説明

原子炉燃料アセンブリのガイドチューブの製造方法およびガイドチューブ成形用マンドレルならびに得られたガイドチューブ

【課題】従来のガイドチューブは、回転ハンマーリング操作という生産性の低い製造方法で製造されていた。
【解決手段】一定の外径でありかつ主部と壁厚さの厚い補強部とを備えるガイドチューブを製造するための方法であるとともに、ピルグリムローリングミルのマンドレル14上において管状ブランク22を圧延する方法であって、第1圧延ステージとして、マンドレル14の第1部分18、19においてブランクの第1部分の圧延を行い、ブランク22の軸方向にマンドレル14を移動させ、第2圧延ステージとして、マンドレル14の第2部分19、20においてブランク22の第2部分の圧延を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉燃料アセンブリのガイドチューブの製造方法、および、そのようなガイドチューブを成形するためのマンドレル、ならびに、そのようにして得られたガイドチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料アセンブリ、とりわけ、水冷式原子炉のための燃料アセンブリは、通常、フレームを備えている。フレームの内部には、クラスタをなす複数の燃料ロッドが互いに平行に挿入され維持されている。フレームは、特に、クラスタをなす燃料ロッドに対して平行に設けられたガイドチューブを備えている。ガイドチューブは、フレームの構造用部材と、並置された燃料アセンブリによって構成された原子炉コアの反応性を必要に応じて制御するために使用される吸収ロッドおよび制御ロッドをガイドするための部材と、の双方の役割を果たしている。燃料アセンブリは、直立配置とされた原子炉コア内に配置される。すなわち、そのような状態においては、アセンブリにおけるクラスタをなす燃料ロッド、および、ガイドチューブは、鉛直方向に延在している。原子炉の制御クラスタのうちの吸収ロッドを案内するガイドチューブは、コア内における作動時においてアセンブリのうちのガイドチューブの下端部をなす端部において、断面が縮径した部分あるいは断面が狭くなった部分を有している。この縮径部は、制御ロッドが降下されその後原子炉内で停止するに際して、原子炉の制御ロッドのうちの吸収ロッドが減速されるような領域を形成することを目的としている。この場合の停止は、プログラミングされた停止とすることもできるし、偶然的な停止であっても良い。制御棒の吸収ロッドとガイドチューブの下部縮径部との間において原子炉の冷却流体を抑圧することによって、制御ロッドの減速をもたらすこのようなデバイスは、ダッシュポット効果と称される減速効果により動作する。
【0003】
燃料アセンブリのガイドチューブの下部は、制御ロッドの降下時に大きな応力を受ける。特に、ガイドチューブの縮径領域において、燃料アセンブリのガイドチューブの内壁と接触している冷却流体の圧縮により大きな応力を受ける。原子炉の動作の移行期においては、アセンブリが降下される際に、アセンブリは、冷却流体により、また、燃料アセンブリの慣性力により、わずかに持ち上げられる。それによって、ガイドチューブの縮径部が湾曲したり、ねじれたりすることがある。ガイドチューブの下部の縮径がチューブのネッキングにより行われている場合には、縮径部は、このように、チューブの構造的に弱い部分を形成することとなる。この場合、壁厚さは、チューブの長さ全体にわたって実質的に一定である。
【0004】
したがって、制御ロッドの投下によって引き起こされる応力や非定常時における応力に耐え得るように、下端部またはベース部が補強されたようなガイドチューブを使用することが提案されている。第1手段として、ガイドチューブの下端部を、ガイドチューブと同軸とされかつ双方の端部どうしにおいて溶接された管状スリーブにより補強することができる。しかしながら、ジルコニウム合金製ガイドチューブの補強部分において溶接を行うことは、残留応力をもたらし、その結果、ガイドチューブの機械的耐性や腐食耐性が低下することとなる。また、連結される2つのチューブにおいて、軸合わせがうまくいかないことも起こり得る。
【0005】
よって、仏国特許明細書第2714516号においては、ガイドチューブのベース部を、一体型の補強ベース部として製造することが提案された。このガイドチューブは、ガイドチューブを燃料アセンブリのターミナル部材に対して固定するための端部領域を除いては、実質的に一定の直径の円筒状外面を有している。そして、ガイドチューブの壁の厚さは、ガイドチューブの全体長さの10〜30%の長さとすることができる下部において、厚くされている。
