原子炉の初装荷炉心
【課題】制御棒操作を簡略化できる原子炉の初装荷炉心を提供する。
【解決手段】原子炉の炉心3(初装荷炉心)では、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である複数の水領域6が形成される。これらの水領域6内には燃料集合体4が装荷されていない。炉心3内で各燃料集合体4は、燃料支持金具によって支持される。炉心3の中央部3aに配置される第1燃料支持金具に形成された冷却水供給通路に設けられた第1オリフィスの圧力損失は、炉心3の周辺部3bに配置される第2燃料支持金具に形成された冷却水供給通路に設けられた第2オリフィスのそれよりも大きくなっている。各水領域6は、炉心3の中央部3aに配置された第1燃料支持金具の真上に形成される。第1サイクルでは、水領域6の作用によって燃料集合体4の中性子無限増倍率が低減され、余剰反応度が制御される。
【解決手段】原子炉の炉心3(初装荷炉心)では、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である複数の水領域6が形成される。これらの水領域6内には燃料集合体4が装荷されていない。炉心3内で各燃料集合体4は、燃料支持金具によって支持される。炉心3の中央部3aに配置される第1燃料支持金具に形成された冷却水供給通路に設けられた第1オリフィスの圧力損失は、炉心3の周辺部3bに配置される第2燃料支持金具に形成された冷却水供給通路に設けられた第2オリフィスのそれよりも大きくなっている。各水領域6は、炉心3の中央部3aに配置された第1燃料支持金具の真上に形成される。第1サイクルでは、水領域6の作用によって燃料集合体4の中性子無限増倍率が低減され、余剰反応度が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の初装荷炉心に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な原子炉の初装荷炉心に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、複数の燃料集合体を原子炉圧力容器内に設けられた炉心に装荷している。これらの燃料集合体は、ウランを含む核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットを充填した複数の燃料棒、これらの燃料棒の下端を支持する下部タイプレート、核燃料棒の上端部を保持する上部タイプレート、及び上部タイプレートに取り付けられて下部タイプレートに向かって伸びる、正方形の角筒であるチャンネルボックスを有している。複数の燃料棒は、相互の間隔を所定幅に保持する燃料スペーサによって束ねられてチャンネルボックス内に配置される。
【0003】
新設の沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられた炉心は初装荷炉心と呼ばれ、この初装荷炉心に装荷された全ての燃料集合体は、燃焼度が0GWd/tの新燃料集合体である。この初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉では、第1サイクルの運転が終了した後、初装荷炉心内の一部の燃料集合体が取り出され、新燃料集合体と交換される。第1サイクルの運転が終了した後に炉心から取り出される複数の燃料集合体は、初装荷炉心に装荷される時点において、初装荷炉心に装荷される全燃料集合体の平均濃縮度よりも低い濃縮度を有している。
【0004】
初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉も1つの運転サイクル(例えば、1年間)に亘って燃料集合体を補給することなしに運転し続けねばならないので、その初装荷炉心は臨界を維持するために必要な量よりも多い核分裂性物質を含んでいる。このため、初装荷炉心は余剰反応度を保有することになり、この余剰反応度を制御するために、沸騰水型原子炉は複数の制御棒を有しており、さらに、初装荷炉心に装荷された燃料集合体に含まれる核燃料棒内の核燃料物質に可燃性毒物を混入している。
【0005】
このような初装荷炉心の一例が特開2008−145359号公報に記載されている。特開2008−145359号公報に記載された初装荷炉心では、周辺部に配置された複数の燃料集合体の核分裂物質の量が、周辺部よりも内側の領域に配置された燃料集合体のそれよりも多くなっている。周辺部よりも内側の領域において、平均濃縮度が低い4体の燃料集合体を有する複数のコントロールセルが配置され、原子炉出力調整用の制御棒がコントロールセルを構成する4体の燃料集合体の間に挿入される。
【0006】
特許第2550381号公報にも初装荷炉心が記載されている。この初装荷炉心は、第1サイクルにおいて周辺部に燃料集合体を配置せず、第2サイクルにおいてその周辺部に複数の燃料集合体を配置する。このように、第1サイクルにおいて初装荷炉心の周辺部に燃料集合体を配置しないので、第1サイクル終了後に炉心から取り出される使用済燃料集合体の体数を低減することができ、初装荷燃料の燃料サイクルコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−145359号公報
【特許文献2】特許第2550381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2008−145359号公報に記載された初装荷炉心では、周辺部に装荷される複数の燃料集合体での核分裂性物質の量を多くし、炉心の平均濃縮度を高めている。初装荷炉心の炉心平均濃縮度を高めると炉心の余剰反応度大きくなるために、可燃性毒物添加量及び制御棒挿入量などを増大することによって炉心の余剰反応度を制御しなければならない。可燃性毒物の添加量の増大により原子炉の経済性は低下し、制御棒挿入量の増大により定検時の制御棒交換数が増大する。
【0009】
特許2550381号公報は、第1サイクルにおいて周辺部に燃料集合体を配置せず、第2サイクルにおいてその周辺部に複数の燃料集合体を配置し、初装荷炉心に装荷する初装荷燃料の燃料サイクルコストを低減している。発明者らは、この技術的思想を踏襲し、初装荷炉心における制御棒の操作の簡略化を目指した。
【0010】
本発明の目的は、制御棒操作を簡略化できる原子炉の初装荷炉心を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、燃料集合体を支持して燃料集合体に冷却水を導く第1冷却水供給通路が形成された複数の第1燃料支持金具が配置される中央領域と、この中央領域を取り囲み第1冷却水供給通路の圧力損失よりも小さな第2冷却水通路が形成され、他の燃料集合体を支持する複数の第2燃料支持金具が配置される周辺領域とを有し、
燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、中央領域内で第1燃料支持金具の真上に形成されていることにある。
【0012】
燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、中央領域内で第1燃料支持金具の真上に形成されているので、この水領域内の冷却水の作用により水領域に隣接する燃料集合体の中性子無限増倍率を低減することができる。このため、炉心の余剰反応度の制御のために、原子炉の運転中に、炉心に挿入する原子炉出力制御用の制御棒の本数を低減することができ、原子炉における制御棒操作を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原子炉における制御棒操作を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉の初装荷炉心の横断面図である。
【図2】図1に示す初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉の構成図である。
【図3】図1に示す初装荷炉心に装荷される燃料集合体の構成図である。
【図4】図1に示す初装荷炉心の中性子検出器の周囲に配置された4体の燃料集合体の横断面図である。
【図5】図1に示す初装荷炉心の1つのセルに配置された4体の燃料集合体の平面図である。
【図6】図1に示す初装荷炉心の中央部に配置される燃料支持金具の縦断面図である。
【図7】図1に示す初装荷炉心の周辺部に配置される燃料支持金具の縦断面図である。
【図8】図1に示す初装荷炉心の中央部に形成されるコントロールセルにおける原子炉出力制御用の制御棒の炉心内への挿入状態を示す説明図である。
【図9】中性子無限増倍率の検討の対象にした3つの異なる燃料集合体体系の横断面図である。
【図10】図9に示す各燃料集合体体系における無限増倍率差分を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例2の原子炉の初装荷炉心の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者らは、種々の検討を重ね、一部の燃料集合体を装荷しないことにより初装荷炉心に装荷する燃料集合体の体数を低減させ、さらに、初装荷炉心における制御棒操作を簡略化できる初装荷炉心の新たな構成を見出した。この検討結果及び新たに見出した初装荷炉心の概要を以下に説明する。
