説明

印字媒体押圧部材、印字媒体押圧機構および印字媒体押圧機構付きリボンカセット

【課題】ドットインパクトプリンタにおいて、低コストで印字媒体の浮きを抑制する機構を得る。
【解決手段】ドットインパクトプリンタには、印字ヘッド44の先端部76と印字媒体30との間にインクリボン80を給送するリボンカセット46が設けられている。そのリボンカセット46のガイドアーム部84,86に、リボンマスク88を湾曲させて保持するマスク保持部104,106を設ける。リボンマスク88の湾曲部140は印字ヘッド44の先端部76よりプラテン32側に突出し、印字時に印字媒体30に当接させられる。その際に、押し潰される向きに弾性変形させられ、その弾性変形の復元力により印字媒体30をプラテン32に押し付けるため、印字媒体30がプラテン32から浮くことを抑制でき、印字時の騒音を低減し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットインパクトプリンタにおいて印字媒体をプラテンに押し付ける印字媒体押圧部材、印字媒体押圧機構およびその印字媒体押圧機構付きリボンカセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドットインパクトプリンタは、印字ヘッドのインパクト部材を突出させ、インクリボンを介して印字媒体たる用紙を打撃させることによって印字を行うものである。リボンカセットは、内部に収容したインクリボンを印字ヘッドと用紙との間に給送するものである。下記特許文献1、3には、ドットインパクトプリンタの一例が記載されており、下記特許文献2には、リボンカセットの一例が記載されている。
【特許文献1】特開平04−166379号公報
【特許文献2】特開平07−108744号公報
【特許文献3】特開平06−297733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドットインパクトプリンタにおいて、用紙がそれの裏面側からプラテンによって支持されているが、用紙がプラテンから浮き上がっていると、インパクト部材によって打撃された際に用紙が振動して騒音が発生する。したがって、できる限り用紙の浮きを抑制することが望ましい。
上記特許文献1には、板ばねによってリボンマスクを用紙に押し付けて用紙の浮きを抑制する技術が記載されている。この技術において、リボンマスクがマスクガイドを介して板ばねに保持されており、板ばね,リボンマスクおよびマスクガイドを合わせたものが印字媒体押圧部材に相当する。さらに、板ばねを保持する部分を含めたものが印字媒体押圧機構に相当する。しかしながら、部品数が多く、コストが高くなるという問題がある。また、特許文献1に記載の技術では、カールくせがついた用紙や預金通帳等の厚い印字媒体に対して押付力が不足し勝ちであるという問題もある。特許文献2,3に記載のリボンカセットあるいはプリンタは、印字媒体押圧部材や印字媒体押圧機構に相当するものを備えていない。
このように、従来の印字媒体押圧部材,印字媒体押圧機構およびリボンカセットには、低コストで用紙の浮きを抑制する等、実用性向上の観点から未だ改良の余地がある。本発明は、そういった実情に鑑みてなされたものであり、より実用的な印字媒体押圧部材およびリボンカセットを得ることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係る印字媒体押圧部材は、ドットインパクトプリンタに取り付けられた場合に、印字ヘッドよりプラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付けることを特徴とする。
また、本発明に係る印字媒体押圧機構は、板状の弾性部材が2つの弾性部材保持部によって保持された状態において、印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付けることを特徴とする。
また、本発明に係るリボンカセットは、上記印字媒体押圧機構を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る印字媒体押圧部材,印字媒体押圧機構およびリボンカセットによれば、低コストで印字媒体の浮きを抑制し得る。すなわち、本発明によれば、より実用的な印字媒体押圧部材,印字媒体押圧機構あるいはリボンカセットが得られるのである。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来の技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から一部の構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に、(8)項が請求項2に、(9)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、(14)項が請求項6に、(16)項が請求項7に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)先端部からインパクト部材を突出させる印字ヘッドによってプラテン上に位置させられた印字媒体に印字を行うドットインパクトプリンタに設けられ、前記印字媒体を前記プラテンに押し付ける印字媒体押圧機構であって、
板状の弾性部材と、
印字時における前記印字ヘッドと前記印字媒体との相対移動方向において互いに離間した位置において前記弾性部材の両端部の各々を保持する2つの弾性部材保持部と
を含み、前記弾性部材が、少なくとも、それの両端部が前記2つの弾性部材保持部によって保持された状態において、前記印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付けることを特徴とする印字媒体押圧機構。
ドットインパクトプリンタにおいて、印字媒体はプラテンによって背面から支持されており、印字媒体の正面に印字ヘッドの先端部が位置させられる。この印字ヘッドは、印字媒体を移動させる場合等、印字を行わない場合はプラテンと離間させられる。この場合、印字ヘッドとプラテンとの少なくとも一方を離間する向きに移動させることができる。このように、印字ヘッドとプラテンとが離間させられた状態を「解放状態」と称し、印字ヘッドとプラテンとが接近離間させられる方向を「接近離間方向」と称する。一方、印字時において、印字ヘッドとプラテンとの少なくとも一方が接近する向きに移動させられる。しかしながら、通常、印字ヘッドが印字媒体に接触しないようにされており、印字ヘッドによって印字媒体をプラテンに押し付けることはできない。
