説明

反射型表示パネルおよびその製造方法

【課題】生産性が高く、斜め方向から観察した場合にも視差の小さい多色表示可能な反射型表示パネルを提供する。
【解決手段】反射型表示パネルは、厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極21が間隔をおいて形成された基板20と、基板20の表面および画素電極21を覆うように形成された反射型表示材料層としての電気泳動表示層11と、電気泳動表示層11の基板20の表面と反対側の面に形成された透明電極層12と、透明電極層12の電気泳動表示層11と反対側の面に形成された透明アンダーコート層14と、透明アンダーコート層14の透明電極層12の反対側の面に形成されたカラーフィルター層15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型表示パネルに関するものであり、マイクロカプセル中に電気泳動インキインクを封入し、これらのマイクロカプセルを一方が透明な一組の対向電極板上に間に配置する構成からなり、さらにカラーフィルターを形成することで多色表示を可能とした反射型表示パネルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報表示パネルとしてバックライトを使用した液晶が主流である。しかし、目の負担が大きく、長時間見続ける用途に適していない。
【0003】
目への負担が小さい反射型表示パネルとして、一対の対向する電極間と、その電極間に設けられた電気泳動式表示層を有する表示パネルを用いた電気泳動式表示装置などが提案されている。(特許文献1参照)。
【0004】
この電気泳動式表示パネルなどの反射型表示パネルは、印刷された紙面と同様に、反射光によって文字や画像を表示するので、目に対する負荷が少なく、画面を長時間見続ける作業に適している。
【0005】
この電気泳動式表示パネルは、荷電粒子を分散させた分散液に電界を印加することによって、荷電粒子を移動させ、画像表示を可能とする原理に基づくものである。電気泳動式表示パネルのうち、着色された荷電粒子をマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルを一対の対向する電極間に配置したマイクロカプセル型電気泳動式表示装置は、低駆動電圧、高柔軟性などの利点があり、実用化され、さらに開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−503895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、電気泳動式パネルは構造上白黒表示を主とする二色表示が主流であり、二色表示マイクロカプセル型電気泳動表示パネルにあっては、例えば、画素電極を備える基板の、画素電極層上に、マイクロカプセル型電気泳動表示層、透明電極、透明基材を順に備える構成のものがある。近年、二色表示マイクロカプセル電気泳動表示パネルから多色表示可能なカラー電気泳動表示パネルが求められている。
【0008】
ここで、マイクロカプセル型電気泳動表示パネルを多色表示するにあってはマイクロカプセル電気泳動表示層と透明電極の間、透明電極と透明基材の間、透明基材上のいずれかにカラーフィルター層を形成することにより多色表示することが可能となる。
【0009】
カラーフィルター層を設けて電気泳動表示パネルを多色化する際には、基板上の画素電極のパターンとカラーフィルター層のパターンの位置合わせが必要となる。しかしながら、画素電極基板に形成された位置合わせ模様を基準にして位置合わせする場合には、カラーフィルター層と位置合わせ模様の間の距離が大きくなり、位置合わせが困難であり生産性が低下するといった問題が発生する。
【0010】
また、パターン形成されたカラーフィルター層と電気泳動表示層間の距離が大きくなった場合には、斜め方向から観察した場合に色味が変わるといった問題が発生する。これは、観察角度の影響が少ないという電気泳導表示装置の長所を失うといった問題も発生する。
【0011】
本発明にあっては、生産性が高く、斜め方向から観察した場合にも色味変化の小さい多色表示可能な反射型表示パネルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1にかかる発明としては、厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極が間隔をおいて形成された基板と、前記基板の表面および前記画素電極を覆うように形成された反射型表示材料層と、前記反射型表示材料層の前記基板の表面と反対側の面に形成された透明電極層と、前記透明電極層の前記反射型表示材料層と反対側の面に形成された透明アンダーコート層と、前記透明アンダーコート層の前記透明電極層の反対側の面に形成されたカラーフィルター層とを備え、前記透明アンダーコート層の厚さが0.1μm以上100μm以下である反射型表示パネルとした。
