説明

印刷装置

【課題】デザインオブジェクトが予め形成されたテープを使用する場合でも印字オブジェクトをデザインオブジェクトから分離して見やすくし、使用者の利便性を向上する。
【解決手段】デザインオブジェクト領域及び印字オブジェクト領域を備えた被印字テープ101を供給可能なテープカートリッジ31を着脱可能なカートリッジホルダ7と、被印字テープ101を搬送するプラテンローラ182と、搬送される被印字テープ101に対し印字オブジェクトの形成を行うサーマルヘッド16と、デザインオブジェクト領域を検出するオブジェクトセンサ60と、オブジェクトセンサ60の検出結果に基づき、デザインオブジェクト領域に印字オブジェクトの形成を行わず印字オブジェクト領域に印字オブジェクトの形成を行うように、サーマルヘッド16を駆動制御する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字テープに所望の印字形成を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被印字テープに印字形成を行う印刷装置として、例えば特許文献1に記載のテープ印字装置がある。この従来技術では、駆動モータによって駆動力が与えられる搬送手段(プラテンローラ)が被印字テープ(印字用テープ)を搬送し、その搬送される被印字テープに対し、印字手段(サーマルヘッド)により、所望のテキスト文字や図像等の印字オブジェクトが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−216071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記被印字テープとして、例えばロゴやマークやアニメキャラクタ等のデザインオブジェクトが予め形成されたテープが使用される場合がある。この場合、印字手段が上記デザインオブジェクトの上に上記印字オブジェクトを形成すると、できあがった印刷物において、視覚的にデザインオブジェクトと印字オブジェクトとが重なり合って見え、場合によっては視認性が劣ることとなり、不便であった。
【0005】
本発明の目的は、デザインオブジェクトが予め形成されたテープを使用する場合でも印字オブジェクトをデザインオブジェクトから分離して見やすくし、使用者の利便性を向上できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、デザインオブジェクトが予め形成されたデザインオブジェクト領域、及び、前記デザインオブジェクトが形成されていない非デザインオブジェクト領域、を備えた被印字テープを供給可能なテープカートリッジを着脱可能なカートリッジホルダと、前記カートリッジホルダに装着された前記テープカートリッジから供給される前記被印字テープを搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される被印字テープに対し、印字データに対応した所望の印字オブジェクトの形成を行う印字手段と、前記印字手段よりも前記搬送手段の搬送方向上流側に設けられ、前記搬送手段により搬送される前記デザインオブジェクト領域を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき、前記デザインオブジェクト領域に前記印字オブジェクトの形成を行わず前記非デザインオブジェクト領域に前記印字オブジェクトの形成を行うように、前記搬送手段及び前記印字手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本願発明においては、カートリッジホルダに装着されたテープカートリッジから被印字テープが供給され、その供給された被印字テープが搬送手段によって搬送される。搬送される被印字テープに対し、印字手段によってテキスト文字や図像等の印字オブジェクトが形成されることで、印字ラベル等の所望の印刷物が形成される。
【0008】
このとき、本願発明では、印字手段より搬送方向上流側に検出手段が設けられ、この検出手段の検出結果に基づき、制御手段が印字手段の駆動制御を行う。これにより、印字手段は、デザインオブジェクト領域には印字オブジェクトの形成をデザインオブジェクト領域には行わず非デザインオブジェクト領域に行うように、制御される。この結果、できあがった印刷物において、印字オブジェクトがデザインオブジェクトと視覚的に重なり合うことはなくなり、印字オブジェクトはデザインオブジェクトから分離されてすっきりと見やすくなる。この結果、使用者の利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デザインオブジェクトが予め形成されたテープを使用する場合でも印字オブジェクトをデザインオブジェクトから分離して見やすくし、使用者の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の印字ラベル作成装置の全体構成を表す斜視図である。
【図2】着脱カバーが取り外され、かつ、カートリッジ及び乾電池をカートリッジホルダ及び電池収納部から取り外した状態における印字ラベル作成装置の内部構造を表す斜視図である。
【図3】カートリッジの内部構造をローラホルダ、リブ、ヒートシンク、サーマルヘッド等とともに表す平面図である。
【図4】ラベル作成装置における制御系の機能的な構成を示すブロック図である。
【図5】デザインオブジェクトと印字オブジェクトが重なった状態となった比較例を表す説明図である。
【図6】デザインオブジェクト領域と非デザインオブジェクト領域を備えた被印字テープの外観を表す図である。
【図7】オブジェクトセンサの検出回路構成を表す回路図である。
【図8】オブジェクトセンサによる被印字テープのデザインオブジェクトの検出の様子を表す説明図である。
【図9】実施形態の手法によりデザインオブジェクトから印字オブジェクトが分離された状態を表す説明図である。
【図10】デザインオブジェクトと印字オブジェクトが重なった状態となった別の比較例を表す説明図である。
【図11】実施形態の手法により印字オブジェクトの途中にデザインオブジェクトが挟みこまれる形で分離が行われた状態を表す説明図である。
【図12】制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図13】作成された印字ラベルの一例を表す説明図である。
【図14】2つのデザインオブジェクト間に収まるように印字オブジェクトを変倍する変形例を表す説明図である。
【図15】制御部によって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図16】印字オブジェクトをテープ幅方向にシフトしてデザインオブジェクトを回避する変形例に対する比較例を表す説明図である。
【図17】印字オブジェクトをテープ幅方向にシフトしてデザインオブジェクトを回避する変形例を表す説明図である。
【図18】印字オブジェクトをテープ幅方向にシフトしてデザインオブジェクトを回避する変形例の別の態様を表す説明図である。
【図19】自動切断を行う切断機構を設けた変形例に関して、各印字ラベルの搬送方向下流側部分に無駄な非印字領域が生じることを説明する説明図である。
【図20】自動切断を行う切断機構を設けた変形例の搬送及び切断挙動を表す説明図である。
