説明

反応器

【課題】水蒸気を生成する性能を向上させる。
【解決手段】第一反応器10は、水と反応した際に生じる反応熱によって水蒸気を生成し、加熱されることによって水と分離されて蓄熱する化学蓄熱材30と、化学蓄熱材30を内蔵する熱交換器40と、を備えている。熱交換器40は、化学蓄熱材30が収容された蓄熱材収容空間42と、蓄熱材収容空間42と連通する複数の吐出口50、外部水供給部と接続される主管52、及び、主管52と複数の吐出口50とを連通する支管54を有して構成された水流路44と、化学蓄熱材30を加熱する熱媒を流通させるための熱媒流路46と、を有している。蓄熱材収容空間42は、鉛直方向に沿って延びると共に、鉛直方向上側の端部に化学蓄熱材30で生成された水蒸気を外部に放出する放出口48を有し、支管54に供給される水の流れの方向と、放出口48から水蒸気が放出される方向は、一致されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質管と、この多孔質管の内部に充填された複数の酸化カルシウム成型体と、この複数の酸化カルシウム成型体の間にそれぞれ積層された耐熱性多孔質部材とを備えた反応器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−180539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この反応器では、酸化カルシウム成型体の水和膨張圧が数MPa程度と大きいので、耐熱性多孔質部材が圧縮変形または崩壊しないようにするには気孔率を低く(80%程度以下)する必要がある。ところが、この場合には、圧損が大きいため水蒸気分圧が低下し、蓄熱材の反応性が低下する。また、耐熱性多孔質部材の熱容量が大きいため、利用できる熱量が低下する。すなわち、耐熱性多孔質部材を用いる従来技術では、水蒸気を生成する性能が低い。
【0005】
本発明は、水蒸気を生成する性能を向上させることができる反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の反応器は、水と反応した際に生じる反応熱によって水蒸気を生成し、加熱されることによって水と分離されて蓄熱する化学蓄熱材と、前記化学蓄熱材を内蔵する熱交換器と、を備え、前記熱交換器は、鉛直方向に沿って延びて前記化学蓄熱材を収容すると共に、鉛直方向上側の端部に前記化学蓄熱材で生成された水蒸気を外部に放出する放出口を有する蓄熱材収容空間と、前記蓄熱材収容空間と連通する複数の吐出口、外部水供給部と接続される主管、及び、前記主管と前記複数の吐出口とを連通する支管を有して構成された水流路と、を有し、前記支管に供給される水の流れの方向と、前記水蒸気が放出される方向が一致されている。
【0007】
この反応器によれば、水流路を熱交換器の内部に設け、複数の吐出口から化学蓄熱材全体に水を供給するため、化学蓄熱材全体が水と均一に反応できる。また、このような構成とすることで、より多くの吐出口を容易に設けることができるため、水の浸透距離を減らすことができ、水和反応熱によって生じる水蒸気が化学蓄熱材内部への水の浸透を妨げる流路閉塞作用を大幅に抑制させることができる。これにより、化学蓄熱材全体を均一に反応させることができるため、反応速度が向上し、結果的に得られた反応熱によって水蒸気を生成する性能を向上させることができる。
【0008】
しかも、支管に供給される水の流れの方向と、蓄熱材収容空間から外部に放出される水蒸気の放出方向とが一致されている。これにより、水蒸気の生成温度分布による水の供給の阻害を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の反応器は、請求項1に記載の反応器において、前記熱交換器が、前記水流路が形成された水流路形成壁部を有し、前記複数の吐出口が、前記水流路形成壁部における前記放出口側の非形成領域よりも鉛直方向下側に形成されているものである。
【0010】
反応器では、鉛直方向下側において熱生成、水蒸気生成を、鉛直方向上側において熱生成、水蒸気をスーパヒートすることが理想となる。
【0011】
従って、この反応器のように、複数の吐出口が、水流路形成壁部における放出口側の非形成領域よりも鉛直方向下側に形成されていると、放出口の周辺部への水の供給による温度低下を抑制し、鉛直方向下側において生成した水蒸気による水和反応による熱を水蒸気へ効果的に回収するスーパヒートが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の反応器は、請求項2に記載の反応器において、前記非形成領域における前記水流路形成壁部と前記化学蓄熱材との間に伝熱部が設けられているものである。
【0013】
この反応器によれば、非形成領域には、水流路が形成された水流路形成壁部と化学蓄熱材との間に伝熱部が設けられているので、発熱状態にある化学蓄熱材と水流路との対流熱交換を促進し、より効果的に高温の水蒸気を生成することができる。
【0014】
請求項4に記載の反応器は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反応器において、前記蓄熱材収容空間が、前記放出口に向かうに従って断面積が拡大されているものである。
【0015】
