説明

反応処理装置

【課題】隣接する加熱部からの熱拡散が生じた場合であっても温度制御を高精度で行うことができる反応処理装置を提供する。
【解決手段】温度制御部であるCPUにおける処理は、温度サイクルを含み、温度サイクルはディネーチャ処理における第1の温度保持制御と、ディネーチャ処理からアニーリング処理に遷移する降温処理における降温制御とアニーリング処理における第2の温度保持制御と、アニーリング処理からエクステンション処理に遷移する第1の昇温処理における第1の昇温制御と、エクステンション処理における第3の温度保持制御と、エクステンション処理からディネーチャ処理に遷移する第2の昇温処理における第2の昇温制御と、を含み、降温制御または昇温制御において、温度検出素子で検出された温度と目標温度とが同じ場合、次の処理である温度保持制御に移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子増幅を行うPCR法に適用可能な反応処理装置に関するものである。より詳しくは、高精度の温度制御が可能な反応処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度条件に基づいて反応を制御する必要がある場合には、その温度条件をより高精度に制御できることが望まれる。液体、固体、気体に関わらず反応を行う反応処理装置において高精度に温度制御可能であることが望まれる。たとえば、遺伝子解析等の技術分野でもこのような要請はある。
【0003】
一例として、遺伝子増幅を行うPCR法(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)を用いる場合が挙げられる。PCR法は、微量核酸の定量分析の標準的手法ともいえる。
【0004】
PCR法は、「熱変性→プライマーとのアニーリング→ポリメラーゼ伸長反応」という増幅サイクルを連続的に行うことで、DNA等を数十万倍にも増幅させることができる。
このようにして得られるPCR増幅産物をリアルタイムでモニタリングして前記微量核酸の定量分析を行うこともできる。
【0005】
しかし、PCR法では前記増幅サイクルを正確に制御することが必要である。そのためには高精度の温度制御が必要となる。
温度制御が不十分である場合には、無関係なDNA配列を増幅してしまったり、増幅が全く見られなかったりする。
【0006】
このように、前記した装置等については、いずれも反応処理装置として高精度の熱制御ができることが重要となる。これに関する技術として、特許文献1や特許文献2には前記反応処理装置の温度制御に関する技術が開示されている。
また、微小領域の発熱制御として半導体素子等を用いることも行われており、半導体素子を用いることにより複数のヒータ素子をマトリクス状に配列することができる。特許文献3にマトリクス配列に関する技術が開示されている。特許文献4にPCRの反応制御に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−298068号公報
【特許文献2】特開2004−025426号公報
【特許文献3】特開2003−180328号公報
【特許文献4】特開2006−238759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反応処理装置において、半導体素子または抵抗加熱体を微小領域の発熱制御として使用しかつ、マトリクス状に配列した場合において、隣接するヒータから熱拡散がおこる。
【0009】
図1は熱拡散の様子を示している。
【0010】
図1には、ヒータ(A)1とヒータ(B)2とヒータ(C)3に対して同時に温度上昇させたときのヒータ(A)1とヒータ(B)2の間の温度プロファイルを示している。
熱拡散によりヒータ(A)1とヒータ(B)2の中間点Xの温度が上昇している。さらにヒータ(A)1のピーク温度(ピークA)よりもヒータ(B)2のピーク温度(ピークB)の温度のほうが高くなっている。これはヒータ(B)2はヒータ(A)1およびヒータ(C)3の両方から熱拡散の影響を受けるためである。
【0011】
このような熱拡散の発生により以下のような問題点があった。
ヒータに対して行った設定温度よりも実際の温度が高くなり、温度制御が正確にできなくなってしまう。
熱拡散の影響が起こらないようにヒータ間の間隔を広げるとマトリクス全体の面積が大きくなってしまう。
マトリクス上に配置されたヒータを個別に制御する場合、その配置された場所により熱拡散の度合いが異なり個別の温度制御が困難になる。
【0012】
本発明は、隣接する加熱部(ヒータ)からの熱拡散が生じた場合であっても温度制御を高精度で行うことができる反応処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点は、複数の反応領域と、前記反応領域ごとに配置された複数の加熱部と、前記加熱部により加熱される反応領域以外の領域を冷却する冷却部と、を有し、前記加熱部は、ヒータと温度検出素子を含み、前記温度検出素子より温度を検出する検出手段と、検出された温度情報に基づいて前記ヒータの温度を制御する温度制御手段と、を有し、前記温度制御手段における処理は、温度サイクルを含み、当該温度サイクルはディネーチャ処理における第1の温度保持制御と、ディネーチャ処理からアニーリング処理に遷移する降温処理における降温制御とアニーリング処理における第2の温度保持制御と、アニーリング処理からエクステンション処理に遷移する第1の昇温処理における第1の昇温制御と、エクステンション処理における第3の温度保持制御と、エクステンション処理からディネーチャ処理に遷移する第2の昇温処理における第2の昇温制御と、を含む。
【0014】
本発明の第2の観点は、複数の反応領域と、前記反応領域ごとに配置された複数の加熱部と、前記加熱部により加熱される反応領域以外の領域を冷却する冷却部と、を有し、前記加熱部は、ヒータと温度検出素子を含み、前記温度検出素子より温度を検出する検出手段と、検出された温度情報に基づいて前記ヒータの温度を制御する温度制御手段と、を有し、前記温度制御手段における処理は、ディネーチャ処理における第1の温度保持制御と、ディネーチャ処理からアニーリング処理に遷移する降温処理における降温制御と、アニーリング処理およびエクステンション処理おける第2の温度保持制御と、エクステンション処理からディネーチャ処理に遷移する昇温処理における昇温制御と、を含む。
【0015】
好適には、前記温度制御手段は、前記温度検出素子より温度を検出する検出処理と、ヒータ制御量を計算する計算処理と、前記ヒータを制御するヒータ制御処理と、冷却部を制御する冷却部制御処理と、を行う。
【0016】
好適には、前記温度制御手段は、前記温度検出素子より温度を検出する検出処理は、前記温度検出素子に印加する電流値を制御する電流値制御処理と、前記温度検出素子の電圧値をアナログディジタルコンバータにより変換する変換処理と、を行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣接する加熱部(ヒータ)からの熱拡散が生じた場合であっても温度制御を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】熱拡散の様子を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る反応処理装置を示す概念図である。
【図3】本実施形態に係る反応処理装置における加熱部の構成例を概念的に示す図である。
【図4】本実施形態に係る反応処理装置における制御装置の温度制御フィードバックを行うシステム構成図である。
【図5】本実施形態で使われる制御パラメータの一例を示している。
【図6】本実施形態の基本的なフィードバック制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】PCR反応処理制御の動作について説明するためのフローチャートである。
【図8】本実施形態の制御処理(フェーズ)の一覧を示す図である。
【図9】温度測定用ポテンショメータ設定フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
【図10】ADデータ取得フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
【図11】ヒータ制御量計算処理フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
【図12】本実施形態における制御サブフェーズの一例を示す図である。
【図13】ペルチェ制御フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
【図14】ヒータ制御フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態に係るヒータマトリクス装置の一構成例を示す図である。