【図21】制御部が実行する制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各図内に「前」「後」「左」「右」「上」「下」の注記がある場合は、明細書中内の説明における、前方、後方、左方、右方、上方、下方とは、その注記された方向を指す。
【0012】
<装置の外観概略構造>
図1に示すように、印字ラベル作成装置1(印刷装置)は、使用者の手によって把持されるハンディ型の印字ラベル作成装置である。この印字ラベル作成装置1の筐体6は、装置前面を構成する前カバー6Aと、装置後面を構成する後カバー6Bとで構成されている。さらにこの後カバー6Bは、種々の機構を内蔵する後カバー本体6B1と、カートリッジ31(後述の図2参照)や乾電池(図示せず)を着脱する際に後カバー本体6B1より取り外し可能な着脱カバー6B2とで構成されている。
【0013】
上記前カバー6Aの上側には、各種設定画面等を表示するための表示部550(後述の図4参照)が設けられている。この表示部550の前面は、例えば透明のアクリル板等であるカバーパネル2Aによって覆われている。表示部550の下側には、印字ラベル作成装置1を操作するための操作部3が設けられている。この操作部3には、文字、記号及び数字等の文字キーや種々の機能キーや適宜のボタン等が含まれている。使用者が、印字ラベルL(後述の図13参照)に印字オブジェクト(後述)として形成したい内容を操作部3の操作に基づき入力することで、対応する印字データが生成され、その内容は表示部550において表示される。また上記後カバー本体6B1の右側上端には、印字済みラベル用テープ80(後述の図3参照)を切断するためのカットレバー4が設けられている。
【0014】
<装置の内部構造>
印字ラベル作成装置の内部構造を図2を用いて説明する。図2に示すように、上記前カバー6A及び上記後カバー本体6B1の内部には、例えば樹脂により成形されたフレーム13が配設されている。そして、このフレーム13の後側上部には、カートリッジ31を着脱するために凹状に形成された平面視矩形状の上記カートリッジホルダ7が設けられている。
【0015】
カートリッジホルダ7の下側には、駆動モータ(図示せず)を収納するためのモータ収納部5が設けられている。モータ収納部5のさらに下側には、上記乾電池を収納するための電池収納部9が設けられている。
【0016】
上記フレーム13の上部には、印字済みラベル用テープ80(後述の図3参照)を外部に排出するためのテープ排出スリット24が形成されている。また、フレーム13の右側上部には、ローラホルダ17が設けられている。ローラホルダ17の後側には、当該ローラホルダ17を覆うように設けられ、板状形状を有した合成樹脂製の板部25が設けられている。この板部25の上部には、開口部である突起部挿入口10が設けられている。また、後カバー本体6B1の上端部にはロック穴11が設けられ、下端部にはロック穴12が2箇所設けられている。
【0017】
上記フレーム13の略中央部には凹状に形成されたギア用凹部26が設けられている。ギア用凹部26には、ギア(図示せず)が設けられており、当該ギアの歯部は隠蔽用傘部114によって覆われ露出しない構造となっている。そして、ギアの後側には、インクリボン55(後述の図3参照)を巻き取るためのリボン巻取軸14が立設されている。
【0018】
また、リボン巻取軸14の右側にはリブ30が立設されている。このリブ30の右側面には矩形状の放熱板であるヒートシンク15が設けられている。そして、リブ30とテープ排出スリット24との間には、ローラ軸20が立設されている。ローラ軸20の左側には、凸部27が立設されている。この凸部27は、カートリッジ31の凹部(図示せず)に挿入されることで、カートリッジ31の前後方向の位置決めをするものである。
【0019】
また、上記フレーム13のうち上記テープ排出スリット24の近傍には、カッタ刃を備えるカッタホルダ(図示せず)を内部に収容したガイドホルダ40が設けられている。
【0020】
また、上記テープ排出スリット24の近傍には、リブ42がフレーム13と一体的に形成されている。テープ排出スリット24より右側に形成されたリブ42は、上記板部25の平面状の後面部25Aに対し垂直に立設されている。
【0021】
<カートリッジ内部構造>
カートリッジ31(テープカートリッジ)の内部構造を図3により説明する。図3に示すように、カートリッジケース33内の左側下部には、インクリボン55を巻回したリボンスプール56が回転可能に配置されている。このリボンスプール56から繰り出されたインクリボン55は、カートリッジ開口371に向けて案内される。
【0022】
リボンスプール56の斜め右上方に隣接する側には、リボン巻取スプール57が回転可能に配置されている。このリボン巻取スプール57は、リボンスプール56からインクリボン55を引き出すと共に、文字や図像等の印字オブジェクトの印字で消費されたインクリボン55を巻き取る。また、カートリッジ31の右上側には、被印字テープロール53(本来は渦巻き状であるが簡略化して単純な円形で図示している)を有している。この被印字テープロール53は、被印字テープ101が、テープ用リール部(テープ長手方向と直交する軸を備えたリール部材)54に巻回されてロール化されたものである。
【0023】
被印字テープ101は、この例では3層構造となっており(図3中部分拡大図参照)、テープ用リール部54の内側に巻かれる側よりその反対側(貼り付け側)へ向かって、受像層101a、テープ層101b、粘着層101cの順序で積層され構成されている。受像層101aは、インクリボン55と重ねられることでインクの熱転写により印字が行われる被印字材料の透明被膜として形成されている。テープ層101bは、適宜の基材、例えばPET等の合成樹脂から構成されている。粘着層101cは、適宜の粘着剤から構成されている。なお、本実施形態の特徴として、被印字テープ101には、ロゴやマーク等のデザインオブジェクト64(後述の図5、図9等参照)が予め形成されている。
【0024】
また、カートリッジホルダ31には、被印字テープロール53の繰り出し位置近傍の部位に、被印字テープ101の上記ロゴやマーク等のデザインオブジェクト64を光学的に検出するためのオブジェクトセンサ60(検出手段)が設けられている。オブジェクトセンサ60は、この例では、投光器60aと受光器60bとを備えている。投光器60aと受光器60bとは、被印字テープロール53から繰り出される被印字テープ101の搬送経路を挟んで対向した位置に被印字テープ101の面方向と直角に配置されている。この例では、投光器60aは、被印字テープ101の受像層101a側に位置し、受光器60bは、被印字テープ101の粘着層101c側に位置している。
【0025】
また、カートリッジホルダ7に装着されたカートリッジ31の左側には、プラテンローラユニット18と排出ローラユニット19とを備えたアーム状のローラホルダ17が、軸支部171を中心に左右方向に揺動可能に設けられている。上記着脱カバー6B2が取り付けられると、突起部(図示せず)によりローラホルダ17がカートリッジ31方向に移動する。これにより、ローラホルダ17に設けられた排出ローラユニット19とプラテンローラユニット18とが印字位置(図3に示す位置)に移動する。
【0026】
