説明

反応器内鎖延長による縮合重合体生成のための方法、及びその生成物

高分子量鎖延長縮合重合体を形成するための方法を開示する。方法は、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に鎖延長剤を添加することを含み、その鎖延長剤は少なくとも1つのエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体との重合生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリエステル、ホリアミド、及びポリカーボネートを含む多くの縮合または逐次重合体は、フィルム、ボトル、及び他の成形品などのプラスチック製品を製造するために幅広く使用される。これらの重合体の機械的及び物理的性質は、その分子量に大きく依存する。分子量を増加させること、及び分岐を導入することによる次世代の重縮合体の開発に、多くの労力が注がれてきた。しかし、初期の重合処理中に分子量を増加させるには、一般的に長い反応時間及び高温を必要とし、重合体の劣化、用途性能の低下、及び最終製品の外観の悪化を招くことになる。さらに、多くの場合は反応器の制限によって、初期の重合処理中に達成できる最大分子量を制限し、それによって当該重合体の用途範囲を限定することになる。合成した重合体をさらに処理して、分子量を増やすために、固体重合(SSP)を使用することがある。しかし、SSPは時間がかかり、高価である。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年7月21日に出願された米国特許出願第61/227,149号の優先権を主張し、本願明細書においてその全開示内容を引用により援用する。
【0003】
一般的には、重縮合反応は可逆的であり、高い反応基変換及び重縮合分子量での動的平衡を条件とする。生成物の方へ平衡を移動させるためには縮合生成物を絶えず除去することが必要になり、従って順反応速度を高め、生成物の分子量及び反応器の生産性を高めることになる。高温及び極高真空の条件での操作には、適切な時間で高分子量(あるいは固有粘度、I.V.)を実現するために、反応混合物から縮合生成物を取り除くことが必要である。反応時間とともに高くなる重縮合分子量の漸近的性質から判断すると、高い分子量生成物の製造を試みることによって、長い反応時間、反応器の生産性低下、エネルギー及び人件費の追加を招く。生成物の性能を高めるためには高い分子量が好ましいが、現在の技術では経済的にまだ達成できない。さらに、重合時間の延長が、これらの生成物の性能及び外観に影響を及ぼすさまざまな劣化副産物につながることが周知である。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、縮合重合体を製造する方法が提供される。方法は、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に特定の重合鎖延長剤を添加することを伴う。方法は、鎖延長剤なしで形成される縮合重合体の重合時間と比較して、鎖延長縮合重合体の重合時間を短縮する、及び/または分子量を増やすことができる。言い換えれば、方法は、従来可能であったよりも短い重合時間で高い分子量を持つ鎖延長縮合重合体を提供する。従って、当該方法はこの方法を採用する重合プラントの効率及び能力を高め、著しい費用節減をもたらすことになる。同様に、重合時間が短縮されるため、長い反応時間及び高い温度による従来の方法を用いて形成される重合体に関連した重合体の劣化、用途性能の低下、及び最終製品の外観の悪化のうちの1つ以上を回避することができる。
【0005】
開示される方法は高い分子量を有する鎖延長縮合重合体を提供するため、方法は固体重合(SSP)を用いる鎖延長重合体をさらに処理することを不要にできる。しかし、SSPが使用される場合、方法は、鎖延長剤なしで形成される処理済み縮合重合体の重合時間と比較して、処理済み鎖延長縮合重合体のSSP重合時間を短縮することができる。
【0006】
上記のとおり、方法は、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に鎖延長剤を添加することを伴う。鎖延長剤には、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体との重合生成物を含む。
【0007】
一態様において、方法は、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に鎖延長剤を添加することを含んで提供され、その鎖延長剤は少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体との重合生成物を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体は、エポキシ基、無水物基、カルボン酸基、及び水酸基から選択される少なくとも1つの官能基を含む。一部の実施形態では、鎖延長剤は2以上の官能性を有する。一部の実施形態では、鎖延長剤は2〜30の官能性を有する。一部の実施形態では、鎖延長剤は2を超える官能価を有する。一部の実施形態では、鎖延長剤は2を上回り、かつ30以下の官能価を有する。一部の実施形態では、官能性(メタ)アクリル単量体はエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体である。一部の実施形態では、エポキシ官能性(メタ)アクリル単量体はメタクリル酸グリシジルである。
【0008】
他の実施形態では、スチレン単量体はスチレンであり、(メタ)アクリル単量体はアクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、または(メタ)アクリル酸メチルから選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体は鎖延剤中の単量体の総重量に対して約0.5〜約75%の量で存在する。一部の実施形態では、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体は鎖延長剤中の単量体の総重量に対して95.5〜25%の量で存在する。一部の実施形態では、鎖延長剤及び縮合重合体の成分の総重量に対して約0.03〜約10重量%の量で縮合重合体に鎖延長剤が添加される。
【0009】
他の実施形態では、縮合重合体はポリエステル、ポリアミド、またはポリカーボネートから選択される。一部の実施形態では、縮合重合体はポリエステルである。一部の実施形態では、縮合重合体はバイオポリエステルである。一部の実施形態では、バイオポリエステルは、単量体と一般式CH−CH(OH)−(CH−COOHまたはCH(OH)−(CH)n−COOHの重合生成物を含むポリ(乳酸)、ポリ(2−ヒドロキシ酪酸)、または他のバイオエステルから選択され、ここで、nは1以上である。例えば、一部の実施形態では、nは1〜約20である。他の実施形態では、nは1〜約10である。一部の実施形態では、ポリエステルは、一般式CH−CH(OH)−(CH−COOHまたはCH(OH)−(CH−COOHにもとづいて、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(乳酸)、ポリ(2−ヒドロキシ酪酸)または他のポリ(ヒドロキシアルキル酸)から選択される。
【0010】
別の形態において、方法は、鎖延長縮合重合体を提供するためにポリエステルの重合処理中に鎖延長剤を添加することを含んで提供され、その鎖延長剤は少なくとも1つのエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体との重合生成物を含む。一部の実施形態では、縮合重合体の溶液固有粘度が約0.6dL/g未満である場合に、鎖延長剤が添加される。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体の分子量が、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間よりも短い時間で達成される。一部の実施形態では、この時間は少なくとも約10%短くなる。一部の実施形態では、少なくとも約0.6dl/gの鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度は90分以下の時間で達成される。
【0011】
