説明

印字媒体の厚み検知装置におけるローラ支持機構

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通帳処理装置等に搭載される印字媒体の厚み検知装置におけるローラ支持機構に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ATM(自動金銭出納機)などの通帳処理装置は、その挿入口に挿入された見開き状態の通帳を印字機構に搬送して印字動作を行う。この印字動作にあたっては、印字品質を一定に保つために、印字媒体の厚み検知装置によって通帳の厚みを検知し、検知した厚みに対応してプラテンの位置を調整することによって、通帳の厚みの大小に関わりなく、印字ヘッドと通帳印字面との間に常に適切なギャップを確保する必要がある。
【0003】このために、通帳の厚み検知機構と、同機構により検知された厚みに応じて制御駆動されるプラテン移動機構とが用いられる。上記厚み検知機構の一例としてローラ式厚み検知機構があり、これは、通帳搬送機構を構成する送りローラの一つに、押えローラを常時付勢し、搬送されてくる通帳がその送りローラと押えローラの間に挿入されたときに、その押えローラが送りローラから離間された距離から厚みを検知するようになっている。また、プラテン移動機構は、その検知量に対応してモータを回転駆動し、プラテン支持部材を連動させて、プラテンの印字ヘッドからの距離を所定値に設定するようになっている。
【0004】図3は、ローラ式厚み検知機構を用いる通帳処理装置の概略構成図であり、図4は、図3の通帳処理装置において一般的に用いられているローラ式厚み検知機構及びこれと連動するプラテン移動機構の一例を示す斜視図である。
【0005】図3において、印字媒体である通帳Tが通帳処理装置に挿入されると、モータMにより送りローラ10a,10b,10cが所定方向に回転されて、各送りローラに常時付勢されている押えローラ12a,12b,12cと送りローラとのの間を通帳Tが搬送され、その間に印字ヘッド14とプラテン16との間で停止されて、印字ヘッド14がプラテン16の長手方向に移動しながら印字動作をすることによって、通帳Tの所定位置に印字されるようになっている。
【0006】ここで、送りローラ10bとこれに対向する押えローラ12bは、印字前の通帳Tの厚み検知機構をも構成するものであるので、押えローラ12bを以下、検知ローラというものとする。通帳Tが送りローラ10aと検知ローラ12bの間に挿入されると、検知ローラ12bは、通帳の厚みtに対応する距離だけ、送りローラ10bから離れる方向に移動される。図4において、検知ローラ12bの軸には、通帳介在による検知ローラの移動量を検知するための被検知部材18が取付けられている。
【0007】プラテン16を印字ヘッド14に対して移動させるプラテン移動機構は、プラテン16の両端部付近において垂設されたラック棒16aに、通帳処理装置の本体に回転自在に支持された回転軸20に固着したピニオン20aを噛み合わせ、前記回転軸20に固着した歯車20bを、正逆回転するステッピングモータを用いるプラテン昇降用モータ22の回転軸に固着された歯車22aに噛み合わせ、さらに前記プラテン16に、前記被検知部材18に対応する光電センサSを取付けてなっている。光電センサSは、検知領域内の所定位置、例えば、光電センサSの出力値(位置信号)が最大又は最小となる位置に、被検知部材18があるか、否かを検出するものである。
【0008】なお、送りローラ10bと検知ローラ12bとの間に通帳Tが挿入されていない状態、すなわち、両ローラが密着した状態において、プラテン16が印字ヘッド(図示せず)とプラテン16との間の最適のギャップが得られる位置に上昇されたときに、光電センサSから前述した位置信号が得られるように、センサSと被検知部材18との相対的位置が予め設定されている。
【0009】上記構成によって、通帳Tの前端部が送りローラ10bと、検知ローラ12bとの間に挿入されると、検知ローラ12b及び被検知部材18は、通帳Tの厚みt分だけ押下される。このため、被検知部材18とセンサSとの相対位置が距離tだけずれるので、センサSからは距離tに応じた検出信号が出力される。この検出信号が基準位置信号に合致するまでプラテン昇降モータ22を回転させてセンサS及びプラテン16を降下させる。この結果、通帳Tの厚みtと等しい距離だけプラテン16の位置が印字ヘッド14から降下するので、プラテン16と印字ヘッド14との間には、最適のギャップが確保される。
【0010】ところで、図3及び図4においては、検知ローラ12bが送りローラ10bの方向へ常に付勢されて圧接しているため、通帳が両ローラの間に挿入される際、通帳Tに対して抵抗力が作用する欠点があった。この欠点を除くためには、通帳Tが両ローラ10b,12b間に挿入されるまで、検知ローラ12bの付勢を解除して送りローラ10bと検知ローラ12bとを離間状態にさせておき、通帳Tが挿入された後で検知ローラ12bの付勢を与えて両ローラ10b,12bを圧接状態にすればよい。このため、次に説明するように、両ローラ10b,12bを圧接状態及び離間状態に切り替えられるようなローラ支持機構が提案されている。
【0011】図5は、両ローラを圧接状態及び離間状態に切り替えられるようにしたローラ支持機構の従来例を示す。なお、図5において、図3と同一部材には同一の符号を付しその説明は省略する。24は、検知ローラ12bを回動自在に支持するホルダである。ホルダ24の底部に開設された孔を通して係止部材26の軸部先端が枠28に固定されている。ホルダ24は、枠28に対して昇降自在に保持され、係止部材26の上部に設けられた頭部に係合されている。係止部材26の軸部における、ホルダ24と枠28との間には、付勢部材30が装着されており、この付勢部材30の作用によってホルダ24及び検知ローラ12bは、印字媒体搬送面Lの反対側にある送りローラ10bの方向に付勢されている
