説明

原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法

【課題】炉外からのアクセスが可能で、セーフエンドやサーマルスリーブの交換、ならびにノズルとセーフエンドの溶接部内面の残留応力改善処理ができる補修方法を提供する。
【解決手段】サーマルスリーブ5の溶接開先5aの外径よりも大きい内径を有する溶接開先4aを内周部に突設した新規セーフエンド2を準備し、既設セーフエンド2をノズル1、サーマルスリーブ5から離脱させ、ノズル1と新規セーフエンド2にそれぞれ突合せ溶接開先を形成して、ノズル1と新規セーフエンド2を突合せ溶接し、炉外から新規セーフエンド2の内側にサーマルスリーブ5を挿入して、新規セーフエンド2の開先とサーマルスリーブ5の開先とを突合せ溶接することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BWR原子炉圧力容器に係り、特にその原子炉圧力容器のノズルとセーフエンドの溶接継手部の応力腐食割れ発生時のセーフエンドおよびサーマルスリーブの取替え、または応力腐食割れを防止するために材料を改善したセーフエンドおよびサーマルスリーブへの交換の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、原子炉圧力容器の上蓋を開放した状態での縦断面図である。同図に示すように、原子炉圧力容器10の周壁に設けられたノズル1には、炉内側に流体を流すためのサーマルスリーブ5と呼ばれる内管を有するものがある。このサーマルスリーブ5は炉内配管11との取り合い調整が必要なため、プラント建設時においては、作業性を考慮して、炉内側よりセーフエンド2の内側に溶接で取り付けられている。図中の符号19は炉心シュラウド、20はジェットポンプである。
【0003】
なお、本明細書で記述するセーフエンドは、ノズルと炉外配管を接続するための短管を指している。
前記ノズル1の代表的な例として、炉水を炉内で循環させるためのループの経路である再循環水入口ノズル、炉内に給水する給水ノズル、緊急時に炉心に注水する炉心スプレイノズル等がある。
【0004】
旧い原子炉圧力容器では、前記ノズル1とセーフエンド2の溶接部、ならびにセーフエンド2とサーマルスリーブ5の溶接部は、応力腐食割れの感受性をもつ材料が使われていることがあり、溶接部の引張残留応力により、長期間の運転中に、その内側に応力腐食割れ(SCC)が発生することがある。この場合、セーフエンド2およびサーマルスリーブ5を取り外し、耐SCC性の優れた材料で製作されたセーフエンド2およびサーマルスリーブ5に交換することが必要である。
【0005】
ところが、サーマルスリーブ5の先には炉内配管11が接続されており、しかも、炉内は放射線が強い空間であるため、ノズル1へのアクセスは炉外からとなるが、炉内からサーマルスリーブ5を挿入しないと交換ができない次のような理由がある。
【0006】
ノズル1とセーフエンド2の溶接部は高い品質を確保するために、溶接後に内外面を仕上げて検査を行っている。その内面の仕上げと検査を行うためには、サーマルスリーブ5がない状態でないと行えない。
【0007】
さらに、サーマルスリーブ5とセーフエンド2の溶接部は、クレビス(欠陥部)の形成を防ぐために完全溶け込みの突き合わせ溶接を行う必要があり、セーフエンド2は内面に溝を加工し、サーマルスリーブ5との突合せ溶接が可能な構造とし、かつ、突合せ溶接の位置についてはセーフエンド2とノズル1の溶接部が内面側から検査できるように、セーフエンド2とノズル1の溶接位置よりも炉外配管側になるような構造としている。
【0008】
ソケット溶接のような不完全溶け込み溶接であると、クレビス(欠陥部)の部分に隙間腐食が発生し、応力腐食割れ発生の可能性が高まるのを防止するためと、振動による疲労を防止するために、前述のような構造を採用している。
【0009】
従って、セーフエンド2は内面に溝を形成し、サーマルスリーブ5との突合せ溶接が可能な構造とし、かつ、プラント建設時の突合せ溶接位置については、据付性およびセーフエンド2とノズル1の溶接部が内面側から検査できるように、セーフエンド2とノズル1の溶接位置よりも配管側(外側)になるように決定している。
【0010】
このようなことから従来は、セーフエンド2の取り付け後に内面を仕上げて検査し、サーマルスリーブ5を取り付けるためには、シュラウド取替のような炉内機器交換の大工事のときに行うしか方法がなかった。