一部の実施形態では、方法は、固体重合による鎖延長縮合重合体の処理を含まない。一部の実施形態では、方法は、固体重合による鎖延長縮合重合体の処理をさらに含む。一部の実施形態では、処理済み鎖延長縮合重合体の分子量が、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間よりも短い時間で達成される。一部の実施形態では、この時間は、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間より少なくとも約5%短い。一部の実施形態では、少なくとも約0.8dl/gの処理済み鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度は15時間以下の時間で達成される。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも高い溶融粘度を示す。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも低い剪断速度で高い粘度、及び高い剪断速度で低い粘度を示す。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも約200s−1未満の剪断速度で高い粘度、及び約500s−1を超える剪断速度で低い粘度を示す。
【0012】
別の形態において、方法は、鎖延長ポリエステルを提供するためにポリエステルの重合処理中に鎖延長剤を添加することを含んで提供される。この方法において、この鎖延長剤は少なくとも1つのエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン、(メタ)アクリル単量体、またはその混合物との重合生成物から成り、その重合処理はバッチ重合処理または連続重合処理であり、鎖延長剤は縮合重合体の溶液固有粘度が約0.6dL/g以下の場合に添加され、鎖延長縮合重合体の分子量は、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間よりも短い時間で達成される。一部の実施形態では、この時間は少なくとも約10%短くなる。一部の実施形態では、少なくとも約0.6dl/gの鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度は90分以下の時間で達成される。一部の実施形態では、少なくとも約0.8dl/gの処理済み鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度は15時間以下の時間で達成される。一部の実施形態では、方法は、固体重合による鎖延長縮合重合体の処理を含まない。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも高い溶融粘度を示す。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも低い剪断速度で高い粘度、及び高い剪断速度で低い粘度を示す。一部の実施形態では、鎖延長剤は2以上の官能価を有する。一部の実施形態では、エポキシ官能性(メタ)アクリル単量体はメタクリル酸グリシジルである。他の実施形態では、スチレン単量体はスチレンであり、(メタ)アクリル単量体はアクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、または(メタ)アクリル酸メチルである。一部の実施形態では、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体は鎖延剤中の単量体の総重量に対して約0.5〜75%の量で存在する。一部の実施形態では、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体は鎖延長剤中の単量体の総重量に対して95.5〜25%の量で存在する。一部の実施形態では、鎖延長剤及び縮合重合体の成分の総重量に対して約0.03〜約10重量%の量で縮合重合体に鎖延長剤が添加される。一部の実施形態では、縮合重合体はポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、またはバイオポリエステルから選択される。
【0013】
別の形態において、開示される方法のいずれかによって製造される鎖延長縮合重合体も提供される。重合時間(SSP重合時間を含む)の短縮により、鎖延長縮合重合体(SSP処理鎖延長縮合重合体を含む)は従来の高分子縮合重合体につきものの副産物を必要最低限の量で含む。特定の鎖延長縮合重合体に関連する分岐が増えるにもかかわらず、これらの重合体の機械的及び熱的性質は、同じ対象分子量(またはI.V.)の場合、鎖延長剤なしで形成される縮合重合体の性質と驚くほど似ている。しかし、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体と比較して独特のレオロジー特性を示す。これらの性質は以下で更に詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、一実施形態に従って、鎖延長PET(F)を提供するために反応する、PET(D)及びエポキシ官能性スチレンアクリルオリゴマー(E)を伴う理想的な反応スキームを説明する。鎖延長剤1(表3を参照)の場合、xは65〜70に等しく(IV=0.4dL/g及びMn=14,000)、yは10.8に等しく、zは5.9に等しい。Ep=エポキシ基。
【図2】図2は、対照例、実施例1、及び実施例2の鎖延長PETに関する典型的な攪拌機トルク、回転数、及び溶融重合時間の記録を示す。鎖延長剤1の添加がプロットで示されている。対照例、対照PETの場合、PETペレットは鎖延長剤1の場所に導入された。
【図3】図3は、一部の実施形態に従って、さまざまな鎖延長剤に対する反応器内鎖延長に関連する溶融重合時間の短縮を示す。
【図4】図4は、鎖延長剤1及び2の使用に関連する能力の向上を示す。鎖延長剤はそれぞれ0.3及び0.2%(w/w)で使用され、計算は平行して運転する50,000MT/バッチのプラントに適用される。
【図5】図5は、一部の実施形態に従って、鎖延長剤(対照例)なしで形成されるPETと比較したさまざまな鎖延長PETの固体重合時間の短縮を示す。結果は、0.600dL/gに等しい開始IVに正規化されている。
【図6】図6は、一実施形態に従って、0.7dL/gの固有粘度を有するポリ(エチレンテレフタレート)を作るために必要な総短縮時間(溶融及び固体重合)を示す。
【図7】図7は、一実施形態に従って、0.8dL/gの固有粘度を有するポリ(エチレンテレフタレート)を作るために必要な総短縮時間(溶融及び固体重合)を示す。
【図8】図8は、対照例、実施例1、及び実施例2の溶融粘度を示す。粘度は、0.6dL/gでの固体重合の前に測定された。測定は、6.3s−1でコーンプレート粘度計を用いて行われた。
【図9】図9は、対照例(IV=0.713及び0.696dL/g)、実施例1(IV=0.702dL/g)、及び実施例2(IV=0.707dL/g)の剪断速度依存粘度を示す。毛細管粘度計は、高剪断速度〜低剪断速度、280℃で測定された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
提供されるのは、高分子量の鎖延長縮合重合体を製造する方法、及びこれらの方法から形成される鎖延長縮合重合体である。方法は、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に鎖延長剤を添加することを含む。鎖延長剤には、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体との重合生成物を含む。鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に開示される鎖延長剤のいずれかを添加する方法を指して、「反応器内鎖延長」という表現も用いられる。
【0016】
鎖延長剤
上記のとおり、開示される鎖延長剤には、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体との重合生成物を含む。官能性(メタ)アクリル単量体に関しては、さまざまな官能基を使用することができる。一部の実施形態では、官能基は、エポキシ基、無水物基、カルボン酸基、及び水酸基から選択される。特定の官能基の使用は、縮合重合体の特性に依存する可能性がある。例えば、特定のポリエステルは脂肪族ヒドロキシル及び/または脂肪族カルボン酸の鎖末端を含む。エポキシ基、無水物基、またはカルボン酸基を有する官能性(メタ)アクリル単量体は当該ポリエステルと反応することができる。ポリカーボネートはフェノール鎖の末端を含む。エポキシ基、無水物基、またはカルボン酸基を有する官能性(メタ)アクリル単量体は当該ポリカーボネートと反応することができる。ポリアミドはアミン及びカルボン酸の鎖末端を含む。エポキシ基、無水物基、またはカルボン酸基を有する官能性(メタ)アクリル単量体はアミンの鎖末端と反応することができ、水酸基を有する官能性(メタ)アクリル単量体はカルボン酸の鎖末端と反応することができ、エポキシ基を有する官能性(メタ)アクリル単量体は両方の種類の鎖末端と反応することができる。
【0017】