【0012】上端が枠28に固着された軸32は、軸受34により昇降自在に支持されている。バー36の一端は、枠28に枢着され、他端は、レバー38の支点部38aに固定されている。レバー38は、支点部38aを支点にして回動自在に支持されるので、バー36も支点部38aを支点にして回動する。レバー38の端部38bには、リンク40の一端が枢着され、このリンク40の他端は、ソレノイド42のプランジャ44に枢着さている。したがって、レバー38の端部38bは、リンク40を介してプランジャ44に連繋されている
【0013】次に、動作を説明する。ソレノイド42の作動時には、図示するようにプランジャ44がその可動範囲の下端位置まで吸着される。したがって、図5に示すように、レバー38の支点部38aから見て左側の構成要素、すなわち、検知ローラ12b、ホルダ24、係止部材26、枠28、付勢部材30、軸32は、上昇位置に保持される。これとともに、検知ローラ12bは、付勢部材30の作用によって送りローラ10bに押圧される。この結果、両ローラ10b,12bは、圧接状態となる。
【0014】一方、ソレノイド42の非作動時には、プランジャ44は解放状態となる。したがって、レバー38の支点部38aから見て左側の構成要素、すなわち、検知ローラ12b、ホルダ24、係止部材26、枠34、付勢部材36、軸38の自重によって、バー36及びレバー38が反時計回りに回動する。これにともない、ソレノイド42のプランジャ4は、その可動範囲の上端位置まで引き上げられ、その位置で停止する。この結果、検知ローラ12bが所定の降下位置に降下するため、送りローラ10bと検知ローラ12bとの間に間隔が発生し、両ローラは、離間状態となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図5に示した従来のローラ支持機構は、検知ローラ12bと、駆動源であるソレノイド42とを連結する機構要素が多いためスペースを必要とする。したがって、このようなローラ支持機構は、小形化を要求される通帳処理装置の印字媒体の厚み検知装置に搭載するためには不向きなものであった。本発明は上記の点に鑑み、従来に比較して少ない部品点数で構成できるローラ支持機構を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明では、検知ローラと、ローラ支持手段と、レバーと、トルクスプリングと、ソレノイドとを有し、前記ローラ支持手段は、前記検知ローラを回動自在に支持するとともに、前記検知ローラが印字媒体搬送面に対して垂直に、かつ前記印字媒体搬送面の反対側に設けてある送りローラに対して接離自在となるように支持されており、前記レバーは、前記ローラ支持手段から離れた位置において、支点部を中心に回動自在に設けられ、前記トルクスプリングは、一端部が前記ローラ支持手段にされるとともに、他端部が前記レバーに固定されており、前記ソレノイドは、作動時に前記トルクスプリング及び前記ローラ支持手段を介して前記検知ローラを前記送りローラ方向に移動させるべく前記レバーに回動力を付与するものであることを特徴としている。
【0017】
【作用】本発明のローラ支持機構では、検知ローラ及びローラ支持手段は、トルクスプリングによって支持されるとともに、トルクスプリングを介してソレノイドから回動力を与えられることにより、検知ローラが送りローラに向かって圧接される。
【0018】
【実施例】以下、本発明について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明のローラ支持機構の一実施例を示す概略側面図であり、図2は、トルクスプリングを示す斜視図である。なお、図1において、従来例を示す図3〜図5と同一または相当する部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0019】図1(a),(b)において、50は、検知ローラ12bを回動自在に保持するホルダ(ローラ支持手段)である。ホルダ50の下部には、軸受け34によって昇降自在に支持された軸50aの一端が固着されている。したがって、ホルダ50は、検知ローラ12が印字媒体搬送面Lに対して垂直に、かつ搬送面の反対側に設けてある送りローラ10bに対して接離自在に支持されている。なお、このホルダ50には、従来例を示す図4における被検知部材18に相当する部分が設けられているが、図面を簡略にするために省略されている。
【0020】52は、トルクスプリングであり、図2に示すように、一端部52aと、コイル状に巻回された他端部52bとを有している。図1において、トルクスプリング52の一端部52aは、ホルダ50に突設された係止部50bに固定され、他端部52bは、レバー38の支点部38aに巻回されるとともに、その先端がレバー38に設けられた係止溝38cに嵌入されて固定されている。したがって、バー38は、支点部38aを中心にして回動可能である。このトルクスプリング52は、次に述べる2つの機能を有する。すなわち、第1に、ホルダ50とレバー38の支点部38aとを連結する機能であり、第2に、検知ローラ12bを上方に付勢する機能である。