【0016】
発明者らは、初装荷炉心では平衡炉心と比較して、余剰反応度が多いために制御棒挿入量が多いこと、および水が中性子を吸収することに着目して、炉心内に燃料集合体を配置可能な横断面積を有する水領域を炉心内に配置すれば良いとの発想に至った。発明者らが初装荷炉心においてその水領域を配置すればよいとの発想に至る前に、図9に示す炉心の一部である3つの燃料集合体体系について検討した。燃料集合体体系の境界30は、完全反射であり、無限体系となっている。第1の燃料集合体体系を、図9(a)に示す。図9(a)に示す燃料集合体体系では、4体の燃料集合体4が互いに隣接して配置されている。4体の燃料集合体4のうち、図9(a)の紙面上で、左上に位置する1体の燃料集合体4の平均濃縮度は2.0wt%であり、他の3体の燃料集合体4の平均濃縮度は4.0wt%である。図9(a)に示す燃料集合体体系における4体の燃料集合体4の平均濃縮度は3.5wt%である。燃料集合体4内の平均ボイド率は一般的な炉心平均ボイド率である40%であり、図9(a)に示す燃料集合体体系は制御棒が挿入されていない炉心運転状態を模擬している。
【0017】
図9(b)に示す燃料集合体体系は、図9(a)に示す燃料集合体体系と同じ4体の燃料集合体4を有しており、さらに、図9(b)の紙面上で、左上に位置する1体の燃料集合体4に隣接する1本の制御棒5が挿入されている。この燃料体系における4体の燃料集合体のそれぞれの平均濃縮度は、図9(a)に示す燃料集合体体系と同じである。
【0018】
図9(c)に示す燃料集合体体系は、制御棒が挿入されていなくて左上の1体の燃料集合体4が装荷されていなくて、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域6aをその左上の位置に形成している。図9(c)に示す燃料集合体体系において、3体の燃料集合体4の平均濃縮度は4.0wt%である。
【0019】
これらの3つの燃料集合体体系において、発明者らは中性子無限増倍率を求めた。各燃料集合体体系におけるそれぞれの燃料集合体内のボイド率が40%であると仮定して、図9(a)に示す燃料集合体体系の中性子無限増倍率を基準にし、この無限増倍率とそれぞれの燃料集合体体系における中性子無限増倍率の差分を、図10に示す。図9(c)に示す燃料集合体体系における中性子無限増倍率が、図9(b)に示す1本の制御棒が挿入された燃料集合体体系における中性子無限増倍率よりも低下した。この結果、図9(c)に示す燃料集合体体系において形成された、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域6aが、1本の制御棒以上に中性子無限増倍率を低下させる機能を持っていることを、発明者らが新たに見出した。図9(c)に示す燃料集合体体系の中性子無限増倍率が、図9(a)に示す燃料集合体体系のそれに比べて約14%Δkだけ低下し、図9(b)に示す燃料集合体体系に比べても約9%Δkだけ低下する。この結果、原子炉運転時において1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域を初装荷炉心内に形成することによって、炉心の余剰反応度を制御することができ、その余剰反応度を制御するために、原子炉の運転中に制御棒を初装荷炉心に挿入する必要がなくなる。したがって、発明者らは、初装荷炉心において、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域を形成することが初装荷炉心の余剰反応度の制御に有効であることを見出したのである。
【0020】
上記した検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉の初装荷炉心を、図1を用いて説明する。
【0022】
まず、本実施例の初装荷炉心が適用される沸騰水型原子炉の概略の構成を、図1及び図2を用いて説明する。沸騰水型原子炉1は、原子炉圧力容器2内に初装荷炉心である炉心3を設けている。炉心3は、原子炉圧力容器2内に設置された円筒状の炉心シュラウド7によって取り囲まれている。炉心3を覆うシュラウドヘッド10が炉心シュラウド7の上端に設けられ、気水分離器11がシュラウドヘッド10に取り付けられて上方に向かって伸びている。蒸気乾燥器12が気水分離器11の上方に配置される。シュラウドヘッド10、気水分離器11及び蒸気乾燥器12が、原子炉圧力容器2内に配置される。
【0023】
上部格子板27が、シュラウドヘッド10の下方で炉心シュラウド7内に配置され、炉心シュラウド7に取り付けられて炉心3の上端部に位置している。炉心支持板8が、炉心3の下端部に位置して炉心シュラウド7内に配置され、炉心シュラウド7に設置される。複数のインターナルポンプ13が原子炉圧力容器2の底部に取り付けられ、各インターナルポンプ13のインペラが炉心シュラウド7と原子炉圧力容器2の間に形成される環状のダウンカマ14内に配置される。複数の燃料支持金具9が炉心支持板8に設置されている。複数の制御棒案内管15が炉心支持板8の下方で原子炉圧力容器2内に配置される。横断面が十字形をした制御棒5が各制御棒案内管15内にそれぞれ配置され、制御棒5は原子炉圧力容器2の底部に取り付けられた制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に設置された制御棒駆動機構16に連結されている。
【0024】
複数(例えば、872体)の燃料集合体4が炉心3に装荷されている。初装荷炉心である炉心3に装荷された全ての燃料集合体の燃焼度は、炉心3を有する沸騰水型原子炉の運転開始前において、0GWd/tである。872体の燃料集合体4が装荷される炉心3を有する沸騰水型原子炉1では、205本の制御棒5が用いられる。
【0025】
炉心3に装荷される燃料集合体4を、図3を用いて説明する。燃料集合体9は、複数の燃料棒20、上部タイプレート23、下部タイプレート24及びチャンネルボックス22を有する。核分裂性物質(ウラン235)を含む核燃料物質を用いて製造した円筒形状の多数の燃料ペレットが、燃料棒20内に充填されている。各燃料棒20の下端部が下部タイプレート24によって支持され、核燃料棒20の上端部がハンドル23aを設けている上部タイプレート23によって保持される。各燃料棒20が、正方格子状に配置され(図4参照)、燃料棒相互間に所定の間隔が保持されるように複数の燃料スペーサ25で束ねられている。複数の燃料スペーサ25は、燃料集合体4の軸方向に配置される。部分長燃料棒20Aが、図4に示すように、燃料棒20の配列の最外層に隣接する内側の層に配置される。燃料集合体4の横断面の中央部に2本の水ロッド21が隣接して配置され、各燃料棒20がこれらの水ロッド21の周囲を取り囲んでいる(図4参照)。水ロッド21も、下端部が下部タイプレート24で支持され、上端部が上部タイプレートで保持される。複数の燃料スペーサ25によって束ねられた複数の燃料棒20及び水ロッド21は、上端部が上部タイプレート23に取り付けられて下部タイプレート24に向かって伸びるチャンネルボックス22内に配置される。燃料集合体4内の一部の燃料棒20は、燃料ペレットに可燃性毒物を含んでいる。図4において、28は炉心3内に配置された中性子検出器である。
【0026】
4体の燃料集合体20の上端部が、図5に示すように、上部格子板27に形成されるそれぞれの升目内に挿入された状態で、各燃料集合体4のチャンネルボックス22の上端に取り付けられたチャンネルファスナ26によって上部格子板27に押し付けられて保持される。これら4体の燃料集合体4は、1本の制御棒5に隣接して配置され、この制御棒5を取り囲んでいる。1本の制御棒5、及びこの制御棒に隣接して配置された4体の燃料集合体4により1つのセルが形成される。炉心3は複数のセルを含んでいる。
【0027】
炉心支持板8に着脱可能に取り付けられる複数の燃料支持金具9は、炉心3の中央部3aに配置される複数の燃料支持金具9a(図6参照)及び炉心3の周辺部3bに配置される複数の燃料支持金具9b(図7参照)を含んでいる燃料支持金具9a及び9bは実質的に同じ構成を有するので、燃料支持金具9の構成の概略を、燃料支持金具9aを例に挙げて説明する。中央部3aの直径は炉心3の直径の16/17である。燃料支持金具9aは支持金具本体29を有する。支持金具本体29には、横断面が軸心から四方に伸びる十字形をした、制御棒5を挿入する貫通孔31が形成され、この貫通孔31を取り囲むように配置された4つの冷却水供給通路32が形成されている。各冷却水供給通路32の一端は支持金具本体29の上端で開口され、各冷却水供給通路32の他端は支持金具本体29の側面で開口している。オリフィス33aが支持金具本体29の側面付近で各冷却水供給通路32内に設置される。
【0028】
