反射防止フィルム
【課題】本発明は、安価で、干渉縞の発生を防止でき、反射防止層と基板との密着性が良好で、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、PET樹脂からなる光透過性基板上に形成された易接着層が、上記光透過性基板の屈折率と、上記易接着層上に形成された反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、上記反射防止層が、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ上記微細凹凸における凸部が、上記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる反射防止フィルムを提供することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】本発明は、PET樹脂からなる光透過性基板上に形成された易接着層が、上記光透過性基板の屈折率と、上記易接着層上に形成された反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、上記反射防止層が、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ上記微細凹凸における凸部が、上記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる反射防止フィルムを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示媒体に用いられる反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、絵画、印刷媒体、ディスプレイ等の各種表示媒体において、画像、文字、数字等の表示品質を向上させることを目的とした種々の研究がなされている。中でも、表示品質の向上を目的とした光の反射防止技術の開発は、各種表示媒体において共通する重要な技術的課題の一つになっている。
【0003】
従来、このような反射防止技術としては、例えば、低屈折率の物質からなる薄膜を単層で表面に形成することにより、単一波長の光に対して有効な反射防止効果を得る技術や、低屈折率物質と高屈折率物質の薄膜を交互に形成した複数層を形成することにより、より広い波長範囲の光に対して反射防止効果を得る技術が用いられてきた。中でも、複数層を用いる技術は、その層数を増加させることによって、より広い波長域を有する光に対しても反射防止効果を得ることができる点において有用であったことから、種々の用途において実用化が図られてきた。
【0004】
しかしながら、このような複数層を用いる技術においても幾つかの問題点があった。まず第1に、反射防止効果に優れた複数層を形成するには、通常、真空蒸着法などを用いて成膜する必要があるため、表示装置を製造するに際して真空設備を備えることが必要となってしまうという問題点があった。また、真空蒸着法では、成膜時間も長時間になるのが一般的であったことから、製造効率の問題も指摘されていた。特に、周囲光が非常に強い環境で使用されるディスプレイに対しては、一層高い反射防止機能が要請されるため、複数層を構成する層数を増加させる必要があることから、製造コストが著しく高くなってしまうという問題点があった。
第2に、技術的観点からしても、複数層による反射防止技術は、光の干渉現象を利用するものであるため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響してしまい、望みどおりの反射防止効果を得ることが困難であるという問題点があった。
【0005】
このような問題点に対し、特許文献1〜6には凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを表面に形成することによって反射防止を図る技術が開示されている。このような方法は、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることによって光の反射を防止するものである。このようなモスアイ構造を用いた反射防止技術は、簡易な方法によって広い波長範囲の光の反射を防止できる点において有用なものであることから、ディスプレイの分野においてもその実用化が検討されている。
なお、上記モスアイ構造に用いられる微細凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形などの錐形体や円柱形を含む形状で先端が尖っている形状が一般的である。
【0006】
しかしながら、円錐形等の錐形体のように凸部の先端が尖った形状の微細凹凸パターンを上記モスアイ構造として用いる場合、先端が細いため割れやすく、微細凹凸パターンが破壊されやすいという問題や、円柱形を含む形状の場合、微細凹凸パターンの型抜き性が良くないという問題がある。また、円柱形の場合、表面張力が大きい液体がモスアイ構造内に入りこみ、それが蒸発する時に、隣同士の構造体が、接触あるいはくっ付き合う現象(スティッキング)を起こしやすくなる。スティッキングが構造体の50%以上発生した場合、反射防止機能の低下や拡散光の増大によるヘイズが高くなる問題が発生する。
【0007】
一方、上記モスアイ構造は、その微細な凹凸形状を反転させた形状を有する金型(スタンパあるいは鋳型)を用いて、その凹凸の型を任意の樹脂層に転写することによって製造されるのが一般的である。したがって、モスアイ構造が用いられた反射防止フィルム(以下、「モスアイ型反射防止フィルム」と称する場合がある。)を作製する方法としては、基板上に硬化性樹脂からなる樹脂層を形成した後、上記のような金型を用いて当該樹脂層の表面にモスアイ構造を賦型し、さらに当該樹脂層を硬化させることによって形成する方法を用いることができる。このような製造方法は、簡易な方法で、かつ高い製造効率で反射防止フィルムを連続的に製造することができるという利点があるものであるが、その一方で、基板と樹脂層との界面が明瞭であるため、基板および樹脂層の屈折率差に起因する干渉縞が発生するとともに、基板と樹脂層との密着性が十分ではないという問題がある。
【0008】
これに対して、樹脂層と基板との界面に、樹脂層を形成する際に用いた溶剤および樹脂が基板に浸透した溶剤浸透層を形成することで、干渉縞を防止し、かつ、樹脂層と基板との密着性を向上させることができるということが知られている。しかしながら、このような溶剤浸透層を形成することができる基板は、用いられる樹脂が限られており、例えば、反射防止フィルムのコスト削減のために、安価なポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を基板に用いた場合、PET樹脂は耐溶剤性が高いため、溶剤浸透層を形成することができず、干渉縞の防止、および、樹脂層と基板との密着性の向上を図ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2001−517319号公報
【特許文献2】特開2004−205990号公報
【特許文献3】特開2004−287238号公報
【特許文献4】特開2001−272505号公報
【特許文献5】特開2002−286906号公報
【特許文献6】国際公開第2006/059686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、安価で、干渉縞の発生を防止することができ、反射防止層と基板との密着性が良好であり、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者が鋭意研究した結果、円錐台等の錐台形体のように凸部の先端が平らな形状の微細凹凸パターンをモスアイ構造として用いた場合、反射防止層における微細凹凸パターンの先端部の割れ等の問題を解決でき、さらに、型抜き性を良好にすることができる点を見出したが、凸部の先端が平坦である場合は、反射防止機能が低下してしまう可能性がある。そこで、凸部の先端が曲率を有する形状の微細凹凸パターンをモスアイ構造とすることにより、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性を良好にすることができ、かつ反射防止機能が低下しないものとなる。
また、本発明者は、安価なPET樹脂を基板に用いた場合でも、樹脂層と基板との間に易接着層を形成することで、樹脂層と基板との密着性を向上させることができ、さらに、易接着層の屈折率を制御することにより、干渉縞を防止することができるという知見を得ている。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成された易接着層と、上記易接着層上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであって、上記易接着層が、上記光透過性基板の屈折率と、上記反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、上記反射防止層が、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ上記微細凹凸における凸部が、上記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0013】
本発明によれば、光透過性基板および反射防止層の間に易接着層を形成することで、反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができ、かつ、易接着層が所定の屈折率を有することにより、干渉縞の発生を防止し、反射ムラを抑制することができる。加えて、PET樹脂からなる光透過性基板を用いることで、安価な反射防止フィルムとすることができる。また、本発明によれば、反射防止層の微細凹凸における凸部が、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部を備えているため、良好な反射防止機能を有するとともに、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムとすることができる。さらに、上記微細凹凸における凸部が、上記錐台形状の本体部を有しているため、反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けやすい反射防止フィルムとすることができる。
【0014】
上記発明においては、上記易接着層および上記反射防止層の間に、機能層が形成されていることが好ましい。機能層を形成することで、本発明の反射防止フィルムに所望の機能を付与することができるからである。
【0015】
上記発明においては、上記機能層が、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層であることが好ましい。ハードコート層が形成されていることにより、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させ、耐久性に優れた反射防止フィルムとすることができるからである。また、プライマー層が形成されていることにより、易接着層と反射防止層との密着性を向上させ、易接着層およびプライマー層を介して、反射防止層と光透過性基板との密着性をより向上させることができるからである。また、帯電防止層が形成されていることにより、静電気の発生を抑制し、本発明の反射防止フィルムへの埃や汚れの付着を防止することができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記本体部の縦断面における上記光透過性基板に対するテーパー角度が50°〜87°の範囲内であることが好ましい。反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から、より抜けやすくすることができるからである。
【0017】
上記発明においては、上記本体部の高さが60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましい。反射防止層が良好な反射防止機能を有することができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反射防止フィルムは、安価で、干渉縞の発生を防止することができ、反射防止層と基板との密着性が良好であり、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の一例を示す概略断面図である。
【図3】反射防止フィルムにおける微細凹凸の形状を説明する概略図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムにおける先端部の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図である。
【図6】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図である。
【図13】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の反射防止フィルムについて詳細に説明する。
【0021】
本発明の反射防止フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成された易接着層と、上記易接着層上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであって、上記易接着層が、上記光透過性基板の屈折率と、上記反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、上記反射防止層が、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ上記微細凹凸における凸部が、上記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。なお、図1(a)は反射防止フィルム全体を示しており、図1(b)は図1(a)に示す反射防止フィルムにおける反射防止層を拡大して示している。図1(a)に例示する反射防止フィルム10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成された易接着層2と、易接着層2上に形成され、表面に可視光領域の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層3とを有している。また、易接着層2は、光透過性基板1の屈折率と、反射防止層3の屈折率との平均となる屈折率を有し、反射防止層3は、易接着層2上に形成された基底部4と、基底部4上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸5とを有している。さらに、図1(b)に例示するように、微細凹凸5における凸部は、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部5aと、本体部5aの頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部5bとから構成されている。
【0023】
本発明によれば、光透過性基板および反射防止層の間に易接着層を形成することで、反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができ、かつ、易接着層が所定の屈折率を有することにより、干渉縞の発生を防止し、反射ムラを抑制することができる。加えて、PET樹脂からなる光透過性基板を用いることで、安価な反射防止フィルムとすることができる。また、本発明によれば、反射防止層の微細凹凸における凸部が、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部を備えているため、良好な反射防止機能を有するとともに、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムとすることができる。さらに、上記微細凹凸における凸部が、上記錐台形状の本体部を有しているため、反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けやすい反射防止フィルムとすることができる。
【0024】
本発明の反射防止フィルムは、少なくとも光透過性基板と、易接着層と、反射防止層とを有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を有していてもよいものである。
以下、本発明の反射防止フィルムにおける各構成について説明する。
【0025】
1.易接着層
まず、本発明における易接着層について説明する。本発明における易接着層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板上に形成されるものであり、光透過性基板の屈折率と、反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有するものである。本発明においては、光透過性基板および反射防止層の間に、所定の屈折率を有する易接着層を形成することにより、光透過性基板と反射防止層との密着性を向上させることができ、かつ、干渉縞の発生を防止することができる。
【0026】
本発明における易接着層は、通常、樹脂からなるものである。易接着層に用いられる樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)、熱可塑性樹脂を挙げることができる。
紫外線硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これら少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のうち、塗膜強度、密着性の観点より、少なくとも6つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類を好適に使用することができる。
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリテート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能としては、具体的には上記多価アルコールとアクリル酸のエステル化合物が挙げられ、単独または2種以上の混合物が好ましい。
さらに、WO2007/040159に記載されている(メタ)アクリル系重合性組成物を用いることができる。
【0027】
また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、オレフィン・マレイミド共重合体、フルオレイン系エポキシ、フルオレイン系アクリレート、フルオレイン系ポリエステル、フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0028】
本発明における易接着層の透明度としては、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0029】
本発明における易接着層の屈折率は、後述する光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率の平均となる。ここで、「光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率の平均となる」とは、「光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率の算術平均値の±2.5%の範囲内となる」ことをいう。
本発明においては、反射防止層の屈折率を光透過性基板の屈折率に近いものとすることにより、易接着層の屈折率が、光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率となるべく近い値となることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおいて、反射防止層と易接着層と光透過性基板との各界面に、屈折率の不連続界面が形成され、当該不連続界面において光が反射されることにより、上記反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。中でも、上記易接着層の屈折率は、反射防止層の屈折率および光透過性基板の屈折率との差が0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本発明における易接着層の屈折率の値は、光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率によって決定されるものであるから、特に好ましい値はないが、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
【0030】
また、本発明における易接着層は、単層であってもよく、多層であってもよい。易接着層が多層である場合は、易接着層を構成する各層の屈折率を平均した平均屈折率が、光透過性基板の屈折率と、反射防止層の屈折率との平均となる。易接着層が多層の場合、光透過性基板の屈折率>易接着層の屈折率>反射防止層の屈折率となることが望ましい。
【0031】
本発明の易接着層の厚みとしては、反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができ、かつ、干渉縞の発生を防止することができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、0.01μm〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、0.05μm〜5.0μmの範囲内であることがより好ましく、0.10μm〜2.0μmの範囲内であることがさらに好ましい。易接着層の厚みが上記範囲よりも厚いと、本発明の反射防止フィルムにカールが生じてしまうおそれがあるからであり、易接着層の厚みが上記範囲よりも薄いと、易接着層に所望の硬度を付与することが困難となるおそれがあるからである。
【0032】
本発明における易接着層は、上述した樹脂の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、本発明の易接着層に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調整剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調整剤、流動性調整剤、酸化防止剤、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系などの離型剤や内部または外部滑剤、炭酸ストロンチウムなどの偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。具体的には、例えば、特開2009−230045号公報に記載されている以下の物質が挙げられる。
【0033】
<帯電防止剤(導電剤)>
帯電防止剤(導電剤)を添加することにより、易接着層の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、あるいは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
【0034】
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、オリアズレン等;芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)等;複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソシアナフテン等;含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン等;混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体、これら導電性ポリマー誘導体等が挙げられる。取り分け、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、易接着層の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。また、導電性向上や、帯電防止性能向上を目的として、有機スルホン酸や塩化鉄等の陰イオンを、ドーパント(電子供与剤)として添加することもできる。ドーパント添加効果も踏まえ、特にポリチオフェンは透明性、帯電防止性が高く、好ましい。上記ポリチオフェンとしては、オリゴチオフェンも好適に使用することができる。上記誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンのアルキル基置換体等を挙げることができる。また、導電性カーボンナノチューブ、ボロンおよびその化合物等が挙げられる。また、金属、およびこれらの金属酸化物の粒子径1μm以下の微粉末を添加することもできる。例えば、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンからなる金属、または金属酸化物、あるいはこれらを表面に被覆またはドープした化合物が用いられる。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、帯電防止剤は、易接着層を形成する際に用いられる易接着層形成用樹脂組成物全量に対して、0.01重量%以上50重量%以下であり、好ましくは下限値が0.1重量%以上であり上限値が30重量%以下程度である。上記数値範囲に調整することにより、易接着層としての透明性を保ち、また易接着層の機能に影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
【0036】
<屈折率調整剤>
屈折率調整剤を添加することにより、易接着層の光学特性を調整することが可能となる。屈折率調整剤には、低屈折率剤、中屈折率剤、高屈折率剤等が挙げられる。
【0037】
1)低屈折率剤
低屈折率剤を添加した易接着層の屈折率は、1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。低屈折率剤の好ましいものとしては、シリカ、フッ化マグネシウムなどの低屈折率無機超微粒子(多孔質、中空など全ての種類の微粒子)、および低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物またはその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
【0038】
電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールなど)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基またはフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などもある。
【0039】
熱硬化性極性基として好ましいのは、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合成化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを挙げることができる。
【0040】
電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリルまたはメタクリル酸の部分および完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、完全または部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
【0041】
また、含フッ素重合体の具体例としては、上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマーまたはモノマー混合物の重合体;上記含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体または共重合体等が挙げられる。
【0042】
これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も使うことができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示される。中でもジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0043】
さらには、以下のような化合物からなる非重合体または重合体も、フッ素系樹脂として用いることができる。すなわち、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のようなイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオールのようなフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等を用いることができる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は易接着層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることを可能とする。本発明において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造および/または気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部、および/または表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。
【0045】
空隙を有する無機系の微粒子の具体例としては、特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましくは挙げられる。その他、特開平7−133105号公報、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して易接着層に添加した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調整することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
【0046】
塗膜の内部および/または表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラムおよび表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子、または断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体を挙げることができる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業社製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
【0047】
「空隙を有する微粒子」の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であり、好ましくは下限が8nm以上であり上限が100nm以下であり、より好ましくは下限が10nm以上であり上限が80nm以下である。微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、易接着層に優れた透明性を付与することが可能となる。
【0048】
2)高屈折率剤/中屈折率剤
高屈折率剤、中屈折率剤は、易接着層の光学特性をより向上させるために用いられる。高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.55〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.55〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
【0049】
これら屈折率剤は、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)が挙げられる。
【0050】
<レベリング剤>
レベリング剤は、易接着層に、滑り性、防汚性および耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。従って、レベリング剤は防汚染剤、撥水剤、撥油剤、指紋付着防止剤として機能するものである。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等が挙げられる。
【0051】
<防汚染剤>
防汚染剤は、易接着層の汚れ防止を主目的とし、さらに易接着層に耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
