説明

印刷装置

【課題】外部機器から印刷情報を無線で受信する場合に、その印刷情報のデータサイズに応じてより安定した通信状況下で印刷情報を受信できる印刷装置を提供する。
【解決手段】CPUは複数の外部機器に印刷情報の問い合わせ信号を送信する。外部機器からの応答信号の返答時間と電界強度を通信候補テーブルに登録する。印刷情報のデータサイズが所定サイズよりも大きい場合(S42:YES)電界強度の強い順に通信候補テーブルの外部機器を並び替える(S43)。データのサイズが所定サイズ以下の場合(S42:NO)返答時間の速い順に通信候補テーブルの外部機器を並び替える(S44)。通信候補テーブルの最上位の外部機器に印刷情報要求信号を送信する(S46)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に印刷を行う印刷装置が知られている。印刷装置で使用される印刷情報には、例えばフォント情報やテンプレート情報がある。フォント情報は例えば文字や数字等のフォントに関する情報である。テンプレート情報は例えば定型フォーム、飾り枠、図形等に関する情報である。これらの印刷情報は印刷装置に内蔵されているメモリに記憶されている。印刷装置は印刷の指示を受け付けた場合、その印刷に必要な印刷情報をメモリに記憶していない場合がある。その場合、印刷装置は外部機器から印刷情報をもらう必要がある。無線通信機能を備えた印刷装置は、他の外部装置と無線により各種データの送受信を行う。ところが通信状況が悪いと正確にデータを受信できない場合がある。そこで例えば、無線通信機能を有する通信端末において、無線の通信状況に応じて、VGAとQVGA(Quayrt VGA 320×240ピクセル)サイズの画像データを選択してダウンロードを行う無線通信端末が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−129472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の無線通信端末は、印刷情報を印刷装置に送信できる外部機器は、1つであるため、無線の通信状況が悪い場合には、低解像度のQVGAサイズの画像データをダウンロードするしかなく、高解像度のVGAサイズの画像データが必要であっても、安定してダウンロードができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、外部機器から印刷情報を無線で受信する場合に、その印刷情報のデータサイズに応じてより安定した通信状況下で印刷情報を受信できる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印刷装置は、少なくとも一つの外部機器と無線で通信可能な印刷装置であって、印刷の指示を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって指示を受け付けた印刷の実行に必要な情報である印刷情報が記憶される印刷情報記憶手段と、前記印刷情報記憶手段に前記印刷情報が記憶されているか否かを判断する記憶判断手段と、前記記憶判断手段によって前記印刷情報が記憶されていないと判断された場合、前記外部機器に、前記印刷情報を記憶しているか否かを問い合わせる問い合わせ信号を送信する問い合わせ信号送信手段と、前記問い合わせ信号送信手段によって送信された前記問い合わせ信号を受信した外部機器から前記問い合わせ信号に対応する応答信号を受信する応答信号受信手段と、前記応答信号受信手段によって受信された前記応答信号に基づき、前記印刷情報を記憶している外部機器を特定する外部機器特定手段と、前記問い合わせ信号送信手段による前記問い合わせ信号の送信から、前記応答信号受信手段による前記応答信号の受信までにかかる時間に基づき、前記外部機器特定手段によって特定された前記外部機器との通信にかかる応答時間を計測する応答時間計測手段と、前記応答時間計測手段によって計測された前記応答時間を記憶する応答時間記憶手段と、無線通信の伝送信号に変換された、前記応答信号受信手段により受信される前記応答信号の受信信号に基づき、前記外部機器特定手段によって特定された前記外部機器との無線通信における受信信号強度を計測する受信信号強度計測手段と、前記受信信号強度計測手段によって計測された前記受信信号強度を記憶する受信信号強度記憶手段と、前記印刷情報のデータサイズを取得するサイズ取得手段と、前記サイズ取得手段によって取得された前記データサイズが所定サイズより大きいか否かを判断するサイズ判断手段と、前記サイズ判断手段によって前記データサイズが前記所定サイズより大きいと判断された場合、前記受信信号強度記憶手段に記憶されている前記受信信号強度が最も大きいと計測された外部機器を、前記印刷情報の送信を要求する対象機器に決定する第1対象機器決定手段と、前記サイズ判断手段によって前記データサイズが前記所定サイズ以下と判断された場合、前記応答時間記憶手段に記憶されている前記応答時間が最も短いと計測された外部機器を、前記対象機器に決定する第2対象機器決定手段と、前記第1又は第2対象機器決定手段によって決定された前記対象機器に、前記印刷情報の送信を要求する要求信号を送信する要求信号送信手段と、前記要求信号送信手段によって送信された前記要求信号を受信した前記対象機器から送信された前記印刷情報を受信する印刷情報受信手段と、前記印刷情報受信手段によって受信された前記印刷情報に基づき、前記印刷を実行する印刷実行手段とを備えている。
【0007】
この印刷装置では、外部から受信すべき印刷情報のデータサイズが所定のサイズより大きい場合、応答信号の受信信号強度が強い外部機器からその印刷情報を受信する。それ故、より安定した通信状況で外部機器から印刷情報を受信できるので、印刷指示に応じた印刷を良好に実行できる。またデータサイズが所定のサイズ以下の場合は、応答信号の応答時間が最も短い外部機器から受信する。それ故、外部機器から速やかに受信した印刷情報を利用して指示に基づく印刷を実行できる。
【0008】
また前記印刷装置では、前記外部機器を識別する識別情報を取得する識別情報取得手段と、前記少なくとも一つの外部機器のうち通信を許可する機器の識別情報を記憶する通信許可識別情報記憶手段と、前記識別情報取得手段が取得した前記識別情報が、前記通信許可識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報に該当するか否かを判断する通信許可判断手段とを備えることにより、前記外部機器特定手段は、前記識別情報取得手段が取得した前記識別情報が、前記通信許可判断手段によって前記通信許可識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報に該当すると判断された前記外部機器を特定してもよい。これにより、例えば、印刷装置と仕様が異なる外部機器から印刷情報を受信しても使用できない場合、通信を許可する外部機器を特定することによって、外部機器から使用できない印刷情報を受信することを防止できる。
【0009】
また前記印刷装置では、前記問い合わせ信号送信手段は、前記外部機器に、前記印刷を実行する印刷媒体と同じ幅の印刷媒体を対象とする前記印刷情報を記憶しているか否かを問い合わせる前記問い合わせ信号を送信してもよい。これにより、例えば、印刷の指示が対象とする印刷媒体の幅と異なる幅の印刷情報を外部機器から受信しても、印刷媒体の幅に応じた適切な印刷を実行できない場合、そこで外部機器に対して印刷を実行する印刷媒体と同じ幅の印刷媒体を対象とする印刷情報を記憶しているか否かを問い合わせることによって、印刷の指示が対象とする印刷媒体の幅に見合った印刷情報を受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である印刷装置の実施概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である印刷装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態であるカバーを取り外した状態の印刷装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態である印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態である通信許可テーブルの一例である。
【図6】本発明の実施形態である通信候補テーブルの一例である。
【図7】印刷制御処理のフローチャートである。
【図8】印刷情報取得処理のフローチャートである。
