と受像層13c等が印刷頁Pの表面に転写される。中間転写フィルム12の薄膜層は、ヒートローラ42の熱と圧力で印刷頁Pと接着されるが、転写後、所定の時間が経過して薄膜層と中間転写フィルム12の基材13aとの間の温度が低くなるまではそれらの間には印刷媒体の機械強度よりも強い接着力をもっている。
【0039】
6)搬送された印刷頁Pと中間転写フィルム12は、重ねあわせた状態で、ヒートローラ42とバックアップローラ44によって挟持され、転写時の状態を保ちながら搬送される。
【0040】
7)図7(d)に示すように、ヒートローラ42は、転写、搬送が終了後、初期位置まで回転されたあと停止させる。同時に、搬送ローラ64も回転停止し、通帳16と中間転写フィルム12を剥離ローラ27とヒートローラ42との間に停止させる。また、バックアップローラ44を下降させ、印刷頁Pから離間させる。ここで、剥離ローラ27がヒートローラ42から転写長さ以上離れた位置に配置されているため、通帳16と中間転写フィルム12を重ね合わさった状態のままに放置することが可能となる。この状態で、図7(e)に示すように、シャッタ78を開放し、冷却機構70により中間転写フィルム12を空冷冷却する。
【0041】
8)予め設定された時間放置して通帳16の印刷頁Pと中間転写フィルム12の温度が所定の温度以下になった後、シャッタ78を閉じる。更に、図7(f)に示すように、搬送ローラ64で通帳16を搬送し挿入口から排出する。同時に、巻取り軸で中間転写フィルム12を巻取り方向に搬送することで、通帳16の印刷頁Pと中間転写フィルム12の基材13aの剥離を行う。
【0042】
9)このようにすると、中間転写フィルム12の薄膜層と基材13a間の温度が十分に下がり、中間転写フィルム12の薄膜層が基材13aと剥離するときの剥離力が印刷媒体の機械的強度よりも弱くなった後に剥離を行うため、それぞれの搬送不良、転写不良や印刷媒体の破損の問題を解決することが可能となる。
【0043】
中間転写フィルム12は、巻取り回転速度をその周速と印刷媒体の搬送速度のほぼ同じになるよう制御するため、印刷媒体と中間転写フィルムの搬送に大きな差が生じることはない。よって速度差によって生じるせん断力などが原因の印刷媒体の変形や破壊を防止することが可能となる。
【0044】
一方、シャッタ78の開閉動作について説明する。
10)前記1)〜6)までの動作では、シャッタ78を閉じて断熱カバー46の内側に中間転写フィルム冷却装置の風が流れないようになっている。こうすることで、ヒートローラ42が直接空冷されることがなく、また、断熱カバー46内の雰囲気温度が高温状態に保たれるのでヒートローラ42表面からの温度放射を抑えることができる。ヒートローラ42の温度が低下しにくいため、短時間での印刷装置立ち上げが可能になり、また消費電力の抑制が可能になる。
【0045】
11)前記7)中のヒートローラ42による搬送を終了後、すなわち、転写動作終了後、制御部82は、予め設定された時間が経過した後、シャッタ駆動部80を駆動しシャッタ78を開放する。これにより、ヒートローラ42下部に冷却風が流れ込むことで、中間転写フィルム12を冷却する。
【0046】
12)前記8)の剥離搬送開始後、制御部82は、予め設定された時間が経過した後、シャッタ78が閉じ、通風口76を閉塞する。これにより、断熱カバー46の内側に中間転写フィルム冷却用の冷却風が流入しないようにし、ヒートローラ42の温度ができるだけ低下しないようにすることができる。
【0047】
以上のように構成された印刷装置によれば、ヒートローラ42の保温とヒートローラ下部の冷却をシャッタ78の開閉により切り替えて行うことが可能になるため、印刷装置の立ち上げ時間の延長をすることなく、中間転写フィルム12を効率的に冷却することができる。また、ヒートローラ42下部で冷却が可能になるため、中間転写フィルムの冷却用搬送距離を長くする必要がなく、装置全体のサイズを小さくすることが可能となる。ヒートローラ42下部の冷却が不要な印刷媒体の場合は、シャッタ78を開かないようにすることができ、ヒートローラ42の保温効果を更に高くすることが可能になる。
以上のことから、装置の大型化を生じることなく、中間転写媒体の剥離不良、印刷媒体の損傷を防止することが可能な印刷装置が得られる。
【0048】
