説明

原子力発電所等で使用された管の引裂き装置及び引裂き方法

【課題】原子力発電所等の解体又は設備更新によって生じる廃棄される管の処理、特に、熱交換器用細管のような管の廃棄処理において、放射性廃棄物の減容化に貢献し、廃棄物の再利用の促進に寄与する、原子力発電所等で使用された管の引裂き装置及び引裂き方法を提供すること。
【解決手段】管1を潰して扁平化するプレス機10と、扁平化された管、すなわち、扁平板2の先端部の両隅を切り落として(切り落とし片2a,2a参照)、管1ないし扁平板2の先端部を二枚の舌状部2b,2bに開先加工する切断機20と、二枚の舌状部2b,2bを掴んで引っ張ることにより、扁平化された管1ないし扁平板2の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板3,3を形成する分割機30と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の引裂き装置及び引裂き方法に関し、特に、放射性物質又はそれを含む可能性を有する流体にさらされた管の引裂き装置及び引裂き方法に関し、中でも、原子力発電所の解体又は設備更新に伴って廃棄される熱交換器用細管の引裂き装置及び引裂き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の解体又は設備更新に伴って発生する廃棄物のうち、放射性廃棄物は僅かであり、大部分は、放射能レベルがきわめて低く放射性廃棄物として扱う必要がないもの(“クリアランスレベル”以下のもの)、及び、放射性廃棄物でないものである。なお、現在、「クリアランスレベル」は、人が日常生活において自然界の放射能から受ける線量の1/100以下に設定される(「原子力施設におけるクリアランス制度の整備について」参照、発行:経済産業省 原子力安全・保安院 放射性廃棄物規制課)。
【0003】
しかしながら、放射性廃棄物として扱う必要がない、又は、放射性廃棄物でない、と想定されるものであっても、その放射能のレベルが測定できなければ、法令又は規則上、全て放射性廃棄物として、処理されることとなる。この結果、一般的には、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物量が増加するという問題、又、本来、再利用可能な資源が廃棄されるという問題が生じる。下記の特許文献1〜7には、原子力発電所等で使用された細管の処理方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、原子力発電所で使用された小口径配管の半割方法であって、配管をプレスして扁平管とし、扁平管の長手方向両側を全長にわたって切断して、扁平管を二枚の板状体と、それらと同じ長さの二本の側部切断片に分割する方法が提案されている。
【0005】
特許文献2には、低レベル放射能の薄肉管の廃棄物処理であって、薄肉管を長手方向の全長にわたって縦切りし、拡開し、さらに、加圧成形して平板材とする廃棄物処理が提案されている。
【0006】
特許文献3には、放射性物質で汚染された管を押し潰し、押し潰された管の両側を長手方向の全長に渡って切り落とし、切り落とされた二つの長大な端材を放射性廃棄物として廃棄し、残りの上下二枚の板材の汚染状態を測定して、板材の再資源化を計る方法が提案されている。
【0007】
特許文献4には、放射能汚染された熱交換チューブを潰して扁平板とし、扁平版の幅方向中心に刃を当てながら、扁平板をその長手方向に送ることにより、扁平板を幅方向に二分割する方法が提案されている。
【0008】
特許文献5には、原子力発電所で使用された小口径配管を径方向に挟んで、一対の切断ディスクを配置し、小口径配管を長手方向に移動させながら、一対の切断ディスクにより小口径配管を長手方向の全長にわたって二分割する方法が提案されている。
【0009】
特許文献6には、原子力発電所で使用された小口径配管を径方向に挟んで、一対のプラズマトーチを配置し、一対のプラズマトーチを長手方向に移動させて、小口径配管を長手方向の全長にわたって二分割していく方法が提案されている。
【0010】
特許文献7には、バンドソーを、まず、斜めに載置された管の端面にあて、バンドソーを斜めに移動させながら、管を長手方向の全長にわたって切断していく方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許4509732号公報
【特許文献2】特許4373869号公報
【特許文献3】特許4549269号公報
【特許文献4】特開平6−51098号公報
【特許文献5】特開2005−7483号公報
【特許文献6】特開2006−150394号公報
【特許文献7】特開2007−90499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1及び3の発明によれば、管の径方向両端部を長手方向全長にわたって切断するため、二本の長大な端材ができる。特許文献2の発明も、管の幅方向中心を長手方向全長にわたって切断するため、発生する切断屑の量が多くなる。このようにして発生する二本の長大な端材又は切断屑は、それらの放射能レベルを正確に測定することができないため、再利用することができず、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物量が増大するという問題が生じる。
