説明

反射スクリーン、映像表示システム

【課題】外光による光漏れ等の外観不良を大幅に低減し、かつ、安価で良好な映像を表示できる反射スクリーン及びこれを備える映像表示システムを提供する。
【解決手段】反射スクリーン10は、単位レンズ121が複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層12と、レンズ層12の背面側に形成され、光を反射する反射層11とを備え、単位レンズ121は、背面側に凸であり、単位レンズ121の配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向に平行な断面における断面形状が略四角形状であり、頂部である頂面121bと、頂面121bを挟んで配列方向において対向するレンズ面121a及び非レンズ面121cとを備え、反射層11は、少なくともレンズ面121a及び頂面121bを被覆するように形成されているものとした。映像表示システムは、この反射スクリーン10と映像源とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーン、及び、これを備える映像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、反射スクリーンに映像を投射する映像源として、至近距離から比較的大きな入射角度で映像光を投写して大画面表示を実現する短焦点型の映像投射装置(プロジェクタ)等が広く利用されている。
このような短焦点型の映像投射装置は、反射スクリーンに対して、上方又は下方から従来の映像源よりも大きな入射角度で投射することができ、反射スクリーンを用いた映像表示システムの省スペース化等に寄与している。
このような短焦点型の映像投射装置によって投射された映像光を良好に表示するために、単位レンズが複数配列されて形成されたリニアフレネルレンズ形状やサーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層の表面に反射層を形成した反射スクリーン等が様々に開発されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開2008−76523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような反射スクリーンでは、レンズ層のフレネルレンズ形状は、単位レンズによる凹凸を有している。そのため、反射層を高い反射性を有する塗料等で形成した場合には、単位レンズの頂部付近の反射層の厚みが薄くなる傾向がある。この単位レンズの頂部付近における反射層の厚みが不十分であると、生産コストの低減や反射スクリーンの軽量化及び薄型化のために反射層の背面側に保護層や遮光層等を設けなかった場合には、反射スクリーンの背面側からの外光が観察者側に光漏れとして観察されるという問題がある。
このような光漏れは、映像を投射していないときや、暗い映像を投射しているとき等に観察され、反射スクリーンの品位を低下させる。
上述の特許文献1,2には、フレネルレンズ形状を有する反射スクリーンが記載されているが、上述のような光もれに対する対策は一切開示されていない。
【0005】
本発明の課題は、外光による光漏れ等の外観不良を大幅に低減し、かつ、安価で良好な映像を表示できる反射スクリーン及びこれを備える映像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源から投影された映像光を反射させて観察可能に表示する反射スクリーンであって、単位レンズ(121)が複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層(12)と、前記レンズ層の背面側に形成され、光を反射する反射層(11)と、を備え、前記単位レンズは、背面側に凸であり、前記単位レンズの配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向に平行な断面における断面形状が略四角形状であり、背面側に位置する頂部である頂面(121b)と、前記頂面を挟んで前記配列方向において対向するレンズ面(121a)及び非レンズ面(121c)とを備え、前記反射層は、少なくとも前記レンズ面及び前記頂面を被覆するように形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、前記フレネルレンズ形状は、サーキュラーフレネルレンズ形状であり、その光学的中心となる点(F)は、この反射スクリーンの表示領域外に位置していること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、前記配列方向において、映像源からの距離が離れるにつれて、前記配列方向における前記頂面(121b)の寸法(W)が大きくなること、を特徴とする反射スクリーン(10)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記単位レンズ(121)は、前記非レンズ面(121c)の少なくとも一部に、光吸収部が形成されていること、を特徴とする反射スクリーンである。