説明

卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法

【課題】本発明は、魚類のホルモン投与による排卵誘導において、事前に親魚の卵径に基づいた採卵成績予測(排卵時間、卵量、卵質)を行うことで、安定的及び効率的な採卵方法を提供する。
【解決手段】ホルモン投与時に親魚から一部採取した卵の卵径に基づいて、ホルモン投与から排卵するまでの時間を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与後、排卵するまでの時間を予測し、採卵と人工授精を最適なタイミングで実施できるようにした。また、ホルモン投与時に親魚から一部採取した卵の卵径に基づいて、ホルモン投与により得られる卵量と卵質を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与により得られる卵量と卵質を予測し、実際に使用する個体の選定と使用数量の決定を可能にするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類のホルモン投与による排卵誘導において、親魚の卵径に基づいた採卵成績(排卵時間、卵量、卵質)の予測方法に関し、特に人工授精により受精率の高い良質卵を効率的に確保できる卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの魚類を対象にした採卵方法では、一般的に言われている産卵期に親魚の外観(色調、腹部の膨れ具合等)や摂餌状況を注意深く観察するといった経験的な判断基準をもとに排卵誘導時期を決定し、ホルモン投与による採卵作業を行ってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の外部(色調、腹部の膨れ具合等)観察法等による排卵誘導時期の決定では、実際の親魚における卵巣の成熟状態は個体毎でまちまちであり、その結果、得られた卵の卵量および卵質は不安定なもので、安定的な種苗生産に支障をきたしていた。
【0004】
このように、ホルモン投与を行う際の親魚の成熟状態の把握は、安定的および効率的な採卵を行う上で重要である。特に、採卵後に引き続き行われる仔稚魚の飼育準備(水槽個数の決定や餌料の培養準備等)を考慮すると、生産目標に応じた採卵用親魚の選別と個体数の決定が計画生産を行う上で重要である。
【0005】
ところが、親魚の個体毎における成熟状態の把握方法やどの個体からどのような採卵成績が得られるかといった予測は、これまで技術的には困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、親魚の卵巣にいま存在する卵の卵径に着目し、事前に採卵成績予測(排卵時間、卵量、卵質)を行うことで、安定的及び効率的な採卵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、発明者らは、ホルモン投与時の卵径が排卵時間、卵量および卵質に及ぼす影響等について、各種採卵試験を通して調査した結果、本発明の卵径に基づいた魚類の排卵誘導における採卵成績予測データを見出すに至った。
【0008】
請求項1の発明は、ホルモン投与時に親魚から一部採取した卵の卵径に基づいて、ホルモン投与から排卵するまでの時間を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与後、排卵するまでの時間を予測し、採卵と人工授精を最適なタイミングで実施できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、ホルモン投与時に親魚から一部採取した卵の卵径に基づいて、ホルモン投与により得られる卵量と卵質を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与により得られる卵量と卵質を予測し、実際に使用する個体の選定と使用数量の決定を可能にするようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、ホルモン投与時に親魚から一部採取し測定した卵径に基づいて,ホルモン投与から排卵するまでの時間及びホルモン投与により得られる卵量と卵質を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与後、排卵するまでの時間及びホルモン投与により得られる卵量と卵質を個体毎に予測し、採卵と人工授精を最適なタイミングで実施できるようにすると共に実際に使用する個体の選定と使用数量の決定を可能にするようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1又は3において、ブリ親魚は、ホルモン投与により、卵径0.65〜0.80mmの個体が排卵し、卵径が大きい個体ほど排卵までに要する時間は短い。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1又は3において、卵径が0.65〜0.70mmのブリ親魚は、ホルモン投与後48時間以降に排卵される。