【0006】
このようなガイドチューブは、厚さが実質的に一定の管状ブランクを準備し、一定の内径を維持したまま、長さの70〜90%の部分において厚さを減少させることによって、得られる。ブランクのうちの厚さが元々のままに維持されている部分が、その後、内部に向けて膨径される。これにより、一定の外径とされたチューブが形成される。このような薄肉化および内方膨径は、回転ハンマーリング(hammering)操作によって行うことができる。
【0007】
ジルコニウム合金製ガイドチューブを得るための上記方法は、実行が困難である。
【0008】
さらに、ガイドチューブのうちの主部またはボディ部と称されブランクの厚さ減少により得られた第1厚さを有する第1部分と、ガイドチューブのうちの内方への膨径により得られた第2部分と、の間には、10゜程度の傾斜角度の円錐形状の内表面を有した移行領域が存在している。ガイドチューブの円筒状内表面が不連続であることにより、吸収ロッドのガイド性能が低減して、制御ロッドの投下速度を制限することとなる。また、上記のような移行領域は、ガイドチューブの構造的に弱い部分を形成することとなる。
【0009】
原子炉燃料アセンブリロッドを被覆するジルコニウム合金製のチューブを製造するに際しては、まず、通常のように、ピルグリムまたはピルガーローリングミルにおける圧延により管状ブランクが形成される。複数の連続した圧延操作により、最終形状を有するシースチューブを得ることができる。
【0010】
この方法は、また、ジルコニウム合金製ガイドチューブの成形にも使用することができる。
【0011】
しかしながら、現在までのところ、このような方法は、一定直径の円筒状外表面を有するとともに第1厚さとされたボディ部または主部を有しかつ主部の厚さよりも厚い第2厚さとされた下端部を有するガイドチューブの製造には、一切使用されていない。
【特許文献1】仏国特許明細書第2714516号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、実質的に一定の外径を有するとともに、第1壁厚さを有する少なくとも1つの主部と、ガイドチューブの長さの一部に設けられかつ第1壁厚さよりも厚い第2壁厚さを有する補強部と、を備える、原子炉燃料アセンブリのためのガイドチューブを製造するための方法であるとともに、ピルグリムローリングミルのマンドレル上において管状ブランクを圧延する方法を提供することである。
【0013】
この目的のために、本発明による方法においては、第1ステージとして、マンドレルの第1部分において、ガイドチューブの外径にまでブランクの外径を減少させるとともに、第1壁厚さおよび第2壁厚さのうちの一方にまでブランクの壁厚さを減少させるように、ブランクの第1部分の圧延を行い、ブランクの軸方向にマンドレルを移動させ、第2ステージとして、第1部分からマンドレルの軸方向に離間したマンドレルの第2部分において、ガイドチューブの外径にまでブランクの外径を減少させるとともに、第1壁厚さおよび第2壁厚さのうちの他方にまでブランクの壁厚さを減少させるように、ブランクの第2部分の圧延を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を説明するために、添付図面を参照して、本発明による方法およびその方法を実現するために使用される成形用マンドレルならびに得られたガイドチューブについての非限定的な例について以下説明を行う。
【0015】
図1は、従来技術において、一体型に製造された補強ベースを有するガイドチューブを示す軸方向断面図である。図2は、管状ブランクの圧延時におけるピルグリムローリングミルを示す断面図である。図3は、本発明によるガイドチューブの製造方法において使用される成形用マンドレルを示す側面図である。図4(a)および図4(b)は、本発明によるガイドチューブの製造方法の2ステージにおけるブランクの成形時の、マンドレルとブランクとを示す一部断面を含む側面図である。図5は、本発明によるガイドチューブの製造時において、ピルグリムローリングミルの出力端において得られた製品を示す軸方向断面図である。図6は、ピルグリムローリングミルの出力端において得られた圧延製品を示す軸方向断面図であって、ガイドチューブを得るためのカット操作の様子を示している。