【0011】
原子力圧力容器におけるセーフエンドの取替え方法に関しては、例えば下記のような特許文献を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−192995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、最近の応力腐食割れ対策として、残留応力の改善が重要視されるようになっている。それは、例えばSUS316のような鋭敏化を起こし難い材料でも応力腐食割れを起こす事例が発生し、材料の改善だけでなく応力の改善も必要と考えられたためである。
【0014】
この残留応力の改善方法として、研磨やピーニングなどがある。研磨やピーニングをノズルとセーフエンドの溶接部の内面の残留応力改善方法として適用するためには、溶接後にアクセスできないといけない。
【0015】
すなわち、前述のことから、セーフエンドとサーマルスリーブの交換は、先にセーフエンドを取り付けて溶接部内面を仕上げや検査、残留応力改善施工など行った後、サーマルスリーブを取り付ける必要があるが、従来は炉外からのみアクセスして交換する方法がなかった。
【0016】
本発明の目的は、このような課題を解決するために、炉外からのアクセスが可能で、セーフエンドやサーマルスリーブの交換、ならびにノズルとセーフエンドの溶接部内面の残留応力改善処理ができる原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
原子炉圧力容器の周壁の所定位置にノズルが設けられ、そのノズルにセーフエンドを介して炉外配管が接続され、前記セーフエンドの内側にサーマルスリーブが配置されて、そのサーマルスリーブの一方の端部が前記セーフエンドの内周部に溶接された原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法を対象とするものである。
【0018】
そして、前記サーマルスリーブの溶接開先の外径よりも大きい内径を有するサーマルスリーブ取り付け溶接開先を内周部に突設した新規のセーフエンドを準備する工程と、
既設のセーフエンドを前記ノズル、炉外配管ならびにサーマルスリーブから切断して離脱させるセーフエンド離脱工程と、
前記ノズルと前記新規のセーフエンドとの継手部にそれぞれ突合せ溶接開先を形成して、前記ノズルと前記新規のセーフエンドを突合せ溶接を行なうノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、
前記原子炉圧力容器の炉外から前記新規のセーフエンドの内側にサーマルスリーブを挿入して、前記新規のセーフエンドのサーマルスリーブ取り付け溶接開先とサーマルスリーブの溶接開先とを突合せ溶接する新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程とを含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記新規のセーフエンドの内側に挿入して、そのセーフエンドと突合せ溶接するサーマルスリーブも新規のサーマルスリーブであることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記サーマルスリーブとセーフエンドの溶接部が前記ノズルとセーフエンドの溶接部よりも原子炉圧力容器の外側にあって、
前記ノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、前記新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程の間に、
前記ノズルと新規のセーフエンドとの突合せ溶接部の内面に残留応力改善処理を行なう残留応力改善処理工程を追加したことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第4の手段は前記第1または第2の手段において、
前記サーマルスリーブとセーフエンドの溶接部が前記ノズルとセーフエンドの溶接部よりも原子炉圧力容器の外側にあって、
前記ノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、前記新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程の間に、
