説明

原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュール

【課題】原子炉格納容器電気配線貫通部の電線交換における耐圧漏洩試験を排除することができ、気密性を維持し続けたままで電線を交換することができる原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】原子炉格納容器壁1aをヘッダプレートとして貫通設置された管状のボディ11、このボディ内に軸心方向に沿って配設された複数本の線状導体40、これらの導体を径方向に間隔をあけて支持する複数枚のポッティングボード37、導体を包囲してボディ内に配置された接着性を有するシール部材43、これらのシール部材間にリーク監視用空間部をあけて配置され、ボディの両端を閉塞して導体に接続された複数本の電線を導出可能な1対のキャップ44とを備え、ボディ11と複数枚のポッティングボード37と複数本の導体40とシール部材43とを一体構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉格納容器壁に装着する原子炉格納容器電線貫通部に係り、特にケーブルペネトレーションと称される原子炉格納容器電線貫通部のケーブルモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉格納容器電気配線貫通部は、原子炉格納容器を貫通する信号、計装、制御および動力等の電気回路に対して、その電気的性能および原子炉格納容器圧力バウンダリとしての性能を損なうことなく、原子炉格納容器を貫通させることを目的とする設備である。
【0003】
この原子炉格納容器電気配線貫通部においては一般に、原子炉格納容器を貫通するスリーブの先端にスリーブを塞ぐヘッダプレートを設け、このヘッダプレートを貫通して取付けるケーブルモジュールを設けるとともに、このケーブルモジュールを気密性と電気配線の貫通とを同時に達成させることにより成立している。
【0004】
従来技術においては、長尺な金属性モジュール型のボディの両端が1対の閉塞板によって閉塞されており、ボディ内の中央には1対のポッティングボードが設けてある。このポッティングボード間をリーク検出用空間部とし、この空間部に連通するリーク検出孔をボディの側面に設けている。
【0005】
ポッティングボードには複数の導体が支持され、導体の両端にはソケットを介して電線が支持されている。ボディ内には導体、ソケットおよび電線間を包囲するようにシール材料が設けられている。そして、1対の閉塞板から電線が導出されている。モジュール型のケーブルモジュールは工場において完全に組立および試験が行われる。
【0006】
従来技術においては、図2に示すように、ボディの両端外面には、雄ねじが形成されている。雄ねじには雌ねじを有する締付部材がねじ込みにより接続されている。また、ボディの内面には長尺のシールケースが1対設けられ、シールケースの外側端部には雄ねじが形成されており、この雄ねじには雌ねじを有するキャップがねじ込みにより接続されている。
【0007】
電線を交換する場合には、キャップを取外す必要があるが、外側シール部材は外側ポッティングボードと閉塞板との間でかつシールケースの内面全域にわたり挿脱自在であり、このためキャップを取外した状態では、原子炉格納容器圧力バウンダリを構成するために十分な気密性が維持されない可能性がある。
【0008】
長期間にわたる設備の使用中、電線が損傷したり劣化した場合、電気的特性が低下し、機能を維持できなくなる。このため、従来技術の場合には、設備全体を原子炉格納容器から取外して補修または交換するか、またはキャップを取外して電線を交換する必要があった。
【0009】
また、従来技術においては、電線を含む設備全体または電線交換時に原子炉格納容器圧力バウンダリが破壊されるため、復旧時には健全な格納容器圧力バウンダリが形成されていることを確認する必要があった。
【0010】
この確認には、耐圧漏洩試験を専用の耐圧試験容器を原子炉格納容器電気配線貫通部の外側に一次的に設置して行う必要があり、電線または電線を他の設備と接続する前に行う必要があった。
【0011】
さらに、この耐圧漏洩試験および専用の耐圧試験容器の製作、設置、除去等には長時間にわたる現場での作業が必要であり、作業員および試験検査員の放射線被曝の可能性があった。
【特許文献1】特開平11−153688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュールにおいては、一般的にケーブルモジュールと電線が分離不可能であるため、電線を交換する際にはヘッダプレートからケーブルモジュールを取外す必要があった。
【0013】
また、従来技術においては、ケーブルモジュールから電線が分離可能であるが、電線、シール材、導体等がボディに対しねじ締結されていることにより、電線をケーブルモジュールから分離した際に気密性を維持できなくなる可能性があった。
【0014】
このため、従来の一般的なケーブルモジュールにおいては電線を交換した後に、気密性確認のため耐圧漏洩試験が必要とされていた。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、原子炉格納容器電気配線貫通部の電線交換における耐圧漏洩試験を排除することができ、気密性を維持し続けたままで電線を交換することができる原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、本発明では、原子炉格納容器壁をヘッダプレートとして貫通設置された管状のボディと、このボディ内にその軸心方向に沿って配設された複数本の線状導体と、これらの導体を径方向に間隔をあけて支持する複数枚のポッティングボードと、前記導体を包囲して前記ボディ内に配置された接着性を有するシール部材と、これらのシール部材間にリーク監視用空間部をあけて配置され、前記ボディの両端を閉塞して前記導体に接続された複数本の電線を導出可能な1対のキャップとを具備し、前記ボディと前記複数枚のポッティングボードと前記複数本の導体と前記シール部材とを一体構成としたことを特徴とする原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュールを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原子炉格納容器電気配線貫通部の電線交換における耐圧漏洩試験を排除し、気密性を維持し続けたままで電線を交換することができ、電線交換作業中であってもシール性能を維持し続けることができ、電線交換後の耐圧漏洩試験が不要となる。
【0018】