【0016】
図1には、加圧水型原子炉における燃料アセンブリのガイドチューブを示している。ガイドチューブは、図においては、全体的に参照符号1で示されている。ガイドチューブ1は、ジルコニウム合金製であって、拡径され例えばネジ山付内部孔を有した上部2を除いては、ガイドチューブの長さ全体にわたって一定の直径とされた円筒状外表面を有している。ガイドチューブのこの上部は、付加的に着脱固定手段を使用することにより、燃料アセンブリの上側ターミナル部材に対してガイドチューブを固定するために利用される。ガイドチューブ1は、さらに、内部にネジ山が形成された下端を備えている。この下端により、ガイドチューブを、燃料アセンブリの下側ターミナル部材に対して固定することができる。
【0017】
ガイドチューブ1は、主部またはボディ部1aと、下端部1bと、を備えている。主部1aと下端部1bとは、主部1aが第1壁厚さe1を有しており、下端部1bが厚さe1よりも厚い第2厚さe2を有しているという点において、互いに相違している。したがって、下端部1bは、ガイドチューブの構造的に補強された部分を構成している。
【0018】
場合によっては、ガイドチューブは、補強された端部に代えて、2つの主部間において補強部よりも薄い厚さとされた厚肉補強部を有することができる。
【0019】
ガイドチューブの外径は、一定であって、主部1aにおいても補強部1bにおいても同一である。
【0020】
したがって、主部1aの内径は、補強部1bの内径よりも大きい。そして、ガイドチューブ1は、部分1a、1b間に、移行領域1cを有している。移行領域1cにおいては、ガイドチューブの内面は、傾斜角度が約10゜の円錐部またはテーパ部により形成されている。
【0021】
ガイドチューブの下端部における壁においては、符号3で示すような貫通孔を設けることができる。この貫通孔により、ガイドチューブに案内された吸収ロッドの投下時においてガイドチューブの下端部における原子炉冷却液体の過圧を制限することができ、クラスタの投下時において吸収ロッドのブレーキングを低減することができる。
【0022】
ガイドチューブの下端部1bにおいて壁厚さをe2のように厚くしたことにより、ガイドチューブの下端部を補強することができ、制御クラスタの吸収ロッドの投下時における過圧や原子炉の非定常時における過圧の効果による下端部の劣化を防止することができる。しかしながら、内壁が円錐状またはテーパ状傾斜部となっている中間領域1cが存在していることにより、ガイドチューブ内における吸収ロッドの案内に関して、不連続性が発生する。また、中間領域は、構造的に弱い部分となり得る。
【0023】
さらに、図1に示すガイドチューブを製造するためには、ガイドチューブの主部における壁厚さを低減させるために、つまり、ガイドチューブの主部の長さ部分における壁厚さを低減させるために、そしてその後、ガイドチューブの下部の厚肉部を内方に向けて膨径させるために、回転ハンマーリングのような成形工程を使用する必要がある。
【0024】
そのような成形工程は、実行が困難であるとともに、比較的長い作業時間を必要とする。
【0025】
本発明による方法においては、ピルグリムまたはピルガーローリングミルにおける圧延技術により、一体物でありかつ補強部を有したチューブを製造することができる。
【0026】
図2には、管状ブランクからチューブを成形するためのピルグリムローリングミルの主要部分を、概略的に示している。
【0027】
全体的に参照符号5でもって図示されたピルグリムローリングミルは、主に、それぞれの軸回りに回転可能に取り付けられるとともにスプライン付シリンダの形態とされた第1ダイ6aおよび第2ダイ6bと、回転に関して対称形状を有するマンドレル7と、を備えている。
【0028】
ダイ6a、6bは、駆動手段が設けられている可動ケージ内において、それぞれのシャフト8a、8bを介して回転可能に取り付けられている。これにより、ダイ6a、6bは、概略的に二重矢印9で示すように、マンドレル7の軸方向の両方向に一定速度で移動可能とされている。
【0029】
ダイ6a、6bの各々は、スプラインと称される、それぞれの周縁グルーブ10a、10bを備えている。周縁グルーブ10a、10bは、ダイの径方向における断面形状が、ほぼ半円形状とされている。
【0030】