【0021】次に、このように構成されたローラ支持機構の動作について説明する。図1(a)は、ソレノイド42が非作動状態にあるときを示す。このとき、プランジャ44は吸着されず解放状態となる。したがって、レバー38の支点部38aから見て左側の構成要素、すなわち、検知ローラ12b、ホルダ50、軸50a、トルクスプリング52は、それらの自重によって降下位置にある。これにともない、ソレノイド42のプランジャ4は、その可動範囲の上端位置まで引き上げられ、その位置で停止する。この結果、検知ローラ12bが所定の降下位置に降下するため、送りローラ10bと検知ローラ12bとの間に間隔が発生して、両ローラは、離間状態となり、その間に、通帳の前端が抵抗なしに進入することができる。
【0022】図1(b)は、ソレノイド42が作動状態にあるときを示す。このとき、プランジャ44は、図示した下端位置に吸着される。したがって、トルクスプリング52及びレバー38が時計回りに回動する。この結果、検知ローラ12bは、上昇位置に保持されるとともに、トルクスプリング52の作用によって固定ローラ10bに押圧される。この結果、両ローラ10b,12bは、圧接状態となる。
【0023】上述のように、ソレノイド42は、作動時に、トルクスプリング52及びホルダ50を介して、検知ローラ12bを送りローラ10bの方向に移動させるように、レバー38に回動力を与える駆動源の作用を果たしている。
【0024】上述の説明から判るように、図1に示すトルクスプリング52は、従来例を示す図5における、検知ローラ12bを付勢する付勢部材36、及び、枠34とレバー38とを連結するバー36に相当する。また、従来例で必要だった係止部材26及びこれを保持するための枠28が不要となる。したがって、本実施例のローラ支持機構は、従来に比較してより少ない部品点数で構成されている。
【0025】なお、実施例では、トルクスプリング52として図2に示すような一端がコイル状に形成されたものを採用したが、本発明は、これに限られるものではなく、上述のトルクスプリング52と同様な作用、すなわち、ホルダ50とレバー38の支点部38aとを連結し、かつ、検知ローラ12bを上方に付勢する作用を果たすものをトルクスプリングとして使用できる。例えば、板ばねや線ばねなどを使用することも可能であることはいうまでもない。
【0026】また、実施例では、トルクスプリング52の他端部52bが係止される位置は、レバー38の支点部38aであるが、これに限られるものではない。他端部52bが係止される位置は、レバー38の回動に従って、検知ローラ12bを送りローラ10bに接離する方向に移動させることができる位置であればよい。
【0027】また、実施例では、ソレノイド42の駆動力を伝達するリンク40が枢着される位置は、レバー38の端部38bbであるが、これに限られるものではない。リンク40の枢着される位置は、レバー38をその支点部38aを支点にして回動させることができる位置であればよい。
【0028】
【発明の効果】以上述べたように本発明のローラ支持機構によれば、従来に比較して部品点数が少ないため、小型で安価な装置を構成できるという利点がある。したがって、例えば、小形化を要請されている通帳処理装置などに搭載する際に、極めて好適であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のローラ支持機構の一実施例を示す概略側面図である。
【図2】図1におけるトルクスプリングの斜視図である。
【図3】従来のローラ式厚み検知機構を用いる通帳処理装置の概略構成図である。
【図4】図3の通帳処理装置において一般的に用いられているローラ式厚み検知機構及びこれと連動するプラテン移動機構の一例を示す斜視図である。
【図5】従来のローラ支持機構の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
10b 送りローラ
12b 検知ローラ
38 レバー
38a 支点部
42 ソレノイド
44 プランジャ
50 ホルダ(ローラ支持手段)
52 トルクスプリング
52a 一端部
52b 他端部
L 印字媒体搬送面

【特許請求の範囲】
【請求項1】検知ローラと、ローラ支持手段と、レバーと、トルクスプリングと、ソレノイドとを有し、前記ローラ支持手段は、前記検知ローラを回動自在に支持するとともに、前記検知ローラが印字媒体搬送面に対して垂直に、かつ前記印字媒体搬送面の反対側に設けてある送りローラに対して接離自在となるように支持されており、前記レバーは、前記ローラ支持手段から離れた位置において、支点部を中心に回動自在に設けられ、前記トルクスプリングは、一端部が前記ローラ支持手段に固定されるとともに、他端部が前記レバーに固定されており、前記ソレノイドは、作動時に前記トルクスプリング及び前記ローラ支持手段を介して前記検知ローラを前記送りローラ方向に移動させるべく前記レバーに回動力を付与するものであること、を特徴とする印字媒体の厚み検知装置におけるローラ支持機構。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2568154号
【登録日】平成8年(1996)10月3日
【発行日】平成8年(1996)12月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−273063
【出願日】平成5年(1993)10月4日
【公開番号】特開平7−101589
【公開日】平成7年(1995)4月18日
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
【出願人】(000003562)株式会社テック (5,631)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−226440(JP,A)