説明

原油回収能が強化された界面活性剤組成物およびその製造方法

【課題】原油回収能が強化された界面活性剤組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記の成分を含む原油回収能が強化された組成物:(a)下記一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを含む界面活性剤:


(式中、R1は炭素原子約8乃至40個を含み、かつ約20%乃至約50%のメチル分岐部を含むあるアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)、(b)溶媒、(c)不活性化剤、および(d)ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下油層からの原油の回収に関するものであり、特には、原油回収能が強化された界面活性剤組成物およびその製造方法に関する。また、本発明は、地下油層からの原油の回収を増進させる方法であって、本発明の原油回収能が強化された界面活性剤組成物を用いる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
地下油層にある油から原油を得るためには、「一次回収」法で利用する自然力が枯渇してくるにつれて各種の圧入法の使用を用いることになる。「二次」もしくは「三次」の回収法では、おそらく大部分の原油を地層から押し出さなければならない。さらに、油層によっては一次回収法であっても、原油の回収に充分な自然力が無いことがある。そのような圧入法を使用する原油の回収法は、強化された原油回収法の一つの例である。
【0003】
今日、石油産業は、地下油層に残る未回収の原油を回収する能力を向上させるような技術を再評価している。一次回収法で油田が完全に枯渇するずっと前に、早くから置換用流体又はガスの圧入を開始することがある。二次及び三次の回収状況に際して、というよりはむしろ、置換流体又はガスの最初の圧入の開始当初から、置換効率または取り出し効率を高める方法を使用することがある。
【0004】
原油の生産のために地下油層に圧入する最も簡便な方法は、油井に液体または気体を圧入して強引に原油を地表に押し上げることである。最も広く使用されている流体は水である。しかし、水は簡単に油と置き換わらない。その理由は、二つの液体が、液体間で高い界面張力を示し、その結果として高い毛細管圧力を生じ、このため多孔質体に閉じ込められるからである。
【0005】
化学薬剤を添加して圧入液の性状を改良することは、原油採収の改良や強化の分野ではよく知られている。界面活性剤は、原油回収能の強化のために水性媒体に使用されている化学薬剤化合物の一部類である。界面活性剤が油水間の界面張力を有効に下げて、閉じ込められた油が油層中を移動するのを可能にすることは知られている。
【0006】
原油回収能が強化された界面活性剤として、アルキルアリールスルホネート類が使用されている。それらは単独で、あるいは補助界面活性剤および/または犠牲剤(sacrificial agent)と共に使用される。アルキルアリールスルホネート類は、油水間の界面張力を下げることができるからだけでなく、様々な量の他の塩類、例えば塩化ナトリウムと共に使用されたときに望ましい相的な挙動を示すことからも、一般的に使用されている。分子量や分子量分布、分枝、アリール基のアルキル基への結合位置によって、アルキルアリールスルホネート類を、様々な電解質濃度、すなわち塩分濃度でも、水性又は油性相に優先的に留まるように最適化させることができる。低い塩分濃度ではアルキルアリールスルホネート類は水中に留まる傾向にあるが、高い塩分濃度では油の方により多く分配される。中間の塩分濃度ではアルキルアリールスルホネート類は、ミセル溶液の生成をもたらすことがある。何れの場合も、界面活性剤と油と水を含む膨潤ミセル溶液はマイクロエマルジョンと呼ばれる。最適な塩分濃度では、同量の油と水とがマイクロエマルジョンに溶解している。よく調整し適合化したアルキルアリールスルホネート類では、マイクロエマルジョンとして可溶化した大量の油と水とが極度に低い界面張力を生じさせて、油層からの高い原油回収能がもたらされる。
【0007】
地下の炭化水素油層中の水の塩分濃度はかなり変動する。例えば、インドネシアのミナス油田の全溶解塩は0.2から0.3質量パーセントの間にある。別の油層では塩分濃度は、2.0パーセント程度又はそれ以上の塩化ナトリウムであったり、0.5パーセントを越える塩化カルシウムと塩化マグネシウムであったりする。油層条件で本来の油層塩水と油層油を用いて、相的な挙動実験により最適化したアルキルアリールスルホネートを評価することによって、それぞれの油層について原油回収に用いる界面活性剤攻法用にアルキルアリールスルホネート類を最適化することが望ましい。相的な挙動実験に加えて若干の界面張力測定も、界面張力が許容可能なレベルで低いことを証明するために必要である。特に、場合によっては圧入塩水が本来の油層塩水とは異なるので、界面活性剤を本来の油層塩水を用いての試験に加えて、圧入溶液を用いた追加の試験も必要である。
【0008】
一般に、高純度のアルキルアリールスルホネート類、すなわち分子量の範囲が狭いものは軽質原油の回収に有用である。そのようなアルキルアリールスルホネート類は、ろう分を多く含む原油の回収には不充分な層的挙動、すなわち不充分な能力を示す。ろう分が典型的に高い油は一般に、当量平均炭素数(EACN)も高い。当量アルカン炭素数(EACN)は、炭化水素混合物の平均炭素鎖長を表したものである。例として、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンのアルカン炭素数はそれぞれ5、6および7である。しかし、1モルのペンタンと1モルのヘキサンを含む混合物のEACNは5.5となる。油田原油は複合混合物であるが、界面活性剤と相互作用を起こすと単一成分流体のように挙動して、EACNはその構成成分のモル分率平均になる。
【0009】
アルキル基の炭素鎖長の幅広いスペクトルを示すアルキルアリールスルホネート類の方が、含ろう原油または当量平均炭素数(EACN)の高い原油の回収に使用するのに望ましい。前記マイクロエマルジョン中の油の量を最大にするためには、アルキルアリールスルホネートの分子量及び/又は分子量分布を最適化すること以外に、アルキルアリールスルホネートと組み合わせて、別の成分、例えば無機塩類や補助溶媒、高分子物質、補助界面活性剤を使用することによっても、相的挙動を改善することができる。強化した原油回収法用組成物の性能は、界面活性剤単位容量当りの溶解油の容量である油溶化パラメータでも評価することができる。油溶化能は界面張力に反比例する。さらに、配合物が安定したマイクロエマルジョンと低い界面張力をもたらす能力は、実験室で迅速に、すなわち1日未満で評価することができる。
【0010】
油層の原油生産を増大させるのに使用される界面活性剤配合物は昔から、補助溶媒を様々な量で含有する。例えば、ミナスSFT−2界面活性剤実地試験で使用された配合物は溶媒を約4%含有する。溶媒の原価は配合物の総原価に大いに影響を与える。水性安定度(油層塩水に希釈した界面活性剤配合物の安定度である)と呼ばれる安定度を維持するためには溶媒が必要となる。必要とする溶媒の量を減らすことが有利となる。
【0011】
界面活性剤攻法を利用する原油回収法は、多数の特許及び特許出願文献に記述されている。界面活性剤の使用に加えて、原油回収法に補助界面活性剤や犠牲剤を使用することを論じている特許及び特許出願文献も数多くある。
【0012】
特許文献1には、地下油層から残存油を回収するための改良された濃縮界面活性剤配合物および方法が開示され、特には、圧入物質と残存油との間に超低界面張力を生じさせる改良アルカリ界面活性剤攻法であって、濃縮界面活性剤配合物をその臨界ミセル濃度又はそれより高いか、低い濃度で供給して、天然に存在する有機酸性成分と原油回収効率の向上に有用な圧入アルカリ物質との反応から生じる界面活性を示す物質をその場で生成させることを含む攻法が開示されている。
【0013】
特許文献2には、原油回収法および特定の部類のアルキルアリールスルホネート界面活性剤が開示されている。界面活性剤は、偶数炭素数が12乃至28又はそれ以上の範囲にある広い分布を持つアルファオレフィン流から誘導される。
【0014】
原油増進回収法に関する総括的な専門書としては非特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6022843号明細書、スウ、外
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0199395A1号明細書、ベルガー、外
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】M.バヴィエール(M.Baviere)編集、「強化された原油回収法の基礎概説(Basic Concepts in Enhanced Oil Recovery Processes)」(エルスヴィア・アプライド・サイエンス(Elsevier Applied Science)、ロンドン及びニューヨークよりSCI向けに発行、1991年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、地下油層からの原油の回収に関するものであり、特には、強化された原油回収法用の界面活性剤組成物およびその製造方法に関する。また、本発明は、地下油層からの原油の回収を増進させる方法であって、本発明の強化された原油回収法用の界面活性剤組成物を用いる方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、下記の成分を含む強化された原油回収法に用いる組成物に関する:
(a)下記一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを含む界面活性剤:
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1は、炭素原子約8乃至40個を含み、かつ約20%乃至約50%のメチル分岐部(枝分れ部あるいは分枝)を含むアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)
(b)溶媒、
(c)不活性化剤、および
(d)ポリマー。
【0021】
また、本発明は、下記の成分を混合することを含む強化された原油回収法に用いる組成物の製造方法にも関する:
(a)下記一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを含む界面活性剤:
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R1は、炭素原子約8乃至40個を含み、かつ約20%乃至約50%のメチル分岐部(枝分れ部あるいは分枝)を含むアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)
(b)溶媒、
(c)不活性化剤、および
(d)ポリマー。
【0024】
また、本発明は、地下の炭化水素含有層から原油を回収する方法であって、下記の工程を含む方法にも関する:
(i)該地層に、下記の成分を含む強化された原油回収法用組成物を圧入する工程:
(a)下記の一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート:
【0025】
【化3】

