反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置
【課題】実際に工業用の設備として稼働した場合でも、装置のメンテナンス性を向上させ、また金属粒子がノズルから逆流することを回避することで、実機のとしての稼働性を大きく向上させたケミカルループ燃焼装置A1を提供する。
【解決手段】ケミカルループ燃焼装置A1は、酸化塔1内に酸化剤を供給する酸化剤供給管63が酸化塔1の天面2側から底面側に向けて挿入されており、還元塔3内に還元剤を供給する還元剤供給管61は還元塔3の天面側から底面側に向けて挿入されている。酸化剤供給管63と還元剤供給管61は共通の取り付け用基板66に取り付けられることで、取り付けと取り外しが一層容易となる。
【解決手段】ケミカルループ燃焼装置A1は、酸化塔1内に酸化剤を供給する酸化剤供給管63が酸化塔1の天面2側から底面側に向けて挿入されており、還元塔3内に還元剤を供給する還元剤供給管61は還元塔3の天面側から底面側に向けて挿入されている。酸化剤供給管63と還元剤供給管61は共通の取り付け用基板66に取り付けられることで、取り付けと取り外しが一層容易となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子を酸化する酸化反応系と酸化金属粒子を還元する還元反応系との間で金属粒子および酸化金属粒子を循環させることで熱を得るようにしたケミカルループ燃焼法は知られている。ケミカルループ燃焼は、燃料を直接空気と燃焼させる代わりに、燃焼反応を「金属粒子の酸化」と、「酸化金属粒子の還元」という2つに分け、両者を物理的な粒子の循環で結ぶシステムである。燃料と空気は直接接触することがなく、金属を媒体として純酸素のやり取りをしている。
【0003】
ケミカルループ燃焼では、メタンなどの炭化水素燃料は、還元反応系において、あくまで酸化金属の還元剤として働き、また酸化反応系には、酸化剤としての空気と金属粒子だけが供給され、金属粒子の酸化反応によって発熱する。通常、酸化反応で生じる温度は800〜1200℃程度であり、主にN2である排ガスは比較的低温であることからサーマルNOxは殆ど生成しない。また、還元反応系では、燃料としての炭化水素と酸化金属から供給される酸素のみが存在し、そのため、排ガス成分はほぼ二酸化炭素と水だけとなる。そのために、排出されたガスを冷却して水を取り除けばほぼ純粋なCO2を容易に回収可能となる。
【0004】
ケミカルループ燃焼方式としては、非特許文献1に記載されるように、酸化塔の内部に還元塔が組み込まれている、いわゆる内部循環方式と、酸化塔と還元塔とが分離しており、両者は酸化した金属粒子の流路と還元した金属粒子の流路とによって接続されている、いわゆる外部循環方式とが提案されている。酸化塔内への酸化剤の供給および還元塔内への還元剤の供給は、内部循環方式の形態では酸化塔の底部に設けた酸化剤ノズルおよび還元剤ノズルから上方に噴出するようにして行っており、また、外部循環方式の形態では酸化塔の底部に設けた酸化剤ノズルから酸化剤を上方に噴出させ、還元塔の底部に設けた還元剤ノズルから還元剤を上方に噴出させるようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】外部循環:Use of NiO/NiAl2O4 Particles in a 10 kW Chemical-Looping CombustorMarcus Johansson, Tobias Mattisson, and Anders Lyngfelt,Ind. Eng. Chem. Res. 2006, 45, 5911 5919 内部循環:Experimental results of chemical-looping combustion with NiO/NiAl2O4 particle circulation at 1200 degrees C Ishida M, Yamamoto M, OhbaT ENERGY CONVERSION AND MANAGEMENT 2002, 43,9-12,1469-1478
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した非特許文献1に記載されるように、現在の提案されているケミカルループ燃焼装置は、還元剤である燃料と酸化剤は、還元塔および酸化塔に対して下部から供給する構成とされており、通常の工業用の設備として実利用する場合には、装置のメンテナンス性が非常に悪い。また、下部からノズルで燃料(還元剤)や空気(酸化剤)をする場合、気体の供給を止めたときに、ケミカルループ燃焼に使用される金属粒子は一例として直径が100μm程度の微粒子であるのために、金属粒子が上部に向いたノズルから逆流することが起こる。実際にケミカルループ燃焼装置を工業用の設備として用いる場合に、上記のことは無視できない不都合となる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、実際に工業用の設備として稼働した場合でも、装置のメンテナンス性を向上させ、また金属粒子がノズルから逆流することを回避することで、実機としての稼働性を大きく向上させることを可能とした、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるケミカルループ燃焼装置は、金属粒子が酸化剤と反応して前記金属粒子の酸化物が生成される酸化塔と前記酸化塔で生成された金属粒子の酸化物が還元剤と反応して前記金属粒子に還元される還元塔とを反応塔として備え、前記金属粒子が酸化と還元を受けながら前記酸化塔と前記還元塔との間を循環するようにされているケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔内に酸化剤を供給する酸化剤供給管および前記還元塔内に還元剤を供給する還元剤供給管の双方またはいずれか一方はそれぞれの反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によるケミカルループ燃焼装置では、酸化塔内に酸化剤(例えば空気)を供給する酸化剤供給管および還元塔内に還元剤(例えばメタン等の燃料ガス)を供給する還元剤供給管の双方またはいずれか一方は、それぞれの反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されている構成であり、ケミカルループ燃焼装置を組み立てるときに、クレーン等でそれらの部材を持ちあげて組み付けることあるいは取り外すことが可能となる。そのために、ケミカルループ燃焼装置の製造が容易となることに加え、稼働後でのメンテナンスもきわめて容易となる。さらに、反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されている酸化剤供給管およびまたは還元剤供給管は、下端部の開口端を下方に向けた姿勢で取り付けられているので、酸化剤あるいは還元剤の供給を停止したときに、その内部にケミカルループ燃焼に使用される金属粒子が逆流することはない。それによっても、非特許文献1に記載される形態のケミカルループ燃焼装置と比較して、そのメンテナンス性および稼働性は向上する。
【0010】
本発明によるケミカルループ燃焼装置において、前記酸化塔の内部に前記還元塔が1つまたは1つ以上組み込まれている形態でもよい。その場合、前記酸化塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることは金属粒子の移動を円滑にする観点から好ましい。
【0011】
また、本発明によるケミカルループ燃焼装置において、前記還元塔の内部に前記酸化塔が1つまたは1つ以上組み込まれている形態でもよい。この場合にも、前記還元塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることは金属粒子の移動を円滑にする観点から好ましい。
【0012】
本発明によるケミカルループ燃焼装置の好ましい形態において、前記酸化塔は複数本の酸化剤供給管を備えており、一部の酸化剤供給管は酸化剤と還元剤とが選択的に供給可能とされていることを特徴とする。この形態では、運転開始時に、複数本の酸化剤供給管の一部の還元剤(燃料ガス)を供給し、他の酸化剤供給管に酸化剤(空気)を供給することで、酸化塔内で酸化剤(空気)と還元剤(燃料ガス)の直接燃焼を生じさせることが可能となり、その熱を運転開始時での金属粒子の予熱に利用できる利点がある。所要の予熱が終了した時点で、還元剤の供給を停止して酸化剤の供給に切り替える。
【0013】
本発明によるケミカルループ燃焼装置の全体形状は、酸化塔と還元塔が一体とされているいわゆる内部循環式のケミカルループ燃焼装置であってもよく、酸化塔と還元塔とは分離していて両者は酸化した金属粒子の流路と還元した金属粒子の流路とによって接続されているいわゆる外部循環式のケミカルループ燃焼装置であってもよい。
【0014】
本発明によるケミカルループ燃焼装置の好ましい形態において、前記酸化塔または還元塔内には前記金属粒子またはその酸化物と接触して反応熱を被加熱流体に伝熱する伝熱管が配置されていることを特徴とする。
【0015】
上記形態のケミカルループ燃焼装置では、例えば酸化塔内に伝熱管を配置する態様では酸化塔内において、金属粒子の酸化反応で生じた熱は伝熱管内を流れる被加熱流体と熱交換される。そのために、酸化塔から排出される主にN2である投入空気(排ガス)の温度が大きく上がることがなく、酸化塔を通過するガス投入空気の平均温度も低くなる。その結果、空塔速度が抑えられるため、酸化塔の断面積を小さくすることができる。結果として、ケミカルループ燃焼装置の小型化が可能であり、燃焼量あたりの表面積も抑えることができ、放熱のロスも小さくできる。さらに、上記のケミカルループ燃焼装置では前記のように小型化が可能であり、伝熱管内を流れる被加熱流体の持つ熱をオンサイトでの蒸気利用設備や工業炉などの熱源として用いることも可能となる。また、伝熱管が還元塔内に配置されている態様では、酸化塔内での発熱反応により発生した熱を保有した金属粒子が還元塔へ循環して、伝熱管と接触することにより伝熱管内部の被加熱流体を加熱するようになる。
【0016】
なお、本発明において、酸化剤は、空気に加えて、酸素富化空気、低窒素空気なども用いることができる。還元剤には、天然ガス、LPGガス、製鉄所の副製ガス、水素、石炭なども利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際に工業用の設備として稼働した場合でも、装置のメンテナンス性が良く、また金属粒子がノズルから逆流することを回避することで、実機のとしての稼働性を大きく向上させた、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第1の形態である内部循環式の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図2】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第2の形態である外部循環式の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図3】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第3の形態である内部循環式でありかつ伝熱管を備えた形態の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図4】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第4の形態である外部循環式でありかつ伝熱管を備えた形態の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図5】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第1の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図6】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第2の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図7】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第3の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図8】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第4の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図9】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第5の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図10】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第6の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図11】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第7の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図12】第4の形態であるケミカルループ燃焼装置の第1の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図13】第4の形態であるケミカルループ燃焼装置の第2の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明によるケミカルループ燃焼装置のいくつかの形態を説明する。
〈第1の形態〉
図1は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第1の形態である内部循環式の装置を付設する配管系とともに示している。図示のケミカルループ燃焼装置A1は、鋼板のような耐熱材で作られた円塔形の外塔1を有し、外塔1の上端面はやはり鋼板のような耐熱材で作られた天板2で閉鎖されている。外塔1内には中心軸線を同じにして外塔1よりも小径の円塔体3が取り付けてある。円塔体3の上端は天板2を貫通して外塔1の外部に延出しており、下端は外塔1の下端近傍に達している。なお、以下の説明では、外塔1を酸化塔1と呼び、円塔体3を還元塔3と呼ぶこととする。
【0020】
酸化塔1の底面は耐熱材からなる底部材により閉鎖されており、耐熱底部の上面16は下方に湾曲したすり鉢状面とされている。すり鉢状面の具体例としては、円錐面あるいは放物線面などが挙げられる。酸化塔1の内周面および天面は耐熱瓦や耐熱セラミックファイバーなどの耐熱材が貼り付けられている。酸化塔1の内周面における下から2/3程度の領域は肉厚領域22aとされており、それにより、それより上部の領域と比較して水平断面積が狭くなっている。そして、肉厚領域22aの上端面は円錐壁22bとされるとともに、肉厚領域22aの上端面近傍における還元塔3の部分には固気分離装置25が取り付けられている。
【0021】
還元塔3の中心部には燃料ガス供給管61が挿入されている。燃料ガス供給管61は還元塔3の下端部の直上位置まで達しており、先端部は燃料ノズル9とされている。還元塔3の内周壁面に沿うようにして所要本数のセパレートガス供給管62が取り付けてあり、その先端は還元塔3の下端まで達していて、先端部はセパレートガスノズル13とされている。
【0022】
還元塔3の径方向外側には、還元塔3とほぼ平行にかつ還元塔3の軸芯線から同心円状に、所要本数の空気供給管63が取り付けてある。空気供給管63の上端側は天板2を貫通しており、下端側は酸化塔1の底部に取り付けた底部材の上面16の近くまで達している。各空気供給管63の下端部は空気ノズル5とされている。
【0023】
燃料ガス供給管61には、遮断弁10、調圧弁11、逆止弁12を通して、例えばメタンである調圧された燃料が送給され、還元塔3の下端開口部である燃料ノズル9から還元塔3内に噴出する。後に説明するようにこの燃料は還元剤として機能する。空気供給管63には、ブロワ6、流量計7、調圧弁8を通して調圧された空気(環境温度の空気であってよい)が供給され、下端部の空気ノズル5から酸化塔1内に噴出する。前記した燃料ガスの一部は、管路64と遮断弁65を通って、必要時に空気供給管63のいずれかに供給され、下端部の空気ノズル5から酸化塔1内に噴出する。セパレートガス供給管62には配管14を通して、例えばN2ガス、CO2ガス等である不活性ガスが供給される。供給された不活性ガスは先端のセパレートガスノズル13から酸化塔1の底面に向けて噴出する。