燃料支持金具9bも燃料支持金具9aの上記した構成を有している。しかしながら、燃料支持金具9aと燃料支持金具9bは、一点で相違している。それは、燃料支持金具9aに設けられたオリフィス33aの開口面積が燃料支持金具9bに設けられたオリフィス33bの開口面積よりも小さいことである。換言すれば、燃料支持金具9aのオリフィス33aの圧力損失が燃料支持金具9bのオリフィス33bの圧力損失よりも大きいことである。
【0029】
炉心3の中央部3aに存在する各セル内の4体の燃料集合体4のそれぞれの下部タイプレート24の下端部24aが、燃料支持金具9aの支持金具本体29の上端に形成された各冷却材供給通路31の開口に別々に挿入される。このようにして、炉心3の中央部3aに配置された各燃料集合体4が燃料支持金具9aによって支持される。炉心3の周辺部3bに存在する各セル内の4体の燃料集合体4のそれぞれの下部タイプレート24の下端部24aが、燃料支持金具9bの支持金具本体29の上端に形成された各冷却材供給通路31の開口に別々に挿入される。このようにして、炉心3の周辺部3bに配置された各燃料集合体4が燃料支持金具9bによって支持される。
【0030】
燃料支持金具9aが配置される炉心3の中央部3aに、4つのコントロールセル34が配置される。これらのコントロールセル34は、炉心3の軸心から等距離の位置に配置される。さらに5つの水領域6が中央部3aに配置される。1つの水領域6は炉心3の軸心に配置され、他の4つの水領域6は炉心3の軸心から等距離の位置に配置される。これらの4つの水領域6は、炉心3の横断面において、炉心3の軸心を取り囲む正方形のコーナにそれぞれ位置している。各水領域6は、2つのコントロールセル34を結ぶ、その正方形のそれぞれの一辺の中点の位置に配置される。4つの水領域6が配置される位置は、従来の初装荷炉心においてコントロールセル34が配置されている位置である。
【0031】
コントロールセル34は、原子炉の、原子炉出力が100%である定格運転中に原子炉出力を制御する原子炉出力制御用の制御棒5が挿入されているセルである。コントロールセル34内の4体の燃料集合体4の無限増倍率が、中央部3aにおいてこのコントロールセル34の周囲に存在するコントロールセル34ではない他のセル内の燃料集合体の無限増倍率よりも低くなっている。
【0032】
5つの水領域6は、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である。これらの水領域6は、本実施例の初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉の建設が終了して原子炉圧力容器2内に冷却水が充填される前までは、燃料集合体4の間に形成された、4体の燃料集合体が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の空間である。原子炉圧力容器2内に冷却水が充填されたとき、この冷却水がその空間にも充填され、水領域6が形成される。原子炉圧力容器2内に冷却水が充填された後において、4つの水領域6には、冷却水が存在する。各水領域6内には、燃料集合体が存在しない。
【0033】
沸騰水型原子炉の運転開始後、炉心3から各制御棒5が引き抜かれ、沸騰水型原子炉が未臨界から臨界になる。各制御棒5の引き抜き操作及び後述する挿入操作は、制御棒駆動機構16によって行われる。は、さらに、炉心3内に挿入されている各制御棒5が、徐々に引き抜かれて原子炉出力が上昇し、制御棒の引き抜きによって原子炉出力が、例えば、約60%になったとき、制御棒の引き抜きを停止する。その後において、各インターナルポンプ13の回転数が増大されて炉心3に供給される冷却水流量が増大し、これにより炉心流量が増大して原子炉出力が定格出力(100%)まで上昇する。原子炉出力が定格出力に到達したとき、炉心流量の増加が停止される。
【0034】
このとき、炉心3の中央部3aでは、コントロールセル34以外の全てのセル及び全ての水領域6に配置された全制御棒5が炉心3から全引き抜きされている。中央部3aにおいて炉心3から全引き抜きされた制御棒5のハンドルの上端が、図6に示すように、燃料支持金具9aの上端より下方に位置している。炉心3の周辺部3bでも、全てのセルに配置された全制御棒5が炉心3から全引き抜きされている。周辺部3bにおいて炉心3から全引き抜きされた制御棒5のハンドルの上端も、図7に示すように、燃料支持金具9bの上端より下方に位置している。中央部3aにおける4つのコントロールセル34では、原子炉出力制御用の制御棒5が炉心3内に挿入され、図8に示すように、その制御棒5の上端が燃料支持金具9aの上端よりも上方に位置している。
【0035】
インターナルポンプ13が駆動されることによって、ダウンカマ14内の冷却水が加圧され、炉心3の下方に形成された下部プレナム17を通って炉心3に供給される。具体的には、下部プレナム17に到達した大部分の冷却水は、燃料支持金具9aの各冷却水供給通路32を通って燃料支持金具9aによって支持されたそれぞれの燃料集合体4内に、さらに、燃料支持金具9bの各冷却水供給通路32を通って燃料支持金具9bによって支持されたそれぞれの燃料集合体4内に供給される。各燃料集合体4のチャンネルボックス22内を上昇する冷却水は、燃料棒20及び部分長燃料棒20A内に充填された核分裂性物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、その冷却水の一部が蒸気になる。蒸気及び冷却水を含む気液二相流が各燃料集合体4の上部タイプレート23に形成された貫通孔(図示せず)を通って、炉心3の上方へ排出される。
【0036】
下部プレナム17に到達した残りの冷却水は、各制御棒案内管15に形成された開口部(図示せず)を通って、それぞれの制御棒案内管15内に導かれる。この冷却水は、燃料支持金具9a,9bに形成された貫通孔31を通って、燃料集合体4の相互間に形成される水ギャップ35に供給され、各水ギャップ35内を上昇する。水領域6の真下に存在する燃料支持金具9aにおいても、制御棒案内管15内に流入した冷却水が貫通孔31内に導かれる。この冷却水は、その貫通孔31から水領域6内に供給される。各水領域6及び各水ギャップ35内に供給されたそれぞれの冷却水は、燃料集合体4内から放出される熱によって加熱されて各水領域6及び各水ギャップ35内を上昇する。しかしながら、各水領域6及び各水ギャップ35内を流れる冷却水は、沸騰しない。各水領域6の真下に存在するそれぞれの燃料支持金具9aにおいて、冷却水が冷却水供給通路32を通して水領域6に供給されないように、それらの燃料支持金具9aに形成された冷却水供給通路32の入口が封鎖されている。
【0037】
各水領域6及び各水ギャップ35内を上昇した冷却水は、各水領域6及び各水ギャップ35から排出され、各燃料集合体4から排出された気液二相流に混合される。水領域6及び水ギャップ35から排出された冷却水を含む気液二相流は、気水分離器11内に導かれる。気液二相流に含まれる蒸気が、気水分離器11で冷却水から分離されて蒸気乾燥器12に導かれる。蒸気乾燥器12でさらに水分が除去された蒸気は、主蒸気管18を通ってタービン(図示せず)に供給される。タービンは、蒸気によって回転され、タービンに連結された発電機(図示せず)を回転せる。発電機の回転により、電気が発生する。タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管19を通り原子炉圧力容器2内に供給される。
【0038】
気水分離器11で気液二相流から分離された冷却水は、ダウンカマ14内に導かれ、ダウンカマ14内で給水配管19から供給された給水と混合される。この冷却水は、インターナルポンプ13で加圧され、前述したように、炉心3、すなわち、各燃料集合体4内に供給される。
【0039】
沸騰水型原子炉1の第1サイクルにおける運転の経過に伴って原子炉出力が定格出力よりも低下したときには、炉心流量が増加されて、原子炉出力が定格出力に保持される。しかしながら、炉心流量が100%になったときには、炉心流量を減少させて原子炉出力を約60%より低い所定の原子炉出力まで減少させて制御棒パターンの交換が行われる。この制御パターンの交換において、コントロールセル34内の制御棒5が引き抜かれて原子炉出力が約60%まで上昇される。その後、炉心流量が増加され、原子炉出力が定格出力まで上昇される。核分裂性物質の消費に伴う原子炉出力の定格出力からの低下は、炉心流量の増加によって補償される。再度、炉心流量が100%になったときには、上記したように、制御棒パターン交換が行われる。コントロールセル34内の制御棒5が全引き抜き状態になるまで、制御棒パターン交換が繰り返し行われる。コントロールセル34内の制御棒5が全引き抜き状態になって炉心流量が100%になったとき、第1サイクルでの沸騰水型原子炉1の運転が終了し、全ての制御棒5が炉心3内に全挿入されて沸騰水型原子炉1が停止される。
【0040】
