説明

原子力発電所の設置構造

【課題】地震の影響を受けにくく、特に、非常時に電源が使用できない状態となっても、冷却水を確実に原子炉に供給することが可能な原子力発電所を提供する。
【解決手段】海11に隣接した地中に埋設される、地下タンク型の原子力発電所10とする。原子力発電所10は、地中の支持地盤15上に載置され、原子炉を内包する格納容器17を収納した構造体19と、構造体19の周囲を隔離地下水23を介して取り囲み、底部が支持地盤15に達するように設けられた不透水性の連壁25と、海水の水位11a及び地下水の水位13aよりも低い位置に設けられた、海11と構造体19とを結ぶ管路29とを備える。非常時には管路29に設けられた一つまたは複数のバルブ29aを手動で開放し、海水の水位11a及び地下水の水位13aと管路29との高低差により、重力のみの自然の力で、海水が管路29を通って構造体19の内部に流れ込むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所、特に地下埋設型の原子発電所の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所は、日本では臨海部に設置されている。原子力発電に使用される原子炉には様々なタイプのものがあるが、実際に日本で使用されている原子炉は沸騰水型炉(BWR;Boilng Water Reactor)と加圧水型炉(PWR;Pressurized Water Reactor)の二つに限られており、これらの原子炉は多量の水を必要とするため、発電所を臨海部に設置して水を得やすい環境としている。これらの原子炉は、通常、燃料棒や制御棒の集合体からなる炉心が納められた格納容器全体をコンクリート製の建屋に収納した構造である。炉心は、中性子の減速、放射性物質の遮蔽、原子炉の冷却、熱の運搬等の目的で冷却水で満たされており、この冷却水は毎秒3mの速さでポンプを用いて循環させている。また、原子力発電所には原子炉のほかに発電機やタービンが設置されており、タービン下部の復水器においても、ポンプを用いた圧送により海水を循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−74980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の原子力発電所の場合、臨海部に設置されているため、日本のような地震国においては、地震時の対策を講じる必要があった。
地震が発生すると原子炉や建屋等の構造物の破損や倒壊等の被害を受けるおそれがある上に、地震に起因する津波が発生すれば上述の被害が更に甚大となったり、電気機器類が使用できなくなったりするおそれもあった。
実施には、地震等の非常時には緊急自動停止するシステムが作動し、その結果原子炉の運転は停止する。しかし、炉心の燃料棒から放射性廃棄物の崩壊熱が放出されて炉心や使用済み燃料棒が高温になってしまうため、原子炉の温度を下げる必要がある。
従来の原子力発電所の場合は、ポンプを稼動させて軽水や海水を原子炉や復水器に供給するのが一般的であったため、地震や津波の影響で電源が使用できなくなり、緊急炉心冷却装置やポンプが稼動不能になった場合は、原子炉の冷却システムも失われるおそれがあるという課題があった。また、原子炉の冷却が困難となった場合、放射性物質が発電所外部に漏出するおそれがあるという課題があった。
本発明は以上の点を鑑み、非常時に停電した場合でも原子炉の冷却を確実に行うことができ、さらに、放射性物質が拡散するおそれのない、安全性の高い原子力発電所の設置構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明は、水資源に隣接する地中に埋設される地下タンク型の原子力発電所の設置構造であって、前記地中の支持地盤上に載置され、原子炉を収納した構造体と、前記構造体の周囲を隔離地下水を介して取り囲み、底部が前記支持地盤に達するように設けられた不透水性の連壁と、前記水資源の水位及び地下水の水位よりも低い位置に設けられた、前記水資源または前記地下水と、前記構造体とを結ぶ開閉自在な管路とを備え、前記管路を開けたとき、前記水資源の水または前記地下水が、前記管路を通って前記構造体の内部に流れ込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の原子力発電所の設置構造は、原子力発電所全体を地下に完全に埋設するため、地震の影響を受けにくく、津波などが発生した場合も、影響を抑えることが可能である。このため、放射性物質の漏れも最小限に抑えることができる。また、非常時に電源が使用できない場合においても、確実に冷却水を供給することができる。したがって、原子力発電所の安全性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の原子力発電所の設置構造の構成を説明するための概略図である。
