説明

反応容器および分析装置

【課題】分注装置の構成を複雑にすることなく正確な分注を実現すること。
【解決手段】反応容器1の内部には、液体を保持する液体保持空間2が形成されている。また、反応容器1の鉛直上面には、液体保持空間2と外部を連通する2つの開口が形成されており、一方の導入口3は反応容器1内に液体を導入するために用いられ、他方の排出口5は、反応容器1内に導入された液体の一部または全部を排出するために用いられる。排出口5の隣接位置にはオーバーフロー液溜め7が形成されており、導入口3から導入された液体のうち、排出口5から溢れ出たオーバーフロー液を一時的に保持する。そして、液体保持空間2を含む反応容器1の内部空間が所定量の容積を有し、この内部空間の容積によって、反応容器1内に充填される液体の体積が規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器内に液体を分注する分注装置を備え、該分注装置によって前記反応容器内に分注された液体を光学的に測定して分析する分析装置で用いられる反応容器および分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器内に分注し、反応容器内で生じた反応を光学的に測定することによって検体の分析を行う分析装置が知られている。また、この分析装置で用いられる分注装置の分注制度を向上させるための技術が種々開発されている。例えば、特許文献1には、ディスポーザブルチップを用いた分注装置において、分注する液体とチップ間の濡れ力を検出して分注量を補正する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−347381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンジを用いて分注対象を吸引・吐出することによって分注を行う分注装置では、吸引量と吐出量との乖離が分注精度に影響する。このため、分注精度を向上させるためには、シリンジに動力を伝達する駆動部のバックラッシを回避するための機構を分注装置に設けたり、あるいは分注装置がバックラッシを回避するための動作を行う必要があり、構成が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分注装置の構成を複雑にすることなく正確な分注を実現することができる反応容器および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる反応容器は、反応容器内に液体を分注する分注装置を備え、該分注装置によって前記反応容器内に分注された液体を光学的に測定して分析する分析装置で用いられる反応容器であって、所定量の容積を有する内部空間が形成されるとともに、前記分注装置によって分注される液体を前記内部空間内に導入する導入口および前記内部空間内に導入された液体を排出する排出口が鉛直上面に形成されており、前記導入口から導入された液体のうちの余剰量が前記排出口から排出されて前記液体が前記内部空間内に充填されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる反応容器は、上記の発明において、前記排出口の隣接位置に、前記排出口から排出された液体を保持する液溜めが形成されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる反応容器は、上記の発明において、前記液溜めは、前記排出口を頂上とする傾斜面を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる反応容器は、上記の発明において、前記排出口の周囲に撥水性領域を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる反応容器は、上記の発明において、前記反応容器の底面は光学的に透明な素材で成形され、前記分析装置によって当該反応容器内の液体が底面側から測定可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる分析装置は、磁性粒子を含む試薬および検体を反応容器内に分注する分注部と、前記反応容器内の液体を吸引する吸引部と、前記反応容器内の前記磁性粒子を集磁する集磁部と、分注処理を行って前記分注部に前記磁性粒子を含む