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1又は3において、卵径が0.70〜0.75mmのブリ親魚は、ホルモン投与後42時間以降に排卵される。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1又は3において、卵径が0.75〜0.80mmのブリ親魚は、ホルモン投与後36時間以降に排卵される。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1又は3において、ブリ親魚のホルモン投与による人工採卵において、得られる卵の受精率が高く、最適な採卵と人工授精のタイミングは排卵直後である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1〜8において、ホルモンがHCG(ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン)である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1〜8において、HCG投与量が500 IU/kg前後である。
【0018】
請求項11の発明は、請求項1〜8において、HCGは注射投与を行う。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1〜8において、HCGの投与回数が1回であるのがよい。
【0020】
請求項13の発明は、請求項1〜3において、ブリ親魚へ投与するホルモン剤の種類(HCG:ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン 、LHRHa:合成黄体形成ホルモン放出ホルモン)や投与方法(注射、コレステロールペレット埋め込み)、投与量および投与回数により、採卵成績は変化する。
【0021】
請求項14の発明は、請求項1〜8において、ブリ親魚を飼育する水温が19℃であるのがよい。
【0022】
請求項15の発明は、請求項1又は3において、ブリ親魚を飼育する水温が19℃よりも高いとホルモン投与から排卵までの時間は短く、19℃よりも低いと長くなる。
【0023】
請求項16の発明は、請求項2又は3において、卵径が0.65〜0.70mmのブリ親魚は、ホルモン投与により、魚体重1kg当たり約2.5万粒の卵が排卵する。
【0024】
請求項17の発明は、請求項2又は3において、卵径が0.70〜0.80mmのブリ親魚は、ホルモン投与により、魚体重1kg当たり約5.0または2.5万粒の卵が排卵する。
【0025】
請求項18の発明は、請求項2又は3において、卵径が0.70〜0.80mmのブリ親魚から排卵される卵量は、採卵と人工授精を行う時間により変化する。
【0026】
請求項19の発明は、請求項2又は3において、卵径が0.65〜0.70mmのブリ親魚は、ホルモン投与後48または54時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる。
【0027】
請求項20の発明は、請求項2又は3において、卵径が0.70〜0.75mmのブリ親魚は、ホルモン投与後42または48時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる。
【0028】
請求項21の発明は、請求項2又は3において、卵径が0.75〜0.80mmのブリ親魚は、ホルモン投与後36、42または48時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる。
【0029】
請求項22の発明は、請求項2又は3において、ホルモン投与により得られる卵の卵質は、排卵後時間の経過とともに低下する。
【0030】
請求項23の発明は、請求項1〜3において、ブリ親魚は、2歳魚以上(魚体重4〜12kg)で排卵誘導が可能である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1の発明の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法によれば、親魚の卵径に基づき、ホルモン投与から排卵するまでの時間が個体毎に予測可能となることから、従来の外部(色調、腹部の膨れ具合等)観察法と比較して、人工授精が最適なタイミングで実施でき、良質な受精卵が安定して得られるという有利な効果を奏する。
【0032】
また、請求項2の発明の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法によれば、親魚の卵径に基づき、ホルモン投与により得られる卵量と卵質が個体毎に予測可能となることから、目標とする採卵量に応じた使用個体の選定と使用数量の決定を可能にするという有利な効果を奏する。
【0033】
また、請求項3の発明の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法によれば、親魚の卵径に基づき、ホルモン投与から排卵するまでの時間が個体毎に予測可能となることから、従来の外部(色調、腹部の膨れ具合等)観察法と比較して、人工授精が最適なタイミングで実施でき、良質な受精卵が安定して得られるという有利な効果を奏すると共に、親魚の卵径に基づき、ホルモン投与により得られる卵量と卵質が個体毎に予測可能となることから、目標とする採卵量に応じた使用個体の選定と使用数量の決定を可能にするという有利な効果を奏する。