前記ノズルと新規のセーフエンドとの突合せ溶接部の内面に耐食肉盛溶接を行なう耐食肉盛溶接工程を追加したことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第5の手段は前記第3の手段において、
前記耐食肉盛溶接工程と、前記新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程の間に、
前記耐食肉盛溶接部の内面に残留応力改善処理を行なう残留応力改善処理工程を追加したことを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第6の手段は、
一方の開口部に溶接開先を有する新規のサーマルスリーブを準備する工程と、
既設のサーマルスリーブをサーマルエンドから切断して離脱させるサーマルエンド離脱工程と、
前記既設のセーフエンドの内周部にテンパービードによる肉盛溶接により、前記新規のサーマルスリーブの溶接開先の外径よりも大きい内径を有するサーマルスリーブ取り付け溶接開先を突設する工程と、
前記原子炉圧力容器の炉外から前記既設のセーフエンドの内側に前記新規のサーマルスリーブを挿入して、前記既設のセーフエンドのサーマルスリーブ取り付け溶接開先と前記新規のサーマルスリーブの溶接開先とを突合せ溶接するセーフエンド・新規サーマルスリーブ突合せ溶接工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は前述したような構成になっており、炉内機器(炉心シュラウド等)を交換することなく、炉外からのアクセスのみでセーフエンドやサーマルスリーブの交換、ならびにノズルとセーフエンドの溶接部内面の残留応力改善処理ができるセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係るノズル、セーフエンドならびにサーマルスリーブ付近の断面図である。
【図2】サーマルスリーブをセーフエンドに溶接するまでの経時的な状態を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例で用いるインサートリングの一部斜視図である。
【図4】本発明の実施例1において、新規のサーマルスリーブを取り付けるまでの工程を示す工程図である。
【図5】本発明の実施例2に係るノズル、セーフエンドならびにサーマルスリーブ付近の断面図である。
【図6】本発明の実施例3に係るノズルならびにセーフエンド付近の断面図である。
【図7】本発明の対象機器である原子炉圧力容器の上蓋を開放した状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は前述のように、原子炉圧力容器の周壁の所定位置にノズルが設けられ、そのノズルにセーフエンドを介して炉外配管が接続され、前記セーフエンドの内側にサーマルスリーブが配置されて、そのサーマルスリーブの一方の端部が前記セーフエンドの内周部に溶接された原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
前記サーマルスリーブの溶接開先の外径よりも大きい内径を有するサーマルスリーブ取り付け溶接開先を内周部に突設した新規のセーフエンドを準備する工程と、
既設のセーフエンドを前記ノズル、炉外配管ならびにサーマルスリーブから切断して離脱させるセーフエンド離脱工程と、
前記ノズルと前記新規のセーフエンドとの継手部にそれぞれ突合せ溶接開先を形成して、前記ノズルと前記新規のセーフエンドを突合せ溶接を行なうノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、
前記原子炉圧力容器の炉外から前記新規のセーフエンドの内側にサーマルスリーブを挿入して、前記新規のセーフエンドのサーマルスリーブ取り付け溶接開先とサーマルスリーブの溶接開先とを突合せ溶接する新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程と
を含むことを特徴とするものである。
【0027】
これによって、シュラウド取替工事なしでも、セーフエンドの取り付け後にセーフエンド溶接部内面を手入れし、応力改善処理を施すことができ、サーマルスリーブをセーフエンドに突合せ溶接することができる。
次に本発明の各実施例を図面とともに説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の実施例1に係るノズル、セーフエンドならびにサーマルスリーブ付近の断面図である。
【0029】
