説明

原子炉溶接部の表面処理法

【課題】原子炉を構成する原子炉圧力容器及び炉内構造物などの部材に施される表面処理を高能率かつ低コストに行う方法を提供する。
【解決手段】溶接部6の溶接に利用した溶接装置案内用のレール11a,12aに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により溶接部6のウォータージェットピーニングを実施する。また、溶接部7の溶接に利用した溶接装置案内用のレール11b,12bに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により溶接部7のウォータージェットピーニングを実施する。さらに、溶接部8の溶接に利用した溶接装置案内用のレール11c,12cに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により溶接部8のウォータージェットピーニングを実施する。レーザ改質などの他の表面処理にも応用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器及び炉内構造物を含む原子炉構成部材の溶接部に対する表面処理法に係り、特に、原子炉の運転前に行われるウォータージェットピーニングやレーザ改質などの効率化に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉を構成する原子炉圧力容器、炉内構造物及び配管類など(本明細書においては、これらを総称して、「原子炉構成部材」という。)の多くは、オーステナイト系ステンレス材料にて製造され、かつ高温の腐食環境にさらされるので、原子炉の運転前に、応力腐食割れの発生を防止するための表面処理が所定の部分に施される。この表面処理としては、溶接部に圧縮応力を残留させるウォータージェットピーニング、ショットピーニング、ショットブラスト、サンドブラスト、クライオブラスト等の残留応力改善法や、処理部にレーザビームを照射して表面組織の改質を行う表面改質法などが従来提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
原子炉構成部材の溶接部には、工場で溶接された溶接部と発電所現地で溶接された溶接部とがあり、工場で溶接された溶接部については工場内に設けられた表面処理施設にて所要の表面処理が行われ、発電所現地で溶接された溶接部については発電所現地にて所要の表面処理が行われる。
【0004】
工場内に設けられるウォータージェットピーニング施設の例として、特許文献1の図4には、貯水タンク内に備えられた機器保持架台と、貯水タンクの上方から吊り降ろされ、先端が機器保持架台上に保持された原子炉構成部材の溶接部と対向に配置された高圧水噴射ノズルとを有し、機器保持架台により原子炉構成部材を回転しつつ、高圧水噴射ノズルから所要の溶接部に沿って高圧水を噴射してキャビテーション気泡を発生させ、キャビテーション気泡の崩壊に伴う衝撃圧を溶接部に作用するものが開示されている。
【0005】
一方、発電所現地で行われる溶接部の表面処理方法としては、原子炉圧力容器の上方から表面処理装置が搭載された自走式ロボットを吊り降ろすという方法が従来提案されている。
【特許文献1】特開平8−105994号公報
【特許文献2】特開平11−90830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の原子炉溶接部の表面処理法は、原子炉構成部材を回転駆動可能な機器保持架台を備えた貯水タンクや特殊構造のロボットを必要とするので、設備コストが高価になるという問題がある。また、高圧水噴射ノズルなどの表面処理用のヘッド装置を遠隔操作しなくてはならないので、溶接部に対するヘッド装置の位置付けを正確に行うことが困難で、溶接部の表面処理を適切かつ効率的に行うことが難しいという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の不備を解消するためになされたものであって、その課題は、原子炉を構成する原子炉圧力容器や炉内構造物などの部材に施される表面処理を高能率かつ低コストに行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するため、第1に、原子炉圧力容器及び炉内構造物を含む原子炉構成部材の溶接部に表面処理を施す原子炉溶接部の表面処理法において、前記原子炉構成部材の溶接に際して前記原子炉構成部材上又は前記原子炉構成部材外に備えられた溶接装置案内手段に表面処理装置を装着し、前記溶接部に対する表面処理を実施することを特徴とする。
【0009】
溶接装置案内手段は、所要の溶接部に沿って溶接装置を案内するものであるので、この溶接装置案内手段に表面処理装置を取り付ければ、溶接部に対する表面処理装置の位置付けを容易化することができ、溶接部に対する表面処理の適正化及び効率化を図ることができる。また、表面処理設備に原子炉構成部材を回転駆動可能な機器保持架台を備えたり、表面処理専用の案内手段を新たに備える必要がないので、表面処理のための設備コストを抑制することができる。