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10)と、前記反射スクリーンに映像光を投射する映像源(50)と、を特徴とする映像表示システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外光による光漏れ等の外観不良を大幅に低減し、かつ、安価で良好な映像を表示できる反射スクリーン及びこれを備える映像表示システムを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の映像表示システム1を示す図である。
【図2】実施形態の反射スクリーン10の層構成を説明する図である。
【図3】実施形態の反射スクリーン10のレンズ層12を背面側正面方向から観察した様子を示す図である。
【図4】単位レンズ121を賦形する凹型の作製方法の一例を示す図である。
【図5】実施形態の反射スクリーン10のレンズ層12及び反射層11と比較例の反射スクリーン90のレンズ層92及び反射層91を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状等は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無い。従って、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、シート状の部材は、フィルム状の部材としてもよいし、板状の部材としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0012】
なお、本明細書中及び特許請求の範囲において、スクリーン面とは、この反射スクリーンにおいて、反射スクリーン全体として見たときにおける、反射スクリーンの平面方向となる面を示すものであり、このスクリーン面は、画面(表示画面)の平面方向に平行な面である。
【0013】
(実施形態)
図1は、実施形態の映像表示システム1を示す図である。図1(a)は、映像表示システム1の斜視図であり、図1(b)は、映像表示システム1を側面から見た様子を示している。
映像表示システム1は、反射スクリーン10、映像源50等を有している。
本実施形態では、反射スクリーン10が映像源50から投影された映像光Lを反射して、その画面上に映像を表示する一般的な映像表示システムを説明するが、これに限らず、映像表示システム1は、例えば、映像源50から投射された映像光を反射して反射スクリーン上に映像を表示するフロントプロジェクションテレビシステム等としてもよいし、反射スクリーン10及び映像源50に加えて、反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出部及びパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムとしてもよい。
【0014】
映像源50は、映像光Lを反射スクリーン10へ投影する映像投射装置であり、短焦点型の汎用のプロジェクタ等である。
映像源50は、使用状態において、反射スクリーン10の画面を法線方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、反射スクリーンの画面左右方向において中央であって、反射スクリーン10の画面(表示領域)よりも下方側となる位置に配置されている。
この映像源50は、反射スクリーン10の画面に直交する方向(奥行き方向)における反射スクリーン10との距離が、従来の汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から映像光Lを投影できる。即ち、この映像源50は、従来の汎用プロジェクタに比べて反射スクリーン10までの投射距離が短く、その映像光Lの反射スクリーン10に対する入射角度も大きい。
【0015】
反射スクリーン10は、映像源50が投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、映像を表示するスクリーンである。使用状態において、この反射スクリーン10が映像を表示する画面(観察面)は平面状であり、観察者O側から見て、その観察面は、長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。
なお、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、この反射スクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であるとする。