図1に示すように、圧力容器1の周壁の所定の位置にはノズル1が取り付けられ、そのノズル1の開先にはセーフエンド2の一方の開先が突合せ溶接されている。また、セーフエンド2の内周部の所定の位置にはサーマルスリーブ付け根部4が突設され、このサーマルスリーブ付け根部4にサーマルスリーブ5の一方の開先5aが突合せ溶接されている。さらに、サーマルスリーブ5の他方の開先5bには炉内配管11が溶接されている。
【0030】
図中の符号の3はノズル1とセーフエンド2の溶接部、6はセーフエンド2とサーマルスリーブ5の溶接部、14はセーフエンド2の内面に形成された溝、15はサーマルスリーブ5と炉内配管11の溶接部である。
【0031】
同図に示すように、ノズル1とセーフエンド2の溶接部3が内面から検査、あるいはピーニングや研磨などの残留応力改善処理ができるように、ノズル1とセーフエンド2の溶接部3よりも外側に前記サーマルスリーブ付け根部4が突設されている。また、セーフエンド2とサーマルスリーブ5の溶接は、完全溶け込みができる突合せ溶接となっている。
【0032】
図2(a),(b),(c)は、サーマルスリーブ5をセーフエンド2に溶接するまでの経時的な状態を示す拡大断面図である。
図2(a)に示すように、セーフエンド2の内周部の所定の位置に若干内側に向けて傾斜するようにして突出したサーマルスリーブ付け根部4が設けられ、その付け根部4の内周部が開先4aとなっている。
【0033】
本実施例では新規なセーフエンド2に交換するのに伴って、サーマルスリーブ5も新規なものに交換する例を示しており、新規なサーマルスリーブ5は炉外からこのセーフエンド2を通して矢印方向に挿入するため、その挿入に支障が無いように前記開先4aの内周面はセーフエンド2の軸方向に沿ってストレートに延びている。
【0034】
一方、サーマルスリーブ5の挿入方向後端部に設けられた開先5aは図2(a)に示すように、サーマルスリーブ5の径方向外側に若干突出するように変形している。サーマルスリーブ5がセーフエンド2を通して挿入できるように、セーフエンド2の開先4aの内周面の内径dsはサーマルスリーブ5の開先5aの外径dtよりも若干大きく設計されている(ds>dt)。また、付け根部4を内側に向けて若干傾斜するように設けられているので、その付け根部4の案内によりサーマルスリーブ5の挿入がスムーズに行われる。
【0035】
後述するようにサーマルスリーブ5をセーフエンド2の所定の位置まで挿入すると、図2(b)に示すように、セーフエンド2の開先4aの内周面とサーマルスリーブ5の開先5aの後端面が略直交するように配置され、両開先4a,5aによって囲まれる断面形状が台形(あるいは三角形)をした環溝状の溶接空間16が形成される。
【0036】
サーマルスリーブ5を挿入後、この溶接空間16の奥側にインサートリング17が挿入、設置される。このインサートリング17は図3に示すように断面形状が台形(本実施例)あるいは三角形をした環状のもので、溶接空間16の奥側に設置すると、インサートリング17の一方の周面がセーフエンド2の開先4aの内周面に密着し、インサートリング17の他方の周面がサーマルスリーブ5の開先5aの後端面に密着して、溶接空間16の奥側の開口(隙間)を閉塞している(図2(b)参照)。
【0037】
このインサートリング17の設置後、セーフエンド2の開先4aとサーマルスリーブ5の開先5aを突合せ溶接する。なお、インサートリング17は溶接材料と同じ材料で構成されているから、溶接時にインサートリング17は加熱溶融され、初層、裏波を形成し、最終的には図2(c)に示すように断面形状が台形(本実施例)あるいは三角形をした環状の溶接部6の一部となり、セーフエンド2とサーマルスリーブ5を確実に溶接することができる。
【0038】
図4は、新規のサーマルスリーブ5を取り付けるまでの工程を示す工程図である。
同図に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1で既設の炉外配管7(図5参照)を切断、離脱(除去)させ、S2で既設のセーフエンド2をノズル1から切断、離脱させて、S3で既設のサーマルスリーブ5を切断、離脱させる。
【0039】
次にS4でノズル1と新規のセーフエンド2を突合せ溶接し、S5でノズル1と新規のセーフエンド2の溶接部3の内面をグラインダなどで機械的に仕上げ、その溶接部3に対してピーニングや研磨などの残留応力改善処理を施す。
【0040】