【0026】
(式中、R1は、炭素原子約8乃至40個を含み、かつ約20%乃至約50%のメチル分岐部(枝分れ部あるいは分枝)を含むアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)
(b)溶媒、
(c)不活性化剤、および
(d)ポリマー、
そして
(ii)一箇所以上の生産井から原油を回収する工程。
【発明の効果】
【0027】
本発明のアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを強化された原油回収法用の界面活性剤配合物に用いると、使用する溶媒の量を著しく減らすことができる。また、ナトリウムヒドロキシルスルホネートを強化された原油回収法用の界面活性剤配合物に用いると、回収可能な原油の量をほぼ維持させながら、あるいは増加させながら、一方、溶媒の必要量を低減させることできる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限りは下記の意味を有する。
【0029】
「主界面活性剤」は、本明細書で使用するとき、組成物中に存在する芳香族アニオン界面活性剤を意味する。
【0030】
「補助界面活性剤」は、本明細書で使用するとき、組成物中に存在する非芳香族アニオン界面活性剤を意味する。
【0031】
「活性分」は、本明細書で使用するとき、各界面活性剤種(すなわち、主界面活性剤または補助界面活性剤)のナトリウム塩の濃度を意味する。
【0032】
「アルキレート」は、本明細書で使用するとき、本発明のアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート類を製造するのに用いられるアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を意味する。アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、ヒドロキシル化合物を線状アルファオレフィンまたは異性化オレフィンでアルキル化することにより製造している。
【0033】
「異性化アルファオレフィン(IAO)」は、本明細書で使用するとき、異性化条件に付されたアルファオレフィンであって、その結果、存在するオレフィン種の分布の変化および/またはアルキル鎖に沿ったアルキル分枝の導入が生じているものを意味する。異性化されたオレフィン生成物は、炭素原子約12乃至約40個、より好ましくは炭素原子約20乃至約24個を含む線状アルファオレフィンを異性化することにより得ることができる。
【0034】
「アルカリ金属」は、本明細書で使用するとき、周期表の1A族金属を意味する。
【0035】
「溶媒」は、本明細書で使用するとき、アルコール類、エーテル類および/または各種の非イオン性物質を意味する。一般に、これら非イオン性物質は多価イオンに対する許容度がかなり高く、水溶性であり、また界面活性剤配合物の粘度の低減ももたらすことができる。
【0036】
「不活性化剤」は、本明細書で使用するとき、アルカリ金属炭酸塩、二炭酸塩又は水酸化物塩を意味する。
【0037】
「強化された原油回収法」又は「EOR」は、本明細書で使用するとき、地下油層からの炭化水素の回収能が強化された方法を意味する。
【0038】
油溶化パラメータ「SPo」は、界面活性剤単位容量当りの溶解油の容量を意味する。一般に、油溶化パラメータは相的挙動実験により測定される。
【0039】
「界面張力」又は「IFT」は、本明細書で使用するとき、試験油そして界面活性剤組成物を様々な濃度で含む様々な塩分濃度の水の間の界面張力を意味する。一般に界面張力は、スピニング・ドロップ張力計を使用して測定されるか、あるいは相的挙動実験から算出することができる。
【0040】
「中間相」は、相的挙動試験中に、試験油と界面活性剤組成物を含む油層塩水とを一緒にすることによって生成するマイクロエマルジョンを意味する。
【0041】
「2−アルキル結合」は、アルキル基の芳香環への結合であって、最長アルキル鎖がアルキル鎖の2位で芳香環に結合していることを意味する。
【0042】
特に断わらない限り、百分率は全て質量パーセントであり、そして圧力は大気圧である。
【0043】
本発明は、界面活性剤、溶媒、ポリマー、不活性化剤、および任意に補助界面活性剤を含む強化された原油回収法用の界面活性剤組成物、その強化された原油回収法用界面活性剤組成物の製造方法、および地下の炭化水素含有層から原油を回収する方法に関する。
【0044】
[界面活性剤]
本発明の界面活性剤は下記一般式を有する。
【0045】
【化4】