ダイ6a、6bのグルーブ10a、10bの断面は、グルーブの周縁に沿って連続的に変化するような寸法を有している。断面は、グルーブの入口部において最大寸法を有しており、グルーブの出口部において最小寸法を有している。
【0031】
ダイ6a、6bは、概略的に二重矢印9で示すようなケージの往復移動につれて、それぞれの軸回りに、両方向に回転駆動される。
【0032】
図2に示すピルグリムローリングミルは、マンドレル7に係合した管状ブランク11の壁の圧延を行うことができる。この場合、管状ブランクの径および壁厚さを漸次減少させ、そして、ミルの出口側において、径および壁厚さがブランク11の径および壁厚さよりも小さなチューブ12を得ることができる。圧延により、ブランク11は、軸方向には、大きな延伸を受ける。
【0033】
ブランク11が係合しているマンドレル7は、並進移動可能にかつ軸回りに回転可能に、ロッド13に連結されている。
【0034】
ピルグリムローリングミル5は、さらに、クランプによりブランク11を固定することができる搬送手段(図示せず)を備えている。搬送手段は、ピルグリムローリングミルによってもたらされる各ステップの後に、圧延方向にブランクを前進させることができる。ブランクを前進させるためのデバイスは、また、各圧延ステップの最後に、ブランクを軸回りに回転させることができる。
【0035】
マンドレル7は、径がブランク11の内径よりも小さな第1円柱部7aと、長さ方向曲線が実質的に放物線形状をなす回転第2円柱部7bと、径が製造されるべきチューブ12の最終内径とされたまたは最終内径に近いものとされたわずかに円錐状のまたはテーパ状の端部7cと、を備えている。
【0036】
ダイ6a、6bは、マンドレル7の両側に配置されている。ダイ6a、6bには、圧延途中のブランク11およびチューブ12が係合する。この場合、ダイは、軸方向に移動するとともに回転し、グルーブ10a、10bは、略円形部を有するチューブ成形表面をなす。グルーブ10a、10bの断面寸法がダイの周縁に沿って連続的に変化していることにより、ケージおよびダイの変位時には、円筒状チューブ成形表面自身の寸法は、最大寸法から最小寸法までにわたって変化する。
【0037】
ケージは、ブランクの縮径を行う領域7bおよびチューブ12の径調整を行う領域7cに沿って、マンドレルの実質的に長さ全体にわたって、所定速度で軸方向に移動する。ブランク11の径および厚さは、チューブ12の径および壁厚さにまで、漸次減少する。
【0038】
圧延ケージの各変位の最終時点において、ブランクは、軸方向に所定長さだけマンドレルに沿って前進する。そして、ブランクは、所定角度だけ軸回りに回転する。同時に、マンドレル7は、ロッド13により、軸回りに回転する。
【0039】
圧延は、ロッド13およびマンドレル7上に次々とブランクを係合して、ローリングミルの出力部分に回収することにより、実質的に連続して行うことができる。
【0040】
上記のようなピルグリム圧延法は、ガイドチューブの主部の壁厚さよりも厚い壁厚さを有した下端部を備えるガイドチューブの製造に適用することができる。
【0041】
本発明によるガイドチューブの製造方法を実行するために、図3に示すような特別の形状とされたマンドレルを備えたピルグリムまたはピルガーローリングミルが使用される。
【0042】
回転対称形状を有するマンドレル14は、保持および駆動ロッドに対して、マンドレルを連結するためのネジ山付端部15を備えている。軸方向16においてネジ山部に連接して、マンドレルは、ガイドチューブの形成のために使用される出発ブランクの内径よりも小さな径とされた第1円柱部17と、回転対称的に縮径しかつ長さ方向曲線が放物線形状をなすあるいは放物線に近い形状をなす部分18、20と、製造されるべきガイドチューブの主部または補強下端部の内径にほぼ等しい径を有するわずかに円錐状またはテーパ状とされた第3部分19、21と、を備えている。
【0043】
したがって、マンドレル17は、軸方向において、異なるガイドチューブ成形ステージをなす、複数の連続した成形部分を備えている。
【0044】
ステップ状成形マンドレル14は、図4(a)および図4(b)に示す2つの連続するステージを通して、本発明のガイドチューブを製造するために使用される。これら2つのステージは、この順に、または、逆の順に行われる。これら2つのステージは、なるべく、チューブブランクの連続した部分において行われる。これにより、ただ1回の操作でもって、圧延製品を製造することができる。この圧延製品をカットすることにより、補強部を有するガイドチューブを、複数、得ることができる。
