説明

原子力プラント及びその補給水設備

【課題】適正なプラント運用が可能な原子力プラント及びその補給水設備を提供する。
【解決手段】貯水槽21の水を補給水管路22a〜22dに圧送する補給水ポンプ23と、補給水管路22dに設けられ、補給水ポンプ23によって圧送される水の逆流を防止する逆止弁25と、逆止弁25の下流側に補給水管路22dから分岐して設けられ、非常用炉心冷却設備3A,3Bと接続された封水供給管路26a,26bと、封水供給管路26a,26bに設けられ、非常用炉心冷却設備3A,3Bから補給水管路22dへ水が流通することを防止する逆止弁27a,27bと、逆止弁25の下流側に設けられ、補給水管路内22dの圧力を設定値内に保持する逃がし弁28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力プラント及びその中の設備に水を供給する補給水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにはプラント内の設備に水を供給する補給水設備が設けられている。補給水設備は、貯水槽を水源とし、補給水、洗浄水、及び封水等として利用される水をプラント内の各設備に補給水ポンプによって供給している。
【0003】
補給水設備が水を供給する設備の1つには非常用炉心冷却設備がある。非常用炉心冷却設備は、原子炉付近に設けられたサプレッションプール(圧力抑制プール)を水源とし、原子炉冷却材が炉心から喪失した場合(非常時)に冷却ポンプで冷却材(水)を炉心に供給する設備である。一般的に非常用炉心冷却設備はプラント内に複数設けられており、補給水設備から各非常用炉心冷却設備に封水を供給する管路(封水供給管路)には各設備内を満水保持するための逆止弁がそれぞれ設けられている。
【0004】
ところで、プラント建設時の試験や定期検査等の際には、補給水ポンプを停止させる場合がある。このため補給水ポンプの下流の供給先から水が逆流して管路内が真空状態になり、ポンプを再起動させる際にウォーターハンマー現象が発生することがある。このウォーターハンマー現象の発生抑制を図った技術には、給水ポンプの下流側かつ各非常用炉心冷却設備の封水供給管路に設けた逆止弁の上流側に更に逆止弁を設けた補給水設備がある(特許文献1等参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−9886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子力プラントでは、非常時に備え各非常用炉心冷却設備が正常に作動するか確認するために、サプレッションプールから冷却ポンプで水を汲み上げて再びサプレッションプールに戻す定期検査(サーベランステスト)を実施している。このとき、冷却ポンプの運転圧力は補給水ポンプの運転圧力よりも高いため、各非常用炉心冷却設備の封水供給管路に設けた逆止弁から水が漏洩して補給水設備の方に向かって逆流する場合がある。
【0007】
上記の技術が適用されたプラントを含め、封水供給管路の上流側に逆止弁が設けられているプラントで上記のような非常用炉心冷却設備の封水の逆流が生じると、逆止弁の作用によって漏洩水が逃げ場を失い、補給水設備の管路が加圧されることがある。この場合には、加圧された補給水設備の管路から漏洩水が他の非常用炉心冷却設備に侵入し、その非常用炉心冷却設備内に設けられた圧力逃がし弁によって圧力異常は解消されるが、非常用炉心冷却設備の異常と認識され警報が発せられてしまう。
【0008】
したがって、上記のように封水の逆流が生じると、非常用炉心冷却設備が正常に稼働していても現実に異常が無いことを確認する作業が必要となり、プラント運用の面で改善の余地がある。また、万が一、その確認作業中に非常事態が発生した場合には、正常に稼働しているにもかかわらず炉心を冷却できないという課題も生じてしまう。
【0009】
本発明の目的は適正なプラント運用が可能な原子力プラント及びその補給水設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、貯水槽の水を補給水管路に圧送する補給水ポンプと、前記補給水管路に設けられ、前記補給水ポンプによって圧送される水の逆流を防止する第1の逆止弁と、この第1の逆止弁の下流側に前記補給水管路から分岐して設けられ、非常時に原子炉の炉心に水を供給する非常用炉心冷却設備と接続された封水供給管路と、この封水供給管路に設けられ、前記非常用炉心冷却設備から前記補給水管路へ水が流通することを防止する第2の逆止弁と、前記第1の逆止弁の下流側に設けられ、前記補給水管路内の圧力を設定値内に保持する圧力制御手段とを備えるものとする。