弾性部材は、2つの弾性部材保持部によって保持された状態において湾曲部を形成するものであればよく、例えば、弾性部材保持部によって保持されていない状態において、平板状のものとすることや、既に湾曲させられているものとすることができる。その弾性部材によって形成された湾曲部は、少なくとも一部分が印字ヘッドの先端部よりもプラテンに接近した位置まで突出するようにされており、印字時において、印字ヘッドとプラテンとが接近させられるのに伴い印字媒体を介してプラテンに当接させられると、接近離間方向に押され、弾性変形させられる。この湾曲部の弾性変形に伴い発生する復元力によって、印字媒体をプラテンに押し付けることができる。弾性部材は、例えば、細長い薄板状を成すものとすることができ、また、例えば、樹脂材料やばね鋼等の金属材料によって形成することができる。
弾性部材保持部は、例えば、弾性部材の端部と係合する突起や穴等の係合部を有するものとすることができる。その場合には、弾性部材の端部に被係合部としての穴や突起等を設けることができる。また、例えば、弾性部材の端部を狭持することや、接着,溶着等により弾性部材の端部と接合されること等によって弾性部材の端部を保持するものとすることができる。さらに、弾性部材保持部は、例えば、後述するように印字ヘッド、ヘッド保持部、リボンカセット等に設けることができる。
この弾性部材は、1つの部材で構成することができ、低コストで印字媒体の浮きを抑制し得る。すなわち、本態様によれば、より実用的なリボンカセットが得られるのである。
さらに付言すれば、解放状態における「湾曲部の曲率半径」や、解放状態における湾曲部の曲率半径を、印字ヘッドとプラテンとの接近離間方向における湾曲部の弾性部材保持部からの突出量で除した値である「曲率半径・突出量比」が大きくなるほど押し付け荷重の変化が緩やかになる傾向があり、小さくなるほど小さな変形量で比較的大きな押し付け荷重を得やすくなる傾向がある。この観点から、解放状態における湾曲部の曲率半径は、5mm以上,10mm以上,15mm以上とすることが望ましく、30mm以下,25mm以下,20mm以下とすることが望ましい。また、曲率半径・突出量比は、2以上,3以上,4以上とすることが望ましく、10以下,8以下,6以下,5以下とすることが望ましい。
(2)前記弾性部材が、前記2つの弾性部材保持部に保持されていない状態において平板状を成し、前記2つの弾性部材保持部に保持されることにより湾曲させられて前記湾曲部を形成するものである(1)項に記載の印字媒体押圧機構。
本項の弾性部材は、弾性部材保持部に保持されていない状態において平板状のものであるため、加工が容易であり、コストを低減し得る。なお、解放状態における弾性部材の両端部の保持される部分の離間距離を、2つの弾性部材保持部の離間距離よりも大きくすることで、容易に湾曲部を形成し得る。また、解放状態における弾性部材の両端部の保持される部分の離間距離を調節することで、湾曲部の突出量や印字時の押付力を調節し得る。
(3)当該印字媒体押圧機構が、印字時において前記印字ヘッドと共に前記プラテンと接近させられるものであり、前記弾性部材が、印字時に前記湾曲部の中央部において平らに変形させられるとともに、その平らにされた部分と前記弾性部材の両端部との間の部分において前記印字ヘッド側に凹の形態で湾曲させられるものである(1)項または(2)項に記載の印字媒体押圧機構。
プラテンおよび印字媒体は、印字ヘッドと印字媒体との相対移動方向において平坦にされている。そのため、印字時において、印字ヘッド等とプラテンとが接近させられる際には、弾性部材が湾曲部のうちのプラテン側に最も突出した部分から印字媒体に当接させられるとともに、平らに押し潰される。湾曲部が平らに押し潰されれば、その押し潰された部分の両端の2点間の、印字ヘッドと印字媒体との相対移動方向における距離が、押し潰される前における同一2点間の直線距離より長くなる。そのため、弾性部材の、押し潰された部分と両端部との間の2つの部分にそれぞれ圧縮力が作用し、これらの部分が、例えば、プラテン側に凸の形態でさらに強く(小さい曲率半径で)湾曲させられる。このさらに強く湾曲させられる部分を「曲率半径減少部」と称することとする。弾性部材の以上の形態の弾性変形の進行に伴って、その弾性変形の復元力が大きくなり、この復元力が、印字媒体をプラテンに押し付ける押圧力となる。
なお、本項の態様において、平らに押し潰される形状は、厳密に直線になることを要さず、例えば、概ね印字媒体に沿う形状等のように多少湾曲しているような状態も含まれるものとする。また、十分な押圧力を発生させるために、「曲率半径減少部」の印字時における曲率半径が、解放状態における湾曲部の曲率半径よりも小さいこと(例えば、50%以下,25%以下等)が望ましい。
(4)当該印字媒体押圧機構の、印字時において印字媒体を前記プラテンに押し付ける荷重が1ニュートン以上である(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
押し付け荷重を大きくすることにより、種々の印字媒体の浮きを抑制し得る。なお、カールくせや波打ちくせがないプリント用紙等、例えば、キロ連量が35kg程度の上質紙では、多くの場合押し付け荷重が0.5〔N〕程度あれば足りる。しかし、カールくせや波打ちくせがある場合は、例えば、押し付け荷重を1.5〔N〕にする等、1〔N〕以上にすることが望ましい。しかしながら、上記上質紙では、押し付け荷重を大きくし過ぎると、印字時に弾性部材が印字用紙と相対移動する際に、印字用紙が引き摺られてしわになる場合があるため、押し付け荷重を3〔N〕以下にすることが望ましく、2〔N〕以下にすることがさらに望ましい。
また、預金通帳や貯金通帳等の印字媒体では、比較的厚い用紙が複数枚重ねて折り曲げられており、このような複数枚の用紙が重ねて折り曲げられた部分の付近に印字する場合には、押し付け荷重が1〔N〕程度であると印字媒体の浮きを抑制する効果が不十分になる場合がある。したがって、預金通帳や貯金通帳等の印字媒体に対しては、押し付け荷重を2ニュートン(〔N〕)以上にすることが望ましく、3〔N〕以上,4〔N〕以上と大きくするほど印字媒体の浮きを抑制する効果が高くなる。なお、上記通帳に関しては、7〔N〕以下,5〔N〕以下でも印字媒体の浮きを抑制し得るが、通帳よりも印字媒体の浮きを抑制することが困難な印字媒体に対しては、押し付け荷重を5〔N〕以上,7〔N〕以上と大きくすることが望ましい。