また、請求項2にかかる発明としては、前記透明アンダーコート層の厚さが1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型表示パネルとした。
また、請求項3にかかる発明としては、前記反射型表示材料層が、電子移動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型表示パネルとした。
また、請求項4にかかる発明としては、前記透明アンダーコート層の前記透明電極層と反対側の面に保護フィルムが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の反射型表示パネル。
また、請求項5にかかる発明としては、厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極が間隔をおいて形成された基板を用意する第1の工程と、透明基材と、透明アンダーコート層と、透明電極層と、反射型表示材料層とがこれらの順番で積層された積層フィルムとを用意する第2の工程と、前記積層フィルムの前記反射型表示材料層を前記複数の画素電極を覆うように前記基板の表面に貼り合わせる第3の工程と、前記積層フィルムから前記透明基材を剥離する第4の工程と、前記透明アンダーコート層に、前記画素電極に対応したカラーフィルター層を形成する第5の工程とを含むことを特徴とする反射型表示パネルの製造方法とした。
また、請求項6にかかる発明としては、前記透明アンダーコート層の厚さが0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の反射型表示パネルの製造方法とした。
また、請求項7にかかる発明としては、前記透明基材と前記透明アンダーコート層の間に剥離層が形成されており、前記剥離層によって前記積層フィルムから前記透明基材を剥離することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の反射型表示パネルの製造方法とした。
また、請求項8にかかる発明としては、前記第5の工程が、インクジェット法により前記透明アンダーコート層にインクを吐出し印刷することにより行われることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の反射型表示パネルの製造方法とした。
また、請求項9にかかる発明としては、前記第5の工程の後に、前記透明アンダーコート層の前記透明電極層と反対側の面に、保護フィルムを積層する第6の工程を含むことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の反射型表示パネルの製造方法とした。
また、請求項10にかかる発明としては、前記第1の工程で用意される前記基板の表面に、前記画素電極と離間した箇所に位置合わせ用のアライメントマークが形成されており、前記第3の工程による前記積層フィルムの前記基板の表面への貼り合わせは、前記積層フィルムの前記反射型表示材料層と前記アライメントマークとが重ならないようになされ、前記第5の工程による前記画素電極に対応したカラーフィルター層の形成は、前記アライメントマークを基準としてなされることを特徴とする請求項5乃至請求項9にいずれか1項に記載の反射型表示パネルの製造方法とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生産性が高く、かつ、斜め方向から観察した場合にも色味変化の小さい多色表示可能な反射型表示パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の反射型表示パネルの製造方法の一例の説明図である。
【図2】図2は本発明の反射型表示パネルの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の反射型表示パネルの製造方法について示す。図1に本発明の反射型表示パネルの製造方法の一例の説明図を示した。
【0016】
反射型表示材料の層については、電子移動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層をはじめとするいくつかのタイプのものが公知であり、それらを用いた以下の電気光学ディスプレイとして下記のものが一例として挙げられる。
(a)回転する二色部材ディスプレイ
(b)エレクトロクロミックディスプレイ
(c)エレクトロウエッティングディスプレイ
(d)電気泳動ディスプレイ
また、電気泳動表示層においては、後述の通り電気泳動層形成用塗液を塗布により形成することが可能であり、ロール・ツー・ロール方式の適用も可能であるためより安価に表示パネルを製造することができる点で好ましい。