【図9】図8の続きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態である印刷装置1について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本開示が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下説明において、図2、図3の左斜め下方、右斜め上方、右斜め下方、左斜め上方、下方、上方を、夫々、印刷装置1の前方、後方、右方、左方、下方、上方とする。
【0012】
先ず、印刷装置1の実施概要について、図1を参照して説明する。印刷装置1は後述するラベルシート3A(図3参照)に文字、記号、又は図形等の印刷を行う。印刷装置1にはPC30が接続されている。PC30は印刷装置1に印刷を指示する。印刷装置1はPC30による印刷の指示に基づき印刷を実行する。印刷装置1は外部機器である他の印刷装置1A,1B,1Cと無線通信により各種情報の送受信が可能である。
【0013】
本実施形態では、印刷装置1は印刷情報をフラッシュROM14(図4参照)に記憶している。印刷情報は、例えばPC30からの印刷指示に基づき、その印刷を実行する際に必要な情報である。例えば、フォント情報、テンプレート情報等である。フォント情報は例えば文字や数字等のフォントに関する情報である。テンプレート情報は例えば定型フォーム、飾り枠、図形等に関する情報である。ところが印刷装置1はPC30からの印刷指示を受け付けた場合、その印刷に必要な印刷情報をフラッシュROM14に記憶していない場合がある。その場合、印刷装置1はその印刷に必要な印刷情報を他の印刷装置1A〜1Cから無線により受信する。
【0014】
印刷装置1は、受信すべき印刷情報のデータサイズに応じて、種々の通信状況下にある印刷装置1A〜1Cの中から適切な一の印刷装置を選択できる。それ故、印刷装置1は、他の印刷装置1A〜1Cから印刷情報をより安定して又はより速やかに受信し、印刷の指示に基づいた印刷を良好に実行できる。
【0015】
次に、印刷装置1の外部構成について、図2を参照して説明する。印刷装置1は筐体2を備える。筐体2は上部が開口する樹脂部品である。筐体2は印字機構及び搬送機構等を収容する。図3に示すように、筐体2の上部後方には収納部4が設けられている。収納部4は下方に略円弧状に湾曲する凹状に形成されている。収納部4はロールシートホルダ3を収納する。ロールシートホルダ3は巻芯に巻回された所定幅のラベルシート3Aを回転可能に支持する。収納部4の底部には識別センサ21(図4参照)が設けられている。識別センサ21はロールシートホルダ3に支持されているラベルシート3Aの種類、幅、材質等の媒体情報を検出する。
【0016】
図2に示すように、筐体2の上部開口にはカバー5が開閉自在に設けられている。カバー5はロールシートホルダ3を上側から覆う。カバー5は透明の樹脂部品である。筐体2の前面には、トレー6、電源ボタン7、及びカッターレバー9が各々設けられている。トレー6はカバー5の前方に設けられ、排出口(図示略)から排出される印刷済みのラベルシート3Aを受ける。電源ボタン7は筐体2の前面の右側に位置する。カッターレバー9は電源ボタン7の下方に位置する。使用者はカッターレバー9を左右方向に操作する。それ故、筐体2内のカッターユニット(図示せず)は駆動する。筐体2の後面下部には電源コード(図示略)が接続される電源接続部(図示略)が設けられている。電源接続部の隣にはUSB接続部16(図4参照)が設けられている。USB接続部16にはPC30等を接続可能である。
【0017】
次に、印刷装置1の電気的構成について、図4を参照して説明する。印刷装置1は、CPU11を備える。CPU11は印刷装置1の動作を統括制御する。CPU11には、ROM12、RAM13、フラッシュROM14、タイマ15、USB接続部16、及び入出力インタフェイス17等がバスにより接続されている。ROM12はプログラム記憶領域121を備える。プログラム記憶領域121はCPU11が印刷装置1を制御するための各種プログラムを記憶する。RAM13は印刷バッファ131等を備える。印刷バッファ131は印刷装置1において印刷が実行される際に必要なデータ及び各種設定等を一時的に記憶する。
【0018】
