説明

反射型表示装置用カラーフィルタ

【課題】反射型表示装置に、高い光利用効率および高いNTSC比を付与することが可能な反射型表示装置用カラーフィルタ、これを用いた反射型表示装置、および電子ペーパーを提供すること。
【解決手段】透明基板と、透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有する着色層、並びに上記着色層が形成されている着色層形成領域外に設けられた白色領域を備える画素部と、を有し、上記反射型表示素子の白表示反射率に対する上記反射型表示装置の白表示反射率の割合と、上記反射型表示装置用カラーフィルタの上記画素部の面積に対する上記白色領域の面積比とが、下記に示す関係式を満たす。S+0.180<Y<S+0.360(式中、Yは上記反射型表示素子の上記白表示反射率に対する上記反射型表示装置の上記白表示反射率の割合、Sは上記反射型表示装置用カラーフィルタの上記画素部の面積に対する上記白色領域の面積比である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型表示装置に高い光利用効率および高いNTSC比を付与することができる反射型表示装置用カラーフィルタ、これを用いた反射型表示装置、および電子ペーパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパー(特許文献1)や液晶表示装置(特許文献2)等の各種のフラットタイプの表示装置の開発が進められている。このような表示装置は、背面にバックライトを設け、その発光を表示パネルで制御する透過型表示装置と、周囲の照明(以下、「環境光」とも言う)の反射光を制御する反射型表示装置とに大別される。また、このうち反射型表示装置は、低消費電力である、目が疲れない、および直射日光下での視認性が良い等の優れた特性を有することから応用が進められている。
【0003】
上述した反射型表示装置において、カラー画像表示を行う場合は、通常、複数色の着色層を有するカラーフィルタと、白表示および黒表示を行うことが可能な反射型表示素子とが組み合わされて用いられる。また、このような反射型表示装置においては、反射型表示素子を用いて白表示を行うことによって環境光を反射させ、反射光をカラーフィルタに透過させることによって所望のカラー画像表示が行われるものである。
【0004】
ここで、上述した透過型表示装置に用いられるカラーフィルタでは、透過型表示装置の表示画像のコントラストを向上させるため、画素部以外の領域に所定のパターンを有する遮光部が形成される。しかしながら、上述した遮光部を有するカラーフィルタを反射型表示装置に用いた場合は、カラーフィルタの遮光部によって入射した環境光が吸収されてしまい、その結果、反射型表示装置の白表示反射率が低下してしまうことから、光利用効率が低下してしまうといった問題があった。
【0005】
上述した問題に対して、最近では反射型表示装置の光利用効率を向上させるために、遮光部を有さず、さらに画素部上に着色層が形成されていない白色領域を設けたカラーフィルタを備えた反射型表示装置が提案されている。
しかしながら、上述した反射型表示装置においては、カラーフィルタの画素部の面積に対する白色領域の面積比率と反射型表示装置のNTSC比との調整を行うことが困難であり、例えばカラーフィルタの白色領域の面積比率が大きすぎる場合は、反射型表示装置の白表示反射率の低下を抑制することはできるものの、反射型表示装置のNTSC比は小さくなることから、鮮やかなカラー画像表示を行うことができない場合があるといった問題があった。
また今まで、反射型表示装置において、白色領域を設けたカラーフィルタを設計するに際しての指針は明確に示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−280044号公報
【特許文献2】特開2009−63643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意研究を行った結果、まず反射型表示装置において、反射型表示素子の白表示反射率に対する反射型表示装置の白表示反射率の割合Yを一定の値とした場合、反射型表示装置用カラーフィルタの画素部の面積に対する白色領域の面積比Sを所定の値としたときに、反射型表示装置のNTSC比が最大値をとることを知見として得た。そこで、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、反射型表示装置のYの値およびカラーフィルタのSの値が所定の数値範囲となるようにカラーフィルタを設計することにより、光利用効率が高く、かつ鮮明なカラー画像表示を行うことが可能なNTSC比を有する反射型表示装置を得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、反射型表示装置に高い光利用効率および高いNTSC比を付与することが可能な反射型表示装置用カラーフィルタ、これを用いた反射型表示装置、および電子ペーパーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、白表示および黒表示を行う反射型表示素子とともに反射型表示装置に用いられる反射型表示装置用カラーフィルタであって、透明基板と、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有する着色層、並びに上記着色層が形成されている着色層形成領域外に設けられた白色領域を備える画素部と、を有し、上記反射型表示素子の白表示反射率に対する上記反射型表示装置の白表示反射率の割合と、上記反射型表示装置用カラーフィルタの上記画素部の面積に対する上記白色領域の面積比とが、下記に示す関係式を満たすように設計されたものであることを特徴とする反射型表示装置用カラーフィルタ(以下、単にカラーフィルタと称する場合がある。)を提供する。
S+0.180<Y<S+0.360
(式中、Yは上記反射型表示素子の上記白表示反射率に対する上記反射型表示装置の上記白表示反射率の割合、Sは上記反射型表示装置用カラーフィルタの上記画素部の面積に対する上記白色領域の面積比である。)