本実施例では、沸騰水型原子炉1の運転時において初装荷炉心の第1サイクルにおける原子炉の余剰反応度の制御は、コントロールセル34内の制御棒5及び燃料集合体4に含まれる可燃性毒物以外に、水領域6内の冷却水を用いて行われる。冷却水が存在する各水領域6は、前述したように、燃料集合体4の中性子無限増倍率を低減するので、従来の初装荷炉心よりもコントロールセルの数を減少でき、その分、原子炉出力制御用の制御棒5の本数も少なくすることができる。このため、原子炉出力制御用の制御棒5の本数が少なくなる分、沸騰水型原子炉1の定格出力運転時におけるコントロールセル34内の原子炉出力制御用の制御棒5の引き抜き操作を、簡略化することができる。
【0041】
本実施例では、第1サイクルで水領域6であったセルを第2サイクルにおいてコントロールセル34にするので、水領域6をコントロールセル34に替えたセルでは、制御棒5の寿命を長くすることができる。すなわち、第1サイクルにおいて各水領域6の位置に配置された各制御棒5は、第1サイクルの運転期間中では炉心3から全引き抜きされた状態になっている。このため、第2サイクルにおいて、水領域6からコントロールセル34に変更されたセルに、実質的に新しい制御棒5が挿入されることになる。
【0042】
本実施例では、第1サイクルにおいて各水領域6に燃料集合体4を配置していないので、第1サイクル終了後に炉心3から取り出される使用済燃料集合体の体数を低減することができ、初装荷燃料の燃料サイクルコストを低減することができる。
【実施例2】
【0043】
本発明の他の実施例である実施例2の原子炉の初装荷炉心を、図11を用いて説明する。
【0044】
本実施例の初装荷炉心である炉心3Aは、実施例1の炉心3において、炉心の軸心に配置された水領域6を除いて、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である水領域6を、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面積が正方形の水領域6Bをセル内で対角線方向に2つ配置した構成を有する。炉心3Aの他の構成は炉心3と同じである。
【0045】
2つの水領域6Bが対角線方向に配置されたセルでは、2つの水領域6Bを結ぶ対角線に直交する他の対角線の方向に、2体の燃料集合体4が配置される。炉心3Aでは、2つの水領域6Bが対角線方向に配置されたセルが8つ形成される。炉心3Aの中心に配置された水領域6は、実施例1における水領域6と同様に、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域を形成している。2つの水領域6Bが対角線方向に配置された4つのセルがコーナに配置されて水領域6を取り囲む正方形の各辺の中点の位置に、コントロールセル34がそれぞれ配置されている。中央部3aの直径は炉心3Aの直径の16/17である。
【0046】
炉心3Aを有する沸騰水型原子炉の定格出力運転時においては、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面積が正方形の2つの水領域6Bが対角線方向に配置されたセルの制御棒5は、炉心3Aから全引き抜きされた状態にある。
【0047】
本実施例は実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例では、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の水領域6の数が炉心3よりも少なくなっており、替りに、2つの水領域6Bが対角線方向に配置された複数のセルが炉心3A内に形成されているので、実施例1よりも炉心の出力分布がより平坦化され、燃料経済性を向上させることができる。
【0048】
炉心3または3Aを有する沸騰水型原子炉では、以下に述べる燃料装荷方法を適用することができる。この燃料装荷方法を、炉心3を対象に説明する。
【0049】
初装荷炉心である炉心3を形成する沸騰水型原子炉1では、沸騰水型原子炉1の運転開始前に、燃焼度が0GWd/tである複数の燃料集合体4が、炉心3に装荷される。これらの燃料集合体4は、炉心3内で、水領域6を形成する領域以外の領域に順次装荷される。水領域6を形成する領域には、燃焼度が0GWd/tである燃料集合体4が装荷されない。このような燃料集合体4の装荷により形成された炉心3を有する沸騰水型原子炉1が、この沸騰水型原子炉1が建設された後の最初の運転サイクルである第1サイクルでの運転が行われる。第1サイクルでの運転が終了して、沸騰水型原子炉1が停止される。沸騰水型原子炉1の停止後において、炉心3内の一部の燃料集合体が原子炉圧力容器2から取り出されて新燃料集合体と交換される。燃料交換のために原子炉圧力容器2から取り出される使用済の燃料集合体4は、第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が低い燃料集合体4である。第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が高い燃料集合体4は、第1サイクルの運転が終了した後に原子炉圧力容器2から取り出されず、次の第2サイクルの運転時においても炉心3内に存在する。
【0050】
第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が低い燃料集合体4の一部は、第1サイクルの運転が終了して炉心3内の燃料集合体4を交換するとき、水領域6内に装荷される。全ての水領域6に、第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が低い燃料集合体4が4体ずつ装荷される。
【0051】
原子炉圧力容器2から取り出された燃料集合体4が第1サイクルの運転中に存在していた炉心3内の位置、及び水領域6に装荷された燃料集合体4が第1サイクルの運転中に存在していた炉心3内の位置に、平均濃縮度が高い燃焼度が0GWd/tである新燃料集合体4がそれぞれ装荷される。
【0052】
以上に述べた燃料集合体4の装荷が終了した後、沸騰水型原子炉1の第2サイクルでの運転が開始される。第1サイクルで炉心3内に形成された4つの水領域6が、第2サイクルでは、周囲の燃料集合体4よりも中性子無限増倍率が小さい4体の燃料集合体4が装荷されたコントロールセル34になる。第2サイクルでは、第1サイクルよりもコントロールセル34の数が増大する。第2サイクルでは、第1サイクルにおいて制御棒5の代替をしていた水領域6が無くなるために、制御棒5の挿入量が増大し、コントロールセル(制御棒で反応度を調整するためのセル)34の数が増加する。
【0053】
炉心3Aを有する沸騰水型原子炉においても、炉心3を有する沸騰水型原子炉に適用した燃料装荷方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…沸騰水型原子炉、2…原子炉圧力容器、3,3A…炉心、4…燃料集合体、5…制御棒、6,6a,6B…水領域、7…炉心シュラウド、8…炉心支持板、9,9a,9b…燃料支持金具、13…インターナルポンプ、15…制御棒案内管、16…制御棒駆動機構、20…燃料棒、22…チャンネルボックス、29…支持金具本体、31…貫通孔、32…冷却水供給通路、33a,33b…オリフィス、35…水ギャップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の初装荷炉心に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な原子炉の初装荷炉心に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、複数の燃料集合体を原子炉圧力容器内に設けられた炉心に装荷している。これらの燃料集合体は、ウランを含む核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットを充填した複数の燃料棒、これらの燃料棒の下端を支持する下部タイプレート、核燃料棒の上端部を保持する上部タイプレート、及び上部タイプレートに取り付けられて下部タイプレートに向かって伸びる、正方形の角筒であるチャンネルボックスを有している。複数の燃料棒は、相互の間隔を所定幅に保持する燃料スペーサによって束ねられてチャンネルボックス内に配置される。
【0003】
新設の沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられた炉心は初装荷炉心と呼ばれ、この初装荷炉心に装荷された全ての燃料集合体は、燃焼度が0GWd/tの新燃料集合体である。この初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉では、第1サイクルの運転が終了した後、初装荷炉心内の一部の燃料集合体が取り出され、新燃料集合体と交換される。第1サイクルの運転が終了した後に炉心から取り出される複数の燃料集合体は、初装荷炉心に装荷される時点において、初装荷炉心に装荷される全燃料集合体の平均濃縮度よりも低い濃縮度を有している。
【0004】
初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉も1つの運転サイクル(例えば、1年間)に亘って燃料集合体を補給することなしに運転し続けねばならないので、その初装荷炉心は臨界を維持するために必要な量よりも多い核分裂性物質を含んでいる。このため、初装荷炉心は余剰反応度を保有することになり、この余剰反応度を制御するために、沸騰水型原子炉は複数の制御棒を有しており、さらに、初装荷炉心に装荷された燃料集合体に含まれる核燃料棒内の核燃料物質に可燃性毒物を混入している。