フラッシュROM14は後述する各種記憶領域を備える。タイマ15は各種計時を行う。USB接続部16には例えばPC30が接続される。入出力インタフェイス17には、識別センサ21、駆動回路22、駆動回路23、及び無線通信部26が接続されている。駆動回路22にはサーマルヘッド24が接続されている。駆動回路22はサーマルヘッド24を駆動する。駆動回路23にはシート送りモータ25が接続されている。駆動回路23はシート送りモータ25を駆動する。シート送りモータ25はラベルシート3Aを搬送する為の搬送機構の駆動源である。無線通信部26は無線により他の印刷装置1A〜1Cと各種情報の送受信を行う。また、無線通信部26は、電界強度算出部261を備え、無線通信部26から出力される通信出力電圧より電界の強度を算出する。なお印刷装置1A〜1Cは印刷装置1と同じ構成である。
【0019】
次に、フラッシュROM14の各種記憶領域について、図4を参照して説明する。フラッシュROM14は不揮発性のメモリである。フラッシュROM14は、印刷情報記憶領域141、通信許可テーブル記憶領域142、及び通信候補テーブル記憶領域143等を備える。印刷情報記憶領域141は印刷情報を記憶する。通信許可テーブル記憶領域142は通信許可テーブル1421(図5参照)を記憶する。通信候補テーブル記憶領域143は通信候補テーブル1431(図6参照)を記憶する。
【0020】
次に、通信許可テーブル1421について、図5を参照して説明する。通信許可テーブル1421は、印刷装置1との通信を許可する外部機器の機種を特定する為のものである。通信許可テーブル1421は、登録番号と、シリーズ番号と、モデルコードとをそれぞれ対応づけて記憶している。登録番号は、通信許可テーブル1421に登録した順番を示している。シリーズ番号は、例えば印刷装置の機種のシリーズの種類を示している。本実施形態では例えば2種類のシリーズ1と2を想定する。モデルコードはそのシリーズ毎に各々設計された各モデルをコード番号で示している。本実施形態では例えば2種類のモデル1と2を想定する。「−」は全シリーズを意味する。本実施形態は、シリーズ番号と、モデルコードとで、印刷装置1と通信を許可してもよい印刷装置の機種を特定する。
【0021】
次に、通信候補テーブル1431について、図6を参照して説明する。通信候補テーブル1431は、印刷装置1の印刷情報の問い合わせ信号に対して応答信号を返信した印刷装置を通信候補として登録する為のものである。通信候補テーブル1431は、登録番号と、識別番号と、電界強度と、返答時間とをそれぞれ対応付けて記憶している。登録番号は、通信候補テーブル1431に登録した順番を示している。識別番号は他の印刷装置から送信される識別情報の番号である。電界強度は他の印刷装置から受信した応答信号に基づいて算出される電界強度(V/m)である。返答時間は印刷装置1から問い合わせ信号を送信してから他の印刷装置から応答信号を受信するまでの経過時間(ms)である。
【0022】
図6に示す例では、登録番号1に対して、識別番号「aaab」、電界強度「x1」、返答時間「t1」の各値が記憶されている。登録番号2に対して、識別番号「abaa」、電界強度「x2」、返答時間「t2」の各値が記憶されている。登録番号3に対して、識別番号「acdd」、電界強度「x3」、返答時間「t3」の各値が記憶されている。後述するが、本実施形態は受信する印刷情報のデータサイズに応じて、電界強度の強い順、又は返答速度の速い順に、登録順序を並び替える。そして最上位にある登録番号1の印刷装置を通信相手とする。
【0023】
次に、印刷装置1のCPU11によって実行される印刷制御処理について、図7〜図9のフローチャートを参照して説明する。本処理は、PC30から印刷実行のための印刷指示信号を受信したのを契機に、CPU11は、ROM12のプログラム記憶領域121(図4参照)に記憶された「印刷制御プログラム」を呼び出して実行する。
【0024】
先ず、CPU11はPC30から送信された印刷指示信号の受付処理を実行する(S11)。PC30から送信される印刷指示信号は、印刷する文字、図形、又は記号等を含む文字情報の他に、印刷情報の詳細を指定する指定情報を含む。指定情報は、フォント、テンプレート、及びラベルシートのシート幅等の少なくとも何れかを指定する情報である。CPU11は受付処理において文字情報及び指定情報をRAM13に記憶する。CPU11は指定情報に基づき、印刷の実行に必要な印刷情報を記憶しているか否か判断する(S12)。印刷情報はフラッシュROM14の印刷情報記憶領域141に記憶されている。CPU11は指定情報に対応するフォント情報、又はテンプレート情報が記憶されているか否か判断する。
【0025】