【0034】
また、本発明に関連する技術は、今回、ブリをモデル魚として研究開発したが、その他の人工授精により採卵を行う魚種(トラフグ、マハタ等)においても適用可能なことから、今後、本発明を種苗生産機関に対して普及指導することで採卵技術の高度化が図られ、安定的な種苗生産が可能になるとともに、人工種苗を必要とする養殖業の発展および栽培漁業の推進が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0036】
本発明の採卵成績予測データ(図1)は、ブリのホルモン投与による排卵誘導において、事前の親魚の卵径に基づいた採卵成績予測(排卵時間、卵量、卵質)を可能にし、安定的及び効率的な採卵を実現させる。
【0037】
ここで、本発明の採卵成績予測データを利用するためには、親魚の卵巣内にいま存在する卵の卵径を把握する必要がある。そのためには、雌個体に麻酔を施し、カニューラチューブ(内径2mm、外径3mm)等により卵巣卵を採取すると良い。採取した卵は、卵径を30個程度、万能投影機等で10μm単位の精度で測定する。卵径は平均値を算出し、当該個体の現在の卵径とする。なお、各個体については、個別にマーキングを施し、個体番号に対する卵径がすぐに照会可能なようにデータの整理をしておく。
【0038】
まず、第1に本発明の採卵成績予測データ(図1)における排卵時間の予測について説明する。先の卵径測定結果に基づき、当該個体のホルモン投与から排卵するまでの時間を推定する。ブリにおいては、卵径が0.65〜0.70mmの親魚は、ホルモン投与後48時間以降に排卵する。また、卵径が0.70〜0.75mmの親魚は、ホルモン投与後42時間以降に排卵し、0.75〜0.80mmの親魚は、ホルモン投与後36時間以降に排卵する。なお、卵径0.65mm未満の個体は、排卵しない。
【0039】
上記の場合、排卵誘導に使用するホルモン剤はHCG(ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン)であり、投与量は500 IU/kg前後、投与方法は注射による1回投与である。本発明に関連するブリの採卵試験においては、本方法による排卵誘導が最も簡便で有効な方法であることが明らかとなっている。
【0040】
また、ブリ親魚は、LHRHa(合成黄体形成ホルモン放出ホルモン)コレステロールペレット埋め込み法またはHCGプライミング法(2回注射法)においても排卵誘導可能であり、投与するホルモンの種類(HCG、LHRHa)や投与方法(注射、コレステロールペレット埋め込み)、および投与回数により、ホルモン投与から排卵までの時間は変化する。特に、LHRHaを排卵誘導剤として使用する場合、HCG投与よりも排卵までの時間が長くなる。
【0041】
本発明の採卵成績予測データ(図1)は、ブリ親魚を飼育する水温が19℃の時のデータであるが、飼育する水温が19℃よりも高いとホルモン投与から排卵までの時間は短く、19℃よりも低いと排卵時間までの時間は長くなる。ブリの場合、成熟水温は17〜20℃程度だが、排卵誘導を行う際には、19℃が最も適した水温だと考えられる。
【0042】
これらの条件に基づき、総合的に判断して当該個体の排卵時間および排卵時刻を推定する。ブリ親魚のホルモン投与による人工採卵において、得られる卵の受精率が高く、最適な採卵と人工授精のタイミングは排卵直後であることから、予測した排卵時刻に人工授精を速やかに行うことで、高い受精率の卵を安定的に得ることが可能となる。
【0043】
次に、本発明の採卵成績予測データ(図1)における卵量の予測について説明する。先の卵径測定結果に基づき、当該個体から得られる卵量を推定する。卵径が0.65〜0.70mmの親魚は、ホルモン投与により、魚体重1kg当たり約2.5万粒の卵が排卵する。また、卵径が0.70〜0.80mmの親魚は、ホルモン投与により、魚体重1kg当たり約5.0または2.5万粒の卵が排卵する。この卵径が0.70〜0.80mmの親魚から排卵される卵量は、採卵と人工授精を行う時間により変化する。当該個体に対して、採卵を行う時間が早すぎると、まだ排卵が完了しておらず、魚体重1kg当たり約2.5万粒しか得られないことがある。逆に、採卵を行う時間が遅すぎると、当該個体からすでに放卵が始まり、期待していたほど多くの卵を得られない結果となる。
【0044】
上記の場合、排卵誘導に使用するホルモン剤はHCG(ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン)であり、投与量は500 IU/kg前後、投与方法は注射による1回投与である。投与するホルモンの種類(HCG、LHRHa)や投与方法(注射、コレステロールペレット埋め込み)、投与量および投与回数により、排卵される卵量は変化する。特にHCGプライミング法(2回注射法)は、卵の感受性を高め、採卵量が増大する。一方、LHRHaコレステロールペレット埋め込み法は、間接的に排卵を誘導するので、採卵量は他の方法よりも劣る。