【0011】
(2)上記(1)における前記圧力制御手段は、好ましくは、圧力逃がし弁であるものとする。
【0012】
(3)上記(1)における前記圧力制御手段は、好ましくは、オリフィス部が設けられ、前記第1の逆止弁を迂回するように前記補給水管路に両端が接続されたバイパス管路であるものとする。
【0013】
(4)上記(1)における前記圧力制御手段は、好ましくは、流量制御弁が設けられ、前記第1の逆止弁を迂回するように前記補給水管路に両端が接続されたバイパス管路であるものとする。
【0014】
(5)上記(4)は、好ましくは、前記非常用炉心冷却設備の定期検査の開始時に前記流量制御弁を所定開度まで開き、前記定期検査の終了時に前記流量制御弁を閉じる制御装置を備えるものとする。
【0015】
(6)上記(1)における前記圧力制御手段は、好ましくは、前記封水供給管路上の前記第2の逆止弁の上流側に設けられた開閉弁、及びこの開閉弁と前記第2の逆止弁の間に設けられたアキュムレータであるものとする。
【0016】
(7)上記(6)は、好ましくは、前記アキュムレータに取り付けられ、内部の気体領域の圧力を検出する圧力検出手段と、この圧力検出手段から入力される検出値に応じて、前記検出値が設定値より小さくなったら前記開閉弁を開き、前記検出値が設定値に達したら前記開閉弁を閉じる制御装置とを備えることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【0017】
(8)本発明は、上記目的を達成するために、原子炉と、非常時に前記原子炉の炉心に水を供給する非常用炉心冷却設備と、貯水槽の水を補給水管路に圧送する補給水ポンプと、前記補給水管路に設けられ、前記補給水ポンプによって圧送される水の逆流を防止する第1の逆止弁と、この第1の逆止弁の下流側に前記補給水管路から分岐して設けられ、前記非常用炉心冷却設備と接続される封水供給管路と、この封水供給管路に設けられ、前記非常用炉心冷却設備から前記補給水管路へ水が流通することを防止する第2の逆止弁と、前記第1の逆止弁の下流側に設けられ、前記補給水管路内の圧力を設定値内に保持する圧力制御手段とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、適正なプラント運用ができるので、原子力プラントの信頼性及び安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0020】
図1は本発明の第1の実施の形態である原子力プラントの概略系統図である。
【0021】
この図に示す原子力プラントは、原子炉格納容器1と、プラント内の設備に水を供給する補給水供給設備2と、原子炉冷却材が原子炉10(後述)の炉心から喪失する非常時に炉心に冷却材を供給する非常用炉心冷却設備3A,3Bを主に備えている。
【0022】
原子炉格納容器1内には、原子炉(原子炉圧力容器)10と、原子炉10の下方に設けられたサプレッションプール(圧力抑制プール)11が備えられている。
【0023】
原子炉10で発生した蒸気は発電機を駆動するタービン(図示せず)を回転させるための作動流体、又は作動流体を発生させるための熱源として利用されている。また、サプレッションプール11内には原子炉冷却材として水が貯められている。
【0024】
補給水供給設備2は、この設備2の水源である貯水槽(復水貯蔵水槽)21と、貯水槽21と接続された補給水管路22aと、補給水管路22aに設けられ、貯水槽1内の水を圧送する補給水ポンプ23と、補給水管路22aに設けられ、補給水管路22a内の水が貯水槽21へ逆流することを防止する逆止弁24と、補給水管路22aと接続され、補給水管路22aと水が必要な設備を接続する補給水管路22b,22cと、補給水管路22aと接続され、補給水管路22aと非常用炉心冷却設備3A,3Bを接続する補給水管路22dと、補給水管路22dに設けられ、補給水管路22d内の水が補給水管路22aの方へ逆流することを防止する逆止弁25と、補給水管路22dに設けられ、補給水管路22dと非常用炉心冷却設備3A,3Bを接続する封水供給管路26a,26bと、封水供給管路26a,26bに設けられ、非常用炉心冷却設備3A,3Bから補給水管路22dへ水が流通することを防止する逆止弁27a,27bと、補給水管路22dに設けられ、補給水管路22d内の圧力を設定値内に保持する逃がし弁(圧力逃がし弁)28を備えている。