CPU11は、フラッシュROM14の印刷情報記憶領域141に指定情報に基づいた印刷情報が記憶されていると判断した場合(S12:YES)、その印刷情報と文字情報とを合成した印刷データを印刷バッファ131に展開し、印刷処理を実行する(S13)。CPU11は印刷処理においてサーマルヘッド24及びシート送りモータ25を駆動して、ラベルシート3Aの、印刷面に文字、図形及び記号等を印刷してラベルシート3Aを排出口から外部に搬送させる。そして、CPU11は印刷制御処理を終了する。
【0026】
これとは逆に、CPU11は、印刷情報記憶領域141に、指定情報に基づいた印刷情報が記憶されていないと判断した場合(S12:NO)、印刷情報を利用できないので印刷処理を実行できない。そこでCPU11は印刷情報取得処理を実行する(S14)。
【0027】
次に、印刷情報取得処理について、図8,図9のフローチャートを参照して説明する。先ず、図8のフローに示すように、CPU11は、指定情報に基づいた印刷情報を持っているか否かを問い合わせる問い合わせ信号を印刷装置1の周囲に存在する外部機器に送信する(S21)。CPU11はタイマ15をリセットし、スタートする(S22)。タイマ15のカウンタ値はRAM13に記憶されて時間と共にカウントアップされる。なお、外部機器である印刷装置1A〜1Cはその設置環境や動作状況等によって印刷装置1との通信状況はそれぞれ異なる。印刷装置1との離間距離が遠ければ遠いほど通信の電界強度は弱くなる。それとは逆に、印刷装置1との離間距離が近ければ電界強度は強くなるが、その周囲に電波の遮蔽物があれば通信状態は不安定となる。又、CPU11が、他の処理の実行中であれば問い合わせ信号に対する処理も後まわしとなる。それ故、印刷装置1A〜1Cは設置環境によっては印刷装置1からの問い合わせ信号を受信できない、あるいは、かなり遅く応答信号が返ってくる場合も想定される。
【0028】
CPU11は問い合わせ信号を送信してから所定時間(例えば10秒)が経過したか否か判断する(S23)。CPU11は所定時間が経過するまでは(S23:NO)、外部機器から応答信号を受信したか否か判断する(S24)。CPU11は応答信号を受信するまでは(S24:NO)、S23に戻って所定時間が経過するまで応答信号の受信を監視する。
【0029】
印刷装置1の周囲にある他の印刷装置1A〜1Cの中で、印刷装置1との通信状況に問題の無い印刷装置は問い合わせ信号を受信できる。問い合わせ信号には例えばPC30の印刷指示信号に含まれる指定情報が含まれる。それ故、問い合わせ信号を受信した他の印刷装置は、印刷装置1が要求する印刷情報について、フォント、テンプレート、を特定できる。他の印刷装置はそのような印刷情報をメモリに記憶しているか否か判断し、その結果情報を応答信号に付加して印刷装置1に返信する。応答信号はその印刷装置の識別情報や、その機種のシリーズ番号とモデルコードの情報を含んでいる。
【0030】
CPU11は他の印刷装置から応答信号を受信したと判断した場合(S24:YES)、返答時間を確定してRAM13に一旦記憶する(S25)。さらにCPU11は受信した応答信号の電界強度を計測してRAM13に一旦記憶する(S26)。次いでCPU11は、応答信号を送信した他の印刷装置の機種は、フラッシュROM14に記憶された通信許可テーブル1421に登録されている機種か否か判断する(S27)。応答信号には、応答信号を送信した印刷装置のシリーズ番号とモデルコードの情報が含まれている。CPU11はそれらの情報が通信許可テーブル1421に登録されているか否か判断する。
【0031】
例えば、他の印刷装置が印刷装置1の機種と異なる場合、機種の仕様が異なるので、印刷情報を受信しても使用することができない。一方、印刷装置1と機種が同じ、又は印刷情報を互いに同一のものを使用できる機種の場合、そのような機種から受信した印刷情報は印刷装置1においても使用できる。そこで利用可能である印刷情報が送信可能な他の印刷装置を通信許可テーブル1421に予め登録しておくことにより、不要な印刷情報を受信することを防止できる。
【0032】
CPU11は応答信号を送信した他の印刷装置の機種が通信許可テーブル1421に登録されている機種ではないと判断した場合(S27:NO)、何もせずに、S23に戻って処理を繰り返す。
【0033】