次いで図2(a)に示すように、開先5aの外径(dt)がセーフエンド2の付け根部4の内径(ds)よりも小さい新規のサーマルスリーブ5をセーフエンド2の内側から矢印方向に挿入し、セーフエンド2の付け根部4とサーマルスリーブ5の開先5aを突合せ溶接して、新規のサーマルスリーブ5の取り付けを終了する。
【実施例2】
【0041】
図5は、本発明の実施例2に係るノズル、セーフエンドならびにサーマルスリーブ付近の要部拡大断面図である。
【0042】
本実施例は、セーフエンド2が例えばSUS316ステンレス鋼のような鋭敏化を起こし難い材料であって、かつ、セーフエンド2とサーマルスリーブ5の間の溝14(隙間)が比較的狭い場合を示す。
【0043】
同図に示すように、交換した新規のセーフエンド2をノズル1に突合せ溶接した後、旧溶接部バタリング9に例えば82合金などの材料からなる耐食肉盛12を施し、その耐食肉盛12にピーニングや研磨等の残留応力改善を行う。その後に、サーマルスリーブ5を前記実施例1と同様に炉外から挿入して、サーマルスリーブ5の開先5aとセーフエンド2の付け根部4を突合せ溶接する。セーフエンド2とサーマルスリーブ5の溶接部6の断面形状は前記実施例1と同じく台形あるいは三角形をして、それが周方向に環状に延びている。
【0044】
図中の符号7は炉外配管で、配管溶接部8を介してセーフエンド2に取り付けられている。また符号18は、SCC感受性のある旧溶接部バタリング9を炉水から遮断するためにノズル1の内面に形成された耐食肉盛部である。
【0045】
なお、新規のサーマルスリーブ5を取り付けるまでの工程は実施例1で述べた工程(図4参照)とほぼ同じである。
【実施例3】
【0046】
図6は、本発明の実施例3に係るノズルならびにセーフエンド付近の要部拡大断面図である。本実施例は、セーフエンド2がフェライト鋼からなり、サーマルスリーブ5のみ交換する場合を示している。
【0047】
既設のセーフエンド2をそのまま残し、既設のサーマルスリーブ5を前記セーフエンド2から切断して離脱させる。
【0048】
しかる後に同図に示すように、既設のセーフエンド2の内周部にテンパ―ビード溶接によりテンパ―ビード肉盛溶接部13を設けて、セーフエンド2の内側に突出した付け根部4とする。そのテンパ―ビード肉盛溶接部13(付け根部4)を所定形状の突合せ溶接開先4aに加工する。この開先4aの内径dsは、前記実施例1と同様にサーマルスリーブ5(図示せず)の開先5aの外径dtよりも若干大きく設計されている(ds>dt)。
【0049】
このテンパ―ビード肉盛溶接部13の内側を通って交換する新規のサーマルスリーブ5(図示せず)が挿入されて、セーフエンド2側のテンパ―ビード肉盛溶接部13に突合せ溶接することにより、サーマルスリーブ5がセーフエンド2に取り付けられる。
【0050】
なお、前記実施例2,3においても、セーフエンド2とサーマルスリーブ5の溶接には実施例1と同様にインサートリング17が使用される。
【符号の説明】
【0051】
1・・・ノズル、
2・・・セーフエンド、
3・・・ノズルとセーフエンドの溶接部、
4・・・付け根部、
4a・・・付け根部の開先、
5・・・サーマルスリーブ、
5a,5b・・・サーマルスリーブの開先、
6・・・セーフエンドとサーマルスリーブの溶接部、
7・・・炉外配管、
8・・・配管溶接部、
9・・・既設バタリング、
10・・・原子炉圧力容器、
11・・・炉内配管、
12・・・耐食肉盛、
13・・・テンパービード肉盛溶接部、
14・・・溝、
15・・・サーマルスリーブと炉内配管の溶接部、
16・・・溶接空間、
17・・・インサートリング、
18・・・耐食肉盛部、
19・・・炉心シュラウド、
20・・・ジェットポンプ、
ds・・・セーフエンドの付け根部の開先内周面の内径、
dt・・・サーマルスリーブの開先の外径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の周壁の所定位置にノズルが設けられ、そのノズルにセーフエンドを介して炉外配管が接続され、前記セーフエンドの内側にサーマルスリーブが配置されて、そのサーマルスリーブの一方の端部が前記セーフエンドの内周部に溶接された原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
前記サーマルスリーブの溶接開先の外径よりも大きい内径を有するサーマルスリーブ取り付け溶接開先を内周部に突設した新規のセーフエンドを準備する工程と、
既設のセーフエンドを前記ノズル、炉外配管ならびにサーマルスリーブから切断して離脱させるセーフエンド離脱工程と、