【図16】本実施形態に係るヒータマトリクス装置におけるヒータユニットの第1の構成例を示す回路図である。
【図17】図16の回路動作の一状態を示す回路図である。
【図18】図16の回路動作の別の一状態を示す回路図である。
【図19】図16に示す回路構成の変形例を示す回路図である。
【図20】図16に示す回路構成の別の変形例を示す回路図である。
【図21】図16に示す回路構成の更に別の変形例である回路図である。
【図22】図16に示す回路構成の更に別の変形例である回路図である。
【図23】図16の具体的な構成例を示す回路図である。
【図24】図23回路構成の別の変形例を示す回路図である。
【図25】図16の回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【図26】図25のヒータユニットを有するヒータマトリクス装置の構成例を示す図である。
【図27】図16の回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【図28】図16の回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【図29】本発明の実施形態に係る温度検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【図30】本実施形態に係る温度検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【図31】暗電流の温度依存性を示す図である。
【図32】PINダイオードに一定の順方向電流を流したときにPINダイオードの順方向電圧と温度との関係を示す図である。
【図33】本発明の実施形態に係る蛍光検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【図34】本実施形態に係る蛍光検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【図35】本発明の実施形態に係るヒータ温度検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【図36】本実施形態に係るヒータ温度検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【図37】ヒータユニットのヒータ電流と温度検出ユニットのPINダイオードの電流に応じた検出電圧の関係を示す図である。
【図38】本発明の実施形態に係る温度蛍光検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【図39】本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【図40】本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットおいて、温度検出と蛍光検出時のスイッチとしての各トランジスタの状態を示す図である。
【図41】本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットの温度検出動作を説明するための図である。
【図42】本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットの蛍光検出動作を説明するための図である。
【図43】蛍光検出処理の一例を説明するための図である。
【図44】本発明の実施形態に係るヒータ温度検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【図45】本実施形態に係るヒータ温度蛍光検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
添付図面に示された各実施形態は、本発明に係る代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
以下に使用する図面では、説明の便宜上、装置の構成等については簡素化して示している。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る反応処理装置を示す概念図である。
【0021】
この反応処理装置のサイズや層構造等は、目的に応じて適宜選択可能であり、反応処理装置10の形態構成についても本発明の目的に沿う範囲で設計または変更可能である。
【0022】
本反応処理装置10は、図2に示すように、ウェル基板11、ヒータ基板12、加熱部(ヒータ)13、ウェル基板11に形成された反応領域14、冷却部15、および放熱器16を有している。
このように、反応処理装置10は、複数の反応領域14を有するウェル基板11と、反応領域14を加熱する加熱部13と、を備えている。
冷却部15は吸熱源として、ペルチェ素子を用いている。冷却部15が吸熱される過程において蓄積される熱量を放出するために放熱器16が設置されている。
【0023】
反応領域14では、所定の反応をそれぞれの反応領域ごとに行うことができる。
反応領域14は、複数の反応を行うことができるため、たとえば、反応領域14ごとに反応条件を変化させて網羅的な解析を行うこともできる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る反応処理装置における加熱部の構成例を概念的に示す図である。
【0025】
本実施形態においては、図3に示すように、反応処理装置10において、各反応領域14をマトリクス状に配置し、各反応領域に対応した加熱部13を設ける構成とし、X方向とY方向に沿ってマトリクス状に配置させている。
このような構成とすることで、各半導体発熱素子20を一括制御することができる。
【0026】
図4は、本実施形態に係る反応処理装置における制御装置の温度制御フィードバックを行うシステム構成図である。
【0027】
このシステムは、加熱部(ヒータ)13を構成する半導体発熱素子20および温度検出素子21の発熱量および温度検出のフォードバックを実現するために、電流制御回路22、ディジタルポテンショメータ23、制御部(CPU)24、アナログディジタルコンバータ(ADC)25、温度検出回路26、温度測定用ポテンショメータ27、定電流回路28、および記憶装置29を有する。
【0028】
CPU24は内部に記憶装置29を備えており、この記憶装置29に温度情報等のパラメータを格納することができる。記憶装置29はCPU24の外部にあっても同様の制御が可能である。
【0029】
温度制御手段としてのCPU24における処理は、温度サイクルを含み、この温度サイクルはディネーチャ処理における第1の温度保持制御と、ディネーチャ処理からアニーリング処理に遷移する降温処理における降温制御とアニーリング処理における第2の温度保持制御と、アニーリング処理からエクステンション処理に遷移する第1の昇温処理における第1の昇温制御と、エクステンション処理における第3の温度保持制御と、エクステンション処理からディネーチャ処理に遷移する第2の昇温処理における第2の昇温制御と、を含む。
【0030】
また、CPU24における処理は、ディネーチャ処理における第1の温度保持制御と、ディネーチャ処理からアニーリング処理に遷移する降温処理における降温制御と、アニーリング処理およびエクステンション処理おける第2の温度保持制御と、エクステンション処理からディネーチャ処理に遷移する昇温処理における昇温制御と、を含む。
【0031】
なお、温度制御手段には、アナログディジタルコンバータを含む。
【0032】
また、CPU24は、温度検出素子21より温度を検出する検出処理と、ヒータ制御量を計算する計算処理と、ヒータ13を制御するヒータ制御処理と、冷却部15を制御する冷却部制御処理と、を行う。
【0033】
また、CPU24は、温度検出素子21より温度を検出する検出処理は、温度検出素子21に印加する電流値を制御する電流値制御処理と、温度検出素子21の電圧値をアナログディジタルコンバータ25により変換する変換処理と、を行う。
【0034】
図5は、本実施形態で使われる制御パラメータの一例を示している。
制御パラメータには、反応方式、1サイクル時間や保持時間等の時間に関するもの、アニール温度等の各種温度に関するもの、ヒータの制御オン、オフ、ループ回数、制御フェーズ、ヒータ出力値等が含まれる。
【0035】
図6は、本実施形態の基本的なフィードバック制御を説明するためのフローチャートである。
ここで、本実施形態の基本的なフィードバック制御の動作について図6のフローチャートに関連付けて説明する。
【0036】
PCR反応制御(S40)は一定時間毎に周期的に処理が行われる。その周期時間が経過したどうかを判断(S10)し、周期がきた場合制御フェーズパラメータを温度測定用ポテンショメータ設定フェーズに変更する(S20)。
そして、制御パラメータとして制御フェーズデータを格納する(S30)。
【0037】
図7は、PCR反応処理制御の動作について説明するためのフローチャートである。