【0010】
本発明によれば、カラーフィルタが上述した関係式を満たすように設計されたものであることから、上記カラーフィルタを用いた反射型表示装置に、高い光利用効率および鮮明なカラー画像表示を行うことが可能な高いNTSC比を付与することが可能となる。
また、本発明によれば、所定のYの値を有する反射型表示装置に合わせて、光利用効率およびNTSC比といった反射型表示装置の表示性能を最大限引き出すことが可能なカラーフィルタを上述した関係式を用いて設計することが可能となる。
【0011】
本発明においては、上記反射型表示素子の黒表示反射率が2.3%〜9.4%の範囲内であることが好ましい。上記反射型表示素子とともに用いられるカラーフィルタとすることにより、反射型表示装置のYの値およびカラーフィルタのSの値をより好適に調整することが可能となる。
【0012】
本発明は、上述したカラーフィルタ、および白表示および黒表示を行う反射型表示素子を有することを特徴とする反射型表示装置を提供する。
【0013】
本発明は、上述したカラーフィルタを有することから、光利用効率が高く、かつ鮮明なカラー画像表示を行うことが可能な高いNTSC比を有する反射型表示装置とすることが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上述したカラーフィルタと、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基板と、上記反射型表示装置用カラーフィルタおよび上記対向電極基板の間に配置された表示媒体層と、上記表示媒体層の対向電極基板側とは反対側に配置された透明電極層とを有することを特徴とする電子ペーパーを提供する。
【0015】
本発明は、上述したカラーフィルタを有することから、光利用効率が高く、かつ鮮明なカラー画像表示を行うことが可能な高いNTSC比を有する電子ペーパーとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカラーフィルタは、上述した関係式を満たすように設計されたものであることにより、上記カラーフィルタを用いた反射型表示装置は、高い光利用効率を有し、かつ鮮やかなカラー画像表示を行うことが可能なNTSC比を有することが可能となるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の電子ペーパーの一例を示す概略図である。
【図3】カラーフィルタのSの値と反射型表示装置のNTSC比との関係を示すグラフである。
【図4】カラーフィルタのSの値、反射型表示装置のYの値、および反射型表示装置のNTSC比の関係を示すグラフである。
【図5】本発明のカラーフィルタにおける画素部のパターン形状の例を示すパターン図である。
【図6】本発明の反射型表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のカラーフィルタ、反射型表示装置、および電子ペーパーについて説明する。
【0019】
A.カラーフィルタ
まず、本発明のカラーフィルタについて説明する。
【0020】
本発明のカラーフィルタは、白表示および黒表示を行う反射型表示素子とともに反射型表示装置に用いられるものであって、透明基板と、上記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有する着色層、並びに上記着色層が形成されている着色層形成領域外に設けられた白色領域を備える画素部と、を有し、上記反射型表示素子の白表示反射率に対する上記反射型表示装置の白表示反射率の割合と、上記反射型表示装置用カラーフィルタの上記画素部の面積に対する上記白色領域の面積比とが、下記に示す関係式を満たすように設計されたものであることを特徴とするものである。
S+0.180<Y<S+0.360
(式中、Yは上記反射型表示素子の上記白表示反射率に対する上記反射型表示装置の上記白表示反射率の割合、Sは上記反射型表示装置用カラーフィルタの上記画素部の面積に対する上記白色領域の面積比である。)
【0021】
ここで、本発明における「白色領域」とは、本発明における画素部として用いられる領域であり、着色層が形成されている着色層形成領域外、すなわち着色層が形成されていない領域を指すものである。なお、本発明のカラーフィルタにおいて、画素部として用いられない領域であって、かつ着色層等が形成されていない領域については、白色領域には含まれないものとする。
また、本発明における「画素部」とは、本発明のカラーフィルタを反射型表示装置に用いた場合に、画像表示を行う領域として用いられる領域を指すものである。
【0022】
また、ここで「反射型表示素子の白表示反射率」とは、反射型表示素子の白表示時の反射率を指すものである。
また、「反射型表示装置の白表示反射率」とは、反射型表示装置の白表示時の反射率を指すものであり、反射型表示素子にカラーフィルタを配置した状態での白表示時の反射率を指すものである。
なお、本発明における反射型表示素子の白表示反射率、および反射型表示装置の白表示反射率は、「電子情報技術産業協会規格」 EIAJ ED−2523の標準構成Aに則って測定された値を用いるものとする。
【0023】
ここで、本発明のカラーフィルタを図を用いて説明する。図1(a)は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)、(b)に例示されるように、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、透明基板1上に形成された赤色着色層21R、緑色着色層21G、および青色着色層21Bを有する着色層21、並びに着色層21が形成されている着色層形成領域外に設けられた白色領域22を備える画素部2と、を有するものである。なお、図1(a)、(b)においては、カラーフィルタ10全面が画素部2として用いられる例について示しているが、図示しないが、例えばカラーフィルタの外周に画素部として用いられない領域を設けてもよい。
【0024】
また、図2は、本発明のカラーフィルタが用いられた反射型表示装置の一例を示す概略断面図であり、反射型表示装置が電子ペーパーである例について示している。