【0052】
<紫外線・赤外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等が挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等が挙げられる。
【0053】
<高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤>
高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤は、反射防止フィルムで一般的に用いられる機能層で用いられるものであればいずれのものであってもよい。
【0054】
2.反射防止層
次に、本発明における反射防止層について説明する。本発明における反射防止層は、上記易接着層上に形成され、本発明の反射防止フィルムに反射防止機能を付与するものである。また、本発明における反射防止層は、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状(以下、「モスアイ構造」と称する場合がある。)を有するものであり、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有するものである。
【0055】
(1)微細凹凸
本発明に用いられる微細凹凸は、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状からなるものであり、上記微細凹凸における凸部が、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されるものである。
【0056】
(a)本体部
本発明に用いられる本体部は、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状であるものである。本発明においては、上記錐台形状の本体部を有しているため、良好な反射防止機能を有するとともに、反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けやすくなる。金型からの抜けが悪い場合、本体部を形成するための樹脂が金型の微細孔の中に残留するようになる。残留部分に相当する部分が転写された易接着層の表面は、反射防止機能を発現するための凹凸形状がない状態となり、反射防止機能を阻害する原因となる。また、本体部がテーパー形状を有することで機械的強度も向上し、テーパーが小さい場合に比べ、スティッキングが発生しにくい。
【0057】
上記本体部の縦断面における光透過性基板に対するテーパー角度としては、テーパー状に立ち上がる錐台形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。上記テーパー角度が上記範囲よりも大きいと、本体部が垂直状に立ち上がる柱形状に近くなり、本発明の反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けにくくなる場合があり、また、良好な反射防止機能を示さない可能性があるからである。さらに、スティッキングが発生しやすくなる場合がある。一方、上記テーパー角度が上記範囲よりも小さいと、反射防止機能が低下し、反射率の波長依存性を受けやすくなり、さらに、本体部を形成することが困難となる場合があるからである。
本発明における上記テーパー角度とは、本体部の縦断面での側面が直線状の場合、上記側面を近似する直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図1(b)におけるθ1で表される角度である。
一方、本体部の縦断面での側面が曲線状の場合、本体部の頂面の外周上の点および本体部の底面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図2におけるθ2で表される角度である。
ここで、本体部の頂面は、微細凹凸における凸部の側面の曲率が大きく変化する部位の横断面からなる面とし、本体部の底面は、本体部と基底部とが接する面とする。
なお、本発明における上記テーパー角度は、本体部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー角度を測定し、その測定値の平均値とする。また、図2は本発明における反射防止層の一例を示す概略断面図であり、図2における各符号については、図1(b)と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0058】
また、上記本体部の高さとしては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、適宜調整できるものである。ここで、上記高さが高いほど、反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、上記高さが低いほど、長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、本発明における上記本体部の高さは、60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜750nmの範囲内であることがさらに好ましい。本体部の高さが上記範囲よりも高いと、本体部が損壊しやすく、また、スティッキングが発生しやすくなる場合があり、本体部の高さが上記範囲よりも低いと、本発明における反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
本発明における上記本体部の高さとは、基底部表面から、本体部の頂面までの距離をいい、例えば、図1(b)におけるHで表される距離である。なお、本発明における上記本体部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0059】
上記本体部の頂面の径としては、上記本体部の底面の径よりも小さければ特に限定されるものではないが、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、2nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の頂面の径が小さすぎると、機械的強度が小さくなり、本体部が損傷しやすくなるからである。また、本体部の頂面の径が大きすぎると、テーパーが小さくなるため、スティッキングを発生しやすくなったり、型から抜けにくくなったりするからである。なお、本発明における上記本体部の頂面の径は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0060】
上記本体部の底面の径としては、上記本体部の頂面の径よりも大きければ特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の底面の径が小さくなると、隣り合う構造体の間が開き、構造体を形成していない部分が多くなるため、反射防止機能が悪くなる。なお、本発明における上記本体部の底面の径は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0061】
上記本体部の頂面形状および底面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状などを挙げることができる。
【0062】
上記本体部の側面形状としては、上記本体部の縦断面において、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。中でも、本発明においては、上記本体部が後述する先端部と連続的な曲面状の側面を形成することが好ましい。図2に例示するように、微細凹凸の凸部を釣鐘形状とすることができ、良好な反射防止機能を得ることができるからである。以下、上記凸部が釣鐘形状であることにより反射防止機能が良好となる理由について、具体的に説明する。
【0063】
モスアイ構造が反射防止をする原理については、次のように考えられる。図3(a)に例示されるモスアイ構造体Xの頂点部付近の空間(擬似層a)の屈折率Nは、空気の屈折率を1、擬似層a中でモスアイ構造体Xが占める体積の割合をVm、モスアイ構造体Xを構成する樹脂の屈折率をNmとすると、下記の(1)式が成り立つ。
N=1×(1−Vm)+Nm×Vm (1)
すなわち、擬似層aの屈折率は、空気と樹脂との、それぞれの体積と屈折率とを考慮した加重平均として与えられる。擬似層b以降も、同様である。擬似層a〜擬似層kへと基材Yに近づくにつれ、擬似層の屈折率は大きくなるが、図3(b)に例示するように、錐形状の屈折率の変化量が曲線的に変化するのに対して、釣鐘形状の屈折率の変化量はほぼ直線的に変化する。これは、モスアイ構造体Xが占める体積の割合は、擬似層aから擬似層kまでの断面積の変化ととらえることができ、この断面積の変化は錐形状の場合、曲線的に変化し、釣鐘形状の場合、ほぼ直線的に変化するからである。そのため、釣鐘形状のモスアイ構造体Xは、錐形状のモスアイ構造体Xに比べて、基材Y近傍の屈折率の変化率が小さいという特徴がある。基材Y近傍の屈折率の変化率が小さい方が、空気と樹脂との屈折率を小さくすることが擬似的に起こり、反射率を小さくすることが可能となる。また、本体部のテーパーが小さい場合、図3(b)に例示するように、擬似層kでの屈折率の変化量は小さいが、擬似層aからc部分での屈折率の変化量が大きくなるため、全体に白っぽくなる傾向がある。したがって、錐形状のモスアイ構造体Xおよびテーパーが小さい形状のモスアイ構造体Xよりも釣鐘形状のモスアイ構造体Xの方が、反射防止機能が優れている。
本発明においては、上記本体部のテーパー角度および上記先端部の曲率半径を適宜調整し、上記微細凹凸における凸部の釣鐘形状を規定することにより、上記擬似層の屈折率分布を最適化することができ、上記微細凹凸を光学的特性に優れたモスアイ構造とすることができる。
【0064】
(b)先端部
本発明に用いられる先端部は、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有するものである。本発明においては、上記先端部が曲面構造を有することにより、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部の最先端部が割れる等の不具合がなく、さらに、型抜き性に優れた反射防止フィルムとすることができる。なお、上記先端部の曲面構造は、反射防止層を形成する際の圧力、反射防止層の樹脂の粘度等で制御することが可能である。
【0065】
上記先端部の形状としては、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造であれば特に限定されるものではない。本発明においては、中でも、略球面状であることが好ましく、その曲率半径としては、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜調整することができるものであり、例えば、本発明に用いられる本体部の頂面の径に対して、1.0倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.0倍〜2.0倍の範囲内であることがより好ましく、1.0倍〜1.5倍の範囲内であることがさらに好ましい。先端部の曲率半径が上記範囲よりも大きいと、先端部が平らな形状に近くなるため、反射防止層の反射率が高くなり、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が低下する場合があるからである。また、図4(a)に例示するように、先端部5bの曲面構造は、球面状であることが望ましいが、図4(b)、(c)に例示するように、先端部5bの曲面構造は、一部尖っている形状および/またはうねりがあってもよい。また、先端部の最先端部は本体部の頂面の中心にある必要はなく、中心からずれていても反射防止機能には変化はない。なお、図4(a)〜(c)は、本発明の反射防止フィルムにおける先端部の一例を示す概略断面図である。
【0066】
また、上記先端部の高さ、すなわち、本体部の頂面から先端部の最先端部までの距離としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものである。
【0067】
(c)凸部
本発明に用いられる凸部は、上記先端部と上記本体部とから構成されるものであり、本発明における反射防止層が備える反射防止機能は、上記凸部が形成された周期、高さ、間隔に依存する。
なお、上記凸部が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図5におけるP1、Q1、およびR1で示す通り、それぞれ隣接する凸部における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、凸部における先端部の頂部から本体部の底面までの距離、および隣接する凸部における本体部の底面の外周間の最短距離である。ここで、図5は本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図であり、図5において説明していない符号については、図1(b)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0068】
上記凸部の周期としては、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、本発明に用いられる反射防止層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、本発明における上記凸部の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜250nmの範囲内であることがさらに好ましい。上記凸部の周期が上記範囲よりも短いと、個々の凸部の形状が極微小になることから、高精度で凸部を形成することが困難になる場合があるからである。また、上記凸部の周期が上記範囲よりも長いと、本発明における反射防止層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。なお、本発明における上記凸部の周期は、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の周期を測定し、その測定値の平均値とする。
【0069】
上記凸部の高さについても、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記高さが高いほど、反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、本発明における上記凸部の高さは、62nm〜1402nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1002nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜752nmの範囲内であることがさらに好ましい。上記凸部の高さが上記範囲よりも高いと、個々の凸部が損壊しやすくなってしまう場合があり、上記凸部の高さが上記範囲よりも低いと、本発明における反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。なお、本発明における上記凸部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0070】
上記凸部が形成された間隔は、広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、本発明における上記凸部が形成された間隔は、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。なお、本発明における上記凸部の間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0071】
上記凸部の高さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。上記凸部の高さのばらつきが上記範囲よりも大きいと、本発明における反射防止層の反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。また、凸部の頂点から構成される表面の機械的強度が低下し、損傷を受けやすくなる。なお、上記凸部の高さのばらつきとは、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の高さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
【0072】
上記凸部の単位面積当たりの個数としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、50個/μm2以上であることが好ましく、60個/μm2以上であることがより好ましく、70個/μm2以上であることがさらに好ましい。上記凸部の単位面積当たりの個数が50個/μm2以下の場合、ギラツキが発生し、反射防止機能が悪くなる。また、凸部の頂点から構成される表面の機械的強度が低下し、損傷を受けやすくなる。
なお、本発明においては、反射防止層が上記凸部以外の構造体を有していてもよいが、反射防止層における上記凸部の個数の、反射防止層における構造体全体の個数に対する割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。上記割合が少なすぎると、反射防止機能、スティッキング耐性および型抜け性が低下してしまうからである。
【0073】
上記凸部の360nm〜760nmの波長領域における入射角5°での正反射率は、0.5%以下であることが好ましく、0.005%〜0.3%の範囲内であることがより好ましく、0.005%〜0.1%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記凸部の360nm〜760nmの波長領域におけるヘイズ値は、0.1%〜50%の範囲内であることが好ましい。
【0074】
上記凸部は、短波長領域から長波長領域までくまなく反射することが可能である。
【0075】
(2)基底部
本発明に用いられる反射防止層における基底部は、上記易接着層上に形成され、上記微細凹凸を支持するものである。
上記基底部の厚みとしては、0.5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、2μm〜80μmの範囲内であることがさらに好ましい。基底部の厚みが上記範囲内であることにより、反射防止層の収縮応力の程度を低減することができ、上記易接着層および後述する光透過性基板等の種類に関わらず、本発明の反射防止フィルムにカールが生じることを防止することができるからである。また、クッション層としての効果があり、反射防止層の機械的損傷を補強することができる。例えば、反射防止層の機械的強度を高くさせたり、擦傷耐性を向上させ、傷つきにくくさせたりすることができる。さらに、反射防止層と易接着層との密着性を向上させることができる。
【0076】
(3)反射防止層
本発明における反射防止層は、通常、樹脂からなるものである。反射防止層に用いられる樹脂としては、上述した微細凹凸を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。中でも、本発明においては、電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電離線放射線硬化性樹脂を用いることで、高精度に微細凹凸を作製することができ、反射防止層に良好な反射防止機能を付与することができるからである。
【0077】
本発明に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂としては、少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を挙げることができる。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これら少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のうち、塗膜強度、密着性の観点より、少なくとも6つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類を好適に使用することができる。
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基をもつ(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリテート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し、官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能としては、具体的には、上述した多価アルコールとアクリル酸のエステル化合物が挙げられ、単独または2種以上の混合物が好ましい。
さらに、WO2007/040159に記載されている(メタ)アクリル系重合性組成物を用いることができる。
また、上記樹脂には、光重合開始剤を適宜添加することが望ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ゲンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。
本発明においては、これらの電離放射線硬化性樹脂の中から、後述する光透過性基板の屈折率と近い屈折率を有する樹脂を適宜選択して用いることが好ましい。易接着層の屈折率を、反射防止層の屈折率および光透過性基板の屈折率に近づけることができるからである。
【0078】
また、本発明に用いられる熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、オレフィン・マレイミド共重合体、フルオレイン系エポキシ、フルオレイン系アクリレート、フルオレイン系ポリエステル、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのエラストマーや酸変性物などを挙げることができる。
【0079】
本発明における反射防止層の透明度としては、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0080】
本発明に用いられる反射防止層の反射防止機能は、反射防止層の屈折率および上記易接着層の屈折率にも依存するものである。すなわち、反射防止層の屈折率と、上記易接着層の屈折率との差が小さいほど、屈折率の不連続性を是正することができるため、反射防止層の反射防止機能を向上させることができるものである。このような観点から、本発明においては、反射防止層の屈折率と、上記易接着層の屈折率との差は、0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。反射防止層の具体的な屈折率の値は、特に限定されるものではないが、上記易接着層の屈折率との差が小さいことが好ましいことから、後述する光透過性基板の屈折率に近いことが好ましく、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
【0081】
本発明に用いられる反射防止層は、上述した樹脂に加えて、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0082】
3.光透過性基板
次に、本発明における光透過性基板について説明する。本発明における光透過性基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるものである。また、上記光透過性基板は、上述した易接着層および反射防止層を支持するものであり、上記易接着層および反射防止層と相まって、本発明の反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
【0083】
また、本発明における光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであり、中でも、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0084】
本発明における光透過性基板の屈折率は、ほぼ一定であり、通常、1.57〜1.59程度である。
【0085】
本発明における光透過性基板は、PET樹脂からなるものであるが、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調整剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調整剤、流動性調整剤、酸化防止剤、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系などの離型剤や内部または外部滑剤、炭酸ストロンチウムなどの偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。
【0086】
本発明における光透過性基板の厚みとしては、上述した易接着層および反射防止層を支持することができれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムに応じて適宜選択することができるものであるが、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0087】
4.反射防止フィルム
本発明の反射防止フィルムは、図1(a)に例示するように、光透過性基板1上に、易接着層2および反射防止層3が順に形成された構造であってもよく、図6に例示するように、光透過性基板1を挟むように易接着層2および反射防止層3が順に形成された構造であってもよい。なお、図6は本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図であり、図6において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0088】
また、本発明の反射防止フィルムは、少なくとも上記反射防止層と、上記易接着層と、上記光透過性基板とを有するものであるが、必要に応じて任意の構成が用いられていてもよい。本発明に用いられる任意の構成は、特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて、所望の機能を付与することができる構成を適宜選択して用いることができる。中でも、本発明に好適に用いられる任意の構成としては、上記易接着層と、上記反射防止層との間に形成されるプライマー層(密着安定層)、ハードコート層、帯電防止層等の機能層、および、上記光透過性基板の上記易接着層および上記反射防止層が形成された面とは反対の面上に形成される粘着層を挙げることができる。プライマー層は、ハードコート層および/または帯電防止層を兼ねることもできる。また、反射防止層の表面に形成される保護層を用いることもできる。
ここで、上記機能層としてハードコート層が形成されていることにより、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させ、耐久性に優れた反射防止フィルムとすることができることから、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いた場合に、本発明の反射防止フィルムを表示装置の保護フィルムとして用いることも可能になるという利点がある。また、上記機能層としてプライマー層が形成されていることにより、易接着層と反射防止層との密着性を向上させ、易接着層およびプライマー層を介して、反射防止層と光透過性基板との密着性をより向上させることができ、上記機能層として帯電防止層が形成されていることにより、静電気の発生を抑制し、本発明の反射防止フィルムへの埃や汚れの付着を防止することができる。
一方、上記粘着層が形成されていることにより、例えば、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いる場合に、本発明の反射防止フィルムを他の部材に貼り合わせることが容易になるという利点がある。
【0089】
本発明の反射防止フィルムに上記ハードコート層、プライマー層または帯電防止層が用いられている場合について、図面を参照しながら説明する。図7は、本発明の反射防止フィルムにハードコート層、プライマー層または帯電防止層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図7に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、易接着層2と反射防止層3との間に、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層6が形成されていてもよい。なお、図7において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0090】
本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層としては、所望の硬度、易接着層との密着性や帯電防止性を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなハードコート層、プライマー層または帯電防止層を構成する材料は、上述した反射防止層と同じ樹脂および適宜用いられる添加剤からなるものである。
【0091】
また、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層の厚みは、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層に用いられる材料の種類に応じて、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層に所望の硬度、易接着層との密着性や帯電防止性を付与することができる範囲内であれば特に限定されるものではない。中でも、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層の厚みは、0.05μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜30μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜20μmの範囲内であることがさらに好ましい。ハードコート層、プライマー層または帯電防止層の厚みが上記範囲よりも厚いと、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層を構成する材料の種類によっては、本発明の反射防止フィルムにカールが生じてしまう場合があるからである。一方、上記厚みが上記範囲よりも薄いと、ハードコート層を構成する材料の種類によっては、ハードコート層の硬度を所望の程度にすることが困難になる場合があるからである。また、プライマー層を構成する材料の種類によっては、プライマー層としての機能を付加する場合には、密着性がとれず、剥離してしまう場合があるからであり、帯電防止層を構成する材料の種類によっては、十分な帯電防止性能を発現できなくなる場合があるからである。
【0092】
ハードコート層、プライマー層または帯電防止層は、予め易接着層に積層形成したものを用いてもよく、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層、および反射防止層の樹脂を同時に積層したものを用いてもよい。
【0093】
さらに、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層は、屈折率が上記易接着層の屈折率および上記反射防止層の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおける易接着層と、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層との境界、および、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層と、反射防止層との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、これらの境界において光が反射されることに起因して、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止できるからである。中でも、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層の屈折率と、上記易接着層および上記反射防止層との屈折率の差は0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。
【0094】