【0025】
補給水管路22aには、補給水ポンプ23が吐出する水の流通方向(下流側)に沿って、補給水ポンプ23、逆止弁24、補給水管路22bが接続された接続部29a、補給水管路22c,22dが接続された接続部29bが順番に設けられている。
【0026】
補給水ポンプ23は、貯水槽1内の水を吸い込み、補給水管路22a〜22dを介して非常用炉心冷却設備3A,3Bをはじめとして、水の供給先である設備に補給水、洗浄水、封水などを供給している。
【0027】
逆止弁24は補給水ポンプ23が停止した場合に補給水管路22a内の水が貯水槽21へ逆流することを防止している。
【0028】
補給水管路22b,22cは、プラント内のタービン建物、廃棄物処理建物に接続されており、これらの建物内に設置された設備(例えば、復水器等)に水を供給している。
【0029】
補給水管路22dには、補給水ポンプ23が吐出する水の流通方向(下流側)に向かって、逆止弁25、封水供給管路26aが接続された接続部29c、封水供給管路26bが接続された接続部29dが順番に設けられている。接続部29dの更に下流側には、原子炉格納容器1が設置されている原子炉建物(図示せず)内の他の設備(例えば、原子炉建物の最上階に設けられたプール(図示せず)等)が接続されている。
【0030】
逆止弁25は、接続部29bの下流側かつ接続部29cの上流側に設置されているとともに、貯水槽1の水位より低い箇所に設置されている。ところで、補給水ポンプ23の下流側において貯水槽1の水位よりも高いところに設置された補給水の供給先があると、原子力プラントの建設時の試験や定期検査時等で補給水ポンプ23を停止させた場合等に、貯水槽1の水位との相対的な高低差が原因となって補給水供給先の設備から水落ちが発生することがある。逆止弁25は、このような水落ち(逆流)が発生することを防止しており、補給水ポンプ23を再起動した際に下流側でウォーターハンマー現象が発生することを抑制して管路を損傷から保護している。
【0031】
逃がし弁28は補給水管路22d上に逆止弁25の下流側に位置するように設けられている。この逃がし弁28は、補給水管路22d内の圧力が上昇して予め設定しておいた設定値に達したときに自動的に弁体が開き、圧力が設定値から降下すると再び弁体が閉じるようになっている。これにより逃がし弁28は補給水管路22d内の圧力を設定値内に保持している。この弁体が開く設定値は非常用炉心冷却設備3A,3B内の逃がし弁38a,38b(後述)が開く設定値より低く設定してある。
【0032】
封水供給管路26aは下流側において非常用炉心冷却設備3Aと接続されており、封水供給管路26bは下流側において非常用炉心冷却設備3Bと接続されている。補給水設備2は、この封水供給管路26a,26bを介して非常用炉心冷却設備3A,3Bに水を供給しており、非常用炉心冷却設備3A,3B内の管路を常に満水保持している。
【0033】
逆止弁27aは封水供給管路26aに設けられており、逆止弁27bは封水供給管路26bに設けられている。逆止弁27a,27bは、補給水管路22dから非常用炉心冷却設備3A,3Bの方向へ水を流通するように設けられているが、これと反対に非常用炉心冷却設備3A,3Bから補給水管路22dの方向へは水が流通しないように設けられている。
【0034】
非常用炉心冷却設備3Aは、サプレッションプール11と接続された冷却管路31aと、冷却管路31aに設けられ、サプレッションプール11内の水を圧送する冷却ポンプ32aと、接続部33aにおいて冷却管路31aと接続され、接続部33aの反対側において原子炉10と接続された冷却管路34aと、冷却管路34aに設けられたバルブ35aと、接続部33aにおいて冷却管路31aと接続され、接続部33aの反対側においてサプレッションプール11と接続された冷却管路36aと、冷却管路36aに設けられたバルブ37aと、冷却管路31aと冷却管路36aをバイパスするように設けられ、設備3A内の管路31a,34a,36a内の圧力を設定値内に保持する逃がし弁(圧力逃がし弁)38aを備えている。