【図2】図2は、原子力発電所の設置構造を上から見た図である。
【図3】図3は、非常時に構造体に海水を供給する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施の形態を図示例と共に説明する。なお、実施の形態においては、本発明の原子力発電所の設置構造のうち、原子炉を収納した構造体を含む部分の構造について説明する。
本発明の原子力発電所の設置構造10は、支持地盤15と、格納容器17と、構造体19と、連壁25と、管路29と、開閉弁29aとを含んで構成されている。
本発明の原子力発電所の設置構造10は、水資源に隣接した地中に埋設される、いわゆる地下タンクタイプの原子力発電所である。すなわち、原子力発電所を構成するシステムを、通常の建屋に相当する地下タンク様の構造体に収納して、地下に完全に埋設させた形となっている。
ここで水資源としては、海、河川、湖沼の他、供給用の水が満たされた貯水槽等も考えられる。
原子力発電所の設置構造10を以上のように構成すると、大型の地震が起こった場合も建物の倒壊等の被害を抑えることができる。また、地上の沿岸部に設置した場合と比較して、地震による津波の影響を受けにくくなる。さらに、原子炉から発生した放射性物質が外部に拡散するのを防止することができる。
【0009】
図1に示すように、本実施の形態では、原子力発電所の設置構造10は、海11の臨海部の地中に、完全埋設型の地下タンクの態様で設置されている。完全埋設型というのは、原子力発電所全体が地中に設置されている態様を指す。現在、石油やLPG、LNG等のエネルギー貯蔵に地下タンクが使用されているが、完全埋設型の利点として、安全性に加え地上の景観に影響がないこと等も挙げられる。
また、地中では物体が受ける加速度が地上の場合と比較して小さく、衝撃による変位も小さくなるため、地中に設けられた設備が耐震性に優れていることはよく知られている。
また、波浪の場合も概して海底は静かな状態であるため、地中は津波の影響も受けにくい。しかし、断層があれば地震の影響を大きく受けてしまうため、地下状況は事前に調査し、好適な場所を選択するものとする。
図1及び図3においては、原子力発電所10の上部は地表と同じ程度の高さに示してあるが、実際には、原子力発電所10の上部はある程度の厚みを持って土壌に覆われる構成であっても良い。また、原子力発電所10が地中に埋設された部分の土地の地表は、緑地などを造成することも可能である。
【0010】
支持地盤15は、構造体19を載置可能な状態のものであれば良い。たとえば、掘削により得られた不透水層が良好な状態を維持できると考えられる場合は、不透水層を支持地盤として利用する。あるいは、不透水層が支持地盤としてそのまま利用するのに十分ではない状態であると考えられる場合は、セメントで固化する等の方法で補強しても良い。
地表13から支持地盤15の表面までの深さは、たとえば50m程度とする。支持地盤15は、粘土やシルト等からなる不透水層であることが好ましい。
なお、図中符号11aは海面の水位であり、符号11bは、原子力発電所10が臨海部の地中に設置されるため、海11側からの衝撃を緩和させる目的で設置した護岸である。
また、符号13は地表、符号13aは地下水の水位である。
【0011】
格納容器17は原子炉を格納するものであり、通常は厚みのある鉄製であることが多い。
使用される原子炉は、日本で使用される濃縮ウラン軽水型炉のうち、沸騰水型炉(BWR)または加圧水型炉(PWR)のいずれのタイプの原子炉にも適用可能であるものとする。
【0012】
構造体19は格納容器17を収納するものであり、構造体19は支持地盤15上に載置されている。
構造体19は、通常の原子力発電所の建屋に使用されるような、コンクリート製とするのが好適である。また、構造体19は、放射性物質の拡散を抑えるのに十分な厚みを有するものとする。一例として、2m程度の厚みを有するものであれば好適であるといえる。
構造体19が図2に示すような円筒形である場合、その直径(外径)φは数十mから百数十m程度であることが考えられる。
上述の構成の構造体19により、原子炉から発生した放射性物質の拡散を防ぐことができる。原子炉が鉄製の格納容器17等に収納される場合、構造体19は、たとえば通常の格納容器を収納する建屋と同様に、耐性等を考慮した厚みを有する、好適な材料で構成する。たとえば、構造体19の材料としてコンクリート等は好適である。