【0024】
酸化塔1の上部には排気口27が設けてあり、排気口27からの排ガス(後に記載するように、N2が主であり、O2が少量含まれる)は固気分離装置28を通して外気に排気される。
【0025】
以上の構成は、第1の形態である内部循環式のケミカルループ燃焼装置A1が作動するために必要な構成であるが、より効率的な運転を行うために、ケミカルループ燃焼装置A1はさらに次の配管系を備える。
【0026】
前記した排気口27からの排ガスは固気分離装置28を通過した後、さらに熱交換器29および29aを通過する。そして熱交換器29、29aを通過したN2ガスは図示しない貯蔵タンク内に貯蔵される。必要時に、N2とO2の混合ガスの一部は、ブロワ30によって昇圧され、遮断弁31と調圧弁32を通って配管14からセパレートガス供給管62に送られる。
【0027】
還元塔3の上部から排出される排ガス(後に記載するようにCO2とH2O蒸気である)は、外部からの冷却水が循環している気水分離装置33に流入し、蒸気を液化して分離した後、90%以上のCO2を含む排ガスとして外部に排出され、図示しない貯蔵タンク内に貯蔵される。必要時に、90%以上のCO2を含む排ガスの一部は、ブロワ34によって昇圧され、遮断弁35と調圧弁32を通って配管14からセパレートガス供給管62に送られる。
【0028】
気水分離装置33で生成された水は、遮断弁36、ポンプ37を介して熱交換器29aに至り、そこで熱交換した後、必要に応じて、調圧弁38および逆止弁39を通って、燃料ガス供給管61への燃料ガス供給管路内に水蒸気として供給される。
【0029】
上記のケミカルループ燃焼装置A1の作動を説明する。事前に、酸化塔1の内部空間に金属粒子Mを充填する。充填量は、金属粒子Mが還元塔3に取り付けた固気分離装置25までは達しない量とする。なお、金属粒子Mは金属のみでなく酸化金属粒子が含まれていてもよい。金属粒子Mの好ましいものとしては、鉄(Fe)または酸化鉄(FeO、Fe3O4,Fe2O3)を例示できる。充填後、空気供給管63の一部の空気供給管63aに遮断弁65を通して燃料ガスを供給し、他の空気供給管63に酸化剤としての空気を供給して、酸化塔1内で燃料ガスと空気とを直接燃焼させる。その燃焼熱によって金属粒子Mを酸化反応が可能な温度である600℃程度まで予熱する。この状態では、前記空気供給管63aは金属粒子を予熱するための昇温用バーナ63aとして機能している。なお、金属粒子の予熱は酸化塔1に取り付けた電気ヒータ等で行うこともできる。
【0030】
予熱終了後、調圧弁を操作してすべての空気供給管63に酸化剤として機能する所定量の空気(環境温度の空気であってよい)を供給して空気ノズル5から酸化塔1内に噴出させる。また、燃料ガス供給管61に還元剤として機能する所定量のメタン等の燃料ガスを供給し燃料ノズル9からから噴出させる。さらに、セパレートガスノズル13からN2、CO2等の不活性ガスを酸化塔1内に向けて噴出させる。なお、運転開始当初は、不活性ガスは外部の不活性ガス源から供給するか、あるいは前回の運転時に系内の貯蔵タンクに貯蔵しておいた不活性ガス源から供給する。
【0031】
空気ノズル5から酸化塔1内に噴出された空気は上昇する過程で、金属粒子Mとの間での酸化反応に寄与する。酸化反応熱により昇温した空気すなわちN2リッチの高温空気は、前記したように酸化塔1上部の排気口27から排ガスとして排出され、熱交換器29において、被加熱流体との間に熱交換を行う。熱交換により昇温した被加熱流体は図示しない熱負荷部(例えば、蒸気利用設備など)に送られる。
【0032】
燃料ノズル9からの燃料ガスは還元塔3内に流入するが、運転時には、セパレートガス供給管62の上端部からCO2またはN2等の不活性ガスが供給され、セパレートガスノズル13から酸化塔1内に噴出する。噴出する不活性ガスにより、空気ノズル5から噴出する空気と、燃料ガス供給管61の下端の燃料ノズル9から噴出する燃料ガスとが混合するのは回避され、燃料ガスが直接燃焼するのは阻止される。
【0033】
酸化塔1内では反応温度にまで予熱された金属粒子Mと、供給された空気内の酸素が反応して酸化金属粒子MOが生成される。なお、金属粒子Mが酸化金属粒子MOを含む場合には、酸化金属粒子MOは前記酸化金属粒子がさらに酸化した形態の酸化金属粒子が該当する。例えば、金属粒子MがFe2O3の場合、酸化金属粒子MOはFe3O4等となる。
【0034】
酸化金属粒子MOおよび残存する場合での金属粒子Mは酸化塔1内を流下して還元塔3内に流入した後、還元塔3内を上昇する。還元塔3内を上昇する過程で、酸化金属粒子MOは燃料ガスによる還元作用を受けて金属粒子Mに戻る。上記のケミカルループ燃焼装置A1では、酸化塔1の底部は中央に向けて低位となる円錐面となっているので、酸化塔1の底部から還元塔3への酸化金属粒子MOの移動は円滑に進行する。還元塔3内を上昇する固体成分とガス成分は、上昇の過程で固気分離装置25の作用を受けて、固体と気体に分離され、気体はさらに上昇して還元塔3の上部から排気される。固体、すなわち金属粒子Mと残存する場合での酸化金属粒子MOは、酸化塔1内に戻される。
【0035】
酸化塔1内で、金属粒子Mは空気ノズル5からの噴出空気の作用を受けて流動化状態となることから、金属粒子Mあるいはその酸化物MOの一部は当初貯留されていたときよりも上方に舞い上がることが起こり得る。上記のケミカルループ燃焼装置A1では、酸化塔1の内壁面の一部に肉厚領域22aを形成したことで、前記したように、肉厚領域22a領域よりもその上の領域での水平断面積が大きくなっており、上位の空間に舞い上がった金属粒子Mあるいはその酸化物MOは、その空塔速度が小さくなって下方に落下しやすくなる。さらに、肉厚領域22aの上端面は円錐壁22bとなっているので、そこに落下した金属粒子Mあるいはその酸化物MOはその面に沿って確実に下方に落下する。そのために、金属粒子Mの酸化作用は円滑化とともに、酸化塔1上部の排気口27から金属粒子が排出されるのを抑制することができる。なお、酸化塔1上部の排気口27から排出される金属粒子は固気分離装置28により分離されて、必要時に、酸化塔1内に戻される。
【0036】
酸化塔1内での酸化反応に寄与することにより、投入空気は高温の排ガスとなり排気口27から排出される。排ガスは、前記したように空気の供給量に応じて、O2を含まない高濃度のN2ガスか、残存O2とN2を含むガスとなる。前記したように排ガスのN2の一部はブロワ30で昇圧され遮断弁31と調圧弁32を通って配管11からセパレートガスノズル13に送られる。
【0037】
一方、還元塔3からの排ガスは還元反応により生成されたCO2とH2Oからなっており、高温ガスであることからH2Oは水蒸気となっている。還元塔3からの排ガスは冷却水が循環している気水分離装置33で凝縮されて水と高濃度(90%以上)のCO2を含むガスに分離される。得られたCO2ガスは、必要な場合には適宜の手段でさらに濃縮した後に、そのままあるいは液化CO2として貯蔵される。CO2ガスの一部は、必要時に、ブロワ34で昇圧され遮断弁35と調圧弁32を通って配管11からセパレートガス供給管62に送られる。そのために、図示される形態のケミカルループ燃焼装置A1では、初期の運転時を除き、空気ノズル5から供給される空気と燃料ノズルから供給される燃料ガスとを分離する目的で、セパレートガスノズル13から供給すべき不活性ガス(NO2またはCO2)を自給することが可能となる。
【0038】
気水分離装置33で生成された水は、酸化塔1からの高温排ガスと熱交換器29aにおいて熱交換して水蒸気となり、必要時にその水蒸気は調圧弁38と逆止弁39を通り燃料ガスに混入される。水蒸気の供給を必要とすることにより、Feのような比較的安価な金属粒子材料を用いる場合でも、効率的に還元反応を進行させることができる。また、反応性の遅いメタンなどの炭化水素でも効率的に還元反応を進行させることが可能となる。
【0039】
上記のケミカルループ燃焼装置A1では、酸化塔1内に空気を供給する空気供給管63と還元塔3内に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管61およびセパレートガス供給管13とを、酸化塔1の上部から、すなわち酸化塔1の天面に形成した開口部から落とし込むようにして取り付けるようにしたので、ケミカルループ燃焼装置A1を組み立てるときに、クレーン等でそれらの部材を持ちあげて組み付けることが可能となり製造が容易となる。また、稼働後でのメンテナンスもきわめて容易となる。特に、図示されるように共通の取り付け用基板66を用い、そこに前記した空気供給管63と燃料ガス供給管61とセパレートガス供給管13とを取り付けることにより、組立時あるいはメンテナンス時にそれらを一体のものとして取り扱うことが可能となり、作業性が一層向上する。
【0040】
〈第2の形態〉
図2は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第2の形態の概略断面を付設する配管系とともに示している。第2の形態のケミカルループ燃焼装置A2は、酸化塔201と還元塔203は分離しており、両者は酸化した金属粒子MOが移動する流路250と還元した金属粒子Mが移動する流路260とによって接続されている点で、図1に示した第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1と相違する。他の構成は実質的にケミカルループ燃焼装置A1と同じであり、以下の説明では、第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1におけると実質的に同じ機能を奏する部材には、同じ符号を200番台の符号として付し、具体的な構成が異なる場合を除き、詳細な説明は省略する。
【0041】
ケミカルループ燃焼装置A2は、前記のように酸化塔201と還元塔203は分離しており、両者は断熱手段が施された酸化金属流路250と金属粒子流路260とで接続されている。すなわち、酸化塔201内には、還元塔に相当する手段は存在しない。そのために、酸化塔201の直径をより小さなものとすることができる。
【0042】
酸化塔201の中央部には、酸化塔201の軸芯方向に延びる所要本数の空気供給管263が挿入されており、その下端部は酸化塔201の底面近傍にまで達している。空気供給管263の下端先端部は空気ノズル205とされている。
【0043】
また、前記のように、酸化金属粒子MOは酸化金属流路250を通って還元塔203に移動する形式であり、そのために、酸化塔201内に貯留される金属粒子Mの貯留上端位置のやや上方位置に平板状の浮揚防止板267が配置され、その中央部に第1の固気分離装置270を配置している。そして、第1の固気分離装置270の固体排出口側に前記した酸化金属流路250の一方端が接続している。また、浮揚防止板267より下位の水平断面積よりも上位の水平断面積が大きくなるように、酸化塔201の内周面には耐熱壁222が貼り付けられている。酸化塔201の底部の構成は図1に示したケミカルループ燃焼装置A1の酸化塔1と同じである。また、前記した空気供給管263は第1の固気分離装置270内を通過している。
【0044】
還元塔203には、その天面を通過するようにして燃料ガス供給管261が還元塔203の軸芯線方向に平行に挿入されており、その下端部は還元塔203の底面近傍にまで達していて、燃料ノズル209とされている。また、還元塔203は、その上方位置において酸化金属流路250の他方端と接しており、その接続部と天板との間に第2の固気分離装置271を備えている。還元塔203の下方位置には金属粒子流路260の一方端が接続しており、金属粒子流路260の他方端は酸化塔201の下方部分に接続している。酸化金属流路250の途中には粒子溜め251が設けてあり、金属粒子流路260の途中にも粒子溜め262が設けてある。
【0045】
酸化塔201に取り付けた第1の固気分離装置270で固体分(主に酸化金属粒子MO)を分離した後の気体(排ガス)は排気口227から排気されるが、この形態では排ガス中にほとんど固形分が含まれないので、図1に示したケミカルループ燃焼装置A1での固気分離装置28を省略することができる。
【0046】
ケミカルループ燃焼装置A2において、上方から供給される空気は空気供給管263を通過した後に、その下端部の空気ノズル205から酸化塔201内に噴出され、その空気が上昇する過程で金属粒子Mとの間での酸化反応に寄与する。酸化反応をした後の空気すなわちN2リッチの空気は第1の固気分離装置270を通って酸化塔201上部の排気口227から高温の排ガスとして排出される。高温の排ガスは、ケミカルループ燃焼装置A1の場合と同様、熱交換器229において被加熱流体との間に熱交換を行う。
【0047】
第1の固気分離装置270で分離された固体(主に酸化金属粒子MO)は酸化金属流路250を通って還元塔203に移動し、そこで還元作用を受けて金属粒子Mとなり、還元後の金属粒子Mは金属粒子流路260を通って酸化塔201内に戻される。また、還元塔203に取り付けた第2の固気分離装置271は酸化金属流路250から流入してくる排ガス中の固体分(主に還元を受ける前の酸化金属粒子MO)を分離して還元塔23内に戻すとともに、気体(主にCO2とH2O)を還元塔203から排ガスとして排出する。第2の形態のケミカルループ燃焼装置A2では、還元塔203の天面から燃料ガス供給管261を還元塔203内に取り付けるようにしており、還元塔203の組み付けおよびメンテナンスがきわめて容易となる。
【0048】
酸化塔201からの排ガスおよび還元塔203からの排ガスのための配管系は図1に示したケミカルループ燃焼装置A1での配管系とほぼ同じである。ただし、図2の管路図に示すように、双方の排ガスから生成されるNO2およびCO2である不活性ガスは、セパレートガスノズル13にではなく、前記した粒子溜め251および262にパージガスとして供給される点で相違する。粒子溜め251および262に不活性ガスをパージガスとして供給することにより、酸化金属流路250および金属粒子流路260において、空気(酸化剤)と燃料ガスが混合するのを確実に阻止できるようになり、燃料ガスの直接燃焼を確実に回避できるようになる。なお、2つの粒子溜め251、262、特に酸化金属流路250に設ける粒子溜め251は省略することもできる。省略してもケミカルループ燃焼装置A2の運転は可能である。
【0049】
〈第3の形態〉
図3は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第3の形態の概略断面を付設する配管系とともに示している。第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3は、酸化塔301内に伝熱管326を配置して、酸化塔301内で発生する酸化反応熱と伝熱管326内を流れる被加熱流体との間の熱交換を酸化塔301内で行うようにした点で、図1に示したケミカルループ燃焼装置A1と相違する。その他の構成は第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1と同じであり、以下の説明では、第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1におけると実質的に同じ機能を奏する部材には、同じ符号を300番台の符号として付し、具体的な構成が異なる場合を除き、詳細な説明は省略する。
【0050】
ケミカルループ燃焼装置A3では、酸化塔301の底部には円塔状の下部ヘッダー315が取り付けられている。下部ヘッダー315の底面は水平面であるが、上面は円錐面316となっていて、円錐面の下端が空気ノズル305とほぼ同一面となっている。下部ヘッダー315の外周面は酸化塔301の内周面に接しており、酸化塔301の壁面に作られた孔317を通して、被加熱流体が流れる第1の流体配管318が下部ヘッダー314の外周面に接続している。また、下部ヘッダー315の中央部分は円錐面316である上面に連続する凹状のコーン部材360により閉鎖されている。
【0051】
酸化塔301の上方には、天板302に接するようにして円塔状の上部ヘッダー319が取り付けてある。上部ヘッダー319の内径と外径は下部ヘッダー315はほぼ同じである。上部ヘッダー319には酸化塔301の天板302に形成した孔320を通して被加熱流体の第2の流体配管321が接続している。この例において、第2の流体配管221はオンサイトでの蒸気利用設備や工業炉などの熱負荷300に連通している。
【0052】
酸化塔301の内壁に沿うようにして、前記下部ヘッダー315の上部円錐面316から適宜上方位置まで、耐熱瓦や耐熱セラミックファイバーなどの耐熱材からなる適宜厚さの耐熱壁322が形成されており、該耐熱壁322の上端面は円錐壁323とされている。耐熱壁322の前記上端円錐壁323に下端面を沿わせるようにして、全体として斜板形状をなす中間ヘッダー324が取り付けられており、該中間ヘッダー324の内径と外径は下部ヘッダー315と内径と外径とほぼ等しくされている。そして、前記中間ヘッダー324が取り付けられている位置よりもやや上方位置において、還元塔303には、固気分離装置325が取り付けられている。