本実施の形態では、本発明の反射型表示パネルの一例として、反射型表示材料の層が電気泳動表示層で構成された電気泳動表示パネルについて説明する。
【0017】
まずは、図1(a)に示すように、透明基材13の上に透明アンダーコート層14、透明電極層12、電気泳動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層11、接着剤層30、離型導電リリース層31を備える積層フィルム10を用意する。また、画素電極21と画素位置合わせ用の模様(アライメントマーク)22を備える基板20を用意する。
すなわち、透明基材13と、透明アンダーコート層14と、透明電極層12と、反射型表示材料層としての電気泳動表示層11とがこれらの順番で積層された積層フィルム10を用意する(第1の工程)。
また、厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極21が間隔をおいて形成された基板20を用意する(第2の工程)。
【0018】
次に、図1(b)に示すように、積層フィルム10の離型導電リリース層31を剥離し、接着剤層30により電気泳動表示層11と基板20の画素電極21とを貼り合せる。このとき、基板上の位置合わせの模様の上部に不透明な電気泳動表示層11が配置されないように(電気泳動表示層11とアライメントマーク22とが重ならないように)、積層フィルム10と基板20を貼り合せ、透明基材13を剥離する。
すなわち、積層フィルム10の電気泳動表示層11を複数の画素電極21を覆うように基板20の表面に貼り合わせ(第3の工程)、積層フィルム10から透明基材13を剥離する(第4の工程)。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、透明アンダーコート層14に対し2種類以上のインクをインクジェット印刷法により印刷吐出し、透明アンダーコート層14上にカラーフィルター層15を形成する。
すなわち、透明アンダーコート層14に、画素電極21に対応したカラーフィルター層15を形成する(第5の工程)。
図1(c)にあっては、カラーフィルター層15は、赤色カラーフィルター層15a、青色カラーフィルター層15b、緑色カラーフィルター層15cによって形成されている。このとき、カラーフィルター層15を形成するにあっては、基板20上の画素電極21のパターンの位置とカラーフィルター層15a、15b、15cの位置とを対応させる必要がある。
本発明の製造方法にあっては、画素位置合わせ用のアライメントマーク22上部に電気泳動表示層11を配置しないことにより、積層フィルム10と基板20を貼り合せた後のカラーフィルター層15の形成工程において、アライメントマーク22を基準に容易に画素電極21のパターンに対応したカラーフィルター層15のパターンを形成することができる。すなわち、画素電極21のパターンの位置とカラーフィルター層15の位置とを容易かつ確実に対応させることができる。
【0020】
最後に、図1(d)に示すように、透明アンダーコート層14およびカラーフィフィルター層15a、15b、15c上に保護フィルム40が設けられ、反射型表示パネルが製造される。
すなわち、透明アンダーコート層14の透明電極層12と反対側の面に、保護フィルム40を積層する(第6の工程)。
【0021】
図2に本発明の反射型表示パネルの模式断面図を示す。
【0022】
本発明の反射型表示パネルにあっては、画素電極21と画素位置合わせ用の模様22を備える基板20上に接着層30を介して、電気泳動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層11、透明電極層12、透明基材13、カラーフィルター層15a、15b,15cを備えるアンダーコート層14、保護フィルム40を順に備える。このとき、画素電極21のパターンと電気泳動表示層11を挟んで設けられるカラーフィルター層15a、15b、15cは対向するように設けられる。各層の積層方向に対して画素電極21のパターンとカラーフィルター層15a、15b、15cを一致させることにより、多色表示(カラー表示)が可能となる。
すなわち、反射型表示パネルは、厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極21が間隔をおいて形成された基板20と、基板20の表面および画素電極21を覆うように形成された反射型表示材料層としての電気泳動表示層11と、電気泳動表示層11の基板20の表面と反対側の面に形成された透明電極層12と、透明電極層12の電気泳動表示層11と反対側の面に形成された透明アンダーコート層14と、透明アンダーコート層14の透明電極層12の反対側の面に形成されたカラーフィルター層15とを備えている。
本発明の反射型表示パネルにあっては、電気泳動表示層の側面に電気泳動表示層への水分の浸入を防ぐための封止層50が設けられていてもよい。