CPU11は応答信号を送信した他の印刷装置の機種が通信許可テーブル1421に登録されている機種であると判断した場合(S27:YES)、その印刷装置が受信すべき印刷情報を記憶しているか否か判断する(S28)。CPU11は応答信号に付加された結果情報に基づき、受信すべき印刷情報を記憶しているか否か判断する。CPU11は、その印刷装置は受信すべき印刷情報を記憶していないと判断した場合(S28:NO)、何もせずに、S23に戻って処理を繰り返す。
【0034】
CPU11はその印刷装置は受信すべき印刷情報を記憶していると判断した場合(S28:YES)、その印刷装置の識別番号を通信候補テーブル1431(図6参照)に登録する(S29)。さらにCPU11は確定した返答時間を通信候補テーブル1431に登録する(S30)。さらにCPU11は計測した応答信号の電界強度を通信候補テーブル1431に登録する(S31)。CPU11は処理をS23に戻し、所定時間が経過するまでは(S23:NO)上記の処理を繰り返す。
【0035】
CPU11は所定時間が経過したと判断した場合(S23:YES)、通信候補テーブル1431が確定する。そこでCPU11は、図9のフローに示すように、RAM13に記憶された指定情報に基づき、印刷情報のデータサイズを取得する(S41)。印刷情報のデータサイズが所定サイズより大きい場合、通信状態が不安定であると正確に受信できない場合がある。そこでCPU11は取得したデータサイズが所定サイズより大きいか否か判断する(S42)。例えばフォント情報は一般的に大きいデータ量である。そのような情報は通信状態が安定していなければ、フォント情報を正確かつ安定して受信できない。これに対し、テンプレート情報のようなものはフォント情報に比較して小さいので、通信状態が不安定であっても受信することはできる。
【0036】
そこで、CPU11は取得したデータサイズが所定サイズより大きいと判断した場合(S42:YES)、通信候補テーブル1431において、各印刷装置に対応する各情報を、電界強度を基に並び替える(S43)。具体的には、電界強度の強い順に、登録番号1から最後まで並び替える。それ故、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1の印刷装置が最も電界強度が強かった印刷装置となる。これにより電界強度が最も強かった印刷装置を、印刷情報の送信を要求する対象機器に決定することができる。
【0037】
他方、CPU11は取得したデータサイズが所定サイズ以下と判断した場合(S42:NO)、通信候補テーブル1431において、各印刷装置に対応する各情報を、返答時間を基に並び替える(S44)。具体的には、返答時間の速い順に、登録番号1から最後まで並び替える。それ故、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1の印刷装置が、返答時間が最も速かった印刷装置となる。これにより返答時間が最も速かった印刷装置を、印刷情報の送信を要求する対象機器に決定することができる。
【0038】
次いで、CPU11は、通信候補テーブル1431は空の状態であるか否か判断する(S45)。CPU11は通信候補テーブル1431に印刷装置の各種情報が登録されていれば(S45:NO)、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1の印刷装置に対して印刷情報要求信号を送信する(S46)。印刷情報要求信号は印刷情報の送信を要求する信号である。印刷情報要求信号を受信した他の印刷装置は、その印刷情報要求信号に対応する印刷情報を印刷装置1に送信する。
【0039】
ここで受信する印刷情報が所定サイズより大きいものであれば、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1は電界強度が最も強かった印刷装置となっている。このような印刷装置を通信相手に決定し、印刷情報要求信号を送信することで、より安定した通信状況下で印刷情報を受信できる。これとは逆に、受信する印刷情報が所定サイズ以下であれば、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1は返答時間が最も速かった印刷装置となっている。このような印刷装置を通信相手に決定し、印刷情報要求信号を送信することで、テンプレート情報のような小さい印刷情報を速やかに受信できる。
【0040】