次に、本発明の反射防止フィルムに上記粘着層が用いられている場合について、図面を参照しながら説明する。図8は、本発明の反射防止フィルムに粘着層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図8に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、光透過性基板1の、易接着層2および反射防止層3が形成された面とは反対の面上に粘着層7が形成されたものであってもよい。なお、図8において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0095】
本発明に用いられる粘着層は、本発明の反射防止フィルムの用途に応じて所望の粘着剤からなるものであれば、特に限定されるものではない。上記粘着層に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0096】
また、本発明に用いられる粘着層の厚みは、1μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜50μmの範囲内であることがさらに好ましいが、特に限定されるものではない。
【0097】
本発明に用いられる粘着層は、上述した粘着剤に加えて、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0098】
次に、本発明の反射防止フィルムに上記保護層が用いられている場合について、図面を参照しながら説明する。図9(a)〜(c)は、本発明の反射防止フィルムに保護層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図9(a)〜(c)に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、反射防止層3の表面上に保護層8が形成されたものであってもよい。保護層8は、図9(a)に例示するように、反射防止層3の頂面のみが保護層8に接触するように形成されていてもよく、図9(b)に例示するように、反射防止層3が保護層8に少しめり込むように形成されていてもよく、図9(c)に例示するように、反射防止層3が保護層8に入り込むように形成されていてもよい。なお、図9(a)〜(c)において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0099】
本発明に用いられる反射防止層の表面に形成される保護層の形成方法としては、感圧または感熱で粘着力を発現する保護フィルムを貼る方法、保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で膜を形成する方法、反射防止層表面に溶融押し出しし、冷却して形成する方法等がある。
【0100】
感圧または感熱方式で形成する保護層は、本発明の反射防止フィルムの用途に応じて所望の保護層材料からなるものであれば、特に限定されるものではない。上記感圧保護層材料としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。また、上記保護層は、オレフィン系の熱可塑性樹脂に、エチレン・αオレフィン共重合物、プロプレン・αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤーや上記の粘着剤を混合した樹脂層で形成されていてもよい。
さらには、上記保護層は、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体などを含有する樹脂層から形成されていてもよい。
【0101】
反射防止層表面に溶融押し出しし、冷却して保護層を形成する場合、保護層材料としては、α・オレフィン重合体、エチレンとα・オレフィンとの共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体を単体で、またはブレンドして用いることができる。ブレンドする樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。また、エチレン・αオレフィン共重合物、プロプレン・αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤー、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0102】
保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で膜を形成する方法としては、有機溶剤または水系に希釈して、または希釈しないで、反射防止層の上面にコーティングし、膜を形成する。必要に応じ、乾燥、冷却、UV照射を行い、膜強度を向上させる。用いられる樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系樹脂やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0103】
5.反射防止フィルムの製造方法
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、例えば、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板上に、易接着層形成用樹脂組成物を塗工し、乾燥後に上記易接着層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、易接着層を形成する易接着層形成工程と、上記易接着層上に、反射防止層形成用樹脂組成物を塗工することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜を形成する膜形成工程と、本発明における反射防止層の微細凹凸を形成することが可能な形状を有する金型を用い、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型する賦型工程と、上記圧力を解放した後に、上記反射防止層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、上記反射防止層から上記金型を剥離する剥離工程とを有する製造方法を挙げることができる。
以下、上記反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0104】
(1)易接着層形成工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における易接着層形成工程は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板上に、易接着層形成用樹脂組成物を塗工し、乾燥後に上記易接着層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、易接着層を形成する工程である。
【0105】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる光透過性基板としては、上記「3.光透過性基板」の項に記載したものを挙げることができる。
【0106】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる易接着層形成用樹脂組成物は、樹脂を含有するものであり、光透過性基板の屈折率と、最終的に形成される反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有する易接着層を得ることができるものである。なお、ここでの平均となる屈折率については、上述した内容と同様である。上記易接着層形成用樹脂組成物に用いられる樹脂としては、所望の易接着層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「1.易接着層」の項に記載したものを好適に用いることができる。
また、上記易接着層形成用樹脂組成物は、上記樹脂の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤を適宜用いることができる。
【0107】
本工程において、上記易接着層形成用樹脂組成物を塗工する方法としては、光透過性基板上に均一に塗布することができれば特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等、公知の方法を用いることができる。
【0108】
また、本工程において、塗工された上記易接着層形成用樹脂組成物を乾燥する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、減圧乾燥もしくは加熱乾燥、またはこれらの乾燥を組み合わせる方法等を挙げることができる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃〜180℃の範囲内の温度で乾燥させることが好ましい。
【0109】
また、本工程において、乾燥後に上記易接着層形成用樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記易接着層形成用樹脂組成物に含有される樹脂の種類に応じて、適宜選択される。例えば、上記樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、紫外線硬化法等を挙げることができ、上記樹脂が熱硬化性樹脂である場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により硬化させることができる。
【0110】
(2)膜形成工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における膜形成工程は、上記易接着層上に、反射防止層形成用樹脂組成物を塗工することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜を形成する工程である。
【0111】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる反射防止層形成用樹脂組成物は、樹脂を含有するものである。上記反射防止層形成用樹脂組成物に用いられる樹脂としては、所望の形状の微細凹凸を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「2.反射防止層」の項に記載したものを好適に用いることができる。
また、上記反射防止層形成用樹脂組成物は、上記樹脂の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤と同様のものを適宜用いることができる。
【0112】
上記反射防止層形成用樹脂組成物の粘度としては、上記金型に上記反射防止層形成用樹脂組成物を所望の程度に入り込ませることができれば特に限定されるものではないが、例えば、25℃において、10mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、50mPa・s〜5000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、100mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
また、溶融型の樹脂の場合には、例えば、190℃におけるメルトフローインデックス(MFI)が、1.0g/10min以上であることが好ましく、3.0g/10min以上であることがより好ましく、5.0g/10min以上であることがさらに好ましい。
【0113】
本工程において、上記反射防止層形成用樹脂組成物を塗工する方法については、上記「(1)易接着層形成工程」の項に記載した塗工方法と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0114】
(3)賦型工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における賦型工程は、本発明における反射防止層の微細凹凸を形成することが可能な形状を有する金型を用い、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型する工程である。本工程により、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を形成することができる。
【0115】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる金型としては、所望の形状の微細凹凸を上記反射防止層形成用樹脂組成物に賦型することができれば特に限定されるものではなく、例えば、後述する「6.反射防止フィルム製造用金型」の項に記載する金型を好適に用いることができる。また、金型は平板状、ロール状、ベルト状のものを用いることができる。
【0116】
本工程における圧力としては、本発明に用いられる反射防止層形成用樹脂組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記反射防止層形成用樹脂組成物および上記金型を用いて、上記金型の形状を上記反射防止層形成用樹脂組成物にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、上述した粘度を有する上記反射防止層形成用樹脂組成物を用いた場合、上記圧力は、1.0N/cm〜50N/cmの範囲内であることが好ましく、2.5N/cm〜40N/cmの範囲内であることがより好ましく、5.0N/cm〜25N/cmの範囲内であることがさらに好ましい。上記圧力が低すぎると、上記反射防止層形成用樹脂組成物が上記金型にあまり入り込まず、上記微細凹凸における凸部の高さが十分ではないおそれがあるからであり、上記圧力が高すぎると、上記反射防止層形成用樹脂組成物が上記金型に入り込み過ぎて、金型から抜けなくなるおそれがあるからである。
【0117】
本工程において、上記圧力を負荷する方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、インジェクションプレス、ベルトプレス方式、スリーブタッチ方式、弾性金属ロールによるロールタッチ方式等を用いる方法を挙げることができる。
【0118】
(4)反射防止層形成工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における反射防止層形成工程は、上記圧力を解放した後に、上記反射防止層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、反射防止層を形成する工程である。
【0119】
本工程において、上記反射防止層形成用樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記反射防止層形成用樹脂組成物に含有される樹脂に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、上記樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により硬化させることができる。
【0120】
(5)剥離工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における剥離工程は、上記反射防止層から上記金型を剥離する工程である。
【0121】
本工程における剥離方法としては、反射防止層を傷つけることなく上記金型を剥離することができれば、特に限定されるものではない。
【0122】
6.反射防止フィルム製造用金型
次に、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型について説明する。本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、例えば、金属基体と、上記金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜を備える反射防止フィルム製造用金型であって、上記微細孔の開口部に、深さが60nm〜2000nmの範囲内であるテーパー形状を有するものを挙げることができる。
【0123】
このような反射防止フィルム製造用金型について、図面を参照しながら説明する。図10は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。図10に例示する反射防止フィルム製造用金型20は、金属基体11と、金属基体11の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜11’とを備えており、微細孔の開口部に、深さDが所定の範囲内であるテーパー形状を有している。
【0124】
なお、金属基体については、後述する「7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法」の項に記載するものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型におけるその他の構成について説明する。
【0125】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における金属酸化膜は、金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有するものである。上記金属酸化膜は、通常、金属基体を陽極酸化することによって形成される。上記金属酸化膜の厚みとしては、特に限定されるものではなく、目的とする反射防止フィルム製造用金型等に応じて適宜選択することができる。
【0126】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型は、上記金属酸化膜が有する複数の微細孔の開口部に、深さが所定の範囲内であるテーパー形状を有することを大きな特徴とする。上記微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さとしては、60nm〜2000nmの範囲内であればよいが、中でも、100nm〜1200nmの範囲内であることが好ましく、120nm〜800nmの範囲内であることがより好ましい。上記テーパー形状の深さが上記範囲よりも深いと、本発明の反射防止フィルムにおいて、微細孔の転写部分が損壊しやすくなってしまう場合があったり、スティッキングが発生しやすくなる場合があったり、金型から抜けにくくなったりする場合があるからである。一方、上記テーパー形状の深さが上記範囲よりも浅いと、テーパー形状を形成することが困難となり、また、反射防止機能が悪くなる場合があるからである。
ここで、微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さとは、微細孔の開口表面からテーパー形状の最深部までの距離をいい、図10におけるDで表される距離のことである。微細孔の形状によっては、上記テーパー形状の深さと、微細孔の孔深さとが同一になる場合がある。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記テーパー形状の深さは、微細孔の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー形状の深さを測定し、その測定値の平均値とする。
【0127】
上記微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度としては、テーパー形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度が上記範囲よりも大きいと、開口部が垂直形状に近くなり、反射防止フィルムを製造する際に、金型の微細孔に樹脂層が入り込みにくくなる場合があるからである。また、金型から抜けにくくなるからである。一方、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度が上記範囲よりも小さいと、開口部を形成することが困難となる場合があるからである。また、反射防止機能が劣るようになるからである。
ここで、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度とは、微細孔の縦断面での側壁が直線状の場合、上記側壁を近似する直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図10におけるθ3で表される角度のことである。一方、微細孔の縦断面での側壁が曲線状の場合、微細孔の開口表面の外周上の点および微細孔におけるテーパー形状の最深部の横断面からなる面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、図11におけるθ4で表される角度のことである。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記テーパー角度は、上述した方法で決定した平均値とする。また、図11は本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図であり、図11における各符号は、図10と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0128】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における微細孔は、開口部に所定の深さのテーパー形状を有していればよく、先端部の形状は、開口部に対して狭まっていれば特に限定されるものではない。上記微細孔の先端部の形状は、例えば、尖端形状であってもよく、平面形状であってもよく、曲面形状であってもよい。中でも、上記反射防止フィルム製造用金型においては、上記微細孔の先端部の形状が曲面形状であることが好ましい。曲面形状の場合、樹脂の入り込みが均一になりやすく、形状のばらつきが少なくなるからである。一方、平面形状の場合、万が一樹脂が平面形状を充満した場合、抜けなくなる場合がある。
【0129】
上記微細孔の開口表面の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状などを挙げることができる。
また、上記微細孔の開口表面の径、すなわち上記微細孔の孔径としては、特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。上記微細孔の孔径が25nm以下の場合、反射防止フィルムにおいて隣り合う構造体の間が大きくなるため、構造体を形成していない部分が多くなり、反射防止機能が悪くなる。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記孔径は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0130】
上記微細孔の周期は、特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記微細孔の周期は、本発明の反射防止フィルムの反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にあるものである。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、上記微細孔の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記周期は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0131】
また、上記微細孔の深さも、本発明の反射防止フィルムの反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その深さが深いほど反射率を低くすることができ、一方、浅くなると長波長側の反射率が増加する傾向にあるものである。このようなことから、上記微細孔の深さは、60nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜800nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記深さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0132】
また、上記微細孔の間隔は、これが広くなるほど、本発明の反射防止フィルムにおいて、可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、上記微細孔の間隔は、0nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜80nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0133】
ここで、上記微細孔の周期、深さ、および間隔は、それぞれ図12におけるP2、Q2、およびR2で示す通り、それぞれ隣接する微細孔における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、微細孔における先端部の頂部から開口表面までの距離、および隣接する微細孔における開口表面の外周間の最短距離である。なお、図12は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図である。
【0134】
上記微細孔の深さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。上記微細孔の深さのばらつきが上記範囲よりも大きいと、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。なお、上記微細孔の深さのばらつきとは、微細孔の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の深さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
【0135】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型においては、隣接する上記微細孔の開口表面同士の段差(以下、小さいうねりと称する。)が、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。小さいうねりが100nmを超えると表面のキズとして目視できるようになり、反射防止機能が不均一になるからである。
【0136】
また、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型においては、500nm以上離れた上記微細孔の開口表面同士の段差(以下、大きいうねりと称する。)が、10μm以下であることが好ましく、500nm〜2μmの範囲内であることがより好ましい。500nm以上離れた場合、大きいうねりが10μm以下であれば、反射防止機能に影響を与えず、目視してもわからない(ごまかされる)ためである。
金属基体の表面に大きいうねりを作る方法としては、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成した後、スパッタ法、メッキ法、蒸着法で金属基体を積層する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成した後、樹脂を積層し、凹凸をなだらかにした後、スパッタ法、メッキ法、蒸着法で金属基体を積層する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体に樹脂を積層し、凹凸を形成した後、金属基体を積層する方法、表面にシリカ、金属または金属酸化物の粒子を含む樹脂を金属基体あるいは金属基体の支持体に積層し、凹凸を形成した後、金属基体を積層する方法等が挙げられる。
金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化する方法としては、機械的処理、電気化学的処理、陽極酸化、エンボス法、研磨法、エッチング法、湿式メッキ法、乾式メッキ法、溶射法、フォトリソグラフィ法、表面熱処理法、ゾルゲル法等を適宜単独または組み合わせながら処理する方法が挙げられる。
機械的処理法としては、サンド・ブラスト法、ショット・ブラスト法、グリット・ブラスト法、ガラスビーズ・ブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、および塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ毛(材)を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーでひっかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイン法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法等が挙げられる。
電気化学的処理法としては、塩酸、硝酸または硫酸および塩化物イオンまたは硝酸塩イオンを含む電解液水溶液中で、直流または交流を用いて処理する方法がある。
エンボス法としては、大きいうねりとなる形状を表面に付与したロール型や枚葉プレス型を押圧し、その形状を50%以上転写するロールエンボス、枚葉プレス型エンボス等が挙げられる。
研磨法としては、回転型バレルや振動型バレルを用いたバレル研磨法、バフ研磨法、リューター研磨法、砥粒流動研磨法、電解研磨法、化学研磨法、化学複合研磨法、電解複合研磨法、化学機械研磨法、CMP研磨法等が挙げられる。
エッチング法としては、化学エッチング法、電解エッチング法、スパッタ法による乾式エッチング法等が挙げられる。
湿式メッキ法としては、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。
乾式メッキ法としては、真空蒸着メッキ、抵抗加熱、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理蒸着法(PVD)、常圧熱CVD・減圧熱CVD・プラズマCVDなどの化学蒸着法(CVD)等が挙げられる。
金属、セラミックス、プラスチック、サーメット、カーバイド、アブレイダブルを材料として用いる溶射法としては、溶線式フレーム溶射、粉末式フレーム溶射、溶棒式フレーム溶射、爆発溶射(Dガン)などのフレーム溶射法やアーク溶射、プラズマ溶射(減圧プラズマ式溶射・大気プラズマ式溶射・水プラズマ式溶射)、線爆溶射などの電気式溶射法、高速フレーム溶射法、コールドスプレー溶射法等が挙げられる。
表面熱処理法としては、表面に気泡を形成したり、ブラッシング化させたり、クレーター化させたり、亀裂化させたり、結晶成長処理をさせたり、バルク化させたり、対流散逸パターン化させたり、沈降散逸パターン化させたり、散逸パターン化させたり、粒子の凝集を起こさせたり、ナノバックリング形成させたりするなどの方法で形状を形成する方法が挙げられる。
また、プラズマを用いて表面にうねりを形成するプラズマアッシング方式なども用いることができる。
金属基体またはその支持体に樹脂を積層する方法としては、スプレー法、電着法、ディップ法、ディップコート法、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法、静電塗装法、粉体塗装法、チューブやスリーブなどを被覆する方法などの公知の方法を用いることができる。塗工後、適宜乾燥工程や熱またはUVやEBによるハーフキュア工程を入れることができる。
使用される樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等があげられ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのエラストマーや酸変性物がある。
大きいうねりの形成は、後述する「7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法」の項に記載する陽極酸化工程、第1エッチング工程、その後の第2エッチング工程を本処理工程とした場合、本処理工程の前処理として施してよく、また、本処理工程後に処理してもよい。または、本処理工程の前後で行ってもよい。さらには、本処理工程中の陽極酸化工程の後で行ってもよく、または第1エッチング工程の後で行ってもよく、さらに、これらの組み合わせで処理することができる。
【0137】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の転写率としては、反射防止フィルム製造時に用いられる樹脂の粘度および圧力に応じて適宜調整されるものであるが、50%以上であればよい。すなわち、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型は、転写率が100%でなくとも、反射防止フィルムとして用いられるのに十分な物性を有する微細凹凸パターンが得られる程度に、微細孔の形状を樹脂層に賦型することができるものである。したがって、金型の微細孔に入り込んだ樹脂層の先端部分には、微細孔の底面、あるいは側壁、または底面および側壁と接触しない部分が発生する。ここで、転写率とは、微細孔の深さに対する樹脂層の入り込む深さの比率をいう。樹脂層の入り込む深さは、成型品の凸部の高さと同じであるため、転写率とは、微細孔の深さに対する成型品の凸部の高さの比率となる。