【0013】
また、構造体19は、ドーム状の天井部を備えると良く、実施の形態では、構造体19の天井部19aの形状は、原子炉から発生した水素ガスを効率的に逃がすことができるようにドーム状となっている。天井部19aには、水素ガスを排気するための排気弁(図示せず)がさらに設けられているものとする。水素ガスは、原子炉の燃料棒が高温になったとき、燃料棒外側の金属であるジルコニウムと水が反応して発生する場合がある。その場合も、水素ガスが構造体に充満して爆発するのを防ぐことができる。
また、図中符号19bは、構造体19の側壁であり、符号19cは側壁19bの内側の壁(以下、内壁)である。また、21は内壁19cに設置された電気機器類である。
構造体19内の電気機器類21は、原子炉よりも高い位置、具体的には格納容器17の上部よりも高い位置の内壁19cに設置する。この位置に電気機器類21を設置することで、後述するように、非常時に海水を構造体19内に流入させる場合に、電気機器類21のダメージを可能な限り防ぐことができる。
【0014】
連壁25は、構造体19の周囲を隔離地下水23を介して取り囲み、底部が支持地盤15に達するように設けられている。連壁25により、万一放射性物質が原子炉から構造体19の外部に漏出した場合でも、放射性物質の汚染範囲を連壁25内に留めることができる。
ここでいう隔離地下水23とは、連壁25によって連壁25の外部の地下水とは隔離された地下水のことであり、具体的には帯水した地下土壌を利用する。また、地下水とは、地中の粒子の間隙に飽和状態の水が含まれたものを指すが、ここでは飽和状態よりも少ない割合で水が含まれた土壌水のことも含むものとする。
連壁25の材料は不透水性のものとする。上述の隔離地下水23を介して構造体19を連壁25で取り囲むことにより、隔離地下水23は移動が拘束される。このため、放射性物質の汚染範囲を連壁25内に留めることができる。したがって、放射性物質に対する遮蔽能力をさらに高めることができる。
【0015】
連壁25は、上下方向への可動性を有するように設置し、要求される放射性物質の遮蔽レベルに応じて連壁25を動かすようにすることもできる。特に放射性物質の拡散を抑制したいような場合に、連壁25を下げて図1に示すように支持地盤15に達する形とすると、連壁25内の隔離地下水23は連壁25の外部の地下水27から完全に隔離される。また、このようにすれば、支持地盤15からある程度の間隙を持った位置に連壁25を設置することもできる。このようにして、隔離地下水23の水位23aを変化させ、放射性物質の遮蔽能力を制御することも可能である。例えば、放射性物質が構造体19から漏出するようなことになり、連壁25内で放射性物質を完全に食い止めたい場合には、連壁25を下げて、連壁25の下部を上述の支持地盤15に固定し、連壁25内の隔離地下水23が、周囲の地下水(土壌水)とは完全に隔離される構造とする。
【0016】
具体的には、支持地盤15が不透水層である場合、連壁25の下部を支持地盤15に食い込むように設置し(図1)、隔離地下水23が周囲の地下水27と混ざり合わないようにする。このため、放射性物質が格納容器17から漏れ出すことがあっても、その放射性物質による汚染範囲を連壁25内に留めることができる。したがって、連壁25によって放射性物質の遮蔽能力をさらに高めることができる。こうすると、隔離地下水23の水位23aを、連壁25の外部の地下水とは異なる水位に保持することが可能な構造とすることができる。例えば、要求される放射性物質の遮蔽レベルにより、隔離地下水23の水位23aを、構造体19の上方箇所に保持することができる。
以上のように連壁25を構成することにより、万一原子炉の格納容器17や、上述の構造体19から放射性物質が漏出した場合でも、連壁25によって放射性物質を漏出を遮断し、連壁25内に留まらせることができる。
連壁25は、全体的な形状が、従来の原子炉やタービン用の建屋のような立方体の形状とした例を示している(図2)。
【0017】
管路29は、水資源の水を非常時に構造体19の内部まで供給する目的で設けるものであり、管路29は、例えば海水により劣化するおそれが少ない材料を用いて海11と構造体19とを結ぶように設けられている。実施の形態では、護岸11bから構造体19の側壁19bとの間を管路29が通る構造とした(図1及び図3)。
管路29は、供給用の水が満たされた貯水槽または水資源の水位や地下水の水位よりも低い位置に設けられているため、上述の水位と管路29との間に高低差が生じる。