【0045】
また、ブリ親魚は、2歳魚以上(魚体重4〜12kg)で排卵誘導が可能であるが、それらから得られる卵量は、親魚の年齢や魚体重によっても変化する。
【0046】
次に、本発明の採卵成績予測データ(図1)における卵質の予測について説明する。先の卵径測定結果に基づき、当該個体から得られる卵質を推定する。卵径が0.65〜0.70mmの親魚は、ホルモン投与後48または54時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる。また、卵径が0.70〜0.75mmの親魚は、ホルモン投与後42または48時間目に、卵径が0.75〜0.80mmの親魚は、ホルモン投与後36、42または48時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる。
【0047】
本発明に関連する採卵技術開発研究において、ホルモン投与により得られる卵の卵質は、排卵後時間の経過とともに低下することが明らかとなっていることから、当該個体の排卵推定時刻には速やかに人工授精を行う必要がある。つまり、良質の卵を得るためには、当該個体の排卵時刻を推定し、排卵直後に人工授精を行うことが肝要である。
【0048】
また、当該個体の卵径を測定すれば、ホルモン投与から排卵するまでの時間が明らかとなることから、ホルモン投与を行う日時を決定さえすれば、人工授精に適した日時が自ずと確定される。逆に言えば、作業に時間を要する人工授精をいつの何時に予定したいという意向があるならば、逆算することで当該個体に対してホルモン投与を行わなければならない日時が自ずと決定される。つまり、人間側の作業スケジュールに配慮した排卵誘導も可能となる。
【0049】
また、これらのように、親魚の卵径に基づき、ホルモン投与により得られる卵量と卵質を個体毎に予測することで、目標とする卵量、卵質に対する使用個体の選定と使用数量の決定が可能となる。
【0050】
さらに、本発明の採卵成績予測データは、ブリをはじめ、人工授精により採卵を行う魚種(トラフグ、マハタ等)についても適用可能である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0052】
実施例1
ブリ養成親魚を用いた人工授精による採卵技術の向上を目的として、HCG投与時の卵径が排卵時間、卵質および卵量に及ぼす影響を調べた。
【0053】
供試魚には、モジャコから養成した3歳魚を使用し、麻酔を施し、カニューラにより卵巣卵を採取し大型卵30個の卵径を測定した。卵径測定結果に基づき、650〜700μmの個体を11尾、700〜750μmの個体を13尾、750〜800μmの個体を9尾それぞれ選抜した。選抜した33個体に対して、背筋部にHCG(500 IU/kg BW、帝国臓器製薬)を注射投与した。
【0054】
排卵の確認は、HCG投与後36、42、48、および54時間目に供試魚を麻酔した後、カニュレーションおよび腹部触診により行った。排卵確認後、腹部の圧迫により卵を搾出し、さらに開腹して卵巣を摘出した後、搾り残し卵を採取した。得られた卵は、1個体の搾出卵につき雄2尾から採取した精液を用い、直ちに乾導法による人工授精を行った。
【0055】
人工授精により得られた卵は洗卵した後、容積法(700粒/ml)により浮上卵と沈下卵を計数し浮上卵率を算出した。受精率は、人工授精4時間後の16〜32細胞期(水温19℃)に、浮上卵約100粒のうち発生が進んでいる個体の割合で算出した。ふ化率は、浮上卵約200粒のうちふ化した個体の割合で算出した。卵のふ化管理は、親魚の個体別に約200粒の浮上卵を500mlビ−カ−に収容し、水温19〜20℃のウォ−タ−バス、エア−スト−ンによる微通気条件下で行った。
【0056】
卵径のグループ別に、HCG投与後の経過時間と排卵個体尾数との関係を図2示す。卵径750〜800μmの9個体では、HCG投与36時間目に1個体、42時間目に6個体、および48時間目に2個体が排卵していた。卵径700〜750μmの13個体では、 HCG投与42時間目に4個体、および48時間目に9個体で排卵が確認された。また、卵径650〜700μmの11個体では、 HCG投与48時間目に5個体、および54時間目に6個体で排卵が確認された。これらの結果から、卵径が750〜800μmの個体ではHCG投与42時間目に、700〜750μmの個体では、48時間目に排卵が集中し、卵径が650〜700μmの個体では、排卵は48時間以降に起こることが明らかとなった。
【0057】
図3に全ての親魚(N=33)を対象としたHCG投与時の卵径と排卵時間との関係を示す。卵径と排卵時刻には明瞭な負の相関が認められ(P<0.001)、排卵時間(T、hour)と卵径(D, mm)の間は、T = -0.082 D + 105.99 (R2 = 0.51) の式で表わされた。
【0058】
図4に卵径グループ別における採卵量の結果を示す。卵径700〜750μmおよび750〜800μmの個体からの総採卵数は1尾当たり52.8万粒であったが、卵径650〜700μmの個体の卵数はそれらの約半分の25.5万粒 であった。