次に、他の実施形態に係る印刷装置について説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0049】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る印刷装置10のヒートローラ周囲の構造および冷却機構70を示している。前述した第1の実施形態において、断熱カバー46の通風口76は、側壁に形成された開口としたが、本実施形態によれば、通風口76は、断熱カバーの側壁下端縁に開口する切欠きにより構成している。この場合でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係る印刷装置を示している。この図に示すように、第3の実施形態によれば、印刷装置10は、複数枚の単票Tを積層状態で収容可能な単票ホッパ90と、通帳差し込み兼排出口92を更に備えている。通帳を印刷する場合は、通帳を通帳差し込み口92から搬送路61に差し込み、転写開始位置まで通帳を搬送した後、スイッチバック搬送して転写・剥離を行い、排出口から排出する構造になっている。
単票Tに印刷する場合は、媒体搬送機構60により、単票ホッパ90から1枚ずつ給紙した単票Tを転写開始位置まで搬送した後、転写・剥離を行い、排出口92から排出する。
【0051】
シャッタ駆動部80は、印刷する媒体の種類によりシャッタ開閉モードを切り替える機能を有している。例えば、通帳の特性として剥離可能温度が高くヒートローラ42下部の冷却が不要となる。そのため、印刷媒体が通帳の場合は冷却時にシャッタ78を閉じるように制御し、また、印刷媒体が単票Tの場合は冷却時にシャッタ78を開くように制御する。
以上のように構成された印刷装置においても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、処理する印刷媒体は、通帳、単票に限らず、ラベルシート、カード等、種々の媒体に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…印刷装置、12…中間転写フィルム、14…フィルム搬送機構、16…通帳、
28…駆動機構、30…印刷ユニット、32…サーマルヘッド、35…インクリボン、
40…転写ユニット、42…ヒートローラ、44…バックアップローラ、
46…断熱カバー、60…媒体搬送機構、70…冷却機構、72…冷却ファン、
74…通風ダクト、76…通風口、78…シャッタ、80…シャッタ駆動部、
82…制御部、90…単票ホッパ、P…印刷頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写フィルムの受像層に情報を印刷する印刷ユニットと、
ヒートローラとこのヒートローラを覆う断熱カバーとを有し、ヒートローラにより前記情報が印刷された中間転写フィルムの受像層を印刷媒体に転写する転写ユニットと、
前記印刷情報が転写された中間転写フィルムに冷却風を当てて冷却する冷却機構と、
前記断熱カバーに開口形成され、前記冷却風を前記ヒートローラと中間転写フィルムとの間に導く通風口と、前記通風口を開閉するシャッタと、前記シャッタの開閉を制御する制御部と、を有するシャッタ機構と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記転写終了後、前記冷却機構により前記中間転写フィルムを冷却する際、前記シャッタを開いて前記冷却風を前記ヒートローラと中間転写フィルムとの間に導き、他の工程では、前記シャッタを閉じるように制御する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、印刷媒体の種類に応じて、シャッタの開閉を変更するモードを有している請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記転写終了後、前記印刷媒体から前記中間転写フィルムの基材を剥離する剥離部材を備え、前記冷却機構は、冷却ファンと、前記ヒートローラと剥離部材との間で前記中間転写フィルムに冷却風を導く通風ダクトと、を備え、
前記通風口は、前記断熱カバーにおいて、前記剥離部材側の側壁に複数形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記通風口は、前記断熱カバーの側壁の中間転写フィルム側の下端に形成された複数の切欠きにより形成されている請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記シャッタは、前記断熱カバーに昇降自在に支持されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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