カルボキシル含有ラジカル重合性単量体の例は、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸を含むが、これに限定されるものではない。無水物含有ラジカル重合性単量体の例には、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、及び無水シトラコン酸を含むが、これに限定されるものではない。処理で使用できる水酸基含有ラジカル重合性単量体として、ヒドロキシアクリレート及びメタクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシ−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、及び5,6−ジヒドロキシヘキシルメタクリレートが挙げられるが、これに限定されるものではない。アミン含有ラジカル重合性単量体の例として、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートが挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、縮合反応性官能基を含む他のラジカル重合性単量体として、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドメタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、及びN−フェニルメタクリルアミドなどのアミドが挙げられる。
【0018】
一部の実施形態では、官能基はエポキシ基であり、官能性(メタ)アクリル単量体はエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体である。本明細書で使用されるように、用語のエポキシ官能性には、エポキシドと、オキサゾリンなどの当該材料の官能性等価物の両方が含まれる。エポキシ官能性(メタ)アクリル単量体の例として、限定されるものでないが、アクリル酸グリシジルやメタクリル酸グリシジルなどの1,2−エポキシ基を含有する物質が挙げられる。他の適切なエポキシ官能性単量体には、アリルグリシジルエーテル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、及び他のグリシジル(メタ)アクリレートを含む。
【0019】
開示される鎖延長剤の官能性は異なることがある。鎖延長剤は、中程度に低い値から非常に高い値までの幅広いエポキシ当量(EEW)値を有すること特徴とする。一部の実施形態では、鎖延長剤の官能価は2以上である。他の実施形態では、鎖延長剤の官能価は2を超える。上述の多官能性鎖延長剤は、開示される縮合重合体の特定の基と反応することができ、官能価が2の場合には直鎖の成長率が高くなり、官能価が2を超える場合には分岐することになる。ほんの一例として、エポキシ官能性(メタ)アクリル単量体はポリエステルの水酸基(OH)及び/またはカルボン酸(COOH)の末端と反応することができる。図1は、鎖延長ポリエステル(F)を形成するポリ(エチレンテレフタレート)(D)と例示的なエポキシ官能性鎖延長剤(E)との例示的な反応を説明する。特定の実施形態において、エポキシ官能性(メタ)アクリル単量体はカルボン酸基と優先的に反応し、2を超える官能価を有し、図1に示すように主に分岐となる。
【0020】
(メタ)アクリル単量体に関して、用語(メタ)アクリルにはアクリルとメタクリルの両方の単量体を含む。(メタ)アクリル単量体の例には、アクリレートとメタクリレートの両方を含む。鎖延長剤用に適したアクリレート及びメタクリレート単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸シンナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクルヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、及びこれらの種の混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。一部の実施形態では、(メタ)アクリル単量体はアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、またはその組み合わせである。
【0021】
スチレン単量体に関しては、適切な単量体には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、ビニルピリジン、及びこれらの種の混合物を含むがこれに限定されるものではない。一部の実施形態では、スチレン単量体はスチレンである。
【0022】
開示される鎖延長剤は、さまざまな量の官能性(メタ)アクリル単量体とスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体を含むことができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体は鎖延剤中の単量体の総重量に対して約0.5〜約75%の量で存在する。これには、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体が約10〜約70%、約15〜約60%、または約20〜約50%の量で存在する実施形態を含む。しかし、他の量も可能である。一部の実施形態では、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体は鎖延長剤中の単量体の総重量に対して約95.5〜約25%の量で存在する。これには、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体が約90〜約30%、約80〜約40%、または約70〜約50%の量で存在する実施形態を含む。しかし、他の量も可能である。
【0023】
同様に、鎖延長剤の分子量は異なることがある。一部の実施形態では、鎖延長剤の数平均分子量は約1,000〜10,000の範囲に及ぶことがある。これには、分子量が約1,500〜約5,000、約2,000〜約7,000、約3,000〜約9,000の範囲に及ぶ実施形態を含む。しかし、他の分子量も可能である。一部の実施形態では、鎖延長剤の重量平均分子量は約1,500〜35,000の範囲に及ぶことがある。これには、分子量が約2,500〜約15,000、約5,000〜約20,000、約10,000〜約30,000の範囲に及ぶ実施形態を含む。しかし、他の分子量も可能である。
【0024】
エポキシ基を有する鎖延長剤の場合、目的エポキシ当量(EEW)は、採用されるエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体の目的含有量によって固定される。さらに、所定のEEWでは、鎖延長剤の数平均分子量(Mn)を制御することで、鎖あたりの数平均エポキシ官能価(Efn)を非常に低い値(例えば、<1)〜非常に高い値(例えば、>30)に適合できる。さらに、所定のEEWでは、組成、処理条件、及び分子量の変化を通じて、鎖延長剤(PDI=Mw/Mn=Efw/Efn)の多分散性指数(PDI)を変更することで、鎖あたりの重量平均エポキシ官能価(Efw)を設計できる。非常に低い値(例えば、約1.5)〜非常に高い値(例えば、約5)にPDIを適合できる。
【0025】
他の鎖延長剤を使用することも可能である。他の鎖延長剤として、限定されるものではないが、米国特許第6,552,144号、第6,605,681号、及び第6,984,694号で述べられた鎖延長剤を使用できる。なお、これらの米国特許を、全体として本明細書中に援用する。
【0026】
開示される鎖延長剤は、当技術分野で周知の標準的な技術に従って製造できる。上記技術には、周知の高温フリーラジカル連続重合処理を含むがこれに限定されるものではない。簡単に言うと、これらの処理は、少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体、少なくとも1つのスチレン及び/または(メタ)アクリル単量体、及び任意に少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤を反応器に連続的に加えることを伴う。反応器に加えられる単量体の割合は、上述の鎖延長剤に投入する割合と同じ場合がある。
【0027】
反応器には、任意に少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤を加えてもよい。簡単に言うと、この処理の実行に適した開始剤は、重要な要素ではないが一時反応でラジカルに熱的に分解する化合物である。適切な開始剤には、90℃以上の温度で約1時間のラジカル分解処理半減期を有するものを含み、100℃以上の温度で約10時間のラジカル分解処理半減期を有するものをさらに含む。100℃より著しく低い温度で約10時間の半減期を有する他のものも使用できる。適切な開始剤として、限定されるものではないが、過酸化物及びヒドロペルオキシド、例えば1−t−アミルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、アゾ−ビス−イソブチロニトリル、1−t−ブチルアゾ−シアノシクロヘキサン、及び2,2’−アゾ−ビス−(2−メチル)ブチロニトリルなどの脂肪族アゾ化合物、t−ブチルペロクトエート、t−ブチルパーベンゾエート、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及び過酸化ジ−t−アミルが挙げられる。さらに、二過酸化物開始剤を単独で、あるいは他の開始剤と組み合わせて使用できる。当該二過酸化物開始剤として、1,4−ビス−(t−ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、1,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2、5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、及び他の類似開始剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