【0053】
下部ヘッダー315と中間ヘッダー324と上部ヘッダー319の内部空間を相互に連通するようにして、複数本の伝熱管326が酸化塔301の中心軸線と平行に取り付けられている。複数本の伝熱管326は、図では、半径方向に複数列、かつ各例が複数本の伝熱管で構成されるようにして配置されているが、酸化塔301内での伝熱管326の配置は任意であり、後に記載するように、酸化塔301内に収容される金属粒子の流動を妨げないことを条件に適宜配置すればよい。
【0054】
なお、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319は耐熱性に優れた材料で作られ、また特に伝熱管326は耐熱性と熱伝導性に優れた材料・形状で作られる。さらに、後に説明するように、伝熱管326は、下部ヘッダー315と中間ヘッダー324の間に位置する部分と、中間ヘッダー324と上部ヘッダー319の間に位置する部分とを、異なった材料で作ることが望ましい。
【0055】
酸化塔301からの排ガスおよび還元塔303からの排ガスのための配管系は、図1に示したケミカルループ燃焼装置A1での配管系とほぼ同じであり、説明は省略する。
【0056】
上記のケミカルループ燃焼装置A3では、運転に際して、下部ヘッダー315と中間ヘッダー324と上部ヘッダー318、すべての伝熱管326、および第1の流体配管318と第2の流体配管321を、例えば水である被加熱溶液で満す。その後、ケミカルループ燃焼装置A1と同様にして、酸化塔301での酸化反応と還元塔303での還元反応とを進行させる。
【0057】
上記のケミカルループ燃焼装置A3では、下部ヘッダー315の上面316は、中央に向けて低位となる円錐面となっており、さらに下部ヘッダー315の中央部分には上面316に連続するようにして表面が滑らかな円錐面あるいは放物線面であるコーン部材360を取り付けているので、酸化塔301内での酸化金属粒子MOあるいは金属粒子Mの移動を円滑化することができ、酸化塔301の底部から還元塔303内に酸化金属粒子MOあるいは金属粒子Mが流入するのを良好にしている。
【0058】
酸化塔301内で、金属粒子Mは空気ノズル305からの噴出空気の作用を受けて流動化状態となり金属粒子Mあるいはその酸化物MOの一部は当初貯留されていたときよりも上方に舞い上がることが起こり得る。上記のケミカルループ燃焼装置A3では、酸化塔301の下方の内壁面に耐熱壁322を形成したことにより、耐熱壁322が形成されている領域の水平断面積よりも、その上の耐熱壁322が形成されていない領域の水平断面積が大きくなっている。そのために、固気分離装置325近傍よりも上位の空間に舞い上がった金属粒子Mあるいはその酸化物MOは、その空塔速度が小さくなって下方に落下しやすくなる。さらに、中間ヘッダー324の上面に落下した金属粒子Mあるいはその酸化物MOは、中間ヘッダー324の上面が円錐面となっているので、その面に沿って確実に下方に落下する。そのために、金属粒子Mの酸化作用を円滑化するとともに、酸化塔301上部の排気口327から金属粒子が排出されるのを抑制することができる。
【0059】
ケミカルループ燃焼装置A3において、酸化塔301内で金属粒子Mが酸化することにより発生した熱は、伝熱管326の壁面を介して伝熱管326内を流れる被加熱流体を伝えられ、被加熱流体を加熱する。すなわち、ケミカルループ燃焼装置A3では、酸化反応により発熱した金属粒子Mの熱はガス(投入空気)に伝熱すると同時に、酸化塔301内に位置する伝熱管322にも直接熱交換するために、排ガス温度が大きく上がることがない。そのために、NOxの生成をさらに抑制することができる。また、酸化塔301内のガス(投入空気)の平均温度も低くなり、それにより空塔速度が抑えられるため、酸化塔301の断面積を小さくすることができる。結果として、装置の小型化が可能となり、燃焼量当たりの表面積も抑えることができ、放熱のロスも小さくすることができる。
【0060】
上記のケミカルループ燃焼装置A3では、中間ヘッダー324より下位の領域は金属粒子が貯留されている領域であり、その領域では伝熱管326は金属粒子と接触することで多くの摩擦損耗を受ける。一方、中間ヘッダー324より上位の領域は主にガスが存在する領域であり、伝熱管326の摩擦損耗は少ない。そのことから、伝熱管326の材料は、下部ヘッダー315と中間ヘッダー324の間に位置する部分では耐摩耗性に優れた材料とし、中間ヘッダー324と上部ヘッダー319の間に位置する部では比較して耐摩耗性に小さい材料とすることができる。そのように異なった材料を用いることで低コスト化が可能となる。
【0061】
酸化塔301内での熱交換により加熱された被加熱流体は、例えば、上部ヘッダー319から第2の流体配管321、熱負荷部300、第1の流体配管318を循環し、下部ヘッダー314に戻ってくる。加熱された被加熱流体の循環は逆回りであってもよい。
【0062】
なお、上記の例では、第1の流体管路318と第2の流体管路321は連続するものとして説明したが、熱負荷部300の種類や形態によっては、第1の流体管路318(および熱負荷部300)と第2の流体管路321は非連続であってもよい。
【0063】
上記のように、第3の形態であるケミカルループ燃焼装置A3では、酸化塔301内に、被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319、伝熱管326等を配置したことで、その酸化反応熱をオンサイトでの産業用ボイラや工業炉で実際に利用することが可能となる。
【0064】
〈第4の形態〉
図4は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第4の形態の概略断面を付設する配管系とともに示している。第4の形態のケミカルループ燃焼装置A4は、酸化塔401内に被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等を配置した点で、第3の形態であるケミカルループ燃焼装置A3と同じであり、酸化塔401と還元塔403が分離していて、両者は酸化した金属粒子MOが移動する流路450と還元した金属粒子Mが移動する流路460とによって接続されている点で、第2の形態であるケミカルループ燃焼装置A2と同じである。以下の説明では、第3の形態であるケミカルループ燃焼装置A3におけると実質的に同じ機能を奏する部材には、同じ符号を400番台の符号として付し、具体的な構成が異なる場合を除き、詳細な説明は省略する。
【0065】
ケミカルループ燃焼装置A4は、ケミカルループ燃焼装置A3と同様、前記したように、酸化塔401内に、被加熱流体の熱交換に必要な手段である下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等の手段は存在するが、還元塔に相当する手段は存在しない。還元塔に相当する手段は存在しないことを除き、酸化塔401の構成はケミカルループ燃焼装置A3における酸化塔301と実質的に同じである。
【0066】
すなわち、酸化塔401の中央部には、酸化塔401の軸芯方向に延びる所要本数の空気供給管463が挿入されており、その下端部は酸化塔401の底面近傍にまで達している。空気供給管463の下端先端部は空気ノズル405とされている。また、酸化金属粒子MOは酸化金属流路450を通って還元塔403に移動する形式であり、そのために、酸化塔401内に貯留される金属粒子Mの貯留上端位置のやや上方位置に平板状の中間ヘッダー424が備えられ、中間ヘッダー424の中央空間領域に第1の固気分離装置470が配置されている。そして、第1の固気分離装置470の固体排出口側に前記した酸化金属流路450の一方端が接続している。また、前記した空気供給管463は第1の固気分離装置470内を通過している。
【0067】
還元塔403には、その天面を通過するようにして燃料ガス供給管461が還元塔403の軸芯線方向に平行に挿入されており、その下端部は還元塔403の底面近傍にまで達していて、燃料ノズル409とされている。また、還元塔403は、その上方位置において酸化金属流路450の他方端と接しており、その接続部と天板との間に第2の固気分離装置471を備えている。前記燃料ガス供給管461は第2の固気分離装置471内を通過している。還元塔403の下方位置には金属粒子流路460の一方端が接続しており、金属粒子流路460の他方端は酸化塔401の下方部分に接続している。酸化金属流路450の途中には粒子溜め451が設けてあり、金属粒子流路460の途中にも粒子溜め462が設けてある。
【0068】
上記のケミカルループ燃焼装置A4において、酸化塔401内に酸化反応熱を被加熱流体と熱交換するための手段(下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等)を設けたことによる達成される作用効果は、図3に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3におけると同じであり、また、酸化塔401の上方から空気供給管463を取り付けるようにしたことによる作用効果も、図1たまは図3に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A1、A3におけると同じである。さらに、複数本の空気供給管463の一部の空気供給管463aに遮断弁465を通して燃料ガスを供給できるようにすることにより、その空気供給管463aを昇温用バーナ463aとして用いることができるのも、図3に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3と同様である。
【0069】
ケミカルループ燃焼装置A4において、上方から供給される空気は空気供給管463を通過した後に、その下端部の空気ノズル405から酸化塔401内に噴出され、その空気が上昇する過程で金属粒子Mとの間での酸化反応に寄与する。酸化反応をした後の空気すなわちN2リッチの空気は第1の固気分離装置470を通って酸化塔401上部の排気口427から排ガスとして排出されるのは、ケミカルループ燃焼装置A3の場合とほぼ同じである。
【0070】
第1の固気分離装置470で分離された固体(主に酸化金属粒子MO)は酸化金属流路450を通って還元塔403に移動し、そこで還元作用を受けて金属粒子Mとなり、還元後の金属粒子Mは金属粒子流路460を通って酸化塔401内に戻されること、および、還元塔403に取り付けた第2の固気分離装置471は固体分(主に還元を受ける前の酸化金属粒子MO)を分離して還元塔403内に戻すとともに、気体(主にCO2とH2O)を還元塔403から排ガスとして排出することは、図2に示した第2のケミカルループ燃焼装置A2と同じである。そして、ケミカルループ燃焼装置A4でも、酸化塔401内に空気を供給する空気供給管463を酸化塔1の上部から、また還元塔403内に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管461を還元塔403の上部から、それぞれ落とし込むようにして取り付けるようにしたので、ケミカルループ燃焼装置A4を組み立ておよびメンテナンス時の作業が容易となる。特に、図示されるように共通の取り付け用基板466を用い、そこに前記した複数本の空気供給管463を取り付けることにより、作業性を一層向上させることができる。
【0071】
なお、上記したいずれの形態のケミカルループ燃焼装置においても、前記したように、排ガスから高濃度のCO2を分離できる。必要な場合には、濃度90%以上で回収したCO2を利用用途に応じて例えばPSA法などを用いてさらに濃縮することで、99.999%濃度のCO2が得られる。
【0072】
また、本発明によるケミカルループ燃焼装置の運転において、系全体の金属粒子Mと酸化金属粒子MOを常にある比率の範囲に保つために、燃料と酸化剤の瞬間値はもちろんのこと、積算投入量を管理することで、系全体が運転開始時から酸化側に寄ったのか、還元側に寄ったのかを判別してフィードバックをかけることもできる。また、燃料と酸化剤とが適正に金属を介して反応しているかどうかを判断するため、下記に示す「酸素有効利用率」を1.0付近で制御することが推奨される。
酸素有効利用率=(外部酸素投入量−系外にでる酸素量)/(燃料の理論酸素量)
【0073】
さらに、本発明によるケミカルループ燃焼装置において、酸化塔と還元塔の出口付近に圧力計を設置することもできる。そして、還元塔からCO2を高濃度で取り出したい場合には、還元塔側の圧力が酸化塔の圧力よりやや高くなるように排気ブロアをインバーターで制御する。
【0074】
また、装置内での反応が継続していることを確認するために、酸化塔内に熱電対を2個挿入することもできる。一箇所は固気分離装置より下部の粒子面より下まで挿入し、もう一つは、固気分離装置の上部に設置する。そして、金属粒子内部の温度を還元剤の反応温度(例えば、天然ガスの場合760℃)以上に保つようにする。保てない場合には、燃料ガスの供給を遮断する。
【0075】
次に、本発明による、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置のいくつかの変形例を説明する。
【0076】
〈第3の形態の第1の変形例〉
図5は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第1の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3aは、ケミカルループ燃焼装置A3が酸化塔301の内部に1つの還元塔303が組み込まれているのに対して、還元塔303の内部に1つの酸化塔301が組み込まれている点で、ケミカルループ燃焼装置A3と構成が相違する。すなわち、図3において酸化塔(外塔)301として表わされていたものが、ここでは還元塔303を構成する。そして、還元塔303の中央部に酸化塔301が取り付けられ、該酸化塔301の周囲を囲むようにして適数の燃料ガス供給管361が還元塔303の上部から落とし込むようにして取り付けられている。燃料ガス供給管361は還元塔303の底面近傍まで達しており、先端部は燃料ノズル309とされている。前記酸化塔301は、空気供給管363と、酸化塔301の内周壁面に沿うようにして配置された所要本数のセパレートガス供給管362とで構成され、いずれも還元塔303の底面近傍まで達しており、空気供給管363の先端部は空気ノズル305とされ、セパレートガス供給管362の先端部はセパレートガスノズル313とされている。また、酸化塔301には、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3での還元塔303におけると同様にして固気分離装置325が取り付けられている。
【0077】
外塔を構成する還元塔303内には、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3における酸化塔301におけると同様にして、被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319、伝熱管326等が配置されている。また、燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、空気供給管363に空気(酸化剤)を送り込む配管系、セパレートガス供給管362に不活性ガスを送り込む配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系も、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3におけると同じである。それらについては、図5では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0078】
〈第3の形態の第2の変形例〉
図6は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第2の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3bは、還元塔303の内部に1つの酸化塔301が組み込まれている点、酸化塔301および燃料ガス供給管361が還元塔303の上部から落とし込むようにして取り付けられている点では、前記図5に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3aと同じであるが、空気ノズル305とセパレートガスノズル313が還元塔303の底部側に取り付けられている点で、相違している。
【0079】