この反応器では、水蒸気の流れ方向に対し生成水蒸気量の増加、温度上昇による流速の増加が発生する。従って、この反応器のように、蓄熱材収容空間が、放出口に向かうに従って断面積が拡大されていると、内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の反応器は、請求項4に記載の反応器において、前記蓄熱材収容空間が、前記水流路形成壁部における前記水流路が形成された以外の部分に肉盗み部が形成されることで、前記放出口に向かうに従って断面積が拡大されているものである。
【0017】
この反応器によれば、蓄熱材収容空間は、水流路が形成された水流路形成壁部における水流路が形成された以外の部分に肉盗み部が形成されることで、放出口に向かうに従って断面積が拡大されている。従って、水流路の断面積を確保しつつ、蓄熱材収容空間の断面積を拡大し、内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の反応器は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の反応器において、前記複数の吐出口が、千鳥状に配列されているものである。
【0019】
この反応器によれば、複数の吐出口は、千鳥状に配列されているので、最少口数で化学蓄熱材全体により均一に水を供給することができる。
【0020】
請求項7に記載の反応器は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の反応器において、前記放出口に、鉛直方向上側に向かうに従って縮径する絞り部が形成されているものである。
【0021】
この反応器によれば、放出口には、鉛直方向上側に向かうに従って縮径する絞り部が形成されているので、内部断面積を拡大し内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる。また、上流部での水蒸気空間を縮小することで液水貯留による温度低下を抑制することができる。
【0022】
請求項8に記載の反応器は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の反応器において、前記複数の吐出口の各々の鉛直方向下側に、前記蓄熱材収容空間内を鉛直方向上側に向かって流れる水蒸気を遮蔽する遮蔽部が設けられているものである。
【0023】
吐出口付近では、吐出口より供給された水と上流側で生成された水蒸気が干渉することで供給水の分散を阻害する傾向を示す。本来、供給水は分散配置され、吐出された供給水を吐出口間を補完するように均一に分散供給する(濡れ広がる)ことが必要となる。一方で、上流側で生成された水蒸気は流量、速度を増加して系内を流動する。
【0024】
従って、この反応器のように、複数の吐出口の各々の鉛直方向下側に、蓄熱材収容空間内を鉛直方向上側に向かって流れる水蒸気を遮蔽する遮蔽部が設けられていると、上流からの水蒸気流れの干渉を抑制し、吐出口からの効果的な水の分散供給が可能となる。
【0025】
請求項9に記載の反応器は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の反応器において、前記化学蓄熱材が、加熱されることによって水と分離されて蓄熱し、前記熱交換器が、前記化学蓄熱材を加熱する熱媒を流通させるための熱媒流路を有するものである。
【0026】
この反応器によれば、熱媒流路に熱媒を流通させることで、化学蓄熱材を加熱することができ、これにより、化学蓄熱材を水と分離させて蓄熱させることができる。この結果、化学蓄熱材を再生することができる。
【0027】
なお、請求項10に記載のように、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の反応器は、第一反応器と、前記第一反応器から供給された水蒸気により水和反応を生じることで発熱し加熱により脱水反応を生じることで蓄熱する化学蓄熱材を内蔵する第二反応器と、を備えた化学蓄熱装置における、前記第一反応器として用いられると好適である。
【0028】
このようにすると、第一反応器に内蔵された化学蓄熱材が水と反応することで発熱し、さらに水が化学蓄熱材に供給されることで水蒸気が生成され、この高温の水蒸気が第二反応器において化学蓄熱材と水和反応することで発熱される。従って、第一反応器及び第二反応器の二段階で発熱されるので、一つの反応器にて水和反応させた場合に比して、高温を発生させることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上詳述したように、本発明によれば、水蒸気を生成する性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る水蒸気生成システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示される第一反応器の斜視図である。
【図3】図1に示される第一反応器の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図4に示される水流路形成壁部をC−C方向から見た矢視図である。
【図7】図1に示される第一反応器の変形例を示す分解斜視図である。
【図8】図1に示される第一反応器の他の変形例を示す断面図である。
【図9】図6に示される水流路形成壁部の変形例を示す図である。
【図10】図9に示される水流路形成壁部に沿う水蒸気の流れを示す図である。