【0059】
また、浮上卵率と受精率は、いずれの卵径グループでも90%以上の高い値を示し、グループ間で差は認められなかった。
【0060】
図2〜4により、ブリの排卵誘導におけるHCG投与時の卵径と排卵までの時間には負の相関関係があり、HCG投与直前に卵径を計測することで、排卵時刻をある時間範囲で予測できることが明らかとなった。すなわち、卵径750〜800μmの個体ではHCG投与後36〜48時間目に排卵が起こり、42時間目に集中すること、また700〜750μmの個体では42〜48時間目に排卵が起こり、48時間目の方が排卵する個体が多いこと、一方、卵径650〜700μmの個体では、排卵は48〜54時間目に起こり、卵径700μm以上の個体と比較して排卵が6〜12時間遅れること、などが明らかとなった。
【0061】
人工授精により得られる卵の卵量は、卵径700μm以上の2グループでは、それぞれ1個体当たり52.8万粒、卵径650〜700μmのグループではそれらの約半数の25.5万粒であった。これは、卵径650〜700μmの個体における成熟卵数が、卵径700μm以上の個体の約半数であったことを意味する。すなわち、卵径650〜700μmの卵は、HCGに対する感受性を獲得しつつある卵を含んでおり、全ての卵がHCG感受性を持っていないため、卵黄形成が終了したグループ(卵径700μm以上)と比較して成熟卵数が少なくなったものと考えられた。
【0062】
本発明に関連する採卵技術として、上述のようにHCG投与の卵径を計測することで、排卵時間、卵量および卵質を予測でき、確実に良質受精卵を確保できることが明らかとなった。
【0063】
実施例2
ブリ養成親魚を用いた人工授精時の受精率の向上を目的として、HCG投与により排卵、排精を誘導した親魚を用いて、排卵後の経過時間と受精率との関係を調べ、人工授精を行う際の媒精適期の検討を行った。
【0064】
養成雌親魚11個体に対して、HCG(human chorionic gonadotropin:帝国臓器製薬)を投与し、排卵を誘導した。HCG投与後、24、36、42、48、54時間目に麻酔した後、腹部の触診により排卵の有無を調べた。排卵時間の確認は、供試魚の腹部を圧迫し排卵された卵が生殖口から流出するか否かで行い、排卵卵が流出し始めた時間を排卵直後とした。排卵が確認された個体については、同一個体から排卵直後(0h)以降、6時間毎にそれぞれ卵を1,000粒前後搾出し、精液を添加して、乾導法により人工授精を行った。
【0065】
人工授精により得られた卵(約1,000粒)は洗卵を行った後、浮上卵と沈下卵に分離してそれぞれの卵量を計数し、浮上卵率(浮上卵数/総卵数)を算出した。受精率は、人工授精4時間後の16〜32細胞期(水温19℃)に、浮上卵約100粒のうち発生が進んでいる個体の割合で算出した。ふ化率は、浮上卵約200粒のうちふ化した個体の割合で算出した。
【0066】
図5に個体別にモニタ−した排卵後経過時間と受精率の関係を示す。各個体の排卵直後の受精率は平均92.5%(81.9〜98.3%)と非常に高く、6時間後においても平均88.0%と高い値を示した。しかし、その後、受精率は排卵後経過時間に伴い低下した。受精率の低下が著しい個体(F- 1, 5, 9, 10)では、排卵後18時間目には40%以下となった。受精率低下の割合は各個体間で差は見られるものの、すべての個体で、排卵後経過時間に伴い受精率が低下するという現象が認められた。
【0067】
図6に11個体の平均浮上卵率、平均受精率および平均ふ化率の変化を示した。浮上卵率、受精率、ふ化率とも、排卵後6時間までが高く、その後経過時間とともにそれらの値は低下した。特に、浮上卵率、ふ化率は12時間目で急激に低下し、42.4%および11.0%の値を示した。このことから、排卵後12時間を経過すると、得られる卵の浮上卵率は50%以下で、その後ふ化する仔魚は10%程度しか存在しないことが明らかとなった。
【0068】
ブリ人工授精卵の受精率は、卵が排卵されてからの経過時間、即ち、卵巣腔内滞留時間に依存していた。即ち、排卵後6時間以内に媒精を行った場合、平均88.0%以上の高い受精率を示したが、その後受精率は急速に低下し、排卵後24時間を経過すると50%以下となった。ふ化率においても同様で、その値は排卵直後が最も高く、その後経過時間に伴って低下した。実際の種苗生産現場で人工授精を行う際、浮上卵率、受精率およびふ化率を考慮すると、排卵直後に人工授精を行うことが望ましく、遅くとも6時間以内には行う必要があることが判明した。
【0069】
このことから、事業としてブリの人工授精を行う場合、いかに排卵時刻を予測し、速やかに受精させることが、良質卵を効率的に得るための決め手となる。そこで、ブリの排卵予測においては、ホルモン投与時の卵径が一つの指標となる。ホルモン投与時の卵径が大きいと排卵までの時間が短く、卵径が小さいと排卵までの時間が長いと想定され、それらを考慮して、人工授精の際の媒精適期を逃さないように、卵径の大きさで触診時間の設定を行えば、より高い確率で良質受精卵が得られることとなる。
【0070】
本発明に関連する採卵技術として、上述のように、ブリの人工授精における卵の受精率は、卵が排卵されてからの経過時間に依存しており、排卵後6時間以内に人工授精を行えば、高い確率で良質受精卵を確保できることが明らかとなった。