すなわち、還元塔303の底部には空気ヘッダー304が取り付けられ、その先端が空気ノズル305とされている。空気ヘッダー304の外周はセパレートガス供給管362とされており、その先端部はセパレートガスノズル313とされている。空気ヘッダー304にはブロワ306からの調圧された空気が供給され、セパレートガス供給管362には不活性ガスが供給される。従って、ケミカルループ燃焼装置A3bでは、酸化塔303は単なる円塔体である。
【0080】
燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、セパレートガス供給管362に不活性ガスを送り込む配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系は、図5に示したケミカルループ燃焼装置A3aにおけると実質的に同じであり、それらについては、図6では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0081】
このケミカルループ燃焼装置A3bでは、空気ノズル305から噴出する空気(酸化剤)が酸化塔303内に流入して酸化塔内を移動する金属粒子の酸化反応を進行させる。また、空気ノズル305の周囲に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。さらに、この態様でも、酸化塔301と燃料ガス供給管361は還元塔303の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0082】
〈第3の形態の第3の変形例〉
図7は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第3の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3cは、還元塔303の内部に1つの酸化塔301が組み込まれている点、酸化塔301は空気供給管363と酸化塔301の内周壁面に沿うようにして配置された所要本数のセパレートガス供給管362とで構成され、それらは、還元塔303の上部から落とし込むようにして取り付けられているとともに、酸化剤は空気供給管363の下端部の空気ノズル305から酸化塔301内に供給される点では、前記図5に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3aと同じであるが、還元塔303の底部に燃料ガス供給管361および燃料ノズル309が取り付けられており、そのために還元塔303内には燃料ガス供給管361が備えられていない点で、ケミカルループ燃焼装置A3aと相違している。
【0083】
燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系は、図5に示したケミカルループ燃焼装置A3aにおけると実質的に同じであり、それらについては、図6では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0084】
このケミカルループ燃焼装置A3cでは、還元塔303の底部の燃料ノズル309から噴出する燃料ガスが還元塔303内の金属酸化物粒子の還元反応を進行させる。また、酸化塔301の下端に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。さらに、この態様でも、酸化塔301は還元塔303の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0085】
〈第3の形態の第4の変形例〉
図8は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第4の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3dは、還元塔303の内部に複数個(図示の例では2個)の酸化塔301,301が備えられている点のみで、図5に示したケミカルループ燃焼装置A3aと構成が相違する。他の構成は基本的にケミカルループ燃焼装置A3aの場合と同じであり、同じ符号を付すことで、説明は省略する。
【0086】
ケミカルループ燃焼装置A3dにおいて、2つの酸化塔301、301は還元塔303の軸心線と平行な姿勢で還元塔303内に配置されており、各酸化塔301、301には、ブロワ306からの調圧された空気が供給され、また、各セパレートガスノズル313、313には、配管314を通して不活性ガスが供給される。
【0087】
図示および説明は省略するが、図8に示すような、還元塔の内部に複数個の酸化塔が備えられている形態のケミカルループ燃焼装置においても、図6に示したように空気ノズル305とセパレートガスノズル313とを還元塔303の底部に配置する構成とすること、図7に示したように燃料ノズル309を還元塔303の底部に配置する構成とすることも、ともに可能である。
【0088】
〈第3の形態の第5の変形例〉
図9は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第5の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3eは、酸化塔301の内部に1つではなく複数個(図示の例では2個)の還元塔303,303が備えられている点と、それに従い配管系に必要な変更が行われている点でのみ、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3と構成が相違する。他の構成は、基本的に図3に示したケミカルループ燃焼装置A3の場合と同じであり、同じ符号を付すことで、構成および作用の説明は省略する。
【0089】
〈第3の形態の第6の変形例〉
図10は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第6の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3fは、酸化塔301の内部に2つの還元塔303が組み込まれている点、該還元塔303を構成する燃料ガス供給管361およびセパレートガス供給管362が酸化塔301の上部から落とし込むようにして取り付けられている点では、前記図9に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3eと同じであるが、適数の空気ノズル305が酸化塔301の底部に取り付けられており、そのために酸化塔301内には空気供給管363が備えられていない点で、図9に示したケミカルループ燃焼装置A3eと相違している。
【0090】
すなわち、酸化塔301の底部には空気ヘッダー304が取り付けられ、その先端が空気ノズル305とされている。他の構成は、基本的に図9に示したケミカルループ燃焼装置A3eの場合と同じであり、同じ符号を付している。このケミカルループ燃焼装置A3fでは、空気ノズル305から噴出する空気(酸化剤)が酸化塔303内に流入して酸化塔内を移動する金属粒子の酸化反応を進行させ、酸化した金属粒子は2つの還元塔303内に流入する。また、各還元塔303の周囲に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。この態様でも、還元塔303、燃料ガス供給管361、セパレートガス供給管362は、酸化塔301の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0091】
〈第3の形態の第7の変形例〉
図11は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第7の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3gは、酸化塔301の内部に2つの還元塔303が組み込まれている点、空気供給管363および還元塔303が酸化塔301の上部から落とし込むようにして取り付けられている点では、前記図9に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3eと同じであるが、酸化塔301の底部における還元塔303に対向する位置に、燃料ガス供給管361およびセパレートガスノズル313が取り付けられていて、それらの先端化が燃料ノズル309およびセパレートガスノズル313とされており、そのために2つの還元塔303内には単なる空洞となっている点で、図9に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3eと相違している。
【0092】
燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系は、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3におけると実質的に同じであり、それらについては、図11では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0093】
このケミカルループ燃焼装置A3gでは、酸化塔301の底部の燃料ノズル309から噴出する燃料ガスによって2つの還元塔303内での金属酸化物粒子の還元反応が進行する。また、燃料ノズル309の周囲に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。さらに、この態様でも、空気供給管363と還元塔303は酸化塔301の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0094】
なお、上記した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3における第1から第7の変形例において、図3に示す第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3に備えられる被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319、伝熱管326等の構成は、各変形例に共通に適用されるものであり、各変形例の構成に直接影響を与えるものではない。このことは、被加熱流体の熱交換に必要な手段を備えないケミカルループ燃焼装置、すなわち図1に示す内部循環型のケミカルループ燃焼装置A1においても、前記した第1から第7の変形例はすべて適用できることを意味しており、図示せずかつ詳細な説明は省略するが、図1に示す内部循環型のケミカルループ燃焼装置A1をベースとするそれらの変形例もすべて本発明の範囲内のものである。
【0095】
〈第4の形態の第1の変形例〉
図12は、図4に示した第4の形態である被加熱流体の熱交換に必要な手段を備えた外部循環式ケミカルループ燃焼装置の第1の変形例を付設する配管系とともに示している。この外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4aは、還元塔403の底面側から燃料ガスが供給されるようになっている点で、図4に示したケミカルループ燃焼装置A4と相違する。他の構成は同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0096】
すなわち、外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4aでは、還元塔403の底部に燃料ガス供給管461が取り付けられ、その先端が燃料ノズル409として還元塔403内に開放している。燃料ガス供給管461へ燃料を供する配管系はケミカルループ燃焼装置A4と同様であり、説明は省略する。この態様のケミカルループ燃焼装置A4aにおいても、空気供給管463は酸化塔401の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0097】
〈第4の形態の第2の変形例〉
図13は、図4に示した第4の形態の外部循環式ケミカルループ燃焼装置の第2の変形例を付設する配管系とともに示している。この外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4bは、酸化塔401の底面側から空気(酸化剤)が供給されるようになっている点で、図4に示したケミカルループ燃焼装置A4と相違する。他の構成は同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0098】
すなわち、外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4bでは、酸化塔401の底部に空気ヘッダー404が取り付けられ、その先端が空気ズル405として酸化塔401内に開放している。酸化塔401内に空気供給管463は存在しない。そして、空気ヘッダー404には、ブロワ406、流量計407、調圧弁408を通して調圧された空気が供給され、空気ノズル5から酸化塔1内に噴出する。
【0099】
この態様のケミカルループ燃焼装置A4bにおいても、燃料ガス供給管461は還元塔403の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0100】
なお、上記した第4の形態のケミカルループ燃焼装置A4における第1および第2の変形例においても、図4に示す第4の形態のケミカルループ燃焼装置A4に備えられる被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等の構成は、各変形例に共通に適用されるものであり、各変形例の構成に直接影響を与えるものではない。このことは、被加熱流体の熱交換に必要な手段を備えないケミカルループ燃焼装置、すなわち図2に示す外部循環型のケミカルループ燃焼装置A2においても、前記した第1および第2の変形例は適用できることを意味しており、図示せずかつ詳細な説明は省略するが、図2に示す外部循環型のケミカルループ燃焼装置A2をベースとするそれらの変形例もすべて本発明の範囲内のものである。
【0101】
さらに、上記したいずれのケミカルループ燃焼装置においても、図示したように、気水分離装置33で生成された水から得られる水蒸気を調圧弁38および逆止弁39を通して燃料ノズル9への燃料供給管路内に供給するようにしたが、装置内で生成される水蒸気およびCO2を含むガス(例えば、還元塔3からの排ガス)を還元塔に供給される還元剤を含むガス(燃料ガス)に添加するようにしても、同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0102】
A1…ケミカルループ燃焼装置、
1…酸化塔、
2…酸化塔の天板(天面)、
3…還元塔、
5…空気ノズル、
9…燃料ノズル、
13…セパレートガスノズル、
16…酸化塔の耐熱底部の上面、
22a…酸化塔の内周面の肉厚領域、
22b…肉厚領域の上端面の円錐壁、
25…固気分離装置、
27…酸化塔の上部の排気口、
28…固気分離装置、
29…熱交換器、
29a…熱交換器、
33…気水分離装置、
61…燃料ガス供給管、
62…セパレートガス供給管、
63…空気供給管、
63a…昇温用バーナとしても機能する空気供給管、
66…共通の取り付け用基板、
M…金属粒子、
MO…酸化金属粒子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子を酸化する酸化反応系と酸化金属粒子を還元する還元反応系との間で金属粒子および酸化金属粒子を循環させることで熱を得るようにしたケミカルループ燃焼法は知られている。ケミカルループ燃焼は、燃料を直接空気と燃焼させる代わりに、燃焼反応を「金属粒子の酸化」と、「酸化金属粒子の還元」という2つに分け、両者を物理的な粒子の循環で結ぶシステムである。燃料と空気は直接接触することがなく、金属を媒体として純酸素のやり取りをしている。
【0003】
ケミカルループ燃焼では、メタンなどの炭化水素燃料は、還元反応系において、あくまで酸化金属の還元剤として働き、また酸化反応系には、酸化剤としての空気と金属粒子だけが供給され、金属粒子の酸化反応によって発熱する。通常、酸化反応で生じる温度は800〜1200℃程度であり、主にN2である排ガスは比較的低温であることからサーマルNOxは殆ど生成しない。また、還元反応系では、燃料としての炭化水素と酸化金属から供給される酸素のみが存在し、そのため、排ガス成分はほぼ二酸化炭素と水だけとなる。そのために、排出されたガスを冷却して水を取り除けばほぼ純粋なCO2を容易に回収可能となる。
【0004】