図2に例示するように、本発明のカラーフィルタ10が用いられる反射型表示装置100は、カラーフィルタ10と、白表示および黒表示を行う反射型表示素子30とを有するものである。なお、図2に示す反射型表示装置100(電子ペーパー100’)においては、表示媒体層4を反射型表示素子30として用いるものである。
本発明のカラーフィルタ10は、反射型表示素子30の白表示反射率に対する反射型表示装置100の白表示反射率の割合Yと、カラーフィルタ10の画素部2の面積に対する白色領域22の面積比Sとが、上述した関係式を満たすように設計されたことを特徴とするものである。
なお、図2については、後述する「B.反射型表示装置」の項で詳しく説明するため、ここでの記載は省略する。
【0025】
ここで、白色領域を有するカラーフィルタは、反射型表示装置において環境光をより効率よく利用するために提案されたものである。
しかしながら、上述したカラーフィルタを用いた反射型表示装置においては、カラーフィルタの画素部の面積に対する白色領域の面積比率と反射型表示装置のNTSC比との調整を行うことが困難であり、例えばカラーフィルタの白色領域の面積比率が大きすぎる場合は、反射型表示装置の白表示反射率の低下を抑制することはできるものの、反射型表示装置のNTSC比は小さくなることから、鮮やかなカラー画像表示を行うことができない場合があるといった問題があった。
また今まで、反射型表示装置において、白色領域を設けたカラーフィルタを設計するに際しての明確な指針については示されていなかった。
【0026】
なお、反射型表示装置のNTSC比とは、NTSC規格の色再現領域に対する、反射型表示装置の実測した赤、緑、青表示反射率の色再現領域の割合を指すものである。
反射型表示装置の赤表示反射率とは、カラーフィルタの赤色領域の反射型表示素子を白表示、その他を黒表示にした場合の反射率を指す。
緑、青表示反射率も同様に、それぞれ、カラーフィルタの緑、青色領域の反射型表示素子を白表示、その他を黒表示にした場合の反射率を指す。
なお、上述した各々の反射率については、上述した反射型表示素子の白表示反射率および反射型表示装置の白表示反射率の測定方法と、同様の測定方法を用いて測定された値とすることができる。
【0027】
そこで本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意研究を行い、反射型表示装置のYの値を一定の値とした場合のカラーフィルタのSの値と反射型表示装置のNTSC比との関係を調べた結果、図3のグラフに示すように、カラーフィルタのSの値を所定の値としたときに、反射型表示装置のNTSC比が最大値をとることを知見として得た。なお、図3のグラフは、Y=0.500としたときに、Sの値と反射型表示装置のNTSC比とを変化させた例について示している。なお、詳しい測定条件等については、後述する実施例の項で詳しく説明するため、ここでの説明は省略する。
【0028】
ここで、反射型表示装置のYの値を一定とした場合、カラーフィルタのSの値を所定の値としたときに、反射型表示装置のNTSC比が最大値をとる理由については明らかではないが、次のように推測される。
まず、カラーフィルタの画素部が白色領域を有さない場合、すなわちS=0である場合、反射型表示装置の光利用効率に寄与する白色領域が存在しないことから、反射型表示装置が所定のYの値を示すためには、反射型表示装置の白表示反射率をカラーフィルタの各色の着色層中の着色剤の濃度を制限することによって調整する必要がある。そのため、反射型表示装置のNTSC比は小さな値を示すものと考えられる。
【0029】
一方、カラーフィルタの画素部に白色領域が存在する場合は、白色領域が反射型表示装置の光利用効率に寄与することから、白色領域を有さない場合に比べて反射型表示装置の白表示反射率は大きなものとなると考えられる。
よって反射型表示装置のY値が所定の値である場合、カラーフィルタの各色の着色層中の着色剤の濃度を上述した白色領域を有しない場合に比べて高いものとすることができ、その結果、反射型表示装置のNTSCの値を上述した白色領域を有しない場合に比べて大きな値とすることができるものと考えられる。
したがって、カラーフィルタのSの値を増やすことにより、カラーフィルタの各色の着色層中の着色剤の濃度を高くすることが可能となることから、反射型表示装置のNTSC比を向上させることが可能となるものと考えられる。
【0030】
しかしながら、カラーフィルタのSの値が大きすぎる場合、つまりカラーフィルタのSの値が所定の値を超える場合は、以下の問題が考えられる。
すなわち、カラーフィルタのSの値が大きい場合、各色を表示するための着色層の面積は小さくなる。また、反射型表示装置において単色の表示を行う場合、他の色の着色層形成領域および白色領域に対向する反射型表示素子では黒表示が行われる。ここで、反射型表示素子の黒表示においては完全に環境光を吸収することが困難であり、黒表示時においても環境光の一部が反射してしまう場合がある。そのため、カラーフィルタのSの値が大きすぎる場合は、カラー表示を行わない黒表示部分からの反射光の影響が大きくなり、各色の着色層による表示は着色層本来の色に比べて薄い色に視認されてしまうことから、反射型表示装置のNTSC比は小さくなるものと考えられる。
【0031】
上述したように、本発明者らは、反射型表示装置のYの値が一定である場合に、カラーフィルタのSの値を所定の値とすることにより、反射型表示装置のNTSC比が最大値をとることを知見として得たことから、さらに、反射型表示装置のYの値を様々な値とした場合におけるカラーフィルタのSの値および着色層中の着色剤の濃度の変化による反射型表示装置のNTSC比の変化を、シミュレーションによって調べることにより、図4に示すように、光利用効率が高く、かつ鮮明なカラー画像表示を行うことが可能なNTSC比を有する反射型表示装置を得ることができる、反射型表示装置のYの値およびSの値は、上述した関係式で示される数値範囲内に存在することを発見した。