(5)前記湾曲部が弾性変形させられる際の見掛けのばね定数が0.5N/mm以上で10N/mm以下である(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
ここにおける見掛けのばね定数は、印字時の押し付け荷重を、印字ヘッド等とプラテンとの接近離間方向における湾曲部の変形量で除した値とする。例えば、印字時の押し付け荷重を4Nとし、湾曲部の変形量を2mmとすれば、見掛けのばね定数は2N/mmとなる。見掛けのばね定数が過少であると押し付け荷重が不足する場合があり、過大であると押し付け荷重を適切な大きさに調節することが難しくなる。この観点から、見掛けのばね定数を、1N/mm以上,1.5N/mm以上,2N/mm以上にすることが望ましく、7N/mm以下,5N/mm以下,3N/mm以下にすることが望ましい。
(6)前記弾性部材の幅が前記インクリボンの幅よりも大きくされ、その弾性部材が前記インクリボンと印字媒体との間に介在させられるとともに、その弾性部材の前記印字ヘッドと対向する部分に前記インパクト部材を通過させるインパクト部材通過穴が設けられた(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
本項の態様は、弾性部材が、印字媒体の汚れを防ぐリボンマスクを兼用するものである。逆に、リボンマスクが弾性部材として機能するものと言うこともできる。したがって、本項の態様によれば、部品点数の増加を可及的に抑制しつつ印字媒体の浮きを抑制し得る。また、本項の態様は、弾性部材保持部が後述するリボンガイド部に設けられる場合に好適である。
(7)前記インパクト部材通過穴が、前記相対移動方向の寸法である長さが前記相対移動方向に直角な方向の寸法である幅よりも大きい長穴とされた(6)項に記載の印字媒体押圧機構。
インパクト部材通過穴を長穴とすることにより、印字媒体上に付着したインクの乾きが遅い場合等に、弾性部材にインクが付着し、その付着したインクにより印字媒体が汚れることを回避することができる。
【0009】
(8)前記ドットインパクトプリンタが、前記インパクト部材の打撃を受けて印字媒体にインクを付着させるインクリボンを、前記相対移動方向において前記印字ヘッドの先端部の側方からその印字ヘッドの先端部と印字媒体との間を経由させて反対側の側方へ導くリボンガイド部を含み、
前記2つの弾性部材保持部が、そのリボンガイド部に設けられた(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
インクリボンをガイドする部分は印字ヘッドの先端部の側方に位置するため、リボンガイド部に弾性部材保持部を設けることにより、比較的容易にプラテン側に突出する湾曲部を形成することができる。
(9)前記2つの弾性部材保持部の少なくとも一方が、当該印字媒体押圧機構が前記プラテンと離間した解放状態において、前記弾性部材の両端部のうちの対応する端部より中央側の部分を、端部側から中央側に向かうに従って前記プラテンに接近する向きに傾斜した状態にする傾斜保持部を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
弾性部材の端部より中央側の部分を傾斜した状態にすることで、湾曲部の突出量を比較的大きくすることや、2つの弾性部材保持部の離間距離を比較的小さくすること等が容易になる。なお、本項の態様には、弾性部材が湾曲することで必然的に傾斜するような場合は含まれず、弾性部材の端部より中央側の部分を傾斜させるために、例えば、下記の2つの態様を採用することができる。
(10)前記2つの弾性部材保持部の少なくとも一方が、前記弾性部材の中央側に向かうに従って前記プラテンに接近する向きに傾斜した傾斜部を備え、前記弾性部材の両端部のうちの対応する端部をその傾斜部に沿って保持するものとされた(9)項に記載の印字媒体押圧機構。
本態様によれば、弾性部材保持部によって弾性部材の端部を傾斜した状態で保持することができ、その結果、端部より中央側の部分を傾斜させることができる。
(11)前記2つの弾性部材保持部の少なくとも一方が、前記弾性部材の両端部のうちの対応する端部より中央側の部分を印字ヘッド側から支持する支持部を含む(9)項または(10)項に記載の印字媒体押圧機構。
例えば、弾性部材の端部がプラテンと平行な状態で保持されている場合において、弾性部材の端部より中央側の部分を支持部によってプラテン側に押圧することで傾斜させることができる。
なお、本項の態様において、2つの弾性部材保持部の少なくとも一方を、保持面を有し、弾性部材の端部を、その保持面に直角な方向への移動を阻止した状態で保持するものとすることができる。その場合に、弾性部材の端部の保持面に平行な方向の移動は、阻止されるようにすることも、許容されるようにすることもできる。保持面に平行な方向の移動が阻止される場合は、印字時における弾性部材の撓みの度合いが強くなり、比較的剛性の低い部材でも大きな押付力が得られる。一方、保持面に平行な方向への移動が許容される場合は、印字時における弾性部材の撓みの度合いが弱くなり、押付力の変化が緩やかとなるため、押付力の調節が容易になる。
(12)前記ドットインパクトプリンタが、前記インパクト部材の打撃を受けて印字媒体にインクを付着させるインクリボンを収容し、前記印字ヘッドと共に、前記印字媒体と相対移動させられるのに伴って、前記インクリボンを循環経路に沿って循環させるリボンカセットを含み、その循環経路が、そのリボンカセットと前記印字媒体との相対移動の方向と平行に前記印字ヘッドの先端部と前記印字媒体との間を通過する経路であり、かつ、前記2つの弾性部材保持部がそのリボンカセットに設けられた(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
弾性部材保持部が、印字ヘッドと共に印字媒体と相対移動させられるリボンカセットに設けられる態様である。この形式のリボンカセットは、インクリボンを印字ヘッドの先端部と印字媒体との間に導くリボンガイド部を備えており、例えば、このリボンガイド部を利用することによって、比較的容易に弾性部材保持部を設けることができる。
(13)前記2つの弾性部材保持部が、前記印字ヘッドまたはその印字ヘッドを保持するヘッド保持部に設けられた(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
例えば、印字ヘッドの先端部付近に弾性部材保持部を設けた場合、弾性部材を比較的小さくすることができる。ヘッド保持部は、例えば、印字ヘッドを保持した状態で印字媒体と相対移動させられるものとすることができる。ヘッド保持部には、弾性部材保持部を設けるスペース的な余裕がある場合が多い。