前記ノズルと前記新規のセーフエンドとの継手部にそれぞれ突合せ溶接開先を形成して、前記ノズルと前記新規のセーフエンドを突合せ溶接を行なうノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、
前記原子炉圧力容器の炉外から前記新規のセーフエンドの内側にサーマルスリーブを挿入して、前記新規のセーフエンドのサーマルスリーブ取り付け溶接開先とサーマルスリーブの溶接開先とを突合せ溶接する新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程と
を含むことを特徴とする原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
前記新規のセーフエンドの内側に挿入して、そのセーフエンドと突合せ溶接するサーマルスリーブも新規のサーマルスリーブであることを特徴とする原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
前記サーマルスリーブとセーフエンドの溶接部が前記ノズルとセーフエンドの溶接部よりも原子炉圧力容器の外側にあって、
前記ノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、前記新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程の間に、
前記ノズルと新規のセーフエンドとの突合せ溶接部の内面に残留応力改善処理を行なう残留応力改善処理工程を追加したことを特徴とする原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
前記サーマルスリーブとセーフエンドの溶接部が前記ノズルとセーフエンドの溶接部よりも原子炉圧力容器の外側にあって、
前記ノズル・新規セーフエンド突合せ溶接工程と、前記新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程の間に、
前記ノズルと新規のセーフエンドとの突合せ溶接部の内面に耐食肉盛溶接を行なう耐食肉盛溶接工程を追加したことを特徴とする原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法。
【請求項5】
請求項3に記載の原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
前記耐食肉盛溶接工程と、前記新規セーフエンド・サーマルスリーブ突合せ溶接工程の間に、
前記耐食肉盛溶接部の内面に残留応力改善処理を行なう残留応力改善処理工程を追加したことを特徴とする原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法。
【請求項6】
原子炉圧力容器の周壁の所定位置にノズルが設けられ、そのノズルにセーフエンドを介して炉外配管が接続され、前記セーフエンドの内側にサーマルスリーブが配置されて、そのサーマルスリーブの一方の端部が前記セーフエンドの内周部に溶接された原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法において、
一方の開口部に溶接開先を有する新規のサーマルスリーブを準備する工程と、
既設のサーマルスリーブをサーマルエンドから切断して離脱させるサーマルエンド離脱工程と、
前記既設のセーフエンドの内周部にテンパービードによる肉盛溶接により、前記新規のサーマルスリーブの溶接開先の外径よりも大きい内径を有するサーマルスリーブ取り付け溶接開先を突設する工程と、
前記原子炉圧力容器の炉外から前記既設のセーフエンドの内側に前記新規のサーマルスリーブを挿入して、前記既設のセーフエンドのサーマルスリーブ取り付け溶接開先と前記新規のサーマルスリーブの溶接開先とを突合せ溶接するセーフエンド・新規サーマルスリーブ突合せ溶接工程と
を含むことを特徴とする原子炉圧力容器のセーフエンド・サーマルスリーブの補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−257182(P2011−257182A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130055(P2010−130055)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)