この反射スクリーン10は、80インチや100インチ等の大きな画面(表示領域)を有している。本実施形態の反射スクリーン10は、例えば、画面のサイズが対角80インチサイズ(1771×996mm)である。
本実施形態の反射スクリーン10は、不図示の枠部材等によって支持されている。
【0016】
図2は、実施形態の反射スクリーン10の層構成を説明する図である。図2(a)では、反射スクリーン10の観察面の幾何学的中心となる点C(図1(a),(b)参照)を通り、画面上下方向に平行であって、スクリーン面に直交(厚み方向に平行)な断面の一部を拡大して示している。図2(b)は、図2(a)に示す断面における単位レンズ121及び反射層11を拡大して示した図であり、図2(c)は、図2(b)に相当する断面における単位レンズ121及び単位レンズ121Aを示している。
図3は、実施形態の反射スクリーン10のレンズ層12を背面側正面方向から観察した様子を示す図である。なお、図3では、理解を容易にするために、反射層11は省略して示している。
反射スクリーン10は、図2(a)に示すように、その映像源側(観察者側)から順に、表面機能層14、基材層13、レンズ層12、反射層11等を備えている。
基材層13は、この反射スクリーン10の基材となる透明又は半透明のシート状の部材である。基材層13の映像源側(観察者側)には、表面機能層14が一体に形成され、背面側(裏面側)には、レンズ層12が一体に形成されている。
【0017】
この基材層13としては、例えば、厚さが100〜200μmであるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル系樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等の樹脂製のシート状部材を用いることができる。本実施形態の基材層13は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材を用いている。
なお、基材層13は、所定の透過率とするためのグレー等の染料や顔料や、カーボンブラック等の着色剤を含有し、着色が施されている形態としてもよい。また、基材層13は、視野角を広げる観点等から、光を拡散する作用を有する粒子状等の光拡散材等を含有していてもよい。さらに、基材層13は、光拡散材と着色剤との双方を含有する形態としてもよい。加えて、基材層13は、単層ではなく、2層又は3層等、複数の層が一体に積層された形態としてもよい。
【0018】
レンズ層12は、基材層13の背面側(裏面側)に設けられた光透過性を有する層であり、その背面側(基材層13とは反対側)の面には、フレネルレンズ形状が形成されている。
本実施形態のレンズ層12のフレネルレンズ形状は、サーキュラーフレネルレンズ形状であり、反射スクリーン10の表示領域外に位置する点F(図3参照)を中心としてスクリーン面に沿って複数の単位レンズ121が同心円状に隣接して配列されている。即ち、レンズ層12のサーキュラーフレネルレンズ形状は、その点Fを光学的な中心(フレネルセンター)とする、所謂オフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状である。
そのため、図3に示すように、レンズ層12は、背面側の正面方向(スクリーン面に直交する方向)のから見たときに、真円の一部形状(円弧)の単位レンズ121が複数配列されているように観察される。なお、これに限らず、例えば楕円に近い形状等の一部形状の単位レンズ121が複数配列されている形態としてもよい。
また、反射スクリーン10の使用環境や、映像源50の光学特性等に合わせて、単位レンズ121が一方向に配列されたリニアフレネルレンズ形状としてもよいし、適宜選択して用いることができる。
【0019】
本実施形態では、図3に示すように、レンズ層12を背面側の正面方向から見たときに、観察面の表示領域の幾何学的中心となる点Cを通り、画面上下方向に平行であって反射スクリーン10の厚み方向に平行な仮想平面A上であって反射スクリーン10の表示領域より下方にサーキュラーフレネルレンズ形状の光学的中心となる点Fが位置しており、さらに仮想平面A上であって点Fよりも下方に映像源50の映像光の投射口となる点Eが位置している。
本実施形態では、一例として、レンズ層12を背面側の正面方向から見た場合の、画面上下方向における点Cと点Fの寸法は、点Cと画面上下方向におけるスクリーンの下端であり画面左右方向中央となる点Dとの寸法の約1.2倍としている。
【0020】
本実施形態のレンズ層12は、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。
レンズ層12は、基材層13の他方の面を、紫外線硬化型樹脂が充填されたサーキュラーフレネルレンズ形状を賦形する成形型に押圧し、紫外線を照射して硬化させた後に成形型を離型する紫外線成型法等により形成される。このように、レンズ層12(単位レンズ121)を紫外線成型法により形成することにより、よりピッチの細かく、かつ、形状精度の高い単位レンズ121を形成することができる。