【0035】
冷却ポンプ32aの運転圧力は、補給水供給設備2が封水供給管路26aを介して供給する封水の圧力よりも高く設定されている。これにより冷却ポンプ32aの稼働時には、補給水供給設備2から封水供給管路26aを介して非常用炉心冷却設備3A側に水が流通しないように構成されている。
【0036】
逃がし弁38aは、前述した補給水設備2の逃がし弁28と同様の構成を備えており、冷却管路31a内の圧力を設定値内に保持している。逃がし弁38aの弁体が開く設定値は、逃がし弁28が開く設定値より高く設定してある。冷却管路31a内の圧力が設定値に達すると逃がし弁38aは冷却管路36aのバルブ37aの下流側に水を逃がして圧力を所定値内に保持する。
【0037】
非常用炉心冷却設備3Aは、原子炉10で原子炉冷却系の配管破断が起きる等して原子炉冷却材が炉心から喪失した場合(非常時)に、バルブ35aを開いてバルブ37aを閉じた状態で、サプレッションプール11の水を冷却ポンプ32aによって直ちに炉心に供給して冷却する設備である。通常運転時の非常用炉心冷却設備3Aはバルブ35a,37aを共に閉じてその機能を停止しているが、上記のような非常時に備えて設備3Aが正常に稼働するかどうかを確認するための検査(サーベランステスト)を定期的に行う必要がある。
【0038】
サーベランステストの際には、バルブ35aを開けてバルブ37aを閉じた状態で、サプレッションプール11を水源として冷却ポンプ32aによって昇圧した水を冷却管路31a,36aを介して水を再びサプレッションプール11に送り、冷却ポンプ31a等の稼働状況を確認する。
【0039】
非常用炉心冷却設備3Bは、上記の非常用炉心冷却設備3Aと同じ構成を備えているので説明は省略し、各構成に付した符号「a」を「b」に代えて以下の説明で適宜用いることにする。
【0040】
上記のように構成される原子力プラントにおいて、非常用炉心冷却設備3Bにおいてサーベランステストを行うと、冷却ポンプ32bの運転圧力が封水供給管路26b内の封水の圧力より高いため、何らかの原因によって逆止弁27bを介して補給水管路22d側に水が漏洩してしまう場合がある。
【0041】
このように逆止弁27bに漏洩が生じると、逆止弁25の作用により非常用炉心冷却設備3Bからの漏洩水は逃げ場を失い、補給水管路22dを加圧する。補給水管路22d内の圧力が上昇し、逃がし弁28の設定値に達すると、逃がし弁28の弁体が開放されて補給水管路22d内の圧力を低下させる。逃がし弁28によって水を逃がすことによって補給水管路22d内の圧力が設定値より小さくなると、逃がし弁28は再び弁体を閉じて補給水管路22d内の圧力を設定値内に保持する。
【0042】
このとき、逃がし弁28の設定値は、非常用炉心冷却設備3A,3B内の逃がし弁38a,38bの設定値より低く設定してあるので、これらの弁38a,38bが開かれて圧力異常が解消されることは無い。このように、本実施の形態によれば、逆止弁27bに漏洩が生じることにより補給水管路22d内で圧力異常が生じても、他の設備に影響を与えることなく解消することができる。
【0043】
ここで本実施の形態の効果の理解を容易にするために、本実施の形態の比較例を図面を用いて説明する。
【0044】
図2は本発明の第1の実施の形態の比較例である原子力プラントの概略系統図である。先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する(後の図も同様に扱う)。
【0045】
この図に示す原子力プラントは上記の実施の形態の補給水供給設備2と異なる補給水供給設備102を備えている。この補給水供給設備102は上記の補給水供給設備2と逃がし弁28が設けられていない補給水管路122dを有する点で異なっている。
【0046】
このように構成される比較例の原子力プラントにおいて、非常用炉心冷却設備3Bにおけるサーベランステストによって逆止弁27bの漏洩が生じると、上記の実施の形態同様に、補給水管路122dは漏洩水によって加圧される。しかし、この場合、漏洩水による加圧は補給水管路122dから封水供給管路26aを介して非常用炉心冷却設備3Aに伝播し、非常用炉心冷却設備3A内の圧力も上昇させる。
【0047】