【0023】
本発明の反射型表示パネルにおける動作原理について説明する。基板20上の画素電極21は、各々の画素電極21のスイッチング素子に接続されていて、透明電極層12との間に正負の電圧を印加することができる。画像表示するためには、通常、画素電極21はアクティブマトリクス型駆動方式の回路構成の電源に接続される。画素電極21に電圧を印加させると、マイクロカプセル層にかかる電界が変動する。画素電極21が正極のときは、マイクロカプセル内の負に帯電している粒子は、背面の画素電極21側へ移動し、正に帯電している粒子は、前面の透明電極層12側に移動する。同様に、画素電極21が負極になれば、正に帯電している粒子は画素電極21側に移動し、負に帯電している粒子は透明電極層12側へ移動する。ここで、例えば黒色粒子が正に帯電し、白色粒子が負に帯電するようにしておけば、表示色は前面の透明電極層12側へ移動した粒子の色になるので、観察側からの光がそれに反射して反射光が対向するカラーフィルター層15の着色パターンを通ることで所望の文字や画像を色表示することができる。
【0024】
本発明の反射型表示パネルおよびその製造方法にあっては、電気泳動表示層11とカラーフィルター層15の間には、透明電極層12と透明アンダーコート層14のみが存在する。透明電極層12の厚さはサブミクロンオーダーであるので、電気泳導表示層11とカラーフィルター層15の距離は、透明アンダーコート層14の厚みによって決定される。本発明にあっては、電気泳導表示層11とカラーフィルター層15の距離は、透明アンダーコート層14の厚みによって決定されることから、透明アンダーコート層14の厚さを小さくすることによりその距離を近接させることができ、斜め方向から観察した場合にも色味変化の小さい多色表示可能な反射型表示パネルとすることができる。
【0025】
本発明にあっては、カラーフィルター層15が、透明アンダーコート層14に対しインクジェット印刷法により複数色のインクを印刷吐出することにより形成されることが好ましい。カラーフィルター層15をパターン形成するにあっては、インクジェット印刷法以外にもフォトリソグラフィー法によるパターン形成、オフセット印刷法によるパターン形成をおこなってもよい。
【0026】
本発明の反射型表示パネルの製造方法にあっては積層フィルム10と基板20とを貼りあわせた後に積層フィルム10の透明基材13を剥離し、透明アンダーコート層14表面にカラーフィルター層15を形成することを特徴とし、積層フィルム10と基板20とを貼りあわせたもののハンドリング性を考慮すると、カラーフィルター層15はインクジェット印刷法により複数色のインクを印刷吐出することにより形成されることが好ましい。インクジェット印刷法によりカラーフィルター層15を形成することにより、他のパターン形成方法よりも画素電極21のパターンとカラーフィルター層15のパターンとの位置合わせを容易とすることができる。
【0027】
また、本発明の反射型表示パネルおよびその製造方法にあっては、カラーフィルター層15上に保護フィルム40が積層されることが好ましい。保護フィルム40を設けることにより、反射型表示パネルの耐擦傷性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明の反射型表示パネルおよびその製造方法にあっては透明アンダーコート層14の厚さが0.1μm以上100μm以下の範囲内とすることが好ましく、さらに1μm以上20μm以下であることが好ましい。先述の通り、本発明にあっては、電気泳導表示層11とカラーフィルター層15の距離は、透明アンダーコート層14の厚みによって決定されることから、厚さを薄くするほどその距離を近接させることができ、カラーフィルター層15の印刷の位置あわせが容易になり生産性が向上するとともに、斜め方向から観察した場合にも色味変化の小さい多色表示可能な反射型表示パネルとすることが可能となる一方で、一定以上の厚さの透明アンダーコート層14とすることで安定してインクをの透明アンダーコート層14上に受容させることが可能となる。ここで、透明アンダーコート層14の厚さを100μm以上を超えるものとした場合には、本発明の効果を十分なものとすることができなくなってしまう。一方、透明アンダーコート層14の厚みが0.1μmを下回る場合には、カラーフィルター層15を形成する際に十分にインクを受容できず、パターンが崩れることがある。
透明アンダーコート層14の厚さが1μm以上20μm以下であると、前記の効果をより確実に得ることができると共に、カラーフィルター層15を形成する際に十分にインクを受容してパターンを安定して形成する上でより有利となる。
【0029】
さらに詳細に本発明の反射型表示パネルおよびその製造方法について説明する。
【0030】