【0013】
特許文献4の発明によれば、管を潰した扁平板を長手方向全長にわたって切断するため、切粉の量が多くなる。切粉は、その放射能レベルを正確に測定することができないため、結局、再利用することができず、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物量が増大するという問題が生じる。また、この発明によれば、切断された部分が邪魔になったり、刃と扁平板の衝突により扁平板の搬送に支障が生じたりするため、実際には、扁平板を分割していくことが困難と考えられる。
【0014】
特許文献5及び7の発明によれば、管を長手方向全長にわたって切断するため、切断屑の量が多くなる。切断屑は、それらの放射能レベルを正確に測定することができないため、結局、再利用することができず、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物量が増大するという問題が生じる。また、得られる断面が半円形の管は、その放射能レベルを正確に測定することができないため、結局、再利用することができず、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物量が増大するという問題が生じる。
【0015】
なお、放射能レベルを正確に測定するためには、サーベイメータのプローブと、被測定物との距離が適正である必要がある。例えば、熱交換器等の細管を長手方向に半割りした、断面が半円状の溝を有するU字管は、溝がきわめて狭いため、溝内にプローブを挿入することができず、放射能レベルを認容される精度で正確に測定することができない。
【0016】
特許文献6によれば、得られる断面が半円形の細管は、その放射能レベルを正確に測定することができないため、結局、再利用することができず、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物量が増大するという問題が生じる。また、原子力発電所の放射線管理区域のような火気の使用に制限がある場所では、特許文献6のプラズマ装置を使用することができないという問題もある。
【0017】
本発明の目的は、原子力発電所等の解体又は設備更新によって生じる廃棄される管の処理、特に、熱交換器用細管のような管の廃棄処理において、放射性廃棄物の減容化に貢献し、廃棄物の再利用の促進に寄与する、原子力発電所等で使用された管の引裂き装置及び引裂き方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、第1の視点において、放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管を処理する装置であって、前記管を潰して扁平化するプレス機と、扁平化された前記管の先端部の両隅を切り落として、該先端部を二枚の舌状部に開先加工する切断機と、前記二枚の舌状部を掴んで引っ張ることにより、扁平化された前記管の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板を形成する分割機と、を有する、管の引裂き装置を提供する。
【0019】
本発明は、第2の視点において、放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管を処理する装置であって、前記管は扁平化され、さらに、該管の先端部は、二枚の舌状部に開先加工され、前記二枚の舌状部を掴んで引っ張ることにより、扁平化された前記管の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板を形成する分割機、を有する、管の引裂き装置を提供する。
【0020】
本発明は、第3の視点において、放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管を処理する方法であって、前記管を潰して扁平化するプレス工程と、扁平化された前記管の先端部の両隅を切り落として、該先端部を二枚の舌状部に開先加工する開先加工工程と、前記二枚の舌状部を掴んで引っ張ることにより、扁平化された前記管の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板を形成する引裂き工程と、を含む、管の引裂き方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原子力発電所等で使用された管を廃棄処理する際、管の放射能レベルの測定が許容される精度で可能になるよう、管を薄板に加工することができる。この加工において、管の端部の僅かな部位しか切断しないため、放射能レベルの正確な測定が困難である切断屑や異形状の切断辺の発生量が少なくなる。この結果、低レベル放射性廃棄物として処分せざるを得ない放射性廃棄物の量が減少する。
【0022】