【図11】図10に示される吐出口周辺部の変形例を示す図である。
【図12】図6に示される水流路形成壁部の変形例を示す図である。
【図13】図12のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0032】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る水蒸気生成システムSは、本発明における反応器の一例である第一第一反応器10と、第二第一反応器100と、水タンク12と、液送ポンプ14及びバルブ16が設けられた水供給管18と、配管19と、水蒸気排出管20とを備えている。
【0033】
水タンク12には、水22が貯留されている。第一反応器10は、水供給管18によって水タンク12と密閉状態で接続されている。この第一反応器10は、水タンク12から水が供給されると、水蒸気を生成し、配管19を通じて第二反応器100に水蒸気を供給するものである。第二反応器100は、第一反応器10と同一の構成とされており、第一反応器10から水が供給されると、水蒸気を生成し、水蒸気排出管20を通じて外部に水蒸気を供給するものである。第一反応器10は、具体的には、次の構成とされている。
【0034】
すなわち、第一反応器10は、図2〜図5に示されるように、化学蓄熱材30と、この化学蓄熱材30を内蔵する熱交換器40とを備えている。化学蓄熱材30は、水と反応した際に生じる反応熱によって水蒸気を生成し、加熱されることによって水と分離されて蓄熱する。この化学蓄熱材30としては、例えば、プレート状に成型されたもの、又は、粒子状のものが用いられる。
【0035】
本実施形態では、化学蓄熱材30として、アルカリ土類金属の水酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO)が用いられている。従って、第一反応器10では、以下の如く、水和反応及び脱水反応が可逆的に繰り返し得るようになっている。
CaO + HO ⇔ Ca(OH)
【0036】
なお、この式に蓄熱量及び発熱量Qを併せて示すと、以下のようになる。
Ca(OH) + Q → CaO + H
CaO + HO → Ca(OH) + Q
【0037】
熱交換器40は、化学蓄熱材30が収容された蓄熱材収容空間42と、上述の水供給管18(図1参照)と蓄熱材収容空間42とを連通する水流路44と、化学蓄熱材30を加熱する熱媒を流通させるための熱媒流路46と、を有している、
【0038】
蓄熱材収容空間42は、鉛直方向に沿って延びると共に、鉛直方向上側の端部に化学蓄熱材30で生成された水蒸気を外部に放出する放出口48を有している。この放出口48は、上述の配管19(図1参照)と接続されている。
【0039】
水流路44は、蓄熱材収容空間42と連通する複数の吐出口50、外部水供給部の一例である水供給管18と接続される主管52、及び、主管52と複数の吐出口50を連通する支管54を有して構成されている。
【0040】
支管54は、図6に示されるように、複数の分岐部を有する樹形形状とされている。また、複数の吐出口50は、鉛直方向(Z方向)に配列されており、本実施形態では、一例として、千鳥状に配列されている。
【0041】
さらに、支管54に供給される水の流れの方向と、蓄熱材収容空間42から外部に放出される水蒸気の放出方向とが一致されている(いずれも放出口48側とされている)。
【0042】
また、熱交換器40は、水流路44が形成された水流路形成壁部56を有しており、上述の複数の吐出口50は、この水流路形成壁部56における鉛直方向上側(上述の放出口48側)の非形成領域58よりも鉛直方向下側に形成されている。
【0043】
また、図4に示されるように、熱媒流路46には、フィン60が設けられている。この熱媒流路46と蓄熱材収容空間42との間には、隔壁部62が形成されている。
【0044】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
本発明の第一実施形態に係る第一反応器10によれば、水流路44を熱交換器40の内部に設け、複数の吐出口50から化学蓄熱材30全体に水を供給するため、化学蓄熱材30全体が水と均一に反応できる。また、このような構成とすることで、より多くの吐出口50を容易に設けることができるため、水の浸透距離を減らすことができ、水和反応熱によって生じる水蒸気が化学蓄熱材30内部への水の浸透を妨げる流路閉塞作用を大幅に抑制させることができる。これにより、化学蓄熱材30全体を均一に反応させることができるため、反応速度が向上し、結果的に得られた反応熱によって水蒸気を生成する性能を向上させることができる。
【0046】
また、支管54は、複数の分岐部を有する樹形形状とされているので、動圧を利用して水を分配することができる。これにより、複数の吐出口50から同時に水を吐出させることができる。
【0047】
さらに、複数の吐出口50は、千鳥状に配列されているので、最少口数で化学蓄熱材30全体により均一に水を供給することができる。
【0048】
また、支管54に供給される水の流れの方向と、蓄熱材収容空間42から外部に放出される水蒸気の放出方向とが一致されている(いずれも放出口48側とされている)。これにより、水蒸気の生成温度分布による水の供給の阻害を抑制することができる。
【0049】