図8は本実施形態の制御処理(フェーズ)の一覧を示している。
ここで、PCR反応処理制御の動作について図7のフローチャートに関連付けて説明する。
【0038】
どの制御フェーズに位置しているかを制御パラメータS100内の制御フェーズデータを取得(S110)することにより、各フェーズの処理を行う。
まず、制御中フェーズであるか否かの判定を行う(S120)。
制御中フェーズでない場合には、制御フェーズの種類を確認する(S130)。
【0039】
温度測定用ポテンショメータ設定の場合には、制御フェーズを温度測定用ポテンショメータ設定中フェーズへ変更する(S140)。
そして、温度測定用ポテンショメータを設定する(S190)。
【0040】
PINダイオードのアナログデータからディジタルデータに変換したAD値取得の場合には、制御フェーズをAD値取得中フェーズへ変更する(S150)。
そして、AD値を受信する(S200)。
【0041】
ヒータ制御量計算の場合には、制御フェーズをヒータ制御量計算中フェーズへ変更する(S160)。
そして、ヒータ制御量計算処理を行う(S210)。
【0042】
ヒータ制御の場合には、制御フェーズをヒータ制御中フェーズへ変更する(S170)。
そして、ヒータ制御処理を行う(S220)。
【0043】
ペルチェ制御の場合には、制御フェーズをペルチェ制御中フェーズへ変更する(S180)。
そして、ペルチェ制御処理を行う(S230)。
【0044】
図9は、温度測定用ポテンショメータ設定フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
ここで、温度測定用ポテンショメータ設定フェーズの動作について図9に関連付けて説明する。
【0045】
制御するヒータを選定する(S310)。
選定されたヒータの温度を測定するためヒータと同じセル内の温度検出素子に接続された温度測定用ポテンショメータを設定する(S320)。
温度測定用ポテンショメータの設定が終了後、制御パラメータをADデータ取得フェーズへ変更する(S330)。
【0046】
図10は、ADデータ取得フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
ここで、ADデータ取得フェーズの動作について図10のフローチャートに関連付けて説明する。
【0047】
アナログディジタルコンバータ(ADC)に指令を送り、アナログディジタル変換を開始させる(S340)。
AD変換終了後、アナログディジタルコンバータよりディジタルデータを取得する(S350)。
データを取得後、制御フェーズをヒータ制御量計算フェーズへ変更する(S360)。
【0048】
図11は、ヒータ補正量計算処理フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
ここで、ヒータ補正量計算処理フェーズの動作について図11のフローチャートに関連付けて説明する。
【0049】
制御パラメータから温度情報と制御サブフェーズを取得する(S410)。
制御サブフェーズとは、ヒータ出力を算出する際に、PCR反応における制御ステップを示すものである。
図12は、本実施形態における制御サブフェーズの一例を示している。
【0050】
現在の温度と目標温度と違いがあるかどうかを判断する(S430)。
現在の温度と目標温度に違いがある場合、目標温度と現在温度と差よりヒータの最適なヒータ出力値を計算する(S440)。
現在の温度と目標温度に違いがない場合、制御サブフェーズが温度保持フェーズであるかどうかを判断する(S450)。
制御サブフェーズが温度保持フェーズである場合、制御サブフェーズを次のフェーズに変更し制御パラメータへ格納する(S480)。
制御サブフェーズが温度保持フェーズでないまたは、ステップS440が終了またはステップS450が終了した場合、ヒータ出力を制御パラメータへ格納する(S460)。
ステップS430からステップS460のステップを制御するヒータの数だけ繰り返す(S420)。
制御フェーズをペルチェ制御フェーズに変更する(S470)。
【0051】
図13は、ペルチェ制御フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
ここで、ペルチェ制御フェーズの動作について図13のフローチャートに関連付けて説明する。
【0052】
制御パラメータからペルチェ設定温度と現在のペルチェ温度を取得する(S510)。
目標ペルチェ温度と現在ペルチェ温度よりペルチェ出力を計算する(S520)。
ステップS510、S520で取得したペルチェ設定温度と現在のペルチェ温度からペルチェの最適温度を設定する(S530)。
ペルチェ設定温度を制御パラメータへ格納する(S540)。
制御フェーズをヒータ制御フェーズに変更する(S550)。
【0053】
図14は、ヒータ制御フェーズの動作について説明するためのフローチャートである。
ここで、ヒータ制御フェーズの動作について図14のフローチャートに関連付けて説明する。
【0054】
制御パラメータからヒータ設定値を取得する(S610)。
各ヒータに設定値を出力する(S620)。
具体的な出力方法を図4に関連付けて説明すると、CPU24はディジタル値としてディジタルポテンショメータ23へ出力する。ディジタルポテンショメータ23と電流制御回路22によって、加熱部13は所定の温度に制御される。
【0055】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、温度検出素子21を用いて検出された温度情報によって温度制御フィードバックを行うことで、より高精度の温度制御を行うことができる。
図1のような熱拡散が起こった場合、温度検出素子21が設定値以上の発熱であることを観測し、ヒータ20の設定値を速やかに変更することができる。またヒータ20個々に温度検出素子21を備え、かつ個々に独立して制御をおこなっているため、マトリクス構成した場合においても場所によらず、すべてのヒータ20が正確に制御できる。
【0056】
次に、上記したヒータ制御法が適用でき、PCR法を採用する反応処理装置10に適用可能な熱制御マトリクス装置について説明する。
PCR法を採用する反応処理装置としては、たとえば遺伝子発現量を検出するリアルタイムPCR装置がある。
【0057】
PCR装置は、基本的には半導体発熱部(ヒータ)20、温度検出部(素子)21の他に蛍光検出部を備える。
【0058】
PCR装置においては、反応信号として加熱部であるTFT基板の上部あるいは下部などの近傍にて積層する別の機能部にて信号検出する構成をとる場合に、反応信号である蛍光を検出するにあたり、直接検出する際には、蛍光検出を遮断する弊害のない光透過性を有し、かつ比較的大型の透明絶縁基板(たとえばガラス)上にヒータマトリクスを構成することが望ましい。
この場合、半導体素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称することがある)を使用することがコスト面、製造プロセスなどから好適である。
ただし、TFTは一般に、単結晶の半導体素子と比較して、より製造ばらつきや経時変化が大きいことが知られている。
【0059】
より具体的には、PCR装置におけるヒータとしては、大型のガラス基板上に電流駆動能力が比較的高いTFTを形成できる、低温ポリシリコンプロセスを利用するのが好適である。低温ポリシリコンプロセスでは通常、ガラス基板上にアモルファスシリコン膜を形成した後、基板の熱変形を避けるため、レーザアニール法によって結晶化が行われる。
ただし、大きなガラス基板に均一にレーザエネルギーを照射することは容易ではなく、ポリシリコンの結晶化の状態が基板内の場所によってばらつきを生ずることが避けられない。この結果、同一基板上に形成したTFTでも、そのVth(しきい値)が場所によって数百mV、場合によっては1V以上ばらつくこともまれではない。このようなTFTを使用する場合、既存の技術では高精度かつ高信頼なPCR反応装置を構成することが困難である。
そこで、以下に示す実施形態においては、透明絶縁基板上の形成された薄膜トランジスタを用いて高精度な温度制御な可能なPCR装置を実現するための、熱制御マトリクス装置を実現している。
【0060】
具体的には、以下に説明する実施形態においては、TFTによりカレントコピーあるいはカレントミラーによりヒータユニットを構成することで、高精度な温度制御を可能とし、さらには、いわゆるPINダイオードを温度センサとして用いて、フィードバックを行うことで、かつ並行PINダイオードにて増幅反応信号として蛍光検出を実現することにより、高精度な網羅解析を可能とする。
【0061】
本実施形態に係る熱制御マトリクス装置は、たとえば上述したPCR1の加熱部13、温度検出部、および蛍光検出部として適用可能である。