開始剤は単量体に添加でき、適切な量で添加できる。あくまでも例として挙げるならば、すべての開始剤は、供給口に単量体1モルあたり約0.0005〜0.06モルの開始剤の量で添加される。このため、開始剤は単量体の供給とともに混合するか、別の供給として処理に添加することができる。
【0029】
反応器には、単量体と一緒に、あるいは別の供給として反応器に供給される1つ以上の溶剤を任意に加えることができる。溶剤は、本願明細書で説明される連続処理の高温で官能性(メタ)アクリル単量体の官能基と反応しないものを含む、当技術分野で周知の溶剤であってもよい。溶剤を正しく選択することは、連続的な高温反応中のゲル粒子の形成を減らす、あるいは形成しないようにするのに役立つと考えられる。当該溶剤には、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、Aromatic 100(登録商標)、Aromatic 150(登録商標)、Aromatic 200(登録商標)、Exxonから入手可能なもののすべて、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチル−イソブチルケトン、n−メチルピロリジノン、及び当該溶剤2種類以上の組み合わせを含むがこれに限定されるものではない。使用時、反応器の状態と単量体の供給を考慮に入れながら、溶剤は必要量で存在する。一実施形態では、単量体の総重量に基づいて1つ以上の溶剤が重量で最高40%の量で存在し、また他の実施形態では重量で15%の量で存在する。
【0030】
反応器は、重合鎖延長剤を生成するための単量体の重合を引き起こすのに有効時間の間、有効温度に維持される。有効温度に関しては、高温で連続重合が行われる。一実施形態では、重合温度が約160℃〜約270℃の範囲に及ぶ。これには、温度が約170℃〜約250℃または約170℃〜約232℃の範囲に及ぶ実施形態を含む。これには、温度が約175℃〜約250℃または約180℃〜約232℃の範囲に及ぶ実施形態も含む。有効時間に関しては、連続重合処理によって反応器内での短い滞留時間を可能にする。滞留時間は一般的に約1時間未満であり、約15分未満の場合がある。一部の実施形態では、滞留時間は一般的に約30分未満であり、約20分未満であってもよい。
【0031】
鎖延長剤を生成するための処理は、当技術分野で周知のあらゆる種類の反応器を使用して行うことができ、連続構成で設置できる。当該反応器には、連続攪拌槽反応器(“CSTRs”)、管型反応器、ループ型反応器、押出反応器、または連続操作に適したあらゆる反応器を含むがこれに限定されるものではない。
【0032】
鎖延長剤の生成に適していることが分かったCSTRの形態は、その中での重合のために事前に選択した温度を維持するために、連続して加えられる単量体組成の温度を引き上げることで取り込まれない重合のあらゆる熱を除去するのに十分な冷却コイル及び/または冷却ジャケットを備えた槽型反応器である。当該CSTRを少なくとも1つを備える場合があり、通常はさらに、よく混合される反応領域を提供する攪拌機を備える。当該CSTRは10%から満杯の100%(満液反応器LFR)までのさまざまな充填レベルで操作できる。一実施形態では、反応器は100%液体が満杯である。
【0033】
縮合重合体
上記のとおり、開示される方法は、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体に述べられた鎖延長剤のいずれかを添加することを伴う。適切な縮合重合体には、ポリエステル(PE)、ポリアミド(PA)、及びポリカーボネート(PC)を含むがこれに限定されるものではない。
【0034】
ポリエステルには、脂肪族、脂環式、または芳香族ジカルボン酸及びジオールまたはヒドロキシカルボン酸から誘導されるホモ−またはコポリエステルを含むがこれに限定されるものではない。限定されないが、例示的なポリエステルにはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(BET)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、及びポリ(ブチレンナフタレート)を含む。これら及び他のポリエステルの用途は幅広く、織物繊維、商品包装、飲料容器、電気コネクタ及びハウジング、タイヤコードなどを含む。
【0035】
ポリアミドには、ジカルボン酸をジアミンと重縮合することで生成されるポリアミド、環状ラクタムを重合することで生成されるポリアミド、及び環状ラクタムをジカルボン酸/ジアミン塩と共重合することで生成されるポリアミドを含むがこれに限定されるものではない。ポリアミドはポリアミドエラストマー樹脂を含む。適切なポリアミドエラストマー樹脂には、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、及びいずれか2つ以上の当該ポリアミドの共重合体及び混合物を含む。
【0036】
ポリカーボネートとして、限定されるものではないが、ビスフェノールと炭酸誘導体、例えばビス−フェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)及びホスゲンから作られるものとの反応により生成される芳香族ポリカーボネートまたはジフェニルカーボネートが挙げられる。パラ位のフェノールラジカルがC、O、S、またはアルキレンによって架橋されるものなどの他の種類のビスフェノールから作られるさまざまな変性ポリカーボネート及びコポリカーボネートも含まれる。1つ以上の芳香族ジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸、ビスフェノール、及び炭酸誘導体から作られるポリエステルカーボネートも含まれる。ポリカーボネート樹脂は、ビス−フェノールAと炭酸誘導体から作られることもある。
【0037】
一部の実施形態では、縮合重合体はポリエステルである。当該一部の実施形態では、縮合重合体はポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、またはポリ(ブチレンナフタレート)から選択される。一部の実施形態では、縮合重合体はポリ(エチレンテレフタレート)(PET)である。図解1には典型的なPETのバッチ重縮合の図解を示す。


PETの重縮合に使用される原料は、芳香族二塩基酸(A)[テレフタル酸(PTA;1,4−置換)及びイソフタル酸(IPA;1,3−置換)]とエチレングリコール(B)との混合物である。結晶化度を制御するために、芳香族二塩基酸(A)のモル比が操作される。有害な副反応を最小限に抑え、重合体の特性を調整し、及び生産効率を最大化するために、二塩基酸(A)対グリコール(B)のモル比が調整される。重合処理は2段階から構成される。段階1はエステル化または重縮合(式1)であり、加圧と大気圧エステル化に分けることができる。段階1の初期には、化学量論を維持するため、グリコールの損失を防ぐために高圧が使用される。グリコールが反応してしまうと、圧力は緩和され、水が取り除かれる。段階1では、5〜12の繰り返し単位(C)から構成されるPETオリゴマーを生じる。段階2は重縮合(式2)であり、非常に高い真空と温度、そして触媒を用いる。表1には触媒と、後述の実施例で使用される芳香族二塩基酸(A)対グリコール(B)のモル比及びPTA対IPAのモル比の典型的なパッケージとを記載する。ポリエチレングリコールの形成を防ぐためにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が使用され、重合触媒として三酸化アンチモン(Sb)が使用され、色を削減するために酢酸コバルト[II]四水和物が添加され、及び色と熱的安定性を向上させる抗酸化剤としてリン酸が添加された。

表1.PET組成内容
物質 モル比
グリコール(B)/酸(A) 1.15
PTA/IPA 2.8
触媒 ppm
TMAH 40
Sb 250
(CHCOO)Co・4HO 30
リン酸 30
PTA−テレフタル酸; PIA−イソフタル酸; TMAH−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド; Sb−酸化アンチモン[III]; (CHCOO)Co[II]−酢酸コバルト[II]四水和物。