本発明によれば、引裂きによって、管を複数の薄板に分割することにより、切断屑や切断片が発生しないため、粉塵の発生が防止され、加えて、引裂き処理においては切断処理におけるような振動が発生しないため、作業環境が良好に保たれる。また、管を長手方向全長にわたって切断又は焼き切る場合と比べて、本発明の引裂き処理及び、設備が大幅に簡素化される。したがって、本発明による引裂き設備は、スペースに制限がある原子力発電所の構内にも、余裕をもって設置することができる。
【0023】
かくして、本発明によれば、原子力発電所等の解体又は設備の更新によって生じる廃棄物の処理、特に、熱交換器等が備える細管の廃棄処理において、クリアランスレベル以下の廃棄物の有効利用を促進し、低レベル放射性廃棄物として処分される廃棄物の量を減少させることができる。
【0024】
さらに、本発明によって得ることができる効果を下記に例示する:
イ.管のサイズ、例えば、管径や管長さに影響されず、材質の破壊耐力に応じた小さな力で管を引き裂き分割及び薄板化することができる;
ロ.管の薄板化に要する処理時間が短縮される;
ハ.管を引裂くための設備においては、消耗品が非常に少ない;
ニ.管の引裂きによって、除染又は放射能レベルの測定が容易な平板状の薄板が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例に係る引裂き装置及び引裂き方法の概略を示す説明図である。
【図2】(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の二通りのプレス機及びプレス工程を示す説明図である。
【図3】(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の切断機及び開先工程並びに開先加工された扁平板を示す説明図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の分割機及び分割工程を示す説明図である。
【図5】(本発明の一実施例に係る引裂き装置の除染機を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施例に係る引裂き装置に付設されたサーベイ装置を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施例に係る引裂き装置の分割機の構成例を示す正面図である。
【図8】本発明の一実施例に係る引裂き装置による、扁平化された管の引き裂きの原理を説明する図である。
【図9】(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置によって処理される管の前処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施の形態に係る前記分割機は、前記二枚の舌状部がそれぞれ巻き付けられると共に、扁平化された前記管を挟み込む一対のロールと、前記一対のロールをそれぞれ回転自在に支持する一対の軸受と、前記一対のロールにそれぞれ巻き付けられた前記二枚の舌状部を掴む把持機構と、前記把持機構を介して前記二枚の舌状部を引っ張る動力機構と、を有する。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態において、部分的に切り落とされる管(扁平板)の先端部両隅の長手方向(管軸方向)長さは、基本的に、形成される舌状部の長さが、把持機構が掴むことができる長さ分あればよい。但し、上記のようにロールを引裂き治具として用いる場合には、この長さは、形成される舌状部の長さが、把持機構が掴む長さ分に加えて、ロールに巻き付ける長さ分あればよい。
【0028】
本発明は、放射線管理区域で使用された管、又は、CO60等の放射性物質を含む蒸気や水等の気体ないし液体にさらされ、放射性物質が付着した可能性がある管の廃棄処理、さらには、有効利用に好適に適用される。例えば、本発明は、原子力発電所の熱交換器の熱交換用細管(加熱管・冷却管)の再利用に好適に適用される。現在、原子力発電所に設置された熱交換器の細管は、その内径がかなり小さいため、管内部の汚染検査(放射能レベルの測定)ができず、除染も困難であることから、全て、放射性廃棄物として処分されている。この場合、給水加熱器には、一基当たり千本以上の熱交換用細管が装填されているから、給水加熱器一基当たり、約六十五缶もの放射性ドラム缶(200L換算)が発生することとなる。本発明によれば、細管を、汚染検査ないし除染容易な形状に簡単に加工することができる。これによって、クリアランスレベル以下の汚染されていないものについては、再利用に供することが可能となり、低レベル放射性廃棄物の減容化(六十五缶→三缶)ができることとなる。また、本発明は、同じく原子力発電所で使用される計装用チューブのような、細管にも好適に適用できる。また、本発明は、原子力発電所等で使用されている、ステンレス管、銅管、チタン管、又は、その他の金属製管、或いは、引裂き可能な材質の管に好適に適用される。
【0029】