【0045】
図4(a)は、管状ブランク22の第1ピルグリム圧延ステージにおけるマンドレル14を示している。この場合、ブランク22の径および壁厚さは、製造されるべきガイドチューブの径および壁厚さよりも大きい。
【0046】
ピルグリムローリングミルは、図2に示すピルグリムローリングミル5の場合に説明したダイと同様の2つのダイ10a、10bを備えている。
【0047】
本発明の方法を行うために使用するものであって図4(a)および図4(b)に示すピルグリムローリングミルは、図2に示す通常タイプのピルグリムローリングミルに対して、ステップ状マンドレル14を使用することと、マンドレルの軸方向移動機構と、においてのみ、相違する。
【0048】
ダイ10a、10bは、ケージ内において回転自在に取り付けられている。ケージは、マンドレル14の軸方向16に移動することができる。ダイ10a、10bは、ブランク22の径および厚さを減少させることができる。
【0049】
ブランク22は、事前製造、および、ピルグリム圧延操作とすることができる成形操作によって得られたものである。
【0050】
ブランク22は、マンドレル14の円柱部17の外径よりもわずかに大きな内径、および、ガイドチューブのうちの壁厚さが最大である部分をなす下端部の壁厚さよりも大きな壁厚さを有している。
【0051】
図4(a)に示すように、ローリングミルのケージ内において回転可能に取り付けられたダイ10a、10bが、マンドレル14の部分18、19に沿って往復式に移動するようにして、マンドレル14が配置されている第1圧延ステージにおいて、ピルグリム圧延がもたらされる。
【0052】
このようにして、ローリングミルの出力部分において得られた、すなわち、マンドレル14の領域19の下流側において得られた、管状製品24の内径および外径は、製造されるべきガイドチューブの主部の内径および外径に等しい。特に、マンドレル14の部分19は、製品24の径調整を行うための部分をなしている。これにより、製品24の内径は、ガイドチューブの製造のために必要とされた内径に対して正確な寸法となる。
【0053】
ダイ10a、10bの寸法および構成は、ローリングミルの出力側における製品24の外径が、ガイドチューブの製造のために必要とされる外径に正確に対応するようなものとされている。
【0054】
第1圧延ステージは、連続した所定数の圧延ステップを行うことにより達成される。各圧延ステップの間においては、ブランク22は、前進し、回転する。マンドレル14も、各圧延ステップの間において、所定角度だけ回転する。
【0055】
ピルグリムローリングミルに設けられたコーディングデバイスにより、ローリングミルの出力部において得られた製品24の長さを、非常に正確に決定することができる。所定長さの製品がローリングミルの出力部において得られたときには、コーディングデバイスは、マンドレル14を軸方向に移動させるための、また付加的にローリングミルを停止させるための信号を送出する。
【0056】
図4(b)に示すような第2圧延ステージは、実際、マンドレル14を、ピルグリムローリングミルの上流側に向けて軸方向に移動させた後に、行われる。これにより、マンドレルの部分20、21を、ローリングミルの作業領域に、すなわち、ダイ10a、10bの変位領域に、配置することができる。
【0057】
図4(a)に示すような第1圧延ステージを行うための位置から、図4(b)に示すような第2圧延ステージを行うための位置への、マンドレル14の移動は、ダイ10a、10bが収容されているケージを移動させずにピルグリム圧延操作を停止した状態で行うことができる。あるいは、圧延を停止させずに、ダイが収容されているケージを動かしたまま行うことができる。
【0058】
圧延の第2ステージにおいては、ローリングミルのケージによって軸方向に移動される回転ダイが、ブランクの寸法を減少させる。この場合、ローリングミルの出力部において、すなわち、マンドレルの部分21の下流側において、圧延管状製品25を得ることができる。この圧延管状製品25の内径は、マンドレルの部分21によって径調整されていることにより、ガイドチューブの補強下端部として要求された内径に等しい。
【0059】
製品25の外径は、第1圧延ステージにおいて得られた製品24の外径と同一である。というのは、使用されたダイ10a、10bが、圧延の第1ステージにおいて使用されたものと同じであるからである。