試薬および前記検体を分注させ、吸引処理を行って前記吸引部に前記反応容器内の液体を吸引させ、集磁処理を行って前記集磁部に前記内部空間内の前記磁性粒子を集磁させる制御部と、を備え、前記反応容器内で前記磁性粒子を含む試薬および前記検体を反応させて分析する分析装置であって、前記反応容器には、所定量の容積を有する内部空間が形成されるとともに、前記分注部によって分注される液体を前記内部空間内に導入する導入口および前記内部空間内に導入された液体を排出する排出口が鉛直上面に形成されており、前記制御部は、前記分注処理を行って前記導入口から前記内部空間内に前記磁性粒子を含む試薬を導入することで、該導入した前記磁性粒子を含む試薬のうちの余剰量を前記排出口から排出させて前記磁性粒子を含む液体を前記内部空間内に充填させた後、前記集磁処理を行って前記内部空間内の前記磁性粒子を集磁させた状態で、前記吸引処理を行って前記導入口または前記排出口から前記内部空間内の液体を吸引させるとともに、前記分注処理を行って前記導入口から前記内部空間内に前記検体を導入することで、該導入した液体のうちの余剰量を前記排出口から排出させて、前記磁性粒子が集磁された前記内部空間内に前記検体を充填させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる分析装置は、上記の発明において、前記反応容器の底面は光学的に透明な素材で成形されており、前記反応容器内の液体を前記反応容器の底面側から光学的に測定する測定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分注装置によって分注される液体を反応容器上面の導入口から導入するとともに、余剰量を反応容器上面の排出口から排出することによって、反応容器内に正確量の液体を充填することができる。したがって、分注装置の構成を複雑にすることなく、反応容器に対する正確な分注を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における反応容器1の構成を示す断面図である。この反応容器1は、反応容器1に対して検体や試薬を分注し、内部の液体を光学的に測定して被検血液の抗原抗体反応等の免疫検査を自動的に行う分析装置で用いられる。
【0016】
図1に示すように、反応容器1の内部には、液体を保持する液体保持空間2が形成されている。また、反応容器1の鉛直上面には、液体保持空間2と外部を連通する2つの開口が形成されている。この2つの開口のうち、図1に向かって左側の開口である導入口3は、主に反応容器1内に液体を導入するために用いられる。また、図1に向かって右側の開口である排出口5は、反応容器1内に導入された液体の一部または全部を排出するために用いられる。排出口5の隣接位置にはオーバーフロー液溜め7が形成されており、導入口3から導入された液体のうち、排出口5から溢れ出たオーバーフロー液を一時的に保持する。また、反応容器1底面は、少なくとも図1中に破線で示す液体保持空間2下方の一部分が光学的に透明な素材で成形され、分析装置による測定(測光)用の窓として利用される。
【0017】
この反応容器1は、所定の内容積を有する。具体的には、反応容器1は、液体保持空間2、液体保持空間2と導入口3との間の導入路4および液体保持空間2と排出口5との間の排出路6からなる内部空間の容積が予め設定される所定量となるように形成され、この内部空間の容積によって、反応容器1内に充填される液体の体積が規定される。ここで、反応容器1は、個体間で生じる内容積の誤差が要求される分注精度以下となるように製造される。
【0018】
図2は、図1に示した反応容器1を用いる分析装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、分析装置10は、分注部11と、集磁部13と、BF洗浄部15と、攪拌部17と、測光部19とを備える。また、分析装置10は、装置を構成する各部を制御する制御部21を備え、各部への動作タイミングの指示やデータの転送等を行って装置全体の動作を統括的に制御する。
【0019】