【0010】
本発明は、第2に、前記第1の原子炉溶接部の表面処理法において、前記表面処理装置を、表面処理を施そうとする溶接部の直近に備えられた溶接装置案内手段に装着することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によると、表面処理を施そうとする溶接部に対する表面処理装置の位置付けをより容易かつ正確に行うことができるので、溶接部に対する表面処理をより適正かつ効率的に行うことができる。
【0012】
本発明は、第3に、前記第1の原子炉溶接部の表面処理法において、前記溶接装置案内手段として、前記原子炉構成部材に取り付けられた溶接装置案内レールを用いることを特徴とする。
【0013】
炉心シュラウドやシュラウドサポートなどの原子炉構成部材は、複数の管状体の組合わせからなり、各管状体の連結部分を溶接することにより製造される。そして、各管状体の溶接は、一方の管状体の内周面及び外周面に沿ってリング状の溶接装置案内レールを設置し、この溶接装置案内レールに溶接トーチを含む溶接装置を走行可能に取り付け、溶接装置案内レールに沿って溶接装置を走行しつつ、溶接装置を駆動することにより行われる。これにより、各管状体の溶接を自動的に行うことができ、所要の原子炉構成部材の製造を効率的に行うことができる。溶接装置案内レールは、通常、所要の溶接部の溶接が完了した後に取り外されるが、この溶接装置案内レールにウォータージェットピーニング装置やレーザ改質装置などの表面処理装置を走行可能に取り付ければ、表面処理設備に原子炉構成部材を回転駆動可能な機器保持架台を備えたり、管状体に表面処理専用のレールを新たに取り付けることなく溶接部の表面処理を自動的に行うことができるので、表面処理のための設備コストを抑制することができる。また、溶接装置案内レールに表面処理装置を取り付けると、溶接装置案内レールと溶接部との距離が既知であることから、溶接部に対する表面処理装置の位置付けが容易になるので、溶接部に対する表面処理の適正化及び効率化を図ることができる。
【0014】
本発明は、第4に、前記第1の原子炉溶接部の表面処理法において、前記溶接装置案内手段として、溶接ロボットを用いることを特徴とする。
【0015】
溶接ロボットにより溶接が行われる原子炉構成部材については、溶接ロボットの先端部に溶接トーチに代えて高圧水噴射ノズルなどの表面処理装置を装着することにより、溶接部に対して表面処理装置を正確に位置付けることができるので、溶接部に対する表面処理を容易かつ適正に行うことができる。
【0016】
本発明は、第5に、前記第1の原子炉溶接部の表面処理法において、前記所要の溶接部に対する表面処理を、前記原子炉圧力容器又は前記炉内構造物の製造工場内で実施することを特徴とする。
【0017】
かかる構成によると、所要部分の溶接と当該溶接部に対する表面処理とを製造工場内において行うことができるので、発電所現地における作業量を減少することができ、原子炉の建造を効率的に行うことができる。
【0018】
本発明は、第6に、前記第1の原子炉溶接部の表面処理法において、前記所要の溶接部に対する表面処理を、前記原子炉圧力容器が据え付けられる発電所現地で実施することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によると、発電所現地においても溶接部に対する表面処理を実行できるので、表面処理の実施箇所を増やすことができ、原子炉の耐応力腐食割れ性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施形態に係る原子炉溶接部の表面処理法を、炉心シュラウドの溶接部の表面処理法を例にとり、図1乃至図7を用いて説明する。図1は溶接装置案内レールを介して自走式ウォータージェットピーニング装置が取り付けられた炉心シュラウドの断面図、図2は図1のA部拡大断面図、図3はプールが浅い場合における炉心シュラウドの製造手順の第1段階を示す断面図、図4はプールが浅い場合における炉心シュラウドの製造手順の第2段階を示す断面図、図5はプールが浅い場合における炉心シュラウドの製造手順の第3段階を示す断面図、図6は炉心シュラウドの下端部への溶接装置案内レールの取付状態を示す断面図、図7は炉心シュラウドとシュラウドサポートの溶接部に対するウォータージェットピーニングを示す要部断面図である。
【0021】