CPU11は通信が成功したか否か判断する(S47)。CPU11は通信が成功したと判断した場合(S47:YES)、印刷情報要求信号を送信した他の印刷装置から印刷情報を受信する(S48)。続いてCPU11は印刷情報の受信が成功したか否か判断する(S49)。CPU11は印刷情報の受信が成功したと判断した場合(S49:YES)、受信した印刷情報をフラッシュROM14の印刷情報記憶領域141に記憶し、処理を図8のS13に移行して印刷処理を実行する(S13)。こうしてCPU11は印刷制御処理を終了する。
【0041】
ところで、CPU11と通信中の印刷装置の位置が利用者によって移動される場合がある。さらにCPU11と通信中の印刷装置の電源がオフされる場合もある。その場合、CPU11は通信が失敗したと判断するので(S47:NO)、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1の印刷装置の各情報を削除し(S51)、残りの印刷装置の登録番号を繰り上げる(S52)。
【0042】
CPU11は、S45に戻って、通信候補テーブル1431が空の状態であるか否か判断する。CPU11は、通信候補テーブル1431が空の状態であると判断した場合(S45:YES)、PC30にエラー信号を送信し(S53)、処理を終了する。なおエラー信号を受信したPC30はディスプレイにてエラー報知を行う。
【0043】
また、CPU11が他の印刷装置から印刷情報を受信している途中で、上記のような理由により通信が切断される場合がある。このような場合、CPU11は印刷情報の受信が失敗したと判断し(S49:NO)、通信候補テーブル1431の最上位である登録番号1の印刷装置の各情報を削除し(S51)、残りの印刷装置の登録番号を繰り上げる(S52)。CPU11は、S45に戻って、上記と同様に処理を繰り返す。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1のCPU11は、PC30から印刷の指示を受け付けた時に、印刷の実行に必要な印刷情報がフラッシュROM14に記憶されていない場合がある。この場合、CPU11は無線により周囲の外部機器である他の印刷装置1A〜1Cに問い合わせ信号を送信する。問い合わせ信号は印刷情報の有無を問い合わせる信号である。CPU11はこの問い合わせ信号に対する応答信号を他の印刷装置から受信する。CPU11は印刷情報を記憶していると応答した印刷装置について、応答信号の返答時間と電界強度を、フラッシュROM14に記憶された通信候補テーブル1431に登録する。
【0045】
ここでCPU11は受信する印刷情報のデータサイズが所定サイズよりも大きければ、応答信号の電界強度の強い順に、通信候補テーブル1431に登録されている印刷装置を並び替える。他方、受信する印刷情報のデータサイズが所定サイズ以下であれば、応答信号の返答時間の速い順に、通信候補テーブル1431に登録されている印刷装置を並び替える。そしてCPU11は通信候補テーブル1431の最上位の印刷装置に印刷情報要求信号を送信する。このように、他の印刷装置から印刷情報のデータサイズに応じてより安定した通信状況下で印刷情報を受信できるので、PC30の印刷指示に応じた印刷を良好にできる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば上記実施形態では、外部機器として印刷装置1A〜1Cを一例に説明したが、PCやサーバから印刷情報を受信するようにしてもよい。
【0047】
また上記実施形態では、印刷情報として、フォント情報、テンプレート情報を一例として説明したが、この以外の情報にも本発明は適用可能である。
【0048】
また上記実施形態では、通信許可テーブル1421をフラッシュROM14に記憶し、それに登録されていない外部機器からは印刷情報を受信しないようにしたが、通信許可テーブル1421を使用しなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 印刷装置
1A,1B,1C 印刷装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 フラッシュROM
15 タイマ
26 無線通信部
261 電界強度算出部
1421 通信許可テーブル
1431 通信候補テーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの外部機器と無線で通信可能な印刷装置であって、