なお、図4は、Yの値を0.250≦Y≦0.750の値で変化させた場合において、カラーフィルタのSの値および着色層中の着色剤の濃度を変化させることによる反射型表示装置のNTSC比の変化を示したグラフであり、反射型表示装置のNTSC比が最大値を示すものについては○、反射型表示装置のNTSC比が最大値を示さないものについては×で示したものである。なお、詳しいシミュレーションの条件等については、後述する実施例の項で詳しく説明するため、ここでの記載は省略する。
【0032】
次に、関係式について説明する。ここで、上述した関係式は、図4のグラフにおいて反射型表示装置のNTSC比が最大値を示すようなカラーフィルタのSの値および反射型表示装置のYの値のとり得る数値範囲を示すものである。
また、上述した関係式の下限を示す直線の式Y=S+0.180は、3つの(S,Y)の座標、(0.375,0.557)、(0.211,0.396)、(0.063,0.249)を用いて近似曲線を求めることにより得られた式である。また、上述した関係式の上限を示す直線Y=S+0.360は、3つの(S,Y)の座標、(0.375,0.731)、(0.143,0.494)、(0.063,0.415)を用いて近似曲線を求めることにより得られた式である。
【0033】
本発明によれば、カラーフィルタが上述した関係式を満たすように設計されたものであることから、上記カラーフィルタを用いた反射型表示装置に、高い光利用効率、および鮮明なカラー画像表示を行うことが可能な高いNTSC比を付与することが可能となる。
また、本発明によれば、所定のYの値を有する反射型表示装置に合わせて、光利用効率およびNTSC比といった反射型表示装置の表示性能を最大限引き出すことが可能なカラーフィルタを上述した関係式を用いて設計することが可能となる。
【0034】
以下、本発明のカラーフィルタにおける各構成について説明する。
【0035】
1.画素部
本発明における画素部は、透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有する着色層、並びに上記着色層が形成されている着色層形成領域外に設けられた白色領域を備えるものである。
【0036】
本発明の画素部の面積に対する白色領域の面積比Sの値としては、上述した関係式を満たすものであれば特に限定されるものではない。本発明においては、0.030〜0.390の範囲内、特に0.250〜0.380の範囲内であることが好ましい。上記数値範囲内とすることにより、本発明のカラーフィルタを反射型表示装置に用いた場合に、その表示性能を最大限引き出すことが可能となるからである。
【0037】
ここで、本発明における着色層は、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層の3色を有するものであるが、これに限定されるものではなく、上述した3色以外の色の着色層を有していてもよい。
【0038】
本発明に用いられる各色の着色層は、通常、複数色の着色層および白色領域が規則的に配置されるようにパターン状に形成されるが、本発明に採用されるパターンとしては特に限定されるものではなく、本発明のカラーフィルタが用いられる反射型表示装置の用途等に応じて適宜選択することができる。このようなパターンとしては、例えば、図1(a)に示すようなストライプ型、図5(a)に示すようなモザイク型、図5(b)に示すようなトライアングル型、および、図5(c)に示すような4画素配置型等を挙げることができる。また、このとき個々の着色層の面積は特に限定されるものではなく、本発明のカラーフィルタが用いられる反射型表示装置の解像度等に応じて適宜調整される。
なお、図5は、本発明のカラーフィルタにおける画素部のパターン形状の例を示すパターン図である。また、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0039】
上記着色層の材料については、顔料等の着色剤および感光性樹脂等が挙げられ、具体的には一般的なカラーフィルタの着色層に用いられているものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0040】
本発明に用いられる着色層の膜厚としては、本発明のカラーフィルタを反射型表示装置に用いた場合に、良好な画像表示を行うことができれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.5μm〜3.0μmの範囲内で設定することができる。
【0041】
上記着色層の形成方法としては、所望の厚みの着色層を混色無く形成することができる方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法や印刷法等、一般的に公知の方法を用いることができる。
また、本発明においては、カラーフィルタが用いられる反射型表示装置のNTSC比を所望のものとするために、通常、着色層の形成時に着色層に含まれる着色剤の濃度の調整が行われるものである。
【0042】
2.透明基板
本発明に用いられる透明基板は、上記透明基板上に上述した着色層を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。
【0043】
このような透明基板としては、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様とすることができ、具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。特に無アルカリガラスは信頼性とコストの点で好ましい。また、上記透明基板の膜厚等については、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
3.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、上述した透明基板および画素部を有するものであれば特に限定されるものではなく、カラーフィルタが用いられる反射型表示装置の種類に合わせて必要な構成を適宜追加して用いることができる。
【0045】
また、本発明においては反射型表示装置に用いられる透明電極層がカラーフィルタに形成されていてもよい。以下、透明電極層について説明する。