以下、熱制御マトリクス装置の実施形態として、発熱量が制御可能な加熱部(発熱部)として適用可能なヒータマトリクス装置、温度検出部として適用可能な温度検出マトリクス、蛍光検出部として適用可能な蛍光検出マトリクス装置、温度検出マトリクス装置の機能と蛍光検出部としての機能を併せ持つ温度蛍光検出マトリクス装置、ヒータマトリクス装置の機能と温度検出マトリクス装置の機能とを併せ持つヒータ温度検出マトリクス装置、およびヒータマトリクス装置の機能と温度蛍光マトリクス装置としての機能を併せ持つヒータ温度蛍光検出マトリクス装置、を例にとり順を追って説明する。
【0062】
まず、ヒータマトリクス装置について説明する。
【0063】
<ヒータマトリクス装置>
図15は、本発明の実施形態に係るヒータマトリクス装置の一構成例を示す図である。
【0064】
このヒータマトリクス装置100は、図15に示すように、ヒータユニット110がm×nのマトリクス状に配列されたセルアレイ部101、データ線駆動回路(DTDRV)102、走査線駆動回路(WSDRV)103、ヒータユニット110に発熱量情報を与えるためのデータ線DTL101〜DTL10m、およびヒータユニット110を選択し、発熱力情報を書き込み、書き込まれた発熱量情報に応じた電流を流すための走査線WSL101〜WSL10mを有する。
【0065】
データ線駆動回路102は、走査線駆動回路103の走査線WSL101〜WSL10mの駆動タイミングに同期して、各データ線DTL101〜DTL10nに信号電流を印加することで、各加熱部としてのヒータユニット110に対して行単位で発熱量情報を書き込む。
走査線駆動回路103は、走査線WSL101〜WSL10mを順次選択してパルス駆動する。走査線駆動回路103は、走査線WSL101〜WSL10mを駆動することにより、ヒータユニット110が発熱量情報を取得するタイミングを制御する。
走査線駆動回路103は、ヒータユニット110における発熱量情報の書き込み終了後、走査線WSL101〜WSL10mを非選択にすることで、信号電流と同じ電流値の駆動電流を各発熱部(ヒータユニット)に流し続けることができる。
このようにして、前記各ヒータユニット110に所望の大きさの電流を流すことができ、その結果、所望の熱量を発生させることができる。
【0066】
なお、データ線駆動回路102は、図示しない温度検出制御系により供給される制御信号CTLに応じた発熱量情報を信号電流として各データ線DTL101〜DTL10nに転送することにより、各ヒータユニット110の発熱量を制御可能である。
換言すれば、ヒータユニット110の発熱量は、書き込まれる発熱量情報により制御される。
【0067】
次に、ヒータユニット110の具体的な構成例について説明する。
【0068】
図16は、本実施形態に係るヒータマトリクス装置におけるヒータユニットの第1の構成例を示す回路図である。図17は、図16の回路動作の一状態を示す回路図である。図18は、図16の回路動作の別の一状態を示す回路図である。
【0069】
図16のヒータユニット110は、nチャネル絶縁ゲート型トランジスタにより形成されるトランジスタT111、スイッチSW111,SW112,SW113、キャパシタC111、およびノードND111,ND112,ND113を有する。
なお、図において、符号gはトランジスタのゲートを、符号dはドレインを、符号sはソースを示している。符号CsはキャパシタC111の容量を示している。
【0070】
ヒータユニット110において、駆動トランジスタとして機能するトランジスタT111のドレインdがノードND111に接続され、ゲートgがノードND112に接続され、ソースsがノードND113に接続されている。そして、ノードND113が接地電位GNDに接続されている。
スイッチSW111が、信号電流Isigが伝搬されるデータ線DTLとノードND111との間に接続されている。スイッチSW112がノードND111とノードND112との間に接続されている。スイッチSW113がノードND111と電源電位VDDとの間に接続されている。
キャパシタC111は、第1電極がノードND112に接続され、第2電極がノードND113(または接地電位GND)に接続されている。
【0071】
ヒータユニット110において、スイッチSW111およびSW112は走査線WSL101〜WSL10mのレベルに応じて同相でオン、オフされる。
スイッチSW113は、走査線WSL101〜WSL10mのレベルに応じて、スイッチSW111,SW112と相補的にオン、オフされる。
【0072】
これらの構成要素のうち、スイッチSW111,SW112が、走査線WSLが選択された状態においてデータ線DTLに与えられた発熱量情報を取り込む受け入れ部として機能する。
キャパシタC111が、走査線が非選択となった後も発熱量情報を保持する保持部として機能する。
そして、トランジスタT111およびスイッチSW113が、書き込まれた発熱量情報に基づいて電流を流し、それに応じた熱量を発生する駆動部として機能する。
【0073】
ヒータユニット110において、駆動電流は、電源電位VDDと接地電位GNDとの間を、トランジスタT111、スイッチSW113を介して流れる。
そして、トランジスタT111とスイッチSW113の抵抗成分によって発生するジュール熱を熱源として使用することができる。
なお、トランジスタT111をnチャネルとしたのは一例であり、本発明ではpチャネルのトランジスタも適宜使用することができる。
【0074】
本実施形態においては、データ線DTLから伝達される加熱量情報は信号電流Isigであり、この信号電流を信号電圧に変換して熱制御する回路構成とすることが望ましい。以下、図16の回路の動作について、図17および図18に関連付けて説明する。
【0075】
図17は、ヒータユニット110に電流レベルの形の加熱量情報(すなわち、信号電流)を書き込む動作を示している。この書き込み動作においては、スイッチSW111,SW112がオン状態であり、スイッチSW113がオフ状態である。
【0076】
トランジスタT111は、ドレインdとゲートgがスイッチSW112によって短絡された状態であり信号電流Isigが流れる(図17参照)。
その結果、信号電流Isigの値に応じたゲート・ソース間の信号電圧Vgsが発生する。
【0077】
そして、トランジスタT111がエンハンスメント型トランジスタ(即ち、しきい値Vth>0)であれば、飽和領域で動作し、信号電流Isigと信号電圧Vgsとの間にはよく知られた下記の式(1)が成立する。
【0078】
[数1]
Isig = μ・Cox・W/L/2・(Vgs−Vth) (1)
【0079】
ここで、μはキャリアの移動度、COXは単位面積当たりのゲート容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長をそれぞれ示している。
【0080】
回路が安定した時点でスイッチSW112をオフ状態とすると、ゲート・ソース間電圧VgsがキャパシタC111に保持されるので、スイッチSW111をオフ状態とすることで信号書き込み動作が完了する。
【0081】
その後、任意のタイミングで、図18に示すように、スイッチSW113をオン状態とすると、電源電圧VDDから接地電位GNDに向かって電流が流れる。このとき、トランジスタT111が飽和領域で動作するように、電源電圧VDDを十分に高く、スイッチSW113のオン抵抗を十分に低く設定すれば、トランジスタT111に流れる駆動電流Idrvは、ドレイン・ソース間電圧Vdsには依存せず下記式(2)で与えられる。そして、この駆動電流Idrvは、前記信号電流Isigに一致する。
【0082】
[数2]
Idrv = μ・Cox・W/L/2・(Vgs−Vth) (2)
【0083】
すなわち、前記式(1)、(2)の右辺に表れる各パラメータは、一般に基板毎に、あるいは同一基板内であっても場所ごとにばらつくが、図17や図18に示した駆動を行うことで、これらの各パラメータの値に関係なく、信号電流Isigと駆動電流Idrvとが一致する。
【0084】
そして、前記信号電流Isigはヒータマトリクス装置外部の制御回路等によって、正確な値で生成することが可能であるから、図16のヒータユニット回路から発生するジュール熱は、トランジスタの特性のばらつき等に影響を受けず、電源電圧VDDと信号電流Isigとの積(VDD×Isig)で決まる正確な値とすることができる。
【0085】
図19は、図16に示す回路構成の変形例を示す回路図である。
【0086】
図19に示す回路は、図16とスイッチSW112の接続関係等が相違する。具体的には、スイッチSW112は、ノードND111とノードND112との間ではなく、データ線DTLとノードND112との間に接続されている。
図19の回路の場合、ノードND112とデータ線DTLとの接続関係は、図16の場合と、スイッチSW111、ノードND111を介するか否かで、回路動作的には、図16と等価である。
図19に示す回路は、図16に示す回路と同様に、信号書き込み時にはスイッチSW111とスイッチSW112をオン状態にし、スイッチSW113をオフ状態とする。