【0005】
このような初装荷炉心の一例が特開2008−145359号公報に記載されている。特開2008−145359号公報に記載された初装荷炉心では、周辺部に配置された複数の燃料集合体の核分裂物質の量が、周辺部よりも内側の領域に配置された燃料集合体のそれよりも多くなっている。周辺部よりも内側の領域において、平均濃縮度が低い4体の燃料集合体を有する複数のコントロールセルが配置され、原子炉出力調整用の制御棒がコントロールセルを構成する4体の燃料集合体の間に挿入される。
【0006】
特許第2550381号公報にも初装荷炉心が記載されている。この初装荷炉心は、第1サイクルにおいて周辺部に燃料集合体を配置せず、第2サイクルにおいてその周辺部に複数の燃料集合体を配置する。このように、第1サイクルにおいて初装荷炉心の周辺部に燃料集合体を配置しないので、第1サイクル終了後に炉心から取り出される使用済燃料集合体の体数を低減することができ、初装荷燃料の燃料サイクルコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−145359号公報
【特許文献2】特許第2550381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2008−145359号公報に記載された初装荷炉心では、周辺部に装荷される複数の燃料集合体での核分裂性物質の量を多くし、炉心の平均濃縮度を高めている。初装荷炉心の炉心平均濃縮度を高めると炉心の余剰反応度大きくなるために、可燃性毒物添加量及び制御棒挿入量などを増大することによって炉心の余剰反応度を制御しなければならない。可燃性毒物の添加量の増大により原子炉の経済性は低下し、制御棒挿入量の増大により定検時の制御棒交換数が増大する。
【0009】
特許2550381号公報は、第1サイクルにおいて周辺部に燃料集合体を配置せず、第2サイクルにおいてその周辺部に複数の燃料集合体を配置し、初装荷炉心に装荷する初装荷燃料の燃料サイクルコストを低減している。発明者らは、この技術的思想を踏襲し、初装荷炉心における制御棒の操作の簡略化を目指した。
【0010】
本発明の目的は、制御棒操作を簡略化できる原子炉の初装荷炉心を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、燃料集合体を支持して燃料集合体に冷却水を導く第1冷却水供給通路が形成された複数の第1燃料支持金具が配置される中央領域と、この中央領域を取り囲み第1冷却水供給通路の圧力損失よりも小さな第2冷却水通路が形成され、他の燃料集合体を支持する複数の第2燃料支持金具が配置される周辺領域とを有し、
燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、中央領域内で第1燃料支持金具の真上に形成されていることにある。
【0012】
燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、中央領域内で第1燃料支持金具の真上に形成されているので、この水領域内の冷却水の作用により水領域に隣接する燃料集合体の中性子無限増倍率を低減することができる。このため、炉心の余剰反応度の制御のために、原子炉の運転中に、炉心に挿入する原子炉出力制御用の制御棒の本数を低減することができ、原子炉における制御棒操作を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原子炉における制御棒操作を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉の初装荷炉心の横断面図である。
【図2】図1に示す初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉の構成図である。
【図3】図1に示す初装荷炉心に装荷される燃料集合体の構成図である。
【図4】図1に示す初装荷炉心の中性子検出器の周囲に配置された4体の燃料集合体の横断面図である。
【図5】図1に示す初装荷炉心の1つのセルに配置された4体の燃料集合体の平面図である。
【図6】図1に示す初装荷炉心の中央部に配置される燃料支持金具の縦断面図である。
【図7】図1に示す初装荷炉心の周辺部に配置される燃料支持金具の縦断面図である。
【図8】図1に示す初装荷炉心の中央部に形成されるコントロールセルにおける原子炉出力制御用の制御棒の炉心内への挿入状態を示す説明図である。
【図9】中性子無限増倍率の検討の対象にした3つの異なる燃料集合体体系の横断面図である。
【図10】図9に示す各燃料集合体体系における無限増倍率差分を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例2の原子炉の初装荷炉心の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者らは、種々の検討を重ね、一部の燃料集合体を装荷しないことにより初装荷炉心に装荷する燃料集合体の体数を低減させ、さらに、初装荷炉心における制御棒操作を簡略化できる初装荷炉心の新たな構成を見出した。この検討結果及び新たに見出した初装荷炉心の概要を以下に説明する。
【0016】
発明者らは、初装荷炉心では平衡炉心と比較して、余剰反応度が多いために制御棒挿入量が多いこと、および水が中性子を吸収することに着目して、炉心内に燃料集合体を配置可能な横断面積を有する水領域を炉心内に配置すれば良いとの発想に至った。発明者らが初装荷炉心においてその水領域を配置すればよいとの発想に至る前に、図9に示す炉心の一部である3つの燃料集合体体系について検討した。燃料集合体体系の境界30は、完全反射であり、無限体系となっている。第1の燃料集合体体系を、図9(a)に示す。図9(a)に示す燃料集合体体系では、4体の燃料集合体4が互いに隣接して配置されている。4体の燃料集合体4のうち、図9(a)の紙面上で、左上に位置する1体の燃料集合体4の平均濃縮度は2.0wt%であり、他の3体の燃料集合体4の平均濃縮度は4.0wt%である。図9(a)に示す燃料集合体体系における4体の燃料集合体4の平均濃縮度は3.5wt%である。燃料集合体4内の平均ボイド率は一般的な炉心平均ボイド率である40%であり、図9(a)に示す燃料集合体体系は制御棒が挿入されていない炉心運転状態を模擬している。
【0017】
図9(b)に示す燃料集合体体系は、図9(a)に示す燃料集合体体系と同じ4体の燃料集合体4を有しており、さらに、図9(b)の紙面上で、左上に位置する1体の燃料集合体4に隣接する1本の制御棒5が挿入されている。この燃料体系における4体の燃料集合体のそれぞれの平均濃縮度は、図9(a)に示す燃料集合体体系と同じである。
【0018】
図9(c)に示す燃料集合体体系は、制御棒が挿入されていなくて左上の1体の燃料集合体4が装荷されていなくて、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域6aをその左上の位置に形成している。図9(c)に示す燃料集合体体系において、3体の燃料集合体4の平均濃縮度は4.0wt%である。
【0019】
これらの3つの燃料集合体体系において、発明者らは中性子無限増倍率を求めた。各燃料集合体体系におけるそれぞれの燃料集合体内のボイド率が40%であると仮定して、図9(a)に示す燃料集合体体系の中性子無限増倍率を基準にし、この無限増倍率とそれぞれの燃料集合体体系における中性子無限増倍率の差分を、図10に示す。図9(c)に示す燃料集合体体系における中性子無限増倍率が、図9(b)に示す1本の制御棒が挿入された燃料集合体体系における中性子無限増倍率よりも低下した。この結果、図9(c)に示す燃料集合体体系において形成された、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域6aが、1本の制御棒以上に中性子無限増倍率を低下させる機能を持っていることを、発明者らが新たに見出した。図9(c)に示す燃料集合体体系の中性子無限増倍率が、図9(a)に示す燃料集合体体系のそれに比べて約14%Δkだけ低下し、図9(b)に示す燃料集合体体系に比べても約9%Δkだけ低下する。この結果、原子炉運転時において1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域を初装荷炉心内に形成することによって、炉心の余剰反応度を制御することができ、その余剰反応度を制御するために、原子炉の運転中に制御棒を初装荷炉心に挿入する必要がなくなる。したがって、発明者らは、初装荷炉心において、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を有する水領域を形成することが初装荷炉心の余剰反応度の制御に有効であることを見出したのである。
【0020】