【0038】
反応器の制限のため、PETは25,000〜30,000の分子量に等しい約0.6 dL/gの溶液固有粘度(SIV)に調製されることが知られている。大半の状況で、PET用途に必要とされる分子量を実現するために固体重合(SSP)が必要とされる。表2には、幾つかのPET用途のSIV要件を示す。このデータは、最も低い繊維及びフィルム用途のみで、性能を発揮するために必要とされる分子量を実現するために固体重合を必要としない可能性があることを示唆する。

表2.PET SIV要件
用途 SIV(dL/g)
繊維/フィルム 0.60 〜 0.68
シート/テープ 0.65 〜 0.78
ボトル 0.70 〜 0.85
汎用ストラップ 0.65 〜 0.85
高温用ストラップ/タイヤコード >0.90
SIV − 溶液固有粘度
【0039】
PET及びその生産に対する他の制約には、過剰生産能力、限定的な製品の差別化、及び北米での織物繊維業界の崩壊がある。さらに後述するように、開示される方法は重合時間を短縮することができ、それによって生産能力と効率を高め、分岐に関連する特性強化を通じて製品の差別化を高め、費用のかかるSSPを不要にする。
【0040】
一部の実施形態では、縮合重合体はポリアミドである。ポリアミドは、バッチまたは連続重合処理で生成できる。鎖延長剤もポリアミドに使用できる。
【0041】
一部の他の実施形態では、縮合重合体はポリカーボネートである。ポリカーボネートは、バッチまたは連続重合処理で生成できる。鎖延長剤もポリカーボネートに使用できる。
【0042】
反応器内鎖延長
上記のとおり、開示される方法では、鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に述べられた縮合重合体のいずれかに、述べられた鎖延長剤のいずれかが添加される。語句「重合処理中」は、縮合重合体が形成される初期合成処理中を意味する。この文には、SSPによる処理などの重合された縮合重合体の次の処理の前または間に鎖延長剤を添加することは除く。SSPなどの次の処理段階の前または間に鎖延長剤が追加される方法は可能だが、当該方法は後で別途述べる。
【0043】
述べられた縮合重合体の重合処理は周知である。重合処理はバッチ重合処理または連続重合処理である場合がある。PETの例示的なバッチ重合処理は上述し、図解1に示した。同様に、これらの重合処理を行う方法(例えば、反応器や反応器の条件)も周知である。PETの例示的な重合処理はさらに以下の実施例で説明される。
【0044】
開示される鎖延長剤は、縮合重合体の重合処理中のさまざまな時期に添加できる。重合処理がバッチ重合処理である実施形態では、鎖延長剤はプレ重縮合段階、重縮合段階、またはその両方の間に添加できる。一部の実施形態では、鎖延長剤は重縮合段階中に添加される。
【0045】
他の実施形態では、鎖延長剤は、縮合重合体が特定の溶液固有粘度(SIV)に達した重合処理中の時点で添加される。このSIVは異なることがある。一部の実施形態では、縮合重合体のSIVが約0.6dL/g以下である場合に、鎖延長剤が添加される。他の実施形態では、縮合重合体のSIVが約0.5dL/g、0.4dL/g、または0.3dL/g以下である場合に、鎖延長剤が添加される。しかし、他のSIVも可能である。処理温度が下がる傾向があり(分解を減らす)、鎖延長剤を完全に混合することが容易であるため(反応効率を高める)、縮合重合体のSIVが比較的低い間に鎖延長剤を添加することが役立つ可能性がある。さらに、縮合重合体のSIVが相対的に低い場合、縮合重合体の反応性末端基の濃度は相対的に高い(反応効率を高める)。
【0046】
鎖延長剤は、縮合重合体を製造するためのさまざまな連続重合処理にも使用できる。例えば、鎖延長剤は、エステル化反応器の後の連続溶融重合反応器の入口の流れに添加できる。また、さらに好適には、鎖延長剤は、連続溶融重合反応器の中にある場合には中間の反応器の位置に連続して添加できる。これは、バッチ溶融重合時間中の一部の中間点で添加することと同等である。理想的には、いずれにしても、さまざまな実施形態に従って、溶融重合反応器内の材料のSIVが約0.20〜0.55、約0.25〜0.50、約0.30〜0.45、または約0.35〜0.45であるときに、鎖延長剤を適切な時期または反応器の場所に添加する必要がある。
【0047】
鎖延長剤は、さまざまな量で縮合重合体に添加できる。一部の実施形態では、鎖延長剤及び縮合重合体の成分の総重量に対して約0.03〜約10重量%の範囲に及ぶ量で鎖延長剤が添加される。「縮合重合体の成分」に関しては、縮合重合体を生成するために原料に添加される成分を意味する。これには、量が約0.05%〜約5%、約0.075%〜約3%、及び約0.1%〜約1%の範囲に及ぶ実施形態を含む。しかし、他の量も可能である。詳しい量は鎖延長剤の性質、縮合重合体の性質、分子量増加及び/または分岐の要求量によって決まる。
【0048】
他の処理段階
方法には、必ずではないが、反応において上記のように行われた鎖延長の後に、鎖延長重合体の追加処理をさらに含む場合がある。一部の実施形態では、方法は、SSPによる鎖延長縮合重合体の処理をさらに含む。SSPに適した反応器及び反応条件は周知である。当該実施形態では、追加の鎖延長剤がSSP処理の前または間に鎖延長剤に添加される場合がある。本願明細書で使用される場合、語句「処理済み鎖延長縮合重合体」は、反応器内鎖延長とSSPの両方を受けた縮合重合体を指して用いられる。
【0049】
他の実施形態では、方法は、SSPによる鎖延長縮合重合体の処理を含まない。上記のとおり、そしてさらに後述するように、開示される反応器鎖延長法は高い分子量を有する鎖延長縮合重合体を提供することができるため、SSPを用いて鎖延長重合体をさらに処理することが除外される場合がある。これによって、SSPの必要なしに一部の種類の食品容器(ボトル)の製造が可能になる。
【0050】
方法には、射出ブロー成形、押出ブロー成形、シート及びフィルム押出、射出成形、熱成形、フィルムブロー、及び紡糸を含むがこれに限定されるものではない、さまざまなプラスチック成形操作をさらに含む場合がある。これらの操作のための装置及び処理条件は周知である。また、いずれかの方法の後に、鎖延長または処理済み鎖延長縮合重合体のペレットまたは顆粒を得るために重合体回収及びペレット化段階が続く場合がある。
【0051】
処理
開示される方法は、縮合重合体生成の従来の方法と比較して多くの処理上の利点を提供する。上記のとおり、開示される方法は、鎖延長剤なしで形成される縮合重合体の重合時間と比較して、鎖延長縮合重合体の重合時間を短縮することができる。しかし、開示される鎖延長剤は重合反応速度に影響を及ぼさない、つまり鎖延長剤は触媒ではないことが記されている。溶融重合中、用いられる特定の触媒系にかかわらず鎖延長が起こる。例えば、ポリエステルの製造では、金属ベース酸化物が触媒として伝統的に用いられる。アンチモン、チタニウム、アルミニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、及び他の金属の金属ベース酸化物が触媒として使用される場合がある。ここで述べられる鎖延長は触媒機構に基づいていないため、鎖延長はポリエステルの形成とは関係なく起こる。同じことが、バイオポリエステル、ポリアミド、及びポリカーボネート反応系の製造に対しても当てはまる。
【0052】
むしろ、下記の実施例でさらに説明されるように、鎖延長剤は、鎖延長剤を添加したときに縮合重合体の瞬間的な分子量を劇的に増加させる。そのため、開示される方法を用いると、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間よりも短い時間で鎖延長縮合重合体の分子量を達成できる。「時間」に関しては、操作の種類(バッチ、半連続、または連続)に関係なく重合反応器内での滞留の時間を意味する。一部の実施形態では、この時間は少なくとも約10%短くなる。他の実施形態では、時間は少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%短くなる。一部の実施形態では、この時間は少なくとも50%短くなる。下記の実施例では、重合処理中の時間に対して攪拌機のトルク及び速度を測定することで重合時間の短縮を計測し、分子量を監視する方法を説明する。分子量は、周知の方法に従って溶液固有粘度及び溶融粘度を測定することでも監視できる。一部の実施形態では、開示される方法は、開示される鎖延長剤なしで縮合重合体を形成する従来の方法を用いて可能な分子量よりも高い分子量を有する鎖延長縮合重合体を提供することができる。
【0053】
同様に、方法は、短い時間で鎖延長縮合重合体の特定の溶液固有粘度を実現することができる。一部の実施形態では、少なくとも約0.6dl/gの鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度は約90分以下の時間で達成される。これには、時間が約85分以下、約80分以下、約75分以下、または約70分以下である実施形態が含まれる。