【0046】
(1)透明電極層
本発明に用いられる透明電極層の形成位置としては、用いられる反射型表示装置の種類に合わせて適宜選択されるものであり、透明基板の画素部側とは反対側の表面上に形成されていてもよく、透明基板と各色の着色層との間に形成されていてもよく、着色層上に形成されていてもよい。また、透明電極層は透明基板もしくは着色層上に直接形成されていてもよく、他の層を介して形成されていてもよい。
【0047】
本発明に用いられる透明電極層の材料としては、透明電極層を形成することができる導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物、Au、Ni等の金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を用いることができ、中でも、ITOが好適に用いられる。
【0048】
本発明に用いられる透明電極層の厚みとしては、透明電極層として機能することができれば特に限定されるものではないが、15nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。透明電極層の厚みが上記範囲に満たない場合は、透明電極層を均一な厚みで形成することが困難であるからであり、透明電極層の厚みが上記範囲を超える場合は、透明電極層の成膜に用いられる時間や材料が多くなるため、製造コストが高くなるからである。
【0049】
本発明に用いられる透明電極層の形成方法としては、所望の厚みで透明電極層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。このような透明電極層の形成方法としては、一般的な電極の成膜方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法、導電ペーストを塗布する方法等が挙げられる。また、上記透明電極層は、下地となる層または基材の表面上に全面に形成されていてもよく、下地となる層または基材の表面上にパターン状に形成されていてもよい。
【0050】
(2)その他の構成
本発明のカラーフィルタは、上述した構成以外にも、例えば着色層を保護するために設けられるオーバーコート層等を有することができる。なお、オーバーコート層については一般的なものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0051】
4.反射型表示装置
本発明のカラーフィルタは、白表示および黒表示を行うことが可能な反射型表示素子を有する反射型表示装置に用いられるものである。
【0052】
本発明のカラーフィルタが用いられる反射型表示装置のYの値としては、上述の関係式を満たすものであれば特に限定されないが、0.250≦Y≦0.750の範囲内が好ましく、なかでも0.400≦Y≦0.600の範囲内が好ましく、また上記数値範囲内においては、特にY=0.500であることが好ましい。上述したYの値を示す反射型表示装置は、近年需要が高く、光利用効率の向上およびNTSC比の向上が強く求められているからである。
【0053】
また上記反射型表示装置に用いられる表示素子は、白表示および黒表示を行うことが可能なものであれば特に限定されるものではなく、上記反射型表示素子の黒表示反射率は低ければ低いほどよいが、具体的には2.3%〜9.4%の範囲内、なかでも2.3%〜5.0%の範囲内であることが好ましい。
上述した反射型表示素子を有する反射型表示装置に本発明のカラーフィルタを用いた場合は、反射型表示装置の表示性能をより高いものとすることができる。
なお、「反射型表示素子の黒表示反射率」とは、反射型表示素子の黒表示時の反射率を指すものである。また、反射型表示素子の黒表示反射率としては、上述した反射型表示素子の白表示反射率および反射型表示装置の白表示反射率の測定方法と、同様の測定方法を用いて測定された値とすることができる。
【0054】
また、上記反射型表示素子の白表示反射率としては、本発明のカラーフィルタを反射表示素子とともに反射型表示装置に用いた場合に、所望の明るさでカラー画像表示を行うことが可能となる程度であれば特に限定されるものではなく、高ければ高いほどよいが、具体的には30%以上、なかでも30%〜50%の範囲内、特に40%〜50%の範囲内であることが好ましい。反射型表示素子の白表示反射率が上記範囲に満たない場合は、反射型表示装置として十分に機能しない可能性があるからである。
【0055】
このような反射型表示装置の具体例については後述する「B.反射型表示装置」の項で詳しく説明するため、ここでの説明は省略する。
【0056】
B.反射型表示装置
次に本発明の反射型表示装置について説明する。
本発明の反射型表示装置は、上述した「A.カラーフィルタ」の項で記載したカラーフィルタ、および白表示および黒表示を行う反射型表示素子を有することを特徴とするものである。
【0057】
本発明によれば、上述したカラーフィルタを有することから、利用効率が高く、かつ鮮明なカラー画像表示を行うことが可能な高いNTSC比を有する反射型表示装置とすることが可能となる。
【0058】
1.反射型表示装置
本発明の反射型表示装置のY値、および本発明に用いられる反射型表示素子の黒表示反射率および白表示反射率については、上述した「A.カラーフィルタ」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
本発明における反射型表示装置としては、上述したカラーフィルタと、白表示および黒表示を行う反射型表示素子とを有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、表示媒体層を反射型表示素子として有する電子ペーパー、液晶層を反射型表示素子として有する反射型液晶表示装置等を挙げることができる。なお、本発明の反射型表示装置が電子ペーパーである場合は、後述する「C.電子ペーパー」の項で詳しく説明するため、ここでの記載は省略する。以下、本発明の反射型表示装置が反射型液晶表示装置である場合について説明する。
【0060】
2.反射型液晶表示装置