上記プラテンローラユニット18は、ヒートシンク15の左側に配置されている。プラテンローラユニット18には、プラテンローラ182(搬送手段)とプラテンローラ用ギア(図示せず)とが設けられている。プラテンローラ182は、ヒートシンク15の左側面に設けられたサーマルヘッド16(印字手段)に対向する位置に配置されている。サーマルヘッド16は、複数の発熱素子を備えており、上記オブジェクトセンサ60よりもテープ搬送方向に沿って下流側に設けられている。サーマルヘッド16は、排出ローラ192、プラテンローラ182等により上記搬送経路に沿って搬送される被印字テープ101に対し、所望の印字オブジェクト(後述の図9等参照)の形成を行う。プラテンローラ用ギアは、フレーム13の前側に設けられたギア(図示せず)に噛合されており、駆動モータから動力を伝達されたプラテンローラ用ギアが回転することで、プラテンローラ182が回転する。これにより、プラテンローラユニット18が印字位置に移動した際に、プラテンローラ182は、被印字テープ101とインクリボン55とをサーマルヘッド16に対して押圧しつつ、上記被印字テープ101をその回転により排出ローラユニット19の方向へ搬送する。
【0027】
排出ローラユニット19には、排出ローラ192と排出ローラ用ギア(図示せず)とが設けられている。排出ローラ192は、ローラ軸20に対向する位置に配置されおり、印字済みラベル用テープ80を、上記テープ排出スリット24へ向かう搬送経路(矢印ア,イ,ウ参照)に沿って搬送する。ローラ軸20は、円柱状に形成された円柱部201と、この円柱部201の外周から外側に向かって放射状に形成された6個のリブ202とから構成されている。また、ローラ軸20は、カートリッジ31に設けられたテープ搬送ローラ39の軸孔391に挿入され、テープ搬送ローラ39を回転可能に支持している。
【0028】
排出ローラ用ギアは、上記フレーム13の前側に設けられたギア(図示せず)に噛合されており、駆動モータから動力を伝達された排出ローラ用ギアが回転することで、排出ローラ192が回転する。これにより、排出ローラユニット19が印字位置に移動した際に、排出ローラ192は、被印字テープ101を、ローラ軸20に回転可能に支持されたテープ搬送ローラ39に対して押圧する。これにより、印字が行われた被印字テープ101が印字済みラベル用テープ80としてラベル用テープ排出口59より排出される。その後の印字済みラベル用テープ80の搬送経路は、排出ローラ192等により、搬送されて上記テープ排出スリット24へ案内され、当該テープ排出スリット24から印字ラベル作成装置1の外部に排出される。その後、使用者がカットレバー4を操作することで、上記カッタ刃によって印字済みラベル用テープ80に対する切断が行われる。
【0029】
<制御系の機能的構造>
図4に、印字ラベル作成装置1における制御系の機能的な構成を示す。
【0030】
図4において、印字ラベル作成装置1には、例えばマイクロプロセッサなどからなる制御部530が設けられている。この制御部530には、上記駆動モータの駆動を制御するモータ駆動回路(図示せず)や上記サーマルヘッド16の通電制御を行うサーマルヘッド駆動回路(図示せず)等からなる駆動系540と、上記オブジェクトセンサ60と、上記表示部550と、上記操作部3とが、入出力インターフェース560を介して接続されている。
【0031】
<印字ラベル作成装置の基本動作>
次に、上記構成における印字ラベル作成装置1の基本動作を説明する。
【0032】
まず、前述の図3において、カートリッジホルダ7にカートリッジ31が装着されると、被印字テープロール53から繰り出される被印字テープ101が、オブジェクトセンサ60からカートリッジ開口371を経て、サーマルヘッド16とプラテンローラ182の間を通過する配置となる。また、リボンスプール56から繰り出されるインクリボン55は、カートリッジ31の規制突起部(図示省略)に案内規制されつつカートリッジ開口371を経て被印字テープ101と重なりあい、そのままサーマルヘッド16とプラテンローラ182の間を通過する配置となる。
【0033】
そして、例えば操作部3において使用者からラベル作成の操作入力がなされると、これに対応する指示信号が入出力インターフェース560を介し制御部530に入力され、制御部530の制御によってラベル作成が開始される。
【0034】
ラベル作成が開始されと、上記プラテンホルダ17が図3中の時計回りに回動駆動され、プラテンローラ182が、被印字テープ101及びインクリボン55を挟持するようにサーマルヘッド16へ向けて押圧される。これとともに、プラテンローラ182が上記モータ駆動回路により回転駆動され、被印字テープ101とインクリボン55とを圧接しつつ下流側(図3中の上側、矢印イ参照)へ搬送する。
【0035】
またこのプラテンローラ182による押圧搬送と同時に、上記サーマルヘッド駆動回路によって上記発熱素子が駆動され、被印字テープ101におけるサーマルヘッド16側(インクリボン55側)の表面の上記受像層101aにインクリボン55のインクが熱転写されて所望の印字オブジェクト(後述の図9等参照)の形成が行われる。
【0036】
この後にサーマルヘッド16の下流側に送り出されたインクリボン55は、分離部材(図示省略)を介して被印字テープ101から分離された後、リボン巻き取りスプール57により巻き取られる。そして、サーマルヘッド16の下流側に送り出されてインクリボン55を分離された被印字テープ101は、上記印字済みラベル用テープ80となってラベル用テープ排出口59からカートリッジ31の外部に排出され、カッタ刃(図示省略)を通過して図3中矢印ア方向に送り出される。
【0037】
そして、印字済みラベル用テープ80が所定の距離だけ進むと、印字済みラベル用テープ80及び被印字テープ101の搬送が停止される。その後、カッタ刃が作動して印字済みラベル用テープ80を切断し、これにより所定長さの印刷物としての印字ラベルL(後述の図13参照)が得られる。
【0038】
<本実施形態の特徴>
以上の基本構成において、本実施形態の最大の特徴は、オブジェクトセンサ60の検出結果に基づき、サーマルヘッド16が、被印字テープ101のデザインオブジェクト64を避けるようにしつつ、テキスト文字や図像等の印字オブジェクトの形成を行うことにある。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0039】
前述したように、本実施形態で使用される被印字テープ101は、例えばロゴやマークやアニメキャラクタ等のデザインオブジェクト64が予め形成されている。この場合、デザインオブジェクト64の配置を特に考慮せずにそのままサーマルヘッド16により印字形成を行うと、例えば図5(a)及び図5(b)に比較例として示すように、上記デザインオブジェクト64の上に印字オブジェクト65(この例では「ROCK−I」の文字)が重なって形成された場合、視覚的にデザインオブジェクト64と印字オブジェクト65とが重なり合って見え、場合によっては視認性が劣ることとなり、不便である。
【0040】