その結果、非常用炉心冷却設備3A内の圧力が逃がし弁38aの設定値に達すると、逃がし弁38aの弁体が開放されて非常用炉心冷却設備3A及び補給水管路22d内の圧力を低下させる。逃がし弁38aによって水を逃がすことによって非常用炉心冷却設備3A及び補給水管路22d内の圧力が設定値より小さくなると、逃がし弁38aは再び弁体を閉じて圧力を設定値内に保持する。
【0048】
このような比較例においても、サーベランステストに付随した漏洩水による圧力異常は逃がし弁38aによって解消されるが、それと同時に非常用炉心冷却設備3Aで圧力異常が発生した旨の警報が発せられてしまう。したがって、上記のような漏洩水の逆流が生じると、非常用炉心冷却設備3Aが例え正常に稼働していたとしても、異常が無いことを確認する作業が必要となり、プラント運用の面で改善の余地があった。また、万が一、その確認作業中に非常事態が発生した場合には、非常用炉心冷却設備3Aが正常に稼働しているにもかかわらず炉心を冷却できないという点も改善すべき課題であった。
【0049】
これに対して本実施の形態は、逆止弁25の下流側に位置するように補給水管路22d上に設けられ、補給水管路22d内の圧力を設定値内に保持する圧力制御手段である逃がし弁28を備えている。この逃がし弁28により、非常用炉心冷却設備3Bのサーベランステスト時に逆止弁27bを介して水が漏洩して補給水管路22d内が加圧されても、補給水管路22d内の圧力を逃がし弁28の設定値内に保持することができる。
【0050】
すなわち、本実施の形態によれば、補給水管路22d内の圧力が上昇しても、比較例のように他の設備(非常用炉心冷却設備3A)に設けられた圧力制御手段(逃がし弁38a)によって圧力異常を解消することなく適正にプラントを運用することができる。したがって、本実施の形態によれば、適正なプラント運用ができるので、原子力プラントの信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0051】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態が上記の第1の実施の形態と異なる点は、補給水管路22dの圧力制御手段としてオリフィスが設けられたバイパス管路を備えている点である。
【0052】
図3は本発明の第2の実施の形態である原子力プラントの概略系統図である。
【0053】
この図に示す原子力プラントは、上記の第1の実施の形態の補給水供給設備2と異なる補給水供給設備202を備えており、他の部分は第1の実施の形態と同じである。
【0054】
補給水供給設備202は、逆止弁25を迂回するように補給水管路22dに両端が接続されたバイパス管路50を備えている。バイパス管路50には管路径を縮小したオリフィス部51が設けられている。バイパス管路50の上流側の端部は接続部29bの下流側かつ逆止弁25の上流側に接続されており、これと反対の下流側の端部は逆止弁25の下流側かつ接続部29cの上流側に接続されている。他の部分は補給水供給設備2と同じである。
【0055】
オリフィス部51の径は、非常用炉心冷却設備3A,3Bでサーベランステストを行う際に逆止弁27a,27bを介して漏洩する水の量を考慮し、少なくとも、サーベランステスト後に補給水ポンプ23を再起動させる際に下流側でウォーターハンマー現象が発生しないように設定する。また、オリフィス部51の径は、逆止弁27a,27bを介して単位時間当たりに漏洩する水量と同程度の量の水が上流側(接続部29b側)に逃げるように設定することが好ましい。
【0056】
このようなバイパス管路50を設けた補給水供給設備202によれば、逆止弁27bからの漏洩水が発生しても逆止弁25の上流側(接続部29b側)に逃がすことができるので、補給水管路22dの加圧を他の設備に伝播させることなく解消することができる。したがって、本実施の形態によっても、上記の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態が上記の第2の実施の形態と異なる点は、補給水管路22dの圧力制御手段として流量制御弁が設けられたバイパス管路を備えている点である。
【0058】
図4は本発明の第3の実施の形態である原子力プラントの概略系統図である。
【0059】
この図に示す原子力プラントは、上記の第2の実施の形態の補給水供給設備202と異なる補給水供給設備302と、補給水供給設備302の制御を行う制御装置304を備えており、他の部分は第1の実施の形態と同じである。