本発明の反射型表示パネルに用いられる透明基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、あるいはガラス等を使用することができる。また、剥離工程を容易に行うために、シリコーン等の剥離層が設けられていることが好ましい。
【0031】
透明基材13上には透明アンダーコート層14が形成される。透明アンダーコート層14は、樹脂を含む透明アンダーコート層14形成用塗液を透明基材13上に塗布することにより形成される。透明アンダーコート層14としては、ウレタン樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂等を用いることができる。また、透明アンダーコート層14には、インクの溶媒の吸収性を高めるため合成シリカやアルミナなどの多孔質物質を含ませることもできる。透明アンダーコート層14の形成は枚葉処理をおこなうのであれば、スクリーン印刷法やオフセット印刷法やスピンコート法、ダイによる間欠塗工により形成することができる。また、ロールtoロールによる連続処理を行うのであれば、ダイコーティング、コンマコート、カーテンコート、グラビアコートなどの汎用の塗布技術による透明アンダーコート層14形成が可能である。また、透明アンダーコート層14形成用塗液が塗工された後は、透明基材13上の塗工液は乾燥される。乾燥方法としては、加熱、送風等を用いることができる。また、本発明の製造方法としては、透明アンダーコート層14はロール・ツー・ロール方式による連続塗工により形成することが好ましい。
【0032】
透明アンダーコート層14上には透明電極層12が形成される。透明電極形成材料としては、ITO等の酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系のような透明性を有する導電性酸化物、またはカーボンナノチューブやチオフェン系化合物などを用いることができる。透明電極層12の形成には蒸着法、スパッタ法、CVD法などの乾式成膜法や、塗液を用いた湿式成膜法などの従来技術を用いることができる。
【0033】
透明電極層12上にはマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層11が形成される。電気泳動表示層11は、電気泳動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルと、バインダー樹脂と、溶媒とを含む電気泳動層形成用塗工液を、透明電極を備える透明基材13上に塗布することにより形成される。
【0034】
マイクロカプセル型電気泳動層11の形成に用いられるマイクロカプセルは、マイクロカプセル殻内に少なくとも電気極性の異なる2種類の粒子が透明な分散媒中に分散された構造を備える。
マイクロカプセル内に封入される電気極性の異なる2種類の粒子としては、黒色粒子と白色粒子の組み合わせをあげることができる。マイクロカプセルは、篩い分け法や比重分離法などにより精製されていて、平均粒径が30〜100μmであるものを用いることが好ましい。また、マイクロカプセルカプセルの平均粒径に対し前後10μm以内の粒径を有するマイクロカプセルの割合は少なくとも50%を超えることが好ましい。
【0035】
マイクロカプセル分散液は、アルコールなどの水系溶剤が使用され、特に問題なければ水を使用する。透明分散媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、各種エステル類、アルコール系溶媒、またはその他の脂等を単独または適宜混合した溶媒を使用する。
【0036】
黒色粒子には、無機炭素等の無機顔料のほか、ガラスあるいは樹脂等の微粉末、さらにはこれらの複合体などを使用することができる。一方、白色粒子としては、公知の酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の白色無機顔料、酢酸ビニルエマルションなどの有機化合物、さらにはこれらの複合体などを使用することができる。
【0037】
なお、黒色粒子および白色粒子は必要に応じて、粒子の表面を種々の界面活性剤、分散剤、有機および無機化合物、金属等を用いて処理することで所望の表面電荷を付与することができるのみならず、分散媒中での分散安定性を向上させることができる。
【0038】
マイクロカプセルを分散した分散液は、混合コアセルベーション法等の相分離法、界面重合法、in−situ法、溶解分散冷却法等、公知の方法を用いてマイクロカプセルカプセル殻に封入され、マイクロカプセルとなる。マイクロカプセル殻は、例えばゴムやゼラチンを用いることができる。
【0039】
電気泳動層形成用塗工液に含まれるバインダー樹脂としては、ポリ乳酸、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂などの誘電体樹脂を用いることができる。
【0040】