非常時に管路29を開けたとき、水資源の水または地下水が管路29を通って構造体19の内部に流れ込む。これは、上述の高低差により、水資源の水を重力のみの自然の力で管路29を通って構造体19の内部に到達させることができるためである。
このような構造とすることで、非常時に外部電力や非常用電力に頼ることなく、自然の力を利用して原子炉に必要な水を確実に供給することができる。したがって原子力発電所の安全性の飛躍的な向上を期待することができる。
実施の形態では、管路29の設置位置は海水の水位11a及び地下水の水位13aよりも低くなるように設定している。このため、海水の水位11aと管路29との間に高低差hが生じる。非常時に管路29を手動で開放すると、高低差hにより、重力のみの自然の力で海水が管路29を通って構造体19内に達する。したがって、原子炉の冷却に必要な水を自然の力で供給することができる。また、図示していないが、管路29は地下水27を取り込むように設けることもできる。
【0018】
管路29は、水資源の水または地下水の流量を制御可能な複数のバルブ29aを有すると良い。複数のバルブ29aを設けることによって、構造体19に供給する水の流量を制御し、要求される水の流量に応じて、一つまたは複数のバルブ29aの開閉を行うようにすることができる。バルブ29aは電動式でもよいが、手動でも操作可能にしておくと、非常時に外部電力や非常用電力を使用できない場合に、要求される水量に応じて一つまたは複数のバルブ29aを開放し、海水を流入できる。
管路29は複数であっても良い。その場合、何かの原因で管路29の一つが使用できなくなった場合でも、他の管路29を使用することで非常時に対応することができる。またさらに、管路29は地下水の水位よりも低い位置に設けてあるため、原子炉の冷却用の水として、水資源の水のみならず、地下水(土壌水)を利用することもできる。様々な状況を想定し、非常時には地下水(土壌水)をも利用可能とし、地下水と構造体とを結ぶ管路29を併設することもできる。実施の形態では、使用できる管路29を複数確保しておくことにより、海水の供給をより確実なものとしている。その場合、海水を取り込む管路29を複数設けても良いし、地下水を取り込む管路29を加えて構成しても良い。その際は、構造体19内に海水のみを流入させることもでき、あるいは同時に地下水を流入させることもできる。
【0019】
次に動作について説明する。
原子力発電所10が通常の運転動作を行っているとき、支持地盤15上に構造体19が載置され、構造体19の周囲を、隔離地下水23を介して連壁25が取り囲む構成となっている。このとき、原子炉から発生する放射性物質を地中から外部に漏れ出さないよう、完全に遮断したい場合は、連壁25が可動性であれば、その下部が支持地盤15にはまり込むように設置し固定する。このとき、連壁25内の隔離地下水23の水位23aが、海水の水位11a及び地下水の水位13aより上部の位置となるように設定し、構造体19の周囲及び上部を完全に隔離地下水23で取り囲むようにする。このような構成とすることで、原子炉から発生した放射性物質は、格納容器17、構造体19に加え、隔離地下水23、連壁25により、幾重にも遮蔽されて地中の連壁25内に留まり、外部に漏れ出さないようにすることができる。
【0020】
次に非常時の動作の例につき図3を用いて説明をする。
地震等の自然災害が起こると、原子力発電所10は非常事態を検知し、運転動作が停止する。このとき、原子炉内の温度が上がって燃料棒(図示せず)が露出するのを避けるため、構造体19内、または格納容器17内に、冷却水として海水を供給する。まず、管路29に設けられている一つまたは複数のバルブ29aを操作者が手動で開放する。その結果、高低差hによる重力のみの自然の力で、図3の矢印で示されるように管路29を海水が通り、構造体19内に達する。この結果、構造体19内が海水で満たされることにより原子炉が冷却され、温度が上昇するのを防ぐことができる。このとき、電気機器類21は構造体19の内壁19cの、格納容器17よりも上部に設置されているため、海水が構造体19の内部に供給された場合も、可能な限りダメージを防ぐことができる。海水が十分供給されたと判断された時点でバルブ29aを閉じ、海水の供給を、電気機器類21の高さまで到達する前に止めることもできる。
【0021】
以上の説明からも明らかなように、実施の形態の原子力発電所の設置構造10は、地下に完全に埋設しているため、大型の地震が起こった場合も建物の倒壊等の被害を抑えることができる。また、地上の沿岸部に設置した場合と比較して、地震による津波の影響を受けにくくなる。さらに、放射性物質や放射性物質、水素ガス等の空気中への飛散を防止することができる。また、非常時に電源が使用できない場合においても、確実に原子炉に冷却水を供給することができる。したがって、原子力発電所の安全性を大きく向上させることができる。