そこで本実施形態では、前述したようにサーマルヘッド16より搬送方向上流側にオブジェクトセンサ60が設けられ、このオブジェクトセンサ60の検出結果に基づき、サーマルヘッド16が、デザインオブジェクト64を避けるようにしつつ、印字オブジェクト65を被印字テープ101に形成する。すなわち、図6に示すように、本実施形態では、被印字テープ101において、所定間隔ごとに予め印刷されたデザインオブジェクト64を含むデザインオブジェクト領域Qが、所定ピッチpをもって離散的に配置されている。なお、デザインオブジェクト64は受像層101aに形成してあってもよいし、テープ層101bに形成してあってもよい。そして、隣接配置される2つのデザインオブジェクト領域Q,Qの間が、上記サーマルヘッド16がテキスト文字や図像等の印字オブジェクト65を形成するための印字オブジェクト領域R(非デザインオブジェクト領域)となっている。前述のようにして被印字テープ101が搬送されていくと、被印字テープロール53の被印字テープ101の繰り出し位置近傍の部位に設置された上記オブジェクトセンサ60により、デザインオブジェクト64が順次検知される。
【0041】
<オブジェクトセンサ>
オブジェクトセンサ60の詳細機能を図7及び図8により説明する。図7に示すように、オブジェクトセンサ60の投光器60a(例えば発光ダイオード)と受光器60b(例えばフォトトランジスタ)とが、電源電圧の入力端子66a,66b間に並列接続されている。また、投光器60aの接地側(発光ダイオードのカソード側)に電流制限抵抗R1が直列に挿入され、受光器60bの接地側(フォトトランジスタのエミッタ側)に負荷抵抗R2が直列に挿入されることで、受光器60bと負荷抵抗R2との間の出力端子67から検出電圧値V(オブジェクトセンサ60のセンサ出力)が取り出されるように構成されている。電源電圧Vccには例えば+3.3Vが使用される。オブジェクトセンサ60からの検出電圧値Vは、上記制御部530に入力される。なお、図示の構成では、受光量が大きいほどオブジェクトセンサ60からの検出電圧値Vが大きくなるが、これとは逆の極性、受光量が大きいほどオブジェクトセンサ60からの検出電圧値Vが小さくなるような特性を持たせるようにしてもよい。
【0042】
図8に、オブジェクトセンサ60による、被印字テープ101の上記デザインオブジェクト64の検出の様子を模式的に示す。
【0043】
図8において、被印字テープロール53から被印字テープ101が矢印方向に繰り出されて搬送されている。例えば、被印字テープ101のうち上記デザインオブジェクト64を含むデザインオブジェクト領域Qが、オブジェクトセンサ60の投光器60aから発せられた光の受光器60bへの光路λ上を通過すると、投光器60aから発せられた光によって遮られ受光器64bの受光量が少なくなり、受光器64bから出力されるセンサ出力電圧(上記検出電圧値Vに相当。以下同様)が当該受光量に対応して小さくなる。
【0044】
その後、上記デザインオブジェクト領域Qに後続する搬送方向上流側の印字オブジェクト領域R(この時点では印字オブジェクト65はまだ形成されていない)が光路λ上に位置したとする。この場合、投光器60aから発せられた光が遮光されなくなり、受光器64bの受光量が大きくなって、受光器64bから出力されるセンサ出力電圧は受光量に対応して大きくなる。このような、デザインオブジェクト領域Qのデザインオブジェクト64と印字オブジェクト領域Rとのオブジェクトセンサ60のセンサ出力電圧の違いにより、制御部530では、デザインオブジェクト64を識別することができる。
【0045】
なお、オブジェクトセンサ60として、上記のようないわゆる透過型のセンサではなく、反射型のセンサを用いてもよい。この場合には、投光器と受光器との両方が被印字テープ101の受像層101a側に設けられる。そして、投光器が被印字テープ101に向けて投光し、受光器が上記投光器から発せられた後に上記被印字テープ101から反射された反射光を受光し、受光した光量に対応する電圧を出力する。
【0046】
<本実施形態の手法の具体例>
以上のようにして実行されるオブジェクトセンサ60によるデザインオブジェクトの検出に応じ、制御部530の制御により、サーマルヘッド16が、デザインオブジェクト64を避けるようにして印字オブジェクト65を被印字テープ101に形成する。これにより、前述の図5に示した比較例とは異なり、本実施形態では、図9(a)及び図9(b)に示すように、サーマルヘッド16は、デザインオブジェクト領域Qには印字オブジェクト65の形成は行わず印字オブジェクト領域Rに行うように制御される。具体的には、図9(b)に示すように、検出されたデザインオブジェクト領域Qの搬送方向上流側に隣接する印字オブジェクト領域Rに対し、印字オブジェクト65が形成される。特に、図9(b)の例は、被印字テープ101のうち印字オブジェクト65の形成開始位置となる搬送方向位置にデザインオブジェクト領域Qが検出された場合に、当該デザインオブジェクト領域Qの搬送方向上流側に隣接する印字オブジェクト領域Rから印字オブジェクト65の形成が開始される例を示している。
【0047】
また、被印字テープ101のうち印字オブジェクト領域Rでの印字オブジェクト65の形成途中となる搬送方向位置にデザインオブジェクト領域Qが検出された場合、そのままでは図10(a)及び図10(b)に比較例として示すように、印字オブジェクト65の途中にデザインオブジェクト64が重なることとなり、前述と同様に不便である。図示の例では「CD」の部分がデザインオブジェクト64に重なって見えにくくなる。
【0048】
そこで、本実施形態ではさらに、制御部530の制御に基づき、このような場合、サーマルヘッド16は、図11に示すように、1つの印字オブジェクト領域Rの搬送方向上流側端部までで(言い換えればデザインオブジェクト領域Qの手前までで)いったん印字オブジェクト65の形成を中断する。図示の例では「2011年7月」までで印字を中断している。そして、その後、デザインオブジェクト領域Qの搬送方向上流側に隣接する新たな印字オブジェクト領域Rから印字オブジェクトの形成を再開する。図示の例では再開後「CD」の印字を実行している。
【0049】
以上の結果、図9(b)や図11に示すように、本実施形態では、印字オブジェクト65がデザインオブジェクト64と視覚的に重なり合うことはなくなり、印字オブジェクト65はデザインオブジェクト64から分離されてすっきりと見やすくなる。この結果、使用者の利便性を向上することができる。
【0050】
<制御手順>
以上の内容を実現するために、制御部530によって実行される処理手順を図12により説明する。使用者が、印字ラベル作成装置1のカートリッジホルダ7にカートリッジ31を装着した状態で、例えば操作部3の操作によりラベル作成の操作入力を行うと、このフローが開始される。
【0051】
まず、ステップS5において、制御部530は、上記モータ駆動回路に制御信号を出力し、プラテンローラ182及びリボン巻き取りスプール57を回転駆動する。この結果、プラテンローラ182による被印字テープ101の搬送、及び、リボン巻き取りスプール57によるインクリボン55の搬送が開始される。これにより、被印字テープ101は、被印字テープロール53から繰り出されつつ、プラテンローラ182によりサーマルヘッド16のヘッド面にインクリボン55を介して圧接され搬送される。
【0052】