ところで、反応器では、鉛直方向下側において熱生成、水蒸気生成を、鉛直方向上側において熱生成、水蒸気をスーパヒートすることが理想となる。
【0050】
従って、この第一反応器10のように、複数の吐出口50が、水流路形成壁部56における鉛直方向上側(上述の放出口48側)の非形成領域58よりも鉛直方向下側に形成されていると、放出口48の周辺部への水の供給による温度低下を抑制し、鉛直方向下側において生成した水蒸気による水和反応による熱を水蒸気へ効果的に回収するスーパヒートが可能となる。
【0051】
また、熱媒流路46に熱媒である水蒸気を流通させることで、化学蓄熱材30を加熱することができ、これにより、化学蓄熱材30を水と分離させて蓄熱させることができる。この結果、化学蓄熱材30を再生することができる。
【0052】
また、本発明の第一実施形態に係る化学蓄熱装置Sによれば、上述のように、第一反応器10に内蔵された化学蓄熱材30が水と反応することで発熱し、さらに水が化学蓄熱材30に供給されることで水蒸気が生成され、この高温の水蒸気が第二反応器100において化学蓄熱材と水和反応することで発熱される。従って、第一反応器10及び第二反応器100の二段階で発熱されるので、一つの反応器にて水和反応させた場合に比して、高温を発生させることができる。
【0053】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0054】
図7に示されるように、水流路形成壁部56には、複数の吐出口50以外の部分に、蓄熱材収容空間42と連通し、化学蓄熱材30で生成された水蒸気を流通させるための水蒸気流路70が複数形成されていても良い。なお、この変形例では、一例として、複数の水蒸気流路70は、鉛直方向(Z方向)に延びると共に、水平方向に並んで形成されている。
【0055】
このように構成されていると、水蒸気の流路の断面積を拡大し、内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる。また、水が供給されて発熱した化学蓄熱材30に、さらに水蒸気を供給することができ、より高温の水蒸気を生成することができる。
【0056】
また、この水蒸気流路70は、複数の吐出口50以外の部分に形成されているので、生成された水蒸気が吐出口50に流入して、吐出口50から化学蓄熱材30への水の供給が妨げられることを抑制することができる。
【0057】
なお、複数の吐出口50、及び、水蒸気流路70における蓄熱材収容空間42側の開口を塞ぐように、水流路形成壁部56と化学蓄熱材30との間に多孔体72が設けられていても良い。ここでは、多孔体72の一例として、ステンレス製のメッシュが用いられている。このようにすると、化学蓄熱材30の反応により飛散した飛散物が複数の吐出口50又は水蒸気流路70に詰まることを抑制することができる。
【0058】
また、図8に示されるように、水流路形成壁部56と化学蓄熱材30との間には、断熱部76が設けられていても良い。
【0059】
このように構成されていると、化学蓄熱材30の熱が水流路44(支管54)に伝達されて、水流路44内に水蒸気が生じることを抑制することができる。
【0060】
また、図8に示されるように、水流路形成壁部56には、突起状の拘束部77が形成され、化学蓄熱材30は、熱媒流路46と蓄熱材収容空間42との間の隔壁部62と、拘束部77(水流路形成壁部56)とによって拘束されていても良い。
【0061】
このように構成されていると、水和反応又は脱水反応に伴う体積変化で化学蓄熱材30が崩壊することを抑制することができる。
【0062】
また、図8に示されるように、非形成領域58には、水流路形成壁部56と化学蓄熱材30との間に伝熱部78が設けられていても良い。なお、この伝熱部78としては、例えば、フィンや多孔体を用いることができる。
【0063】
このように構成されていると、発熱状態にある化学蓄熱材30と水流路44との対流熱交換を促進し、より効果的に高温の水蒸気を生成することができる。
【0064】
また、図9に示されるように、放出口48には、鉛直方向上側に向かうに従って縮径する絞り部80が形成されていても良い。
【0065】
このように構成されていると、内部断面積を拡大し内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる(図10参照)。また、上流部での水蒸気空間を縮小することで液水貯留による温度低下を抑制することができる。
【0066】
また、図11に示されるように、複数の吐出口50の各々の鉛直方向下側には、蓄熱材収容空間42内を鉛直方向上側に向かって流れる水蒸気を遮蔽する遮蔽部82が設けられていても良い。なお、この変形例では、一例として、遮蔽部82は、鉛直方向下側に凸を成す円弧状に形成されている。
【0067】
吐出口50付近では、吐出口50より供給された水と上流側で生成された水蒸気が干渉することで供給水の分散を阻害する傾向を示す。本来、供給水は分散配置され、吐出された供給水を吐出口50間を補完するように均一に分散供給する(濡れ広がる)ことが必要となる。一方で、上流側で生成された水蒸気は流量、速度を増加して系内を流動する。
【0068】
従って、この変形例のように、複数の吐出口50の各々の鉛直方向下側に、蓄熱材収容空間42内を鉛直方向上側に向かって流れる水蒸気を遮蔽する遮蔽部82が設けられていると、上流からの水蒸気流れの干渉を抑制し、吐出口50からの効果的な水の分散供給が可能となる。