【0022】
本発明は上述の実施の形態に限定されないことは明らかである。たとえば、実施の形態では、原子力発電所10を臨海部の地中に設置した例が挙げてあるが、貯水槽または河川や湖沼などの水資源に隣接する構成としても良い。
また、構造体の形や大きさ、支持地盤までの深さ等は、原子力発電所に求められる規模に応じたものとする。あるいは、今後の技術により原子炉の大きさが変化する場合には、その変化に応じて規格を定めるものとする。また、実施の形態では構造体19の形状を円筒形としたが、原子炉を収納することが可能であれば、この形状でなくとも良い。また、連壁25の形状においても、隔離地下水を介して構造体を取り囲むことが可能であれば、その形状は実施の形態のものに限定されることはない。
【0023】
また、実施の形態においては、原子力発電所の設備のうち、原子炉を収納した構造体19の周辺設備において説明したが、発電機や復水器を備えたタービン等の他の設備も地中に埋設することができる。その場合は、構造体19と同様に、地下タンク様の構造体に発電機やタービンを収納し、実施の形態の構造体19に隣接して設置する。
その場合も、構造体19と同様に、地震の影響を受けにくく、津波などが発生した場合も、影響を抑えることが可能であり、放射性物質の漏れも最小限に抑えることができる。また、非常時に電源が使用できない場合においても、確実に復水器に冷却水を供給することができる。したがって、原子力発電所の安全性を大きく向上させることができる。
その他、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々好適な他の形態への変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
10……原子力発電所、11……海、11a……海水の水位、11b……護岸、13……地表、13a……地下水の水位、15……支持地盤、17……格納容器、19……構造体、19a……天井部、19b……側壁、19c……内壁(側壁の内側の壁)、21……電気機器類、23……隔離地下水、23a……隔離地下水の水位、25……連壁、27……外部の地下水、29……管路、29a……バルブ、h……高低差、φ……構造体の直径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水資源に隣接する地中に埋設される地下タンク型の原子力発電所の設置構造であって、
前記地中の支持地盤上に載置され、原子炉を収納した構造体と、
前記構造体の周囲を隔離地下水を介して取り囲み、底部が前記支持地盤に達するように設けられた不透水性の連壁と、
前記水資源の水位及び地下水の水位よりも低い位置に設けられた、前記水資源または前記地下水と、前記構造体とを結ぶ開閉自在な管路と
を備え、
前記管路を開けたとき、前記水資源の水または前記地下水が、前記管路を通って前記構造体の内部に流れ込む、
ことを特徴とする原子力発電所の設置構造。
【請求項2】
前記構造体は、ドーム状の天井部を備えたことを特徴とする請求項1記載の原子力発電所の設置構造。
【請求項3】
前記構造体は、前記原子炉よりも上部の内壁に電気機器類を設置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力発電所の設置構造。
【請求項4】
前記管路は、前記水資源の水または前記地下水の流量を制御可能な複数のバルブを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の原子力発電所の設置構造。
【請求項5】
前記バルブは手動操作可能であることを特徴とする請求項4記載の原子力発電所の設置構造。
【請求項6】
前記管路は複数であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の原子力発電所の設置構造。
【請求項7】
前記隔離地下水の水位は、前記構造体の上方箇所に位置していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の原子力発電所の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2838(P2013−2838A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131281(P2011−131281)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)