本発明の反射型表示装置が、反射型液晶表示装置(以下、反射型液晶表示装置を単に、液晶表示装置と称して説明する場合がある。)である場合は、通常、上述したカラーフィルタと、液晶表示装置用対向基材、および液晶表示装置用対向基材上に形成された液晶表示装置用対向電極層を有する液晶表示装置用対向電極基板と、カラーフィルタおよび液晶表示装置用対向電極基板との間に液晶材料を封入することにより形成された液晶層とを有するものである。また、液晶表示装置においては、液晶層を反射型表示素子として用いるものである。
【0061】
図6は、本発明の反射型表示装置の他の例を示す概略断面図であり、反射型表示装置が液晶表示装置である例について示している。本発明の液晶表示装置100”は、カラーフィルタ10と、液晶表示装置用対向基材31’、および液晶表示装置用対向基材31’上に形成された液晶表示装置用対向電極層32’を有する液晶表示装置用対向電極基板3’と、カラーフィルタ10および液晶表示装置用対向電極基板3’の間に液晶材料を封入することにより形成された液晶層7とを有するものである。また、液晶層7を反射型表示素子30として用いるものである。
なお、図6におけるカラーフィルタ10については図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、液晶表示装置100”は、通常、カラーフィルタ10および液晶表示装置用対向電極基板3’の外周に封止部材8を配置することにより、液晶層7の封止が行われているものである。
以下、本発明の液晶表示装置に用いられる各構成について説明する。
【0062】
本発明の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、上述した「A.カラーフィルタ」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0063】
また、液晶表示装置用対向電極基板、液晶層、および封止部材等の構成についても、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
なお、本発明においては、液晶層の黒表示反射率および白表示反射率については、カラーフィルタを装着して液晶表示装置とした際に、所望のカラー画像表示を行うことができる程度であれば特に限定されるものではない。本発明における上記黒表示反射率および白表示反射率の好ましい数値範囲については、「A.カラーフィルタ」の項で記載した反射型表示素子の黒表示反射率、および白表示反射率の好ましい数値範囲と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0065】
C.電子ペーパー
次に、本発明の電子ペーパーについて説明する。
本発明の電子ペーパーは、上述したカラーフィルタと、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基板と、上記反射型表示装置用カラーフィルタおよび上記対向電極基板の間に配置された表示媒体層と、上記表示媒体層の対向電極基板側とは反対側に配置された透明電極層とを有することを特徴とするものである。なお、本発明の電子ペーパーは、表示媒体層を反射型表示素子として用いるものである。
【0066】
図2は、本発明の電子ペーパーの一例を示す概略断面図である。図2に示すように、電子ペーパー100’は、カラーフィルタ10と、対向基材31、および対向基材31上に形成された対向電極層32を有する対向電極基板3と、カラーフィルタ10とおよび対向電極基板3の間に配置された表示媒体層4と、表示媒体層4の対向電極基板3側とは反対側に配置された透明電極層5とを有するものである。なお、図2においては、カラーフィルタ10の着色層21を覆うようにオーバーコート層6が形成され、さらに透明電極層5が形成されており、カラーフィルタの透明電極層5と表示媒体層4の対向電極基板3側とは反対側とが対向するように配置されている例について示している。また、図2におけるカラーフィルタにおいて説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0067】
以下、本発明の電子ペーパーにおける各構成について説明する。なお、カラーフィルタについては、上述した「A.カラーフィルタ」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0068】
1.対向電極基板
本発明に用いられる対向電極基板は、対向基材および上記対向基材上に形成された対向電極層を有するものである。
【0069】
(1)対向電極層
本発明に用いられる対向電極層としては、透明電極層のストライプパターンに直交するように形成された画素電極層であってもよく、複数のTFT素子ならびに上記TFT素子に接続された画素電極を有するTFT電極層であってもよい。前者を用いることにより、パッシブマトリクス型の電子ペーパーとすることができ、後者を用いることにより、アクティブマトリクス型の電子ペーパーとすることができる。
【0070】
対向電極層については、一般的な電子ペーパー用部材に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
(2)対向基材
本発明に用いられる対向基材は、上記対向電極層を支持するものである。このような対向基材としては、一般的に電子ペーパー等の基板として用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。
【0072】
2.表示媒体層
本発明に用いられる表示媒体層は、上述した対向電極基板の対向電極層側に配置されるものであり、白表示および黒表示を行うための表示媒体を有するものである。
【0073】
本発明に用いられる表示媒体層は、本発明の電子ペーパー用部材が用いられる電子ペーパーの表示方式に応じて適宜選択されるものである。