【0069】
また、図12,図13に示されるように、蓄熱材収容空間42は、水流路形成壁部56における水流路44が形成された以外の部分に肉盗み部84が形成されることで、鉛直方向上側(放出口48側)に向かうに従って断面積が拡大されていても良い。なお、図12では、理解のようにために、ドットが付された領域によって肉盗み部84が示されている。
【0070】
この第一反応器10では、水蒸気の流れ方向に対し生成水蒸気量の増加、温度上昇による流速の増加が発生する。従って、この変形例のように、蓄熱材収容空間42が、放出口48に向かうに従って断面積が拡大されていると、内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる。
【0071】
また、水流路形成壁部56における水流路44が形成された以外の部分に肉盗み部84が形成されることで、蓄熱材収容空間42が放出口48に向かうに従って断面積が拡大されていると、水流路44の断面積を確保しつつ、蓄熱材収容空間42の断面積を拡大し、内部水蒸気の流動に伴う圧力損失を低減することで水蒸気の排出をスムーズに行うことができる。
【0072】
なお、上記複数の変形例のうち、組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 第一反応器(反応器)
30 化学蓄熱材
40 熱交換器
42 蓄熱材収容空間
44 水流路
46 熱媒流路
48 放出口
50 吐出口
52 主管
54 支管
56 水流路形成壁部
58 非形成領域
62 隔壁部
70 水蒸気流路
76 断熱部
78 伝熱部
80 絞り部
82 遮蔽部
84 肉盗み部
100 第二反応器
S 水蒸気生成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と反応した際に生じる反応熱によって水蒸気を生成し、加熱されることによって水と分離されて蓄熱する化学蓄熱材と、
前記化学蓄熱材を内蔵する熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器は、
鉛直方向に沿って延びて前記化学蓄熱材を収容すると共に、鉛直方向上側の端部に前記化学蓄熱材で生成された水蒸気を外部に放出する放出口を有する蓄熱材収容空間と、
前記蓄熱材収容空間と連通する複数の吐出口、外部水供給部と接続される主管、及び、前記主管と前記複数の吐出口とを連通する支管を有して構成された水流路と、
を有し、
前記支管に供給される水の流れの方向と、前記水蒸気が放出される方向が一致されている反応器。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記水流路が形成された水流路形成壁部を有し、
前記複数の吐出口は、前記水流路形成壁部における前記放出口側の非形成領域よりも鉛直方向下側に形成されている、
請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記非形成領域には、前記水流路形成壁部と前記化学蓄熱材との間に伝熱部が設けられている、
請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
前記蓄熱材収容空間は、前記放出口に向かうに従って断面積が拡大されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記水流路が形成された水流路形成壁部を有し、
前記蓄熱材収容空間は、前記水流路形成壁部における前記水流路が形成された以外の部分に肉盗み部が形成されることで、前記放出口に向かうに従って断面積が拡大されている、
請求項4に記載の反応器。
【請求項6】
前記複数の吐出口は、千鳥状に配列されている、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記放出口には、鉛直方向上側に向かうに従って縮径する絞り部が形成されている、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項8】
前記複数の吐出口の各々の鉛直方向下側には、前記蓄熱材収容空間内を鉛直方向上側に向かって流れる水蒸気を遮蔽する遮蔽部が設けられている、
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項9】
前記化学蓄熱材は、加熱されることによって水と分離されて蓄熱し、
前記熱交換器は、前記化学蓄熱材を加熱する熱媒を流通させるための熱媒流路を有する、
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の反応器としての第一反応器と、
前記第一反応器から供給された水蒸気により水和反応を生じることで発熱し加熱により脱水反応を生じることで蓄熱する化学蓄熱材を内蔵する第二反応器と、
を備えた化学蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−220101(P2012−220101A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86229(P2011−86229)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)