【0138】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法としては、上記構成を有する反射防止フィルム製造用金型を製造することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、後述する「7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法」の項に記載する方法等を挙げることができる。
【0139】
7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法
次に、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法について説明する。本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法としては、例えば、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する微細孔形成工程を有する製造方法を挙げることができる。
【0140】
このような反射防止フィルム製造用金型の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図13(a)〜(e)は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。図13(a)〜(e)に例示するように、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、金属基体11を用い(図13(a))、金属基体11を対象として微細孔形成工程を実施することにより(図13(b)〜図13(d))、金属基体11の表面に微細孔が形成された構成を有する反射防止フィルム製造用金型20を製造するものである(図13(e))。
ここで、上記微細孔形成工程は、金属基体11を用い(図13(a))、陽極酸化法によって金属基体11の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜11’を形成する陽極酸化工程(図13(b))と、金属酸化膜11’をエッチングすることにより微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程(図13(c))と、金属酸化膜11’を第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程(図13(d))とを順次繰り返し実施することによって、金属基体11の表面に微細孔を形成するものである。
【0141】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、少なくとも陽極酸化工程、第1エッチング工程および第2エッチング工程を有する微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられてもよいものである。
以下、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における各工程について説明する。
【0142】
(1)微細孔形成工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における微細孔形成工程は、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する工程である。
【0143】
(a)金属基体
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体としては、その表面に陽極酸化被膜を形成することができる金属、いわゆるバルブ金属からなるものであれば、特に限定されるものではない。このような金属基体としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、シリコン等からなるものを挙げることができ、中でも、アルミニウムからなるものを好適に用いることができる。アルミニウムは酸化されやすく、陽極酸化被膜を形成しやすいからである。上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体としては、アルミニウム単体からなるものであってもよく、任意の基材上にアルミニウムからなる層がスパッタ法、蒸着法、メッキ法で最表層となるように形成された構成を有するものであってもよい。金属基体に用いられる基材としては、ゴム、樹脂、金属等からなるものを挙げることができる。
【0144】
また、上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体の形態は、特に限定されるものではない。したがって、上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、シート状、ロール状、ベルト状、立体状、フィルム状等のいずれの形態を有する金属基体であっても好適に用いることができる。なお、ここで「立体状の金属基体」とは、射出成型等により形成された立体物である金属基体のことをいい、「フィルム状の金属基体」とは、厚さ200μm以下のポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポチブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、アクリルメラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等の樹脂層が積層された金属基体、またはニッケル、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属、またはこれらの合金、またはこれらの合金の表面にドライメッキ法あるいはウェットメッキ法でクロム、タンタル、チタン、銅、銀、金、ケイ素等の金属や無機物あるいはこれらの化合物を積層した金属などの金属フィルム上に積層された金属基体、あるいはこれらの複合体からなる金属基体のことをいう。
【0145】
上記金属基体の厚みとしては、上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成することができ、かつ金型として十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、50nm〜100mmの範囲内で設定することができる。
【0146】
(b)陽極酸化工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における陽極酸化工程は、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する工程である。
【0147】
本工程に用いられる陽極酸化法としては、上記金属基体の表面に所望の深さおよび配列態様で微細孔が形成された金属酸化膜を形成できる方法であれば、特に限定されるものではない。ここで、上記陽極酸化法により形成される微細孔の深さや配列態様は、陽極酸化に用いる電解液の液性等に依存するものであるところ、本工程に用いられる電解液は、中性の電解液であっても、あるいは酸性の電解液であっても好適に用いることができる。中でも、本工程においては、上記電解液として酸性の電解液が用いられることが好ましい。酸性の電解液が用いられることにより、本工程において、上記金属基体の表面に微細孔をランダムな位置に形成することができるからである。本工程に用いられる酸性の電解液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、およびリン酸水溶液等を挙げることができる。
【0148】
本工程における陽極酸化時間としては、金属基体の表面に所望の形状の複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成することができれば特に限定されるものではなく、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体、本工程に用いられる電解液等に応じて適宜設定されるものである。
【0149】
本工程により形成される金属酸化膜の厚みとしては、所望の形状の複数の微細孔を有していれば特に限定されるものではない。
【0150】
(c)第1エッチング工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における第1エッチング工程は、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する工程である。
【0151】
本工程において、金属酸化膜をエッチングする方法としては、上記微細孔の開口部に所望のテーパー形状を形成することができる方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、アルカリエッチング法、酸性エッチング法、電解エッチング法等を挙げることができる。本工程においては、これらのいずれの方法であっても用いることができるが、アルカリエッチング法は、光沢や表面粗度等が大きく、エッチング面を一定の状態に維持することが難しく、遊離アルカリ濃度や浴中の溶存金属成分を常に一定範囲に管理することなどが要求されるため、酸性エッチング法が用いられることが好ましい。
【0152】
中でも、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、本工程が、上記陽極酸化工程直後に、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中で行われる工程であることが好ましい。第1エッチング工程に用いられるエッチング液を別途用意する必要がなく、容易に上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成することができるからである。
本工程に用いられる電解液としては、上記陽極酸化工程で用いられたものであるが、具体的には、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、およびこれらの混合液等の酸性電解液を挙げることができ、中でも、取り扱いや管理の面から、シュウ酸水溶液が好ましい。
また、本工程が、上記陽極酸化工程直後に、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中で行われる時間、すなわち、上記陽極酸化工程により複数の微細孔を有する金属酸化膜が表面に形成された金属基体を、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中にそのまま放置する時間としては、上記微細孔の開口部に所望のテーパー形状を形成することができれば特に限定されるものではないが、例えば、3秒以上であることが好ましく、10秒以上であることがより好ましく、60秒以上であることがさらに好ましい。
なお、本工程により上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成することが可能な理由としては、以下のようなことが挙げられる。
<1>陽極酸化を行うと、酸化皮膜を形成しながらポーラス状の円柱形状の孔が形成される。
<2>この酸化皮膜が、化学的溶解を受けると、内部(すなわち下面)に比べ、外部(すなわち上面)の方が、エッチング液にさらされる時間が長くなる。これは、内部に浸入したエッチング液の交換速度が外部のエッチング液よりも遅いためである。
<3>この結果、外部の方がエッチングされる量が多くなり、テーパー形状となる。
【0153】
本工程のエッチングレートは、後述する第2エッチング工程のエッチングレートよりも低いものである。本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法において、第1エッチング工程と第2エッチング工程とで、エッチングレートの違いにより微細孔の開口部に形成される形状が異なる理由としては、第2エッチングは、第1エッチングよりもエッチング速度が速いため、第1エッチングでテーパー形状を形成された孔の全体の直径を広げる作用があるからである。
【0154】
(d)第2エッチング工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における第2エッチング工程は、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する工程である。上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、通常、第2エッチング工程によって、上記微細孔の開口部にテーパー形状は形成されず、第1エッチング工程によって形成されたテーパー形状を有する孔の径を均等に大きくする。
【0155】
本工程において、金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングする方法としては、上記金属酸化膜に形成された微細孔の孔径を所望の程度に拡大する方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、上記第1エッチング工程に記載した方法と同様のエッチング法を挙げることができる。
【0156】
本工程のエッチングレートとしては、上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高く、上記微細孔の孔径を拡大することができれば特に限定されるものではないが、上記第1エッチング工程のエッチングレートに対して、1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがさらに好ましい。1.2倍以下では、十分に孔径を拡大させる効果が少なくなるからである。
【0157】
本工程に用いられるエッチング液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、クロム酸水溶液等の酸性水溶液、およびこれらの混合液が用いられる。また、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液が用いられる。中でも、取り扱いや管理の面から、リン酸水溶液が好ましい。
また、上記エッチング液の濃度としては、本工程に用いられるエッチング液の種類、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体等に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、0.005M〜2.0Mの範囲内であることが好ましく、0.01M〜1.5Mの範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程に用いられるエッチング液の濃度が上記範囲よりも高いと、第2エッチング工程により金属酸化膜をすべて除去してしまう場合があるからであり、第2エッチング工程に用いられるエッチング液の濃度が上記範囲よりも低いと、第2エッチング工程のエッチングレートが低下し、十分な孔径拡大処理ができないからである。
本工程におけるエッチング時間としては、本工程に用いられるエッチング液、上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体等に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、1分間〜60分間の範囲内であることが好ましく、2分間〜30分間の範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程のエッチング時間が上記範囲よりも長いと、第2エッチング工程により金属酸化膜をすべて除去してしまい、孔と孔との間の壁が薄くなって強度が弱くなり、樹脂が入り込むと破損してしまう場合があるからであり、第2エッチング工程のエッチング時間が上記範囲よりも短いと、上記微細孔を十分に拡大することができず、所望の形状が得られない場合があるからである。
【0158】
(e)微細孔形成工程
本工程において、上記陽極酸化工程と、上記第1エッチング工程と、上記第2エッチング工程とを順次繰り返し実施する際の繰り返しの程度としては、反射防止フィルム製造用金型として用いることが可能な程度に均一な微細孔ができるまで、複数回繰り返して行われる。本工程は、上記陽極酸化工程で終わってもよく、上記第2エッチング工程で終わってもよい。
【0159】
本工程において、上記陽極酸化工程と、上記第1エッチング工程と、上記第2エッチング工程とが順次繰り返し実施される回数としては、目標とする微細孔の形状等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。また、本工程において、これらの工程が順次繰り返し実施される回数は、目的とするエッチング量に応じ、エッチング液およびエッチング時間等のエッチング条件とともに適宜調整される。
【0160】
本工程により金属基体の表面に形成される微細孔の形状は、開口部にテーパー形状を有していれば特に限定されるものではない。上記微細孔の形状については、上記「6.反射防止フィルム製造用金型」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0161】
(2)任意の工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、少なくとも上記微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。このような工程としては、離型処理工程、水洗工程、乾燥工程等が挙げられる。
【0162】
中でも、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、上記微細孔形成工程により得られた反射防止フィルム製造用金型に賦型処理を施す離型処理工程を有することが好ましい。離型処理工程を有することで、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型に離型性を付与することができるからである。上記反射防止フィルム製造用金型が離型性を有することにより、反射防止フィルムを製造する際に、上記反射防止フィルム製造用金型から反射防止フィルムを取り出しやすいという利点がある。
離型処理の方法としては、上記反射防止フィルム製造用金型における金属酸化膜が有する微細孔を埋めない方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、離型剤を上記反射防止フィルム製造用金型に塗布する方法、離型剤をスパッタ法で上記反射防止フィルム製造用金型に積層する方法等を挙げることができる。また、離型剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、脂肪族アマイド系化合物、パラフィン系化合物等を挙げることができる。
【0163】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を挙げることにより、本発明について具体的に説明する。
【0165】
[実施例1]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
まず、純度99.85%の押し出しされたアルミニウムパイプの両端に回転軸を設けたアルミニウムシリンダーを、小さいうねりとして表面粗さRzが30nm、大きいうねりが1μmとなるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウムシリンダー上に複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナ膜が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0166】
[実施例1−1]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、乾燥膜状態の屈折率が1.54になるように調整した水分散性熱可塑性ウレタン樹脂を乾燥厚み1μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、易接着層を形成した。さらに、その上に固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0167】
[実施例1−2]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、乾燥膜状態の屈折率が1.52になるように調整した、メチルエチルケトン80重量部を含む紫外線硬化性樹脂を乾燥厚み5μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、易接着層を形成した。さらに、その上に固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0168】
[実施例1−3]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、乾燥膜状態の屈折率が1.56になるように調整した熱可塑性ポリウレタン樹脂を乾燥厚み0.5μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、一層目の易接着層を形成した。次に、その上にトルエン50重量部を含む紫外線硬化性樹脂(屈折率1.52)を乾燥厚み4μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、二層目の易接着層を形成した。さらに、その上に固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0169】
[実施例2]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
まず、厚み150μmからなるニッケル製スリーブの表面に、クロムメッキを厚み80μmとなるように形成し、平滑層とした。その後、小さいうねりとして表面粗さRzが80nmとなるように研磨した後、平滑層にブラスト処理を行い、2μmの大きなうねりを形成した。次に、平滑層の上にスパッタ法により二酸化ケイ素を500Å積層し、さらに、その上に酸化タンタルを500Å積層し、中間層を得た。その後、スパッタ法により中間層の上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜層を形成した後、0.05Mリン酸クロム酸水溶液の電解液中で、化成電圧30V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で120秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、0.5Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計6回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜層上に複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナ膜が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0170】
[実施例2−1]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板用樹脂として熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂(屈折率1.58)、易接着層用樹脂として屈折率1.56に調整した熱可塑性ポリウレタン樹脂、反射防止層用樹脂として屈折率1.53、溶融粘度20g/10minのリニアローデンポリエチレンを準備した。光透過性基板用樹脂が200μm、易接着層用樹脂が5μm、反射防止層用樹脂が20μmとなるように、250℃でTダイから同時に押し出し、光透過性基板用樹脂/易接着層用汚樹脂/反射防止層用樹脂からなる積層体を反射防止層用樹脂が金型側となるように、実施例2で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に反射防止層用樹脂が充填されたことを確認し、空冷で冷却して積層体を硬化させることにより、光透過性基板、易接着層および反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0171】
[比較例]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、易接着層がない状態で、固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させた。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0172】
[評価1]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルム製造用金型断面の観察)
集束イオンビームにより反射防止フィルム製造用金型を垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記金型の断面を観察し、得られた画像から、微細孔の孔径、周期、深さ、および開口部の形状を測定した。
【0173】
実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型においては、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが観察され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
【0174】
実施例2で得られた反射防止フィルム製造用金型においては、およそ孔径75nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが観察され、微細孔の周期は80nmであり、微細孔の深さは90nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは87nmであり、テーパー角度は67°であった。
【0175】
[評価2]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムの表面および断面の観察)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。また、ガラス切片で断面を製作し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの断面を観察し、得られた画像から、微細凹凸における凸部の周期、凸部の高さ、本体部および先端部の形状を計測した。
【0176】
(反射防止フィルムの反射率)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼り付け、島津製作所製自記分光光度計UV−3100を用いて、フィルム表面への5°正反射率を測定した。
【0177】
(反射防止フィルムの外観)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼り付け、目視にて確認した。
【0178】
(反射防止フィルムのスティッキング)
反射防止フィルムを水に浸漬し、取り出した後、24時間風乾させた。表面に水滴が残っていないことを確認し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの表面を観察した。得られた画像から、スティッキングの発生の有無を確認した。
【0179】
(反射防止フィルムの布拭き)
反射防止フィルムを、ネルで50g/cm2の荷重で擦り、12時間放置後、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの表面を観察した。得られた画像から、構造体の損傷の発生の有無を確認した。
【0180】
(反射防止フィルムの反射防止フィルム製造用金型からの抜け)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、上記フィルム表面の構造体の破損状態を観察した。
【0181】
(反射防止層と光透過性基板との密着性)
JIS K5400記載の碁盤目試験(1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロファンテープ(ニチバン社製)で剥離する試験)を行った。具体的には、反射防止フィルムの反射防止層側の面に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個作り、この上にセロファンテープを貼り付け、90°で素早く剥がし、反射防止層が剥がれずに残った碁盤目の数を数えた。評価方法としては、セロファンテープを常に新しいものにして、5回剥離試験を行い、1回でも50個以上の碁盤目で反射防止層が剥離した場合は、実用性がないと判断した。
【0182】
(干渉縞の有無)
フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用いて、反射防止フィルムにおける干渉縞の有無を目視にて検査した。干渉縞の発生が全く見えないもの、あるいはぼんやり見えるものは問題ないと判断し、はっきり見えるものを不良と判断した。
【0183】
実施例1−1で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.6%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0184】
実施例1−2で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.8%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0185】
実施例1−3で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.6%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0186】
実施例2−1で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が80nm、凸部の高さが88nm、本体部が曲率をもたないテーパー形状からなり、そのテーパー角度が67°、先端部の形状が半径1nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は1.0%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0187】
比較例で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。反射防止層と光透過性基材の密着性が悪く、金型からの抜け性が悪かった。そのため、5°正反射率は測定できず、外観も白く、実用に耐えうるものではなかった。また、干渉縞の発生も認められた。
【符号の説明】
【0188】
1 … 光透過性基板
2 … 易接着層
3 … 反射防止層
4 … 基底部
5 … 微細凹凸
5a … 本体部
5b … 先端部
6 … ハードコート層、プライマー層または帯電防止層
7 … 粘着層
8 … 保護層
10 … 反射防止フィルム
11 … 金属基体
11’ … 金属酸化膜
20 … 反射防止フィルム製造用金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示媒体に用いられる反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、絵画、印刷媒体、ディスプレイ等の各種表示媒体において、画像、文字、数字等の表示品質を向上させることを目的とした種々の研究がなされている。中でも、表示品質の向上を目的とした光の反射防止技術の開発は、各種表示媒体において共通する重要な技術的課題の一つになっている。
【0003】
従来、このような反射防止技術としては、例えば、低屈折率の物質からなる薄膜を単層で表面に形成することにより、単一波長の光に対して有効な反射防止効果を得る技術や、低屈折率物質と高屈折率物質の薄膜を交互に形成した複数層を形成することにより、より広い波長範囲の光に対して反射防止効果を得る技術が用いられてきた。中でも、複数層を用いる技術は、その層数を増加させることによって、より広い波長域を有する光に対しても反射防止効果を得ることができる点において有用であったことから、種々の用途において実用化が図られてきた。
【0004】