図1に示すように、炉内構造物である炉心シュラウド1は、上部フランジ2と上部胴3と下部フランジ4と下部胴5とからなり、上部フランジ2の下端と上部胴3の上端との突き当て部、上部胴3の下端と下部フランジ4の上端との突き当て部、及び下部フランジ4の下端と下部胴5の上端との突き当て部を、外周側及び内周側から溶接することにより一体化される。上部フランジ2と上部胴3の溶接部6は、上部フランジ2の下方寄りの外面及び内面にスポット溶接などにより設置されたリング状の溶接装置案内用の外周レール11a及び内周レール12aに図示しない自走式自動溶接装置を取り付け、当該自走式自動溶接装置を各レール11a,12aに沿って駆動することにより溶接される。同様に、上部胴3と下部フランジ4の溶接部7は、上部胴3の下方寄りの外面及び内面に設置された溶接装置案内用の外周レール11b及び内レール12bに自走式自動溶接装置を取り付けることにより溶接され、下部フランジ4と下部胴5の溶接部8は、下部フランジ4の下方寄りの外面及び内面に設置された溶接装置案内用の外周レール11c及び内周レール12cに自走式自動溶接装置を取り付けることにより溶接される。溶接部6,7,8の溶接は、複数の自走式自動溶接装置をそれぞれ異なる溶接装置案内用レールに取り付けることにより、複数箇所について同時に行うこともできるし、1つの自走式自動溶接装置を順次他の溶接装置案内用レールに付け替えることにより、1箇所毎に行うこともできる。その他の溶接の具体的方法については、公知に属する事項であり、かつ本発明の要旨でもないので、説明を省略する。
【0022】
前記溶接装置案内用の外周レール11a〜11c及び内周レール12a〜12cは、同一構成の自走式自動溶接装置を取り付けられるようにするため、幅及び厚みが同一サイズに形成される。また、これらの各レールは、所要の溶接作業及び表面処理作業の終了後に撤去できるようにするため、炉心シュラウド1に対してスポット溶接などにより着脱可能に設置される。なお、これらの各レールは、炉心シュラウド1の各部所に同時に設置することもできるし、1つの溶接部に対する溶接及び表面処理が終了する毎に、他の部所に付け替えることもできる。
【0023】
溶接された炉心シュラウド1は、図1に示すように、プール13内に据え付けられ、各溶接部6,7,8に対するウォータージェットピーニングが実施される。プール13の水位14は、ウォータージェットピーニングを実施しようとする溶接部が水没する位置に調整される。溶接部6に対するウォータージェットピーニングは、溶接終了後も炉心シュラウド1に残された溶接装置案内用のレール11a,12aに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により行われる。同様に、溶接部7に対するウォータージェットピーニングは、炉心シュラウド1に残された溶接装置案内用のレール11b,12bに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により行われ、溶接部8に対するウォータージェットピーニングは、炉心シュラウド1に残された溶接装置案内用のレール11c,12cに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21より行われる。
【0024】
このように、溶接部6の溶接に利用したレール11a,12aに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により溶接部6のウォータージェットピーニングを実施し、溶接部7の溶接に利用したレール11b,12bに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により溶接部7のウォータージェットピーニングを実施し、溶接部8の溶接に利用したレール11c,12cに取り付けられた自走式ウォータージェットピーニング装置21により溶接部8のウォータージェットピーニングを実施すると、各レール11a〜11c,12a〜12cから各溶接部6,7,8までの距離が既知であり、かつ最短となるので、表面処理を施そうとする溶接部に対する表面処理装置の位置付けをより容易かつ正確に行うことができ、溶接部に対する表面処理を適正かつ効率的に行うことができる。また、溶接部6,7,8の溶接に利用したレール11a〜11c,12a〜12cに自走式ウォータージェットピーニング装置21を取り付けると、表面処理設備に原子炉構成部材を回転駆動可能な機器保持架台を備えたり、表面処理専用の案内手段を新たに備える必要がないので、表面処理のための設備コストを抑制することができる。
【0025】
自走式ウォータージェットピーニング装置21は、図2に示すように、台車部22と、台車部22を溶接装置案内用のレール11a〜11c,12a〜12cに装着する垂直ガイドローラ23及び水平ガイドローラ24と、台車部22を溶接装置案内用のレール11a〜11c,12a〜12cに沿って走行させる走行ローラ25と、台車部22に備えられた走行ローラ25の駆動部26と、同じく台車部22に備えられたノズル取付部27と、ノズル取付部27に固定され、ノズル先端が所要の溶接部に向けられたウォータージェットピーニング用の高圧水噴射ノズル28とからなり、駆動部26には電源ケーブル及び信号ケーブルを含むケーブル類29が接続され、高圧水噴射ノズル28には給水ホース30が接続される。なお、所要の溶接装置案内用レールへの自走式ウォータージェットピーニング装置21の装着、及び自走式ウォータージェットピーニング装置21の駆動・停止等は、プールサイドから遠隔操作により行われる。