【0046】
式中、R1は、炭素原子約8乃至40個を含み、かつメチル分岐部(分枝)が約20%乃至約50%であるアルキル基であり、そしてMは、一価のカチオンである。ある態様ではMは、アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムである。
【0047】
アルカリ金属はアルカリ土類金属であることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属はアルカリ金属水酸化物であり、例えば、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0048】
置換アンモニウムの例としては、炭素原子数約1乃至約15の脂肪族又は芳香族炭化水素基、例えばアルキル、アリール、アルカリールおよびアラルキルであって、任意に窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を1個以上有する炭化水素基、約1乃至約4個で独立に置換されたアンモニウムが挙げられ、ヘテロ原子は脂肪族又は芳香族複素環に存在していてもよい。好適な複素環置換基の例としては、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、イミダゾール、およびキノリンが挙げられる。複素環置換基は、C−ピリジル置換アンモニウムにおけるように、複素環の炭素原子によりアンモニウム部に置換されていてもよいし、あるいはピリジニウムイオンにおけるように、第四級アンモニウム窒素自体が複素環の窒素原子であってもよい。
【0049】
本発明に用いられる主界面活性剤は、フェノールまたは置換フェノールのアルキル化により得られたアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート塩である。フェノールの好適な置換基としては、炭素原子1から5個のアルキル基、ハロ及びシアノ基が挙げられる。
【0050】
一般にフェノール又は置換フェノールは、ノルマルアルファオレフィン(NAO)類又は異性化アルファオレフィン類の混合物でアルキル化する。アルキル鎖は、炭素原子約8乃至約40個を含むことが好ましく、より好ましくは炭素原子約20乃至約24個を含んでいる。アルキル鎖の一部は分枝していてもよい。20−50パーセントのアルキル基が分岐鎖基(枝分れ部)であることが好ましい。
【0051】
本発明のアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート類は、酸性アルキル化触媒の存在下で、ヒドロキシ芳香族化合物と異性化アルファオレフィン類の反応により生成したアルキレートから誘導されることが好ましい。ある態様では酸性アルキル化触媒のハメット(H0)酸性度関数は、−2.3以下である。ある態様では酸性アルキル化触媒のハメット(H0)酸性度関数は、−2.2以上である。酸性アルキル化触媒は更に、酸価がグラム当り約5.0ミリ当量以上であることが好ましい。
【0052】
ハメット(H0)酸性度関数が−2.3以下である好適な酸性アルキル化触媒は、当該分野ではよく知られていて、ナフィオン(Nafion、商標)(デュポン社(DuPont、デラウェア州ウィルミントン)製のフルオロカーボンスルホン酸重合体不均質酸触媒)、およびアンバリスト(Amberlyst、商標)36樹脂(ローム・アンド・ハース社(Rohm & Haas、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)製のスルホン酸樹脂)等を挙げることができる。
【0053】
ハメット(H0)酸性度関数が−2.2以上である好適な酸性アルキル化触媒も、当該分野ではよく知られていて、アンバリスト(商標)15樹脂(ローム・アンド・ハース社(ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)製のスルホン酸樹脂)等が挙げられる。
【0054】
オレフィン類
本発明の界面活性剤を製造するのに用いられるオレフィン類は、種々の原料から誘導することができる。そのような原料としては、ノルマルアルファオレフィン類、線状アルファオレフィン類、異性化線状アルファオレフィン類、二量化及びオリゴマー化オレフィン類、およびオレフィン複分解や分岐オレフィン類から誘導されたオレフィン類を挙げることができる。オレフィン類を誘導することができる別の原料としては、石油またはフィッシャー・トロプシュワックスの分解によるものがある。分解に先立ってフィッシャー・トロプシュワックスを水素化処理してもよい。他の市販原料としては、パラフィン脱水素や、エチレン及び他のオレフィン類のオリゴマー化、メタノールからオレフィン法(メタノール分解装置)等から誘導されたオレフィン類が挙げられる。
【0055】
ある態様では、異性化されて炭素原子C8−C40個、好ましくは炭素原子C20−C24個を含むノルマルアルファオレフィン(NAO)の混合物で、ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化して、界面活性剤アルキレートにすることができる。
【0056】
オレフィン類の原料
本発明で界面活性剤を製造するのに用いられるノルマルアルファオレフィン類は市販されており、あるいは当該分野でよく知られている方法により製造してもよい。
【0057】
本発明に用いられるオレフィン類は、線状でも、異性化された線状でも、分岐していても、あるいは部分的に分岐していてもよい。オレフィンは、炭素数単一のオレフィンであってもよいし、あるいは線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分岐オレフィンの混合物、部分分岐オレフィンの混合物、または上記のうちの何れかの混合物であってもよい。
【0058】
オレフィン類は、炭素数が炭素原子約8乃至炭素原子約40の範囲にあるオレフィン類から選ぶことができる。好ましくはオレフィン類は、炭素数が炭素原子約10乃至約30、より好ましくは炭素原子約20乃至約24の範囲にあるオレフィン類から選ぶ。
【0059】
別の態様ではオレフィン又はオレフィンの混合物を、炭素原子約8乃至約40個を含む線状アルファオレフィン類又は異性化オレフィン類から選ぶ。より好ましくは、炭素原子約10乃至約30個を含む線状アルファオレフィン類又は異性化オレフィン類から、オレフィン混合物を選ぶ。最も好ましくは、炭素原子約20乃至約24個を含む線状アルファオレフィン類又は異性化オレフィン類から、オレフィン混合物を選ぶ。
【0060】
分岐オレフィン類は、C3又はそれ以上のモノオレフィン類(すなわち、プロピレンオリゴマー類、ブチレンオリゴマー類、またはコオリゴマー類等)から誘導することができるポリオレフィン類から選ぶことができる。好ましくは分岐オレフィンの混合物は、プロピレンオリゴマー類、またはブチレンオリゴマー類またはそれらの混合物の何れかである。
【0061】
本発明の一態様では、ノルマルアルファオレフィン類を固体又は液体の酸触媒を使用して異性化する。第一のタイプの酸性触媒は、少なくとも一種の金属酸化物を有し、平均孔径が5.5オングストローム未満である固体触媒であることが好ましい。より好ましくは固体触媒は、一次元の細孔系を持つ分子篩、例えばSM−3、MAPO−11、SAPO−11、SSZ−32、ZSM−23、MAPO−39、SAPO−39、ZSM−22およびSSZ−20である。異性化に使用できる他の可能な固体酸性触媒としては、ZSM−35、SUZ4、NU−23、NU−87および天然又は合成フェリエライト類を挙げることができる。これらの分子篩は、当該分野ではよく知られ、そしてローズマリー・ゾスタク(Rosemarie Szostak)著、「分子篩便覧(Handbook of Molecular Sieves)」(ニューヨーク、ヴァン・ノストランド・ラインホルド(Van Nostrand Reinhold)、1992年)、および米国特許第5282858号明細書に記述されていて、その内容も如何なる目的であれ参照内容として本明細書の記載とする。使用することができる別のタイプの異性化触媒としては、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)がある。
【0062】
異性化工程は、バッチ式でも連続式でも実施することができる。工程温度は50℃乃至250℃の範囲であってよい。バッチ式で一般的な方法は、撹拌式オートクレーブ又はガラスフラスコを使用することであり、所望の反応温度に加熱することができる。連続法は固定床法で最も効率良く行われる。固定床法の空間速度は、0.1乃至10WHSV又はそれ以上の範囲であってよい。固定床法では、触媒を反応器に充填して、少なくとも150℃の温度で減圧下でまたは乾燥不活性ガスを流しながら活性化又は乾燥する。活性化後に触媒を所望の反応温度まで冷却し、そしてオレフィン流を導入する。部分分岐した異性化オレフィンを含む反応器流出液を捕集する。得られた部分分岐異性化オレフィンは、非異性化オレフィンとは違ったオレフィン分布(アルファオレフィン、ベータオレフィン、内部オレフィン、三置換オレフィンおよびビニリデンオレフィン)と分岐量を含んでいて、オレフィンのアルキル鎖の炭素1と炭素2間の二重結合のレベル(アルファオレフィン量)に関して適切な構造を得るためには条件を選択する。
【0063】
アルキル化
ヒドロキシ芳香族化合物を異性化アルファオレフィンと反応させて、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を生成させる。
【0064】
ある態様では、固体酸性アルキル化触媒を使用してアルキル化を起こすことができる。
【0065】
アルキル化触媒は、少なくとも一種の金属酸化物を有する固体触媒であり、天然ゼオライト類、合成ゼオライト、合成分子篩および粘土類からなる群より選ばれる。好ましくは固体酸性触媒は、酸性粘土の酸性形または酸性分子篩、または平均孔径が少なくとも6.0オングストロームのゼオライトを含んでいる。そのようなゼオライト類としては、ゼオライトY、ベータ、SSZ−25、SSZ−26およびSSZ−33が挙げられる。他の可能な触媒としては、Lゼオライト、モルデナイト、ボッグサイト、クロヴェライト、VPI−5、MCM−41、MCM−36、SAPO−8、SAPO−5、MAPO−36、SAPO−40、SAPO−41、MAPSO−46、CoAPO−50、六方晶フォージャサイト、ECM−2、グメリナイト、マザイト(オメガゼオライト)、オフレタイト、ZSM−18およびZSM−12を挙げることができる。これらの触媒は、ローズマリー・ゾスタク著、「分子篩便覧」(ニューヨーク、ヴァン・ノストランド・ラインホルド、1992年)に記述されている。より好ましくは、固体酸性触媒はゼオライトYを含んでいる。好ましいゼオライトYのシリカ対アルミナ比は少なくとも40:1である。
【0066】
有用な酸性粘土は、天然産出物質又は合成物質から誘導することができる。当該分野の熟練者であれば、アルキル化触媒として知られている粘土が多数存在することを知悉している。そのような酸性粘土の例としては、モンモリロナイト、ラポナイトおよびサポナイトが挙げられる。柱状粘土も触媒として使用することができる。
【0067】
固体酸性触媒は、ゼオライト類、酸性粘土類および/またはシリカ・アルミナからなる群より選ぶことができる。望ましい固体触媒は酸性形の陽イオン交換樹脂であり、例えば架橋スルホン酸触媒である。触媒は分子篩であってもよい。望ましい分子篩は、シリカ・アルミノリン酸塩分子篩または金属シリカ・アルミノリン酸塩分子篩であり、金属は例えば鉄、コバルトまたはニッケルであってよい。他の好適な固体酸性触媒の例は、米国特許第7183452号明細書に開示されていて、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0068】
ある態様では、ブレンステッド酸触媒またはルイス酸触媒を使用してアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を製造することもできる。
【0069】
ブレンステッド酸触媒は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸および硝酸等からなる群より選ぶことができる。好ましくはブレンステッド酸触媒はフッ化水素酸である。
【0070】
ルイス酸触媒は、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素および三ヨウ化ホウ素等からなるルイス酸の群より選ぶことができる。好ましくはルイス酸触媒は三塩化アルミニウムである。
【0071】
ブレンステッド酸触媒は、失活した(すなわち、触媒がその触媒活性の全部又は一部を失った)後、再生することができる。当該分野でよく知られている方法を使用して、酸触媒、例えばフッ化水素酸を再生させてもよい。
【0072】
アルキル化反応は一般に、芳香族とオレフィンのモル比が1:15乃至25:1で実施する。工程温度は100℃乃至250℃の範囲であってよい。オレフィン類の沸点が高くなるにつれて、液相で工程を行うことが好ましい。アルキル化工程はバッチ式でも連続式でも行うことができる。バッチ式で代表的な方法は、所望の反応温度に加熱することができる撹拌式オートクレーブ又はガラスフラスコを使用することである。連続法は固定床法で最も効率良く行われる。固定床法の空間速度は、0.1乃至10WHSV又はそれ以上の範囲であってよい。固定床法では、触媒を反応器に充填して、少なくとも150℃の温度で減圧下でまたは乾燥不活性ガスを流しながら活性化又は乾燥する。活性化後に触媒を所望の反応温度まで冷却し、そして芳香族化合物流を導入する。所望の反応温度で圧力が供給組成物の泡立ち点圧力より高くなるように、背圧弁により圧力を上げる。反応系を所望の圧力に加圧した後、温度を所望の反応温度に上げる。任意に、反応温度で芳香族を触媒に加えてもよい。その後にオレフィン流を芳香族と混合して、触媒上を流れるようにする。アルキレート生成物と余分な芳香族を含む反応器流出液を捕集する。そののち、余分な芳香族を蒸留、減圧でのストリッピング蒸発、または当該分野の熟練者に知られている他の手段により取り除く。
【0073】
アルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートの製造
本明細書に記載した方法により製造したアルキル化ヒドロキシ芳香族生成物を更に反応させて、アルキル化ヒドロキシ芳香族スルホン酸を生成させ、そののち対応するスルホネートにする。
【0074】
スルホン化
アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のスルホン化は、当該分野の熟練者に知られている任意の方法で実施することができる。スルホン化反応は一般に、約45℃乃至約125℃に維持した連続流下膜式管状反応器で行う。アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を、空気で希釈した三酸化硫黄と一緒に反応器に入れ、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホン酸を生成させる。他のスルホン化試薬、例えば硫酸、クロロスルホン酸またはスルファミド酸を用いることもできる。好ましくは、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を空気で希釈した三酸化硫黄でスルホン化する。三酸化硫黄とアルキレートの充填モル比を約0.8乃至1.1:1に維持する。
【0075】
アルキル化ヒドロキシ芳香族スルホン酸の中和
アルキル化ヒドロキシ芳香族スルホン酸の中和は、当該分野の熟練者に知られている任意の方法で連続法でもバッチ法でも実施することができ、アルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート類が生成する。一般に、アルキル化ヒドロキシ芳香族スルホン酸をアルカリ源、アンモニウムまたは置換アンモニウムで中和し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを生成させる。アルカリ源はアルカリ土類金属であることが好ましく、より好ましくはアルカリ源はアルカリ金属水酸化物、例えば、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0076】
[補助界面活性剤]
任意に、本発明の強化された原油回収法用の組成物は補助界面活性剤も含有していてもよい。
【0077】
補助界面活性剤は、異性化アルファオレフィンスルホネート、アルカリールスルホネートまたはそれらの混合物のうちの少なくとも一種である。
【0078】
異性化アルファオレフィンスルホネート類
異性化アルファオレフィンスルホネート類の好適な例は一般に、下記一般式を有する。