電子ペーパーの表示方式としては、公知のものを適用することができ、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、粉体移動方式(電子粉流体方式、帯電トナー型方式)、液晶表示方式、サーマル方式(発色方式、光散乱方式)、エレクトロクロミック方式、エレクトロウェッティング方式、磁気泳動方式などが挙げられる。本発明においては、中でも、電気泳動方式が好適に用いられる。この方式は、実用段階に入っているとともに、粒子移動型であるため、視野角依存性が少なく、かつ応答性に優れた電子ペーパーを得ることができるからである。
【0074】
電気泳動方式は、溶媒中に分散された帯電粒子が、電界によって電極間を移動する電気泳動現象を利用したものである。電気泳動方式には、例えば、マイクロカプセル方式、マイクロカップ方式等がある。
マイクロカプセル方式では、帯電した白色粒子および黒色粒子と、これらの粒子を分散する透明分散媒とを透明樹脂からなるマイクロカプセル中に封入し、電界を印加することにより、上記白色粒子および上記黒色粒子を上下させることで白黒表示または階調を表現する。
マイクロカップ方式では、カップ状の窪み(マイクロカップ)で仕切られたセルに、染料で着色した分散媒と、帯電した白色粒子とを配置し、電界を印加することにより、上記白色粒子を上下させることで白色または上記分散媒の色を表示させる。
【0075】
本発明に用いられる表示媒体層の構成、材料および形成方法については、各表示方式の一般的な電子ペーパーに用いられるものと同様とすることができる。
【0076】
以下、本発明の電子ペーパー用部材がマイクロカプセル方式の電子ペーパーに用いられる場合の表示媒体層を例に挙げて説明する。このような表示媒体層としては、例えば、白色粒子と黒色粒子と透明分散媒とからなる分散液を内包したマイクロカプセルをバインダー樹脂により固定したものを挙げることができる。
【0077】
透明分散媒としては、例えば、アルコール系溶媒、各種エステル類、ケトン類、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独、またはこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
【0078】
白色粒子としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料を用いることができ、黒色粒子としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料を用いることができる。
さらに必要に応じて、これらの顔料に、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等を添加してもよい。
【0079】
マイクロカプセルの壁膜を形成する材料としては、例えば、アラビアゴム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂などの化合物を用いることができる。
【0080】
バインダー樹脂としては、マイクロカプセルの壁膜に対する親和性が良好で、絶縁性を有するものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0081】
このような表示媒体層は、例えば、マイクロカプセルをバインダー樹脂に分散してインキ化したものを塗布することにより形成することができる。
【0082】
なお、本発明における表示媒体層の黒表示反射率および白表示反射率については、反射型表示装置が所望のカラー画像表示を行うことが可能な程度であれば特に限定されないが、上述した「A.カラーフィルタ」の項で記載した反射型表示素子の黒表示反射率および白表示反射率の数値範囲内となることが好ましい。
【0083】
3.透明電極層
本発明に用いられる透明電極層は、表示媒体層の対向電極基板側とは反対側に配置されるものである。
このような透明電極層としては、表示媒体層の対向電極基板側とは反対側に配置することができれば特に限定されるものではなく、表示媒体層上に直接もしくは他の層を介して形成されていてもよいし、カラーフィルタに形成されていてもよいものである。
なお、透明電極層については、上述した「A.カラーフィルタ」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0084】
4.その他の構成
本発明の電子ペーパー用部材は、上述した対向電極基板、および表示媒体層を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な構成を適宜選択して用いることが可能である。
このような構成としては、電子ペーパーの視認性を向上させるための光学機能層、電子ペーパー表面の傷および汚れを防止するための表面保護層、表示媒体層を水分や酸素から保護するためのバリア層、および画面に直接触れることにより情報の入力が可能となる機能を電子ペーパーに付与するタッチパネル層等を挙げることができる。なお、上述した層はいずれも、カラーフィルタの画素部側または、画素部側とは反対側に配置されるものである。
なお、上述した構成については、一般的なものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0085】
5.電子ペーパー
本発明の電子ペーパーのYの値については、上述した「A.カラーフィルタ」の項で記載した反射型表示装置のYの値と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0087】
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて説明する。
【0088】
・カラーフィルタのSの値と反射型表示装置のNTSC比との関係
以下の実験を行い、反射型表示装置(電子ペーパー)のYの値を一定の値とした場合のカラーフィルタのSの値と反射型表示装置のNTSC比との関係を調べた。
【0089】
カラーフィルタの透明基板としてPETフィルム(東洋紡製、品名:A4100、膜厚125μmt)を、反射型表示素子として、白表示反射率が40.0%、黒表示反射率が4.6%の電気泳動材料(E-ink Corporation社製)を準備した。