その後、ステップS10において、制御部530は、オブジェクトセンサ60の検出結果に基づき、被印字テープ101のうち、上記印字データに基づき印字オブジェクト65の印字開始位置となる搬送方向位置と同じ位置(又は上流側となる位置)に、デザインオブジェクト領域Qのデザインオブジェクト64が検出されたか否かを判定する。デザインオブジェクト64が検出されなければステップS10の判定が満たされず(S10:NO)、後述のステップS20に移る。デザインオブジェクト64が検出されていればステップS10の判定が満たされ(S10:YES)、ステップS15に移る。
【0053】
ステップS15では、制御部530は、もともと印字データによって設定されていた上記印字開始位置を被印字テープ101の上流方向にずらし、デザインオブジェクト64の上流側となるように再設定する。その後、ステップS20に移る。
【0054】
ステップS20では、制御部530は、被印字テープ101が印字開始位置(又は印字再開位置)まで搬送されたか否か、言い換えれば、サーマルヘッド16が上記再設定された印字開始位置(又は印字再開位置)に正対する位置まで被印字テープ101が到達したか否か、を判定する。このときの判定は、例えば、上記ステップS10でデザインオブジェクト64を検出したタイミング以降の、パルスモータである上記駆動モータを駆動する上記モータ駆動回路の出力するパルス数をカウントし、当該カウント数が所定の値に達したかどうか、により検出すれば足りる。印字開始位置(又は印字再開位置)となるまで判定が満たされず(S20:NO)ループ待機し、印字開始位置(又は印字再開位置)となったらステップS20の判定が満たされ(S20:YES)、ステップS25に移る。
【0055】
ステップS25では、制御部530は、上記サーマルヘッド駆動回路に制御信号を出力し、サーマルヘッド16の上記発熱素子に通電する。この結果、サーマルヘッド16が被印字テープ101の受像層101aの表面に上記印字データに対応した印字オブジェクト65の形成を開始する。
【0056】
そして、ステップS30で、制御部530は、前述したモータ駆動回路のモータパルス数をカウントする等の適宜の方法により、被印字テープ101が上記印字データに基づく印字終了位置(又は印字中断位置)に達したか否か、言い換えれば、サーマルヘッド16が上記再設定された印字開始位置(又は印字再開位置)に対応した印字終了位置(又は印字中断位置)正対する位置まで被印字テープ101が到達したか否か、を判定する。印字終了位置(又は印字中断位置)に達していなければステップS30の判定が満たされず(S30:NO)、ステップS55に移る。印字終了位置(又は印字中断位置)に達していればステップS30の判定が満たされ(S30:YES)、後述のステップS35に移る。
【0057】
ステップS55では、制御部530は、上記ステップS10と同様、オブジェクトセンサ60の検出結果に基づき、上記印字データ(但しステップS15を経ている場合はステップS15で印字開始位置が再設定されている)を参照して、被印字テープ101のうち印字オブジェクト65の印字終了位置となる搬送方向位置と同じ位置(又は下流側となる位置)に、デザインオブジェクト領域Qのデザインオブジェクト64が検出されたか否かを判定する。デザインオブジェクト64が検出されなければステップS55の判定が満たされず(S55:NO)、上記ステップS30に戻る。デザインオブジェクト64が検出されていればステップS55の判定が満たされ(S55:YES)、ステップS60に移る。
【0058】
ステップS60では、制御部530は、この時点で設定されている上記印字終了位置の設定を改める。すなわち、上記ステップS55で検出されたデザインオブジェクト64位置の下流側でいったん印字オブジェクト65の形成を中断し、当該デザインオブジェクト65位置の上流側で印字を再開するように再設定する。その後、上記ステップS30に戻る。
【0059】
ステップS35では、制御部530は、上記サーマルヘッド駆動回路に制御信号を出力し、サーマルヘッド16の発熱素子への通電を停止する。この結果、サーマルヘッド16による被印字テープ101への印字オブジェクト65の形成が停止する。その後、ステップS40に移る。
【0060】
ステップS40では、制御部530は、印字オブジェクト65のうちまだ被印字テープ101に形成が終わっていない未印字部分があるか否かを判定する。未印字部分があればステップS40の判定が満たされ(S40:YES)、上記ステップS20に戻り同様の手順を繰り返す。上記未印字部分がなければ、ステップS40の判定が満たされず(S40:NO)、ステップS45に移る。
【0061】
ステップS45では、制御部530は、上記印字データ(但しステップS15やステップS60を経ている場合には印字開始位置や印字終了位置等が再設定されている)を参照して、被印字テープ101(言い換えれば印字済ラベル用テープ80)が切断位置に達したか否か、言い換えれば、上記カッタ刃が上記被印字テープ101の切断位置に正対する位置まで当該被印字テープ101が到達したか否か、を判定する。切断位置に達するまでステップS45の判定が満たされず(S45:NO)ループ待機し、切断位置に達した場合には、ステップS45の判定が満たされ(S45:YES)、ステップS50に移る。
【0062】
ステップS50では、制御部530は、モータ駆動回路に制御信号を出力し、プラテンローラ182及びリボン巻取スプール57の回転駆動を停止する。この結果、プラテンローラ182による被印字テープ101の搬送及びリボン巻取スプール57によるインクリボン55の搬送が停止する。これにより、使用者がカットレバー4を操作することでカッタ刃が作動し印字済みラベル用テープ80を切断し、印字ラベルL(後述の図13参照)が得られる。そして、このフローを終了する。
【0063】
なお、上記図12に示すフローにおける、ステップS15及びステップS60が各請求項記載の搬送方向シフト手段として機能し、それらを含む図12に示す各手順が、制御手段として機能する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、図13(a)及び図13(b)に示すように、上述のようにして作成された印字ラベルLにおいて、印字オブジェクト65がデザインオブジェクト64と視覚的に重なり合うことはなくなり、印字オブジェクト65はデザインオブジェクト64から分離されてすっきりと見やすくなる。この結果、使用者の利便性を向上することができる。特に図13(b)に示す例では、印字オブジェクト65の途中にデザインオブジェクト64が挟みまれる形で印字オブジェクト65とデザインオブジェクト64とが確実に分離された、印字ラベルLを作成することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、趣旨や技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0066】
(1)2つのデザインオブジェクト間に収まるように印字オブジェクトを変倍する場合
すなわち、前述のようにして被印字テープ101の搬送が開始された後、サーマルヘッド16が印字オブジェクト65の形成を開始するより前に、デザインオブジェクト領域Qと、当該デザインオブジェクト領域Qの搬送方向上流側に隣接する印字オブジェクト領域Rと、当該印字オブジェクト領域Rの搬送方向上流側に隣接する別のデザインオブジェクト領域Qとがオブジェクトセンサ60により検出された場合には、制御部530は、2つのデザインオブジェクト領域Q,Qの間の距離である上記ピッチpを取得することができる。