【0071】
実施例3
ブリ養成親魚から良質受精卵を効率的に得ることを目的として、各種ホルモン投与法による比較採卵試験を行い、最適な排卵誘導方法を検討した。
【0072】
比較採卵試験は1998年と1999年の2回実施した。排卵誘導のためのホルモン剤は、HCG(human chorionic gonadotropin:帝国臓器製薬)とLHRHa(des-Gly10,[D-Ala6]-LHRH ethylamide:Sigma)の2種類を使用した。
【0073】
ホルモン剤の投与方法は、HCGを用いた2手法とLHRHaを用いた1手法の合計3手法(3試験区)を試した。HCGの投与法は、HCGの1回投与法と2回投与法(以下プライミング投与法)で行った。HCGは0.6%NaCl溶液で溶解し、供試魚への注入量が0.2ml/kgとなるように調整した。HCGの投与は親魚を麻酔した後、背筋部に注入する注射法で行った。HCGプライミング投与法は、採卵量の増大を目的として、1回目の投与で卵巣卵のホルモン感受性を高め、それから24時間後の本投与(2回目)によって、より大量の排卵卵を得る試みである。
【0074】
LHRHaの投与は、LHRHaコレステロ−ルペレット埋め込み法で行った。LHRHaコレステロ−ルペレットは、ペレット1個につきLHRHaを400μg/kg含む長さ6mm、直径2mmの円柱状のものを作製した。LHRHaコレステロ−ルペレットは、親魚を麻酔後、メスで背筋部表皮に切れ込みを入れ、カニューラチュ−ブ(内径2mm、外径3mm)とステンレス棒(直径2mm)で作製したペレット埋め込み器を用いて筋肉中に埋め込んだ。LHRHa投与法は、卵質の向上を目的として、LHRHaにより親魚本来の生殖腺刺激ホルモン(GTH)の合成・分泌を促進することで、より自然な形で排卵が誘導され、良質卵を効率的に得ようとする試みである。
【0075】
1998年におけるホルモン剤の投与量は、HCG1回投与法ではHCG 500IU/kg、HCGプライミング法では100IU/kg+500IU/kg(24時間後)、LHRHa投与法ではLHRHa 200μg/kgであった。また、1999年においては、HCG1回投与法ではHCG 500IU/kg、HCGプライミング法では50IU/kg+500IU/kg(24時間後)、LHRHa投与法ではLHRHa 400μg/kgであった。
【0076】
排卵の確認は、各種ホルモン投与後48時間目(HCGプライミング法では1回目の投与から48時間目)から24時間毎に、96時間目まで行った。親魚は麻酔した後、腹部の触診により排卵の有無を調べた。排卵が確認された個体については、腹部の圧迫による卵の搾出を行い、直ちに乾導法により人工授精を行った。
【0077】
人工授精により得られた卵は、浮上卵と沈下卵に分離して容積法(700粒/ml)により、浮上卵数、沈下卵数、および浮上卵率を算出した。受精率は、人工授精4時間後の16〜32細胞期(水温19℃)に、浮上卵約100粒のうち発生が進んでいる個体の割合で算出した。ふ化率は、浮上卵約200粒のうちふ化した個体の割合で算出した。
【0078】
図7に各ホルモン投与法により排卵が誘導された個体の排卵時間と排卵個体数を示した。1998年試験において、HCG1回投与法では、投与48時間後に6個体中4個体が排卵した。HCGプライミング法では、プライミング投与(1回目)から72時間後に6個体中4個体が排卵した。LHRHa投与法では投与72時間後に7個体中6個体が排卵した。1999年試験において、HCG1回投与法では、投与48時間後に8個体すべてが排卵した。HCGプライミング法では、プライミング投与(1回目)から48時間後に8個体すべてが排卵した。LHRHa投与法では投与48時間後に8個体中7個体が排卵した。
【0079】
図8に各ホルモン投与法により得られた卵の浮上卵率と採卵量を示す。1998年試験における浮上卵率と採卵量はそれぞれ、HCG1回投与法で76.8%、35.7万粒、HCGプライミング法で81.2%、46.3万粒、およびLHRHa投与法で88.7%、15.9万粒であった。また、1999年試験における浮上卵率と採卵量はそれぞれ、HCG1回投与法で98.9%、52.8万粒、HCGプライミング法で89.8%、57.6万粒、およびLHRHa投与法で98.0%、35.4万粒であった。
【0080】
本試験により、HCG1回投与、HCGプライミング法およびLHRHaコレステロ−ルペレット埋め込み法のいずれの方法においても、ブリの排卵誘導が可能で、中でも採卵量の増大にはHCGプライミング法が、浮上卵率や卵質の向上にはLHRHa投与法が有効であることが示唆された。しかしながら、採卵成績には大きな差が認められず、ホルモン投与時の作業効率や使用するホルモンの価格等を総合的に考慮すると、ブリにおける排卵誘導方法としては、HCG1回投与法が最も簡便で有効な方法であると考えられた。
【0081】