【0060】
補給水供給設備302は、逆止弁25を迂回するように補給水管路22dに両端が接続されたバイパス管路60を備えている。バイパス管路60の上流側の端部は接続部29bの下流側かつ逆止弁25の上流側に接続されており、これと反対の下流側の端部は逆止弁25の下流側かつ接続部29cの上流側に接続されている。他の部分は補給水供給設備2と同じである。
【0061】
バイパス管路60には管路60内の水の流量を制御する流量制御弁61が設けられている。流量制御弁61は、制御装置304と接続されており、制御装置304からの出力信号によって所定の開度で適宜開閉される。本実施の形態では流量制御弁61として空気作動弁を用いている。
【0062】
流量制御弁61を開くタイミング、及びそのときの開度の制御は制御装置304が行っている。この流量制御弁61の1つの制御の方法としては、非常用炉心冷却設備3Bのサーベランステスト(定期検査)の開始時に流量制御弁61を所定開度まで開き、サーベランステストの終了時に流量制御弁61を閉じるものがある。この場合のバルブの開度の設定は、上記の第2の実施の形態におけるオリフィス部51の径を設定する際と同様に、逆止弁27bを介して漏洩する水の量やウォーターハンマー現象を考慮して行うと良い。また、サーベランステストの開始及び終了はバルブ37bの開閉の状態から判断すると良い。即ち、バルブ37bが開かれた状態であればサーベランステストの開始と判断することができ、逆の場合は終了(又は通常運転時)したと判断することができる。なお、サーベランステスト用の運転モードが制御装置304に予め設定されている場合には、そのモードを選択している間は流量制御弁61が開かれるように設定してもよい。
【0063】
このように構成した原子力プラントにおいても、逆止弁27bからの漏洩水が発生しても逆止弁25の上流側に逃がすことができるので、補給水管路22dの加圧を他の設備に伝播させることなく解消することができる。したがって、本実施の形態によっても、上記の第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、この他の制御方法としては、補給水管路22dに圧力センサー(図示せず)を取り付けてその圧力検出値が制御装置304に入力されるように構成し、圧力センサーから入力される圧力検出値に応じて流量制御弁61の開度及び開閉のタイミングを決定する方法を利用しても良い。このように制御すれば、補給水管路22d内の圧力上昇を検知することができるので、逆止弁を介して水の漏洩があったことを客観的に判別することができ、またその漏洩量に応じた最適な制御を行うことができる。
【0065】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
本実施の形態が上記の第1の実施の形態と異なる点は、補給水管路22dの圧力制御手段として開閉弁及びアキュムレータが設けられた封水供給管路を備えている点である。
【0066】
図5は本発明の第4の実施の形態である原子力プラントの概略系統図である。
【0067】
この図に示す原子力プラントは、上記の第1の実施の形態の補給水供給設備2と異なる補給水供給設備402と、補給水供給設備402の制御を行う制御装置404を備えており、他の部分は第1の実施の形態と同じである。
【0068】
補給水供給設備402は、逆止弁27a,27bの上流側に位置するように封水供給管路26a,26b上に設けられた開閉弁70a,70bと、開閉弁70a,70bと逆止弁27a,27bの間に設けられたアキュムレータ71a,71bを備えており、他の部分は補給水供給設備2と同じである。
【0069】
アキュムレータ71a,71bは内部に気体領域を有している。封水供給管路26a,26b内を流通する水は、管路26a,26b内の圧力に応じてアキュムレータ71a,71bの内部に導かれ、この気体領域を圧縮する。
【0070】
アキュムレータ71a,71bにはこの気体領域の圧力値を検出する圧力センサ72a,72bが取り付けられている。圧力センサ72a,72bは、制御装置404と接続されており、アキュムレータ71a,71b内の気体領域の圧力を検出して制御装置404に出力している。
【0071】