【0010】
(14)先端部からインパクト部材を突出させる印字ヘッドによってプラテン上に位置させられた印字媒体に印字を行うドットインパクトプリンタに設けられ、前記印字ヘッドと共に移動させられるリボンカセットであって、
前記インパクト部材の打撃を受けて印字媒体にインクを付着させるインクリボンと、
そのインクリボンを内部に収容するリボン収容部と、
前記リボン収容部の外部に露出させられた前記インクリボンの一部を、前記印字ヘッドの先端部の側方から印字ヘッドの先端部と印字媒体との間を経由させて反対側の側方へ導くリボンガイド部と、
板状の弾性部材と、印字時における前記印字ヘッドと前記印字媒体との相対移動方向において互いに離間した位置において前記弾性部材の両端部の各々を保持する2つの弾性部材保持部とを含み、前記弾性部材が、少なくとも、それの両端部が前記2つの弾性部材保持部によって保持された状態において、前記印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付ける印字媒体押圧機構と
を含むことを特徴とする印字媒体押圧機構付きのリボンカセット。
本項の態様は、印字ヘッドと共に移動させられるリボンカセットに前述の印字媒体押圧機構が設けられたものである。本項の態様によれば、例えば、リボンガイド部に弾性部材保持部を設けることができる。なお、インク持続量等、リボンカセットの寿命に合わせて弾性部材の耐摩耗性等の耐久性を定めることにより、可及的に低廉な材料を選択することが可能である。本項の印字媒体押圧機構は、前記(1)項のものと同様のものとすることができる。また、本項の態様に、前記(1)項ないし(11)項のいずれかの特徴を採用することができる。
(15)前記リボンガイド部が、前記インクリボンを前記リボン収容部の外部に導出するリボン導出部と、そのリボン導出部から前記相対移動方向に離間した位置においてインクリボンを前記リボン収容部内に導入するリボン導入部とを含み、それらリボン導出部とリボン導入部との各々のプラテン側に前記2つの押圧部材保持部の各々が設けられた(14)項に記載の印字媒体押圧機構付きのリボンカセット。
リボン導出部とリボン導入部とに弾性部材保持部を設けることにより、容易に弾性部材をリボンカセットに取り付けることができる。
(16)先端部からインパクト部材を突出させる印字ヘッドによってプラテン上に位置させられた印字媒体に印字を行うドットインパクトプリンタに設けられ、前記印字媒体を前記プラテンに押し付ける印字媒体押圧部材であって、
当該プリンタに取り付けられた場合に、印字時における前記印字ヘッドと前記印字媒体との相対移動方向に延びるとともに前記印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付けることを特徴とする印字媒体押圧部材。
本項の印字媒体押圧部材は、ドットインパクトプリンタに用いられることが予定されているものであり、低コストで印字媒体の浮きを抑制し得る。本項の印字媒体押圧部材は、例えば、前記(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の弾性部材と同様のものとすることができ、前記(1)項〜(15)項のいずれかの特徴と組み合わせて採用することができる。
【実施例】
【0011】
以下、請求可能発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0012】
図1に、一実施例である印字媒体押圧機構付きリボンカセットを備えたドットインパクトプリンタの主要部を示す。ドットインパクトプリンタは、印字部10,用紙搬送部12および用紙支持部14とを備えている。
用紙搬送部12には、上流側送りローラ20,下流側送りローラ22,上流側ガイド24および下流側ガイド26が設けられている。上流側送りローラ20および下流側送りローラ22は、それぞれ図示を省略するプリンタ本体に回転可能に保持されており、図示を省略する駆動装置により駆動される。印字用紙等の印字媒体30は、上流側送りローラ20によって引き込まれ、印字部10と用紙支持部14との間を通過した後、下流側送りローラ22によって引き出される。また、印字媒体30は、上流側ガイド24および下流側ガイド26によってガイドされる。
用紙支持部14は、上流側ガイド24と下流側ガイド26との間に位置させられたプラテン32と、そのプラテン32を印字部10に接近または離間させるプラテン位置変更装置(図示省略)とを含む。プラテン32は、印字部10の走査方向である送りローラ22等の回転軸線に平行な方向に延びる形状とされており(図2参照)、印字部10側の面において印字媒体30の背面を支持する。
【0013】
図2に、印字部10および用紙支持部14の一部を示す。以下、図1,図2に基づき、印字部10について詳細に説明する。なお、印字部10のプラテン32側を前方、プラテン32とは反対側を後方と称する場合がある。
印字部10には、印字媒体30にインクをドット状に付着させるインク付着装置40とそのインク付着装置40を送りローラ22等の回転軸線と平行な方向を相対移動方向たる走査方向として走査させる走査装置42とが設けられている。
走査装置42は、インク付着装置40を保持する保持装置たるキャリッジ50と、そのキャリッジ50を支持するとともに走査方向にガイドするガイド部たるキャリッジ軸52と、キャリッジ50の回動を阻止するキャリッジフレーム54と、キャリッジ50を走査方向に駆動する駆動装置(図示省略)とを含む。キャリッジ軸52およびキャリッジフレーム54は走査方向に延び、それぞれ両端部において図示を省略するプリンタ本体に固定されている。キャリッジフレーム54は、後方側の端部、つまり、図において上端部において「コ」の字状に折り返され、その折り返された部分がキャリッジ50の回動を阻止するためにキャリッジ50と係合する第1係合部56とされている。また、その第1係合部56の端部にはラック状のギヤ58が形成されている。
キャリッジ50は、キャリッジ軸52にそれの軸方向にガイドされる被ガイド部60と、第1係合部56と係合する第2係合部62とを含む。また、キャリッジ50は被駆動部64を備え、その被駆動部64において上記駆動装置の駆動ベルトと係合し、走査方向に移動させられる。
【0014】
インク付着装置40は、印字ヘッド44とリボンカセット46とを含む。