1998年試験ではHCG1回投与法に比べ、HCGプライミング法およびLHRHa投与法の方が供試魚の排卵時間が24時間程度遅かった。これは、HCGプライミング法では2回目の投与が最終的な排卵を誘導していること、LHRHa投与法ではLHRHaによるブリ本来のGTHの分泌により排卵誘導が行われたため、排卵に至るまでに若干時間がかかったものと考えられた。一方、1999年試験では、いずれのホルモン投与法においても投与48時間後に排卵が集中していた。HCGプライミング法では、プライミング量(1回目)を1998年の100IU/kgから50IU/kgに低減したにもかかわらず、プライミング投与(1回目)後48時間で排卵が誘導されたことから、これらの供試魚のホルモン感受性は1998年度と比較して高かったことが窺われた。また、LHRHa投与法ではLHRHa投与量を1998年の200μg/kgから400μg/kgに増加したことにより、排卵に至るまでの時間が短縮されたと考えられた。
【0082】
1個体当たりの採卵量を比較すると、HCGプライミング投与法は他の2手法よりも多くの卵を得ることができた。これは、プライミング投与により多くの卵巣卵が感受性を獲得した結果、多くの卵巣卵の排卵が誘導でき、採卵量が増大したものと考えられた。しかしながら、沈下卵量が多かったことから、HCGの2回投与により予測した排卵時間が前後し、人工授精を行う際の媒精適期(排卵直後)を逃してしまった可能性や、2回の取り揚げとHCG投与によるハンドリングによるストレスが浮上卵率に影響していると考えられた。また、LHRHa投与法では他の2手法と比べて採卵量が少なかった。浮上卵率は1998年および1999年とも高い値を示しているものの、多くの受精卵を得るという点で課題が残った。このことから、LHRHa投与法よりもHCG投与法の方がより多くの卵巣卵を排卵させるのに適したホルモン投与法であるのかもしれない。
【0083】
本発明に関連する採卵技術として、上述のように、ブリの排卵誘導にはHCG1回投与が最も簡便で有効な手法であり、また、ホルモン剤の種類や投与量および投与方法によって、その排卵誘導効果は影響されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、採卵技術の高度化および人工種苗の安定生産を可能とし、水産業における増養殖分野(養殖業および栽培漁業)において、貢献度が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】卵径に基づいたブリの排卵誘導における採卵成績予測データを示す図である。
【図2】ブリの卵巣卵径グループにおけるHCG投与から排卵までの時間を示す図である。
【図3】ブリの人工授精におけるHCG投与時の卵径と排卵時間との関係を示す図である。
【図4】ブリの人工授精におけるHCG投与時の卵径と採卵量との関係を示す図である。
【図5】ブリの人工授精における排卵後経過時間と受精率との関係を示す図である。
【図6】ブリの人工授精における排卵後経過時間と卵質(浮上卵率、受精率、ふ化率)との関係を示す図である。
【図7】ブリ親魚へ投与するホルモンの種類(HCG、LHRHa)や投与方法(注射、コレステロールペレット埋め込み)、および投与回数が排卵時間に与える影響を示す図である。
【図8】ブリ親魚へ投与するホルモンの種類(HCG、LHRHa)や投与方法(注射、コレステロールペレット埋め込み)、および投与回数が得られる卵量や卵質に与える影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルモン投与時に親魚から一部採取した卵の卵径に基づいて、ホルモン投与から排卵するまでの時間を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与後、排卵するまでの時間を予測し、採卵と人工授精を最適なタイミングで実施できるようにしたことを特徴とする卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項2】
ホルモン投与時に親魚から一部採取した卵の卵径に基づいて、ホルモン投与により得られる卵量と卵質を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与により得られる卵量と卵質を予測し、実際に使用する個体の選定と使用数量の決定を可能にするようにしたことを特徴とする卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項3】
ホルモン投与時に親魚から一部採取し測定した卵径に基づいて,ホルモン投与から排卵するまでの時間及びホルモン投与により得られる卵量と卵質を調査することで採卵成績予測データを作成し、作成した採卵成績予測データを用いて、当該個体の卵径からホルモン投与後、排卵するまでの時間及びホルモン投与により得られる卵量と卵質を個体毎に予測し、採卵と人工授精を最適なタイミングで実施できるようにすると共に実際に使用する個体の選定と使用数量の決定を可能にするようにしたことを特徴とする卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項4】
ブリ親魚は、ホルモン投与により、卵径0.65〜0.80mmの個体が排卵される請求項1又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項5】