開閉弁70a,70bは、制御装置404と接続されており、アキュムレータ71a,71b内の気体領域の圧力値に応じて出力される制御装置404からの出力信号によって開閉される。本実施の形態では開閉弁70a,70bとして電気によって駆動される電動弁を用いている。
【0072】
制御装置404は、圧力センサ72a(72b)から入力される検出値が設定値より小さくなったら弁体を開く信号を開閉弁70a(70b)に出力し、検出値が設定値に達したら弁体を閉じる信号を出力する。この弁体を開閉するために用いる設定値は、非常用炉心冷却設備3A(3B)内の管路に封水が満水保持される状態でアキュムレータ71a(71b)内の気体領域に作用する圧力と、サーベランステスト時に発生する漏洩水による加圧に基づいて設定する。このように設定すると、非常用炉心冷却設備3A(3B)内の封水が減少しても、その都度適切に補給水供給設備402から封水が供給されるように制御されるので、非常用炉心冷却設備3A(3B)の管路を常に満水保持することができる。
【0073】
このように構成される原子力プラントにおいて、アキュムレータ71a,71bの気体領域の圧力が設定値以上に保持されている場合には、通常運転時かサーベランステスト時かに関わらず開閉弁70a,70bは閉じられ、非常用炉心冷却設備3A,3Bと補給水供給設備402とは隔離されている。このとき、非常用炉心冷却設備3Bにおいてサーベランステストを行った場合に逆止弁27bに漏洩が生じて開閉弁70b側に水が侵入しても、漏洩水はアキュムレータ71b内の気体領域を圧縮しながらアキュムレータ71b内に導かれるので圧力上昇は緩和される。
【0074】
このように本実施の形態よれば、漏洩水が発生しても、非常用炉心冷却設備3A,3Bと補給水供給設備204とは開閉弁70a,70bによって隔離されているので他の設備に圧力を伝播させることがなく、適正にプラントを運用することができる。したがって、本実施の形態によっても、上記の各実施の形態同様、適正なプラント運用ができるので、原子力プラントの信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0075】
また、本実施の形態の原子力プラントにおける制御装置404は、アキュムレータ71b(71a)の気体領域の圧力値が設定値より小さくなったら、非常用炉心冷却設備3B(3A)の管路内の封水が不足していると判断し、開閉弁70b(70a)を開いて再び満水保持することができる。このように、本実施の形態によれば、非常用炉心冷却設備3B(3A)内の封水が不足しても自動的に補給することができるので、各設備を隔離してもウォーターハンマー現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0076】
なお、上記の各実施の形態の説明では、説明を簡略して非常用炉心冷却設備3Bにおいてサーベランステストを実施する場合のみを説明したが、非常用炉心冷却設備3Aでサーベランステストを実施した場合にも同様の効果が得られることは言うまでもない。また、上記の各実施の形態の説明では、簡略のために非常用炉心冷却設備が2つの場合を例に挙げたが、3つ以上の場合にも本発明は同様に適用することができる。
【0077】
また、上記の説明において、補給水管路22d内で発生する圧力上昇はウォーターハンマー現象の発生抑制機能を有する逆止弁25によるものであるが、この他にも、非常用炉心冷却設備3A,3B内の上流側に他の用途の逆止弁(例えば図1中の逆止弁24)が設けられている場合や、逆止弁以外の流通抑制手段が設けられている場合にも本発明は適用することができる。これは非常用炉心冷却設備の上流側に漏洩水の逃げ場を失わせる手段が設けられていれば、補給水管路内の圧力上昇が発生し得るからである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態である原子力プラントの概略系統図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の比較例である原子力プラントの概略系統図。
【図3】本発明の第2の実施の形態である原子力プラントの概略系統図。
【図4】本発明の第3の実施の形態である原子力プラントの概略系統図。
【図5】本発明の第4の実施の形態である原子力プラントの概略系統図。
【符号の説明】
【0079】
2 補給水供給設備
3 非常用炉心冷却設備
10 原子炉
21 貯水槽