2−SO3
【0079】
式中、R2は、炭素原子数約12乃至約40であって、分岐部(分枝)が約20乃至98質量パーセントであり、かつ一つ以上のオレフィン又はアルコール部又はそれらの混合物を含む脂肪族炭化水素基であり、そしてXは、一価のカチオンである。ある態様ではXは、アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムである。
【0080】
アルカリ金属はアルカリ土類金属であることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属はアルカリ金属水酸化物、例えば、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0081】
置換アンモニウムの例としては、炭素原子数約1乃至約15の脂肪族又は芳香族炭化水素基、例えばアルキル、アリール、アルカリールおよびアラルキルであって、任意に窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を1個以上有する炭化水素基、約1乃至約4個で独立に置換されたアンモニウムが挙げられ、ヘテロ原子は脂肪族又は芳香族複素環に存在していてもよい。好適な複素環置換基の例としては、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、イミダゾール、およびキノリンが挙げられる。複素環置換基は、C−ピリジル置換アンモニウムにおけるように、複素環の炭素原子によりアンモニウム部に置換されていてもよいし、あるいはピリジニウムイオンにおけるように、第四級アンモニウム窒素自体が複素環の窒素原子であってもよい。
【0082】
本発明に用いられる第二の補助界面活性剤は、異性化アルファオレフィン(IAO)のスルホン化により製造された異性化オレフィンスルホネート(IOS)であり、IAOは、C12−C40のノルマルアルファオレフィン(NAO)類、好ましくはC20−C28のノルマルアルファオレフィン類、最も好ましくはC20−C24のノルマルアルファオレフィン類の異性化により製造される。
【0083】
ある態様ではR2は、残留アルファオレフィン量を含む部分異性化アルファオレフィンから誘導される。
【0084】
IAOは、炭素原子約12乃至約40個、より好ましくは炭素原子約20乃至約28個、最も好ましくは炭素原子約20乃至約24個を含んでいる。
【0085】
IAOは、分枝(枝分かれ部、あるいは分岐部)約20から約98質量%の間、好ましくは分枝約45乃至約80質量%、最も好ましくは分枝約60乃至約70質量%からなり、そして残留アルファオレフィン約0.1から約30質量%の間、好ましくは残留アルファオレフィン約0.2乃至約20質量%、最も好ましくは残留アルファオレフィン種約0.5乃至約10質量%からなる。
【0086】
ある態様ではIAOは、分枝が少なくとも約23%、残留アルファオレフィンが少なくとも約9%、そして炭素原子数約20乃至約24からなる。別の態様ではIAOは、分枝が少なくとも約65%、残留アルファオレフィンが少なくとも約0.2−0.5%、そして炭素原子数約20乃至約24からなる。
【0087】
ある態様では部分異性化アルファオレフィンの分枝(分岐)パーセントが25質量パーセント以下であるとき、そのような部分異性化アルファオレフィンの残留アルファオレフィン量は8質量パーセント以上である。
【0088】
ある態様では部分異性化アルファオレフィンの分枝パーセントが15質量パーセント以上であるとき、そのような部分異性化アルファオレフィンの残留アルファオレフィン量は15質量パーセント以下であり、また部分異性化アルファオレフィンの分枝パーセントが15質量パーセント以下であるとき、そのような部分異性化アルファオレフィンの残留アルファオレフィン量は15質量パーセント以上である。
【0089】
一般的には、ノルマルアルファオレフィン類を先に記載したようにして異性化する。
【0090】
スルホン化
IAOのスルホン化は、当該分野の熟練者に知られている任意の方法で実施することができ、IAOスルホン酸中間体が生成する。スルホン化反応は一般に、約30℃乃至約75℃に維持した連続流下膜式管状反応器で行う。三酸化硫黄とオレフィンの充填モル比を約0.3乃至1.1:1に維持する。
【0091】
他のスルホン化試薬、例えば硫酸、クロロスルホン酸またはスルファミド酸を用いることもできる。好ましくは、異性化アルファオレフィンを空気で希釈した三酸化硫黄でスルホン化する。
【0092】
その後、スルホン化工程からの生成物を加熱することにより熱蒸解してもよい。
【0093】
異性化アルファオレフィンスルホン酸の中和
IAOスルホン酸の中和は、当該分野の熟練者に知られている任意の方法で連続法でもバッチ法でも実施することができ、IOSが生成する。一般に、IAOスルホン酸をアルカリ金属源、アンモニウムまたは置換アンモニウムで中和する。アルカリ金属源はアルカリ金属塩基であることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属源はアルカリ金属水酸化物、例えば、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0094】
上述したように、IAOのスルホン化の後に熱蒸解をしてもよく、次いで得られた生成物をカセイアルカリで中和し、その後任意にカセイアルカリで加水分解してもよい。得られたナトリウム異性化オレフィンスルホネート(IOS)は、アルコールナトリウムスルホネート約1から約70質量%の間からなる。ある態様ではIOSは、アルコールナトリウムスルホネート種約5から約35質量%の間からなり、ナトリウムスルホネート種の残りはナトリウムオレフィンスルホネート種である。別の態様ではIOSは、アルコールナトリウムスルホネート種約35から約60質量%の間からなり、ナトリウムスルホネート種の残りはナトリウムオレフィンスルホネート種である。
【0095】
ある態様では、中和した異性化アルファオレフィンスルホネートを更にカセイアルカリで加水分解する。
【0096】
主界面活性剤のMと補助界面活性剤のXに関して、MおよびXは、独立に一価のカチオンであり、好ましくは独立にアルカリ金属、アンモニウムおよび置換アンモニウムから選ばれる。
【0097】
アルキルアリールスルホネート類
ある態様ではアルキルアリールスルホネート類を、任意の補助界面活性剤として単独で用いてもよいし、あるいは他の任意の補助界面活性剤である異性化アルファオレフィンスルホネートと一緒に用いてもよい。
【0098】
アルカリールスルホネート類の好適な例は、芳香環にC12−C40の線状、分枝又は部分分枝アルキル部があるものであり、芳香環成分はベンゼン、トルエンまたはキシレンであってよい。
【0099】
一般にアルキルアリールスルホネート類は下記一般式を有する。
【0100】
【化5】