そして、発熱動作時には、スイッチSW111とスイッチSW112をオフ状態にし、スイッチSW113をオン状態とする。
図19の回路も図16の回路と同様の機能を発揮することができる。
【0087】
図20は、図16に示す回路構成の別の変形例を示す回路図である。
【0088】
図20では、トランジスタT111としてpチャネルトランジスタを用いており、電流の向きが逆転している点等で図16の回路と相違する。
図20の回路の場合、トランジスタT111のソースsが電源電位VDD(ノードND113)に接続され、ドレインdがノードND111に接続され、スイッチSW113がノードND111と接地電位GNDとの間に接続されている。
図20の回路は、原理的には図16の回路と共通するものであり、同様の機能を発揮することができる。
【0089】
本発明において、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(低温ポリシリコンTFT)ではpチャネル絶縁ゲート型トランジスタ(PMOS)を用いることが好適である。低温ポリシリコンTFTでは、PMOSの方が、特性が安定している点で望ましい。
【0090】
図21は、図16に示す回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【0091】
図21の回路では、各スイッチSW111,SW112,SW113の制御は図16の回路と共通するが、トランジスタT111のソース側から信号電流Isigを引き出す点等で相違する。
図21の回路の場合、トランジスタT111はnチャネルトランジスタであるが、トランジスタT111のドレインdが電源電位VDDに接続され、ドレインdがノードND111に接続され、スイッチSW113がノードND111と接地電位GNDとの間に接続されている。
図21の回路は、ゲート・ドレイン間を短絡した状態で信号電流Isigを流し、それに応じて発生したゲート・ソース間電圧VgsをキャパシタC111に保持させるという動作原理は、図16の回路と共通するものであり、同様の機能を発揮することができる。
【0092】
図22は、図16に示す回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【0093】
図22の回路では、図16の回路構成に、トランジスタT112、スイッチSW114、キャパシタ112を追加した点等で相違する。スイッチSW114は、スイッチSW112と同様にオン、オフが制御される。
トランジスタT114のゲートがノードND114に接続され、ドレインがノードND113に接続され、ソースが接地電位GNDに接続されている。そして、スイッチSW114はノードND113とノードND114との間に接続され、キャパシタC112の第1電極がノードND114に接続され、第2電極が接地電位GNDに接続されている。
この回路の動作を以下に説明する。
【0094】
図16の回路において、信号電流Isigは式(1)によって与えられ、駆動電流Idrvは式(2)によって与えられ、信号電流Isigと駆動電流Idrvが一致することは既に述べた。このことは、たとえば、MOSトランジスタに流れる電流が、飽和領域動作においてはドレイン・ソース間電圧Vdsにはよらず、ゲート・ソース間電圧Vgsによってのみ決定されるという基本動作に沿うものである。
【0095】
しかるに、現実のトランジスタでは、ドレイン・ソース間電圧Vdsが増加すると、ドレイン・ソース間電流Idsも多少増加するのが普通である。この現象は、ドレインの電位がチャネルの導電状態に影響を与えるバックゲート効果や、ドレイン端の空乏層(欠乏層)がソース側に伸びることで実効的なチャネル長Lが短くなるショートチャネル効果等が原因であると考えられる。
【0096】
図16の回路を例にして説明すると、比較的小さな信号電流Isigを書き込む場合には、式(1)によって発生するゲート・ソース間電圧Vgsは比較的小さな値となり、ドレイン・ソース間電圧Vdsはゲート・ソース間電圧Vgsと等しい小さな値となる。
【0097】
一方、駆動時には、駆動電流Idrvが小さいためにスイッチSW113での電圧降下が小さく、トランジスタT111のドレイン・ソース間電圧Vdsは書き込み時より大きな値となる。このように、書き込み時と駆動時でのトランジスタT111のドレイン・ソース間電圧Vdsは一般に一致しない。したがって、信号電流Isigと駆動電流Idrvも厳密には一致しない。このことが、所望の加熱量が得られない原因となる場合がある。
【0098】
これに対して、図22に示す回路構成の動作を考える。
たとえば、トランジスタT111については、図16の回路と同様に、書き込み時と駆動時とでトランジスタT111のドレイン・ソース間電圧Vdsは一般に一致しない。
しかし、たとえば駆動時のドレイン・ソース間電圧Vdsが大きい場合、信号電流Isigよりも駆動電流Idrvの方が大きくはなるものの、トランジスタT112が飽和状態で動作していれば(言い換えれば、定電流源に近い動作をしていれば)、その微分抵抗は非常に大きい値となる。
【0099】
これによって、駆動電流Idrvが僅かに増加しただけでもトランジスタT111のソース電位が大きく上昇する。これは、トランジスタT111のゲート・ソース間電圧Vgsを減少させ、駆動電流Idrvを減少させる方向に作用する。結果として、駆動電流Idrvは信号電流Isigに対してあまり増加することができず、信号電流Isigと駆動電流Idrvとの一致性は図16の例よりも良好になる。
【0100】
図23は、図16の具体的な構成例を示す回路図である。
【0101】
図23の回路は、3個のスイッチSW111,112はpチャネルトランジスタT113,114により形成され、スイッチSW113はnチャネルトランジスタT115により構成されている。
これら3個のトランジスタT113〜T115のゲートが走査線WSLに共通に接続される。そして、この走査線WSLが低レベルのときに信号書き込み動作を行い、高レベルのときに駆動動作を行うようにさせることができる。
後述するように、本発明において、トランジスタT113,T114,T115の各ゲートを共通接続しない形態とすることもできるが、構造が簡易である点で図22の回路図とすることが好適である。
【0102】
図24は、図23の回路構成の別の変形例を示す回路図である。
【0103】
図24に示す回路構成はトランジスタT114a,T114bを有する点等が、図23に示す回路構成と相違する。
【0104】
一般にTFTは製造過程等で欠陥が生じやすく、たとえば、スイッチトランジスタがオフ状態において微小なリーク電流を流す不具合が確率的に発生する。
図23の回路では、トランジスタT114にリーク電流が生じた場合、リーク電流によってキャパシタC111に保持された電圧が変化する。そのため、正しい発熱状態を維持することができない状況が発生する場合がある。
【0105】
これに対して、図24に示す回路では、図23に用いる1つのトランジスタT114を、直列に接続した2個のトランジスタT114a,T114bで構成しているため、一方に不具合が生じたとしても、全体としては、リーク電流を抑えることができる。
同様に、3個以上のトランジスタを直列に接続することや、トランジスタT113,T115について複数のトランジスタを接続する構成とすることも可能である。
【0106】
図25は、図16の回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
図26は、図25のヒータユニットを有するヒータマトリクス装置の構成例を示す図である。
【0107】
図25に示す回路図は、トランジスタT115の制御をトランジスタT113,T114の制御と独立させた構成例である。
ヒータマトリクス装置100Aは、図15の構成に加えて、トランジスタT115を駆動するための駆動走査線DSL101〜DSL10mおよび駆動線駆動回路104を有する。
【0108】
この場合、信号書き込み時は、書き込み走査線WSL101〜WSL10mと駆動走査線DSL101〜でSL10mとをともに低レベルとする。
書き込み終了後(即ち、書き込み走査線を高レベルとした後)は、任意のタイミングで駆動走査線DSL101〜DSL10mを高レベルとすることで、発熱動作させることができる。
【0109】
逆に、駆動走査線DSL101〜DSL10mを低レベルにすれば、発熱動作を簡便に停止することができるので、速やかに温度を低下させたい場合等に好適である。また、発熱動作時間を調節することも可能であるので、たとえば、信号電流源が小さな電流を正確に生成することが困難である場合であっても、正確な微小発熱動作をさせることができる。
なお、このような動作によって発熱が間欠的になるのを避けたい場合は、発熱量情報が書き込まれてから次の発熱量情報が書き込まれるまでの期間内で、発熱・発熱の停止を複数回繰り返せば、より時間的に安定な発熱が可能である。