なお、レンズ層12の形成方法は、適宜選択してよく、この限りではない。また、レンズ層12は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0021】
単位レンズ121は、図2(a),(b),(c)に示すように、スクリーン面に直交する方向(反射スクリーン10の厚み方向)に平行であって単位レンズ121の配列方向に平行な断面における断面形状が、略四角形形状である。
この単位レンズ121は、背面側に凸であり、フレネルレンズ形状のレンズ面であるレンズ面121aと、背面側に位置する頂部となる面である頂面121bと、頂面121bを挟んでレンズ面121aと対向する非レンズ面121cとを備えている。レンズ面121aは、背面側に凸となる凸レンズのレンズ面の一部に相当する。
反射スクリーン10の使用状態において、単位レンズ121では、レンズ面121aが頂面121bを挟んで非レンズ面121cよりも鉛直方向上側に位置している。
本実施形態の頂面121bは、スクリーン面及び基材層13の背面側の面と平行であり、単位レンズ121の図2に示す断面形状は、略台形状となっている。
【0022】
単位レンズ121において、図2(b)に示すように、レンズ面121aがスクリーン面に平行な面となす角度は、αであり、非レンズ面121cがスクリーン面に平行な面となす角度は、β(β>α)である。
また、単位レンズ121の配列ピッチは、Pであり、単位レンズ121の配列方向における頂面121bの寸法は、Wである。単位レンズ121のレンズ高さ(スクリーンの厚み方向における頂面121bから単位レンズ121間の谷底となる点vまでの寸法)は、hである。
【0023】
理解を容易にするために、図2では、単位レンズ121の配列ピッチP、角度α,βは、単位レンズ121の配列方向において一定であるように示している。しかし、本実施形態の単位レンズ121は、実際には、配列ピッチP及び角度βが一定であるが、角度αは、単位レンズ121の配列方向において映像源50から離れるにつれて次第に大きくなっている。また、頂面121bの寸法W及びレンズ高さhも、単位レンズ121の配列方向において映像源50から離れるにつれて次第に大きくなっている。
なお、これに限らず、角度αや寸法Wは、一定としてもよいし、配列ピッチPや角度βが、単位レンズ121の配列方向に沿って次第に変化する形態としてもよく、映像光を投影する映像源50の画素(ピクセル)の大きさや、映像源50の投射角度(反射スクリーン10のスクリーン面への映像光の入射角度)、反射スクリーン10の画面サイズ、各層の屈折率等に応じて、適宜変更可能である。
【0024】
本実施形態では、一例として、配列ピッチPは100μmであり、角度αは、反射スクリーン10の画面左右方向の中央下端で約7°、画面左右方向の中央上端で約23°であり、角度βは、90°であり、頂面121bの寸法Wは、画面左右方向の中央下端で約4.1μm、画面左右方向の中央上端で約19.9μmとなっている。また、本実施形態のレンズ層12は、アクリル系紫外線硬化型樹脂製であり、その屈折率は、1.55である。
【0025】
図2(b),(c)に示すように、この単位レンズ121は、レンズ面121a,121dと非レンズ面121c,121eと、頂点121tを有し、配列方向に平行であって厚み方向に平行な断面における断面形状が略三角形状の単位レンズ121Aの頂部(図2(c)に示す破線部分)を切断した形状に相当する。
この単位レンズ121Aにおいて、破線で示す面121dは、レンズ面121aを延長した頂点121t側の面であり、単位レンズ121Aのレンズ面の一部に相当する。しかし、映像光Lが反射スクリーン10の下方から所定の投射角度で投射され、角度βは、反射スクリーン10の画面上下方向の各点における映像光Lの入射角度よりも大きく設計されている。そのため、面121dには映像光Lが到達しない。
本実施形態の単位レンズ121は、この面121dとこれに対向する非レンズ面121cの延長部分に相当する面121eとを有する頂角部(図2(c)に示す破線部分)を、単位レンズ121の配列方向及びスクリーン面に平行な面で切削した形状に相当する。
従って、頂面121bには映像光は到達しないので、頂面121bは、映像光Lの反射には影響しない。従って、従来の単位レンズ121Aよりもレンズ面121aの幅が短く、頂面121bを有する本実施形態の単位レンズ121としても、映像光の反射率を低下させることがない。
【0026】
ここで、レンズ層12を賦形する成形型80は、一例として、以下のような製造方法によって作製することができる。
図4は、単位レンズ121を賦形する凹型の作製方法の一例を示す図である。