【0026】
溶接部6,7,8に対するウォータージェットピーニングは、駆動部26により走行ローラ25を駆動し、所要の溶接装置案内用レールに沿って自走式ウォータージェットピーニング装置21を走行させつつ、高圧水噴射ノズル28から高圧水を所要の溶接部6,7,8に向けて噴射し、これによって発生するキャビテーション気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を所要の溶接部6,7,8に作用させることにより行う。衝撃圧により、溶接部6,7,8に圧縮応力が残留するので、溶接による引張応力が残留している場合に比べて、耐応力腐食割れ性が向上する。
【0027】
なお、プール13の深さが炉心シュラウド1の全長よりも浅い場合には、上部フランジ2と上部胴3とを溶接した後、図3に示すように、これら上部フランジ2と上部胴3の連結体をプール13内に据え付け、上部胴3に設置されたレール11a,12aにウォータージェットピーニング装置21を取り付けて、溶接部6のウォータージェットピーニングを行う。同様に、下部フランジ4と下部胴5とを溶接した後、図4に示すように、これら下部フランジ4と下部胴5の連結体をプール13内に据え付け、下部胴5に設置されたレール11c,12cにウォータージェットピーニング装置21を取り付けて、溶接部8のウォータージェットピーニングを行う。しかる後に、上部フランジ2に連結された上部胴3と下部胴5に連結された下部フランジ4とを溶接して炉心シュラウド1とし、図5に示すように、溶接された炉心シュラウド1をプール13内に据え付け、上部胴3に設置されたレール11b,12bにウォータージェットピーニング装置21を取り付けて、溶接部7のウォータージェットピーニングを行う。これにより、溶接部6,7,8にウォータージェットピーニングが施された所要の炉心シュラウド1が作製される。
【0028】
溶接部6,7,8に対するウォータージェットピーニングが終了した後、溶接部6,7,8の溶接及びウォータージェットピーニングに使用した全てのレール11a〜11c,12a〜12cを炉心シュラウド1から撤去する。
【0029】
この炉心シュラウド1は、発電所現地に搬送され、発電所現地に据え付けられた原子炉圧力容器内のシュラウドサポートに溶接されるが、発電所現地への搬送に先立ち、図6に示すように、炉心シュラウド1を構成する下部胴5の下方寄りの外面及び内面に、スポット溶接などにより、リング状の溶接装置案内用外レール11d及び内レール12dが設置される。レール11d,12dとしては、溶接部6,7,8の溶接作業及びウォータージェットピーニング作業に使用したレール11a〜11c,12a〜12cのいずれかを転用することができる。
【0030】
これら溶接部6,7,8の溶接作業、溶接部6,7,8に対するウォータージェットピーニング作業、炉心シュラウド1からのレール11a〜11c,12a〜12cの撤去作業、及び炉心シュラウド1に対するレール11d,12dの設置作業は、炉心シュラウド1の製造工場内で行われる。これにより、発電所現地における作業量を低減することができ、原子炉の建造を効率化できる。
【0031】
発電所現地に搬送された炉心シュラウド1は、図7に示すように、原子炉圧力容器31内に設けられたシュラウドサポート32と同心に配置され、レール11d,12dに取り付けられた図示しない自動溶接装置により溶接される。次いで、レール11d,12dから自動溶接装置を取り外し、このレール11d,12dに自走式ウォータージェットピーニング装置21を取り付けた後、原子炉圧力容器31内に注水して炉心シュラウド1とシュラウドサポート32との溶接部33を水没させ、この状態で、自走式ウォータージェットピーニング装置21を駆動して、溶接部33にウォータージェットピーニングを施す。なお、レール11d,12dに対する自走式ウォータージェットピーニング装置21の取り付け、及び自走式ウォータージェットピーニング装置21の駆動・停止等は、原子炉圧力容器31の上方に設けられた図示しない作業デッキから、遠隔操作により行われる。溶接部33に対するウォータージェットピーニングが終了した後、炉心シュラウド1からレール11d,12dを撤去する。この作業も、前記作業デッキからの遠隔操作により行われる。
【0032】
このように、炉心シュラウド1の製造工場において、炉心シュラウド1を構成する下部胴5の外面及び内面にレール11d,12dを設置するので、発電所現地にて溶接される溶接部33に対するウォータージェットピーニングを容易かつ適正に行うことができ、原子炉の信頼性をより高めることができる。