ケミカルループ燃焼方式としては、非特許文献1に記載されるように、酸化塔の内部に還元塔が組み込まれている、いわゆる内部循環方式と、酸化塔と還元塔とが分離しており、両者は酸化した金属粒子の流路と還元した金属粒子の流路とによって接続されている、いわゆる外部循環方式とが提案されている。酸化塔内への酸化剤の供給および還元塔内への還元剤の供給は、内部循環方式の形態では酸化塔の底部に設けた酸化剤ノズルおよび還元剤ノズルから上方に噴出するようにして行っており、また、外部循環方式の形態では酸化塔の底部に設けた酸化剤ノズルから酸化剤を上方に噴出させ、還元塔の底部に設けた還元剤ノズルから還元剤を上方に噴出させるようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】外部循環:Use of NiO/NiAl2O4 Particles in a 10 kW Chemical-Looping CombustorMarcus Johansson, Tobias Mattisson, and Anders Lyngfelt,Ind. Eng. Chem. Res. 2006, 45, 5911 5919 内部循環:Experimental results of chemical-looping combustion with NiO/NiAl2O4 particle circulation at 1200 degrees C Ishida M, Yamamoto M, OhbaT ENERGY CONVERSION AND MANAGEMENT 2002, 43,9-12,1469-1478
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した非特許文献1に記載されるように、現在の提案されているケミカルループ燃焼装置は、還元剤である燃料と酸化剤は、還元塔および酸化塔に対して下部から供給する構成とされており、通常の工業用の設備として実利用する場合には、装置のメンテナンス性が非常に悪い。また、下部からノズルで燃料(還元剤)や空気(酸化剤)をする場合、気体の供給を止めたときに、ケミカルループ燃焼に使用される金属粒子は一例として直径が100μm程度の微粒子であるのために、金属粒子が上部に向いたノズルから逆流することが起こる。実際にケミカルループ燃焼装置を工業用の設備として用いる場合に、上記のことは無視できない不都合となる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、実際に工業用の設備として稼働した場合でも、装置のメンテナンス性を向上させ、また金属粒子がノズルから逆流することを回避することで、実機としての稼働性を大きく向上させることを可能とした、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるケミカルループ燃焼装置は、金属粒子が酸化剤と反応して前記金属粒子の酸化物が生成される酸化塔と前記酸化塔で生成された金属粒子の酸化物が還元剤と反応して前記金属粒子に還元される還元塔とを反応塔として備え、前記金属粒子が酸化と還元を受けながら前記酸化塔と前記還元塔との間を循環するようにされているケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔内に酸化剤を供給する酸化剤供給管および前記還元塔内に還元剤を供給する還元剤供給管の双方またはいずれか一方はそれぞれの反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によるケミカルループ燃焼装置では、酸化塔内に酸化剤(例えば空気)を供給する酸化剤供給管および還元塔内に還元剤(例えばメタン等の燃料ガス)を供給する還元剤供給管の双方またはいずれか一方は、それぞれの反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されている構成であり、ケミカルループ燃焼装置を組み立てるときに、クレーン等でそれらの部材を持ちあげて組み付けることあるいは取り外すことが可能となる。そのために、ケミカルループ燃焼装置の製造が容易となることに加え、稼働後でのメンテナンスもきわめて容易となる。さらに、反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されている酸化剤供給管およびまたは還元剤供給管は、下端部の開口端を下方に向けた姿勢で取り付けられているので、酸化剤あるいは還元剤の供給を停止したときに、その内部にケミカルループ燃焼に使用される金属粒子が逆流することはない。それによっても、非特許文献1に記載される形態のケミカルループ燃焼装置と比較して、そのメンテナンス性および稼働性は向上する。
【0010】
本発明によるケミカルループ燃焼装置において、前記酸化塔の内部に前記還元塔が1つまたは1つ以上組み込まれている形態でもよい。その場合、前記酸化塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることは金属粒子の移動を円滑にする観点から好ましい。
【0011】
また、本発明によるケミカルループ燃焼装置において、前記還元塔の内部に前記酸化塔が1つまたは1つ以上組み込まれている形態でもよい。この場合にも、前記還元塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることは金属粒子の移動を円滑にする観点から好ましい。
【0012】
本発明によるケミカルループ燃焼装置の好ましい形態において、前記酸化塔は複数本の酸化剤供給管を備えており、一部の酸化剤供給管は酸化剤と還元剤とが選択的に供給可能とされていることを特徴とする。この形態では、運転開始時に、複数本の酸化剤供給管の一部の還元剤(燃料ガス)を供給し、他の酸化剤供給管に酸化剤(空気)を供給することで、酸化塔内で酸化剤(空気)と還元剤(燃料ガス)の直接燃焼を生じさせることが可能となり、その熱を運転開始時での金属粒子の予熱に利用できる利点がある。所要の予熱が終了した時点で、還元剤の供給を停止して酸化剤の供給に切り替える。
【0013】
本発明によるケミカルループ燃焼装置の全体形状は、酸化塔と還元塔が一体とされているいわゆる内部循環式のケミカルループ燃焼装置であってもよく、酸化塔と還元塔とは分離していて両者は酸化した金属粒子の流路と還元した金属粒子の流路とによって接続されているいわゆる外部循環式のケミカルループ燃焼装置であってもよい。
【0014】
本発明によるケミカルループ燃焼装置の好ましい形態において、前記酸化塔または還元塔内には前記金属粒子またはその酸化物と接触して反応熱を被加熱流体に伝熱する伝熱管が配置されていることを特徴とする。
【0015】
上記形態のケミカルループ燃焼装置では、例えば酸化塔内に伝熱管を配置する態様では酸化塔内において、金属粒子の酸化反応で生じた熱は伝熱管内を流れる被加熱流体と熱交換される。そのために、酸化塔から排出される主にN2である投入空気(排ガス)の温度が大きく上がることがなく、酸化塔を通過するガス投入空気の平均温度も低くなる。その結果、空塔速度が抑えられるため、酸化塔の断面積を小さくすることができる。結果として、ケミカルループ燃焼装置の小型化が可能であり、燃焼量あたりの表面積も抑えることができ、放熱のロスも小さくできる。さらに、上記のケミカルループ燃焼装置では前記のように小型化が可能であり、伝熱管内を流れる被加熱流体の持つ熱をオンサイトでの蒸気利用設備や工業炉などの熱源として用いることも可能となる。また、伝熱管が還元塔内に配置されている態様では、酸化塔内での発熱反応により発生した熱を保有した金属粒子が還元塔へ循環して、伝熱管と接触することにより伝熱管内部の被加熱流体を加熱するようになる。
【0016】
なお、本発明において、酸化剤は、空気に加えて、酸素富化空気、低窒素空気なども用いることができる。還元剤には、天然ガス、LPGガス、製鉄所の副製ガス、水素、石炭なども利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際に工業用の設備として稼働した場合でも、装置のメンテナンス性が良く、また金属粒子がノズルから逆流することを回避することで、実機のとしての稼働性を大きく向上させた、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第1の形態である内部循環式の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図2】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第2の形態である外部循環式の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図3】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第3の形態である内部循環式でありかつ伝熱管を備えた形態の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図4】本発明によるケミカルループ燃焼装置の第4の形態である外部循環式でありかつ伝熱管を備えた形態の装置を付設する配管系とともに示す図。
【図5】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第1の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図6】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第2の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図7】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第3の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図8】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第4の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図9】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第5の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図10】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第6の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図11】第3の形態であるケミカルループ燃焼装置の第7の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図12】第4の形態であるケミカルループ燃焼装置の第1の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【図13】第4の形態であるケミカルループ燃焼装置の第2の変形例を付設する配管系とともに示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明によるケミカルループ燃焼装置のいくつかの形態を説明する。
〈第1の形態〉
図1は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第1の形態である内部循環式の装置を付設する配管系とともに示している。図示のケミカルループ燃焼装置A1は、鋼板のような耐熱材で作られた円塔形の外塔1を有し、外塔1の上端面はやはり鋼板のような耐熱材で作られた天板2で閉鎖されている。外塔1内には中心軸線を同じにして外塔1よりも小径の円塔体3が取り付けてある。円塔体3の上端は天板2を貫通して外塔1の外部に延出しており、下端は外塔1の下端近傍に達している。なお、以下の説明では、外塔1を酸化塔1と呼び、円塔体3を還元塔3と呼ぶこととする。
【0020】
酸化塔1の底面は耐熱材からなる底部材により閉鎖されており、耐熱底部の上面16は下方に湾曲したすり鉢状面とされている。すり鉢状面の具体例としては、円錐面あるいは放物線面などが挙げられる。酸化塔1の内周面および天面は耐熱瓦や耐熱セラミックファイバーなどの耐熱材が貼り付けられている。酸化塔1の内周面における下から2/3程度の領域は肉厚領域22aとされており、それにより、それより上部の領域と比較して水平断面積が狭くなっている。そして、肉厚領域22aの上端面は円錐壁22bとされるとともに、肉厚領域22aの上端面近傍における還元塔3の部分には固気分離装置25が取り付けられている。
【0021】
還元塔3の中心部には燃料ガス供給管61が挿入されている。燃料ガス供給管61は還元塔3の下端部の直上位置まで達しており、先端部は燃料ノズル9とされている。還元塔3の内周壁面に沿うようにして所要本数のセパレートガス供給管62が取り付けてあり、その先端は還元塔3の下端まで達していて、先端部はセパレートガスノズル13とされている。
【0022】
還元塔3の径方向外側には、還元塔3とほぼ平行にかつ還元塔3の軸芯線から同心円状に、所要本数の空気供給管63が取り付けてある。空気供給管63の上端側は天板2を貫通しており、下端側は酸化塔1の底部に取り付けた底部材の上面16の近くまで達している。各空気供給管63の下端部は空気ノズル5とされている。
【0023】
燃料ガス供給管61には、遮断弁10、調圧弁11、逆止弁12を通して、例えばメタンである調圧された燃料が送給され、還元塔3の下端開口部である燃料ノズル9から還元塔3内に噴出する。後に説明するようにこの燃料は還元剤として機能する。空気供給管63には、ブロワ6、流量計7、調圧弁8を通して調圧された空気(環境温度の空気であってよい)が供給され、下端部の空気ノズル5から酸化塔1内に噴出する。前記した燃料ガスの一部は、管路64と遮断弁65を通って、必要時に空気供給管63のいずれかに供給され、下端部の空気ノズル5から酸化塔1内に噴出する。セパレートガス供給管62には配管14を通して、例えばN2ガス、CO2ガス等である不活性ガスが供給される。供給された不活性ガスは先端のセパレートガスノズル13から酸化塔1の底面に向けて噴出する。
【0024】
酸化塔1の上部には排気口27が設けてあり、排気口27からの排ガス(後に記載するように、N2が主であり、O2が少量含まれる)は固気分離装置28を通して外気に排気される。
【0025】
以上の構成は、第1の形態である内部循環式のケミカルループ燃焼装置A1が作動するために必要な構成であるが、より効率的な運転を行うために、ケミカルループ燃焼装置A1はさらに次の配管系を備える。
【0026】
前記した排気口27からの排ガスは固気分離装置28を通過した後、さらに熱交換器29および29aを通過する。そして熱交換器29、29aを通過したN2ガスは図示しない貯蔵タンク内に貯蔵される。必要時に、N2とO2の混合ガスの一部は、ブロワ30によって昇圧され、遮断弁31と調圧弁32を通って配管14からセパレートガス供給管62に送られる。
【0027】
還元塔3の上部から排出される排ガス(後に記載するようにCO2とH2O蒸気である)は、外部からの冷却水が循環している気水分離装置33に流入し、蒸気を液化して分離した後、90%以上のCO2を含む排ガスとして外部に排出され、図示しない貯蔵タンク内に貯蔵される。必要時に、90%以上のCO2を含む排ガスの一部は、ブロワ34によって昇圧され、遮断弁35と調圧弁32を通って配管14からセパレートガス供給管62に送られる。
【0028】
気水分離装置33で生成された水は、遮断弁36、ポンプ37を介して熱交換器29aに至り、そこで熱交換した後、必要に応じて、調圧弁38および逆止弁39を通って、燃料ガス供給管61への燃料ガス供給管路内に水蒸気として供給される。
【0029】
上記のケミカルループ燃焼装置A1の作動を説明する。事前に、酸化塔1の内部空間に金属粒子Mを充填する。充填量は、金属粒子Mが還元塔3に取り付けた固気分離装置25までは達しない量とする。なお、金属粒子Mは金属のみでなく酸化金属粒子が含まれていてもよい。金属粒子Mの好ましいものとしては、鉄(Fe)または酸化鉄(FeO、Fe3O4,Fe2O3)を例示できる。充填後、空気供給管63の一部の空気供給管63aに遮断弁65を通して燃料ガスを供給し、他の空気供給管63に酸化剤としての空気を供給して、酸化塔1内で燃料ガスと空気とを直接燃焼させる。その燃焼熱によって金属粒子Mを酸化反応が可能な温度である600℃程度まで予熱する。この状態では、前記空気供給管63aは金属粒子を予熱するための昇温用バーナ63aとして機能している。なお、金属粒子の予熱は酸化塔1に取り付けた電気ヒータ等で行うこともできる。
【0030】
予熱終了後、調圧弁を操作してすべての空気供給管63に酸化剤として機能する所定量の空気(環境温度の空気であってよい)を供給して空気ノズル5から酸化塔1内に噴出させる。また、燃料ガス供給管61に還元剤として機能する所定量のメタン等の燃料ガスを供給し燃料ノズル9からから噴出させる。さらに、セパレートガスノズル13からN2、CO2等の不活性ガスを酸化塔1内に向けて噴出させる。なお、運転開始当初は、不活性ガスは外部の不活性ガス源から供給するか、あるいは前回の運転時に系内の貯蔵タンクに貯蔵しておいた不活性ガス源から供給する。
【0031】