図3に示す印字ヘッド44は、インパクト部材たる複数の印字ワイヤ70と、ワイヤ駆動部72と、そのワイヤ駆動部72から前方側に延び出すワイヤ保持部74とを含む。そのワイヤ保持部74によって、印字ワイヤ70が軸方向に移動可能に保持されており、ワイヤ駆動部72によって印字ワイヤ70が前方側に駆動されると、その印字ワイヤ70が先端部76から突出させられる。また、印字ヘッド44は、ボルト穴78を通るボルトによってキャリッジ50に締結される。
【0015】
図4に示すリボンカセット46は、インクリボン80と、カセット本体部82と、2つのガイドアーム部84,86と、リボンマスク88とを含む。ガイドアーム部84は、カセット本体部82のプラテン32に近い箇所から印字ヘッド44の先端部76の側方まで延び出しており、開口90を経てインクリボン80をカセット本体部82内から外部に導出する。一方、ガイドアーム部86は、カセット本体部82の後方部を基点とし、印字ヘッド44が位置させられるスペースを迂回し、印字ヘッド44の先端部76の、ガイドアーム部84とは反対側の側方まで延びている。そして、ガイドアーム部84によって導出されたインクリボン80は、印字ヘッド44の先端部76の前方を経由して、ガイドアーム部86の開口90と、ガイドアーム部86内の迂回経路とを通り、カセット本体部82内に導入される。そのガイドアーム部86は、連結板92によってカセット本体部82と連結されている。
カセット本体部82内には、図示を省略するが、インクリボン80と、インクリボン80を引き込むリボン引込装置と、インクリボン80にインクを供給するインク供給装置と、インクリボン80を一時的に滞留させるリボン滞留部とが設けられている。リボン引込装置は、複数のギヤとローラ等を含み、インク付着装置40の走査に伴って作動させられる。なお、キャリッジ50には、キャリッジフレーム54のギヤ58と噛み合うギヤや、その他ワンウェイクラッチによって一方向のみの回転を伝えるギヤ等が設けられており、キャリッジフレーム54と相対移動させられるのに伴い上記ギヤの回転トルクによってリボン引込装置が駆動される。具体的には、カセット本体部82に回転可能に設けられた被駆動軸94のキャリッジ50側の部分が回転駆動され、インクリボン80が循環させられる。インク供給装置は、カセット本体部82内を循環するインクリボン80に、インクを含浸させたインク含浸部材を接触させてインクを供給するものとされている。
本実施例において、インクリボン80はエンドレスタイプのものとされており、印字時において、カセット本体部82内,ガイドアーム部84内,印字ヘッド44の先端部76の前方およびガイドアーム部86内を通る循環経路に沿って循環させられる。また、インクリボン80は、上記インク供給装置によってインクの供給を受けた後にガイドアーム部84によって外部に露出させられ、印字ヘッド44の先端部76の前方を経由して循環させられることで、印字に十分なインクを供給し得る。
なお、リボンカセット46の走査方向における両端部には、キャリッジ50のカセット保持部96と係合する爪部98が設けられている。
【0016】
ガイドアーム部84,86の各々の前方側には、印字媒体30の汚れを防ぐリボンマスク88が取り付けられている。そのリボンマスク88の両端部100,102は、ガイドアーム部84,86の各々の前方側の部分に設けられたマスク保持部104,106によって保持されている。
図5に、リボンマスク88単体の平面図を示す。リボンマスク88は、硬質樹脂製の薄板から成る細長い部材とされている。リボンマスク88の両端部100,102には、それぞれ取付穴110,112が形成され、中央には印字ワイヤ70の通過を許容するワイヤ通過穴114が形成されている。本実施例において、リボンマスク88は、リボンカセット46に取り付けられていない状態において、平板状を成すものとされている。
図6に、マスク保持部104,106の底面図を示す。マスク保持部104,106には、それぞれ保持突起115,116が設けられている。それら保持突起115,116は、図7に示すように、それぞれリボンマスク88の前方に向かって突出させられた円柱状のピン部117と、各ピン部117の先端から互いに遠ざかる向きに延び出させられた抜け止め部118とを備え、ピン部117が取付穴110,112を貫通するとともに、抜け止め部118によって取付穴110,112からの抜け出しを防止することにより、両端部100,102を保持する。
また、マスク保持部104には、リボンマスク88の取付穴110よりも中央側の部分を前方側からガイドアーム部84側に向かって押さえる押さえ板部120が設けられている。一方、マスク保持部106の保持突起116にはEリング122が取り付けられている。以上のように、マスク保持部104,106によって、それぞれリボンマスク88の両端部100,102が相対移動不能に保持されている。
【0017】
さらに、ガイドアーム部84,86には、それぞれ先端に近づくほどプラテン32側に前進させられる向きに傾斜させられた傾斜部130,132が形成されている。それら傾斜部130,132に設けられた支持突部134が、リボンマスク88にそれの裏側、つまり、印字ヘッド44側から当接し、リボンマスク88を支持している。
このため、リボンマスク88の端部100は概ね走査方向と平行な保持面に沿って保持されているのであるが、端部100より中央側の部分である基部136が傾斜部130によって傾斜させられ、さらに支持突部134により傾斜の度合いを強くされている。一方、マスク保持部106は、ガイドアーム部86の傾斜部132に設けられており、端部102が傾斜部132の傾斜した保持面に沿って、傾斜させられた状態で保持されている。また、その端部102より中央側の部分である基部138が支持突部134により支持され、ガイドアーム部86の傾斜部132の傾斜よりさらに強く傾斜させられている。
このように、リボンマスク88は、解放状態において、基部136,138が傾斜させられており、プラテン32側に突出した湾曲部140を容易に形成し得る。
さらにまた、リボンマスク88は、マスク保持部104、106に保持されていない状態において、平板状を成すとともに、取付穴110,112の離間距離は、それが係合させられる保持突起115,116の離間距離よりも大きくされている。そのため、リボンマスク88は、それの両端部100、102がマスク保持部104、106に保持されると、図4に示されているように、自ずと前方へ凸に湾曲させられる。
【0018】
次に、作動を説明する。
図1,図2には、プラテン32が印字ヘッド44の先端部76から離間させられた解放状態が示されている。この解放状態において、印字は行われず、印字媒体30の引き込み、あるいは排出がなされる。