【0060】
マンドレル14は、一般に、ブランクの内径よりも小さな値から、製造されるべきガイドチューブの主部の内径に等しい値へと、断面直径が減少する第1部分と、製造されるべきガイドチューブの主部の内径に等しい値から、製造されるべきガイドチューブの下端部の内径に等しい値へと、断面直径が減少する第2部分と、を備えていなければならない。
【0061】
したがって、ローリングミルの出力部における製品25の壁厚さは、ガイドチューブの下端部として得られるべき壁厚さに、非常に正確に対応する。上述のように、コーディングデバイスによって、ローリングミルの出力部において製品25の所定長さが得られた時点において、第2圧延ステージを停止させることができる。その後、マンドレルは、第2位置から第1位置へと移動する。
【0062】
第1圧延ステージ、マンドレルの第1移動、第2圧延ステージ、および、マンドレルの第2移動は、ブランク22の総長さの圧延に必要な回数だけ、繰り返して行うことができる。また、第1圧延ステージと第2圧延ステージの順序を交換し得ることは明白である。
【0063】
このようにして、ピルグリムローリングミルの出力部において、製造されるべきガイドチューブの主部の内径および壁厚さに対応した内径および壁厚さを備えた部分24と、製造されるべきガイドチューブの下端部の内径および壁厚さに対応した内径および壁厚さを備えた部分25と、が連続して形成された圧延管状製品を得ることができる。
【0064】
ローリングミルの出力部において得られるそのような製品が、図5に示されている。図においては、壁厚さの違いが、大いに誇張されて図示されていることに注意されたい。
【0065】
加圧水型原子炉における燃料アセンブリのガイドチューブの製造の場合には、ガイドチューブの主部またはボディ部24は、0.5mmとすることができる厚さe1を有している。ガイドチューブの補強された下端部は、1.2mmの程度の厚さe2を有している。
【0066】
ピルグリムローリングミル上における本発明による製造方法であると、ガイドチューブの主部と補強部との間において、180mmの程度の長さlを有する移行領域を得ることができる。すべての場合において、移行領域のこの長さは、100mmよりも長い。ガイドチューブ自身が12.5mmの程度の直径を有していることにより、主部と補強部とにおけるガイドチューブの内径の変化は、結局、非常に緩やかなものとなる。ガイドチューブの内表面において異なる内径を有する部分どうしの間の移行領域は、傾斜部とは明瞭に相違している。このことは、本発明によるガイドチューブと、従来のガイドチューブと、における差異をなしている。
【0067】
また、チューブ成形プロセスが連続的であることにより、金属に傷みがなく、そのため、ガイドチューブの構造的に弱い部分を形成することがないような、移行領域を得ることができる。
【0068】
図6に示すように、ローリングミルの出力部において得られるとともに異なる壁厚さでもって連続する領域24、25を備えた管状製品26は、一定の外径を有している。
【0069】
また、領域24、25の長さは、所定位置においてガイドチューブ26をカットまたは切断することによって、要求された長さおよび壁厚さを有した主部またはボディ部27cと補強下端部27bとを各々のガイドチューブ27が備えた複数のガイドチューブ27が得られるように、圧延時に設定されている。好ましくは、領域24および25は、それぞれ、製造されるべきガイドチューブの主部の長さの2倍、および、補強部の長さの2倍に、ほぼ等しいような長さとされている。
【0070】
そのラインに沿ってツール29が圧延管状製品26のカットを連続して行うためのカットライン28の位置の検出は、管状製品26のうちの厚さの異なる部分どうしの間の移行領域27cを正確に検出するためのデバイスを使用することにより行うことができる。管状製品26の領域25のうちの、180mm長さでありかつ厚さが第1厚さe1から第2厚さe2へと変化している移行領域27cに連結している端部は、非常に正確に検出することができる。領域25、27cの端部の正確な検出は、管状製品26の内部に軸方向に挿入されるパイプ31とこのパイプ31の先端に取り付けられたノズル32とを備えて構成されたエアゲージ30を使用して、行うことができる。エアゲージ30により測定することができる、ノズル32からのエアの流通特性によって、厚さe2を有する領域25の端部、および、管状製品のうちの厚さが異なる部分どうしの間に位置した移行領域27cの端部を、非常に正確に決定することができる。