空気ノズル5から酸化塔1内に噴出された空気は上昇する過程で、金属粒子Mとの間での酸化反応に寄与する。酸化反応熱により昇温した空気すなわちN2リッチの高温空気は、前記したように酸化塔1上部の排気口27から排ガスとして排出され、熱交換器29において、被加熱流体との間に熱交換を行う。熱交換により昇温した被加熱流体は図示しない熱負荷部(例えば、蒸気利用設備など)に送られる。
【0032】
燃料ノズル9からの燃料ガスは還元塔3内に流入するが、運転時には、セパレートガス供給管62の上端部からCO2またはN2等の不活性ガスが供給され、セパレートガスノズル13から酸化塔1内に噴出する。噴出する不活性ガスにより、空気ノズル5から噴出する空気と、燃料ガス供給管61の下端の燃料ノズル9から噴出する燃料ガスとが混合するのは回避され、燃料ガスが直接燃焼するのは阻止される。
【0033】
酸化塔1内では反応温度にまで予熱された金属粒子Mと、供給された空気内の酸素が反応して酸化金属粒子MOが生成される。なお、金属粒子Mが酸化金属粒子MOを含む場合には、酸化金属粒子MOは前記酸化金属粒子がさらに酸化した形態の酸化金属粒子が該当する。例えば、金属粒子MがFe2O3の場合、酸化金属粒子MOはFe3O4等となる。
【0034】
酸化金属粒子MOおよび残存する場合での金属粒子Mは酸化塔1内を流下して還元塔3内に流入した後、還元塔3内を上昇する。還元塔3内を上昇する過程で、酸化金属粒子MOは燃料ガスによる還元作用を受けて金属粒子Mに戻る。上記のケミカルループ燃焼装置A1では、酸化塔1の底部は中央に向けて低位となる円錐面となっているので、酸化塔1の底部から還元塔3への酸化金属粒子MOの移動は円滑に進行する。還元塔3内を上昇する固体成分とガス成分は、上昇の過程で固気分離装置25の作用を受けて、固体と気体に分離され、気体はさらに上昇して還元塔3の上部から排気される。固体、すなわち金属粒子Mと残存する場合での酸化金属粒子MOは、酸化塔1内に戻される。
【0035】
酸化塔1内で、金属粒子Mは空気ノズル5からの噴出空気の作用を受けて流動化状態となることから、金属粒子Mあるいはその酸化物MOの一部は当初貯留されていたときよりも上方に舞い上がることが起こり得る。上記のケミカルループ燃焼装置A1では、酸化塔1の内壁面の一部に肉厚領域22aを形成したことで、前記したように、肉厚領域22a領域よりもその上の領域での水平断面積が大きくなっており、上位の空間に舞い上がった金属粒子Mあるいはその酸化物MOは、その空塔速度が小さくなって下方に落下しやすくなる。さらに、肉厚領域22aの上端面は円錐壁22bとなっているので、そこに落下した金属粒子Mあるいはその酸化物MOはその面に沿って確実に下方に落下する。そのために、金属粒子Mの酸化作用は円滑化とともに、酸化塔1上部の排気口27から金属粒子が排出されるのを抑制することができる。なお、酸化塔1上部の排気口27から排出される金属粒子は固気分離装置28により分離されて、必要時に、酸化塔1内に戻される。
【0036】
酸化塔1内での酸化反応に寄与することにより、投入空気は高温の排ガスとなり排気口27から排出される。排ガスは、前記したように空気の供給量に応じて、O2を含まない高濃度のN2ガスか、残存O2とN2を含むガスとなる。前記したように排ガスのN2の一部はブロワ30で昇圧され遮断弁31と調圧弁32を通って配管11からセパレートガスノズル13に送られる。
【0037】
一方、還元塔3からの排ガスは還元反応により生成されたCO2とH2Oからなっており、高温ガスであることからH2Oは水蒸気となっている。還元塔3からの排ガスは冷却水が循環している気水分離装置33で凝縮されて水と高濃度(90%以上)のCO2を含むガスに分離される。得られたCO2ガスは、必要な場合には適宜の手段でさらに濃縮した後に、そのままあるいは液化CO2として貯蔵される。CO2ガスの一部は、必要時に、ブロワ34で昇圧され遮断弁35と調圧弁32を通って配管11からセパレートガス供給管62に送られる。そのために、図示される形態のケミカルループ燃焼装置A1では、初期の運転時を除き、空気ノズル5から供給される空気と燃料ノズルから供給される燃料ガスとを分離する目的で、セパレートガスノズル13から供給すべき不活性ガス(NO2またはCO2)を自給することが可能となる。
【0038】
気水分離装置33で生成された水は、酸化塔1からの高温排ガスと熱交換器29aにおいて熱交換して水蒸気となり、必要時にその水蒸気は調圧弁38と逆止弁39を通り燃料ガスに混入される。水蒸気の供給を必要とすることにより、Feのような比較的安価な金属粒子材料を用いる場合でも、効率的に還元反応を進行させることができる。また、反応性の遅いメタンなどの炭化水素でも効率的に還元反応を進行させることが可能となる。
【0039】
上記のケミカルループ燃焼装置A1では、酸化塔1内に空気を供給する空気供給管63と還元塔3内に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管61およびセパレートガス供給管13とを、酸化塔1の上部から、すなわち酸化塔1の天面に形成した開口部から落とし込むようにして取り付けるようにしたので、ケミカルループ燃焼装置A1を組み立てるときに、クレーン等でそれらの部材を持ちあげて組み付けることが可能となり製造が容易となる。また、稼働後でのメンテナンスもきわめて容易となる。特に、図示されるように共通の取り付け用基板66を用い、そこに前記した空気供給管63と燃料ガス供給管61とセパレートガス供給管13とを取り付けることにより、組立時あるいはメンテナンス時にそれらを一体のものとして取り扱うことが可能となり、作業性が一層向上する。
【0040】
〈第2の形態〉
図2は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第2の形態の概略断面を付設する配管系とともに示している。第2の形態のケミカルループ燃焼装置A2は、酸化塔201と還元塔203は分離しており、両者は酸化した金属粒子MOが移動する流路250と還元した金属粒子Mが移動する流路260とによって接続されている点で、図1に示した第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1と相違する。他の構成は実質的にケミカルループ燃焼装置A1と同じであり、以下の説明では、第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1におけると実質的に同じ機能を奏する部材には、同じ符号を200番台の符号として付し、具体的な構成が異なる場合を除き、詳細な説明は省略する。
【0041】
ケミカルループ燃焼装置A2は、前記のように酸化塔201と還元塔203は分離しており、両者は断熱手段が施された酸化金属流路250と金属粒子流路260とで接続されている。すなわち、酸化塔201内には、還元塔に相当する手段は存在しない。そのために、酸化塔201の直径をより小さなものとすることができる。
【0042】
酸化塔201の中央部には、酸化塔201の軸芯方向に延びる所要本数の空気供給管263が挿入されており、その下端部は酸化塔201の底面近傍にまで達している。空気供給管263の下端先端部は空気ノズル205とされている。
【0043】
また、前記のように、酸化金属粒子MOは酸化金属流路250を通って還元塔203に移動する形式であり、そのために、酸化塔201内に貯留される金属粒子Mの貯留上端位置のやや上方位置に平板状の浮揚防止板267が配置され、その中央部に第1の固気分離装置270を配置している。そして、第1の固気分離装置270の固体排出口側に前記した酸化金属流路250の一方端が接続している。また、浮揚防止板267より下位の水平断面積よりも上位の水平断面積が大きくなるように、酸化塔201の内周面には耐熱壁222が貼り付けられている。酸化塔201の底部の構成は図1に示したケミカルループ燃焼装置A1の酸化塔1と同じである。また、前記した空気供給管263は第1の固気分離装置270内を通過している。
【0044】
還元塔203には、その天面を通過するようにして燃料ガス供給管261が還元塔203の軸芯線方向に平行に挿入されており、その下端部は還元塔203の底面近傍にまで達していて、燃料ノズル209とされている。また、還元塔203は、その上方位置において酸化金属流路250の他方端と接しており、その接続部と天板との間に第2の固気分離装置271を備えている。還元塔203の下方位置には金属粒子流路260の一方端が接続しており、金属粒子流路260の他方端は酸化塔201の下方部分に接続している。酸化金属流路250の途中には粒子溜め251が設けてあり、金属粒子流路260の途中にも粒子溜め262が設けてある。
【0045】
酸化塔201に取り付けた第1の固気分離装置270で固体分(主に酸化金属粒子MO)を分離した後の気体(排ガス)は排気口227から排気されるが、この形態では排ガス中にほとんど固形分が含まれないので、図1に示したケミカルループ燃焼装置A1での固気分離装置28を省略することができる。
【0046】
ケミカルループ燃焼装置A2において、上方から供給される空気は空気供給管263を通過した後に、その下端部の空気ノズル205から酸化塔201内に噴出され、その空気が上昇する過程で金属粒子Mとの間での酸化反応に寄与する。酸化反応をした後の空気すなわちN2リッチの空気は第1の固気分離装置270を通って酸化塔201上部の排気口227から高温の排ガスとして排出される。高温の排ガスは、ケミカルループ燃焼装置A1の場合と同様、熱交換器229において被加熱流体との間に熱交換を行う。
【0047】
第1の固気分離装置270で分離された固体(主に酸化金属粒子MO)は酸化金属流路250を通って還元塔203に移動し、そこで還元作用を受けて金属粒子Mとなり、還元後の金属粒子Mは金属粒子流路260を通って酸化塔201内に戻される。また、還元塔203に取り付けた第2の固気分離装置271は酸化金属流路250から流入してくる排ガス中の固体分(主に還元を受ける前の酸化金属粒子MO)を分離して還元塔23内に戻すとともに、気体(主にCO2とH2O)を還元塔203から排ガスとして排出する。第2の形態のケミカルループ燃焼装置A2では、還元塔203の天面から燃料ガス供給管261を還元塔203内に取り付けるようにしており、還元塔203の組み付けおよびメンテナンスがきわめて容易となる。
【0048】
酸化塔201からの排ガスおよび還元塔203からの排ガスのための配管系は図1に示したケミカルループ燃焼装置A1での配管系とほぼ同じである。ただし、図2の管路図に示すように、双方の排ガスから生成されるNO2およびCO2である不活性ガスは、セパレートガスノズル13にではなく、前記した粒子溜め251および262にパージガスとして供給される点で相違する。粒子溜め251および262に不活性ガスをパージガスとして供給することにより、酸化金属流路250および金属粒子流路260において、空気(酸化剤)と燃料ガスが混合するのを確実に阻止できるようになり、燃料ガスの直接燃焼を確実に回避できるようになる。なお、2つの粒子溜め251、262、特に酸化金属流路250に設ける粒子溜め251は省略することもできる。省略してもケミカルループ燃焼装置A2の運転は可能である。
【0049】
〈第3の形態〉
図3は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第3の形態の概略断面を付設する配管系とともに示している。第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3は、酸化塔301内に伝熱管326を配置して、酸化塔301内で発生する酸化反応熱と伝熱管326内を流れる被加熱流体との間の熱交換を酸化塔301内で行うようにした点で、図1に示したケミカルループ燃焼装置A1と相違する。その他の構成は第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1と同じであり、以下の説明では、第1の形態であるケミカルループ燃焼装置A1におけると実質的に同じ機能を奏する部材には、同じ符号を300番台の符号として付し、具体的な構成が異なる場合を除き、詳細な説明は省略する。
【0050】
ケミカルループ燃焼装置A3では、酸化塔301の底部には円塔状の下部ヘッダー315が取り付けられている。下部ヘッダー315の底面は水平面であるが、上面は円錐面316となっていて、円錐面の下端が空気ノズル305とほぼ同一面となっている。下部ヘッダー315の外周面は酸化塔301の内周面に接しており、酸化塔301の壁面に作られた孔317を通して、被加熱流体が流れる第1の流体配管318が下部ヘッダー314の外周面に接続している。また、下部ヘッダー315の中央部分は円錐面316である上面に連続する凹状のコーン部材360により閉鎖されている。
【0051】
酸化塔301の上方には、天板302に接するようにして円塔状の上部ヘッダー319が取り付けてある。上部ヘッダー319の内径と外径は下部ヘッダー315はほぼ同じである。上部ヘッダー319には酸化塔301の天板302に形成した孔320を通して被加熱流体の第2の流体配管321が接続している。この例において、第2の流体配管221はオンサイトでの蒸気利用設備や工業炉などの熱負荷300に連通している。
【0052】
酸化塔301の内壁に沿うようにして、前記下部ヘッダー315の上部円錐面316から適宜上方位置まで、耐熱瓦や耐熱セラミックファイバーなどの耐熱材からなる適宜厚さの耐熱壁322が形成されており、該耐熱壁322の上端面は円錐壁323とされている。耐熱壁322の前記上端円錐壁323に下端面を沿わせるようにして、全体として斜板形状をなす中間ヘッダー324が取り付けられており、該中間ヘッダー324の内径と外径は下部ヘッダー315と内径と外径とほぼ等しくされている。そして、前記中間ヘッダー324が取り付けられている位置よりもやや上方位置において、還元塔303には、固気分離装置325が取り付けられている。
【0053】
下部ヘッダー315と中間ヘッダー324と上部ヘッダー319の内部空間を相互に連通するようにして、複数本の伝熱管326が酸化塔301の中心軸線と平行に取り付けられている。複数本の伝熱管326は、図では、半径方向に複数列、かつ各例が複数本の伝熱管で構成されるようにして配置されているが、酸化塔301内での伝熱管326の配置は任意であり、後に記載するように、酸化塔301内に収容される金属粒子の流動を妨げないことを条件に適宜配置すればよい。
【0054】
なお、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319は耐熱性に優れた材料で作られ、また特に伝熱管326は耐熱性と熱伝導性に優れた材料・形状で作られる。さらに、後に説明するように、伝熱管326は、下部ヘッダー315と中間ヘッダー324の間に位置する部分と、中間ヘッダー324と上部ヘッダー319の間に位置する部分とを、異なった材料で作ることが望ましい。
【0055】
酸化塔301からの排ガスおよび還元塔303からの排ガスのための配管系は、図1に示したケミカルループ燃焼装置A1での配管系とほぼ同じであり、説明は省略する。
【0056】
上記のケミカルループ燃焼装置A3では、運転に際して、下部ヘッダー315と中間ヘッダー324と上部ヘッダー318、すべての伝熱管326、および第1の流体配管318と第2の流体配管321を、例えば水である被加熱溶液で満す。その後、ケミカルループ燃焼装置A1と同様にして、酸化塔301での酸化反応と還元塔303での還元反応とを進行させる。
【0057】
上記のケミカルループ燃焼装置A3では、下部ヘッダー315の上面316は、中央に向けて低位となる円錐面となっており、さらに下部ヘッダー315の中央部分には上面316に連続するようにして表面が滑らかな円錐面あるいは放物線面であるコーン部材360を取り付けているので、酸化塔301内での酸化金属粒子MOあるいは金属粒子Mの移動を円滑化することができ、酸化塔301の底部から還元塔303内に酸化金属粒子MOあるいは金属粒子Mが流入するのを良好にしている。
【0058】
酸化塔301内で、金属粒子Mは空気ノズル305からの噴出空気の作用を受けて流動化状態となり金属粒子Mあるいはその酸化物MOの一部は当初貯留されていたときよりも上方に舞い上がることが起こり得る。上記のケミカルループ燃焼装置A3では、酸化塔301の下方の内壁面に耐熱壁322を形成したことにより、耐熱壁322が形成されている領域の水平断面積よりも、その上の耐熱壁322が形成されていない領域の水平断面積が大きくなっている。そのために、固気分離装置325近傍よりも上位の空間に舞い上がった金属粒子Mあるいはその酸化物MOは、その空塔速度が小さくなって下方に落下しやすくなる。さらに、中間ヘッダー324の上面に落下した金属粒子Mあるいはその酸化物MOは、中間ヘッダー324の上面が円錐面となっているので、その面に沿って確実に下方に落下する。そのために、金属粒子Mの酸化作用を円滑化するとともに、酸化塔301上部の排気口327から金属粒子が排出されるのを抑制することができる。
【0059】