本発明は、外径が15mm程度、管厚さが1mm程度の細管の引裂きに好適である。また、本発明は、管厚さが1mmより非常に薄い管、又は、非常厚い管の引裂きにも十分適用できる。管厚さが非常厚い管の引裂き、例えば、管厚さが5mm以上ある管を引裂く場合には、適宜、切込み又は折り目を入れたり、或いは、削落としによる板厚の減少を施したりすればよい。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態に係る管の引裂き方法は、管を扁平化する工程と、扁平化した管の端部を開先加工する工程と、開先加工された管の両端部(二枚の舌状部、上下の口唇部)を掴みながら管を引き裂きていくことにより扁平化した管を薄板状にニ分割する工程と、を含む。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態においては、扁平化された管の先端部が二枚の舌状部となるよう、該先端部を部分的に切り落とす。また、本発明の好ましい実施の形態においては、扁平化された管の先端部の両隅をそれぞれ直線又は曲線ないしR状に切り落としたり、扁平化された管の先端部両側を斜めに切り落としたり、扁平化された管の長手方向先端部両側を幅方向内側寄りから幅方向外側まで、長手方向及び幅方向に対して斜めに切り落としたりする。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態によれば、本発明の引裂き装置の構成要素である、プレス機、切断機及び分割機が一体ないし連続的に構成され、効率向上が図られる。別の好ましい実施の形態によれば、プレス機、切断機及び分割機が別体ないし不連続的に構成され、原子力発電所構内の空きスペースに、各構成要素をそれぞれ配置する。
【実施例1】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る引裂き装置及び引裂き方法の概略を示す説明図である。
【0034】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る引裂き装置は、放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管、特に、原子力発電所等の解体又は設備更新によって生じる廃棄される管の処理、例えば、原子炉100で発生した蒸気(タービン抽気蒸気)を給水の加熱用として用いる熱交換器(給水加熱器)101、或いは、タービン排気蒸気を冷却水(海水)により復水に戻す熱交換器(復水器)101に一基当たり千本以上装填されている径細な管(細管、加熱管・冷却管)1,1・・・,1の廃棄処理に活用される。
【0035】
この引裂き装置は、管1を潰して扁平化するプレス機10と、扁平化された管、すなわち、扁平板2の先端部の両隅を切り落として(切り落とし片2a,2a参照)、管1ないし扁平板2の先端部を二枚の舌状部2b,2bに開先加工する切断機20と、二枚の舌状部2b,2bを掴んで引っ張ることにより、扁平化された管1ないし扁平板2の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板3,3を形成する分割機30と、を有している。
【0036】
この引裂き装置は、まず、管1を潰して扁平化するプレス工程を実行し、次に、扁平化された管1、すなわち、扁平板2の先端部の両隅を切り落として、この先端部を二枚の舌状部2b,2bに開先加工する開先加工工程を実行し、続いて、二枚の舌状部2b,2bを掴んで引っ張ることにより、扁平化された管1ないし扁平板2の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板3,3を形成する引裂き工程を実行する。以下、工程順に、本発明の一実施例に係る引裂き装置の各要素及び各工程を詳細に説明する。
【0037】
[1.プレス機、プレス工程]
図2(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の二通りのプレス機及びプレス工程を示す説明図である。図2(A)を参照すると、連続ローラ式のプレス機10は、断面が円形の管(パイプ)1を押し潰して扁平化するプレスローラ11と、プレスローラ11の下流に配置され、扁平化された管1の形状を整える矯正ローラ12と、を有している。
【0038】
プレス機10によって、断面が円形の管(パイプ)1は、厚み方向中央に幅方向及び長手方向に延在する切れ目が入り、幅方向両側がつながっている扁平板2に加工される。
【0039】
図2(A)に示した連続ローラ式のプレス機10に代えて、断続プレス式のプレス機13を用いることもできる。断続プレス式のプレス機13は、送出される管1を部分的かつ断続的に押し潰すプレス14と、プレス14を昇降自在に駆動する油圧シリンダ15と、を有している。
【0040】
[2.切断機、開先工程]
図3(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の切断機及び開先工程並びに開先加工された扁平板を示す説明図であって、図3(A)は、扁平化された管の開先に用いる切断機と切断部位を模式的に示し、図3(B)は、扁平化され開先加工された管を示している。
【0041】
図3(A)及び(B)を参照すると、切断機(ワンショット加工機)20は、扁平化された管1、すなわち、扁平板2の先端部の両隅をワンショット加工により切り落として、該先端部を二枚の舌状部2b,2bに開先加工する。例えば、扁平板2の先端部両側を、幅方向内側寄りから幅方向外側まで、長手方向及び幅方向に対して斜めに(部分的に)切り落とす。この切り落とす長さは、後工程の分割機30が二枚の舌状部2b,2bを掴める程度でよいため、切り落とし片2a,2aの体積はきわめて小さくなる。