電気泳動層形成用塗液の塗工方法としては、スクリーン印刷方式、マイクログラビアコーター、キスコーター、コンマコーター、ダイコーター、バーコーダー、カーテンコーターなどの塗工装置を用いておこなうことができる。電気泳動層形成用塗液が塗工された後は、透明電極層12上の塗工液は乾燥される。乾燥方法としては、加熱、送風等を用いることができる。
【0041】
電気泳動表示層11の上には接着剤層30が形成される。接着剤層30は、あらかじめ離型導電フィルムに形成したものを積層フィルム10の電気泳動表示層11側に張り合わせると、積層フィルム10の透明導電膜(透明電極層12)と離型導電フィルムとの間に電圧を印加し、電気泳動表示層11の不良検査を行うことができ、好ましい。
【0042】
このとき、接着剤として使用することができるものは、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂系接着剤を用いることが好ましい。特に、高誘電体樹脂を使用した接着剤を用いることが好ましい。離型導電層としては例えば、ITO層、金属薄膜が挙げられる。
【0043】
本発明の反射型表示パネルの製造方法にあっては、画素電極21を備える基板20の画素電極面(基板20の表面)と、透明基材13上に透明電極層12および電気泳動表示層11を備える積層フィルム10の電気泳動表示層11の面が接着剤を介して貼りあわされる。
【0044】
透明アンダーコート層14の透明電極層12が形成された面と反対側の面には、カラーフィルター層15が設けられる。カラーフィルター層15は、透明アンダーコート層14に複数のインクを塗布することにより形成される。
【0045】
カラーフィルター層15を形成するためのインクとしては、公知の着色顔料もしくは着色染料を含むインクを用いることができる。カラーフィルター層15は画素ごとに光を着色するもので、赤色(R),緑色(G),青色(B)の三色パターン、あるいは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色のパターンを用いることができる。また、これらの色の組み合わせであってもよく、また、ホワイト(W)等の他の色を組み合わせてもよい。
【0046】
具体的に着色顔料の成分を挙げるのであれば、赤色着色層もしくは赤色画素を形成するための赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、279等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、橙色顔料を添加併用することができる。
【0047】
緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には赤色着色組成物と同様の黄色顔料を添加併用することができる。
【0048】
青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等の青色顔料、好ましくはC.I. Pigment Blue 15:6を用いることができる。また、青色着色組成物には、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料、好ましくはC.I.Pigment Violet 23を添加併用することができる。
【0049】
本発明の反射型表示パネルを構成するカラーフィルター層15には、画素毎を黒色でくぎるためのブラックマトリックスは形成しない。本発明の反射型表示パネルのカラーフィルター層15はブラックマトリックスを形成しないため、カラーフィルター層15を形成する際に透明の透明アンダーコート層14を形成し、該透明の透明アンダーコート層14中にインクジェット法によりインクを印刷しカラーフィルターを形成する方法が、最も生産性が高く、好適に用いることができる。
【0050】
透明アンダーコート層14へのインクの塗布方法としては、色による塗り分けが必要であるため、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法などを用いることができる。中でも、位置合わせが容易であることから、インクジェット法を用いて透明アンダーコート層14にインクを印刷し、カラーフィルター層15を形成することが好ましい。
【0051】
画素電極21を備える基板20としては、公知の物を用いることができる。基板20上の画素電極21は、各々の画素電極21のスイッチング素子に接続されており、透明電極層12との間に正負の電圧を印加することができる。画素電極21はアクティブマトリクス型駆動方式の回路構成の電源に接続される。
【0052】
基板20の画素電極面(表面)に設けられる位置合わせ用の模様としてのアライメントマーク22は、基板20の画素電極面の形成と同時に画素電極21の端にパターン形成できる。アライメントマーク22としては、十字型、丸型、多重同心円型、楔型などが挙げられる。
【0053】