【0054】
重合時間の短縮には多くの重要な利点がある。まず、重合時間を短縮することで、開示される方法を用いる重合プラントの効率及び能力は著しく高まり、著しい費用節減をもたらすことになる。下記の実施例でさらに述べられるように、開示される方法を用いると、典型的な条件で運転している典型的な重合プラントの能力が少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、またはさらに大きく増加する場合がある。次に、重合時間を短縮することで、長い反応時間及び高い温度による従来の方法を用いて形成される重合体に関連した重合体の劣化、用途性能の低下、及び最終製品の外観の悪化を回避することができる。最後に、反応器内鎖延長は高い分子量を有する鎖延長縮合重合体を提供することができるため、費用がかかり扱いにくい固体重合(SSP)を用いて鎖延長重合体をさらに処理することが除外される場合がある。
【0055】
しかし、SSPを用いて鎖延長がさらに処理される実施形態の場合、方法は、鎖延長剤なしで形成される処理済み縮合重合体のSSP重合時間と比較して、処理済み鎖延長縮合重合体のSSP重合時間を短縮することもできる。そのため、開示される方法を用いると、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間よりも短い時間で処理済み鎖延長縮合重合体の分子量を達成できる。一部の実施形態では、時間は少なくとも約5%短くなる。他の実施形態では、時間は少なくとも約10%、15%、20%、またはそれ以上短くなる。下記の実施例では、溶液固有粘度を測定することでSSP時間の短縮を計測し、分子量を監視する方法を説明する。
【0056】
同様に、方法は、短い時間で処理済み鎖延長縮合重合体の特定の溶液固有粘度を実現することができる。一部の実施形態では、少なくとも約0.8dL/gの処理済み鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度は15時間以下の時間で達成される。これには、時間が約14時間、13時間、12時間、またはそれより短い実施形態が含まれる。
【0057】
鎖延長及び処理済み鎖延長縮合重合体
また、提供されるのは、開示される方法で形成される鎖延長及び処理済み鎖延長縮合重合体である。これらの重合体は多くの望ましい特性を示す。かなりの量の分岐を有する鎖延長縮合重合体を生成するそれらの方法に対しては、当該重合体の機械的及び熱的性質の変化が期待される。しかし、下記の実施例でさらに説明されるように、開示される鎖延長剤なしで形成される縮合重合体と比較して、当該重合体の機械的及び熱的性質が悪影響を受けないことが分かった。
【0058】
さらに、鎖延長縮合重合体には有利なレオロジー特性がある。以下の実施例でさらに説明されるように、一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも高い溶融粘度を示す。一部の当該実施形態では、溶融粘度は少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、またはさらに高くなる。他の実施形態では、鎖延長縮合重合体は鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも低い剪断速度で高い粘度、及び高い剪断速度で低い粘度を示す。一部の実施形態では、鎖延長縮合重合体は約400s−1、300s−1、200s−1またはそれ以下低い剪断速度で高い粘度、及び約300s−1、400s−1、500s−1またはそれ以上高い剪断速度で低い粘度を示す。この特性により、押出、ブロー、及び射出成形中に低い粘度だか、低い剪断処理中には高い粘度を示すことが期待されるため、従来の縮合重合体と比較して鎖延長縮合重合体の処理可能性を向上させることにつながる場合がある。また、鎖延長縮合重合体は高い弾力性、ダイスウェルの増加、ブロー成形中の伸縮性の向上、高い溶融張力、高い伸長粘度、低い弾性維持引張強度、及び高い破断点伸度(つまり、高い靱性)も示す。これによって、射出ブロー成形、押出ブロー成形、シート熱成形、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、及び紡糸による製品製造中のより速い処理を可能にする。
【0059】
また、提供されるのは、開示される鎖延長及び処理済み鎖延長縮合重合体のいずれかから形成される物品である。当該物品には、食品または非食品に触れる容器、フィルム、塗装、テープ、成形品、繊維、ストラップ、及び他の消費財を含むがこれに限定されるものではない。
【0060】
当事者には明らかなように、ありとあらゆる目的のため、特に書面による明細の提供に関して、本願明細書で開示されるすべての範囲は、そのありとあらゆる考え得る部分的な範囲及び部分的な範囲の組み合わせを包含する。少なくとも同等半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分けられている同じ範囲を十分に説明及び可能にしているので、いずれの記載される範囲も簡単に認識できる。限定されない例として、本願明細書にて開示される各範囲は下部3分の1、中央3分の1、上部3分の1などに簡単に分けることができる。また、当事者には明らかなように、「最高」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての言葉は列挙される数字を含み、その後に上述のように部分的な範囲に分けることができる範囲である。最後に、当事者には明らかなように、範囲には個々の数字を含む。
【0061】
要素(特に以下の請求項との関連で)の説明との関連で不定冠詞、定冠詞、及び同様の指示対象の使用は、他に指定されるか、文脈によって明確に否定されない限り、単数と複数両方を対象にすると解釈すべきである。用語「具備する」、「有する」、「含む」、及び「含有する」は、非制限的用語(つまり、「含むがこれに限定されるものではない」を意味する)と解釈すべきである。本願明細書における値の範囲の記述は、本願明細書にて他に指定のない限り、範囲内に入る個々の値に個別に言及することの簡単な方法とすることを単に目的とし、まるで本願明細書にて個別に記述されるように、個々の値は明細書に組み込まれる。本願明細書で述べられるすべて方法は、本願明細書にて他に指定されるか、文脈によって明確に否定されない限り、適切な順番で行うことができる。本願明細書にて提供されるありとあらゆる実施例、または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、実施形態を上手く明らかにすることを単に目的とし、特に指定のない限り請求項の範囲に制限を設けるものではない。明細書における言葉は一切、発明の実施に不可欠であるとして非請求の要素を示していると解釈するべきではない。
【0062】
さらに、語句「実質上含む」は、特に記述される要素、及び請求された発明の基本及び新規の特性に著しく影響を及ぼさない追加要素を含むと理解される。語句「から構成される」は、明確に指定されていない要素を除外する。さらに、開示の特徴または側面がマーカッシュグループの観点から記述される場合、それによって、当事者はマーカッシュグループのメンバーの個々のメンバーまたはサブグルーブの観点からも開示が記述されることを認識する。
【0063】
本願明細書で使用される場合、「約」は当事者には明らかであり、使用される文脈に応じてある程度変わることがある。当事者にとって明確ではない用語が使用される場合、使用される文脈かに判断して、「約」は特定の用語の最高プラスマイナス10%を意味することがある。
【0064】
すべての出版、特許出願、発行済み特許、及び本明細書で言及される他の文書は、まるで個々の出版、特許出願、発行済み特許、または他の文書が全体として参照することにより援用されると明確及び個別に示されるように、参照することにより本明細書に援用される。参照することにより援用される文書に記載される定義は、本開示での定義を否定する場合を除く。
【0065】
こうして一般的に記述される本発明は、以下の実施例を参照することによってより簡単に理解される。その実施例は図によって提供され、本発明を制限することを目的とするものではない。
【実施例】
【0066】
以下の略語が使用される:GMAはメタクリル酸グリシジルであり;STYはスチレンであり;BAはアクリル酸ブチルであり;2−EHAはアクリル酸2−エチルヘキシルであり;及びMMAはメタクリル酸メチルである。
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の反応器内鎖延長
【0067】
鎖延長剤:上述のように高温フリーラジカル連続重合(SGO)を用いて4つのエポキシ官能性鎖延長剤を製造した。これらの鎖延長剤に関する詳細特性を表3に示す。
【表3】

【0068】