一方、図8に示すように、印字時、詳細には、印字が開始される際には、プラテン位置変更装置によってプラテン32が印字ヘッド44に接近させられる。その際には、リボンマスク88の湾曲部140の中央部142が平らに押し潰されるとともに、基部136,138が互いに離間する向きに押されて弾性変形させられ、プラテン32側に凸に、逆に言えば印字ヘッド44側に凹に湾曲させられる。そして、基部136,138は、それらの曲率半径が解放状態における湾曲部140の曲率半径の25%以下となるまで弾性的に撓められ、主として基部136,138が撓み量を減らそうとする弾性的な復元力によって印字媒体30をプラテン32に押し付ける押圧力が生じるのである。この押圧力によって印字媒体30がプラテン32に密着させられ、印字時における印字媒体30の振動に起因する騒音を低減し得る。すなわち、印字時において、基部136,138が前記「曲率半径減少部」として機能するのである。
また、本実施例において、マスク保持部104,106は、リボンマスク88の端部100,102の長手方向へのスライドを阻止する態様とされている。そのため、2つの基部136,138が、比較的強く撓められ、自由状態におけるリボンマスク88の剛性が低い割に大きな押付力を発生させることができる。なお、詳細には、印字時において、リボンマスク88の両端部100,102の各々と、基部136,138との間が印字ヘッド44側に凸に湾曲させられ、この湾曲による撓みを減少させようとする復元力も押圧力に寄与している。
【0019】
本実施例において、印字媒体30をプラテン32に押し付ける押付力は4.5Nと比較的大きくされており、貯金通帳等が印字媒体30とされている場合に好適である。特に、貯金通帳の最初の方の頁や最後の方の頁に印字する際には、複数枚の用紙が折り曲げられた状態となるため押付力が大きいことが望ましいのである。また、リボンマスク88がマスク保持部104等に保持された状態において、接近離間方向における見掛けのばね定数が2N/mm〜2.5N/mmになるようにされている。
なお、印字ヘッド44とプラテン32との離間距離は次に述べる処理によって適切に調節される。すなわち、プラテン32が、印字媒体30およびリボンマスク88を介して、ガイドアーム部84,86に一旦当接させられた後に設定距離離間させられることで、印字ヘッド44の先端部76と印字媒体30の印字面との距離が適度に調節されるのである。
【0020】
印字が行われる際には、上述のようにリボンマスク88によって印字媒体30がプラテン32に押し付けられた状態で、走査装置42によってインク付着装置40が走査方向に往復動させられる。また、インク付着装置40が走査方向における一方の向きに移動させられると1ラインの印字が終了し、用紙搬送部12によって印字媒体30が設定距離移動させられた後に、他方の向きに移動させられて再び次のラインの印字が行われる。この場合の印字媒体30の移動は、インク付着装置40が、走査方向において印字媒体30が存在しない位置まで移動させられ、リボンマスク88による押付力が印字媒体30に加わらない状態において行われる。
なお、比較のため、図9に通常のリボンマスク170の側面図を示す。通常のリボンマスク170は、インクリボン80による印字媒体30の汚れを防止するためのものであり、印字媒体30と接触しないように設計されている。従って、印字媒体30の浮きを抑制できない。
【0021】
本実施例において、リボンマスク88によって、「弾性部材」あるいは「印字媒体押圧部材」が構成されている。また、マスク保持部104,106の各々によって、「弾性部材保持部」が構成されている。さらにまた、リボンマスク88と2つのマスク保持部104,106とによって、「印字媒体押圧機構」が構成されている。
また、本実施例において、マスク保持部104の傾斜部130は、基部136を印字ヘッド44側から支持する「支持部」として機能している。また、傾斜部132は、端部102を傾斜部132に沿って傾斜させて保持する態様とされている。
さらにまた、本実施例において、カセット本体部82によって、「リボン収容部」が構成されている。また、2つのガイドアーム部84,86によって、「リボンガイド部」が構成されている。
【0022】
上記とは別の実施例について説明する。
上記実施例において、リボンマスク88のワイヤ通過穴114は6角形とされ、走査方向の寸法と、用紙搬送部12による印字媒体30の移動方向である搬送方向の寸法とが同程度にされていた。それに対して、本実施例においては、図10に示すように、リボンマスク200のワイヤ通過穴210は、走査方向の寸法が搬送方向の寸法の3倍以上となる四角形の長穴にされている。このリボンマスク200によれば、印字した後すぐにリボンマスクが印字面に接触することを回避することができ、インクの乾きが比較的遅いような場合に、リボンマスク200にインクが付着して印字媒体30が汚れることを抑制することができる。なお、本実施例において、リボンマスク200以外の構成は上記実施例と同様である。
【0023】
さらに別の実施例について説明する。
上記実施例において、インク付着装置40が走査方向に移動させられていたが、インク付着装置を固定して、印字媒体30を走査方向に移動させるプリンタにすることもできる。図11に、インク付着装置が固定されたタイプのドットインパクトプリンタの主要部の側面図を示す。なお、本実施例および後の実施例において、最初の実施例と同じ構成部品については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
本実施例のドットインパクトプリンタは、印字部250,用紙搬送部252および用紙支持部254とを備えている。印字部250は上記実施例と同様のインク付着装置40と、そのインク付着装置40を保持するインク付着装置保持装置256とを備えている。そのインク付着装置保持装置256は図示を省略するプリンタ本体に固定されている。また、リボンカセット46はプリンタ本体に取り付けられた電動モータ(図示省略)によって駆動される。用紙搬送部252は、送りローラ20,22を備え、上流側ガイド260、下流側ガイド262の形状がガイド24,26と異なっているが、印字媒体30をガイドするという機能は同様である。用紙支持部254は、プラテン270が短くされているが、印字媒体30を背面から支持するという機能は同様である。また、プラテン270は、プラテン位置変更装置(図示省略)によって印字部250に接近または離間させられる。