【0042】
また、二枚の舌状部2b,2bを、後述するロール31(図4(A)参照)に巻き付け易くなるよう、舌状部2b,2bの根元付近にパンチ加工による折り目2c,2cを入れておいてもよい。
【0043】
[3.分割機、分割工程(分割り工程、引裂き工程)]
図4(A)及び(B)は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の分割機及び分割工程を示す説明図であって、図4(A)は正面図、図3(B)は(A)のB矢視図である。
【0044】
図4(A)及び(B)を参照すると、分割機30は、二枚の舌状部2b,2bがそれぞれ巻き付けられると共に、扁平板2を挟み込む一対のロール(ブレスブレーカーロール)31,31と、一対のロール31,31をそれぞれ回転自在に支持する一対の軸受32,32と、一対のロール31,31にそれぞれ巻き付けられた二枚の舌状部を掴む把持機構33と、把持機構33を介して二枚の舌状部2b,2bを引っ張る動力機構34と、を有している。
【0045】
分割機30は、一対のロール31,31に二枚の舌状部2b,2bをそれぞれ巻き付け、扁平化された管1、すなわち、扁平板2を一対のロール31,31で挟み込み、動力機構34が、把持機構33を介して、二枚の舌状部2b,2bを引き続けることにより、扁平板2が先端部の切れ目から二枚の薄板3,3に分割されていく。なお、後工程として、得られた薄板3を、図2(A)又は(B)に示したプレス機10にかけて、整形を施してもよく、又、薄板3のバリ取りを適宜実行してもよい。
【0046】
[4.除染機、除染工程]
図5は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の除染機を示す説明図である。図5を参照すると、除染機40は、一対の研磨用ブラシ41,41を備え、研磨用ブラシ41,41によって薄板3が機械的に除染されていく。なお、薄板3を化学的に除染してもよい。
【0047】
[5.サーベイ装置、サーベイ工程]
図6は、本発明の一実施例に係る引裂き装置に付設されたサーベイ装置を示す説明図である。図6を参照して、サーベイ装置50は、例えば、GM管プローブ51を備え、平板化された薄板3の放射能レベルを正確に測定することができる。クリアランスレベル以下の薄板3は、再利用に供され、クリアランスレベル以上の薄板3は、再度除染、或いは、低レベル放射性廃棄物として処分される。
【実施例2】
【0048】
実施例1で説明した、本発明の一実施例に係る引裂き装置を用い、原子力発電所の熱交換器(給水加熱器)に装填される細管と同等の仕様を有する管の引裂き試験を行った。図7は、本発明の一実施例に係る引裂き装置の分割機の構成例を示す正面図である。
【0049】
図4及び図7を参照すると、図4に示した分割機30は、さらに、管1がプレスされた扁平板2が挿入され、把持機構33と動力機構34を接続するガイドチューブ35を有している。扁平板2の開先加工により形成される舌状部2b,2bは、一対のロール31,31にそれぞれ巻き付けられた後、把持機構33の両端部に挿通され、把持機構33の両端に設けられたネジ33a,33aによって、把持機構33に留められる。また、動力機構34と、把持機構33を備えるガイドチューブ35の間には、引裂き力を測定するばね計り36を接続した。この分割機30を用いて、扁平化された下記の管1を、動力機構34として小型で汎用のチェーンブロックを用いて、引き裂きにより分割する試験を行った。
【0050】
管1の仕様:
外径 15.875mm
厚さ 1.0mm
長さ 15833mm
材質 SUS304TB
ロール(ブレスブレーカーロール)31の仕様:φ60
【0051】
試験の結果、ガイドチューブ35によって案内された管1は、舌状部2,2を把持する把持機構33を引き上げるだけで、管(扁平板2)1の厚み方向中央から二つに引き裂かれて、二枚の薄板3,3が得られた。
【0052】
図8は、本発明の一実施例に係る引裂き装置による、扁平化された管の引き裂きの原理を説明する図である。図8を参照すると、動力機構34が引裂きに要する“引き力”は、それを、“管を一秒間に1mm長手方向に引き裂くための動力”と定義し、舌状部2,2根元の切欠きによる応力集中のため、根元部分の応力が非常に高くなることを考慮し、分割点をローラ中心線より2度傾いた位置とした場合、材質によって定まる破壊耐力に応じて下記のように計算され、非常に小さいことが確認された。よって、本発明による引裂き装置、特に、分割器はきわめてコンパクトに構成できることが分かった。
【0053】
引き力=655N/mm(SUS304TBの破壊耐力)×1×1×2(断面積)×sin2度(ローラ反力の方向に対する分割力の作用する方向)=46N
【0054】