分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定され、ポリスチレン標準物質と比較される。組成は物質収支法を用いて予測し、重合原料、蒸留物及び樹脂残留物のガスクロマトグラフィー(GC)特性に基づいた。エポキシ当量は、ASTM D 1652−90に基づく過塩素酸滴定法を用いて測定した。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定され、最初の加熱サイクルの中間点として定義された。鎖あたりの数及び重量平均官能価(Fn及びFw)は、SEC数及び重量平均分子量(Mn及びMw)をエポキシ当量で割ることで計算された。
【0069】
それら設計された特性、すなわち順々に得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)を定義する単量体、組成、及びSEC分子量平均値により、鎖延長剤は室温で固体または液体の化学的に官能化された重合体である。例として、鎖延長剤1及び鎖延長剤2は、室温で固体にする(Tg>25℃)単量体組成及びSEC分子量平均値を有する。あるいは、Tgの低い(Tg<25℃)共重合体が作られると、液体の鎖延長剤を生じることになる。Tgと分子量が十分に低い場合(つまり、Tg<−40℃及びMw<10,000)、液体鎖延長剤は室温で低い粘度を示す。例えば、鎖延長剤3及び鎖延長剤4は、液体として取り扱われるように十分に低い粘度有しつつ、2つの固体材料である鎖延長剤2及び鎖延長剤1と同様の官能価を持つように設計された。鎖延長剤3及び4は、分子量、官能価、及び粘度のバランスを最大限に高めるように設計された。固体または液体として設計される予定の鎖延長剤の能力は、重縮合の反応器内鎖延長で使用される予定の鎖延長剤の適切な原料流の実施において付加的利点を与える。
【0070】
一部の実施形態において、鎖延長剤は、エステル化または溶融重合反応器の真空を破らないように適切な固体添加口に固体としてエステル化または溶融重合反応器システムに添加できる。他の実施形態において、液体鎖延長剤は、反応混合物中では好ましくないかもしれない溶媒希釈を用いる必要なく、当技術分野で周知の従来の送液機器を備えた溶融重合またはエステル化反応器の中に添加または送液できる。
【0071】
一部の実施形態において、鎖延長剤は、適切なプラスチック担体に入った固体濃縮物(マスターバッチ)として、固体または液体のいずれかで添加できる。これらの濃縮物での担体として同じ重縮合重合体を用いて、異物が反応器システムに導入されないようにする。一部の実施形態において、鎖延長剤は、適切な液体の担体に液体の希釈物(溶液または液体マスターバッチ)して、固体または液体のいずれかで添加される。これの液体濃縮物中の液体の担体として単量体、反応溶媒、または反応添加剤など、システムに同じ液体成分を用いて、異物が反応器システムに導入されないようにする。
【0072】
反応器内鎖延長:反応器内鎖延長には、PETの重合処理または他の重縮合の間に、例示されたもの、及び表3に記載のものなどの鎖延長剤の1つの添加を含む。特に、鎖延長剤は、所定の時間に、図解1の式2に示されたバッチ重合処理の重縮合段階の間に添加された。時間は、PETのSIVが0.4dL/gになるときに、明確に定義された攪拌機トルク、粘度の関係を用いて定義された。実験は表4に要約されている。実施例3を除き、重合は0.6dL/gのSIVで終了された。鎖延長剤の添加は、両側にボール弁の付いた加圧ステンレス鋼製添加容器を用いて行われた。固体鎖延長剤の場合、顆粒を容器に加え、窒素でパージし、添加中の溶融を防ぐために冷却した。添加容器は反応器の上部に取り付けられ、上部のボール弁に窒素配管が取り付けられ、加圧された。添加時に下部ボール弁が開けられると、反応器は容器が内容物を真空排出した。ボール弁は60秒間開いたままにされ、その後閉じられ、上部の弁は容器を加圧するために開けられた。上部の弁を閉じた後、残りの鎖延長剤を排出するために下部の弁が再び開けられた。液体鎖延長剤の場合、粘度を下げるために添加の1時間前に液体を加熱した。

表4.反応器内鎖延長実験の概要

実施例 重合
No. 鎖延長剤 濃度 SIVa SSP SIVb
(%,w/w) (dL/g) (dL/g)
対照 NA;対照 NA 0.600 0.811
1 鎖延長剤1 0.10 0.601 0.809
2 鎖延長剤1 0.20 0.603 0.808
3 鎖延長剤1 0.20 0.720 0.840
4 鎖延長剤2 0.31 0.597 0.825
5 鎖延長剤3 0.32 0.595 0.779
6 鎖延長剤4 0.32 0.603 0.770
(a)重縮合の後に測定された溶液固有粘度。(b)固体重合の後に測定された溶液固有粘度。NA−適用外。

すべての材料が、シートやボトルを製造するのに十分な分子量に結晶化及び固体重合された。以下でさらに述べられるように、溶融及び固体重合時間が監視され、生産効率の指標として使用された。実施例5及び6のSSPは、実施例5の前に機器を変更したために、他の重合と直接比較することはできない。
【0073】
表4に関して、対照例は鎖延長を受けない直鎖PET対照だった。すべての後の実験の結果が対照例と比較された。低及び中程度の鎖延長剤濃度を用いた実施例1及び2はそれぞれ、鎖延長剤1反応器内鎖延長と関連がある可能性がある典型的な重合時間短縮を定義するために設計された。短縮された重合時間はプラント効率の向上に使用できる。実施例3は実施例2と同一であるが、PETシートに求められる典型的な値である約0.700dL/gのSIVに重合された。当該重合体では、さらに費用のかかるSSPは不要である。実施例4は、同じエポキシ当量で鎖延長剤1を低官能価の鎖延長剤2に置き換えることを伴った。過剰な分岐またはゲルと関係があるヘイズを下げるために、低い官能価が期待された。実施例5は、分子量及び官能価に関して鎖延長剤2と同等である液体鎖延長剤3を用いる実施例4と同じ実験を伴った。液体鎖延長剤には、食品接触物質の承認を得やすくするためにスチレン単量体を含まなかった。実施例6は、低分子量液体鎖延長の鎖延長剤4を用いた実施例5と同じ実験を伴った。
【0074】
溶融重合結果:PETのバッチ重合における標準的技法は、分子量の変化を監視するために定速度で経時的に攪拌機トルクを測定することである。対照例、実施例1、及び実施例2の重合時間に対する攪拌機トルク及び速度の記録を図2に示す。1200lbf/in及び52rpmでの鎖延長剤1の添加を強調した。トルク記録の鋸歯状パターンは、速度記録の階段状パターンで見られる速度減少によるものだった。重合は、0.6dL/gのSIVに相当する20rpmsの1800lbf/inで終了された。本願明細書で使用される場合、lbfは4.45ニュートンに等しい1lbfのポンドホースの略語である。重合時間の著しい短縮が、攪拌機トルクと速度の記録の両方で見られた。つまり、鋸歯状及び階段状パターンは、対照例と比較した場合の実施例1及び実施例2の短縮時間に対するオフセットである。実施例2記録のオフセットは実施例1よりも大きい。重合時間の実際の短縮は図3に要約した。
【0075】
このデータから3つの結論が導くことができる。第1には、非常に少ない鎖延長剤(<0.3%)を用いて著しい重合時間の節約を実現できる。第2には、等しいエポキシ当量で使用された場合、鎖延長剤1及び2は同様に機能する。第3には、液体鎖延長剤(鎖延長剤3及び4)は、同等のエポキシ当量で使用される場合に固体同等品ほどの効率ではない。これは、反応速度の変化によるものであるだろう。アクリル酸ブチルベースの鎖延長剤は、スチレン含有の鎖延長剤よりも遅くカルボン酸基と反応することが分かった(データは示さず)。鎖延長剤1、及びオクタン酸に混合されたアクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル共重合体の示差走査熱量測定法(DSC)の記録が得られた。ペーストを作成するために鎖延長剤1及びオクタン酸が混ぜられ、DSCサンプルパンに載せられ、加熱された。同じ手順が液体鎖延長剤に用いられ、透明な粘ちょう液を得た。液体オリゴマーより30℃低く起こる鎖延長剤1とオクタン酸の混合物の反応発熱は、スチレンベースの鎖延長剤がアクリル酸ブチルをベースとした鎖延長剤よりも約8倍反応性が高いことを示唆している。この傾向は、液体鎖延長剤で見られた鎖延長剤の効率低下と一致する(データは示さず)。
【0076】
上述のように、開示される反応器内鎖延長法は、方法を用いた重合プラントの能力を高めることが期待されている。図4には、30〜40%の能力増加が鎖延長剤1及び2をそれぞれ0.3及び0.2%(w/w)で使用する場合に実現できるだろうことを示す。この計算は、並列運転される別個の反応器で段階1及び段階2が行われる50,000MT/yrのバッチ重合に当てはまる。本願明細書で使用される場合、MTは1000トンの略語である。定義したように、この処理における律速段階は重縮合段階である。
【0077】