しかしながら、このような複数層を用いる技術においても幾つかの問題点があった。まず第1に、反射防止効果に優れた複数層を形成するには、通常、真空蒸着法などを用いて成膜する必要があるため、表示装置を製造するに際して真空設備を備えることが必要となってしまうという問題点があった。また、真空蒸着法では、成膜時間も長時間になるのが一般的であったことから、製造効率の問題も指摘されていた。特に、周囲光が非常に強い環境で使用されるディスプレイに対しては、一層高い反射防止機能が要請されるため、複数層を構成する層数を増加させる必要があることから、製造コストが著しく高くなってしまうという問題点があった。
第2に、技術的観点からしても、複数層による反射防止技術は、光の干渉現象を利用するものであるため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響してしまい、望みどおりの反射防止効果を得ることが困難であるという問題点があった。
【0005】
このような問題点に対し、特許文献1〜6には凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを表面に形成することによって反射防止を図る技術が開示されている。このような方法は、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることによって光の反射を防止するものである。このようなモスアイ構造を用いた反射防止技術は、簡易な方法によって広い波長範囲の光の反射を防止できる点において有用なものであることから、ディスプレイの分野においてもその実用化が検討されている。
なお、上記モスアイ構造に用いられる微細凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形などの錐形体や円柱形を含む形状で先端が尖っている形状が一般的である。
【0006】
しかしながら、円錐形等の錐形体のように凸部の先端が尖った形状の微細凹凸パターンを上記モスアイ構造として用いる場合、先端が細いため割れやすく、微細凹凸パターンが破壊されやすいという問題や、円柱形を含む形状の場合、微細凹凸パターンの型抜き性が良くないという問題がある。また、円柱形の場合、表面張力が大きい液体がモスアイ構造内に入りこみ、それが蒸発する時に、隣同士の構造体が、接触あるいはくっ付き合う現象(スティッキング)を起こしやすくなる。スティッキングが構造体の50%以上発生した場合、反射防止機能の低下や拡散光の増大によるヘイズが高くなる問題が発生する。
【0007】
一方、上記モスアイ構造は、その微細な凹凸形状を反転させた形状を有する金型(スタンパあるいは鋳型)を用いて、その凹凸の型を任意の樹脂層に転写することによって製造されるのが一般的である。したがって、モスアイ構造が用いられた反射防止フィルム(以下、「モスアイ型反射防止フィルム」と称する場合がある。)を作製する方法としては、基板上に硬化性樹脂からなる樹脂層を形成した後、上記のような金型を用いて当該樹脂層の表面にモスアイ構造を賦型し、さらに当該樹脂層を硬化させることによって形成する方法を用いることができる。このような製造方法は、簡易な方法で、かつ高い製造効率で反射防止フィルムを連続的に製造することができるという利点があるものであるが、その一方で、基板と樹脂層との界面が明瞭であるため、基板および樹脂層の屈折率差に起因する干渉縞が発生するとともに、基板と樹脂層との密着性が十分ではないという問題がある。
【0008】
これに対して、樹脂層と基板との界面に、樹脂層を形成する際に用いた溶剤および樹脂が基板に浸透した溶剤浸透層を形成することで、干渉縞を防止し、かつ、樹脂層と基板との密着性を向上させることができるということが知られている。しかしながら、このような溶剤浸透層を形成することができる基板は、用いられる樹脂が限られており、例えば、反射防止フィルムのコスト削減のために、安価なポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を基板に用いた場合、PET樹脂は耐溶剤性が高いため、溶剤浸透層を形成することができず、干渉縞の防止、および、樹脂層と基板との密着性の向上を図ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2001−517319号公報
【特許文献2】特開2004−205990号公報
【特許文献3】特開2004−287238号公報
【特許文献4】特開2001−272505号公報
【特許文献5】特開2002−286906号公報
【特許文献6】国際公開第2006/059686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、安価で、干渉縞の発生を防止することができ、反射防止層と基板との密着性が良好であり、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者が鋭意研究した結果、円錐台等の錐台形体のように凸部の先端が平らな形状の微細凹凸パターンをモスアイ構造として用いた場合、反射防止層における微細凹凸パターンの先端部の割れ等の問題を解決でき、さらに、型抜き性を良好にすることができる点を見出したが、凸部の先端が平坦である場合は、反射防止機能が低下してしまう可能性がある。そこで、凸部の先端が曲率を有する形状の微細凹凸パターンをモスアイ構造とすることにより、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性を良好にすることができ、かつ反射防止機能が低下しないものとなる。
また、本発明者は、安価なPET樹脂を基板に用いた場合でも、樹脂層と基板との間に易接着層を形成することで、樹脂層と基板との密着性を向上させることができ、さらに、易接着層の屈折率を制御することにより、干渉縞を防止することができるという知見を得ている。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成された易接着層と、上記易接着層上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであって、上記易接着層が、上記光透過性基板の屈折率と、上記反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、上記反射防止層が、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ上記微細凹凸における凸部が、上記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0013】
本発明によれば、光透過性基板および反射防止層の間に易接着層を形成することで、反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができ、かつ、易接着層が所定の屈折率を有することにより、干渉縞の発生を防止し、反射ムラを抑制することができる。加えて、PET樹脂からなる光透過性基板を用いることで、安価な反射防止フィルムとすることができる。また、本発明によれば、反射防止層の微細凹凸における凸部が、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部を備えているため、良好な反射防止機能を有するとともに、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムとすることができる。さらに、上記微細凹凸における凸部が、上記錐台形状の本体部を有しているため、反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けやすい反射防止フィルムとすることができる。
【0014】
上記発明においては、上記易接着層および上記反射防止層の間に、機能層が形成されていることが好ましい。機能層を形成することで、本発明の反射防止フィルムに所望の機能を付与することができるからである。
【0015】
上記発明においては、上記機能層が、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層であることが好ましい。ハードコート層が形成されていることにより、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させ、耐久性に優れた反射防止フィルムとすることができるからである。また、プライマー層が形成されていることにより、易接着層と反射防止層との密着性を向上させ、易接着層およびプライマー層を介して、反射防止層と光透過性基板との密着性をより向上させることができるからである。また、帯電防止層が形成されていることにより、静電気の発生を抑制し、本発明の反射防止フィルムへの埃や汚れの付着を防止することができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記本体部の縦断面における上記光透過性基板に対するテーパー角度が50°〜87°の範囲内であることが好ましい。反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から、より抜けやすくすることができるからである。
【0017】
上記発明においては、上記本体部の高さが60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましい。反射防止層が良好な反射防止機能を有することができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反射防止フィルムは、安価で、干渉縞の発生を防止することができ、反射防止層と基板との密着性が良好であり、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムにおける反射防止層の一例を示す概略断面図である。
【図3】反射防止フィルムにおける微細凹凸の形状を説明する概略図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムにおける先端部の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図である。
【図6】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図である。
【図13】本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の反射防止フィルムについて詳細に説明する。
【0021】
本発明の反射防止フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成された易接着層と、上記易接着層上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであって、上記易接着層が、上記光透過性基板の屈折率と、上記反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、上記反射防止層が、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ上記微細凹凸における凸部が、上記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の反射防止フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。なお、図1(a)は反射防止フィルム全体を示しており、図1(b)は図1(a)に示す反射防止フィルムにおける反射防止層を拡大して示している。図1(a)に例示する反射防止フィルム10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成された易接着層2と、易接着層2上に形成され、表面に可視光領域の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層3とを有している。また、易接着層2は、光透過性基板1の屈折率と、反射防止層3の屈折率との平均となる屈折率を有し、反射防止層3は、易接着層2上に形成された基底部4と、基底部4上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸5とを有している。さらに、図1(b)に例示するように、微細凹凸5における凸部は、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部5aと、本体部5aの頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部5bとから構成されている。
【0023】
本発明によれば、光透過性基板および反射防止層の間に易接着層を形成することで、反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができ、かつ、易接着層が所定の屈折率を有することにより、干渉縞の発生を防止し、反射ムラを抑制することができる。加えて、PET樹脂からなる光透過性基板を用いることで、安価な反射防止フィルムとすることができる。また、本発明によれば、反射防止層の微細凹凸における凸部が、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部を備えているため、良好な反射防止機能を有するとともに、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部先端の割れ等に対する機械強度、スティッキング耐性および型抜き性に優れた反射防止フィルムとすることができる。さらに、上記微細凹凸における凸部が、上記錐台形状の本体部を有しているため、反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けやすい反射防止フィルムとすることができる。
【0024】
本発明の反射防止フィルムは、少なくとも光透過性基板と、易接着層と、反射防止層とを有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を有していてもよいものである。
以下、本発明の反射防止フィルムにおける各構成について説明する。
【0025】
1.易接着層
まず、本発明における易接着層について説明する。本発明における易接着層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板上に形成されるものであり、光透過性基板の屈折率と、反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有するものである。本発明においては、光透過性基板および反射防止層の間に、所定の屈折率を有する易接着層を形成することにより、光透過性基板と反射防止層との密着性を向上させることができ、かつ、干渉縞の発生を防止することができる。
【0026】
本発明における易接着層は、通常、樹脂からなるものである。易接着層に用いられる樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)、熱可塑性樹脂を挙げることができる。
紫外線硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これら少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のうち、塗膜強度、密着性の観点より、少なくとも6つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類を好適に使用することができる。
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリテート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能としては、具体的には上記多価アルコールとアクリル酸のエステル化合物が挙げられ、単独または2種以上の混合物が好ましい。
さらに、WO2007/040159に記載されている(メタ)アクリル系重合性組成物を用いることができる。
【0027】
また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、オレフィン・マレイミド共重合体、フルオレイン系エポキシ、フルオレイン系アクリレート、フルオレイン系ポリエステル、フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0028】
本発明における易接着層の透明度としては、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0029】
本発明における易接着層の屈折率は、後述する光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率の平均となる。ここで、「光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率の平均となる」とは、「光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率の算術平均値の±2.5%の範囲内となる」ことをいう。
本発明においては、反射防止層の屈折率を光透過性基板の屈折率に近いものとすることにより、易接着層の屈折率が、光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率となるべく近い値となることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおいて、反射防止層と易接着層と光透過性基板との各界面に、屈折率の不連続界面が形成され、当該不連続界面において光が反射されることにより、上記反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。中でも、上記易接着層の屈折率は、反射防止層の屈折率および光透過性基板の屈折率との差が0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本発明における易接着層の屈折率の値は、光透過性基板の屈折率および反射防止層の屈折率によって決定されるものであるから、特に好ましい値はないが、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
【0030】
また、本発明における易接着層は、単層であってもよく、多層であってもよい。易接着層が多層である場合は、易接着層を構成する各層の屈折率を平均した平均屈折率が、光透過性基板の屈折率と、反射防止層の屈折率との平均となる。易接着層が多層の場合、光透過性基板の屈折率>易接着層の屈折率>反射防止層の屈折率となることが望ましい。
【0031】
本発明の易接着層の厚みとしては、反射防止層と光透過性基板との密着性を向上させることができ、かつ、干渉縞の発生を防止することができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、0.01μm〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、0.05μm〜5.0μmの範囲内であることがより好ましく、0.10μm〜2.0μmの範囲内であることがさらに好ましい。易接着層の厚みが上記範囲よりも厚いと、本発明の反射防止フィルムにカールが生じてしまうおそれがあるからであり、易接着層の厚みが上記範囲よりも薄いと、易接着層に所望の硬度を付与することが困難となるおそれがあるからである。
【0032】
本発明における易接着層は、上述した樹脂の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、本発明の易接着層に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調整剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調整剤、流動性調整剤、酸化防止剤、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系などの離型剤や内部または外部滑剤、炭酸ストロンチウムなどの偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。具体的には、例えば、特開2009−230045号公報に記載されている以下の物質が挙げられる。
【0033】
<帯電防止剤(導電剤)>
帯電防止剤(導電剤)を添加することにより、易接着層の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、あるいは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
【0034】
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、オリアズレン等;芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)等;複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソシアナフテン等;含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン等;混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体、これら導電性ポリマー誘導体等が挙げられる。取り分け、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、易接着層の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。また、導電性向上や、帯電防止性能向上を目的として、有機スルホン酸や塩化鉄等の陰イオンを、ドーパント(電子供与剤)として添加することもできる。ドーパント添加効果も踏まえ、特にポリチオフェンは透明性、帯電防止性が高く、好ましい。上記ポリチオフェンとしては、オリゴチオフェンも好適に使用することができる。上記誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンのアルキル基置換体等を挙げることができる。また、導電性カーボンナノチューブ、ボロンおよびその化合物等が挙げられる。また、金属、およびこれらの金属酸化物の粒子径1μm以下の微粉末を添加することもできる。例えば、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンからなる金属、または金属酸化物、あるいはこれらを表面に被覆またはドープした化合物が用いられる。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、帯電防止剤は、易接着層を形成する際に用いられる易接着層形成用樹脂組成物全量に対して、0.01重量%以上50重量%以下であり、好ましくは下限値が0.1重量%以上であり上限値が30重量%以下程度である。上記数値範囲に調整することにより、易接着層としての透明性を保ち、また易接着層の機能に影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
【0036】
<屈折率調整剤>
屈折率調整剤を添加することにより、易接着層の光学特性を調整することが可能となる。屈折率調整剤には、低屈折率剤、中屈折率剤、高屈折率剤等が挙げられる。
【0037】
1)低屈折率剤
低屈折率剤を添加した易接着層の屈折率は、1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。低屈折率剤の好ましいものとしては、シリカ、フッ化マグネシウムなどの低屈折率無機超微粒子(多孔質、中空など全ての種類の微粒子)、および低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物またはその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
【0038】
電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールなど)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基またはフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などもある。
【0039】
熱硬化性極性基として好ましいのは、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合成化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを挙げることができる。
【0040】
電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリルまたはメタクリル酸の部分および完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、完全または部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
【0041】
また、含フッ素重合体の具体例としては、上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマーまたはモノマー混合物の重合体;上記含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体または共重合体等が挙げられる。
【0042】
これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も使うことができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示される。中でもジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0043】
さらには、以下のような化合物からなる非重合体または重合体も、フッ素系樹脂として用いることができる。すなわち、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のようなイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオールのようなフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等を用いることができる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は易接着層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることを可能とする。本発明において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造および/または気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部、および/または表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。
【0045】
空隙を有する無機系の微粒子の具体例としては、特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましくは挙げられる。その他、特開平7−133105号公報、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して易接着層に添加した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調整することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
【0046】
塗膜の内部および/または表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラムおよび表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子、または断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体を挙げることができる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業社製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
【0047】
「空隙を有する微粒子」の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であり、好ましくは下限が8nm以上であり上限が100nm以下であり、より好ましくは下限が10nm以上であり上限が80nm以下である。微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、易接着層に優れた透明性を付与することが可能となる。
【0048】
2)高屈折率剤/中屈折率剤
高屈折率剤、中屈折率剤は、易接着層の光学特性をより向上させるために用いられる。高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.55〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.55〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
【0049】
これら屈折率剤は、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)が挙げられる。
【0050】
<レベリング剤>
レベリング剤は、易接着層に、滑り性、防汚性および耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。従って、レベリング剤は防汚染剤、撥水剤、撥油剤、指紋付着防止剤として機能するものである。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等が挙げられる。
【0051】
<防汚染剤>
防汚染剤は、易接着層の汚れ防止を主目的とし、さらに易接着層に耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
【0052】
<紫外線・赤外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等が挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等が挙げられる。
【0053】
<高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤>
高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤は、反射防止フィルムで一般的に用いられる機能層で用いられるものであればいずれのものであってもよい。
【0054】
2.反射防止層
次に、本発明における反射防止層について説明する。本発明における反射防止層は、上記易接着層上に形成され、本発明の反射防止フィルムに反射防止機能を付与するものである。また、本発明における反射防止層は、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状(以下、「モスアイ構造」と称する場合がある。)を有するものであり、上記易接着層上に形成された基底部と、上記基底部上に形成され、上記凹凸形状からなる微細凹凸とを有するものである。
【0055】
(1)微細凹凸
本発明に用いられる微細凹凸は、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状からなるものであり、上記微細凹凸における凸部が、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されるものである。
【0056】
(a)本体部
本発明に用いられる本体部は、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状であるものである。本発明においては、上記錐台形状の本体部を有しているため、良好な反射防止機能を有するとともに、反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けやすくなる。金型からの抜けが悪い場合、本体部を形成するための樹脂が金型の微細孔の中に残留するようになる。残留部分に相当する部分が転写された易接着層の表面は、反射防止機能を発現するための凹凸形状がない状態となり、反射防止機能を阻害する原因となる。また、本体部がテーパー形状を有することで機械的強度も向上し、テーパーが小さい場合に比べ、スティッキングが発生しにくい。
【0057】