また、原子炉格納容器電気配線貫通部の全体を交換する際、交換後の耐圧漏洩試験が必須であるが、電線部分がボディ部分から分離可能であるため、予め電線部分とボディ部分とを分離しておくことにより、従来耐圧漏洩試験後に行っていたプラント内配線と電線42との接続を、耐圧漏洩検査と並行して実施することができ、作業時間短縮および被曝低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るケーブルモジュールの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のケーブルモジュール34では、ボディ35の中央部分にポッティングボード37が設置されており、閉塞板36を貫通する複数本の導体40を所定の配置で支持するとともに、リーク監視用空間部38を形成してある。このリーク監視用空間部38は、ボディ35に設置したリーク検出孔39により、図示省略の外部計装系と連通している。
【0021】
閉塞板36は、ボディ35の両端付近にポッティングボード37と離れて設置されることにより1対の空間を形成し、この空間は接着性を有するシール材43で満たされる。
【0022】
シール材43はその接着性によりボディ35とポッティングボード37と導体40と閉塞板36とを強固に接着結合し、これらを一体分離不可能に保持するとともに、シール材43により隔てられた各空間を気密に保つ機能を有している。
【0023】
ボディ35の両外側には、キャップ44がガスケット46を介して設置されており、キャップ44に対し、止輪47を介して回転自在に設置されたナット45により、ボディ35と結合される。ナット45とボディ35とは、ねじまたはバイオネットカップリングにより結合される。
【0024】
キャップ44内には、ポッティングボード37が設置してあり、導体40と同じ配置に電線42が支持される。電線42はポッティングボード37を貫通し、コンタクト41が接続される。コンタクト41と電線42とは着脱不可に接続されるが、コンタクト41と導体40とは着脱可能としてある。
【0025】
キャップ44内の空間は、これら電線42とポッティングボード37とコンタクト41を包囲するように、接着性を有するシール材43で満たされており、一体分離不可能に形成される。
【0026】
以上の構成を有するケーブルモジュール34の劣化した電線42を交換する際には、予め正常な電線42とキャップ44とポッティングボード37とコンタクト41とを、シール材43によって一体に形成した電線部分を別途準備しておき、ナット45とボディ35の結合を解除する。次にキャップ44からナット45と止輪47とを取外し、前記電線部分に取付ける。さらにナット45とボディ35との結合を解除した逆の手順でナット45とボディ35とを再結合する。
【0027】
上記作業の間、シール性能に係わる部材は一切分離または分解しておらず、電線42の交換前後においてシール性に変化はない。このため、電線42交換後に耐圧漏洩試験を行う必要はない。
【0028】
このような本実施の構成においては、電線交換作業中もシール性能を維持し続けることにより、電線交換後の耐圧漏洩試験が不要となる。
【0029】
また、図1に示した全体構成部を交換する際には、交換後の耐圧漏洩試験が必須であるが、電線部分がボディ部分から分離可能であるため、予めこれらを分離しておくことにより、従来耐圧漏洩試験後に行っていたプラント内配線と電線42との接続を、耐圧漏洩検査と並行して実施可能であり、作業時間短縮および被曝低減が可能となる。
【0030】
さらに、ケーブルモジュール34はヘッダプレートにOリングを解して取付けられており、一旦ケーブルモジュール34をヘッダプレートから取外すと、再取付けの際にはOリングを新品に交換する必要があるのに対し、本実施形態によれば、複数本の電線を一括してボディ部分から取外し可能であり、Oリングの交換を極めて短時間で完了することができ、作業時間短縮および被曝低減が可能となる。
【0031】
また、副次的な効果として、電線部分をプラント内配線と接続したまま、ボディ部分のみを交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るケーブルモジュールの実施形態を示す縦断面図。
【図2】従来のケーブルモジュールを一部断面として示す側面図。
【符号の説明】
【0033】
10‥原子炉格納容器電線貫通部、11‥ボディ、12‥雄ねじ、13‥雌ねじ、14‥締付部材、15‥シールケース、16‥雄ねじ、17‥雌ねじ、18‥キャップ、19‥表面側突起、20‥内側ポッティングボード、21‥リーク監視用空間部、2‥リーク検出孔、23‥検出管、24‥弁・圧力計組立、25‥導体、26‥ソケット、27‥電線、28‥外側ポッティングボード、29‥内面側突起、30‥内側シール部材、31‥外側シール部材、32‥閉塞板、33‥絶縁スリーブ、34‥ケーブルモジュール、35‥ボディ、36‥閉塞板、37‥ポッティングボード、38‥リーク監視用空間部、39‥リーク検出孔、40‥導体、41‥コンタクト、42‥電線、43‥シール部材、44‥キャップ、45‥ナット、46‥ガスケット、47‥止輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器壁をヘッダプレートとして貫通設置された管状のボディと、このボディ内にその軸心方向に沿って配設された複数本の線状導体と、これらの導体を径方向に間隔をあけて支持する複数枚のポッティングボードと、前記導体を包囲して前記ボディ内に配置された接着性を有するシール部材と、これらのシール部材間にリーク監視用空間部をあけて配置され、前記ボディの両端を閉塞して前記導体に接続された複数本の電線を導出可能な1対のキャップとを具備し、前記ボディと前記複数枚のポッティングボードと前記複数本の導体と前記シール部材とを一体構成としたことを特徴とする原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュール。
【請求項2】
前記各キャップを前記ボディに対して着脱可能に取付けた請求項1記載の原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュール。
【請求項3】
前記各キャップ内部に、導出する前記電線を前記導体の配置と同配置で支持するポッティングボードを設けた請求項1記載の原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュール。
【請求項4】
前記ボディと前記キャップとの接合部にガスケットを設けた請求項1記載の原子炉格納容器電気配線貫通部のケーブルモジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−60430(P2010−60430A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226395(P2008−226395)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)