分注部11は、検体や第1試薬、第2試薬、基質液等を反応容器1内に分注するためのものであり、検体、第1試薬、第2試薬および基質液をそれぞれ分注対象として反応容器1内に分注するための個別の分注装置を備えている。すなわち、検体を分注対象とする分注装置は、制御部21の制御のもと分注動作を行い、検体が収容された容器から検体を吸引し、反応容器1内に吐出して検体の分注を行う。同様にして、第1試薬用、第2試薬用または基質液をそれぞれ分注対象とする各分注装置は、制御部21の制御のもと分注動作を行い、第1試薬、第2試薬用または基質液が収容された容器から第1試薬、第2試薬用または基質液を吸引し、反応容器内に吐出して第1試薬、第2試薬用または基質液の分注を行う。また、この分注部11は、吸引部として反応容器内の液体の吸引を行う。なお、必ずしも各分注対象を個別の分注装置で分注する必要はなく、同じ分注装置を用いて分注可能な分注対象については、同一の分注装置を兼用することとしてもよい。
【0020】
ここで、検体は、例えば被検者から採取した血液等である。また、第1試薬は、分析対象の検体内の抗原または抗体と特異的に結合する反応物質を固相した不溶性担体である磁性粒子を含む試薬である。第2試薬は、磁性粒子と結合した検体内の抗原または抗体と特異的に結合する標識物質(例えば酵素)を含む試薬である。基質液は、標識物質との酵素反応によって発光する基質(発光基質)を含む。
【0021】
図3は、分注部11を構成する1つの分注装置12の構成を示す概念図である。図3に示すように、分注装置12は、分注ノズル122とオーバーフローノズル123とで構成されるノズル部121を備える。分注ノズル122は、シリンジやシリンジを吸排動作させるシリンジ駆動部等で構成される吸排部124と接続され、シリンジの吸排動作によって分注対象を吸引・吐出し、分注対象の分注を行う。一方、オーバーフローノズル123は、吸排部124と同様にシリンジやシリンジ駆動部等で構成される吸排部125と接続され、分注ノズル122による分注対象の分注時に、反応容器1のオーバーフロー液溜め7に溢れ出たオーバーフロー液を吸引する。
【0022】
また、分注装置12は、分注ノズル122とオーバーフローノズル123とを個別に駆動するノズル駆動部126を備える。このノズル駆動部126は、分注対象が収容された容器の上方位置と反応容器1の導入口3の上方位置との間で分注ノズル122を移動させるとともに、各位置で分注ノズル122を上下動させる。また、ノズル駆動部126は、反応容器1のオーバーフロー液溜め7の上方位置と排出口5の上方位置(排出路6の直上位置)との間でオーバーフローノズル123を移動させるとともに、各位置でオーバーフローノズル123を上下動させる。
【0023】
そして、分注制御部127は、制御部21の制御のもと、ノズル駆動部126や吸排部124,125のシリンジ駆動部の駆動を制御し、分注ノズル122によって反応容器1内に分注対象を分注させ、オーバーフローノズル123によってオーバーフロー液を吸引させる。
【0024】
図2に示す集磁部13は、反応容器1内の磁性粒子を集磁するためのものである。この集磁部13は、例えば、第1試薬の分注後、後述の第1BF洗浄処理時、第2BF洗浄処理時に用いる集磁装置をそれぞれ個別に備えている。集磁装置の構成は、例えば、永久磁石を反応容器1に近接させることによって磁力を発生させるものであってもよいし、電磁石を反応容器1に近接させ、電磁石への通電を行うことによって磁力を発生させるものであってもよい。また、本実施の形態では、後述する図6等で示すように、反応容器1の底面側から磁力を発生させることとして説明するが、反応容器1の上面側から磁力を発生させる構成としても構わない。なお、必ずしも個別の集磁装置を設ける必要はなく、適宜同一の集磁装置を兼用することとしてもよい。
【0025】
BF洗浄部15は、所定の洗浄液を吸引・吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するためのものであり、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理を行って2回のBF洗浄を行う。このBF洗浄部15は、緩衝液であるBF液を反応容器1内に吐出するBF液吐出ノズルと反応容器1内のBF液を吸引するBF液吸引ノズルとを有する。
【0026】