上式によると、引き力は、管1のサイズには影響されず、管1の肉厚によって左右されることが分かる。また、管1の舌状部2bのロール31に対する巻き付け角度(長さ)は、例えば、15〜180度の前後に設定する。なお、巻き付け角度が180度の場合、図8に示したように、舌状部2bはロール外周の半周にわたってロール31に巻き付き、15度の場合、舌状部2bはロール外周の1/24程度にわたってロール31に巻き付くことになる。また、図4又は図7に示したように、巻き付け角度を180度とすること、すなわち、管1ないし扁平板2が引き込まれる方向と、舌状部2bないし薄板の引き上げ方向とを、上下方向に対向させることにより、引裂き装置全体がコンパクトに構成される。
【0055】
なお、管の肉厚が非常に厚い場合には、図9(A)又は(B)に示すように、管1の分割点先端部に切込み2dを入れたりすること、分割点先端部を削り落として板厚を減少させたりすること(削落とし部2f参照)も有効である。
【0056】
また、SUS管の引裂き試験をロール34の径を変えて行い、さらに、SUS以外の材質の管の引裂き試験を行ったところ、下記に示すように、小さな力で容易に引き裂くことができた。なお、この場合の引裂き速度は、約8m/分(≒130mm/秒)である。
【0057】
表1:SUS304TBの巻付け用のロール径を変えた引裂き試験の結果
ロール径 管径φ×厚みt 引き力kg(N:ばね計り36の指示値)
φ50 φ16×t1.2 200(1960)
φ60 φ16×t1.2 200〜250(1960〜2450)
φ70 φ16×t1.2 200〜250(1960〜2450)
【0058】
表2:種々の材質の管の引裂き試験の結果(ロール径φ60)
材質 管径φ×厚みt 引き力kg(N:ばね計り36の指示値)
C27007(真鍮管) φ19.15×t1.2 300〜350(2940〜3430)
同上 φ19.15×t1.5 400〜450(3920〜4410)
Ti φ19×t1.2 300〜400(2940〜3920)
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、原子力発電所の熱交換器用細管、或いは、同じく原子力発電所で使用される計装用チューブのような細管の廃棄処理、特に、再利用に好適に利用される。
【符号の説明】
【0060】
1 管
2 扁平板
2a 切り落とし片
2b 舌状部
2c 折り目
2d 切込み
2f 削落とし部
3 薄板
10 連続ローラ式のプレス機
11 プレスローラ
12 矯正ローラ
13 断続プレス式のプレス機
14 プレス
15 油圧シリンダ
20 切断機
30 分割機
31,31 一対のロール(ブレスブレーカーロール)
32,32 一対の軸受
33 把持機構
34 動力機構
35 ガイドチューブ
36 ばね計り
40 除染機
41,41 一対の研磨用ブラシ
50 サーベイ装置
51 GM管プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管を処理する装置であって、
前記管を潰して扁平化するプレス機と、
扁平化された前記管の先端部の両隅を切り落として、該先端部を二枚の舌状部に開先加工する切断機と、
前記二枚の舌状部を掴んで引っ張ることにより、扁平化された前記管の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板を形成する分割機と、
を有する、ことを特徴とする、管の引裂き装置。
【請求項2】
前記分割機は、
前記二枚の舌状部がそれぞれ巻き付けられると共に、扁平化された前記管を挟み込む一対のロールと、
前記一対のロールをそれぞれ回転自在に支持する一対の軸受と、
前記一対のロールにそれぞれ巻き付けられた前記二枚の舌状部を掴む把持機構と、
前記把持機構を介して前記二枚の舌状部を引っ張る動力機構と、
を有する、ことを特徴とする請求項1記載の管の引裂き装置。
【請求項3】
放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管を処理する装置であって、
前記管は扁平化され、さらに、該管の先端部は、二枚の舌状部に開先加工され、
前記二枚の舌状部を掴んで引っ張ることにより、扁平化された前記管の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板を形成する分割機、を有する、ことを特徴とする、管の引裂き装置。
【請求項4】
放射性物質を含む又はそれを含む可能性がある流体に晒された管を処理する方法であって、
前記管を潰して扁平化するプレス工程と、
扁平化された前記管の先端部の両隅を切り落として、該先端部を二枚の舌状部に開先加工する開先加工工程と、
前記二枚の舌状部を掴んで引っ張ることにより、扁平化された前記管の幅方向両側を長手方向に引き裂いて二枚の薄板を形成する引裂き工程と、
を含む、ことを特徴とする、管の引裂き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−117924(P2012−117924A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268040(P2010−268040)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)
【出願人】(592207256)株式会社興洋 (1)