【0071】
カッティングディスクによって形成されたカットツール29は、ライン28に沿ったチューブのカットのために既に配置された位置から、所定距離だけ離間した位置に、配置される。
【0072】
カットツール29は、ローリングミルの出力部において、管状製品26と同期して移動するような、浮動式カットデバイスを備えるようなツールとすることができる。
【0073】
また、ガイドチューブに巻回されるとともに渦電流センサを備えたコイル33を使用して、領域25の端部の位置および移行領域27cの端部の位置を、決定することもできる。
【0074】
圧延管状製品26の連続する領域25および移行領域27cの端部を検出することによって、管状製品26において連続的に形成されたガイドチューブ27、27’、27”を切り離すことができる。
【0075】
ピルグリムローリングミルによって圧延された各ブランクから、4つか5つの4m程度の長さとされたガイドチューブを、得ることができるような、ブランクおよびピルグリム圧延操作とすることができる。
【0076】
また、圧延操作時にローリングミルの出力部において、ガイドチューブの形態で圧延製品をカットするために、異なる圧延ステージどうしの間におけるマンドレルの前進または後退に対して、所定の時間遅れをもって駆動される浮動式または移動式のカットデバイスを使用することができる。あるいは、上述のような移行領域の端部を検出するためのデバイスによって駆動される浮動式または移動式のカットデバイスを使用することができる。移行領域の正確な検出を行い、ローリングミルの出力部において浮動式カットデバイスによるガイドチューブのカットを行う場合には、圧延製品において厚さの異なる領域24、25の長さに関して、望ましくない誤差を避けることができ、単純なカットでもって、ガイドチューブを得ることができる。
【0077】
通常と同様に、ガイドチューブの主部の壁厚さよりも大きな壁厚さを有している下端領域の長さは、ガイドチューブの総長さの10〜30%とされている。
【0078】
したがって、本発明によれば、自動化が容易であって、そのため、非常に高い生産性をもたらし得る圧延プロセスによって、一体型でありかつ例えば下端部が補強されたガイドチューブを得ることができる。
【0079】
本発明の範囲は、上記実施形態に限定されるものではないことは、理解されるであろう。
【0080】
すなわち、ピルグリム圧延を行うためのマンドレルは、上記とは異なる形態とすることができる。
【0081】
本発明による方法は、ジルコニウム合金とは異なる材料から構成されたガイドチューブの製造に使用することができる。
【0082】
一般に、本発明は、制御ロッドの減速がダッシュポット効果によってもたらされるような任意のタイプの燃料アセンブリのガイドチューブの製造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】従来技術において、一体型に製造された補強ベースを有するガイドチューブを示す軸方向断面図である。
【図2】管状ブランクの圧延時におけるピルグリムローリングミルを示す断面図である。
【図3】本発明によるガイドチューブの製造方法において使用される成形用マンドレルを示す側面図である。
【図4】本発明によるガイドチューブの製造方法の各ステージにおけるブランクの成形時の、マンドレルとブランクとを示す一部断面を含む側面図である。
【図5】本発明によるガイドチューブの製造時において、ピルグリムローリングミルの出力端において得られた製品を示す軸方向断面図である。
【図6】ピルグリムローリングミルの出力端において得られた圧延製品を示す軸方向断面図であって、ガイドチューブを得るためのカット操作の様子を示している。
【符号の説明】
【0084】
14 マンドレル
17 円柱状導入部
18 マンドレル部(マンドレルの第1部分のマンドレル部)
19 わずかな円錐状部(マンドレルの第1部分のわずかな円錐状部)
20 マンドレル部(マンドレルの第2部分のマンドレル部)
21 わずかな円錐状部(マンドレルの第2部分のわずかな円錐状部)
22 管状ブランク
26 圧延管状製品
27 ガイドチューブ
27’ ガイドチューブ
27” ガイドチューブ
27c 移行領域