上記本体部の縦断面における光透過性基板に対するテーパー角度としては、テーパー状に立ち上がる錐台形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。上記テーパー角度が上記範囲よりも大きいと、本体部が垂直状に立ち上がる柱形状に近くなり、本発明の反射防止フィルムを製造する際に用いる金型から抜けにくくなる場合があり、また、良好な反射防止機能を示さない可能性があるからである。さらに、スティッキングが発生しやすくなる場合がある。一方、上記テーパー角度が上記範囲よりも小さいと、反射防止機能が低下し、反射率の波長依存性を受けやすくなり、さらに、本体部を形成することが困難となる場合があるからである。
本発明における上記テーパー角度とは、本体部の縦断面での側面が直線状の場合、上記側面を近似する直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図1(b)におけるθ1で表される角度である。
一方、本体部の縦断面での側面が曲線状の場合、本体部の頂面の外周上の点および本体部の底面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、光透過性基板表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図2におけるθ2で表される角度である。
ここで、本体部の頂面は、微細凹凸における凸部の側面の曲率が大きく変化する部位の横断面からなる面とし、本体部の底面は、本体部と基底部とが接する面とする。
なお、本発明における上記テーパー角度は、本体部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー角度を測定し、その測定値の平均値とする。また、図2は本発明における反射防止層の一例を示す概略断面図であり、図2における各符号については、図1(b)と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0058】
また、上記本体部の高さとしては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、適宜調整できるものである。ここで、上記高さが高いほど、反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、上記高さが低いほど、長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、本発明における上記本体部の高さは、60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜750nmの範囲内であることがさらに好ましい。本体部の高さが上記範囲よりも高いと、本体部が損壊しやすく、また、スティッキングが発生しやすくなる場合があり、本体部の高さが上記範囲よりも低いと、本発明における反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
本発明における上記本体部の高さとは、基底部表面から、本体部の頂面までの距離をいい、例えば、図1(b)におけるHで表される距離である。なお、本発明における上記本体部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0059】
上記本体部の頂面の径としては、上記本体部の底面の径よりも小さければ特に限定されるものではないが、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、2nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の頂面の径が小さすぎると、機械的強度が小さくなり、本体部が損傷しやすくなるからである。また、本体部の頂面の径が大きすぎると、テーパーが小さくなるため、スティッキングを発生しやすくなったり、型から抜けにくくなったりするからである。なお、本発明における上記本体部の頂面の径は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0060】
上記本体部の底面の径としては、上記本体部の頂面の径よりも大きければ特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の底面の径が小さくなると、隣り合う構造体の間が開き、構造体を形成していない部分が多くなるため、反射防止機能が悪くなる。なお、本発明における上記本体部の底面の径は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0061】
上記本体部の頂面形状および底面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状などを挙げることができる。
【0062】
上記本体部の側面形状としては、上記本体部の縦断面において、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。中でも、本発明においては、上記本体部が後述する先端部と連続的な曲面状の側面を形成することが好ましい。図2に例示するように、微細凹凸の凸部を釣鐘形状とすることができ、良好な反射防止機能を得ることができるからである。以下、上記凸部が釣鐘形状であることにより反射防止機能が良好となる理由について、具体的に説明する。
【0063】
モスアイ構造が反射防止をする原理については、次のように考えられる。図3(a)に例示されるモスアイ構造体Xの頂点部付近の空間(擬似層a)の屈折率Nは、空気の屈折率を1、擬似層a中でモスアイ構造体Xが占める体積の割合をVm、モスアイ構造体Xを構成する樹脂の屈折率をNmとすると、下記の(1)式が成り立つ。
N=1×(1−Vm)+Nm×Vm (1)
すなわち、擬似層aの屈折率は、空気と樹脂との、それぞれの体積と屈折率とを考慮した加重平均として与えられる。擬似層b以降も、同様である。擬似層a〜擬似層kへと基材Yに近づくにつれ、擬似層の屈折率は大きくなるが、図3(b)に例示するように、錐形状の屈折率の変化量が曲線的に変化するのに対して、釣鐘形状の屈折率の変化量はほぼ直線的に変化する。これは、モスアイ構造体Xが占める体積の割合は、擬似層aから擬似層kまでの断面積の変化ととらえることができ、この断面積の変化は錐形状の場合、曲線的に変化し、釣鐘形状の場合、ほぼ直線的に変化するからである。そのため、釣鐘形状のモスアイ構造体Xは、錐形状のモスアイ構造体Xに比べて、基材Y近傍の屈折率の変化率が小さいという特徴がある。基材Y近傍の屈折率の変化率が小さい方が、空気と樹脂との屈折率を小さくすることが擬似的に起こり、反射率を小さくすることが可能となる。また、本体部のテーパーが小さい場合、図3(b)に例示するように、擬似層kでの屈折率の変化量は小さいが、擬似層aからc部分での屈折率の変化量が大きくなるため、全体に白っぽくなる傾向がある。したがって、錐形状のモスアイ構造体Xおよびテーパーが小さい形状のモスアイ構造体Xよりも釣鐘形状のモスアイ構造体Xの方が、反射防止機能が優れている。
本発明においては、上記本体部のテーパー角度および上記先端部の曲率半径を適宜調整し、上記微細凹凸における凸部の釣鐘形状を規定することにより、上記擬似層の屈折率分布を最適化することができ、上記微細凹凸を光学的特性に優れたモスアイ構造とすることができる。
【0064】
(b)先端部
本発明に用いられる先端部は、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有するものである。本発明においては、上記先端部が曲面構造を有することにより、反射防止層における微細凹凸パターンの凸部の最先端部が割れる等の不具合がなく、さらに、型抜き性に優れた反射防止フィルムとすることができる。なお、上記先端部の曲面構造は、反射防止層を形成する際の圧力、反射防止層の樹脂の粘度等で制御することが可能である。
【0065】
上記先端部の形状としては、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造であれば特に限定されるものではない。本発明においては、中でも、略球面状であることが好ましく、その曲率半径としては、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜調整することができるものであり、例えば、本発明に用いられる本体部の頂面の径に対して、1.0倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.0倍〜2.0倍の範囲内であることがより好ましく、1.0倍〜1.5倍の範囲内であることがさらに好ましい。先端部の曲率半径が上記範囲よりも大きいと、先端部が平らな形状に近くなるため、反射防止層の反射率が高くなり、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が低下する場合があるからである。また、図4(a)に例示するように、先端部5bの曲面構造は、球面状であることが望ましいが、図4(b)、(c)に例示するように、先端部5bの曲面構造は、一部尖っている形状および/またはうねりがあってもよい。また、先端部の最先端部は本体部の頂面の中心にある必要はなく、中心からずれていても反射防止機能には変化はない。なお、図4(a)〜(c)は、本発明の反射防止フィルムにおける先端部の一例を示す概略断面図である。
【0066】
また、上記先端部の高さ、すなわち、本体部の頂面から先端部の最先端部までの距離としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものである。
【0067】
(c)凸部
本発明に用いられる凸部は、上記先端部と上記本体部とから構成されるものであり、本発明における反射防止層が備える反射防止機能は、上記凸部が形成された周期、高さ、間隔に依存する。
なお、上記凸部が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図5におけるP1、Q1、およびR1で示す通り、それぞれ隣接する凸部における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、凸部における先端部の頂部から本体部の底面までの距離、および隣接する凸部における本体部の底面の外周間の最短距離である。ここで、図5は本発明の反射防止フィルムにおける微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図であり、図5において説明していない符号については、図1(b)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0068】
上記凸部の周期としては、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、本発明に用いられる反射防止層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、本発明における上記凸部の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜250nmの範囲内であることがさらに好ましい。上記凸部の周期が上記範囲よりも短いと、個々の凸部の形状が極微小になることから、高精度で凸部を形成することが困難になる場合があるからである。また、上記凸部の周期が上記範囲よりも長いと、本発明における反射防止層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。なお、本発明における上記凸部の周期は、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の周期を測定し、その測定値の平均値とする。
【0069】
上記凸部の高さについても、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記高さが高いほど、反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、本発明における上記凸部の高さは、62nm〜1402nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1002nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜752nmの範囲内であることがさらに好ましい。上記凸部の高さが上記範囲よりも高いと、個々の凸部が損壊しやすくなってしまう場合があり、上記凸部の高さが上記範囲よりも低いと、本発明における反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。なお、本発明における上記凸部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0070】
上記凸部が形成された間隔は、広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、本発明における上記凸部が形成された間隔は、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。なお、本発明における上記凸部の間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0071】
上記凸部の高さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。上記凸部の高さのばらつきが上記範囲よりも大きいと、本発明における反射防止層の反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。また、凸部の頂点から構成される表面の機械的強度が低下し、損傷を受けやすくなる。なお、上記凸部の高さのばらつきとは、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の高さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
【0072】
上記凸部の単位面積当たりの個数としては、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、50個/μm2以上であることが好ましく、60個/μm2以上であることがより好ましく、70個/μm2以上であることがさらに好ましい。上記凸部の単位面積当たりの個数が50個/μm2以下の場合、ギラツキが発生し、反射防止機能が悪くなる。また、凸部の頂点から構成される表面の機械的強度が低下し、損傷を受けやすくなる。
なお、本発明においては、反射防止層が上記凸部以外の構造体を有していてもよいが、反射防止層における上記凸部の個数の、反射防止層における構造体全体の個数に対する割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。上記割合が少なすぎると、反射防止機能、スティッキング耐性および型抜け性が低下してしまうからである。
【0073】
上記凸部の360nm〜760nmの波長領域における入射角5°での正反射率は、0.5%以下であることが好ましく、0.005%〜0.3%の範囲内であることがより好ましく、0.005%〜0.1%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記凸部の360nm〜760nmの波長領域におけるヘイズ値は、0.1%〜50%の範囲内であることが好ましい。
【0074】
上記凸部は、短波長領域から長波長領域までくまなく反射することが可能である。
【0075】
(2)基底部
本発明に用いられる反射防止層における基底部は、上記易接着層上に形成され、上記微細凹凸を支持するものである。
上記基底部の厚みとしては、0.5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、2μm〜80μmの範囲内であることがさらに好ましい。基底部の厚みが上記範囲内であることにより、反射防止層の収縮応力の程度を低減することができ、上記易接着層および後述する光透過性基板等の種類に関わらず、本発明の反射防止フィルムにカールが生じることを防止することができるからである。また、クッション層としての効果があり、反射防止層の機械的損傷を補強することができる。例えば、反射防止層の機械的強度を高くさせたり、擦傷耐性を向上させ、傷つきにくくさせたりすることができる。さらに、反射防止層と易接着層との密着性を向上させることができる。
【0076】
(3)反射防止層
本発明における反射防止層は、通常、樹脂からなるものである。反射防止層に用いられる樹脂としては、上述した微細凹凸を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。中でも、本発明においては、電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電離線放射線硬化性樹脂を用いることで、高精度に微細凹凸を作製することができ、反射防止層に良好な反射防止機能を付与することができるからである。
【0077】
本発明に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂としては、少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を挙げることができる。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これら少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のうち、塗膜強度、密着性の観点より、少なくとも6つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類を好適に使用することができる。
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基をもつ(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリテート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し、官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能としては、具体的には、上述した多価アルコールとアクリル酸のエステル化合物が挙げられ、単独または2種以上の混合物が好ましい。
さらに、WO2007/040159に記載されている(メタ)アクリル系重合性組成物を用いることができる。
また、上記樹脂には、光重合開始剤を適宜添加することが望ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ゲンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。
本発明においては、これらの電離放射線硬化性樹脂の中から、後述する光透過性基板の屈折率と近い屈折率を有する樹脂を適宜選択して用いることが好ましい。易接着層の屈折率を、反射防止層の屈折率および光透過性基板の屈折率に近づけることができるからである。
【0078】
また、本発明に用いられる熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、オレフィン・マレイミド共重合体、フルオレイン系エポキシ、フルオレイン系アクリレート、フルオレイン系ポリエステル、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのエラストマーや酸変性物などを挙げることができる。
【0079】
本発明における反射防止層の透明度としては、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0080】
本発明に用いられる反射防止層の反射防止機能は、反射防止層の屈折率および上記易接着層の屈折率にも依存するものである。すなわち、反射防止層の屈折率と、上記易接着層の屈折率との差が小さいほど、屈折率の不連続性を是正することができるため、反射防止層の反射防止機能を向上させることができるものである。このような観点から、本発明においては、反射防止層の屈折率と、上記易接着層の屈折率との差は、0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。反射防止層の具体的な屈折率の値は、特に限定されるものではないが、上記易接着層の屈折率との差が小さいことが好ましいことから、後述する光透過性基板の屈折率に近いことが好ましく、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
【0081】
本発明に用いられる反射防止層は、上述した樹脂に加えて、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0082】
3.光透過性基板
次に、本発明における光透過性基板について説明する。本発明における光透過性基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるものである。また、上記光透過性基板は、上述した易接着層および反射防止層を支持するものであり、上記易接着層および反射防止層と相まって、本発明の反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
【0083】
また、本発明における光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであり、中でも、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0084】
本発明における光透過性基板の屈折率は、ほぼ一定であり、通常、1.57〜1.59程度である。
【0085】
本発明における光透過性基板は、PET樹脂からなるものであるが、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調整剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調整剤、流動性調整剤、酸化防止剤、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系などの離型剤や内部または外部滑剤、炭酸ストロンチウムなどの偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。
【0086】
本発明における光透過性基板の厚みとしては、上述した易接着層および反射防止層を支持することができれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムに応じて適宜選択することができるものであるが、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0087】
4.反射防止フィルム
本発明の反射防止フィルムは、図1(a)に例示するように、光透過性基板1上に、易接着層2および反射防止層3が順に形成された構造であってもよく、図6に例示するように、光透過性基板1を挟むように易接着層2および反射防止層3が順に形成された構造であってもよい。なお、図6は本発明の反射防止フィルムの他の例を示す概略断面図であり、図6において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0088】
また、本発明の反射防止フィルムは、少なくとも上記反射防止層と、上記易接着層と、上記光透過性基板とを有するものであるが、必要に応じて任意の構成が用いられていてもよい。本発明に用いられる任意の構成は、特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて、所望の機能を付与することができる構成を適宜選択して用いることができる。中でも、本発明に好適に用いられる任意の構成としては、上記易接着層と、上記反射防止層との間に形成されるプライマー層(密着安定層)、ハードコート層、帯電防止層等の機能層、および、上記光透過性基板の上記易接着層および上記反射防止層が形成された面とは反対の面上に形成される粘着層を挙げることができる。プライマー層は、ハードコート層および/または帯電防止層を兼ねることもできる。また、反射防止層の表面に形成される保護層を用いることもできる。
ここで、上記機能層としてハードコート層が形成されていることにより、本発明の反射防止フィルムの硬度を向上させ、耐久性に優れた反射防止フィルムとすることができることから、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いた場合に、本発明の反射防止フィルムを表示装置の保護フィルムとして用いることも可能になるという利点がある。また、上記機能層としてプライマー層が形成されていることにより、易接着層と反射防止層との密着性を向上させ、易接着層およびプライマー層を介して、反射防止層と光透過性基板との密着性をより向上させることができ、上記機能層として帯電防止層が形成されていることにより、静電気の発生を抑制し、本発明の反射防止フィルムへの埃や汚れの付着を防止することができる。
一方、上記粘着層が形成されていることにより、例えば、本発明の反射防止フィルムを表示装置に用いる場合に、本発明の反射防止フィルムを他の部材に貼り合わせることが容易になるという利点がある。
【0089】
本発明の反射防止フィルムに上記ハードコート層、プライマー層または帯電防止層が用いられている場合について、図面を参照しながら説明する。図7は、本発明の反射防止フィルムにハードコート層、プライマー層または帯電防止層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図7に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、易接着層2と反射防止層3との間に、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層6が形成されていてもよい。なお、図7において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0090】
本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層としては、所望の硬度、易接着層との密着性や帯電防止性を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなハードコート層、プライマー層または帯電防止層を構成する材料は、上述した反射防止層と同じ樹脂および適宜用いられる添加剤からなるものである。
【0091】
また、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層の厚みは、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層に用いられる材料の種類に応じて、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層に所望の硬度、易接着層との密着性や帯電防止性を付与することができる範囲内であれば特に限定されるものではない。中でも、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層の厚みは、0.05μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜30μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜20μmの範囲内であることがさらに好ましい。ハードコート層、プライマー層または帯電防止層の厚みが上記範囲よりも厚いと、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層を構成する材料の種類によっては、本発明の反射防止フィルムにカールが生じてしまう場合があるからである。一方、上記厚みが上記範囲よりも薄いと、ハードコート層を構成する材料の種類によっては、ハードコート層の硬度を所望の程度にすることが困難になる場合があるからである。また、プライマー層を構成する材料の種類によっては、プライマー層としての機能を付加する場合には、密着性がとれず、剥離してしまう場合があるからであり、帯電防止層を構成する材料の種類によっては、十分な帯電防止性能を発現できなくなる場合があるからである。
【0092】
ハードコート層、プライマー層または帯電防止層は、予め易接着層に積層形成したものを用いてもよく、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層、および反射防止層の樹脂を同時に積層したものを用いてもよい。
【0093】
さらに、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層は、屈折率が上記易接着層の屈折率および上記反射防止層の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおける易接着層と、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層との境界、および、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層と、反射防止層との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、これらの境界において光が反射されることに起因して、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止できるからである。中でも、本発明に用いられるハードコート層、プライマー層または帯電防止層の屈折率と、上記易接着層および上記反射防止層との屈折率の差は0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。
【0094】
次に、本発明の反射防止フィルムに上記粘着層が用いられている場合について、図面を参照しながら説明する。図8は、本発明の反射防止フィルムに粘着層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図8に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、光透過性基板1の、易接着層2および反射防止層3が形成された面とは反対の面上に粘着層7が形成されたものであってもよい。なお、図8において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0095】
本発明に用いられる粘着層は、本発明の反射防止フィルムの用途に応じて所望の粘着剤からなるものであれば、特に限定されるものではない。上記粘着層に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0096】
また、本発明に用いられる粘着層の厚みは、1μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜50μmの範囲内であることがさらに好ましいが、特に限定されるものではない。
【0097】
本発明に用いられる粘着層は、上述した粘着剤に加えて、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤と同様のものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0098】
次に、本発明の反射防止フィルムに上記保護層が用いられている場合について、図面を参照しながら説明する。図9(a)〜(c)は、本発明の反射防止フィルムに保護層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図9(a)〜(c)に例示するように、本発明の反射防止フィルム10は、反射防止層3の表面上に保護層8が形成されたものであってもよい。保護層8は、図9(a)に例示するように、反射防止層3の頂面のみが保護層8に接触するように形成されていてもよく、図9(b)に例示するように、反射防止層3が保護層8に少しめり込むように形成されていてもよく、図9(c)に例示するように、反射防止層3が保護層8に入り込むように形成されていてもよい。なお、図9(a)〜(c)において説明していない符号については、図1(a)と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0099】
本発明に用いられる反射防止層の表面に形成される保護層の形成方法としては、感圧または感熱で粘着力を発現する保護フィルムを貼る方法、保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で膜を形成する方法、反射防止層表面に溶融押し出しし、冷却して形成する方法等がある。