固体重合結果:溶融重合反応器で期待する分子量が実現されるとすぐに、内容物は押し出され、ペレット化された。非結晶ペレットは回転式真空乾燥機に移され、乾燥及び結晶化のために真空下でそのT(Tmax=130℃)以上にゆっくりと加熱された。この段階が完了すると、結晶化されたペレットが非常に高い真空下でさらに加熱(Tmax=220℃)されるSSPが始められた。この研究では、すべての材料が0.8dL/gのSIVにSSP処理された。図5は、対照例、実施例1、実施例2及び実施例4の結果を要約する。この図に示された結果は、0.6dL/gに等しい開始SIVに正規化された。溶融重合結果と同様に、反応器内鎖延長剤を用いる、及び/またはSSPの前に鎖延長剤を導入することで、SSP時間が短縮され、大幅な能力増強を実現できた。
【0078】
全体的な処理結果:溶融及び固体重合時間を組み合わせて、反応器内鎖延長に関連する全体的な処理時間の利点を説明する。図7及び8はそれぞれ、0.7及び0.8dL/gの等級のPETを生成する総処理時間を要約する。図6で説明される時間の利点は、繊維、フィルム、及び低級シート(図2を参照)の製造に適用することができた。特に実施例3では、PETは溶融反応器内でIV=0.7dL/gに重合され、SSPは完全に不要になった。同様の処理上の利点を、より高級な用途に使用されるPETに対して図7に示す。
【0079】
材料特性への影響:上述のように、本研究で使用される鎖延長剤には、かなりの量の重合体分岐を発生させることが期待されるだろう。意外にも、鎖延長PETの機械的及び熱的性質への悪影響は一切見られなかった。機械的及び熱的性質への反応器内鎖延長の影響は、水ボトルの射出ブロー成形研究で評価された。反応器内鎖延長が軸方向及び半径方向の水ボトルの引張特性、結晶化度、または結晶化速度に影響を及ぼさないことが分かった。
【0080】
しかし、鎖延長PETの分岐は重合体のレオロジーに影響を及ぼしたように思われる。対照例、実施例1、及び実施例2の溶融粘度を研究した。その結果は図.8に示す。材料それぞれのSIVは、約0.6dL/gと測定された(表4の第5列を参照)。6.3s−1でコーンプレート粘度計を用いて、粘度の記録が得られた。すべての温度で、鎖延長材料の粘度は対照例より大きいと測定された。さらに具体的には、実施例2の粘度は同様のSIVで対照例の2倍だった。
【0081】
溶液固有粘度は、重合体−溶剤相互作用が重要に場合の非相互作用重合体球の流体力学的容積(つまり、無限希釈)の指標である。一方で、溶融粘度は重合体−重合体相互作用に大きく依存する。同様の流体力学半径及び希釈液挙動を有する直鎖及び分岐材料の組み合わせを想像するのはたやすい(例えば、対照例と実施例2)。しかし、バルク条件下では、図8に示すように多くの相互作用位置を有する分岐種は高い低剪断粘度を示すだろう。
【0082】
押出及び低級ブロー及び射出成形中に典型的に経験する剪断速度における粘度を図.9に示した。図.8に示される溶融粘度結果と一致して、低剪断速度で鎖延長材料(実施例1及び実施例2)に対して高い粘度が見られた。約300s−1で、粘度の交差が見られた。交差は、比較的に穏やかな条件の下で低剪断粘度を支配する重合体−重合体相互作用を阻害する可能性があることを示し、弱い相互作用を意味することになる。このことは、鎖延長材料の処理可能性を知る上で手掛かりとなる。鎖延長材料押出、ブロー、及び射出成形中に低い粘度を示すが、低い剪断処理中には高い粘度を示し、処理可能性の向上につながる。
【0083】
特定の実施形態を図解し述べてきたが、当然のことながら、以下の請求項で定義されるようにその広い側面において発明から逸脱することなく通常の技術に従って変更及び修正を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
鎖延長縮合重合体を提供するために縮合重合体の重合処理中に鎖延長剤を添加することを含み、
前記鎖延長剤が、
少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、
少なくとも1つのスチレン単量体、置換スチレン単量体、(メタ)アクリル単量体、またはその2つ以上の混合物と、
の重合生成物を含む、方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
前記鎖延長剤が2以上の官能価を有する、方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、
前記鎖延長剤が2を超える官能価を有する、方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
前記官能性(メタ)アクリル単量体がエポキシ官能性(メタ)アクリル単量体である、方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、
前記エポキシ官能性(メタ)アクリル単量体がメタクリル酸グリシジルである、方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、
前記スチレン単量体はスチレンであり、かつ
前記(メタ)アクリル単量体がアクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、または(メタ)アクリル酸メチルである、方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、
前記鎖延長剤が、鎖延長剤及び縮合重合体の成分の総重量に対して約0.03〜約10重量%の量で縮合重合体に添加される、方法。
【請求項9】
請求項1の方法であって、
前記縮合重合体がポリエステル、ポリアミド、またはポリカーボネートから選択される、方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、
前記縮合重合体がポリエステルである、方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、
前記縮合重合体がバイオポリエステルである、方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、
前記バイオポリエステルが、一般式CH−CH(OH)−(CH−COOHまたはCH(OH)−(CH)n−COOHを有する単量体の重合生成物を含む、ポリ(乳酸)、ポリ(2−ヒドロキシ酪酸)、または別のバイオエステルであり、
ここで、nは1以上である、方法。
【請求項13】
請求項1の方法であって、
少なくとも約0.6dl/gの鎖延長縮合重合体の溶液固有粘度が約90分以下の時間で達成される、方法。
【請求項14】
請求項1の方法であって、
当該方法が、固体重合による鎖延長縮合重合体を処理することを含まない、方法。
【請求項15】
方法であって、
鎖延長ポリエステルを提供するためにポリエステルの重合処理中に鎖延長剤を添加することを含み、
前記鎖延長剤が、
少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、
少なくとも1つのスチレン単量体、置換スチレン単量体、(メタ)アクリル単量体、またはその2つ以上の混合物と、
の重合生成物を含む、方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、
前記重合処理がバッチ重合処理または連続重合処理である、方法。
【請求項17】
請求項15の方法であって、
前記鎖延長剤が、バッチ重合処理の重合段階中に添加される、方法。
【請求項18】
方法であって、
鎖延長ポリエステルを提供するためにポリエステルの重合処理中に鎖延長剤を添加することを含み、
前記鎖延長剤が、
少なくとも1つの官能性(メタ)アクリル単量体と、
少なくとも1つのスチレン単量体、置換スチレン単量体、(メタ)アクリル単量体、またはその2つ以上の混合物と、
の重合生成物を含み、
前記重合処理がバッチ重合処理または連続重合処理であり、
前記鎖延長剤が、縮合重合体の溶液固有粘度が約0.6dL/gのときに添加され、
前記鎖延長縮合重合体の分子量が、鎖延長剤なしで分子量を達成する時間よりも短い時間で達成される、方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、
前記鎖延長縮合重合体が、鎖延長剤なしで形成される縮合重合体よりも高い溶融粘度を示す、方法。
【請求項20】
請求項1の方法で形成される鎖延長縮合重合体。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−500355(P2013−500355A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521749(P2012−521749)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042722
【国際公開番号】WO2011/011498
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510021029)バスフ コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】BASF CORPORATION
【Fターム(参考)】