レンズ層12のフレネルレンズ形状を賦形する成形型80(金型)は、その表面をバイトbで切削することによって、単位レンズ121の形状を賦形する凹型が形成される。
本実施形態のレンズ層12の単位レンズ121ように、単位レンズ121の配列方向に沿ってその頂面121bの寸法Wが大きくなる形態の場合、フレネルセンターとなる点F近傍(反射スクリーン10の画面上下方向下端側)においては、図4(a)に示すように、バイトbによる深さ方向及び配列方向への切削量は小さい。しかし、図4(b),(c)に示すように、点Fから離れるにつれて(反射スクリーン10の画面上下方向上側側に向かうにつれて)、バイトbの傾きを変えながら成形型80に対するバイトbの深さ方向及び配列方向への切削量を大きくすることにより、同一のバイトbを使用しながら単位レンズ121を賦形する賦形型を作製することができる。
上述のような製造方法を用いることにより、本実施形態の単位レンズ121を賦形可能な凹型を有する成形型80を容易に作製できる。
【0027】
反射層11は、光を反射する作用を有し、レンズ層12の背面側に形成される層である。この反射層11は、少なくともレンズ面121a及び頂面121bを被覆しており、本実施形態では、レンズ面121a,頂面121b,非レンズ面121cを被覆している。
この反射層11は、白色又は銀色系の塗料や、白色又は銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂、銀やアルミニウム等の金属蒸着膜や金属箔等を粉砕した粒子や微小なフレークを含む塗料等により形成されている。
反射層11の形成方法は、スプレーコートや、ダイコート、スクリーン印刷、ワイピングによる溝充填等の各種塗布方法を選択できる。なお、ワイピングの場合は、レンズ面121aと非レンズ面121cに対する反射層11による被覆が容易に可能である。
反射層11は、明るい映像を表示するために、その反射率が40%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態の反射層11は、アルミニウム等の金属箔を含有した銀色系の塗料を、レンズ層12の単位レンズ121が形成されている面上にスプレー塗布することにより形成されている。
なお、本実施形態の反射層11は、図2(a)に示すように、単位レンズ121間の谷部を充填し、頂面121bを所定の厚さで被覆し、その背面側の面が略平面状となる例を示したが、これに限らず、単位レンズ121の凹凸形状に沿って所定の厚さで形成される形態としてもよいし、十分な反射特性を有しているならば、その厚さが均一でなくともよい。
【0029】
表面機能層14は、基材層13の観察者O側(映像源側)に設けられる層である。
表面機能層14には、反射防止機能や防眩機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能、ハードコート機能、タッチパネル機能等、適宜必要な機能を1つ又は複数選択して設けることができる。
表面機能層14は、基材層13とは別層であって不図示の粘着材等により基材層13に接合される形態としてもよいし、基材層13のレンズ層12とは反対側の面に直接形成される形態としてもよい。
本実施形態の表面機能層14は、防眩機能及びハードコート機能(耐スクラッチ機能)を有しており、基材層13の観察者O側の表面に、ハードコート機能を有する電離放射線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を膜厚10〜100μm程度で塗布し、微細な凹凸形状(マット形状)をその樹脂膜表面に転写する等して硬化させ、表面に微細凹凸形状が賦形されて形成されている。
【0030】
ここで、本実施形態の反射スクリーン10へ入射する映像光及び外光の様子を説明する。
図2(a)に示すように、映像源50から投影された映像光Lは、反射スクリーン10の下方から入射し、表面機能層14及び基材層13を透過してレンズ層12の単位レンズ121へ入射する。
そして、図2(a)に示すように、映像光Lは、レンズ面121aへ入射して反射層11によって反射され、観察者O側へ反射スクリーン10から出射する。なお、頂面121bや非レンズ面121cにも反射層11が形成されているが、角度βは、反射スクリーン10の画面上下方向の各点における映像光Lの入射角度よりも大きく(望ましくは90°)、かつ、映像光Lが反射スクリーン10の下方から投射されるため、映像光L1が頂面121bや非レンズ面121cに直接入射することは殆どなく、映像光Lの反射には影響しない。
【0031】
一方、照明光等の不要な外光Gは、主として反射スクリーン10の上方から入射し、表面機能層14及び基材層13を透過してレンズ層12の単位レンズ121へ入射する。そして、図2(a)に示すように、外光Gは、レンズ面121aで反射して、主として反射スクリーン10の下方側へ向かう。従って、外光Gは、反射スクリーン10に入射して反射層11によって反射された場合には、観察者O側には直接届かず、また、届いた場合にもその光量は、映像光Lに比べて大幅に少ない。従って、反射スクリーン10では、外光による映像のコントラスト低下を低減できる。