【0100】
感圧または感熱方式で形成する保護層は、本発明の反射防止フィルムの用途に応じて所望の保護層材料からなるものであれば、特に限定されるものではない。上記感圧保護層材料としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。また、上記保護層は、オレフィン系の熱可塑性樹脂に、エチレン・αオレフィン共重合物、プロプレン・αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤーや上記の粘着剤を混合した樹脂層で形成されていてもよい。
さらには、上記保護層は、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体などを含有する樹脂層から形成されていてもよい。
【0101】
反射防止層表面に溶融押し出しし、冷却して保護層を形成する場合、保護層材料としては、α・オレフィン重合体、エチレンとα・オレフィンとの共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体を単体で、またはブレンドして用いることができる。ブレンドする樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。また、エチレン・αオレフィン共重合物、プロプレン・αオレフィン共重合物、1−ブテンホモポリマーおよびコポリマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、タッキファイヤー、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィン共重合体、エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0102】
保護機能を有する樹脂をコーティングし、UV照射や乾燥で膜を形成する方法としては、有機溶剤または水系に希釈して、または希釈しないで、反射防止層の上面にコーティングし、膜を形成する。必要に応じ、乾燥、冷却、UV照射を行い、膜強度を向上させる。用いられる樹脂としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系樹脂やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
【0103】
5.反射防止フィルムの製造方法
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、例えば、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板上に、易接着層形成用樹脂組成物を塗工し、乾燥後に上記易接着層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、易接着層を形成する易接着層形成工程と、上記易接着層上に、反射防止層形成用樹脂組成物を塗工することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜を形成する膜形成工程と、本発明における反射防止層の微細凹凸を形成することが可能な形状を有する金型を用い、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型する賦型工程と、上記圧力を解放した後に、上記反射防止層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、上記反射防止層から上記金型を剥離する剥離工程とを有する製造方法を挙げることができる。
以下、上記反射防止フィルムの製造方法における各工程について説明する。
【0104】
(1)易接着層形成工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における易接着層形成工程は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板上に、易接着層形成用樹脂組成物を塗工し、乾燥後に上記易接着層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、易接着層を形成する工程である。
【0105】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる光透過性基板としては、上記「3.光透過性基板」の項に記載したものを挙げることができる。
【0106】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる易接着層形成用樹脂組成物は、樹脂を含有するものであり、光透過性基板の屈折率と、最終的に形成される反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有する易接着層を得ることができるものである。なお、ここでの平均となる屈折率については、上述した内容と同様である。上記易接着層形成用樹脂組成物に用いられる樹脂としては、所望の易接着層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「1.易接着層」の項に記載したものを好適に用いることができる。
また、上記易接着層形成用樹脂組成物は、上記樹脂の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤を適宜用いることができる。
【0107】
本工程において、上記易接着層形成用樹脂組成物を塗工する方法としては、光透過性基板上に均一に塗布することができれば特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等、公知の方法を用いることができる。
【0108】
また、本工程において、塗工された上記易接着層形成用樹脂組成物を乾燥する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、減圧乾燥もしくは加熱乾燥、またはこれらの乾燥を組み合わせる方法等を挙げることができる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃〜180℃の範囲内の温度で乾燥させることが好ましい。
【0109】
また、本工程において、乾燥後に上記易接着層形成用樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記易接着層形成用樹脂組成物に含有される樹脂の種類に応じて、適宜選択される。例えば、上記樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、紫外線硬化法等を挙げることができ、上記樹脂が熱硬化性樹脂である場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により硬化させることができる。
【0110】
(2)膜形成工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における膜形成工程は、上記易接着層上に、反射防止層形成用樹脂組成物を塗工することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜を形成する工程である。
【0111】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる反射防止層形成用樹脂組成物は、樹脂を含有するものである。上記反射防止層形成用樹脂組成物に用いられる樹脂としては、所望の形状の微細凹凸を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「2.反射防止層」の項に記載したものを好適に用いることができる。
また、上記反射防止層形成用樹脂組成物は、上記樹脂の他に、必要に応じて任意の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、上記「1.易接着層」の項に記載した添加剤と同様のものを適宜用いることができる。
【0112】
上記反射防止層形成用樹脂組成物の粘度としては、上記金型に上記反射防止層形成用樹脂組成物を所望の程度に入り込ませることができれば特に限定されるものではないが、例えば、25℃において、10mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、50mPa・s〜5000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、100mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
また、溶融型の樹脂の場合には、例えば、190℃におけるメルトフローインデックス(MFI)が、1.0g/10min以上であることが好ましく、3.0g/10min以上であることがより好ましく、5.0g/10min以上であることがさらに好ましい。
【0113】
本工程において、上記反射防止層形成用樹脂組成物を塗工する方法については、上記「(1)易接着層形成工程」の項に記載した塗工方法と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0114】
(3)賦型工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における賦型工程は、本発明における反射防止層の微細凹凸を形成することが可能な形状を有する金型を用い、上記微細凹凸を形成することが可能な圧力を負荷することにより、上記反射防止層形成用樹脂組成物からなる膜に上記微細凹凸を賦型する工程である。本工程により、光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなる微細凹凸における凸部の形状を形成することができる。
【0115】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に用いられる金型としては、所望の形状の微細凹凸を上記反射防止層形成用樹脂組成物に賦型することができれば特に限定されるものではなく、例えば、後述する「6.反射防止フィルム製造用金型」の項に記載する金型を好適に用いることができる。また、金型は平板状、ロール状、ベルト状のものを用いることができる。
【0116】
本工程における圧力としては、本発明に用いられる反射防止層形成用樹脂組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記反射防止層形成用樹脂組成物および上記金型を用いて、上記金型の形状を上記反射防止層形成用樹脂組成物にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、上述した粘度を有する上記反射防止層形成用樹脂組成物を用いた場合、上記圧力は、1.0N/cm〜50N/cmの範囲内であることが好ましく、2.5N/cm〜40N/cmの範囲内であることがより好ましく、5.0N/cm〜25N/cmの範囲内であることがさらに好ましい。上記圧力が低すぎると、上記反射防止層形成用樹脂組成物が上記金型にあまり入り込まず、上記微細凹凸における凸部の高さが十分ではないおそれがあるからであり、上記圧力が高すぎると、上記反射防止層形成用樹脂組成物が上記金型に入り込み過ぎて、金型から抜けなくなるおそれがあるからである。
【0117】
本工程において、上記圧力を負荷する方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、インジェクションプレス、ベルトプレス方式、スリーブタッチ方式、弾性金属ロールによるロールタッチ方式等を用いる方法を挙げることができる。
【0118】
(4)反射防止層形成工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における反射防止層形成工程は、上記圧力を解放した後に、上記反射防止層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、反射防止層を形成する工程である。
【0119】
本工程において、上記反射防止層形成用樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記反射防止層形成用樹脂組成物に含有される樹脂に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、上記樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により硬化させることができる。
【0120】
(5)剥離工程
本発明の反射防止フィルムの製造方法における剥離工程は、上記反射防止層から上記金型を剥離する工程である。
【0121】
本工程における剥離方法としては、反射防止層を傷つけることなく上記金型を剥離することができれば、特に限定されるものではない。
【0122】
6.反射防止フィルム製造用金型
次に、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型について説明する。本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型としては、例えば、金属基体と、上記金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜を備える反射防止フィルム製造用金型であって、上記微細孔の開口部に、深さが60nm〜2000nmの範囲内であるテーパー形状を有するものを挙げることができる。
【0123】
このような反射防止フィルム製造用金型について、図面を参照しながら説明する。図10は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の一例を示す概略断面図である。図10に例示する反射防止フィルム製造用金型20は、金属基体11と、金属基体11の表面に形成され、複数の微細孔を有する金属酸化膜11’とを備えており、微細孔の開口部に、深さDが所定の範囲内であるテーパー形状を有している。
【0124】
なお、金属基体については、後述する「7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法」の項に記載するものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型におけるその他の構成について説明する。
【0125】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における金属酸化膜は、金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有するものである。上記金属酸化膜は、通常、金属基体を陽極酸化することによって形成される。上記金属酸化膜の厚みとしては、特に限定されるものではなく、目的とする反射防止フィルム製造用金型等に応じて適宜選択することができる。
【0126】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型は、上記金属酸化膜が有する複数の微細孔の開口部に、深さが所定の範囲内であるテーパー形状を有することを大きな特徴とする。上記微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さとしては、60nm〜2000nmの範囲内であればよいが、中でも、100nm〜1200nmの範囲内であることが好ましく、120nm〜800nmの範囲内であることがより好ましい。上記テーパー形状の深さが上記範囲よりも深いと、本発明の反射防止フィルムにおいて、微細孔の転写部分が損壊しやすくなってしまう場合があったり、スティッキングが発生しやすくなる場合があったり、金型から抜けにくくなったりする場合があるからである。一方、上記テーパー形状の深さが上記範囲よりも浅いと、テーパー形状を形成することが困難となり、また、反射防止機能が悪くなる場合があるからである。
ここで、微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さとは、微細孔の開口表面からテーパー形状の最深部までの距離をいい、図10におけるDで表される距離のことである。微細孔の形状によっては、上記テーパー形状の深さと、微細孔の孔深さとが同一になる場合がある。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記テーパー形状の深さは、微細孔の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー形状の深さを測定し、その測定値の平均値とする。
【0127】
上記微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度としては、テーパー形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度が上記範囲よりも大きいと、開口部が垂直形状に近くなり、反射防止フィルムを製造する際に、金型の微細孔に樹脂層が入り込みにくくなる場合があるからである。また、金型から抜けにくくなるからである。一方、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度が上記範囲よりも小さいと、開口部を形成することが困難となる場合があるからである。また、反射防止機能が劣るようになるからである。
ここで、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度とは、微細孔の縦断面での側壁が直線状の場合、上記側壁を近似する直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図10におけるθ3で表される角度のことである。一方、微細孔の縦断面での側壁が曲線状の場合、微細孔の開口表面の外周上の点および微細孔におけるテーパー形状の最深部の横断面からなる面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、図11におけるθ4で表される角度のことである。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記テーパー角度は、上述した方法で決定した平均値とする。また、図11は本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の他の例を示す概略断面図であり、図11における各符号は、図10と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0128】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における微細孔は、開口部に所定の深さのテーパー形状を有していればよく、先端部の形状は、開口部に対して狭まっていれば特に限定されるものではない。上記微細孔の先端部の形状は、例えば、尖端形状であってもよく、平面形状であってもよく、曲面形状であってもよい。中でも、上記反射防止フィルム製造用金型においては、上記微細孔の先端部の形状が曲面形状であることが好ましい。曲面形状の場合、樹脂の入り込みが均一になりやすく、形状のばらつきが少なくなるからである。一方、平面形状の場合、万が一樹脂が平面形状を充満した場合、抜けなくなる場合がある。
【0129】
上記微細孔の開口表面の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状などを挙げることができる。
また、上記微細孔の開口表面の径、すなわち上記微細孔の孔径としては、特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。上記微細孔の孔径が25nm以下の場合、反射防止フィルムにおいて隣り合う構造体の間が大きくなるため、構造体を形成していない部分が多くなり、反射防止機能が悪くなる。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記孔径は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0130】
上記微細孔の周期は、特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記微細孔の周期は、本発明の反射防止フィルムの反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にあるものである。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、上記微細孔の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記周期は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0131】
また、上記微細孔の深さも、本発明の反射防止フィルムの反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その深さが深いほど反射率を低くすることができ、一方、浅くなると長波長側の反射率が増加する傾向にあるものである。このようなことから、上記微細孔の深さは、60nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜800nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記深さは、上述した方法で決定した平均値とする。
【0132】
また、上記微細孔の間隔は、これが広くなるほど、本発明の反射防止フィルムにおいて、可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、上記微細孔の間隔は、0nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜80nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における上記間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
【0133】
ここで、上記微細孔の周期、深さ、および間隔は、それぞれ図12におけるP2、Q2、およびR2で示す通り、それぞれ隣接する微細孔における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、微細孔における先端部の頂部から開口表面までの距離、および隣接する微細孔における開口表面の外周間の最短距離である。なお、図12は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型における微細凹凸を特定するパラメーターを説明する概略図である。
【0134】
上記微細孔の深さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。上記微細孔の深さのばらつきが上記範囲よりも大きいと、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。なお、上記微細孔の深さのばらつきとは、微細孔の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の深さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
【0135】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型においては、隣接する上記微細孔の開口表面同士の段差(以下、小さいうねりと称する。)が、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。小さいうねりが100nmを超えると表面のキズとして目視できるようになり、反射防止機能が不均一になるからである。
【0136】
また、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型においては、500nm以上離れた上記微細孔の開口表面同士の段差(以下、大きいうねりと称する。)が、10μm以下であることが好ましく、500nm〜2μmの範囲内であることがより好ましい。500nm以上離れた場合、大きいうねりが10μm以下であれば、反射防止機能に影響を与えず、目視してもわからない(ごまかされる)ためである。
金属基体の表面に大きいうねりを作る方法としては、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成した後、スパッタ法、メッキ法、蒸着法で金属基体を積層する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成した後、樹脂を積層し、凹凸をなだらかにした後、スパッタ法、メッキ法、蒸着法で金属基体を積層する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体に樹脂を積層し、凹凸を形成した後、金属基体を積層する方法、表面にシリカ、金属または金属酸化物の粒子を含む樹脂を金属基体あるいは金属基体の支持体に積層し、凹凸を形成した後、金属基体を積層する方法等が挙げられる。
金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化する方法としては、機械的処理、電気化学的処理、陽極酸化、エンボス法、研磨法、エッチング法、湿式メッキ法、乾式メッキ法、溶射法、フォトリソグラフィ法、表面熱処理法、ゾルゲル法等を適宜単独または組み合わせながら処理する方法が挙げられる。
機械的処理法としては、サンド・ブラスト法、ショット・ブラスト法、グリット・ブラスト法、ガラスビーズ・ブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、および塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ毛(材)を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーでひっかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイン法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法等が挙げられる。
電気化学的処理法としては、塩酸、硝酸または硫酸および塩化物イオンまたは硝酸塩イオンを含む電解液水溶液中で、直流または交流を用いて処理する方法がある。
エンボス法としては、大きいうねりとなる形状を表面に付与したロール型や枚葉プレス型を押圧し、その形状を50%以上転写するロールエンボス、枚葉プレス型エンボス等が挙げられる。
研磨法としては、回転型バレルや振動型バレルを用いたバレル研磨法、バフ研磨法、リューター研磨法、砥粒流動研磨法、電解研磨法、化学研磨法、化学複合研磨法、電解複合研磨法、化学機械研磨法、CMP研磨法等が挙げられる。
エッチング法としては、化学エッチング法、電解エッチング法、スパッタ法による乾式エッチング法等が挙げられる。
湿式メッキ法としては、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。
乾式メッキ法としては、真空蒸着メッキ、抵抗加熱、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理蒸着法(PVD)、常圧熱CVD・減圧熱CVD・プラズマCVDなどの化学蒸着法(CVD)等が挙げられる。
金属、セラミックス、プラスチック、サーメット、カーバイド、アブレイダブルを材料として用いる溶射法としては、溶線式フレーム溶射、粉末式フレーム溶射、溶棒式フレーム溶射、爆発溶射(Dガン)などのフレーム溶射法やアーク溶射、プラズマ溶射(減圧プラズマ式溶射・大気プラズマ式溶射・水プラズマ式溶射)、線爆溶射などの電気式溶射法、高速フレーム溶射法、コールドスプレー溶射法等が挙げられる。
表面熱処理法としては、表面に気泡を形成したり、ブラッシング化させたり、クレーター化させたり、亀裂化させたり、結晶成長処理をさせたり、バルク化させたり、対流散逸パターン化させたり、沈降散逸パターン化させたり、散逸パターン化させたり、粒子の凝集を起こさせたり、ナノバックリング形成させたりするなどの方法で形状を形成する方法が挙げられる。
また、プラズマを用いて表面にうねりを形成するプラズマアッシング方式なども用いることができる。
金属基体またはその支持体に樹脂を積層する方法としては、スプレー法、電着法、ディップ法、ディップコート法、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法、静電塗装法、粉体塗装法、チューブやスリーブなどを被覆する方法などの公知の方法を用いることができる。塗工後、適宜乾燥工程や熱またはUVやEBによるハーフキュア工程を入れることができる。
使用される樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等があげられ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのエラストマーや酸変性物がある。
大きいうねりの形成は、後述する「7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法」の項に記載する陽極酸化工程、第1エッチング工程、その後の第2エッチング工程を本処理工程とした場合、本処理工程の前処理として施してよく、また、本処理工程後に処理してもよい。または、本処理工程の前後で行ってもよい。さらには、本処理工程中の陽極酸化工程の後で行ってもよく、または第1エッチング工程の後で行ってもよく、さらに、これらの組み合わせで処理することができる。
【0137】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の転写率としては、反射防止フィルム製造時に用いられる樹脂の粘度および圧力に応じて適宜調整されるものであるが、50%以上であればよい。すなわち、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型は、転写率が100%でなくとも、反射防止フィルムとして用いられるのに十分な物性を有する微細凹凸パターンが得られる程度に、微細孔の形状を樹脂層に賦型することができるものである。したがって、金型の微細孔に入り込んだ樹脂層の先端部分には、微細孔の底面、あるいは側壁、または底面および側壁と接触しない部分が発生する。ここで、転写率とは、微細孔の深さに対する樹脂層の入り込む深さの比率をいう。樹脂層の入り込む深さは、成型品の凸部の高さと同じであるため、転写率とは、微細孔の深さに対する成型品の凸部の高さの比率となる。
【0138】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法としては、上記構成を有する反射防止フィルム製造用金型を製造することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、後述する「7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法」の項に記載する方法等を挙げることができる。
【0139】
7.反射防止フィルム製造用金型の製造方法
次に、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法について説明する。本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法としては、例えば、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する微細孔形成工程を有する製造方法を挙げることができる。
【0140】
このような反射防止フィルム製造用金型の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図13(a)〜(e)は、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法の一例を示す工程図である。図13(a)〜(e)に例示するように、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、金属基体11を用い(図13(a))、金属基体11を対象として微細孔形成工程を実施することにより(図13(b)〜図13(d))、金属基体11の表面に微細孔が形成された構成を有する反射防止フィルム製造用金型20を製造するものである(図13(e))。