ケミカルループ燃焼装置A3において、酸化塔301内で金属粒子Mが酸化することにより発生した熱は、伝熱管326の壁面を介して伝熱管326内を流れる被加熱流体を伝えられ、被加熱流体を加熱する。すなわち、ケミカルループ燃焼装置A3では、酸化反応により発熱した金属粒子Mの熱はガス(投入空気)に伝熱すると同時に、酸化塔301内に位置する伝熱管322にも直接熱交換するために、排ガス温度が大きく上がることがない。そのために、NOxの生成をさらに抑制することができる。また、酸化塔301内のガス(投入空気)の平均温度も低くなり、それにより空塔速度が抑えられるため、酸化塔301の断面積を小さくすることができる。結果として、装置の小型化が可能となり、燃焼量当たりの表面積も抑えることができ、放熱のロスも小さくすることができる。
【0060】
上記のケミカルループ燃焼装置A3では、中間ヘッダー324より下位の領域は金属粒子が貯留されている領域であり、その領域では伝熱管326は金属粒子と接触することで多くの摩擦損耗を受ける。一方、中間ヘッダー324より上位の領域は主にガスが存在する領域であり、伝熱管326の摩擦損耗は少ない。そのことから、伝熱管326の材料は、下部ヘッダー315と中間ヘッダー324の間に位置する部分では耐摩耗性に優れた材料とし、中間ヘッダー324と上部ヘッダー319の間に位置する部では比較して耐摩耗性に小さい材料とすることができる。そのように異なった材料を用いることで低コスト化が可能となる。
【0061】
酸化塔301内での熱交換により加熱された被加熱流体は、例えば、上部ヘッダー319から第2の流体配管321、熱負荷部300、第1の流体配管318を循環し、下部ヘッダー314に戻ってくる。加熱された被加熱流体の循環は逆回りであってもよい。
【0062】
なお、上記の例では、第1の流体管路318と第2の流体管路321は連続するものとして説明したが、熱負荷部300の種類や形態によっては、第1の流体管路318(および熱負荷部300)と第2の流体管路321は非連続であってもよい。
【0063】
上記のように、第3の形態であるケミカルループ燃焼装置A3では、酸化塔301内に、被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319、伝熱管326等を配置したことで、その酸化反応熱をオンサイトでの産業用ボイラや工業炉で実際に利用することが可能となる。
【0064】
〈第4の形態〉
図4は、本発明によるケミカルループ燃焼装置の第4の形態の概略断面を付設する配管系とともに示している。第4の形態のケミカルループ燃焼装置A4は、酸化塔401内に被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等を配置した点で、第3の形態であるケミカルループ燃焼装置A3と同じであり、酸化塔401と還元塔403が分離していて、両者は酸化した金属粒子MOが移動する流路450と還元した金属粒子Mが移動する流路460とによって接続されている点で、第2の形態であるケミカルループ燃焼装置A2と同じである。以下の説明では、第3の形態であるケミカルループ燃焼装置A3におけると実質的に同じ機能を奏する部材には、同じ符号を400番台の符号として付し、具体的な構成が異なる場合を除き、詳細な説明は省略する。
【0065】
ケミカルループ燃焼装置A4は、ケミカルループ燃焼装置A3と同様、前記したように、酸化塔401内に、被加熱流体の熱交換に必要な手段である下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等の手段は存在するが、還元塔に相当する手段は存在しない。還元塔に相当する手段は存在しないことを除き、酸化塔401の構成はケミカルループ燃焼装置A3における酸化塔301と実質的に同じである。
【0066】
すなわち、酸化塔401の中央部には、酸化塔401の軸芯方向に延びる所要本数の空気供給管463が挿入されており、その下端部は酸化塔401の底面近傍にまで達している。空気供給管463の下端先端部は空気ノズル405とされている。また、酸化金属粒子MOは酸化金属流路450を通って還元塔403に移動する形式であり、そのために、酸化塔401内に貯留される金属粒子Mの貯留上端位置のやや上方位置に平板状の中間ヘッダー424が備えられ、中間ヘッダー424の中央空間領域に第1の固気分離装置470が配置されている。そして、第1の固気分離装置470の固体排出口側に前記した酸化金属流路450の一方端が接続している。また、前記した空気供給管463は第1の固気分離装置470内を通過している。
【0067】
還元塔403には、その天面を通過するようにして燃料ガス供給管461が還元塔403の軸芯線方向に平行に挿入されており、その下端部は還元塔403の底面近傍にまで達していて、燃料ノズル409とされている。また、還元塔403は、その上方位置において酸化金属流路450の他方端と接しており、その接続部と天板との間に第2の固気分離装置471を備えている。前記燃料ガス供給管461は第2の固気分離装置471内を通過している。還元塔403の下方位置には金属粒子流路460の一方端が接続しており、金属粒子流路460の他方端は酸化塔401の下方部分に接続している。酸化金属流路450の途中には粒子溜め451が設けてあり、金属粒子流路460の途中にも粒子溜め462が設けてある。
【0068】
上記のケミカルループ燃焼装置A4において、酸化塔401内に酸化反応熱を被加熱流体と熱交換するための手段(下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等)を設けたことによる達成される作用効果は、図3に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3におけると同じであり、また、酸化塔401の上方から空気供給管463を取り付けるようにしたことによる作用効果も、図1たまは図3に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A1、A3におけると同じである。さらに、複数本の空気供給管463の一部の空気供給管463aに遮断弁465を通して燃料ガスを供給できるようにすることにより、その空気供給管463aを昇温用バーナ463aとして用いることができるのも、図3に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3と同様である。
【0069】
ケミカルループ燃焼装置A4において、上方から供給される空気は空気供給管463を通過した後に、その下端部の空気ノズル405から酸化塔401内に噴出され、その空気が上昇する過程で金属粒子Mとの間での酸化反応に寄与する。酸化反応をした後の空気すなわちN2リッチの空気は第1の固気分離装置470を通って酸化塔401上部の排気口427から排ガスとして排出されるのは、ケミカルループ燃焼装置A3の場合とほぼ同じである。
【0070】
第1の固気分離装置470で分離された固体(主に酸化金属粒子MO)は酸化金属流路450を通って還元塔403に移動し、そこで還元作用を受けて金属粒子Mとなり、還元後の金属粒子Mは金属粒子流路460を通って酸化塔401内に戻されること、および、還元塔403に取り付けた第2の固気分離装置471は固体分(主に還元を受ける前の酸化金属粒子MO)を分離して還元塔403内に戻すとともに、気体(主にCO2とH2O)を還元塔403から排ガスとして排出することは、図2に示した第2のケミカルループ燃焼装置A2と同じである。そして、ケミカルループ燃焼装置A4でも、酸化塔401内に空気を供給する空気供給管463を酸化塔1の上部から、また還元塔403内に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管461を還元塔403の上部から、それぞれ落とし込むようにして取り付けるようにしたので、ケミカルループ燃焼装置A4を組み立ておよびメンテナンス時の作業が容易となる。特に、図示されるように共通の取り付け用基板466を用い、そこに前記した複数本の空気供給管463を取り付けることにより、作業性を一層向上させることができる。
【0071】
なお、上記したいずれの形態のケミカルループ燃焼装置においても、前記したように、排ガスから高濃度のCO2を分離できる。必要な場合には、濃度90%以上で回収したCO2を利用用途に応じて例えばPSA法などを用いてさらに濃縮することで、99.999%濃度のCO2が得られる。
【0072】
また、本発明によるケミカルループ燃焼装置の運転において、系全体の金属粒子Mと酸化金属粒子MOを常にある比率の範囲に保つために、燃料と酸化剤の瞬間値はもちろんのこと、積算投入量を管理することで、系全体が運転開始時から酸化側に寄ったのか、還元側に寄ったのかを判別してフィードバックをかけることもできる。また、燃料と酸化剤とが適正に金属を介して反応しているかどうかを判断するため、下記に示す「酸素有効利用率」を1.0付近で制御することが推奨される。
酸素有効利用率=(外部酸素投入量−系外にでる酸素量)/(燃料の理論酸素量)
【0073】
さらに、本発明によるケミカルループ燃焼装置において、酸化塔と還元塔の出口付近に圧力計を設置することもできる。そして、還元塔からCO2を高濃度で取り出したい場合には、還元塔側の圧力が酸化塔の圧力よりやや高くなるように排気ブロアをインバーターで制御する。
【0074】
また、装置内での反応が継続していることを確認するために、酸化塔内に熱電対を2個挿入することもできる。一箇所は固気分離装置より下部の粒子面より下まで挿入し、もう一つは、固気分離装置の上部に設置する。そして、金属粒子内部の温度を還元剤の反応温度(例えば、天然ガスの場合760℃)以上に保つようにする。保てない場合には、燃料ガスの供給を遮断する。
【0075】
次に、本発明による、反応塔の天面側から酸化剤およびまたは還元剤が供給されるケミカルループ燃焼装置のいくつかの変形例を説明する。
【0076】
〈第3の形態の第1の変形例〉
図5は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第1の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3aは、ケミカルループ燃焼装置A3が酸化塔301の内部に1つの還元塔303が組み込まれているのに対して、還元塔303の内部に1つの酸化塔301が組み込まれている点で、ケミカルループ燃焼装置A3と構成が相違する。すなわち、図3において酸化塔(外塔)301として表わされていたものが、ここでは還元塔303を構成する。そして、還元塔303の中央部に酸化塔301が取り付けられ、該酸化塔301の周囲を囲むようにして適数の燃料ガス供給管361が還元塔303の上部から落とし込むようにして取り付けられている。燃料ガス供給管361は還元塔303の底面近傍まで達しており、先端部は燃料ノズル309とされている。前記酸化塔301は、空気供給管363と、酸化塔301の内周壁面に沿うようにして配置された所要本数のセパレートガス供給管362とで構成され、いずれも還元塔303の底面近傍まで達しており、空気供給管363の先端部は空気ノズル305とされ、セパレートガス供給管362の先端部はセパレートガスノズル313とされている。また、酸化塔301には、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3での還元塔303におけると同様にして固気分離装置325が取り付けられている。
【0077】
外塔を構成する還元塔303内には、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3における酸化塔301におけると同様にして、被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319、伝熱管326等が配置されている。また、燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、空気供給管363に空気(酸化剤)を送り込む配管系、セパレートガス供給管362に不活性ガスを送り込む配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系も、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3におけると同じである。それらについては、図5では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0078】
〈第3の形態の第2の変形例〉
図6は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第2の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3bは、還元塔303の内部に1つの酸化塔301が組み込まれている点、酸化塔301および燃料ガス供給管361が還元塔303の上部から落とし込むようにして取り付けられている点では、前記図5に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3aと同じであるが、空気ノズル305とセパレートガスノズル313が還元塔303の底部側に取り付けられている点で、相違している。
【0079】
すなわち、還元塔303の底部には空気ヘッダー304が取り付けられ、その先端が空気ノズル305とされている。空気ヘッダー304の外周はセパレートガス供給管362とされており、その先端部はセパレートガスノズル313とされている。空気ヘッダー304にはブロワ306からの調圧された空気が供給され、セパレートガス供給管362には不活性ガスが供給される。従って、ケミカルループ燃焼装置A3bでは、酸化塔303は単なる円塔体である。
【0080】
燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、セパレートガス供給管362に不活性ガスを送り込む配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系は、図5に示したケミカルループ燃焼装置A3aにおけると実質的に同じであり、それらについては、図6では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0081】
このケミカルループ燃焼装置A3bでは、空気ノズル305から噴出する空気(酸化剤)が酸化塔303内に流入して酸化塔内を移動する金属粒子の酸化反応を進行させる。また、空気ノズル305の周囲に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。さらに、この態様でも、酸化塔301と燃料ガス供給管361は還元塔303の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0082】
〈第3の形態の第3の変形例〉
図7は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第3の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3cは、還元塔303の内部に1つの酸化塔301が組み込まれている点、酸化塔301は空気供給管363と酸化塔301の内周壁面に沿うようにして配置された所要本数のセパレートガス供給管362とで構成され、それらは、還元塔303の上部から落とし込むようにして取り付けられているとともに、酸化剤は空気供給管363の下端部の空気ノズル305から酸化塔301内に供給される点では、前記図5に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3aと同じであるが、還元塔303の底部に燃料ガス供給管361および燃料ノズル309が取り付けられており、そのために還元塔303内には燃料ガス供給管361が備えられていない点で、ケミカルループ燃焼装置A3aと相違している。
【0083】
燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系は、図5に示したケミカルループ燃焼装置A3aにおけると実質的に同じであり、それらについては、図6では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0084】
このケミカルループ燃焼装置A3cでは、還元塔303の底部の燃料ノズル309から噴出する燃料ガスが還元塔303内の金属酸化物粒子の還元反応を進行させる。また、酸化塔301の下端に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。さらに、この態様でも、酸化塔301は還元塔303の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0085】
〈第3の形態の第4の変形例〉