【0067】
そこでこの場合は、制御部530は、上記図11に示したように印字オブジェクト65を2つの印字オブジェクト領域R,Rに分断配置するのではなく、印字オブジェクト65の大きさを縮小することで、搬送方向長さが当該ピッチpより若干小さい1つの印字オブジェクト領域R内に収まるようにする。
【0068】
図14に、この変形例の外観を表す。図14に示すように、「2011年7月CD」の印字オブジェクト65が、2つのデザインオブジェクト64,64間の1つの印字オブジェクト領域R内に収まるように、縮小されて形成されている。
【0069】
本変形例の制御部530によって実行される処理を図15により説明する。図15に示すフローでは、上記実施形態の図12のフローにおけるステップS20に代えてステップS20′が設けられ、ステップS15と当該ステップS20′との間にステップS55′及びステップS60′が新たに設けられ、またステップS30に代えてステップS30′が設けられ、ステップS40が省略されている。それ以外は上記図12とほぼ同様である。
【0070】
図15において、上記図12と同様のステップS5、及び、ステップS10又はステップS15を経て、新たに設けたステップS55′に移る。
【0071】
ステップS55′では、上記ステップS55と同様、制御部530は、オブジェクトセンサ60の検出結果に基づき、上記印字データ(但しステップS15を経ている場合はステップS15で印字開始位置が再設定されている)を参照して、被印字テープ101のうち印字オブジェクト65の印字終了位置となる搬送方向位置の下流側に、デザインオブジェクト領域Qのデザインオブジェクト64が検出されたか否かを判定する。デザインオブジェクト64が検出されなければステップS55′の判定が満たされず(S55′:NO)、後述のステップS20′に移る。デザインオブジェクト64が検出されていればステップS55′の判定が満たされ(S55′:YES)、新たに設けたステップS60′に移る。
【0072】
ステップS60′では、制御部530は、ステップS10及びステップS55′で検出された2つのデザインオブジェクト64,64の間に収まるように、印字オブジェクト65の文字等の大きさを変更し、これによって印字終了位置も再設定する。その後、ステップS20′に移る。
【0073】
ステップS20′では、制御部530は、上記ステップS20と同様、前述したモータ駆動回路のモータパルス数をカウントする等の適宜の方法により、被印字テープ101が印字開始位置まで搬送されたか否かを判定する。印字開始位置となるまで判定が満たされず(S20′:NO)ループ待機し、印字開始位置となったらステップS20′の判定が満たされ(S20′:YES)、上記同様のステップS25に移る。
【0074】
ステップS25では、前述と同様にして印字オブジェクト65(但しステップS60′を経ている場合は縮小されている)の形成が開始された後、新たに設けたステップS30′に移る。
【0075】
ステップS30′では、制御部530は、前述したモータ駆動回路のモータパルス数をカウントする等の適宜の方法により、被印字テープ101が上記印字終了位置に達したか否かを判定する。印字終了位置に達していなければステップS30′の判定が満たされず(S30′:NO)ループ待機し、印字終了位置に達していればステップS30′の判定が満たされ(S30′:YES)、ステップS35に移る。
【0076】
以降、ステップS35、ステップS45、ステップS50は上記実施形態の図12と同様であるので、説明を省略する。なお、上記フローにおけるステップS15及びステップS60′が各請求項記載の搬送方向シフト手段として機能し、それらを含む図15に示す各手順が、制御手段として機能する。
【0077】
本変形例では、印字オブジェクト65の形成開始より前に、隣接する2つのデザインオブジェクト領域Q,Qが検出される(ステップS10、ステップS55′)。これにより、それら2つのデザインオブジェクト領域Q,Qの中間に位置する印字オブジェクト領域Rの搬送方向長さを算出することができる。そして、制御部530の制御により、当該搬送方向長さの印字オブジェクト領域Rに印字オブジェクト65のすべてが収まるように調整されつつ、印字オブジェクト65が形成される(ステップS60′参照)。これにより、隣接する2つのデザインオブジェクト64,64の間に印字オブジェクト65が挟みまれる形で印字オブジェクト65とデザインオブジェクト64とが確実に分離された、印字ラベル(図示せず)を作成することができる。
【0078】
(2)印字オブジェクトをテープ幅方向にシフトしてデザインオブジェクトを回避する場合
以上においては、デザインオブジェクト64が存在した場合に、これを回避するように印字オブジェクト65をテープ搬送方向にずらして形成したが、これに限られない。例えば、図16に示すように、通常通りそのまま印字オブジェクト65を形成した場合に、デザインオブジェクト64と印字オブジェクト65とが被印字テープ101の幅方向で重なる場合がある。この場合、図17に示すように、制御部530が、デザインオブジェクト64と印字オブジェクト65が被印字テープ101の幅方向で分離された状態、すなわち印字オブジェクト65がデザインオブジェクト64の図示下方側へシフトして形成されるようにサーマルヘッド16を制御してもよい。あるいは、図18に示すように、制御部530は、印字オブジェクト65がデザインオブジェクト64の上方側へシフトして形成されるようにサーマルヘッド16を制御してもよい。このときの制御部530の機能が、各請求項記載の幅方向シフト手段に相当する。
【0079】
本変形例においては、印字オブジェクト65の形成位置がデザインオブジェクト領域Qの幅方向一方側へとずらされることから、印字オブジェクト65をデザインオブジェクト64の幅方向一方側へと分離し、デザインオブジェクト64と視覚的に重ならないようにすることができる。
【0080】
(3)自動切断を行う切断機構を設けた場合
すなわち、以上においては、被印字テープ101(言い換えれば印字済ラベル用テープ80)が所定の切断位置に達したら搬送が停止され、使用者がカットレバー4を操作することで手動にてテープ切断が行われた。本変形例では、可動刃(図示せず)及び固定刃(図示せず)を備えた切断機構615(切断手段)が、上記サーマルヘッド16よりも上記搬送方向下流側に設けられる。そして、上記所定の切断位置においてテープ搬送が停止されたら、上記制御部530の制御に基づき、切断機構615が自動でテープ切断を行い、印字ラベルL(後述の図20(d)参照)が作成される。
【0081】
ところで、このようにサーマルヘッド16の下流側に切断機構615を設けて自動切断を行う場合、必然的に各印字ラベルLの搬送方向下流側(言い換えれば先端側)部分に無駄な非印字領域が生じる。このことをまず図19により説明する。
【0082】