28 カッティングライン
29 カットツール
30 エアゲージ
31 パイプ
32 ノズル
e1 第1壁厚さ
e2 第2壁厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に一定の外径を有するとともに、第1壁厚さを有する少なくとも1つの主部と、ガイドチューブの長さの一部に設けられかつ前記第1壁厚さよりも厚い第2壁厚さを有する補強部と、を備える、原子炉燃料アセンブリのためのガイドチューブを製造するための方法であるとともに、ピルグリムローリングミルのマンドレル上において管状ブランクを圧延する方法であって、さらに、
第1ステージとして、前記マンドレルの第1部分において、前記ガイドチューブの外径にまで前記ブランクの外径を減少させるとともに、前記第1壁厚さおよび前記第2壁厚さのうちの一方にまで前記ブランクの壁厚さを減少させるように、前記ブランクの第1部分の圧延を行い、
前記ブランクの軸方向に前記マンドレルを移動させ、
第2ステージとして、前記第1部分から前記マンドレルの軸方向に離間した前記マンドレルの第2部分において、前記ガイドチューブの外径にまで前記ブランクの外径を減少させるとともに、前記第1壁厚さおよび前記第2壁厚さのうちの他方にまで前記ブランクの壁厚さを減少させるように、前記ブランクの第2部分の圧延を行い、
前記マンドレルを、前記ブランクの内径よりも小さな第1の値から、製造されるべき前記ガイドチューブの前記主部の内径に等しい値にまで、前記マンドレルの軸方向に沿って断面径が縮径する第1回転対称部分と、前記ガイドチューブの前記主部の内径に等しい値から、前記ガイドチューブの前記補強部の内径に等しい第2の値にまで、前記マンドレルの軸方向に沿って断面径が縮径する第2回転対称部分と、を長さ方向に連続して具備しているものとすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法を実行するためのピルグリムローリングミルの成形用マンドレルであって、
前記ブランクの内径よりも小さな第1の値から、製造されるべき前記ガイドチューブの前記主部の内径に等しい値にまで、前記マンドレルの軸方向に沿って断面径が縮径する第1回転対称部分と、
前記ガイドチューブの前記主部の内径に等しい値から、前記ガイドチューブの前記補強部の内径に等しい第2の値にまで、前記マンドレルの軸方向に沿って断面径が縮径する第2回転対称部分と、を長さ方向に連続して具備していることを特徴とするマンドレル。
【請求項3】
前記マンドレルの連続した前記部分の各々は、回転対称表面を有しかつ長さ方向曲線が放物線形状であるマンドレル部と、前記ガイドチューブの前記主部および前記補強部のそれぞれの径調整を行うための部分をなす円錐状部と、を備えていることを特徴とする請求項2記載のマンドレル。
【請求項4】
さらに、前記ブランクの内径よりも小さな径とされた円柱状導入部を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のマンドレル。
【請求項5】
実質的に一定の外径を有するとともに、第1壁厚さを有する少なくとも1つの主部と、ガイドチューブの長さの一部に設けられかつ前記第1壁厚さよりも厚い第2壁厚さを有する補強部と、を備える、原子炉燃料アセンブリのためのガイドチューブであって、
前記主部と前記補強部との間に、100mmを超える長さとされた少なくとも1つの移行領域を備え、
この移行領域においては、前記ガイドチューブの壁厚さは、前記第1壁厚さから前記第2壁厚さにまで、漸次的に変化することを特徴とするガイドチューブ。
【請求項6】
前記ガイドチューブのうちの前記第2壁厚さを有した前記補強部の長さは、前記ガイドチューブの総長さの10〜30%であることを特徴とする請求項5記載のガイドチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18347(P2009−18347A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262231(P2008−262231)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願平10−26164の分割
【原出願日】平成10年2月6日(1998.2.6)
【出願人】(501087652)コンパニー・ユーロペアンヌ・デュ・ジルコニウム−セジュ (2)