保護フィルム40としては、透明基材13で示した材料を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、あるいはガラス等を使用することができる。また、保護フィルム40にあっては観察者側に表面の耐擦傷性を向上させるためのハードコート層や、表面の写りこみを防ぐための反射防止層、防湿性を考慮した金属成分を含有した薄膜層が設けられていてもよい。なお、透明アンダーコート層14と保護フィルム40は、公知の接着剤により貼りあわせられる。
【0054】
前記マクロカプセル層(電気泳動表示層11)を挟む電極板(透明電極層12および複数の画素電極21)の端を封止する樹脂としては、熱可塑性樹脂であるポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシリコーン樹脂系のシール剤または熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂系のシール剤などが挙げられる。
【実施例】
【0055】
<実施例1>
ポリエチレン樹脂で表面を被覆した平均粒径3μmの酸化チタン粉末(白色粒子)と、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4μmのカーボンブラック粉末(黒色粒子)をテトラクロロエチレンに分散し、分散液を得た。この場合、白色粒子が負に帯電し、黒色粒子が正に帯電する。
【0056】
この分散液をO/Wエマルジョン化し、ゼラチン−アラビアゴムによるコンプレックス・コアセルベーション法によりマイクロカプセルを形成することで、前記分散液をマイクロカプセル中に封入した。
【0057】
このようにして得られたマイクロカプセルを篩い分けして、平均粒径が60μm、50〜70μmの粒径のマイクロカプセルの割合が50%以上になるように、粒径をそろえた。
【0058】
次に、固形分40質量%のマイクロカプセルの水分散液を調整した。その水分散液と、固形分25質量%のウレタン系バインダー(CP−7050、大日本インキ株式会社製)と、界面活性剤と、増粘剤と、純水を混合し、電気泳動表示層形成用塗液を作製した。
【0059】
シリコーン層/PETフィルムのシリコーン側にポリエステル樹脂系の受容液NS−141LX(高松油脂株式会社)をコンマコーターを用いて連続塗工を行い、平均膜厚10umの透明アンダーコート層14を形成した。次に、受容相乗にITO層をスパッタ法により形成し、PETフィル/シリコーン層/透明アンダーコート層/ITO層からなるフィルムを得た。
【0060】
続き、得られたフィルムのITO層側に前記マイクロカプセルインクをダイによる塗工を行い、マイクロカプセル面にウレタン系接着剤付のシリコーン付アルミリリースを貼り合せ、PETフィルム/シリコーン層/ITO層/マイクロカプセル型電気泳動表示層/シリコーン付アルミリリース層からなる積層フィルムロールを得た。
【0061】
得られた積層フィルムロールを、500mmごとに断裁し、ITO層とアルミリリース層の間に電圧を印加し、電気泳動表示層11を駆動させ、表示欠陥検査を行った。
【0062】
得られた積層フィルム10を、CO2レーザーカット装置を用いて、画素電極21を備える基板20よりも小さいサイズに断裁をおこなった。
【0063】
断裁されたPETフィルム/シリコーン層/ITO層/マイクロカプセル型電気泳動表示層/シリコーン付アルミリリース層からなる積層フィルム10の接着剤側のシリコーン付アルミリリースフィルムを剥離し、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス型駆動方式の回路構成の画素電極21と端部に位置合わせ用の全幅500um線幅200umの十字模様(アライメントマーク22)を備える基板20にラミネートにより貼り合せ、透明アンダーコート層付電気泳動マイクロカプセル基板を得た。
【0064】
得られた透明アンダーコート層付電気泳動マイクロカプセル基板の透明アンダーコート層14側の透明基材13を剥がし、透明アンダーコート層14上にインクジェット法を用い、画素ごとに色分け印刷をおこないカラーフィルター層15を形成した。このとき、基板20上の位置合わせ用の十字模様により位置合わせをおこなった。また、カラーフィルター層15は、赤、青、緑のパターンとした。続き、保護フィルム40として粘着付きハードコートフィルム KBスティックSG90R(株式会社きもと)を透明アンダーコート層14上にラミネートした。以上により反射型表示パネルを作製した。
【0065】
得られた反射型表示パネルの各画素に電圧を印加したところカラーの表示を行うことができた。また、電気泳動表示層11とカラーフィルター層15が近接しているため、視差による色ムラは観察されなかった。
【符号の説明】
【0066】
10 積層フィルム
11 電気泳動表示層
12 透明電極層