【0110】
図27は、図16の回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【0111】
図27では、電源電位線LVDDは走査線WSLと平行に配置されており、図16のスイッチSW113をダイオードD111で形成していること等が特徴である。
信号書き込み時は電源電圧VDDを低レベルにすればダイオードD111がオフ状態となり、駆動時は電源電圧VDDを高レベルにすればダイオードD111がオン状態となるので、ダイオードD111はスイッチとして動作させることができる。
したがって、図27に示す回路構成は、図25に示す回路構成等とも同様の機能を有することができる。
【0112】
図28は、図16の回路構成の更に別の変形例を示す回路図である。
【0113】
図28に示す回路では、信号電流Isigを電圧の形に変換するトランジスタT116と、発熱のための電流を流すトランジスタT111とが別に設けられている点等で図16に示す回路構成と異なる。
トランジスタT116のドレインとゲート同士が接続され、その接続点がノードND111、ND112に接続され、トランジスタT116のソースが接地電位GNDに接続されている。
【0114】
信号書き込み時は、スイッチSW111,SW112がオン状態となり信号電流IsigをトランジスタT116に流す。このとき、下記式(3)が成立する。
【0115】
[数3]
Isig = μ・Cox・W1/L/2・(Vgs−Vth) (3)
【0116】
また、式(3)において、各パラメータの意味は、前記式(1)に準ずるが、トランジスタT116のチャネル幅をWとした。駆動時は、2つのスイッチSW111,SW112はオフ状態となる。
一方、キャパシタC111には、書き込み動作で生じたゲート・ソース間電圧Vgsが保持されているので、トランジスタT111に流れる駆動電流Idrvについては下記式(4)が成立する。
【0117】
[数4]
Idrv = μ・Cox・W2/L/2・(Vgs−Vth) (4)
【0118】
ここで、トランジスタT111のチャネル幅はWであり、トランジスタT116,T111は、微小な加熱部内に形成されるため、パラメータμ、COX、VthはトランジスタT116,T111について事実上等しいものと考える。また、チャネル長Lは等しい値に設計することができる。その結果、式(3),(4)により下記式(5)を導出することができる。
【0119】
[数5]
Idrv/Isig = W2/W1 (5)
【0120】
式(3),(4)の右辺に現れる各パラメータは一般に基板ごとに、あるいは同一基板内であっても場所ごとにばらつく場合があるが、これらのパラメータの値に関係なく、信号電流Isigと駆動電流Idrvの比は、トランジスタT111とトランジスタT116のチャネル幅の比に一致することがわかる。
【0121】
この回路の特徴は、図16の回路とは異なり、信号電流Isigと駆動電流Idrvの比を任意に調節できることにある。たとえば、微小な発熱をさせたい場合、外部回路が微小な電流を発生させることが困難であれば、式(5)の右辺が小さくなるようにチャネル幅を設計すればよい。逆に、微小な信号電流Isigによって、大きな駆動電流Idrvを制御できるよう設計することも容易である。
【0122】
以上、ヒータマトリクス装置について説明した。
次に、温度検出マトリクス装置について説明する。
【0123】
<温度検出マトリクス装置>
図29は、本発明の実施形態に係る温度検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【0124】
この温度検出マトリクス装置200は、図29に示すように、温度検出ユニット210がm×nのマトリクス状に配列されたセルアレイ部201、電流駆動回路(IDRV)202、走査線駆動回路(WSDRV)203、電圧検出器(V)204−1〜204−n、電流駆動線IDL201〜IDL20m、温度検出線TSL(Temperature Sense Line)201〜TSL20m、および検出ユニット210を選択し、温度検出ユニット210の検出信号を温度検出線TSL201〜TSL20mに転送するための走査線SSL201〜SSL20mを有する。
【0125】
図30は、本実施形態に係る温度検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【0126】
温度検出ユニット210は、図30に示すように、PINダイオードD211、スイッチとしてのnチャネルのトランジスタT211,T212、およびノードND211を有する。
【0127】
PINダイオード211のアノード側がノードND211に接続され、カソード側が接地電位GNDに接続されている。
トランジスタT211のソース、ドレインがノードND211および電流駆動線IDLに接続されている。トランジスタT212のソース、ドレインがノードND211および温度検出線TSLに接続されている。
そして、トランジスタT211とT212のゲートが走査線SSLに共通に接続されている。
【0128】
この例では、走査線SSLが高レベルのときにトランジスタT211,T212がオン状態、走査線SSLが低レベルのときトランジスタT211,T212がオフ状態となる。
【0129】
ここで、温度検出ユニット210の基本動作について説明する。
電流駆動線IDLに電流Idetを供給する電流源I211を接続させ、走査線SSLが高レベルのとき、電流駆動線IDLに接続された電流源I211からPINダイオードD211に対して順方向電流Idetが流れる。
これと並行して、温度検出線TSLに電圧検出器204を接続することにより、PINダイオードD211に発生する順方向電圧を検知することができる。電圧検出器204としてはたとえばアナログディジタルコンバータ等を適用可能である。
【0130】
温度検出ユニット210においては、PINダイオードD211にて暗電流をセンシングすることで温度検出を行い、この検出温度に応じて温度、たとえばヒータマトリクス装置における各ヒータユニットの発熱量が制御される。
【0131】
図31は、暗電流の温度依存性を示している。
この特性を利用して検出電流から温度を認識することが可能となる。
【0132】
ここでPINダイオードD211に一定の順方向電流Idetを流したときにPINダイオードD211の順方向電圧(FORWARD VOLTAGE)と温度の間には、図32示すような関係が得られる。
すなわち順方向電圧は温度と直線的に変化しており、PINダイオードD211に接続された温度検出線TSLの順方向電圧を検知することで温度情報を得ることができる。
【0133】
次に、蛍光検出マトリクス装置について説明する。
【0134】
<蛍光検出マトリクス装置>
図33は、本発明の実施形態に係る蛍光検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【0135】
この蛍光検出マトリクス装置300は、図33に示すように、蛍光検出ユニット310がm×nのマトリクス状に配列されたセルアレイ部301、走査線駆動回路(WSDRV)303、逆方向電圧線(Reverse Voltage line)RVL301、蛍光検出線LSL301〜TSL30m、および検出ユニット310を選択し、蛍光検出ユニット310の検出信号を蛍光検出線LSL301〜LSL30mに転送するための走査線SSL301〜SSL30mを有する。
【0136】
図34は、本実施形態に係る蛍光検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【0137】
蛍光検出ユニット310は、図34に示すように、PINダイオードD311、スイッチとしてのpチャネルのトランジスタT311,T312、およびノードND311を有する。
【0138】
PINダイオード311のアノード側がノードND311に接続され、カソード側が接地電位GNDに接続されている。
トランジスタT311のソース、ドレインがノードND311および逆方向電圧線RVLに接続されている。トランジスタT312のソース、ドレインがノードND311および蛍光検出線LSLに接続されている。
そして、トランジスタT311とT312のゲートが走査線SSLに共通に接続されている。
【0139】
この例では、走査線SSLが低レベルのときにトランジスタT311,T312がオン状態、走査線SSLが高レベルのときトランジスタT311,T312がオフ状態となる。
【0140】
ここで、蛍光検出ユニット310の基本動作について説明する。
逆方向電圧線RVLに負の電圧源を接続させ、走査線SSLが低レベルのとき、逆方向電圧線RVLに印加された負の電圧によりPINダイオードD311は逆方向にバイアスされ、逆方向電流IRが流れる。
この逆方向電流Ioutを、蛍光検出線LSLを介して検知することにより蛍光検出することができる。
【0141】
次に、ヒータ温度検出マトリクス装置について説明する。