このような構造であっても、リボンマスク88によって印字媒体30をプラテン270に押し付ける効果が得られる。
本実施例のプリンタは、印字媒体30に1行分印字するものであり、例えば、写真の焼き付け機や印刷機において、写真の裏面に整理番号等を印字するために用いられる。なお、用紙搬送部252を、送りローラ20等の回転軸線方向に印字媒体30を移動させることが可能なものとすることにより、複数行の印字が可能である。
【0024】
さらに別の実施例について説明する。
上記実施例において、リボンマスク88等がリボンカセット46に取り付けられていたが、キャリッジ、あるいは印字ヘッドを保持するが移動させられないヘッド保持部材に取り付けることもできる。また、リボンカセットがプリンタ本体に固定的に取り付けられ、印字ヘッドと共に走査はしないものとすることができる。
図12に、リボンカセット固定式のドットインパクトプリンタの主要部の平面図を示す。また、図13に、主要部の側面図を示す。なお、本実施例において印字ヘッドおよび用紙送りの方向が、上記実施例と90度異なる。なお、上記いずれかの実施例と共通の構成部品については、図中に同じ番号を付して説明を省略する。
【0025】
本ドットインパクトプリンタは、印字部310,用紙搬送部312およびプラテン314とを備えている。印字部310は、印字ヘッド320,固定式リボンカセット322および走査装置324を含む。印字ヘッド320は、前記印字ヘッド44とは少し形状等が異なるが、同様の構造にされている。用紙搬送部312についても、前記用紙搬送部12と同様の構造にされている。
固定式リボンカセット322は、インクリボン340と、印字ヘッド320の走査方向に延びるカセット本体部342と、そのカセット本体部342の走査方向における両端部の各々からプラテン314側に延びる2本のガイドアーム部344とを含む。カセット本体部342内には、前述のカセット本体部82と同様に、リボン引込装置と、インク供給装置と、リボン滞留部とが設けられている。また、リボン引込装置は図示を省略する電動モータによって駆動される。
2つのガイドアーム部344は、印字ヘッド320が走査方向に往復動する範囲外に位置させられている。そして、一方のガイドアーム部344によってカセット本体部342内のインクリボン340が、印字ヘッド320の側方に導出されるとともに他方のガイドアーム部344との間に架け渡され、他方のガイドアーム部344によりカセット本体部342内に導入される。
走査装置324は、印字ヘッド320を保持するキャリッジ350と、そのキャリッジ350を走査方向にガイドする第1キャリッジ軸352および第2キャリッジ軸354と、キャリッジ350を駆動する駆動装置(図示省略)とを含む。駆動装置は、図示を省略する電動モータによって駆動ローラを回転させ、走査方向に沿って架設された駆動ベルト356を駆動する(周回させる)。その駆動ベルト356はキャリッジ350の被駆動部360に係合させられており、キャリッジ350が往復動させられる。
【0026】
図14にキャリッジ350および印字ヘッド320を拡大して示す。キャリッジ350には、インクリボン340を印字ヘッド320の先端部364とプラテン314との間に案内するリボンガイド370が取り付けられている。そのリボンガイド370には、キャリッジ350に締結されるベース部372と、そのベース部372のプラテン314側の端部から立設された2つのガイド体374と、それらを連結する連結体376とが設けられている。
2つのガイド体374は、印字ヘッド320の走査方向と、印字ヘッド320とプラテン314との接近離間方向との両方向に直角な方向に立設され、走査方向において印字ヘッド320の側方に位置するとともに、プラテン314と対向して設けられている。2つのガイド体374の各々の印字ヘッド314側の部分には、それぞれガイド溝378が形成されている。よって、一方のガイド体374のガイド溝378に沿ってインクリボン340が印字ヘッド320の先端部364とプラテン314との間に案内され、また、他方のガイド体374のガイド溝378に沿ってインクリボン340が先端部364とプラテン314との間から印字ヘッド314の進行方向と逆方向に排出される。
2つのガイド体374のプラテン314側には、図15に示すリボンマスク380が取り付けられている。なお、前述のリボンマスク88の両端部100,102は非対称であったが、リボンマスク380は対称な形状とされ、両端部ともリボンマスク88の右端部102と同様の形状とされている。
また、2つのガイド体374のプラテン314側には、それぞれマスク保持部106が設けられており、それら2つのマスク保持部106によってリボンマスク380の両端部102が保持されている。なお、マスク保持部106は、図4のものと同様の構成にされている。それら2つのマスク保持部106の各々は、印字ヘッド320に近づくに従ってプラテン314に接近する向きに傾斜させられた傾斜部132に設けられている。そのため、両端部102は、それぞれ傾斜部132の保持面に沿って傾斜させられた状態で保持されている。その結果、リボンマスク380の両端部102の各々より中央側の部分である基部138が傾斜した状態にされている。なお、傾斜部132には支持突部134が設けられており、その支持突部134の支持によって基部138の傾斜の度合いは、端部102の傾斜の度合いよりも大きくされている。
以上に述べた構成により、リボンマスク380の中央部がプラテン314側に凸に湾曲させられ、湾曲部140が形成されている。
【0027】
本実施例において、印字時に、詳細には、印字が開始される際に、キャリッジ350および印字ヘッド320がプラテン314側に移動させられる。具体的には、第1キャリッジ軸352が図示を省略する駆動力源によって、偏心軸390回りに回転させられ、キャリッジ350がプラテン314に接近させられる。その際には、リボンマスク380が前述のリボンマスク88と同様に弾性変形させられ(図8参照)、印字媒体30がプラテン314に押し付けられる。
【0028】
本実施例において、リボンマスク380によって、「弾性部材」あるいは「印字媒体押圧部材」が構成されている。また、2つのガイド体374によって、「リボンガイド部」が構成されている。また、リボンマスク380と2つのマスク保持部106とによって、「印字媒体押圧機構」が構成されている。さらにまた、キャリッジ350によって、「ヘッド保持部」が構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】印字媒体押圧機構付きリボンカセットを備えたドットインパクトプリンタの主要部を示す側面図である。