【0101】
式中、R1は、水素または炭素原子約1乃至3個を含むアルキル基であり、R2は、水素または炭素原子約1乃至3個を有するアルキル基であり、R3は、炭素原子約8乃至約60個を有するアルキル基であり、そしてMは、一価のカチオンである。ある態様ではMは、アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムである。
【0102】
アルカリ金属はアルカリ土類金属であることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属はアルカリ金属水酸化物であり、例えば、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0103】
置換アンモニウムの例としては、それぞれ独立に、約1乃至約4個の、炭素原子数約1乃至約15の脂肪族又は芳香族炭化水素基、例えばアルキル、アリール、アルカリールおよびアラルキルであって、任意に窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を1個以上有する炭化水素基で置換されたアンモニウムが挙げられ、ヘテロ原子は脂肪族又は芳香族複素環に存在していてもよい。好適な複素環置換基の例としては、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、イミダゾール、およびキノリンが挙げられる。複素環置換基は、C−ピリジル置換アンモニウムにおけるように、複素環の炭素原子によりアンモニウム部に置換されていてもよいし、あるいはピリジニウムイオンにおけるように、第四級アンモニウム窒素自体が複素環の窒素原子であってもよい。
【0104】
ある態様ではR1およびR2はメチルであり、アルキル芳香族部はアルキルキシレンである。より好ましくは、アルキルキシレン部はアルキル−オルト−キシレンである。
【0105】
別の態様ではアルキル芳香族部はアルキル−メタ−キシレンである。
【0106】
本発明に用いられるアルキルアリールスルホネートは、芳香族化合物のアルキル化により得られたアルキル芳香族スルホネート塩である。芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはそれらの混合物等であることが好ましい。より好ましくは、芳香族化合物はトルエン、キシレンまたはそれらの混合物である。キシレンを用いるなら、キシレン化合物はオルト、メタ又はパラ−キシレンまたはそれらの混合物からなってよい。
【0107】
一般には芳香族化合物を、炭素原子C8−C60個、好ましくは炭素原子C10−C50個、最も好ましくは炭素原子C12−C40個を含むノルマルアルファオレフィン(NAO)の混合物でアルキル化して、芳香族アルキレートにする。アルキレートをスルホン化してアルキル芳香族スルホン酸にし、次いでカセイアルカリで中和して、それによりナトリウムアルキル芳香族スルホネート化合物を生成させる。最も好ましいアルキレートはオルト−キシレンのアルキル化によって製造されて、幾つかの異性体を含むアルキレートが生成するが、ここでアルキレートのうちの少なくとも90質量%は1,3,4−環結合構造であって、芳香環への2−アルキル結合(すなわち、最長アルキル鎖がアルキル鎖の2位で芳香環に結合している)が40乃至60質量%、好ましくは芳香環への2−アルキル結合が45−55質量%、より好ましくは2−アルキル結合が約50質量%である。アルキレートは、ジアルキレート種を1乃至20質量%含むことが好ましく、より好ましくはジアルキレート種を10質量%未満で含む。好ましくはアルキレートのうちの少なくとも約95質量%、最も好ましくは98質量%は1,3,4−環結合構造を有する。アルキレートのスルホン化では、アルキル芳香族スルホン酸異性体の混合物が生成し、好ましい異性体は2−アルキル−4,5−ジメチルベンゼンスルホン酸異性体であり、このスルホン酸異性体の量は好ましくは約1乃至約90質量%の量、より好ましくは約10乃至約80質量%の量、最も好ましくは少なくとも約70質量%の量である。
【0108】
芳香族化合物
本発明のアルキル化反応には、少なくとも一種の芳香族化合物または芳香族化合物の混合物を使用することができる。少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物混合物は、単環芳香族化合物のうちの少なくとも一種、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメンまたはそれらの混合物を含んでいることが好ましい。より好ましくは、少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物混合物はキシレンであり、全ての異性体(すなわち、メタ、オルトおよびパラ−)およびそれらの混合物が含まれる。最も好ましくは、少なくとも一種の芳香族化合物はオルト−キシレンである。
【0109】
芳香族化合物の原料
本発明に用いられる少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物混合物は市販されてもいるが、当該分野でよく知られている方法により製造してもよい。
【0110】
オレフィン類
本発明の主界面活性剤を製造するのに用いられるオレフィン類は、種々の原料から誘導することができる。そのような原料としては、ノルマルアルファオレフィン類、線状アルファオレフィン類、異性化線状アルファオレフィン類、二量化及びオリゴマー化オレフィン類、およびオレフィン複分解から誘導されたオレフィン類を挙げることができる。オレフィン類を誘導することができる別の原料としては、石油またはフィッシャー・トロプシュワックスの分解によるものがある。分解に先立ってフィッシャー・トロプシュワックスを水素化処理してもよい。他の市販原料としては、パラフィン脱水素や、エチレン及び他のオレフィン類のオリゴマー化、メタノールからオレフィン法(メタノール分解装置)等から誘導されたオレフィン類が挙げられる。
【0111】
ある態様では、炭素原子C8−C60個、好ましくは炭素原子C10−C50個、より好ましくは炭素原子C12−C40個を含むノルマルアルファオレフィン(NAO)の混合物で、芳香族化合物をアルキル化して、主界面活性剤アルキレートにすることができる。
【0112】
オレフィン類の原料
本発明で主界面活性剤を製造するのに用いられるノルマルアルファオレフィン類は、市販されてもいるが、当該分野でよく知られている方法により製造してもよい。
【0113】
本発明に用いられるオレフィン類は、線状でも、異性化線状でも、分岐していても、あるいは部分的に枝分かれ(分岐あるいは分枝)していてもよい。オレフィンは、炭素数単一のオレフィンであってもよいし、あるいは線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分岐オレフィンの混合物、部分分岐オレフィンの混合物、または上記のうちの何れかの混合物であってもよい。
【0114】
オレフィン類は、炭素数が炭素原子約8乃至炭素原子約60の範囲にあるオレフィン類から選ぶことができる。好ましくはオレフィン類は、炭素数が炭素原子約10乃至約50、より好ましくは炭素原子約12乃至約40の範囲にあるオレフィン類から選ぶ。
【0115】
別の態様ではオレフィン又はオレフィンの混合物を、炭素原子約8乃至約60個を含む線状アルファオレフィン類又は異性化オレフィン類から選ぶ。より好ましくは、炭素原子約10乃至約50個を含む線状アルファオレフィン類又は異性化オレフィン類から、オレフィン混合物を選ぶ。最も好ましくは、炭素原子約12乃至約40個を含む線状アルファオレフィン類又は異性化オレフィン類から、オレフィン混合物を選ぶ。
【0116】
分岐オレフィンの混合物は、C3又はそれ以上のモノオレフィン類(すなわち、プロピレンオリゴマー類、ブチレンオリゴマー類、またはコオリゴマー類等)から誘導することができるポリオレフィン類から選ぶことが好ましい。好ましくは分岐オレフィンの混合物は、プロピレンオリゴマー類、またはブチレンオリゴマー類またはそれらの混合物の何れかである。
【0117】
アルキル化反応に使用することができる線状オレフィン類は、分子当り炭素原子数約8乃至約60のオレフィン類から選ばれたノルマルアルファオレフィン類のうちの一種又は混合物であることが好ましい。より好ましくはノルマルアルファオレフィンは、分子当り炭素原子数約10乃至約50のオレフィン類から選ぶ。最も好ましくはノルマルアルファオレフィンは、分子当り炭素原子数約12乃至約40のオレフィン類から選ぶ。
【0118】
本発明の一態様では、ノルマルアルファオレフィン類を固体又は液体の酸触媒を使用して異性化する。固体触媒は、少なくとも一種の金属酸化物を有し、平均孔径が5.5オングストローム未満であることが好ましい。より好ましくは固体触媒は、一次元の細孔系を持つ分子篩、例えばSM−3、MAPO−11、SAPO−11、SSZ−32、ZSM−23、MAPO−39、SAPO−39、ZSM−22またはSSZ−20である。異性化に使用できる他の可能な酸性固体触媒としては、ZSM−35、SUZ−4、NU−23、NU−87および天然又は合成フェリエライト類を挙げることができる。これらの分子篩は、当該分野ではよく知られ、そしてローズマリー・ゾスタク著、「分子篩便覧」(ニューヨーク、ヴァン・ノストランド・ラインホルド、1992年)に記述されていて、その内容も如何なる目的であれ参照内容として本明細書の記載とする。使用することができる液体タイプの異性化触媒としては、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)がある。
【0119】
ノルマルアルファオレフィン類の異性化工程は、バッチ式でも連続式でも実施することができる。工程温度は約50℃乃至約250℃の範囲であってよい。バッチ式で使用される一般的な方法は、撹拌式オートクレーブ又はガラスフラスコであり、所望の反応温度に加熱することができる。連続法は固定床法で最も効率良く行われる。固定床法の空間速度は、0.1乃至10質量時間空間速度又はそれ以上の範囲であってよい。
【0120】
固定床法では、異性化触媒を反応器に充填して、少なくとも125℃の温度で減圧下でまたは乾燥不活性ガスを流しながら活性化又は乾燥する。活性化後に異性化触媒の温度を所望の反応温度に調節し、そしてオレフィン流を反応器に導入する。部分分岐した異性化オレフィン類を含む反応器流出液を捕集する。得られた部分分岐異性化オレフィン類は、非異性化オレフィンとは違ったオレフィン分布(すなわち、アルファオレフィン、ベータオレフィン、内部オレフィン、三置換オレフィンおよびビニリデンオレフィン)と分枝量を含んでいて、所望のオレフィン分布と分岐度を得るためには条件を選択する。
【0121】
酸触媒
一般に、ブレンステッド酸触媒、ルイス酸触媒または固体酸性触媒を使用して、アルキル化芳香族化合物を製造することができる。
【0122】
ブレンステッド酸触媒は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸および硝酸等からなる群より選ぶことができる。好ましくはブレンステッド酸触媒はフッ化水素酸である。
【0123】
ルイス酸触媒は、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素および三ヨウ化ホウ素等からなるルイス酸の群より選ぶことができる。好ましくはルイス酸触媒は三塩化アルミニウムである。
【0124】