【0142】
<ヒータ温度検出マトリクス装置>
図35は、本発明の実施形態に係るヒータ温度検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【0143】
図35のヒータ温度検出マトリクス装置400は、図15のヒータマトリクス装置100と図29の温度検出マトリクス装置200を合成した構成を有している。したがって、図35においては、理解を容易にするために、図15および図29と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0144】
このヒータ温度検出マトリクス装置400は、図35に示すように、ヒータ温度検出ユニット410がm×nのマトリクス状に配列されたセルアレイ部401、データ線駆動回路(DTDRV)102、走査線駆動回路(WSDRV)103、ヒータ温度検出ユニット410に発熱量情報を与えるためのデータ線DTL101〜DTL10m、ヒータ温度検出ユニット410を選択し、発熱量情報を書き込み、書き込まれた発熱量情報に応じた電流を流すための走査線WSL101〜WSL10m、電流駆動回路(IDRV)202、走査線駆動回路(WSDRV)203、電圧検出器(V)204−1〜204−n、電流駆動線IDL201〜IDL20n、温度検出線TSL(Temperature Sense Line)301〜TSL30n、およびヒータ温度検出ユニット410を選択し、温度検出ユニット210の検出信号を温度検出線TSL301〜TSL30nに転送するための走査線SSL201〜SSL20mを有する。
【0145】
図36は、本実施形態に係るヒータ温度検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【0146】
図36のヒータ温度検出ユニット410は、図23のヒータユニット110と図30の温度検出ユニット210を用いて形成されている。
したがって、図36においては、理解を容易にするために図15および図30と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0147】
図35のヒータ温度検出マトリクス装置400によれば、カレントコピアにて発熱量情報として、書き込まれた後に実際の発生熱をセンシングすることで、カレントコピアに対して、発熱量情報書込み量に対して、PINダイオードにて暗電流をセンシングすることで温度制御補正することができる。
【0148】
この場合、ヒータユニット110のヒータ電流と温度検出ユニット210のPINダイオードD211の電流に応じた検出電圧の関係から、PINダイオードD211による温度検出を行うことができる。
【0149】
図37は、ヒータユニットのヒータ電流と温度検出ユニットのPINダイオードの電流に応じた検出電圧の関係を示す図である。
図37において、横軸がヒータ電流を、縦軸がダイオードの電圧を示している。
図中、IF1はダイオード電流が10μAの電圧値、IF2はダイオード電流が100μAの電圧値を表している。
【0150】
ダイオード電流が10μAと100μAのときの、次式で与えられる電圧値の差(ΔV)より温度に換算することができる。
【0151】
[数6]
ΔV=η(kT/q)ln(IF1/IF2) (6)
Temp(C)=5.0072×ΔV+273.15
【0152】
次に、温度蛍光検出マトリクス装置について説明する。
【0153】
<温度蛍光検出マトリクス装置>
図38は、本発明の実施形態に係る温度蛍光検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【0154】
図38の温度蛍光検出マトリクス装置500は、図29の温度検出マトリクス装置200と図33の蛍光検出マトリクス装置300を合成した構成を有している。したがって、図38においては、理解を容易にするために、図29および図33と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0155】
この温度蛍光検出マトリクス装置500は、図38に示すように、温度蛍光検出ユニット510がm×nのマトリクス状に配列されたセルアレイ部501、電流駆動回路(IDRV)202、走査線駆動回路(WSDRV)203、電圧検出器(V)204−1〜204−n、電流駆動線IDL201〜IDL20n、温度検出線TSL(Temperature Sense Line)201〜TSL20n、温度蛍光検出ユニット510を選択し、温度蛍光検出ユニット510の検出信号を温度検出線TSL201〜TSL20nに転送するための走査線SSL201〜SSL20m、温度蛍光検出ユニット510を選択するための走査線SSL301〜SSL30m、走査線駆動回路(WSDRV)303、逆方向電圧線(Reverse Voltage line)RVL301、および蛍光検出線LSL301〜LSL30nを有する。
【0156】
図39は、本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【0157】
図39の温度蛍光検出ユニット510は、図30の温度検出ユニット210のPINダイオードD211およびノードND211と、図34の蛍光検出ユニット310のPINダイオードD311およびノードND311とを共用して構成されている。
したがって、図39においては、理解を容易にするために図30および図34と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0158】
この温度蛍光検出ユニット510は、1つのPINダイオードD211(D311)と2つのnチャネルトランジスタT211,T212と2つのpチャネルトランジスタT311,T312により構成されている。
【0159】
図40は、本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットおいて、温度検出と蛍光検出時のスイッチとしての各トランジスタの状態を示す図である。
【0160】
走査線SSLには高レベル−低レベルを周期的に変化するスイッチ信号が印加される。nチャネルトランジスタT211とT212およびpチャネルトランジスタT311とT312はゲートが共通に走査線SSLに接続されている。
これにより、走査線SSLが高レベルのときにトランジスタT211,T212がON状態、トランジスタT311,T312がOFF状態となる。
一方、走査線SSLが低レベルのときトランジスタT211,T212がOFF状態、トランジスタT311,T312がON状態となる。
【0161】
図41は、本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットの温度検出動作を説明するための図である。図42は、本実施形態に係る温度蛍光検出ユニットの蛍光検出動作を説明するための図である。
【0162】
温度検出時には、電流駆動線IDLに電流Idetを供給する電流源I211を接続させ、走査線SSLが高レベルのとき、図41に示すように、電流駆動線IDLに接続された電流源I211からPINダイオードD211に対して順方向電流Idetが流れる。
これと並行して、温度検出線TSLに電圧検出器204を接続することにより、PINダイオードD211に発生する順方向電圧を検知することができる。
【0163】
ここでPINダイオードD211に一定の順方向電流Idetを流したときにPINダイオードD211の順方向電圧(FORWARD VOLTAGE)と温度の間には、図43に示すような関係が得られる。
すなわち順方向電圧は温度と直線的に変化しており、PINダイオードD211に接続された温度検出線TSLの順方向電圧を検知することで温度情報を得ることができる。
【0164】
蛍光検出時には、逆方向電圧線RVLに負の電圧源を接続させ、走査線SSLが低レベルのとき、逆方向電圧線RVLに印加された負の電圧によりPINダイオードD311は逆方向にバイアスされ、図42に示すように、逆方向電流IRが流れる。
この逆方向電流Ioutを、蛍光検出線LSLを介して検知することにより蛍光検出することができる。
【0165】
図38の温度蛍光マトリクス装置500においては、走査線駆動回路203は走査線SSL201〜SSL20mを順次高レベルにし、それに同期して電流駆動線駆動回路202が各電流駆動線IDL201〜IDL20nに定電流を印加し、温度検出線TSL201〜TSL20nの電圧をモニタすることで、各PINダイオードD211に対して行単位で温度情報を検出することができる。
温度検出終了後は走査線を順次低レベルすれば、各PINダイオードD211に逆方向電圧が印加され、各PINダイオードD211に対して行単位で蛍光情報を検出することができる。
このようにしてユニット各々に温度検出および蛍光を交互に検出させることができる。
【0166】