22 補給水管路
23 補給水ポンプ
25 逆止弁
26 封水供給管路
27 逆止弁
28 逃がし弁
50 バイパス管路
51 オリフィス部
60 バイパス管路
61 流量制御弁
70 開閉弁
71 アキュムレータ
72 圧力センサ
202 補給水供給設備
302 補給水供給設備
304 制御装置
402 補給水供給設備
404 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽の水を補給水管路に圧送する補給水ポンプと、
前記補給水管路に設けられ、前記補給水ポンプによって圧送される水の逆流を防止する第1の逆止弁と、
この第1の逆止弁の下流側に前記補給水管路から分岐して設けられ、非常時に原子炉の炉心に水を供給する非常用炉心冷却設備と接続された封水供給管路と、
この封水供給管路に設けられ、前記非常用炉心冷却設備から前記補給水管路へ水が流通することを防止する第2の逆止弁と、
前記第1の逆止弁の下流側に設けられ、前記補給水管路内の圧力を設定値内に保持する圧力制御手段とを備えることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項2】
請求項1記載の原子力プラントの補給水設備において、
前記圧力制御手段は圧力逃がし弁であることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項3】
請求項1記載の原子力プラントの補給水設備において、
前記圧力制御手段は、オリフィス部が設けられ、前記第1の逆止弁を迂回するように前記補給水管路に両端が接続されたバイパス管路であることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項4】
請求項1記載の原子力プラントの補給水設備において、
前記圧力制御手段は、流量制御弁が設けられ、前記第1の逆止弁を迂回するように前記補給水管路に両端が接続されたバイパス管路であることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項5】
請求項4記載の原子力プラントの補給水設備において、
前記非常用炉心冷却設備の定期検査の開始時に前記流量制御弁を所定開度まで開き、前記定期検査の終了時に前記流量制御弁を閉じる制御装置を備えることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項6】
請求項1記載の原子力プラントの補給水設備において、
前記圧力制御手段は、前記封水供給管路上の前記第2の逆止弁の上流側に設けられた開閉弁、及びこの開閉弁と前記第2の逆止弁の間に設けられたアキュムレータであることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項7】
請求項6記載の原子力プラントの補給水設備において、
前記アキュムレータに取り付けられ、内部の気体領域の圧力を検出する圧力検出手段と、
この圧力検出手段から入力される検出値に応じて、前記検出値が設定値より小さくなったら前記開閉弁を開き、前記検出値が設定値に達したら前記開閉弁を閉じる制御装置とを備えることを特徴とする原子力プラントの補給水設備。
【請求項8】
原子炉と、
非常時に前記原子炉の炉心に水を供給する非常用炉心冷却設備と、
貯水槽の水を補給水管路に圧送する補給水ポンプと、
前記補給水管路に設けられ、前記補給水ポンプによって圧送される水の逆流を防止する第1の逆止弁と、
この第1の逆止弁の下流側に前記補給水管路から分岐して設けられ、前記非常用炉心冷却設備と接続される封水供給管路と、
この封水供給管路に設けられ、前記非常用炉心冷却設備から前記補給水管路へ水が流通することを防止する第2の逆止弁と、
前記第1の逆止弁の下流側に設けられ、前記補給水管路内の圧力を設定値内に保持する圧力制御手段とを備えることを特徴とする原子力プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−164450(P2008−164450A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354616(P2006−354616)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)