【0032】
よって、本実施形態の反射スクリーン10によれば、映像光は、レンズ面121aに形成された反射層11によって効率よく観察者O側へ反射でき、かつ、外光は、観察者O側とは異なる方向へ反射されるので、明室環境下であっても、明るく、コントラストの高い良好な映像を表示できる。
【0033】
図5は、実施形態の反射スクリーン10のレンズ層12及び反射層11と比較例の反射スクリーン90のレンズ層92及び反射層91を示す図である。図5(a)は、本実施形態の反射スクリーン10のレンズ層12及び反射層11であり、図5(b)は、比較例の反射スクリーン90のレンズ層92及び反射層91を示している。なお、図5では、理解を容易にするために、実施形態の反射スクリーン10及び比較例の反射スクリーン90における基材層や表面機能層は、省略して示している。
【0034】
比較例の反射スクリーン90は、単位レンズ921の断面形状が略三角形形状であり、頂面121bを備えていない点が異なる以外は、本実施形態と同様の形態である。
図5(b)に示すように、比較例の反射スクリーン90では、単位レンズ921の頂点921t付近の反射層91の層厚が薄くなっている。
そのため、単位レンズ921の頂点921t付近の反射層91の厚みが映像光の反射特性及び背面側からの外光の遮光性に対して不十分となり、暗い場面の映像を表示しているときや、映像を表示していないときに、背面側からの外光が観察者側にもれてきらきらとした光の輝きとなって視認される光漏れという現象が生じる。これは、特に、フレネルセンターとなる点Fから遠く、角度αが大きい反射スクリーン90の周縁部で生じやすくなる。
このような光漏れは、反射スクリーンの外観不良となり、品位を低下させ、また、暗い場面の映像を表示している際には、その画質を劣化させる。
【0035】
この現象を防止するために、反射層91を形成する材料の塗布量を上げ、層厚を厚くすることが考えられる。しかし、頂点921tにおいても十分な層厚を有する厚い反射層を形成するためには、塗布及び乾燥、硬化の工程を複数回繰り返す必要があり、生産コストの向上及び作業効率の低下を招く。
また、反射層91として蒸着膜を形成する方法が考えられるが、生産コストがかかり、特に、大画面の反射スクリーンでは、そのような大きな面積の反射層の形成が困難であり、生産コストも大幅に増大する。
【0036】
これに対して、本実施形態の反射スクリーン10は、頂面121bを有しているので、頂面121b上に所定の層厚を有する反射層91を、スプレー塗布等で容易にかつ安定して形成でき、工数も低減することができる。従って、生産コストや工数を低減し、かつ、背面側からの外光による光漏れも大幅に改善できる。
さらに、前述のように、特殊な加工を施すことなく、単一のバイトbを用いて、その切削量を変化させることにより、成形型80を容易に作製でき、成形型80の作製コストを抑えることができる。
【0037】
以上のことから、本実施形態によれば、明るくコントラスト高い良好な映像を表示でき、かつ、外光による光漏れによる外観不良を大幅に低減した良好な反射スクリーン及びこれを備える映像表示システムとすることができる。また、本実施形態によれば、このような良好な反射スクリーン及び映像表示装置を安価で作製できる。
【0038】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態において、非レンズ面121cには、反射層11が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、非レンズ面121cに光を吸収する作用を有する黒色塗料等を塗布する等により、光吸収部を形成してもよい。このような光吸収部を非レンズ面121cに形成することにより、反射スクリーン10の上方から主として入射する外光や反射スクリーン10内部で発生した迷光を光吸収層により吸収することができ、コントラストの向上効果を高めることができる。
【0039】
(2)本実施形態において、反射スクリーン10は、表面機能層14、基材層13、レンズ層12、反射層11等を備える例を示したが、これに限らず、例えば、光を拡散させる拡散材を含有した光拡散層や、反射スクリーンの剛性を高め、平面性を維持するためのガラス製や樹脂製の基板層や、コントラストを向上させる着色層等を備えた形態としてもよい。
【0040】
(3)本実施形態において、単位レンズ121は、レンズ面121a,頂面121b,非レンズ面121cがいずれも平面状である例を示したが、これに限らず、例えば、少なくとも1つの面が曲面であってもよいし、いずれかの面の一部が曲面等であってもよい。例えば、頂面121bを緩やかな凹曲面とした場合には、頂面121b上に塗布した反射層11の塗膜が安定し、塗工性が向上する。