固体酸性触媒は、ゼオライト類、酸性粘土類および/またはシリカ・アルミナからなる群より選ぶことができる。望ましい固体触媒は酸性形の陽イオン交換樹脂であり、例えば架橋スルホン酸触媒である。触媒は分子篩であってもよい。望ましい分子篩は、シリカ・アルミノリン酸塩分子篩または金属シリカ・アルミノリン酸塩分子篩であり、金属は例えば鉄、コバルトまたはニッケルであってよい。他の好適な固体酸性触媒の例は、米国特許第7183452号明細書に開示されていて、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0125】
ブレンステッド酸触媒は、失活した(すなわち、触媒がその触媒活性の全部又は一部を失った)後、再生することができる。当該分野でよく知られている方法を使用して、酸触媒、例えばフッ化水素酸を再生させてもよい。
【0126】
アルキル化芳香族化合物の製造方法
主界面活性剤アルキレートを生成させるのに使用できるアルキル化技術としては、ブレンステッド及び/又はルイス酸並びに固体酸触媒をバッチ、準バッチ又は連続法で利用して、摂氏約0から約300度の間で作用させることが挙げられる。
【0127】
酸触媒を連続法で使用するなら、再循環させることができる。酸触媒をバッチ法または連続法で使用するのであれば、再循環または再生させることができる。
【0128】
本発明の一態様ではアルキル化工程は、撹拌を維持した第一反応器内でフッ化水素酸などのブレンステッド酸触媒を存在させて、少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物の第一量を、オレフィン化合物の混合物の第一量と反応させることにより実施して、それにより第一反応混合物を生成させる。得られた第一反応混合物を、オレフィンを芳香族アルキレート(すなわち、第一反応生成物)に変換するのに充分な時間、アルキル化条件下の第一アルキル化域にて保持する。所望の時間後、アルキル化域から第一反応生成物を取り出して第二反応器に送り、そこで第一反応生成物を、少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物混合物の追加量、および酸触媒の追加量と、任意にオレフィン化合物混合物の追加量と、撹拌を維持しながら反応させる。第二反応混合物がその結果生じ、それを、オレフィンを芳香族アルキレート(すなわち、第二反応生成物)に変換するのに充分な時間、アルキル化条件下の第二アルキル化域にて保持する。第二反応生成物を液−液分離器に送って、酸触媒から炭化水素(すなわち、有機)生成物を分離させる。酸触媒を閉ループサイクルで反応器(群)に再循環させてもよい。炭化水素生成物を更に処理して、余分な未反応芳香族化合物および任意にオレフィン化合物を、所望のアルキレート生成物から取り除く。余分な芳香族化合物も反応器(群)に再循環させてもよい。
【0129】
本発明の別の態様では、連続して設置した二つ以上の反応器で反応を実施する。第二反応生成物を液−液分離器に送る代わりに、第二反応生成物を第三反応器に送り、そこで第二反応生成物を、少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物混合物の追加量、および酸触媒の追加量と、任意にオレフィン化合物混合物の追加量と、撹拌を維持しながら反応させる。第三反応混合物がその結果生じ、それを、オレフィンを芳香族アルキレート(すなわち、第三反応生成物)に変換するのに充分な時間、アルキル化条件下の第三アルキル化域にて保持する。必要なだけ多くの反応器で反応を起こして、所望のアルキル化芳香族反応生成物を得る。
【0130】
ブレンステッド酸触媒とオレフィン化合物の全充填モル比は、総反応器では約1.0対1である。好ましくは、ブレンステッド酸触媒とオレフィン化合物の充填モル比は、第一反応器では約0.7対1以下であり、第二反応器では約0.3対1以上である。
【0131】
芳香族化合物とオレフィン化合物との全充填モル比は、総反応器では約7.5対1である。好ましくは、芳香族化合物とオレフィン化合物の充填モル比は、第一反応器では約1.4対1以上であり、第二反応器では約6.1対1以下である。
【0132】
反応器域には多くのタイプの反応器構成を使用することができる。これらとしては、以下に限定されるものではないが、バッチ式及び連続式撹拌タンク形反応器、反応器立上り構成、沸騰床反応器、および当該分野でよく知られている他の反応器構成を挙げることができる。そのような数多くの反応器が当該分野の熟練者に知られていて、アルキル化反応に適している。アルキル化反応では撹拌が重要であり、邪魔板付き又は無しで羽根車を回転させることにより、静的混合機、上昇管内での動的混合、または当該分野でよく知られている他の任意の撹拌装置により供することができる。アルキル化工程は、約0℃乃至約100℃の温度で行うことができる。供給成分の実質部分が液相に留まるほど充分な圧力で工程を行う。一般に、供給物および生成物を液相で維持するには、0乃至150psigの圧力で充分である。
【0133】
反応器での滞留時間は、オレフィンの実質部分をアルキレート生成物に変換するのに充分な時間である。必要な時間は約30秒乃至約30分である。もっと正確な滞留時間は、当該分野の熟練者がバッチ式撹拌タンク形反応器を用いてアルキル化工程の反応速度を測定することにより決定することができる。
【0134】
少なくとも一種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物とオレフィン化合物は、別々に反応域に注入してもよいし、あるいは注入に先立って混合してもよい。単一反応域と多重反応域の何れも使用することができて、芳香族化合物とオレフィン化合物を一箇所でも、数箇所でも又は全ての反応域でも注入できる。反応域を同じ工程条件で維持する必要はない。アルキル化工程用の炭化水素供給物は、芳香族化合物とオレフィン化合物の混合物を、芳香族化合物とオレフィン類のモル比約0.5:1乃至約50:1又はそれ以上で含んでいてもよい。芳香族化合物とオレフィン類のモル比が>1.0:1である場合には、過剰量の芳香族化合物が存在する。反応速度を上げて生成物選択度を高めるためには、芳香族化合物を過剰に使用することが好ましい。芳香族化合物を過剰に使用するときは、反応器流出液中の余分な未反応芳香族を例えば蒸留により分離して、反応器に再循環させることができる。
【0135】
アルキルアリールスルホネートの製造
本明細書に記載した方法により製造したアルキル芳香族生成物を更に反応させて、アルキル芳香族スルホン酸とし、次いで対応するスルホネートにする。
【0136】
スルホン化
アルキル芳香族化合物のスルホン化は、当該分野の熟練者に知られている任意の方法で実施することができる。スルホン化反応は一般に、約45℃乃至約75℃に維持した連続流下膜式管状反応器で行う。アルキル芳香族化合物を、空気で希釈した三酸化硫黄と一緒に反応器に入れ、それによりアルキルアリールスルホン酸を生成させる。他のスルホン化試薬、例えば硫酸、クロロスルホン酸またはスルファミド酸を用いることもできる。好ましくは、アルキル芳香族化合物を空気で希釈した三酸化硫黄でスルホン化する。三酸化硫黄とアルキレートの充填モル比を約0.8乃至1.1:1に維持する。
【0137】
アルキル芳香族スルホン酸の中和
アルキルアリールスルホン酸の中和は、当該分野の熟練者に知られている任意の方法で連続法でもバッチ法でも実施することができ、アルキルアリールスルホネート類が生成する。一般に、アルキルアリールスルホン酸をアルカリ又はアルカリ土類金属源またはアンモニアで中和し、それによりアルキルアリールスルホネートを生成させる。アルカリ源はアルカリ金属塩基であることが好ましく、より好ましくはアルカリ源はアルカリ金属水酸化物、例えば、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0138】
[溶媒]
本発明に用いられる好適な溶媒としては、アルコール類、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコールおよびsec−ヘキシルアルコール等のような低級炭素鎖アルコール類;アルコールエーテル類、ポリアルキレンアルコールエーテル類、ポリアルキレングリコール類、ポリ(オキシアルキレン)グリコール類、ポリ(オキシアルキレン)グリコールエーテル類、またはその他任意の一般有機溶媒、または何れか二種以上の溶媒の組合せがある。ある態様では溶媒は、エチレングリコールのn−ブチルモノエーテル(EGBE)である。
【0139】
[不活性化剤]
一般に本発明に用いられる不活性化剤(passivator)は、アルカリ金属塩である。アルカリ金属塩は、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩又は二炭酸塩などの塩基であることが好ましく、これらに限定されるものではないが、炭酸ナトリウム、二炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム等が挙げられる。
【0140】
[ポリマー]
ポリマー類、例えば強化された原油回収法に普通に用いられるものが、圧入溶液の移動しやすさを制御するために含まれていてもよい。そのようなポリマー類としては、これらに限定されるものではないが、キサンタンゴム、ポリアクリルアミド(PAM)、部分加水分解ポリアクリルアミド類(HPAM)、並びに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのナトリウム塩又はそれらの混合物とポリアクリルアミド(PAM)の共重合体で、普通AMPSと呼ばれるもの、およびそれらの共重合体の混合物を挙げることができる。ポリマー類は、原油増進回収法用組成物に単独で使用しても、あるいは他のポリマー類と共に使用してもよい。ポリマー類の分子量(Mw)は、約10000ダルトン乃至約20000000ダルトンの範囲にある。温度や圧力といった油層条件で油層油の粘度に合わせる又はそれを越えるために、ポリマー類は、約500乃至約5000ppm、好ましくは約1000乃至2000ppmの濃度範囲で使用される。
【0141】
[強化された原油回収法用の界面活性剤組成物]
界面活性剤攻法技術を利用した油層の原油回収に使用される強化された原油回収法用の界面活性剤組成物は、主界面活性剤、そして任意に補助界面活性剤、溶媒、不活性化剤およびポリマーを水溶液に含有してなる。
【0142】
強化された原油回収法用の界面活性剤の組成物は、主界面活性剤約0.5乃至約4.0活性分質量パーセント、任意の補助界面活性剤約0.1乃至3.0活性分質量パーセント、溶媒約0.5乃至約6.0質量パーセント、不活性化剤約0.3乃至約2.5質量パーセント、およびポリマー約200乃至5000ppmを含有していることが好ましく、それらは全て水溶液中にあって、水溶液は全溶解固形物で約500乃至約10000ppm含んでいる。
【0143】
より好ましくは、強化された原油回収法用の界面活性剤の組成物は、主界面活性剤約1.0乃至約3.0活性分質量%、補助界面活性剤約0.3乃至約2.0活性分質量%、溶媒約1.0乃至約4.0質量%、不活性化剤約0.5乃至約1.5質量%、およびポリマー約1000乃至約3000ppmを含有し、それらは全て水溶液中にあって、水溶液は全溶解固形物で約1000乃至約10000ppm含んでいる。
【0144】
[強化された原油回収法用界面活性剤配合物の製造方法]
本発明の強化された原油回収法用の界面活性剤配合物は、下記の成分を混合する方法により製造される:
(a)下記一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを含む界面活性剤:
【0145】
【化6】