上述したように、搬送経路に沿ってサーマルヘッド16より下流側に、切断機構615が設けられる場合、まず被印字テープ101の搬送が開始され(図19(a)参照)、サーマルヘッド16により印字オブジェクト65の形成が開始された(図19(b)参照)後、搬送が進むにつれて印字オブジェクト65の形成も進んでいく(図19(c)参照)。そして、印字オブジェクト65の搬送方向上流側端部(言い換えれば後端部)まで形成が終了した後に搬送が停止され(図19(d)参照)、印字オブジェクト65の搬送方向下流側(後端側)が切断機構615で切断されることで、印字ラベルLが生成される(図19(e参照))。その後、次の印字ラベルLの作成の際は、図19(a)の状態に戻って同様の流れを繰り返す。
【0083】
上述より明らかなように、新たな印字ラベルLの作成を開始する際に、切断機構615とサーマルヘッド16との間に既に存在している被印字テープ101は、必然的に、サーマルヘッド16による印字を行うことができない非印字領域となる。
【0084】
そこで、本変形例においては、図20(a)に示すように、上述した被印字テープ101が停止した状態における切断機構615とサーマルヘッド16との間にデザインオブジェクト領域Qが位置するように、予め被印字テープ101におけるデザインオブジェクト領域Qの配置が設定されている。すなわち、上述のように必然的に非印字領域となり印字ができない部分にデザインオブジェクト領域Qを配置しておく。このため、デザインオブジェクト領域Qの搬送方向長さXが、切断機構615とサーマルヘッド16との間の搬送方向に沿った距離Xo以下となるように、設定されている。
【0085】
このとき、本変形例においては、1つのデザインオブジェクト領域Qの搬送方向下流側端部(言い換えれば先端部)から後続のデザインオブジェクト領域Qの搬送方向下流側端部(先端部)までの搬送方向長さである上記ピッチpが、切断機構15と上記オブジェクトセンサ60までの搬送方向に沿った距離Yoよりも若干短くなるように設定されている。そして、上記切断機構615による切断動作が、上記オブジェクトセンサ60による上記デザインオブジェクト領域Qの検出を契機に行われる。
【0086】
すなわち、前述と同様、被印字テープ101の搬送が開始され(図20(a)参照)、1つの印字ラベル(以下、「第1印字ラベル」)となる領域(以下、「第1印字ラベル領域」)L01においてサーマルヘッド16により印字オブジェクト65の形成が開始される(図20(b)参照)。但し、上述のような寸法設定により、上記のように第1印字ラベル領域L01に形成開始される印字オブジェクト65よりも搬送方向下流側(先端側)には、上記デザインオブジェクト領域Qが存在している。
【0087】
その後、搬送が進むにつれて印字オブジェクト65の形成も進んでいく(図20(c)参照)。その際、上記第1印字ラベルの次の順番で作成される印字ラベル(以下、「第2印字ラベル」)となる領域L02(以下、「第2印字ラベル領域」)も、上記第1印字ラベル領域L01に後続するように搬送されている。また、上記第2印字ラベルの次の順番で作成される印字ラベル(以下、「第3印字ラベル」)となる領域L03(以下、「第3印字ラベル領域」)も、上記第2印字ラベル領域L02に後続するように搬送されている(後述の図20(d)を参照)。
【0088】
そして、上述の寸法設定により、上記第2印字ラベル領域L02に後続する上記第3印字ラベル領域L03の先端側に形成された上記デザインオブジェクト領域Qがオブジェクトセンサ60により検出されたときには、先行する第1印字ラベル領域L01の印字オブジェクト65(この例では「ABCDEFGHI」のテキスト文字)の後端部まで形成が完了しており、上記検出タイミングで搬送が停止される(図20(d)参照)。なお、この例では、上記オブジェクトセンサ60によるオブジェクト領域Qの検出が確実に行われるように、オブジェクト領域Qには外縁を取り囲む枠線が設けられている(枠線以外のデザインオブジェクト64自体は図示省略している)。また、この例では、上記オブジェクトセンサ60によるオブジェクト領域Qの枠線の搬送方向下流側(先端側)部分の検出時に搬送が停止されるが、これに限られず、上記オブジェクトセンサ60によるオブジェクト領域Qの枠線の搬送方向上流側(後端側)部分の検出時に搬送停止するようにしてもよい。
【0089】
その後、この搬送停止状態において、切断機構615によって、上記第1印字ラベル領域L01の印字オブジェクト65の搬送方向下流側端部(後端部)の切断線CLにおいて切断が行われ、印字ラベルL(第1印字ラベルL1)が生成される(図20(e)参照))。以降、第2印字ラベル領域L02への印字オブジェクト65の形成による次の第2印字ラベルL2(図示せず)の作成、さらには第3印字ラベル領域L03への印字オブジェクト65の形成による次の第3印字ラベルL3(図示せず)の際は、図20(a)の状態に戻って同様の流れを繰り返す。
【0090】
なお、上記第1印字ラベルL1が各請求項記載の第1印刷物に相当し、第2印字ラベルL2が第2印刷物に相当し、第3印字ラベルL3が第3印刷物に相当している。
【0091】
上記の搬送及び切断態様を実現するために本変形例の制御部530が実行する制御手順を図21に示す。図21に示すフローは、上記図15のフローのステップS10、ステップS15、ステップS55′、ステップS60′が省略されると共に、ステップS50の後に新たにステップS65が設けられている。
【0092】
すなわち、上記図15と同様のステップS5においてテープ搬送が開始された後は、上記ステップS20′に移り、制御部530は、適宜の方法により、被印字テープ101が印字開始位置まで搬送されたか否かを判定する。その後のステップS25〜ステップS50は図15と同様であり、説明を省略する。ステップS50において上記のようにしてテープ搬送が停止されたら、新たに設けたステップS65に移る。
【0093】
ステップS65では、制御部530は、上記切断機構の上記可動刃を駆動するソレノイドを制御する駆動回路(図示せず)に制御信号を出力し、ソレノイドによって可動刃を駆動して印字済みラベル用テープ80に対する上記切断線CLの形成を行う。その後、このフローを終了する。なお、この図21に示すフローの各手順が、各請求項記載の制御手段として機能する。
【0094】
本変形例においても、上記実施形態と同様、印字オブジェクト65がデザインオブジェクト領域Qのデザインオブジェクト64と視覚的に重なり合うことはなく、使用者の利便性を向上することができる。また、上述のように、被印字テープ101が停止した状態における切断機構615とサーマルヘッド16との間に各ラベル領域L01,L02,L03・・のデザインオブジェクト領域Qが位置するように、予め被印字テープ101におけるデザインオブジェクト領域Qの配置が設定されている。すなわち、必然的に非印字領域となり印字ができない部分にデザインオブジェクト領域Qを配置しておくことで、生成される各印字ラベルL1,L2,L3・・において搬送方向下流側端部(先端部)に無駄に空白領域が生じるのを防止し、当該領域を、ロゴやマークやアニメキャラクタ等のデザインオブジェクト64を配置するデザインオブジェクト領域Qとして活用することができる。
【0095】
(4)その他
以上においては、被印字テープ101に備えられた受像層101aに対しインクリボン55のインクを転写して印字を行ったが、これに限られない。受像層が所定温度に達すると発色する感熱材料で形成され、かつ上記デザインオブジェクト64が事前に形成された被印字テープ(いわゆる感熱テープ)を用いる場合に、本発明を適用し、デザインオブジェクト64と印字オブジェクト65とが視覚的に重ならないようにしてもよい。さらには、基材テープと、これとは別の被印字テープに印字を行ってこれらを貼り合わせる方式(貼りあわせを行うタイプ)において、上記デザインオブジェクト64が事前に被印字テープ(又は基材テープ)に形成されている場合においても本発明を適用し、デザインオブジェクト64と印字オブジェクト65とが視覚的に重ならないようにしてもよい。