なお、蛍光検出処理においては、たとえば図43に示すように、まずPINダイオードD211(D311)の暗(ダーク)電流を検出し、それを2値化してV1を得る。V1を2〜3回スキャンして平均値をとる(ST101)。
次に、上述した蛍光検出を行って検出電流を2値化してV2を得る。V2を2〜3回スキャンして平均値をとる(ST102)。
そして、V2とV1の差分をとる(ST103)。
このような処理を行うことにより、精度の高い蛍光検出を実現することが可能となる。
【0167】
次に、ヒータ温度蛍光検出マトリクス装置について説明する。
【0168】
<ヒータ温度蛍光検出マトリクス装置>
図44は、本発明の実施形態に係るヒータ温度検出マトリクス装置の一構成例を示す図である。
【0169】
図44のヒータ温度蛍光検出マトリクス装置600は、図15のヒータマトリクス装置100と、図30の温度検出マトリクス装置200と、図35の蛍光検出マトリクス装置300とを合成した構成を有している。したがって、図44においては、理解を容易にするために、図15、図30、および図33と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0170】
このヒータ温度検出マトリクス装置600は、図44に示すように、ヒータ温度蛍光検出ユニット610がm×nのマトリクス状に配列されたセルアレイ部601、データ線駆動回路(DTDRV)102、走査線駆動回路(WSDRV)103、ヒータ温度蛍光検出ユニット610に発熱量情報を与えるためのデータ線DTL101〜DTL10n、ヒータ温度蛍光検出ユニット610を選択し、発熱力情報を書き込み、書き込まれた発熱量情報に応じた電流を流すための走査線WSL101〜WSL10m、電流駆動回路(IDRV)202、走査線駆動回路(WSDRV)203、電圧検出器(V)204−1〜204−n、電流駆動線IDL201〜IDL20n、温度検出線TSL(Temperature Sense Line)201〜TSL20n、ヒータ温度蛍光検出ユニット610を選択し、ヒータ温度蛍光検出ユニット610の検出信号を温度検出線TSL201〜TSL20nに転送するための走査線SSL201〜SSL20m、電流駆動回路(IDTC)302、走査線駆動回路(WSDRV)303、逆方向電圧線(Reverse Voltage line)RVL301、および蛍光検出線LSL301〜LSL30nを有する。
【0171】
ただし、データ線駆動回路102と電流駆動回路202を共用化することも可能である。
この場合、データ線DTLと温度検出線TSLが共用化できる。
【0172】
図45は、本実施形態に係るヒータ温度蛍光検出ユニットの構成例を示す回路図である。
【0173】
図45のヒータ温度蛍光検出ユニット610は、図23のヒータユニット110と図39の温度蛍光検出ユニット510を用いてヒータ温度蛍光検出ユニット610が形成されている。
したがって、図45においては、理解を容易にするために図23および図29と同一構成部分は同一符号をもって表している。
この例では、データ線DTLと温度検出線TSLが共用化されている。
【0174】
図44のヒータ温度蛍光検出マトリクス装置600によれば、カレントコピアにて発熱量情報として、書き込まれた後に実際の発生熱をセンシングすることで、カレントコピアに対して、発熱量情報書込み量に対して、PINダイオードにて暗電流をセンシングすることで温度制御補正することができる。
そして、蛍光受光時に発生する受光電流をセンシングすることで、増幅反応を検出することができる。
より具体的には、カレントコピア(ヒータユニット)および温度検出ユニットの回路構成にて発熱制御をリアルタイムにフィードバックする段階で、反応増幅検出のシグナルとして、蛍光検出を温度検出デバイスであるPINダイオードD211にて、蛍光量にて増幅反応をリアルタイムに検出を実現することができる。
【0175】
以上説明したように、DNA増幅反応を行う反応処理装置に適用可能な熱制御マトリクス装置は、次のような効果を得ることができる。
【0176】
アクティブマトリクス制御を行うことで、ウェル毎の個別温度制御が可能で、その結果網羅的に遺伝子の発現量を短時間で解析することができる。
半導体素子の特性にばらつきや温度特性があっても温度検出回路構成を有することで、フィードバック構成によって正確な発熱量を得ることができ、結果として効率の良いPCR制御が可能である。
半導体素子の特性に経時変化があっても温度検出回路構成を有することで、フィードバック構成によって正確な発熱量を得ることができ、信頼性の高いPCR制御装置を提供可能である。
発熱動作を走査線単位で停止する機能を有することで、簡便かつ速やかに温度を下げることが可能であり、また発熱時間の制御が可能なため、微小な発熱制御が容易である。
書き込まれた発熱情報に対して、実際の発熱量に対して、センシングを高精度に行い、発熱書込み量を補正することで、高精度な発熱量を提供することが可能である。
温度センシングしている温度検出回路構成にて、並行して、増幅反応のシグナルである蛍光検出を同一構成にて実現することが可能である。
【0177】
このように、本実施形態によれば、高精度にかつ個別に熱制御できる反応処理装置とすることができる。この反応処理装置は、精密な熱制御を要する反応に用いる装置として、幅広い用途に用いることができる。そのなかでも、たとえば、遺伝子増幅反応等を行うPCR装置として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0178】
10・・・反応処理装置、11・・・ウェル基板、12・・・ヒータ基板、13・・・加熱部、14・・・反応領域、15・・・冷却部、16・・・放熱器、20・・・半導体発熱素子、21・・・温度検出素子、22・・・電流制御回路、23・・・ディジタルポテンショメータ、24・・・制御部(CPU)、25・・・アナログディジタルコンバータ(ADC)、26・・・温度検出回路、27・・・温度測定用ポテンショメータ、28・・・定電流回路、29・・・記憶装置、30・・・金属薄膜、PCR装置(反応処理装置)、100・・・ヒータマトリクス装置、110・・・ヒータユニット、200・・・温度検出マトリクス装置、210・・・温度検出ユニット、200・・・蛍光検出マトリクス装置、310・・・蛍光検出ユニット、400・・・ヒータ温度検出マトリクス装置、410・・・ヒータ温度検出ユニット、500・・・温度蛍光検出マトリクス装置、510・・・温度蛍光検出ユニット、600・・・ヒータ温度検出マトリクス装置、610・・・ヒータ温度蛍光検出ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応領域と、
前記反応領域ごとに配置された複数の加熱部と、
前記加熱部により加熱される反応領域以外の領域を冷却する冷却部と、を有し、
前記加熱部は、
ヒータと温度検出素子を含み、
前記温度検出素子により温度を検出する検出手段と、
検出された温度情報に基づいて前記ヒータの温度を前記反応領域ごとに制御する温度制御手段と、を有し、
前記温度制御手段における処理は、
温度サイクルを含み、当該温度サイクルはディネーチャ処理における第1の温度保持制御と、
ディネーチャ処理からアニーリング処理に遷移する降温処理における降温制御とアニーリング処理における第2の温度保持制御と、
アニーリング処理からエクステンション処理に遷移する第1の昇温処理における第1の昇温制御と、
エクステンション処理における第3の温度保持制御と、
エクステンション処理からディネーチャ処理に遷移する第2の昇温処理における第2の昇温制御と、を含み、
前記温度制御手段は、
前記降温制御または前記昇温制御において、前記温度検出素子で検出された温度と目標温度とが同じ場合、次の処理である前記温度保持制御に移行する
反応処理装置。
【請求項2】
前記温度制御手段は、
前記温度検出素子により温度を検出する検出処理と、
ヒータ制御量を計算する計算処理と、
前記ヒータを制御するヒータ制御処理と、
冷却部を制御する冷却部制御処理と、を行う
請求項1記載の反応処理装置。
【請求項3】
前記温度制御手段は、
前記温度検出素子により温度を検出する検出処理は、前記温度検出素子に印加する電流値を制御する電流値制御処理と、
前記温度検出素子の電圧値をアナログディジタルコンバータにより変換する変換処理と、を行う
請求項2記載の反応処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2011−160811(P2011−160811A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113419(P2011−113419)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【分割の表示】特願2008−105841(P2008−105841)の分割
【原出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】