【0033】
なお、前記実施形態においては、炉心シュラウド1を製造するための溶接部6,7,8及び炉心シュラウド1とシュラウドサポート32とを連結する溶接部33に対するウォータージェットピーニング方法を例にとって説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、炉心シュラウド1以外の炉内構造物及び各種配管などに施された溶接部に対するウォータージェットピーニングにも応用することができる。
【0034】
炉心シュラウド1以外の炉内構造物としては、制御棒案内管、炉心支持板、上部格子板、気水分離器、蒸気乾燥器などがある。これらの各炉内構造物のうち、溶接装置案内アームの先端部に溶接トーチが備えられた溶接ロボットを用いて溶接されるものについては、溶接終了後、炉内構造物を水没させると共に、溶接トーチに代えて溶接装置案内アームの先端部にウォータージェットピーニング装置を取り付けることにより、所要の溶接部に対するウォータージェットピーニングを実施する。これにより、非円筒形の複雑な形状を有する炉内構造物についても、溶接部のウォータージェットピーニングを容易かつ適正に行うことができる。
【0035】
また、前記実施形態においては、溶接部の表面処理方法として、ウォータージェットピーニングを例にとって説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、レーザを照射して溶接部の組織を改質し、耐応力腐食割れ性などの向上を図るレーザ改質にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】溶接装置案内レールを介して自走式ウォータージェットピーニング装置が取り付けられた炉心シュラウドの断面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】プールが浅い場合における炉心シュラウドの製造手順の第1段階を示す断面図である。
【図4】プールが浅い場合における炉心シュラウドの製造手順の第2段階を示す断面図である。
【図5】プールが浅い場合における炉心シュラウドの製造手順の第3段階を示す断面図である。
【図6】炉心シュラウドの下端部への溶接装置案内レールの取付状態を示す断面図である。
【図7】炉心シュラウドとシュラウドサポートの溶接部に対するウォータージェットピーニングを示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 炉心シュラウド
2 上部フランジ
3 上部胴
4 下部フランジ
5 下部胴
6,7,8,33 溶接部
11a〜11c,12a〜12c レール
21 自走式ウォータージェットピーニング装置
22 台車部
23 垂直ガイドローラ
24 水平ガイドローラ
25 走行ローラ
26 駆動部
27 ノズル取付部
28 ノズル
29 ケーブル類
30 給水ホース
31 原子炉圧力容器
32 シュラウドサポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器及び炉内構造物を含む原子炉構成部材の溶接部に表面処理を施す原子炉溶接部の表面処理法において、
前記原子炉構成部材の溶接に際して前記原子炉構成部材上又は前記原子炉構成部材外に備えられた溶接装置案内手段に表面処理装置を装着し、前記溶接部に対する表面処理を実施することを特徴とする原子炉溶接部の表面処理法。
【請求項2】
前記表面処理装置を、表面処理を施そうとする溶接部の直近に備えられた溶接装置案内手段に装着することを特徴とする請求項1に記載の原子炉溶接部の表面処理法。
【請求項3】
前記溶接装置案内手段として、前記原子炉構成部材に取り付けられた溶接装置案内レールを用いることを特徴とする請求項1に記載の原子炉溶接部の表面処理法。
【請求項4】
前記溶接装置案内手段として、前記原子炉構成部材外に備えられた溶接ロボットを用いることを特徴とする請求項1に記載の原子炉溶接部の表面処理法。
【請求項5】
前記溶接部に対する表面処理を、前記原子炉構成部材の製造工場内で実施することを特徴とする請求項1に記載の原子炉溶接部の表面処理法。
【請求項6】
前記溶接部に対する表面処理を、原子炉圧力容器が据え付けられる発電所現地で実施することを特徴とする請求項1に記載の原子炉溶接部の表面処理法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−31013(P2009−31013A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192465(P2007−192465)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)