【図2】上記プリンタの印字部を示す正面図である。
【図3】上記プリンタの印字ヘッドを示す正面図である。
【図4】上記プリンタのリボンカセットを示す正面図である。
【図5】上記リボンカセットに取り付けられるリボンマスクを示す平面図である。
【図6】上記リボンカセットのマスク保持部を示す底面図である。
【図7】上記マスク保持部の保持突起を示す底面図である。
【図8】上記リボンマスクの弾性変形を示す正面図である。
【図9】従来のリボンマスクを示す正面図である。
【図10】上記とは別のリボンマスクを示す平面図である。
【図11】上記とは別のドットインパクトプリンタの主要部を示す側面図である。
【図12】上記とはさらに別のドットインパクトプリンタの主要部を示す側面図である。
【図13】上記ドットインパクトプリンタの主要部を示す平面図である。
【図14】上記ドットインパクトプリンタの印字ヘッドおよびキャリジを示す平面図である。
【図15】上記キャリジに取り付けられるリボンマスクを示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10:印字部 12:用紙搬送部 14:用紙支持部 30:印字媒体 32:プラテン 40:インク付着装置 42:走査装置 44:印字ヘッド 46:リボンカセット 50:キャリジ 70:印字ワイヤ 76:先端部 80:インクリボン 82:カセット本体部 84,86:ガイドアーム部 88:リボンマスク 100,102:端部 104,106:マスク保持部 114:ワイヤ通過穴 130,132:傾斜部 136,138:基部 140:湾曲部 <他の実施例> 170:リボンマスク 200:リボンマスク 210:ワイヤ通過穴 256:保持装置 270:プラテン 314:プラテン 320:印字ヘッド 322:固定式リボンカセット 340:インクリボン 350:キャリジ 364:先端部 370:リボンガイド 374:ガイド体 380:リボンマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部からインパクト部材を突出させる印字ヘッドによってプラテン上に位置させられた印字媒体に印字を行うドットインパクトプリンタに設けられ、前記印字媒体を前記プラテンに押し付ける印字媒体押圧機構であって、
板状の弾性部材と、
印字時における前記印字ヘッドと前記印字媒体との相対移動方向において互いに離間した位置において前記弾性部材の両端部の各々を保持する2つの弾性部材保持部と
を含み、前記弾性部材が、少なくとも、それの両端部が前記2つの弾性部材保持部によって保持された状態において、前記印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付けることを特徴とする印字媒体押圧機構。
【請求項2】
前記ドットインパクトプリンタが、前記インパクト部材の打撃を受けて印字媒体にインクを付着させるインクリボンを、前記相対移動方向において前記印字ヘッドの先端部の側方からその印字ヘッドの先端部と印字媒体との間を経由させて反対側の側方へ導くリボンガイド部を含み、
前記2つの弾性部材保持部が、そのリボンガイド部に設けられた請求項1に記載の印字媒体押圧機構。
【請求項3】
前記2つの弾性部材保持部の少なくとも一方が、当該印字媒体押圧機構が前記プラテンと離間した解放状態において、前記弾性部材の両端部のうちの対応する端部より中央側の部分を、端部側から中央側に向かうに従って前記プラテンに接近する向きに傾斜した状態にする傾斜保持部を含む請求項1または2に記載の印字媒体押圧機構。
【請求項4】
前記弾性部材の幅が前記インクリボンの幅よりも大きくされ、その弾性部材が前記インクリボンと印字媒体との間に介在させられるとともに、その弾性部材の前記印字ヘッドと対向する部分に前記インパクト部材を通過させるインパクト部材通過穴が設けられた請求項1ないし3のいずれか1つに記載の印字媒体押圧機構。
【請求項5】
前記インパクト部材通過穴が、前記相対移動方向の寸法である長さが前記相対移動方向に直角な方向の寸法である幅よりも大きい長穴とされた請求項4に記載の印字媒体押圧機構。
【請求項6】
先端部からインパクト部材を突出させる印字ヘッドによってプラテン上に位置させられた印字媒体に印字を行うドットインパクトプリンタに設けられ、前記印字ヘッドと共に移動させられるリボンカセットであって、
前記インパクト部材の打撃を受けて印字媒体にインクを付着させるインクリボンと、
そのインクリボンを内部に収容するリボン収容部と、
前記リボン収容部の外部に露出させられた前記インクリボンの一部を、前記印字ヘッドの先端部の側方から印字ヘッドの先端部と印字媒体との間を経由させて反対側の側方へ導くリボンガイド部と、
板状の弾性部材と、印字時における前記印字ヘッドと前記印字媒体との相対移動方向において互いに離間した位置において前記弾性部材の両端部の各々を保持する2つの弾性部材保持部とを含み、前記弾性部材が、少なくとも、それの両端部が前記2つの弾性部材保持部によって保持された状態において、前記印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付ける印字媒体押圧機構と
を含むことを特徴とする印字媒体押圧機構付きのリボンカセット。
【請求項7】
先端部からインパクト部材を突出させる印字ヘッドによってプラテン上に位置させられた印字媒体に印字を行うドットインパクトプリンタに設けられ、前記印字媒体を前記プラテンに押し付ける印字媒体押圧部材であって、
当該プリンタに取り付けられた場合に、印字時における前記印字ヘッドと前記印字媒体との相対移動方向に延びるとともに前記印字ヘッドより前記プラテン側に突出する湾曲部を形成し、印字時にその湾曲部が弾性的に押し潰される形態で弾性変形させられ、その弾性変形の復元力によって印字媒体を前記プラテンに押し付けることを特徴とする印字媒体押圧部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−61658(P2009−61658A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231268(P2007−231268)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000187091)昭和精機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】