【0146】
(式中、R1は、炭素原子約8乃至40個を含み、かつメチル分岐部(枝分かれ部、あるいは分枝)が約20%乃至約50%であるアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)
【0147】
(b)溶媒、(c)不活性化剤、および(d)ポリマー。
【0148】
別の態様では、補助界面活性剤をそれ以外の成分と混合する。補助界面活性剤は、異性化アルファオレフィンスルホネート、アルキルアリールスルホネートまたはそれらの混合物であってよい。
【0149】
また、本発明は、地下の炭化水素含有層から原油を回収する方法であって、下記の工程を含む方法にも関する:
(i)該地層に、下記の成分を含む強化された原油回収法用組成物を圧入する工程:
(a)下記の一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート:
【0150】
【化7】

【0151】
(式中、R1は、炭素原子約8乃至40個を含み、かつメチル分岐部(枝分かれ部、あるいは分枝)が約20%乃至約50%であるアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)
【0152】
(b)溶媒、(c)不活性化剤、および(d)ポリマー、そして
(ii)一箇所以上の生産井から原油を回収する工程。
【0153】
その他の態様についても当該分野の熟練者であれば明らかであろう。
【0154】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するために供するのであって、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0155】
[実施例1] 41.4%分岐したC20-24異性化ノルマルアルファオレフィン(NAO)類の製造
ノルマルアルファオレフィン類を、シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company、テキサス州ウッドランズ)より入手し、そして次のような性状を有することが分かった:メチル分岐部(枝分かれ部、あるいは分枝)41.4%。
【0156】
[実施例2] C20-24異性化NAOのメチル分岐部(枝分かれ部、あるいは分枝)%とアルファオレフィン%の測定
赤外分光法を使用して、異性化C20-24NAO又は異性化アルファオレフィン(IAO)のメチル分枝百分率と残留アルファオレフィン百分率を決定する。その技術には、減衰全反射(ATR)赤外分光法で測定した(メチル伸縮に特徴的な)1378cm-1の赤外吸収と、対応する水素化したIAO試料(水素化によってIAOは、一定の炭素数でノルマルパラフィンの保持時間が最長であるパラフィン混合物に変換される)のGLPC分析により決定した分岐パーセントとの間で、検量線を作成することが含まれる。同様に、減衰全反射(ATR)赤外分光法で決定した(アルファオレフィンC−H伸縮に特徴的な)907cm-1の赤外吸収と、定量炭素NMRで決定したアルファオレフィンパーセントとの間でも、検量線を作成した。
【0157】
分岐パーセントのデータの線形最小二乗法による適合は、次のような方程式を示した。
水素化GCによる分岐% = 3.0658(ATR赤外分光法による1378cm-1のピーク長、mm)−54.679。R2は0.9321であり、この検量方程式を作るのに用いた試料の分岐量は、およそ9%乃至92%の範囲にあった。
【0158】
アルファオレフィンパーセントデータの線形最小二乗法による適合は、次のような方程式を示した。
炭素NMRによるアルファオレフィン% = 0.5082(ATR赤外分光法による909cm-1のピーク長、mm)−2.371。R2は0.9884であり、この検量方程式を作成するのに用いた試料のアルファオレフィン量は、およそ1%乃至75%の範囲にあった。
【0159】
[実施例3] 41.5%分岐したC20-24アルキルフェノールの製造
機械的撹拌器、還流冷却器および熱電対を取り付けた10リットル四つ口ガラスフラスコに、乾燥窒素雰囲気中で、溶融フェノール2210グラム(23.5モル)を入れ、次いで実施例1の分岐41.4%を含む異性化C20-24アルファオレフィン1450グラム(4.71モル)を入れた。この穏やかに撹拌している混合物に、ローム・アンド・ハース社(ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)より得たアンバリスト36(商標)酸性イオン交換樹脂(110℃の炉でおよそ25時間乾燥したもの)290グラムを加えた。反応温度を120℃に上げて、約90時間保持し、その時点で変換は(超臨界流体クロマトグラフィで)42%であった。変換が完全ではないときは、追加のアンバリスト(商標)36触媒を次のような全反応時間で加えた:90時間で100グラム、116時間で60グラム、123時間で50グラム、全触媒充填量500グラム。反応時間145時間後に変換は99.5%になり、反応生成物をおよそ70℃まで冷却し、ブフナー漏斗で減圧によってろ過し、そしてろ液を以前の繰返反応物のろ液と一緒にして、生成物およそ1.30kgを得た。この生成物を減圧蒸留して(114℃、50Torr減圧、次に208−215℃、30−35Torr減圧、次いで最後に247−195℃、10−12Torr減圧)、次のような性状を有するアルキルフェノール(5610)7038グラムを得た:超臨界流体クロマトグラフィで決定して未反応オレフィン/パラフィン0.54%、ジアルキレート9.3%、赤外分光で決定してパラ−アルキル異性体55%。
【0160】
[実施例4] 41.5%分岐したC20-24ヒドロキシスルホン酸の製造
実施例3の41.5%分枝したC20-24アルキルフェノールを、以下の条件を用いて、管状反応器(およそ長さ2メートル、内径2cm)内で、下降流式で三酸化硫黄(SO3)と空気を同時に流してスルホン化した。
反応器温度: 60℃
アルキレート供給温度: 50℃
空気流: 192L/時
SO2流: 16L/時
アルキレート供給流: 4.09グラム/分
SO3/アルキレートの充填モル比: 0.98
【0161】
SO3は、酸素と二酸化硫黄(SO2)の混合物を、酸化バナジウム(V25)を含む触媒炉に通すことにより発生させた。これらの条件で、生成した粗製の41.5%分岐C20-24アルキルフェノールヒドロキシスルホン酸を、およそ70℃で20分間蒸解し、そして得られたヒドロキシルスルホン酸は次のような性状を有した:SO3H14.78質量%、およびH2SO40.6質量%。
【0162】
[実施例5] 41.5%分岐したC20-24ヒドロキシスルホン酸の中和−ナトリウムヒドロキシスルホネートの製造
実施例4の41.5%分岐したC20-24ヒドロキシスルホン酸(288グラム)を、機械的撹拌器を取り付けた500mLガラスビーカーに入れ、そしておよそ70℃に加熱した。温度を最大89℃まで上げながら、50%水酸化ナトリウム水溶液全量で48.31グラムを、90分かけて少しずつ(およそ1乃至17グラムずつ)加えた。最終生成物は次のような性状を有した:pH=9.6(1.0質量%水溶液で)、活性分=57.6%(ヒアミン滴定)。
【0163】
[実施例6] Al2000A:C12-30+NAOアルキル−o−キシレンの製造
o−キシレンを第三グループによりC12-30+NAOのブレンドで触媒アルキル化することによって、Al2000A(アルキル化オルト−キシレン)を製造した。NAOブレンドは、シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニーより購入し、次のような組成を有した。
全C10又はそれ以下 質量% 0.01
全C12 質量% 3.92
全C14 質量% 23.28
全C16 質量% 18.12
全C18 質量% 13.74
全C20 質量% 8.88
全C22 質量% 7.49
全C24 質量% 5.97
全C26 質量% 3.23
全C28 質量% 3.50
全C30+ 質量% 11.86
【0164】
得られたAl2000Aの性状は次の通りであった:臭素指数=358mgBr2/試料グラム、カールフィッシャー水=148ppm、1,2,3環異性体量=2.2%、粘度(100℃)=4.5cSt、MW=355。
【0165】
[実施例7] Al2000Aのナトリウムスルホネートの製造
実施例6のAl2000Aを、内径0.6インチの管状薄膜反応器内でSO3/空気を用いてスルホン化することにより、SACS2000Aを製造した。薄膜反応器の底部を過ぎた所で、作られたばかりの熱スルホン酸を冷やした再循環スルホン酸の大部分と混合した。反応器の底部に再循環されないスルホン酸部分を計量して、熱交換器、続いて栓流蒸解器(群)、続いて可変レベル蒸解器からなる蒸解装置に通した。蒸解したスルホン酸を計量して中和装置に送り、そこで50%水酸化ナトリウムで中和した。蒸解したスルホン酸と水酸化ナトリウム水溶液を計量して高剪断混合機の吸込み部に入れた。混合機に続いて滑り羽根型回転ポンプを使用して、中和した生成物の大部分を再循環させて混合機の入口に戻し、残りは試料容器に放出した。工程条件は次の通りであった。
SO3/Al2000AのCMR = 0.98
空気中のSO3濃度 = 5.9質量%
Sp3荷重 = 1.35kg/hr−cm
反応器温度 = 65℃
供給温度 = 60℃
中和温度 = 65℃
蒸解温度 = 65℃
蒸解時間 30分
中和温度 = 75℃
【0166】
中和前の中間酸生成物は次のような性状を有した:RSO3H92.8%、H2SO40.79%。得られたスルホネートは次のような性状を有した:活性分82.7%、pH=9.6(1質量%水溶液)。
【0167】
[実施例8] 相的挙動およびコア圧入試験
実施例5のヒドロキシスルホネートを単独で、また実施例7で製造したスルホネートと組み合わせて、インドネシア、スマトラ島のミナス油層からの原油を使用して、相挙動(合成ミナス塩水−SSMB中で添加炭酸ナトリウムを0乃至20000ppmで走査する)、およびジャクソンが記述しているコア圧入性能(ジャクソン、A.C.(Jackson, A.C.)著、「強化された原油回収法用の界面活性剤に対する炭酸ナトリウムの利点の実験的研究(Experimental Study of the Benefits of Sodium Carbonate on Surfactants for Enhanced Oil Recovery)」、MSE論文、テキサス大学、オースチン、2006年12月)について試験を行った。
【0168】
配合物に使用した補助溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル(EGBE)であった。
【0169】
第1表に、種々の配合物の油溶化パラメータ(SP)および最適塩分濃度(S*)を表にして示す。
【0170】
【表1】