上記した検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉の初装荷炉心を、図1を用いて説明する。
【0022】
まず、本実施例の初装荷炉心が適用される沸騰水型原子炉の概略の構成を、図1及び図2を用いて説明する。沸騰水型原子炉1は、原子炉圧力容器2内に初装荷炉心である炉心3を設けている。炉心3は、原子炉圧力容器2内に設置された円筒状の炉心シュラウド7によって取り囲まれている。炉心3を覆うシュラウドヘッド10が炉心シュラウド7の上端に設けられ、気水分離器11がシュラウドヘッド10に取り付けられて上方に向かって伸びている。蒸気乾燥器12が気水分離器11の上方に配置される。シュラウドヘッド10、気水分離器11及び蒸気乾燥器12が、原子炉圧力容器2内に配置される。
【0023】
上部格子板27が、シュラウドヘッド10の下方で炉心シュラウド7内に配置され、炉心シュラウド7に取り付けられて炉心3の上端部に位置している。炉心支持板8が、炉心3の下端部に位置して炉心シュラウド7内に配置され、炉心シュラウド7に設置される。複数のインターナルポンプ13が原子炉圧力容器2の底部に取り付けられ、各インターナルポンプ13のインペラが炉心シュラウド7と原子炉圧力容器2の間に形成される環状のダウンカマ14内に配置される。複数の燃料支持金具9が炉心支持板8に設置されている。複数の制御棒案内管15が炉心支持板8の下方で原子炉圧力容器2内に配置される。横断面が十字形をした制御棒5が各制御棒案内管15内にそれぞれ配置され、制御棒5は原子炉圧力容器2の底部に取り付けられた制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に設置された制御棒駆動機構16に連結されている。
【0024】
複数(例えば、872体)の燃料集合体4が炉心3に装荷されている。初装荷炉心である炉心3に装荷された全ての燃料集合体の燃焼度は、炉心3を有する沸騰水型原子炉の運転開始前において、0GWd/tである。872体の燃料集合体4が装荷される炉心3を有する沸騰水型原子炉1では、205本の制御棒5が用いられる。
【0025】
炉心3に装荷される燃料集合体4を、図3を用いて説明する。燃料集合体9は、複数の燃料棒20、上部タイプレート23、下部タイプレート24及びチャンネルボックス22を有する。核分裂性物質(ウラン235)を含む核燃料物質を用いて製造した円筒形状の多数の燃料ペレットが、燃料棒20内に充填されている。各燃料棒20の下端部が下部タイプレート24によって支持され、核燃料棒20の上端部がハンドル23aを設けている上部タイプレート23によって保持される。各燃料棒20が、正方格子状に配置され(図4参照)、燃料棒相互間に所定の間隔が保持されるように複数の燃料スペーサ25で束ねられている。複数の燃料スペーサ25は、燃料集合体4の軸方向に配置される。部分長燃料棒20Aが、図4に示すように、燃料棒20の配列の最外層に隣接する内側の層に配置される。燃料集合体4の横断面の中央部に2本の水ロッド21が隣接して配置され、各燃料棒20がこれらの水ロッド21の周囲を取り囲んでいる(図4参照)。水ロッド21も、下端部が下部タイプレート24で支持され、上端部が上部タイプレートで保持される。複数の燃料スペーサ25によって束ねられた複数の燃料棒20及び水ロッド21は、上端部が上部タイプレート23に取り付けられて下部タイプレート24に向かって伸びるチャンネルボックス22内に配置される。燃料集合体4内の一部の燃料棒20は、燃料ペレットに可燃性毒物を含んでいる。図4において、28は炉心3内に配置された中性子検出器である。
【0026】
4体の燃料集合体20の上端部が、図5に示すように、上部格子板27に形成されるそれぞれの升目内に挿入された状態で、各燃料集合体4のチャンネルボックス22の上端に取り付けられたチャンネルファスナ26によって上部格子板27に押し付けられて保持される。これら4体の燃料集合体4は、1本の制御棒5に隣接して配置され、この制御棒5を取り囲んでいる。1本の制御棒5、及びこの制御棒に隣接して配置された4体の燃料集合体4により1つのセルが形成される。炉心3は複数のセルを含んでいる。
【0027】
炉心支持板8に着脱可能に取り付けられる複数の燃料支持金具9は、炉心3の中央部3aに配置される複数の燃料支持金具9a(図6参照)及び炉心3の周辺部3bに配置される複数の燃料支持金具9b(図7参照)を含んでいる燃料支持金具9a及び9bは実質的に同じ構成を有するので、燃料支持金具9の構成の概略を、燃料支持金具9aを例に挙げて説明する。中央部3aの直径は炉心3の直径の16/17である。燃料支持金具9aは支持金具本体29を有する。支持金具本体29には、横断面が軸心から四方に伸びる十字形をした、制御棒5を挿入する貫通孔31が形成され、この貫通孔31を取り囲むように配置された4つの冷却水供給通路32が形成されている。各冷却水供給通路32の一端は支持金具本体29の上端で開口され、各冷却水供給通路32の他端は支持金具本体29の側面で開口している。オリフィス33aが支持金具本体29の側面付近で各冷却水供給通路32内に設置される。
【0028】
燃料支持金具9bも燃料支持金具9aの上記した構成を有している。しかしながら、燃料支持金具9aと燃料支持金具9bは、一点で相違している。それは、燃料支持金具9aに設けられたオリフィス33aの開口面積が燃料支持金具9bに設けられたオリフィス33bの開口面積よりも小さいことである。換言すれば、燃料支持金具9aのオリフィス33aの圧力損失が燃料支持金具9bのオリフィス33bの圧力損失よりも大きいことである。
【0029】
炉心3の中央部3aに存在する各セル内の4体の燃料集合体4のそれぞれの下部タイプレート24の下端部24aが、燃料支持金具9aの支持金具本体29の上端に形成された各冷却材供給通路31の開口に別々に挿入される。このようにして、炉心3の中央部3aに配置された各燃料集合体4が燃料支持金具9aによって支持される。炉心3の周辺部3bに存在する各セル内の4体の燃料集合体4のそれぞれの下部タイプレート24の下端部24aが、燃料支持金具9bの支持金具本体29の上端に形成された各冷却材供給通路31の開口に別々に挿入される。このようにして、炉心3の周辺部3bに配置された各燃料集合体4が燃料支持金具9bによって支持される。
【0030】
燃料支持金具9aが配置される炉心3の中央部3aに、4つのコントロールセル34が配置される。これらのコントロールセル34は、炉心3の軸心から等距離の位置に配置される。さらに5つの水領域6が中央部3aに配置される。1つの水領域6は炉心3の軸心に配置され、他の4つの水領域6は炉心3の軸心から等距離の位置に配置される。これらの4つの水領域6は、炉心3の横断面において、炉心3の軸心を取り囲む正方形のコーナにそれぞれ位置している。各水領域6は、2つのコントロールセル34を結ぶ、その正方形のそれぞれの一辺の中点の位置に配置される。4つの水領域6が配置される位置は、従来の初装荷炉心においてコントロールセル34が配置されている位置である。
【0031】
コントロールセル34は、原子炉の、原子炉出力が100%である定格運転中に原子炉出力を制御する原子炉出力制御用の制御棒5が挿入されているセルである。コントロールセル34内の4体の燃料集合体4の無限増倍率が、中央部3aにおいてこのコントロールセル34の周囲に存在するコントロールセル34ではない他のセル内の燃料集合体の無限増倍率よりも低くなっている。
【0032】
5つの水領域6は、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である。これらの水領域6は、本実施例の初装荷炉心を有する沸騰水型原子炉の建設が終了して原子炉圧力容器2内に冷却水が充填される前までは、燃料集合体4の間に形成された、4体の燃料集合体が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の空間である。原子炉圧力容器2内に冷却水が充填されたとき、この冷却水がその空間にも充填され、水領域6が形成される。原子炉圧力容器2内に冷却水が充填された後において、4つの水領域6には、冷却水が存在する。各水領域6内には、燃料集合体が存在しない。
【0033】
沸騰水型原子炉の運転開始後、炉心3から各制御棒5が引き抜かれ、沸騰水型原子炉が未臨界から臨界になる。各制御棒5の引き抜き操作及び後述する挿入操作は、制御棒駆動機構16によって行われる。は、さらに、炉心3内に挿入されている各制御棒5が、徐々に引き抜かれて原子炉出力が上昇し、制御棒の引き抜きによって原子炉出力が、例えば、約60%になったとき、制御棒の引き抜きを停止する。その後において、各インターナルポンプ13の回転数が増大されて炉心3に供給される冷却水流量が増大し、これにより炉心流量が増大して原子炉出力が定格出力(100%)まで上昇する。原子炉出力が定格出力に到達したとき、炉心流量の増加が停止される。
【0034】