ここで、上記微細孔形成工程は、金属基体11を用い(図13(a))、陽極酸化法によって金属基体11の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜11’を形成する陽極酸化工程(図13(b))と、金属酸化膜11’をエッチングすることにより微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程(図13(c))と、金属酸化膜11’を第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程(図13(d))とを順次繰り返し実施することによって、金属基体11の表面に微細孔を形成するものである。
【0141】
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、少なくとも陽極酸化工程、第1エッチング工程および第2エッチング工程を有する微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられてもよいものである。
以下、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における各工程について説明する。
【0142】
(1)微細孔形成工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における微細孔形成工程は、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する工程である。
【0143】
(a)金属基体
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体としては、その表面に陽極酸化被膜を形成することができる金属、いわゆるバルブ金属からなるものであれば、特に限定されるものではない。このような金属基体としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、シリコン等からなるものを挙げることができ、中でも、アルミニウムからなるものを好適に用いることができる。アルミニウムは酸化されやすく、陽極酸化被膜を形成しやすいからである。上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体としては、アルミニウム単体からなるものであってもよく、任意の基材上にアルミニウムからなる層がスパッタ法、蒸着法、メッキ法で最表層となるように形成された構成を有するものであってもよい。金属基体に用いられる基材としては、ゴム、樹脂、金属等からなるものを挙げることができる。
【0144】
また、上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体の形態は、特に限定されるものではない。したがって、上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、シート状、ロール状、ベルト状、立体状、フィルム状等のいずれの形態を有する金属基体であっても好適に用いることができる。なお、ここで「立体状の金属基体」とは、射出成型等により形成された立体物である金属基体のことをいい、「フィルム状の金属基体」とは、厚さ200μm以下のポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポチブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、アクリルメラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等の樹脂層が積層された金属基体、またはニッケル、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属、またはこれらの合金、またはこれらの合金の表面にドライメッキ法あるいはウェットメッキ法でクロム、タンタル、チタン、銅、銀、金、ケイ素等の金属や無機物あるいはこれらの化合物を積層した金属などの金属フィルム上に積層された金属基体、あるいはこれらの複合体からなる金属基体のことをいう。
【0145】
上記金属基体の厚みとしては、上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成することができ、かつ金型として十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、50nm〜100mmの範囲内で設定することができる。
【0146】
(b)陽極酸化工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における陽極酸化工程は、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する工程である。
【0147】
本工程に用いられる陽極酸化法としては、上記金属基体の表面に所望の深さおよび配列態様で微細孔が形成された金属酸化膜を形成できる方法であれば、特に限定されるものではない。ここで、上記陽極酸化法により形成される微細孔の深さや配列態様は、陽極酸化に用いる電解液の液性等に依存するものであるところ、本工程に用いられる電解液は、中性の電解液であっても、あるいは酸性の電解液であっても好適に用いることができる。中でも、本工程においては、上記電解液として酸性の電解液が用いられることが好ましい。酸性の電解液が用いられることにより、本工程において、上記金属基体の表面に微細孔をランダムな位置に形成することができるからである。本工程に用いられる酸性の電解液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、およびリン酸水溶液等を挙げることができる。
【0148】
本工程における陽極酸化時間としては、金属基体の表面に所望の形状の複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成することができれば特に限定されるものではなく、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体、本工程に用いられる電解液等に応じて適宜設定されるものである。
【0149】
本工程により形成される金属酸化膜の厚みとしては、所望の形状の複数の微細孔を有していれば特に限定されるものではない。
【0150】
(c)第1エッチング工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における第1エッチング工程は、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する工程である。
【0151】
本工程において、金属酸化膜をエッチングする方法としては、上記微細孔の開口部に所望のテーパー形状を形成することができる方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、アルカリエッチング法、酸性エッチング法、電解エッチング法等を挙げることができる。本工程においては、これらのいずれの方法であっても用いることができるが、アルカリエッチング法は、光沢や表面粗度等が大きく、エッチング面を一定の状態に維持することが難しく、遊離アルカリ濃度や浴中の溶存金属成分を常に一定範囲に管理することなどが要求されるため、酸性エッチング法が用いられることが好ましい。
【0152】
中でも、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、本工程が、上記陽極酸化工程直後に、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中で行われる工程であることが好ましい。第1エッチング工程に用いられるエッチング液を別途用意する必要がなく、容易に上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成することができるからである。
本工程に用いられる電解液としては、上記陽極酸化工程で用いられたものであるが、具体的には、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、およびこれらの混合液等の酸性電解液を挙げることができ、中でも、取り扱いや管理の面から、シュウ酸水溶液が好ましい。
また、本工程が、上記陽極酸化工程直後に、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中で行われる時間、すなわち、上記陽極酸化工程により複数の微細孔を有する金属酸化膜が表面に形成された金属基体を、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中にそのまま放置する時間としては、上記微細孔の開口部に所望のテーパー形状を形成することができれば特に限定されるものではないが、例えば、3秒以上であることが好ましく、10秒以上であることがより好ましく、60秒以上であることがさらに好ましい。
なお、本工程により上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成することが可能な理由としては、以下のようなことが挙げられる。
<1>陽極酸化を行うと、酸化皮膜を形成しながらポーラス状の円柱形状の孔が形成される。
<2>この酸化皮膜が、化学的溶解を受けると、内部(すなわち下面)に比べ、外部(すなわち上面)の方が、エッチング液にさらされる時間が長くなる。これは、内部に浸入したエッチング液の交換速度が外部のエッチング液よりも遅いためである。
<3>この結果、外部の方がエッチングされる量が多くなり、テーパー形状となる。
【0153】
本工程のエッチングレートは、後述する第2エッチング工程のエッチングレートよりも低いものである。本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法において、第1エッチング工程と第2エッチング工程とで、エッチングレートの違いにより微細孔の開口部に形成される形状が異なる理由としては、第2エッチングは、第1エッチングよりもエッチング速度が速いため、第1エッチングでテーパー形状を形成された孔の全体の直径を広げる作用があるからである。
【0154】
(d)第2エッチング工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法における第2エッチング工程は、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する工程である。上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、通常、第2エッチング工程によって、上記微細孔の開口部にテーパー形状は形成されず、第1エッチング工程によって形成されたテーパー形状を有する孔の径を均等に大きくする。
【0155】
本工程において、金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングする方法としては、上記金属酸化膜に形成された微細孔の孔径を所望の程度に拡大する方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、上記第1エッチング工程に記載した方法と同様のエッチング法を挙げることができる。
【0156】
本工程のエッチングレートとしては、上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高く、上記微細孔の孔径を拡大することができれば特に限定されるものではないが、上記第1エッチング工程のエッチングレートに対して、1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがさらに好ましい。1.2倍以下では、十分に孔径を拡大させる効果が少なくなるからである。
【0157】
本工程に用いられるエッチング液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、クロム酸水溶液等の酸性水溶液、およびこれらの混合液が用いられる。また、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液が用いられる。中でも、取り扱いや管理の面から、リン酸水溶液が好ましい。
また、上記エッチング液の濃度としては、本工程に用いられるエッチング液の種類、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体等に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、0.005M〜2.0Mの範囲内であることが好ましく、0.01M〜1.5Mの範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程に用いられるエッチング液の濃度が上記範囲よりも高いと、第2エッチング工程により金属酸化膜をすべて除去してしまう場合があるからであり、第2エッチング工程に用いられるエッチング液の濃度が上記範囲よりも低いと、第2エッチング工程のエッチングレートが低下し、十分な孔径拡大処理ができないからである。
本工程におけるエッチング時間としては、本工程に用いられるエッチング液、上記反射防止フィルム製造用金型の製造方法に用いられる金属基体等に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、1分間〜60分間の範囲内であることが好ましく、2分間〜30分間の範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程のエッチング時間が上記範囲よりも長いと、第2エッチング工程により金属酸化膜をすべて除去してしまい、孔と孔との間の壁が薄くなって強度が弱くなり、樹脂が入り込むと破損してしまう場合があるからであり、第2エッチング工程のエッチング時間が上記範囲よりも短いと、上記微細孔を十分に拡大することができず、所望の形状が得られない場合があるからである。
【0158】
(e)微細孔形成工程
本工程において、上記陽極酸化工程と、上記第1エッチング工程と、上記第2エッチング工程とを順次繰り返し実施する際の繰り返しの程度としては、反射防止フィルム製造用金型として用いることが可能な程度に均一な微細孔ができるまで、複数回繰り返して行われる。本工程は、上記陽極酸化工程で終わってもよく、上記第2エッチング工程で終わってもよい。
【0159】
本工程において、上記陽極酸化工程と、上記第1エッチング工程と、上記第2エッチング工程とが順次繰り返し実施される回数としては、目標とする微細孔の形状等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。また、本工程において、これらの工程が順次繰り返し実施される回数は、目的とするエッチング量に応じ、エッチング液およびエッチング時間等のエッチング条件とともに適宜調整される。
【0160】
本工程により金属基体の表面に形成される微細孔の形状は、開口部にテーパー形状を有していれば特に限定されるものではない。上記微細孔の形状については、上記「6.反射防止フィルム製造用金型」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0161】
(2)任意の工程
本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法は、少なくとも上記微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。このような工程としては、離型処理工程、水洗工程、乾燥工程等が挙げられる。
【0162】
中でも、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型の製造方法においては、上記微細孔形成工程により得られた反射防止フィルム製造用金型に賦型処理を施す離型処理工程を有することが好ましい。離型処理工程を有することで、本発明に用いられる反射防止フィルム製造用金型に離型性を付与することができるからである。上記反射防止フィルム製造用金型が離型性を有することにより、反射防止フィルムを製造する際に、上記反射防止フィルム製造用金型から反射防止フィルムを取り出しやすいという利点がある。
離型処理の方法としては、上記反射防止フィルム製造用金型における金属酸化膜が有する微細孔を埋めない方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、離型剤を上記反射防止フィルム製造用金型に塗布する方法、離型剤をスパッタ法で上記反射防止フィルム製造用金型に積層する方法等を挙げることができる。また、離型剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、脂肪族アマイド系化合物、パラフィン系化合物等を挙げることができる。
【0163】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を挙げることにより、本発明について具体的に説明する。
【0165】
[実施例1]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
まず、純度99.85%の押し出しされたアルミニウムパイプの両端に回転軸を設けたアルミニウムシリンダーを、小さいうねりとして表面粗さRzが30nm、大きいうねりが1μmとなるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウムシリンダー上に複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナ膜が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0166】
[実施例1−1]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、乾燥膜状態の屈折率が1.54になるように調整した水分散性熱可塑性ウレタン樹脂を乾燥厚み1μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、易接着層を形成した。さらに、その上に固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0167】
[実施例1−2]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、乾燥膜状態の屈折率が1.52になるように調整した、メチルエチルケトン80重量部を含む紫外線硬化性樹脂を乾燥厚み5μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、易接着層を形成した。さらに、その上に固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0168】
[実施例1−3]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、乾燥膜状態の屈折率が1.56になるように調整した熱可塑性ポリウレタン樹脂を乾燥厚み0.5μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、一層目の易接着層を形成した。次に、その上にトルエン50重量部を含む紫外線硬化性樹脂(屈折率1.52)を乾燥厚み4μmとなるようにコーティングし、温度80℃で30秒間乾燥し、二層目の易接着層を形成した。さらに、その上に固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0169】
[実施例2]
(反射防止フィルム製造用金型の作製)
まず、厚み150μmからなるニッケル製スリーブの表面に、クロムメッキを厚み80μmとなるように形成し、平滑層とした。その後、小さいうねりとして表面粗さRzが80nmとなるように研磨した後、平滑層にブラスト処理を行い、2μmの大きなうねりを形成した。次に、平滑層の上にスパッタ法により二酸化ケイ素を500Å積層し、さらに、その上に酸化タンタルを500Å積層し、中間層を得た。その後、スパッタ法により中間層の上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜層を形成した後、0.05Mリン酸クロム酸水溶液の電解液中で、化成電圧30V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で120秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、0.5Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計6回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜層上に複数の微細孔を有する陽極酸化アルミナ膜が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、反射防止フィルム製造用金型を得た。
【0170】
[実施例2−1]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板用樹脂として熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂(屈折率1.58)、易接着層用樹脂として屈折率1.56に調整した熱可塑性ポリウレタン樹脂、反射防止層用樹脂として屈折率1.53、溶融粘度20g/10minのリニアローデンポリエチレンを準備した。光透過性基板用樹脂が200μm、易接着層用樹脂が5μm、反射防止層用樹脂が20μmとなるように、250℃でTダイから同時に押し出し、光透過性基板用樹脂/易接着層用汚樹脂/反射防止層用樹脂からなる積層体を反射防止層用樹脂が金型側となるように、実施例2で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に反射防止層用樹脂が充填されたことを確認し、空冷で冷却して積層体を硬化させることにより、光透過性基板、易接着層および反射防止層を形成した。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0171】
[比較例]
(反射防止フィルムの作製)
光透過性基板として準備した厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.58)に、易接着層がない状態で、固形分100%の紫外線硬化性樹脂組成物(屈折率1.49、粘度500mPa・s)を厚さ20μmとなるように塗布した後、実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。上記金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させた。その後、上記金型から剥離して反射防止フィルムを得た。
【0172】
[評価1]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルム製造用金型断面の観察)
集束イオンビームにより反射防止フィルム製造用金型を垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記金型の断面を観察し、得られた画像から、微細孔の孔径、周期、深さ、および開口部の形状を測定した。
【0173】
実施例1で得られた反射防止フィルム製造用金型においては、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが観察され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
【0174】
実施例2で得られた反射防止フィルム製造用金型においては、およそ孔径75nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが観察され、微細孔の周期は80nmであり、微細孔の深さは90nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは87nmであり、テーパー角度は67°であった。
【0175】
[評価2]
(走査型電子顕微鏡による反射防止フィルムの表面および断面の観察)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。また、ガラス切片で断面を製作し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの断面を観察し、得られた画像から、微細凹凸における凸部の周期、凸部の高さ、本体部および先端部の形状を計測した。
【0176】
(反射防止フィルムの反射率)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼り付け、島津製作所製自記分光光度計UV−3100を用いて、フィルム表面への5°正反射率を測定した。
【0177】
(反射防止フィルムの外観)
反射防止フィルムの裏面に黒色テープを貼り付け、目視にて確認した。
【0178】
(反射防止フィルムのスティッキング)
反射防止フィルムを水に浸漬し、取り出した後、24時間風乾させた。表面に水滴が残っていないことを確認し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの表面を観察した。得られた画像から、スティッキングの発生の有無を確認した。
【0179】
(反射防止フィルムの布拭き)
反射防止フィルムを、ネルで50g/cm2の荷重で擦り、12時間放置後、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの表面を観察した。得られた画像から、構造体の損傷の発生の有無を確認した。
【0180】
(反射防止フィルムの反射防止フィルム製造用金型からの抜け)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、上記フィルム表面の構造体の破損状態を観察した。
【0181】
(反射防止層と光透過性基板との密着性)
JIS K5400記載の碁盤目試験(1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロファンテープ(ニチバン社製)で剥離する試験)を行った。具体的には、反射防止フィルムの反射防止層側の面に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個作り、この上にセロファンテープを貼り付け、90°で素早く剥がし、反射防止層が剥がれずに残った碁盤目の数を数えた。評価方法としては、セロファンテープを常に新しいものにして、5回剥離試験を行い、1回でも50個以上の碁盤目で反射防止層が剥離した場合は、実用性がないと判断した。
【0182】
(干渉縞の有無)
フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用いて、反射防止フィルムにおける干渉縞の有無を目視にて検査した。干渉縞の発生が全く見えないもの、あるいはぼんやり見えるものは問題ないと判断し、はっきり見えるものを不良と判断した。
【0183】
実施例1−1で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.6%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0184】
実施例1−2で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.8%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0185】
実施例1−3で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.6%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0186】
実施例2−1で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が80nm、凸部の高さが88nm、本体部が曲率をもたないテーパー形状からなり、そのテーパー角度が67°、先端部の形状が半径1nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は1.0%であった。外観も白くなく、実用に耐えうるものであった。また、スティッキングは発生しておらず、布拭きでも損傷は抑えられ、反射防止層と光透過性基板との密着性も問題なく、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
【0187】
比較例で得られた反射防止フィルムの表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。反射防止層と光透過性基材の密着性が悪く、金型からの抜け性が悪かった。そのため、5°正反射率は測定できず、外観も白く、実用に耐えうるものではなかった。また、干渉縞の発生も認められた。
【符号の説明】
【0188】
1 … 光透過性基板
2 … 易接着層
3 … 反射防止層
4 … 基底部
5 … 微細凹凸
5a … 本体部
5b … 先端部
6 … ハードコート層、プライマー層または帯電防止層
7 … 粘着層
8 … 保護層
10 … 反射防止フィルム
11 … 金属基体
11’ … 金属酸化膜
20 … 反射防止フィルム製造用金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成された易接着層と、前記易接着層上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであって、
前記易接着層が、前記光透過性基板の屈折率と、前記反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、
前記反射防止層が、前記易接着層上に形成された基底部と、前記基底部上に形成され、前記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ前記微細凹凸における凸部が、前記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、前記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記易接着層および前記反射防止層の間に、機能層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記機能層が、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記本体部の縦断面における前記光透過性基板に対するテーパー角度が50°〜87°の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記本体部の高さが60nm〜1400nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成された易接着層と、前記易接着層上に形成され、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムであって、
前記易接着層が、前記光透過性基板の屈折率と、前記反射防止層の屈折率との平均となる屈折率を有し、
前記反射防止層が、前記易接着層上に形成された基底部と、前記基底部上に形成され、前記凹凸形状からなる微細凹凸とを有し、かつ前記微細凹凸における凸部が、前記光透過性基板に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、前記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とから構成されてなることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記易接着層および前記反射防止層の間に、機能層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記機能層が、ハードコート層、プライマー層または帯電防止層であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記本体部の縦断面における前記光透過性基板に対するテーパー角度が50°〜87°の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記本体部の高さが60nm〜1400nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−128168(P2012−128168A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279281(P2010−279281)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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