また、レンズ面121a及び非レンズ面121c等が複数の面から構成される形態であり、シート面に直交かつ単位レンズの配列方向に平行な断面において、その断面形状が例えば、略五角柱形状や略六角柱形状となる形状としてもよい。
【0041】
(4)本実施形態において、反射スクリーン10の使用状態では、映像光の主たる入射方向は、反射スクリーン10の下方からであり、フレネルセンターとなる点Fは、反射スクリーン10の下方に位置している例を示した。しかし、これに限らず、例えば、映像源50を反射スクリーン10の上方に配置し、映像光の主たる入射方向が画面上方からとして、フレネルセンターとなる点Fが反射スクリーン10の上方に位置している形態、即ち、実施形態の映像表示システム1を上下反転させた形態としてもよい。
【0042】
(5)本実施形態において、レンズ層12が基材層13の片面に紫外線成型法により一体に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、押し出し成型法によりレンズ層12を形成してもよい。このとき、レンズ層12に十分な厚みがあれば、基材層13を備えない形態としてもよいし、レンズ層12と基材層13と一体に積層した状態で押し出し成型してもよい。これにより、大量生産がさらに容易になり、安価に提供できる。
【0043】
(6)本実施形態において、反射スクリーン10は、略平板状であり、不図示の枠部材等によりその平面性を支持されている例を示したが、これに限らず、例えば、粘着材層等を介して支持板や壁面に接合される形態としてもよい。
また、本実施形態において、反射スクリーン10は、使用状態及び不使用状態において略平板状である例を示したが、これに限らず、不使用時には巻き取って保管できる巻き取り可能な形態としてもよい。このような形態の場合には、反射スクリーン10の背面側を、光を透過しにくい布製又は樹脂製の遮光幕や耐傷性を向上させる保護層で被覆する形態としてもよい。
【0044】
(7)本実施形態において、反射スクリーン10のレンズ層12の背面側には、サーキュラーフレネルレンズ形状が形成され、そのフレネルセンターが反射スクリーン10外に位置する例を示したが、これに限らず、例えば、単位レンズ121が画面上下方向に配列されたリニアフレネルレンズ形状が形成される形態としてもよい。
【0045】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0046】
1 映像表示システム
10 反射スクリーン
11 反射層
12 レンズ層
121 単位レンズ
121a レンズ面
121b 頂面
121c 非レンズ面
13 基材層
14 表面機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投影された映像光を反射させて観察可能に表示する反射スクリーンであって、
単位レンズが複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層と、
前記レンズ層の背面側に形成され、光を反射する反射層と、
を備え、
前記単位レンズは、
背面側に凸であり、前記単位レンズの配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向に平行な断面における断面形状が略四角形状であり、
背面側に位置する頂部である頂面と、前記頂面を挟んで前記配列方向において対向するレンズ面及び非レンズ面とを備え、
前記反射層は、少なくとも前記レンズ面及び前記頂面を被覆するように形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズ形状は、サーキュラーフレネルレンズ形状であり、その光学的中心となる点は、この反射スクリーンの表示領域外に位置していること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記配列方向において、映像源からの距離が離れるにつれて、前記配列方向における前記頂面の寸法が大きくなること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位レンズは、前記非レンズ面の少なくとも一部に、光吸収部が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーンと、
前記反射スクリーンに映像光を投射する映像源と、
を特徴とする映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92695(P2013−92695A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235356(P2011−235356)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】