このとき、炉心3の中央部3aでは、コントロールセル34以外の全てのセル及び全ての水領域6に配置された全制御棒5が炉心3から全引き抜きされている。中央部3aにおいて炉心3から全引き抜きされた制御棒5のハンドルの上端が、図6に示すように、燃料支持金具9aの上端より下方に位置している。炉心3の周辺部3bでも、全てのセルに配置された全制御棒5が炉心3から全引き抜きされている。周辺部3bにおいて炉心3から全引き抜きされた制御棒5のハンドルの上端も、図7に示すように、燃料支持金具9bの上端より下方に位置している。中央部3aにおける4つのコントロールセル34では、原子炉出力制御用の制御棒5が炉心3内に挿入され、図8に示すように、その制御棒5の上端が燃料支持金具9aの上端よりも上方に位置している。
【0035】
インターナルポンプ13が駆動されることによって、ダウンカマ14内の冷却水が加圧され、炉心3の下方に形成された下部プレナム17を通って炉心3に供給される。具体的には、下部プレナム17に到達した大部分の冷却水は、燃料支持金具9aの各冷却水供給通路32を通って燃料支持金具9aによって支持されたそれぞれの燃料集合体4内に、さらに、燃料支持金具9bの各冷却水供給通路32を通って燃料支持金具9bによって支持されたそれぞれの燃料集合体4内に供給される。各燃料集合体4のチャンネルボックス22内を上昇する冷却水は、燃料棒20及び部分長燃料棒20A内に充填された核分裂性物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、その冷却水の一部が蒸気になる。蒸気及び冷却水を含む気液二相流が各燃料集合体4の上部タイプレート23に形成された貫通孔(図示せず)を通って、炉心3の上方へ排出される。
【0036】
下部プレナム17に到達した残りの冷却水は、各制御棒案内管15に形成された開口部(図示せず)を通って、それぞれの制御棒案内管15内に導かれる。この冷却水は、燃料支持金具9a,9bに形成された貫通孔31を通って、燃料集合体4の相互間に形成される水ギャップ35に供給され、各水ギャップ35内を上昇する。水領域6の真下に存在する燃料支持金具9aにおいても、制御棒案内管15内に流入した冷却水が貫通孔31内に導かれる。この冷却水は、その貫通孔31から水領域6内に供給される。各水領域6及び各水ギャップ35内に供給されたそれぞれの冷却水は、燃料集合体4内から放出される熱によって加熱されて各水領域6及び各水ギャップ35内を上昇する。しかしながら、各水領域6及び各水ギャップ35内を流れる冷却水は、沸騰しない。各水領域6の真下に存在するそれぞれの燃料支持金具9aにおいて、冷却水が冷却水供給通路32を通して水領域6に供給されないように、それらの燃料支持金具9aに形成された冷却水供給通路32の入口が封鎖されている。
【0037】
各水領域6及び各水ギャップ35内を上昇した冷却水は、各水領域6及び各水ギャップ35から排出され、各燃料集合体4から排出された気液二相流に混合される。水領域6及び水ギャップ35から排出された冷却水を含む気液二相流は、気水分離器11内に導かれる。気液二相流に含まれる蒸気が、気水分離器11で冷却水から分離されて蒸気乾燥器12に導かれる。蒸気乾燥器12でさらに水分が除去された蒸気は、主蒸気管18を通ってタービン(図示せず)に供給される。タービンは、蒸気によって回転され、タービンに連結された発電機(図示せず)を回転せる。発電機の回転により、電気が発生する。タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管19を通り原子炉圧力容器2内に供給される。
【0038】
気水分離器11で気液二相流から分離された冷却水は、ダウンカマ14内に導かれ、ダウンカマ14内で給水配管19から供給された給水と混合される。この冷却水は、インターナルポンプ13で加圧され、前述したように、炉心3、すなわち、各燃料集合体4内に供給される。
【0039】
沸騰水型原子炉1の第1サイクルにおける運転の経過に伴って原子炉出力が定格出力よりも低下したときには、炉心流量が増加されて、原子炉出力が定格出力に保持される。しかしながら、炉心流量が100%になったときには、炉心流量を減少させて原子炉出力を約60%より低い所定の原子炉出力まで減少させて制御棒パターンの交換が行われる。この制御パターンの交換において、コントロールセル34内の制御棒5が引き抜かれて原子炉出力が約60%まで上昇される。その後、炉心流量が増加され、原子炉出力が定格出力まで上昇される。核分裂性物質の消費に伴う原子炉出力の定格出力からの低下は、炉心流量の増加によって補償される。再度、炉心流量が100%になったときには、上記したように、制御棒パターン交換が行われる。コントロールセル34内の制御棒5が全引き抜き状態になるまで、制御棒パターン交換が繰り返し行われる。コントロールセル34内の制御棒5が全引き抜き状態になって炉心流量が100%になったとき、第1サイクルでの沸騰水型原子炉1の運転が終了し、全ての制御棒5が炉心3内に全挿入されて沸騰水型原子炉1が停止される。
【0040】
本実施例では、沸騰水型原子炉1の運転時において初装荷炉心の第1サイクルにおける原子炉の余剰反応度の制御は、コントロールセル34内の制御棒5及び燃料集合体4に含まれる可燃性毒物以外に、水領域6内の冷却水を用いて行われる。冷却水が存在する各水領域6は、前述したように、燃料集合体4の中性子無限増倍率を低減するので、従来の初装荷炉心よりもコントロールセルの数を減少でき、その分、原子炉出力制御用の制御棒5の本数も少なくすることができる。このため、原子炉出力制御用の制御棒5の本数が少なくなる分、沸騰水型原子炉1の定格出力運転時におけるコントロールセル34内の原子炉出力制御用の制御棒5の引き抜き操作を、簡略化することができる。
【0041】
本実施例では、第1サイクルで水領域6であったセルを第2サイクルにおいてコントロールセル34にするので、水領域6をコントロールセル34に替えたセルでは、制御棒5の寿命を長くすることができる。すなわち、第1サイクルにおいて各水領域6の位置に配置された各制御棒5は、第1サイクルの運転期間中では炉心3から全引き抜きされた状態になっている。このため、第2サイクルにおいて、水領域6からコントロールセル34に変更されたセルに、実質的に新しい制御棒5が挿入されることになる。
【0042】
本実施例では、第1サイクルにおいて各水領域6に燃料集合体4を配置していないので、第1サイクル終了後に炉心3から取り出される使用済燃料集合体の体数を低減することができ、初装荷燃料の燃料サイクルコストを低減することができる。
【実施例2】
【0043】
本発明の他の実施例である実施例2の原子炉の初装荷炉心を、図11を用いて説明する。
【0044】
本実施例の初装荷炉心である炉心3Aは、実施例1の炉心3において、炉心の軸心に配置された水領域6を除いて、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である水領域6を、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面積が正方形の水領域6Bをセル内で対角線方向に2つ配置した構成を有する。炉心3Aの他の構成は炉心3と同じである。
【0045】
2つの水領域6Bが対角線方向に配置されたセルでは、2つの水領域6Bを結ぶ対角線に直交する他の対角線の方向に、2体の燃料集合体4が配置される。炉心3Aでは、2つの水領域6Bが対角線方向に配置されたセルが8つ形成される。炉心3Aの中心に配置された水領域6は、実施例1における水領域6と同様に、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域を形成している。2つの水領域6Bが対角線方向に配置された4つのセルがコーナに配置されて水領域6を取り囲む正方形の各辺の中点の位置に、コントロールセル34がそれぞれ配置されている。中央部3aの直径は炉心3Aの直径の16/17である。
【0046】
炉心3Aを有する沸騰水型原子炉の定格出力運転時においては、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面積が正方形の2つの水領域6Bが対角線方向に配置されたセルの制御棒5は、炉心3Aから全引き抜きされた状態にある。
【0047】
本実施例は実施例1で生じる効果を得ることができる。さらに、本実施例では、1体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の水領域6の数が炉心3よりも少なくなっており、替りに、2つの水領域6Bが対角線方向に配置された複数のセルが炉心3A内に形成されているので、実施例1よりも炉心の出力分布がより平坦化され、燃料経済性を向上させることができる。
【0048】
炉心3または3Aを有する沸騰水型原子炉では、以下に述べる燃料装荷方法を適用することができる。この燃料装荷方法を、炉心3を対象に説明する。
【0049】