【0096】
なお、以上において、図4に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0097】
また、図12、図15、図21に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0098】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0099】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 印字ラベル作成装置(印刷装置)
16 サーマルヘッド(印字手段)
60 オブジェクトセンサ(検出手段)
80 印字済みラベル用テープ
101 被印字テープ
182 プラテンローラ(搬送手段)
192 排出ローラ
530 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デザインオブジェクトが予め形成されたデザインオブジェクト領域、及び、前記デザインオブジェクトが形成されていない非デザインオブジェクト領域、を備えた被印字テープを供給可能なテープカートリッジを着脱可能なカートリッジホルダと、
前記カートリッジホルダに装着された前記テープカートリッジから供給される前記被印字テープを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される被印字テープに対し、印字データに対応した所望の印字オブジェクトの形成を行う印字手段と、
前記印字手段よりも前記搬送手段の搬送方向上流側に設けられ、前記搬送手段により搬送される前記デザインオブジェクト領域を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、前記デザインオブジェクト領域に前記印字オブジェクトの形成を行わず前記非デザインオブジェクト領域に前記印字オブジェクトの形成を行うように、前記搬送手段及び前記印字手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記制御手段は、
前記印字データに基づく前記印字オブジェクトの形成位置となる前記被印字テープの搬送方向位置に、前記検出手段により前記デザインオブジェクト領域が検出された場合には、前記検出手段により当該デザインオブジェクト領域の搬送方向上流側に隣接することが検出された非デザインオブジェクト領域に前記印字オブジェクトを形成するように、前記印字手段を駆動制御する、搬送方向シフト手段を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置において、
前記搬送方向シフト手段は、
前記印字オブジェクトの形成開始位置となる前記被印字テープの搬送方向位置に、前記検出手段により前記デザインオブジェクト領域が検出された場合には、前記検出手段により当該デザインオブジェクト領域の搬送方向上流側に隣接することが検出された非デザインオブジェクト領域から前記印字オブジェクトの形成を開始するように、前記印字手段を駆動制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の印刷装置において、
前記搬送方向シフト手段は、
前記検出手段により検出された前記非デザインオブジェクト領域への前記印字オブジェクトの形成開始後の当該印字オブジェクトの形成途中となる前記被印字テープの搬送方向位置に、前記検出手段により前記デザインオブジェクト領域が検出された場合には、前記非デザインオブジェクト領域の搬送方向上流側端部までで前記印字オブジェクトの形成を中断するとともに、前記デザインオブジェクト領域の搬送方向上流側に隣接する新たな非デザインオブジェクト領域から前記印字オブジェクトの形成を再開するように、前記印字手段を駆動制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2記載の印刷装置において、
前記印字手段による前記印字オブジェクトの形成開始より前に、前記デザインオブジェクト領域と、当該デザインオブジェクト領域の搬送方向上流側に隣接する前記非デザインオブジェクト領域と、当該非デザインオブジェクト領域の搬送方向上流側に隣接する別の前記デザインオブジェクト領域と、が前記検出手段により検出された場合には、
前記搬送方向シフト手段は、前記印字データに基づく前記印字オブジェクトの形成開始位置から形成終了位置までが前記非デザインオブジェクト領域内に収まるように、前記印字手段を駆動制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1記載の印刷装置において、
前記制御手段は、
前記検出手段により、前記印字データに基づく前記印字オブジェクトの形成位置となる前記被印字テープの搬送方向位置に前記デザインオブジェクト領域が検出され、かつ、当該デザインオブジェクト領域の前記被印字テープの幅方向一方側に隣接して前記非デザインオブジェクト領域が検出された場合には、当該非デザインオブジェクト領域に前記印字オブジェクトを形成するように前記印字手段を駆動制御する、幅方向シフト手段を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1記載の印刷装置において、
前記搬送手段による前記被印字テープの搬送経路に沿って前記印字手段より下流側に設けられ、前記制御手段の制御に基づき前記被印字テープを切断することにより、当該切断箇所をそれぞれ搬送方向上流側端部としかつ1つの前記デザインオブジェクト領域を搬送方向下流側端部にそれぞれ備えた、第1印刷物、前記第1印刷物に後続する第2印刷物、及び、前記第2印刷物に後続する第3印刷物、を順次生成可能な切断手段を有し、
前記制御手段は、
前記被印字テープのうち前記第3印刷物となる領域に含まれる前記デザインオブジェクト領域が前記検出手段により検出されたことを契機に、前記被印字テープの搬送を停止し、前記第1印刷物の搬送方向上流側端部となる部位の前記被印字テープの切断を行うように、前記搬送手段及び前記切断手段を制御し、
前記印字テープは、
前記被印字テープのうち前記第3印刷物となる領域に含まれる前記デザインオブジェクト領域が前記検出手段により検出され前記被印字テープの搬送が停止したときに、当該被印字テープのうち前記切断手段による切断部位と前記印字手段に対向する部位との間に、前記第2印刷物となる領域に含まれる前記デザインオブジェクト領域が位置するように、構成されている
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−71310(P2013−71310A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211636(P2011−211636)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】