13 透明基材
14 透明アンダーコート層
15 カラーフィルター層
15a 赤色カラーフィルター層
15b 青色カラーフィルター層
15c 緑色カラーフィルター層
20 基板
21 画素電極
22 アライメントマーク
30 接着層
31 離型導電リリース
40 保護フィルム
50 封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極が間隔をおいて形成された基板と、
前記基板の表面および前記画素電極を覆うように形成された反射型表示材料層と、
前記反射型表示材料層の前記基板の表面と反対側の面に形成された透明電極層と、
前記透明電極層の前記反射型表示材料層と反対側の面に形成された透明アンダーコート層と、
前記透明アンダーコート層の前記透明電極層の反対側の面に形成されたカラーフィルター層とを備え、
前記透明アンダーコート層の厚さが0.1μm以上100μm以下である、
ことを特徴とする反射型表示パネル。
【請求項2】
前記透明アンダーコート層の厚さが1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型表示パネル。
【請求項3】
前記反射型表示材料層が、電子移動粒子を分散媒中に分散した分散液を封入したマイクロカプセルをバインダー樹脂で固定した電気泳動表示層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型表示パネル。
【請求項4】
前記透明アンダーコート層の前記透明電極層と反対側の面に保護フィルムが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の反射型表示パネル。
【請求項5】
透明基材と、透明アンダーコート層と、透明電極層と、反射型表示材料層とがこれらの順番で積層された積層フィルムとを用意する第1の工程と、
厚さ方向の一方の面である表面に複数の画素電極が間隔をおいて形成された基板を用意する第2の工程と、
前記積層フィルムの前記反射型表示材料層を前記複数の画素電極を覆うように前記基板の表面に貼り合わせる第3の工程と、
前記積層フィルムから前記透明基材を剥離する第4の工程と、
前記透明アンダーコート層に、前記画素電極に対応したカラーフィルター層を形成する第5の工程とを含む、
ことを特徴とする反射型表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記透明アンダーコート層の厚さが0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の反射型表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記透明基材と前記透明アンダーコート層の間に剥離層が形成されており、前記剥離層によって前記積層フィルムから前記透明基材を剥離することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の反射型表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記第5の工程が、インクジェット法により前記透明アンダーコート層にインクを吐出し印刷することにより行われることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の反射型表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記第5の工程の後に、前記透明アンダーコート層の前記透明電極層と反対側の面に、保護フィルムを積層する第6の工程を含むことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の反射型表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程で用意される前記基板の表面に、前記画素電極と離間した箇所に位置合わせ用のアライメントマークが形成されており、
前記第3の工程による前記積層フィルムの前記基板の表面への貼り合わせは、前記積層フィルムの前記反射型表示材料層と前記アライメントマークとが重ならないようになされ、
前記第5の工程による前記画素電極に対応したカラーフィルター層の形成は、前記アライメントマークを基準としてなされることを特徴とする請求項5乃至請求項9にいずれか1項に記載の反射型表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−73042(P2013−73042A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212256(P2011−212256)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】