初装荷炉心である炉心3を形成する沸騰水型原子炉1では、沸騰水型原子炉1の運転開始前に、燃焼度が0GWd/tである複数の燃料集合体4が、炉心3に装荷される。これらの燃料集合体4は、炉心3内で、水領域6を形成する領域以外の領域に順次装荷される。水領域6を形成する領域には、燃焼度が0GWd/tである燃料集合体4が装荷されない。このような燃料集合体4の装荷により形成された炉心3を有する沸騰水型原子炉1が、この沸騰水型原子炉1が建設された後の最初の運転サイクルである第1サイクルでの運転が行われる。第1サイクルでの運転が終了して、沸騰水型原子炉1が停止される。沸騰水型原子炉1の停止後において、炉心3内の一部の燃料集合体が原子炉圧力容器2から取り出されて新燃料集合体と交換される。燃料交換のために原子炉圧力容器2から取り出される使用済の燃料集合体4は、第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が低い燃料集合体4である。第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が高い燃料集合体4は、第1サイクルの運転が終了した後に原子炉圧力容器2から取り出されず、次の第2サイクルの運転時においても炉心3内に存在する。
【0050】
第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が低い燃料集合体4の一部は、第1サイクルの運転が終了して炉心3内の燃料集合体4を交換するとき、水領域6内に装荷される。全ての水領域6に、第1サイクルの開始前に炉心に装荷された平均濃縮度が低い燃料集合体4が4体ずつ装荷される。
【0051】
原子炉圧力容器2から取り出された燃料集合体4が第1サイクルの運転中に存在していた炉心3内の位置、及び水領域6に装荷された燃料集合体4が第1サイクルの運転中に存在していた炉心3内の位置に、平均濃縮度が高い燃焼度が0GWd/tである新燃料集合体4がそれぞれ装荷される。
【0052】
以上に述べた燃料集合体4の装荷が終了した後、沸騰水型原子炉1の第2サイクルでの運転が開始される。第1サイクルで炉心3内に形成された4つの水領域6が、第2サイクルでは、周囲の燃料集合体4よりも中性子無限増倍率が小さい4体の燃料集合体4が装荷されたコントロールセル34になる。第2サイクルでは、第1サイクルよりもコントロールセル34の数が増大する。第2サイクルでは、第1サイクルにおいて制御棒5の代替をしていた水領域6が無くなるために、制御棒5の挿入量が増大し、コントロールセル(制御棒で反応度を調整するためのセル)34の数が増加する。
【0053】
炉心3Aを有する沸騰水型原子炉においても、炉心3を有する沸騰水型原子炉に適用した燃料装荷方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…沸騰水型原子炉、2…原子炉圧力容器、3,3A…炉心、4…燃料集合体、5…制御棒、6,6a,6B…水領域、7…炉心シュラウド、8…炉心支持板、9,9a,9b…燃料支持金具、13…インターナルポンプ、15…制御棒案内管、16…制御棒駆動機構、20…燃料棒、22…チャンネルボックス、29…支持金具本体、31…貫通孔、32…冷却水供給通路、33a,33b…オリフィス、35…水ギャップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体を支持して前記燃料集合体に冷却水を導く第1冷却水供給通路が形成された複数の第1燃料支持金具が配置される中央領域と、前記中央領域を取り囲み前記第1冷却水供給通路の圧力損失よりも小さな第2冷却水通路が形成され、他の前記燃料集合体を支持する複数の第2燃料支持金具が配置される周辺領域とを有し、
前記燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、前記中央領域内で前記第1燃料支持金具の真上に形成されていることを特徴とする原子炉の初装荷炉心。
【請求項2】
前記水領域が、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である請求項1記載の原子炉の初装荷炉心。
【請求項3】
1つの対角線の方向に配置された2体の前記燃料集合体、及びその対角線と直交する他の対角線の方向に配置された、1体の前記燃料集合体が配置可能な横断面積を占有する、横断面積が正方形の2つの前記水領域を形成している複数のセルが、前記中央領域内で前記第1燃料支持金具の真上に形成されている請求項1に記載の原子炉の初装荷炉心。
【請求項4】
周囲に存在する前記燃料集合体の中性子無限増倍率よりも小さな中性子無限増倍率を有する4体の前記燃料集合体が配置されて原子炉出力制御用の制御棒が挿入される複数のコントロールセルが、前記中央領域に配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子炉の初装荷炉心。
【請求項5】
燃料集合体を支持して前記燃料集合体に冷却水を導く第1冷却水供給通路が形成された複数の第1燃料支持金具が配置される中央領域と、前記中央領域を取り囲み前記第1冷却水供給通路の圧力損失よりも小さな第2冷却水通路が形成され、他の前記燃料集合体を支持する複数の第2燃料支持金具が配置される周辺領域とを有し、前記燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、前記中央領域内で前記第1燃料支持金具の真上に形成されている炉心を備えた原子炉の燃料装荷方法であって、
前記水領域に前記燃料集合体を装荷しない状態で1つの運転サイクルの運転を行って前記原子炉の運転を停止した後に、前記炉心内の一部の燃料集合体である使用済燃料集合体を前記原子炉外に搬出し、前記炉心内に存在する前記燃料集合体のうち中性子無限増倍率が小さい前記燃料集合体を、前記水領域に装荷し、前記原子炉から搬出された前記使用済燃料集合体が前記運転サイクルにおいて存在していた前記炉心内の第1位置、及び前記水領域内に装荷された前記燃料集合体が前記運転サイクルにおいて存在していた前記炉心内の第2位置に、燃焼度が0GWd/tである新燃料集合体を装荷することを特徴とする原子炉の燃料装荷方法。
【請求項1】
燃料集合体を支持して前記燃料集合体に冷却水を導く第1冷却水供給通路が形成された複数の第1燃料支持金具が配置される中央領域と、前記中央領域を取り囲み前記第1冷却水供給通路の圧力損失よりも小さな第2冷却水通路が形成され、他の前記燃料集合体を支持する複数の第2燃料支持金具が配置される周辺領域とを有し、
前記燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、前記中央領域内で前記第1燃料支持金具の真上に形成されていることを特徴とする原子炉の初装荷炉心。
【請求項2】
前記水領域が、4体の燃料集合体4が配置可能な横断面積を占有する、横断面が正方形の領域である請求項1記載の原子炉の初装荷炉心。
【請求項3】
1つの対角線の方向に配置された2体の前記燃料集合体、及びその対角線と直交する他の対角線の方向に配置された、1体の前記燃料集合体が配置可能な横断面積を占有する、横断面積が正方形の2つの前記水領域を形成している複数のセルが、前記中央領域内で前記第1燃料支持金具の真上に形成されている請求項1に記載の原子炉の初装荷炉心。
【請求項4】
周囲に存在する前記燃料集合体の中性子無限増倍率よりも小さな中性子無限増倍率を有する4体の前記燃料集合体が配置されて原子炉出力制御用の制御棒が挿入される複数のコントロールセルが、前記中央領域に配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子炉の初装荷炉心。
【請求項5】
燃料集合体を支持して前記燃料集合体に冷却水を導く第1冷却水供給通路が形成された複数の第1燃料支持金具が配置される中央領域と、前記中央領域を取り囲み前記第1冷却水供給通路の圧力損失よりも小さな第2冷却水通路が形成され、他の前記燃料集合体を支持する複数の第2燃料支持金具が配置される周辺領域とを有し、前記燃料集合体が装荷されていない複数の水領域が、前記中央領域内で前記第1燃料支持金具の真上に形成されている炉心を備えた原子炉の燃料装荷方法であって、
前記水領域に前記燃料集合体を装荷しない状態で1つの運転サイクルの運転を行って前記原子炉の運転を停止した後に、前記炉心内の一部の燃料集合体である使用済燃料集合体を前記原子炉外に搬出し、前記炉心内に存在する前記燃料集合体のうち中性子無限増倍率が小さい前記燃料集合体を、前記水領域に装荷し、前記原子炉から搬出された前記使用済燃料集合体が前記運転サイクルにおいて存在していた前記炉心内の第1位置、及び前記水領域内に装荷された前記燃料集合体が前記運転サイクルにおいて存在していた前記炉心内の第2位置に、燃焼度が0GWd/tである新燃料集合体を装荷することを特徴とする原子炉の燃料装荷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−50401(P2013−50401A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188882(P2011−188882)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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