図8は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第4の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3dは、還元塔303の内部に複数個(図示の例では2個)の酸化塔301,301が備えられている点のみで、図5に示したケミカルループ燃焼装置A3aと構成が相違する。他の構成は基本的にケミカルループ燃焼装置A3aの場合と同じであり、同じ符号を付すことで、説明は省略する。
【0086】
ケミカルループ燃焼装置A3dにおいて、2つの酸化塔301、301は還元塔303の軸心線と平行な姿勢で還元塔303内に配置されており、各酸化塔301、301には、ブロワ306からの調圧された空気が供給され、また、各セパレートガスノズル313、313には、配管314を通して不活性ガスが供給される。
【0087】
図示および説明は省略するが、図8に示すような、還元塔の内部に複数個の酸化塔が備えられている形態のケミカルループ燃焼装置においても、図6に示したように空気ノズル305とセパレートガスノズル313とを還元塔303の底部に配置する構成とすること、図7に示したように燃料ノズル309を還元塔303の底部に配置する構成とすることも、ともに可能である。
【0088】
〈第3の形態の第5の変形例〉
図9は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第5の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3eは、酸化塔301の内部に1つではなく複数個(図示の例では2個)の還元塔303,303が備えられている点と、それに従い配管系に必要な変更が行われている点でのみ、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3と構成が相違する。他の構成は、基本的に図3に示したケミカルループ燃焼装置A3の場合と同じであり、同じ符号を付すことで、構成および作用の説明は省略する。
【0089】
〈第3の形態の第6の変形例〉
図10は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第6の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3fは、酸化塔301の内部に2つの還元塔303が組み込まれている点、該還元塔303を構成する燃料ガス供給管361およびセパレートガス供給管362が酸化塔301の上部から落とし込むようにして取り付けられている点では、前記図9に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3eと同じであるが、適数の空気ノズル305が酸化塔301の底部に取り付けられており、そのために酸化塔301内には空気供給管363が備えられていない点で、図9に示したケミカルループ燃焼装置A3eと相違している。
【0090】
すなわち、酸化塔301の底部には空気ヘッダー304が取り付けられ、その先端が空気ノズル305とされている。他の構成は、基本的に図9に示したケミカルループ燃焼装置A3eの場合と同じであり、同じ符号を付している。このケミカルループ燃焼装置A3fでは、空気ノズル305から噴出する空気(酸化剤)が酸化塔303内に流入して酸化塔内を移動する金属粒子の酸化反応を進行させ、酸化した金属粒子は2つの還元塔303内に流入する。また、各還元塔303の周囲に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。この態様でも、還元塔303、燃料ガス供給管361、セパレートガス供給管362は、酸化塔301の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0091】
〈第3の形態の第7の変形例〉
図11は、図3に示した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3の第7の変形例の概略断面を付設する配管系とともに示している。このケミカルループ燃焼装置A3gは、酸化塔301の内部に2つの還元塔303が組み込まれている点、空気供給管363および還元塔303が酸化塔301の上部から落とし込むようにして取り付けられている点では、前記図9に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3eと同じであるが、酸化塔301の底部における還元塔303に対向する位置に、燃料ガス供給管361およびセパレートガスノズル313が取り付けられていて、それらの先端化が燃料ノズル309およびセパレートガスノズル313とされており、そのために2つの還元塔303内には単なる空洞となっている点で、図9に基づき説明したケミカルループ燃焼装置A3eと相違している。
【0092】
燃料ガス供給管361に燃料ガスを供給する配管系、還元塔303からの排ガスおよび酸化塔301からの排ガスを処理する配管系は、図3に示したケミカルループ燃焼装置A3におけると実質的に同じであり、それらについては、図11では同じ符号を付し、説明は省略する。
【0093】
このケミカルループ燃焼装置A3gでは、酸化塔301の底部の燃料ノズル309から噴出する燃料ガスによって2つの還元塔303内での金属酸化物粒子の還元反応が進行する。また、燃料ノズル309の周囲に設けたセパレートガスノズル313から噴出する不活性ガスによって、酸化剤と還元剤とが混合するのを阻止することができる。さらに、この態様でも、空気供給管363と還元塔303は酸化塔301の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0094】
なお、上記した第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3における第1から第7の変形例において、図3に示す第3の形態のケミカルループ燃焼装置A3に備えられる被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー315、中間ヘッダー324、上部ヘッダー319、伝熱管326等の構成は、各変形例に共通に適用されるものであり、各変形例の構成に直接影響を与えるものではない。このことは、被加熱流体の熱交換に必要な手段を備えないケミカルループ燃焼装置、すなわち図1に示す内部循環型のケミカルループ燃焼装置A1においても、前記した第1から第7の変形例はすべて適用できることを意味しており、図示せずかつ詳細な説明は省略するが、図1に示す内部循環型のケミカルループ燃焼装置A1をベースとするそれらの変形例もすべて本発明の範囲内のものである。
【0095】
〈第4の形態の第1の変形例〉
図12は、図4に示した第4の形態である被加熱流体の熱交換に必要な手段を備えた外部循環式ケミカルループ燃焼装置の第1の変形例を付設する配管系とともに示している。この外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4aは、還元塔403の底面側から燃料ガスが供給されるようになっている点で、図4に示したケミカルループ燃焼装置A4と相違する。他の構成は同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0096】
すなわち、外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4aでは、還元塔403の底部に燃料ガス供給管461が取り付けられ、その先端が燃料ノズル409として還元塔403内に開放している。燃料ガス供給管461へ燃料を供する配管系はケミカルループ燃焼装置A4と同様であり、説明は省略する。この態様のケミカルループ燃焼装置A4aにおいても、空気供給管463は酸化塔401の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0097】
〈第4の形態の第2の変形例〉
図13は、図4に示した第4の形態の外部循環式ケミカルループ燃焼装置の第2の変形例を付設する配管系とともに示している。この外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4bは、酸化塔401の底面側から空気(酸化剤)が供給されるようになっている点で、図4に示したケミカルループ燃焼装置A4と相違する。他の構成は同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0098】
すなわち、外部循環式ケミカルループ燃焼装置A4bでは、酸化塔401の底部に空気ヘッダー404が取り付けられ、その先端が空気ズル405として酸化塔401内に開放している。酸化塔401内に空気供給管463は存在しない。そして、空気ヘッダー404には、ブロワ406、流量計407、調圧弁408を通して調圧された空気が供給され、空気ノズル5から酸化塔1内に噴出する。
【0099】
この態様のケミカルループ燃焼装置A4bにおいても、燃料ガス供給管461は還元塔403の天面側から着脱自在とされており、装置の組み立てやメンテナンスの容易性は確保できる。
【0100】
なお、上記した第4の形態のケミカルループ燃焼装置A4における第1および第2の変形例においても、図4に示す第4の形態のケミカルループ燃焼装置A4に備えられる被加熱流体の熱交換に必要な手段、すなわち、下部ヘッダー415、中間ヘッダー424、上部ヘッダー419、伝熱管426等の構成は、各変形例に共通に適用されるものであり、各変形例の構成に直接影響を与えるものではない。このことは、被加熱流体の熱交換に必要な手段を備えないケミカルループ燃焼装置、すなわち図2に示す外部循環型のケミカルループ燃焼装置A2においても、前記した第1および第2の変形例は適用できることを意味しており、図示せずかつ詳細な説明は省略するが、図2に示す外部循環型のケミカルループ燃焼装置A2をベースとするそれらの変形例もすべて本発明の範囲内のものである。
【0101】
さらに、上記したいずれのケミカルループ燃焼装置においても、図示したように、気水分離装置33で生成された水から得られる水蒸気を調圧弁38および逆止弁39を通して燃料ノズル9への燃料供給管路内に供給するようにしたが、装置内で生成される水蒸気およびCO2を含むガス(例えば、還元塔3からの排ガス)を還元塔に供給される還元剤を含むガス(燃料ガス)に添加するようにしても、同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0102】
A1…ケミカルループ燃焼装置、
1…酸化塔、
2…酸化塔の天板(天面)、
3…還元塔、
5…空気ノズル、
9…燃料ノズル、
13…セパレートガスノズル、
16…酸化塔の耐熱底部の上面、
22a…酸化塔の内周面の肉厚領域、
22b…肉厚領域の上端面の円錐壁、
25…固気分離装置、
27…酸化塔の上部の排気口、
28…固気分離装置、
29…熱交換器、
29a…熱交換器、
33…気水分離装置、
61…燃料ガス供給管、
62…セパレートガス供給管、
63…空気供給管、
63a…昇温用バーナとしても機能する空気供給管、
66…共通の取り付け用基板、
M…金属粒子、
MO…酸化金属粒子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子が酸化剤と反応して前記金属粒子の酸化物が生成される酸化塔と前記酸化塔で生成された金属粒子の酸化物が還元剤と反応して前記金属粒子に還元される還元塔とを反応塔として備え、前記金属粒子が酸化と還元を受けながら前記酸化塔と前記還元塔との間を循環するようにされているケミカルループ燃焼装置であって、
前記酸化塔内に酸化剤を供給する酸化剤供給管および前記還元塔内に還元剤を供給する還元剤供給管の双方またはいずれか一方はそれぞれの反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔の内部に前記還元塔が1つまたは1つ以上組み込まれていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項3】
請求項2に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項4】
請求項1に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記還元塔の内部に前記酸化塔が1つまたは1つ以上組み込まれていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項5】
請求項3に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記還元塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔は複数本の酸化剤供給管を備えており、一部の酸化剤供給管は酸化剤と還元剤とが選択的に供給可能とされていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項7】
請求項1に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔と前記還元塔とは分離しており、両者は酸化した金属粒子の流路と還元した金属粒子の流路とによって接続されていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔または還元塔内には前記金属粒子またはその酸化物と接触して反応熱を被加熱流体に伝熱する伝熱管が配置されていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項1】
金属粒子が酸化剤と反応して前記金属粒子の酸化物が生成される酸化塔と前記酸化塔で生成された金属粒子の酸化物が還元剤と反応して前記金属粒子に還元される還元塔とを反応塔として備え、前記金属粒子が酸化と還元を受けながら前記酸化塔と前記還元塔との間を循環するようにされているケミカルループ燃焼装置であって、
前記酸化塔内に酸化剤を供給する酸化剤供給管および前記還元塔内に還元剤を供給する還元剤供給管の双方またはいずれか一方はそれぞれの反応塔の天面側から底面側に向けて挿入されていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔の内部に前記還元塔が1つまたは1つ以上組み込まれていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項3】
請求項2に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項4】
請求項1に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記還元塔の内部に前記酸化塔が1つまたは1つ以上組み込まれていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項5】
請求項3に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記還元塔の底面は下方に湾曲したすり鉢状面とされていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔は複数本の酸化剤供給管を備えており、一部の酸化剤供給管は酸化剤と還元剤とが選択的に供給可能とされていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項7】
請求項1に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔と前記還元塔とは分離しており、両者は酸化した金属粒子の流路と還元した金属粒子の流路とによって接続されていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のケミカルループ燃焼装置であって、前記酸化塔または還元塔内には前記金属粒子またはその酸化物と接触して反応熱を被加熱流体に伝熱する伝熱管が配置されていることを特徴とするケミカルループ燃焼装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−172891(P2012−172891A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34746(P2011−34746)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(391022614)学校法人幾徳学園 (19)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(391022614)学校法人幾徳学園 (19)
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