印刷の指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって指示を受け付けた印刷の実行に必要な情報である印刷情報が記憶される印刷情報記憶手段と、
前記印刷情報記憶手段に前記印刷情報が記憶されているか否かを判断する記憶判断手段と、
前記記憶判断手段によって前記印刷情報が記憶されていないと判断された場合、前記外部機器に、前記印刷情報を記憶しているか否かを問い合わせる問い合わせ信号を送信する問い合わせ信号送信手段と、
前記問い合わせ信号送信手段によって送信された前記問い合わせ信号を受信した外部機器から前記問い合わせ信号に対応する応答信号を受信する応答信号受信手段と、
前記応答信号受信手段によって受信された前記応答信号に基づき、前記印刷情報を記憶している外部機器を特定する外部機器特定手段と、
前記問い合わせ信号送信手段による前記問い合わせ信号の送信から、前記応答信号受信手段による前記応答信号の受信までにかかる時間に基づき、前記外部機器特定手段によって特定された前記外部機器との通信にかかる応答時間を計測する応答時間計測手段と、
前記応答時間計測手段によって計測された前記応答時間を記憶する応答時間記憶手段と、
無線通信の伝送信号に変換された、前記応答信号受信手段により受信される前記応答信号の受信信号に基づき、前記外部機器特定手段によって特定された前記外部機器との無線通信における受信信号強度を計測する受信信号強度計測手段と、
前記受信信号強度計測手段によって計測された前記受信信号強度を記憶する受信信号強度記憶手段と、
前記印刷情報のデータサイズを取得するサイズ取得手段と、
前記サイズ取得手段によって取得された前記データサイズが所定サイズより大きいか否かを判断するサイズ判断手段と、
前記サイズ判断手段によって前記データサイズが前記所定サイズより大きいと判断された場合、前記受信信号強度記憶手段に記憶されている前記受信信号強度が最も大きいと計測された外部機器を、前記印刷情報の送信を要求する対象機器に決定する第1対象機器決定手段と、
前記サイズ判断手段によって前記データサイズが前記所定サイズ以下と判断された場合、前記応答時間記憶手段に記憶されている前記応答時間が最も短いと計測された外部機器を、前記対象機器に決定する第2対象機器決定手段と、
前記第1又は第2対象機器決定手段によって決定された前記対象機器に、前記印刷情報の送信を要求する要求信号を送信する要求信号送信手段と、
前記要求信号送信手段によって送信された前記要求信号を受信した前記対象機器から送信された前記印刷情報を受信する印刷情報受信手段と、
前記印刷情報受信手段によって受信された前記印刷情報に基づき、前記印刷を実行する印刷実行手段と
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記外部機器を識別する識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記少なくとも一つの外部機器のうち通信を許可する機器の識別情報を記憶する通信許可識別情報記憶手段と、
前記識別情報取得手段が取得した前記識別情報が、前記通信許可識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報に該当するか否かを判断する通信許可判断手段と
を備え、
前記外部機器特定手段は、前記識別情報取得手段が取得した前記識別情報が、前記通信許可判断手段によって前記通信許可識別情報記憶手段に記憶された前記識別情報に該当すると判断された前記外部機器を特定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記問い合わせ信号送信手段は、
前記外部機器に、前記印刷を実行する印刷媒体と同じ幅の印刷媒体を対象とする前記印刷情報を記憶しているか否かを問い合わせる前記問い合わせ信号を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−75437(P2013−75437A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216894(P2011−216894)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】