【0171】
第1表の実験8のポリマー2600ppmを含む配合物(SSMB中に、実施例7の界面活性剤(CS2P)1.5%、実施例5の界面活性剤(HDXL)0.5%、EGBE2.5%、Na2CO30.8%、AN125を2600ppm)について、ポリマーによる付勢(SSMBにAN125を1900ppm)を行いながら、ブライアヒル・コアを使用してコア圧入試験を行った。第2表に、ブライアヒル・ストーンの性質をまとめて示す。
【0172】
第2表 BM−12ブライアヒル・コア性質と浸透率データ
────────────────────────────
BM−12 コア#C3878−42 単位
────────────────────────────
長さ 30.48 cm
幅 5.08 cm
高さ 5.08 cm
かさ体積 786.6 cc
岩石質量 1615.00 g
乾燥質量 3999.02 g
飽和質量 4143.81 g
孔隙容積(PV) 144.79 cc
μ(cp) 0.9
π 0.184
温度=185°F
────────────────────────────
ΔP(psi) q(cc/分) k(mD)
────────────────────────────
0.10 0.5 1284.8
0.21 1.0 1223.6
0.42 2.0 1223.6
0.6 3.0 1223.6
平均浸透率: 1238.9
────────────────────────────
【0173】
油圧入を185°F、1.0mL/分の定速度でコアに実施して、圧力を記録した。ミナス原油を使用してコアを満たした。圧入に先立って原油を油層温度で20ミクロンろ紙でろ過した。第3表に列挙するように、油の最終飽和率は61.2%であり、油88.60mLがコア内に残った。
【0174】
第3表 BM−12油圧入データ
──────────────────────────
全置換水 88.60 cc
PV 144.79 cc
コア内の油 88.60 cc
油の飽和率(soi) 61.2%
──────────────────────────
油浸透率終点(ko)
──────────────────────────
ΔP(psi) q(cc/分) k(mD)
──────────────────────────
1.0 1.0 970.7
──────────────────────────
油相対浸透率終点(kro0
──────────────────────────
ro= 0.784
──────────────────────────
【0175】
水圧入を185°F、1.0mL/分の定速度でコアに実施して、圧力および流出液の流体分率を記録した。油だけが重力的に安定な方向に逆行するように、同じコアの端部から合成ミナス塩水を圧入した。第4表に列挙するように、1.6PVで水圧入した後の油の最終飽和率は27.3%であり、コア内には油39.6mLが残った(OOIP)。
【0176】
第4表 BM−12水圧入データ
──────────────────────────
全置換油 49.00 cc
PV 144.79 cc
コア内の残存油 39.60 cc
Soi 27.3%
──────────────────────────
水浸透率終点(kw)
──────────────────────────
ΔP(psi) q(cc/分) k(mD)
──────────────────────────
0.5 1.0 211.3
──────────────────────────
水相対浸透率終点(krw0
──────────────────────────
rw= 0.171
──────────────────────────
【0177】
化学薬剤圧入は、SSMBに実施例7の界面活性剤(CS2P)1.5%、実施例5の界面活性剤(IO 0468/73L)0.5%、EGBE3%、Na2CO31.0質量%およびVHM AN−125ポリマー2000ppmのもの、0.15PVからなり、それを流れループに詰め込み、そしてSSMBにEGBE1.5%、Na2CO30.9%、VHM AN−125ポリマー2000ppmからなるポリマー付勢1、0.1PV、およびSSMBにVHM AN−125ポリマー1400ppmからなるポリマー付勢2〜1.3PVで押し込んだ。その流体を185°F、0.5mL/分の定速度でコアに圧入した。圧力および流出液の流体分率を記録した。ASPスラグ粘度は185°F、10sec-1で10cpであり、二つのポリマー押しの粘度は同じ条件で10cpであった。
【0178】
岩石の性質およびコア圧入の特性
【0179】
第5表 BR−01性質の概要
──────────────────
長さ 30cm
孔隙容積 141mL
孔隙率 0.18
浸透率 1.3ダルシー
Soi 60.6%
Sor 28.4%
──────────────────
【0180】
第6表 界面活性剤使用中及び後のBR−01性質の概要
───────────────────────────────────
界面活性剤 0.5質量%のXC6438、
スラグ 0.5質量%のXC6331、
1質量%のEGBE、
3000ppmのAN125及び
1.1質量%のNa2CO3
0.25PV
ポリマー付勢 SSRBに2800ppmのAN125、
1.5PV
ピーク圧力降下 1.2psi
最終圧力降下 0.6psi
原油回収 95%
Sor 1.5%
───────────────────────────────────
【0181】
1ジャクソン、A.C.著、「強化された原油回収法用の界面活性剤に対する炭酸ナトリウムの利点の実験的研究」、MSE論文、テキサス大学、オースチン、2006年12月

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む原油回収能が強化された組成物:
(a)下記一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを含む界面活性剤:
【化1】


(式中、R1は、炭素原子8乃至40個を含み、かつ20%乃至50%のメチル分岐部を含むアルキル基であって、そしてMは一価のカチオンである)
(b)溶媒、
(c)不活性化剤、および
(d)ポリマー。
【請求項2】
1が、部分異性化アルファオレフィンから誘導されたものである請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項3】
界面活性剤の一価のカチオンが、アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムである請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項4】
一価のカチオンがアルカリ金属である請求項3に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項5】
アルカリ金属がナトリウムである請求項4に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項6】
組成物が更に、少なくとも一種の補助界面活性剤を含んでいる請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項7】
少なくとも一種の補助界面活性剤が異性化オレフィンスルホネートである請求項6に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項8】
異性化オレフィンスルホネートが、アルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウムの塩である請求項7に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項9】
溶媒が、アルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール、グリセロール、ポリエーテルグリセロール、グリコールおよびポリエーテルグリコールからなる群より選ばれる請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項10】
不活性化剤が塩基である請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項11】
塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属二炭酸塩である請求項10に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項12】
ポリマーが、キサンタンゴム、ポリアクリルアミド(PAM)、部分加水分解ポリアクリルアミド(HPAM)、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはそのナトリウム塩の共重合体、またはそれらの混合物、あるいはポリアクリルアミド(AMPS)、またはそれらの混合物である請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項13】
ポリマーが、組成物の全質量に基づき200ppm乃至5000ppmの濃度で存在する請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項14】
1が炭素原子20乃至30個を含むアルキル基である請求項1に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項15】
異性化オレフィンスルホネートが下記一般式を有する請求項7に記載の原油回収能が強化された組成物。

2−SO3

(式中、R2は、炭素原子数12乃至40であって、20乃至98質量%の分岐部を含み、かつ一つ以上のオレフィン部位又はアルコール部位もしくはそれらが混合された部位を含む脂肪族炭化水素基であり、そしてXは一価のカチオンである)
【請求項16】
少なくとも一種の補助界面活性剤がアルキルアリールスルホネートである請求項6に記載の原油回収能が強化された組成物。
【請求項17】
下記の成分を混合することを含む原油回収能が強化された組成物の製造方法:
(a)下記一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネートを含む界面活性剤:
【化2】


(式中、R1は、炭素原子8乃至40個を含み、かつ20%乃至50%のメチル分岐部を含むアルキル基であり、そしてMは一価のカチオンである)
(b)溶媒、
(c)不活性化剤、および
(d)ポリマー。
【請求項18】
地下の炭化水素含有層から原油を回収する方法であって、下記の工程を含む方法:
(i)該地層に、下記の成分を含む原油回収能が強化された組成物を圧入する工程:
(a)下記の一般式を有するアルキル化ヒドロキシ芳香族スルホネート:
【化3】


(式中、R1は、炭素原子8乃至40個を含み、かつ20%乃至50%のメチル分岐部を含むアルキル基であって、Mは一価のカチオンである)
(b)溶媒、
(c)不活性化剤、および
(d)ポリマー、
そして
(ii)一カ所以上の生産井から原油を回収する工程。

【公表番号】特表2013−502497(P2013−502497A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525720(P2012−525720)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046124
【国際公開番号】WO2011/022622
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)