次に、上記反射型表示素子を使用した場合に、Y=0.500(電子ペーパーの白表示反射率20.0%)となるように、カラーフィルタに用いられる赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層中の着色剤の濃度と、白色領域の面積を変えて様々な電子ペーパーを作製し、電子ペーパーのNTSC比およびカラーフィルタのSの値との関係を調べた。
上述した条件においては、カラーフィルタのS=0.250としたときに、電子ペーパーのNTSC比は最大値13.3%を示し、目視評価で、鮮やかな色表示を確認することができた。結果を図3に示す。
【0090】
なお、反射型表示装置(電子ペーパー)および反射型表示素子の反射率測定は、「電子情報技術産業協会規格」 EIAJ ED−2523の標準構成Aに則って測定した。照明光源はD65であった。
また、電子ペーパーのNTSC比とは、NTSC規格の色再現領域に対する、上記測定条件で実測した電子ペーパーの赤、緑、青表示反射率の色再現領域の割合を指すものである。
電子ペーパーの赤表示反射率とは、カラーフィルタの赤色領域の反射型表示素子を白表示、その他を黒表示にした場合の反射率を指す。
緑、青表示反射率も同様に、それぞれ、カラーフィルタの緑、青色領域の反射型表示素子を白表示、その他を黒表示にした場合の反射率を指す。
【0091】
・シミュレーションによる反射型表示装置の最適化
反射型表示素子として、白表示反射率が30%〜50%、黒表示反射率が2.3%〜9.4%の電気泳動材料を使用した場合に、電子ペーパーのYの値が0.250≦Y≦0.750の間で一定となるように、カラーフィルタに用いられる赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層中の着色剤の濃度と、カラーフィルタのSの値とを変化させた様々な電子ペーパーのNTSC比をシミュレーションにより求めた。結果を図4に示す。なお、図4においては、電子ペーパーのNTSC比が最大値を示すものについては○、最大値を示さないものについては×で示している。
【0092】
また、電子ペーパーのNTSC比が最大値を示すカラーフィルタのS値および電子ペーパーのY値については、表1〜表3に示す。なお、表1は反射型表示素子の白表示反射率が30%である場合、表2は反射型表示素子の白表示反射率が40%である場合、表3は反射型表示素子の白表示反射率が50%である場合を示している。また、表1〜3における黒表示反射率とは、反射型表示素子の黒表示反射率を表すものである。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
また、図4のグラフから、電子ペーパーのNTSC比が最大値を示すS値およびY値は、S+0.180<Y<S+0.360で示される関係式を満たすことが分かった。なお、上述した関係式の下限を示す式Y=S+0.180は、3つの(S,Y)の座標、(0.375,0.557)、(0.211,0.396)、(0.063,0.249)を用いて近似曲線を求めることにより得られた式である。また、上述した関係式の上限を示す直線Y=S+0.360は、3つの(S,Y)の座標、(0.375,0.731)、(0.143,0.494)、(0.063,0.415)を用いて近似曲線を求めることにより得られた式である。
【符号の説明】
【0097】
1 … 透明基板
2 … 画素部
21 … 着色層
21R … 赤色着色層
21G … 緑色着色層
21B … 青色着色層
22 … 白色領域
3 … 対向電極基板
31 … 対向基材
32 … 対向電極層
4 … 表示媒体層
5 … 透明電極層
30 … 反射型表示素子
100 … 反射型表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白表示および黒表示を行う反射型表示素子とともに反射型表示装置に用いられる反射型表示装置用カラーフィルタであって、
透明基板と、
前記透明基板上に形成された赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層を有する着色層、並びに前記着色層が形成されている着色層形成領域外に設けられた白色領域を備える画素部と、を有し、
前記反射型表示素子の白表示反射率に対する前記反射型表示装置の白表示反射率の割合と、前記反射型表示装置用カラーフィルタの前記画素部の面積に対する前記白色領域の面積比とが、下記に示す関係式を満たすように設計されたものであることを特徴とする反射型表示装置用カラーフィルタ。
S+0.180<Y<S+0.360
(式中、Yは前記反射型表示素子の前記白表示反射率に対する前記反射型表示装置の前記白表示反射率の割合、Sは前記反射型表示装置用カラーフィルタの前記画素部の面積に対する前記白色領域の面積比である。)
【請求項2】
前記反射型表示素子の黒表示反射率が2.3%〜9.4%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の反射型表示装置用カラーフィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の反射型表示装置用カラーフィルタ、および白表示および黒表示を行う反射型表示素子を有することを特徴とする反射型表示装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の反射型表示装置用カラーフィルタと、
対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極層を有する対向電極基板と、
前記反射型表示装置用カラーフィルタおよび前記対向電極基板の間に配置された表示媒体層と、
前記表示媒体層の対向電極基板側とは反対側に配置された透明電極層と
を有することを特徴とする電子ペーパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−128003(P2012−128003A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276865(P2010−276865)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】