卵径が0.65〜0.70mmのブリ親魚は、ホルモン投与後48時間以降に排卵される請求項1又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項6】
卵径が0.70〜0.75mmのブリ親魚は、ホルモン投与後42時間以降に排卵される請求項1又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項7】
卵径が0.75〜0.80mmのブリ親魚は、ホルモン投与後36時間以降に排卵される請求項1又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項8】
ブリ親魚のホルモン投与による人工採卵において、得られる卵の受精率が高く、最適な採卵と人工授精のタイミングは排卵直後である請求項1又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項9】
ホルモンがHCG(ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン)である請求項1〜8記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項10】
HCG投与量が500 IU/kg前後である請求項1〜8記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項11】
HCGは注射投与を行う請求項1〜8記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項12】
HCGの投与回数が1回である請求項1〜8記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項13】
ブリ親魚へ投与するホルモン剤の種類(HCG:ヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン 、LHRHa:合成黄体形成ホルモン放出ホルモン)や投与方法(注射、コレステロールペレット埋め込み)、投与量および投与回数により、採卵成績は変化する請求項1〜3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項14】
ブリ親魚を飼育する水温が19℃である請求項1〜8記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項15】
ブリ親魚を飼育する水温が19℃よりも高いとホルモン投与から排卵までの時間は短く、19℃よりも低いと長くなる請求項1又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項16】
卵径が0.65〜0.70mmのブリ親魚は、ホルモン投与により、魚体重1kg当たり約2.5万粒の卵が排卵する請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項17】
卵径が0.70〜0.80mmのブリ親魚は、ホルモン投与により、魚体重1kg当たり約5.0または2.5万粒の卵が排卵する請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項18】
卵径が0.70〜0.80mmのブリ親魚から排卵される卵量は、採卵と人工授精を行う時間により変化する請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項19】
卵径が0.65〜0.70mmのブリ親魚は、ホルモン投与後48または54時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項20】
卵径が0.70〜0.75mmのブリ親魚は、ホルモン投与後42または48時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項21】
卵径が0.75〜0.80mmのブリ親魚は、ホルモン投与後36、42または48時間目に80%以上の卵質の高い受精卵を得ることができる請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項22】
ホルモン投与により得られる卵の卵質は、排卵後時間の経過とともに低下する請求項2又は3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。
【請求項23】
ブリ親魚は、2歳魚以上(魚体重4〜12kg)で排卵誘導が可能である請求項1〜3記載の卵径に基づく採卵成績予測データを用いた魚類の安定的及び効率的な採卵方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−109918(P2006−109918A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297608(P2004−297608)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】