攪拌部17は、反応容器1内の液体を攪拌して集磁部13によって集磁された磁性粒子を分散させるためのものである。例えば、圧電基板上に櫛型電極(IDT)を設けた表面弾性波素子を用い、反応容器1に超音波を照射して反応容器1内の液体の攪拌を行う。この攪拌部17は、検体の分注後、第2試薬の分注後、基質液の分注後に用いる攪拌装置をそれぞれ個別に備えている。なお、必ずしも個別の攪拌装置を設ける必要はなく、適宜同一の攪拌装置を兼用することとしてもよい。また、超音波による攪拌を行う装置に限定されるものではなく、適宜公知の攪拌装置を用いることができる。
【0027】
測光部19は、検体と試薬との間の反応物の作用による発光基質の発光を検出し、その発光量を測定する。この測光部19による測定値は制御部21に出力され、制御部21に接続された分析部23によって分析される。
【0028】
制御部21は、分析結果の他、分析装置10の動作に必要な各種データを保持するメモリを内蔵したマイクロコンピュータ等で構成され、装置内の適所に収められる。例えば、制御部21は、分注部11によって反応容器1内に第1試薬や検体、第2試薬、基質液を分注させる分注処理や、分注部11やBF洗浄部15によって反応容器1内の液体を吸引・排出させる吸引処理、集磁部13によって反応容器1内の磁性粒子を集磁させる集磁処理、分注部11によって反応容器1の排出口5から溢れ出たオーバーフロー液を吸引させる排出処理、攪拌部17によって反応容器1内の液体を攪拌させる攪拌処理、測光部19によって反応容器1内の液体の発光量を測定させる測光処理を行う。
【0029】
この制御部21は、分析部23と接続されており、測光部19による測定値が適宜出力されるようになっている。分析部23は、測光部19による測定値をもとに抗原または抗体の量等を分析し、分析結果を制御部21に出力する。また、制御部21は、検体数や分析項目等、分析に必要な情報を入力するためのキーボードやマウス等の入力装置で構成される入力部25や、分析結果の出力や警告表示等のためのディスプレイやプリンタ等の出力装置で構成される出力部27と接続されている。
【0030】
図4は、上記構成の分析装置10における分析処理手順を示すフローチャートである。また、図5〜図17は、分析処理手順の工程を説明する図である。
【0031】
分析処理では、図4に示すように、先ず、制御部21が分注処理を行うことで分注部11を構成する第1試薬用の分注装置によって反応容器1内に第1試薬が分注され(ステップS1)、制御部21が排出処理を行うことで分注に伴うオーバーフロー液が吸引される(ステップS3)。
【0032】
ここで、反応容器1の内部空間に第1試薬が充填されるように、反応容器1内に過剰量の第1試薬が分注されるようになっている。すなわち、図5に示すように、過剰量の第1試薬を吸引した第1試薬用の分注装置の分注ノズル122aが反応容器1の導入口3の上方位置(導入路4の直上位置)に移動して導入口3内に下降する。また、第1試薬用の分注装置のオーバーフローノズル123aがオーバーフロー液溜め7の上方位置に移動し、吸引を開始してオーバーフロー液溜め7内に下降する。そして、分注ノズル122aが第1試薬を吐出する。このとき、反応容器1内に導入された第1試薬のうち、余剰量であるオーバーフロー液が排出路6を通って排出口5からオーバーフロー液溜め7に溢れ出る。オーバーフローノズル123aは、このオーバーフロー液を吸引する。この結果、オーバーフロー液が反応容器1内に戻ることなく反応容器1の内部空間である導入路4と液体保持空間2と排出路6とに第1試薬が充填され、正確量の第1試薬が反応容器1内に分注される。
【0033】
次に、図4に示すように、制御部21が集磁処理を行うことで反応容器1内の磁性粒子が集磁され(ステップS5)、この反応容器1内の磁性粒子が集磁された状態で制御部21が吸引処理を行うことで反応容器1内のバッファが吸引・排出される(ステップS7)。さらに、反応容器1内の磁性粒子が集磁された状態で制御部21が分注処理を行うことで分注部11を構成する検体用の分注装置によって反応容器1内に検体が分注され(ステップS9)、制御部21が排出処理を行うことで分注に伴うオーバーフロー液が吸引される(ステップS11)。
【0034】
ここで、反応容器1の内部空間に検体が充填されるように、反応容器1内に過剰量の検体が分注されるようになっている。すなわち、図6に示すように、集磁部13を構成する第1試薬分注後用の集磁装置14aが第1試薬に含まれる磁性粒子31を集磁する。続いて、例えば第1試薬用の分注装置の分注ノズル122aが再度反応容器1の導入口3の上方位置に移動し、導入口3内に下降する。そして、分注ノズル122aは、吸引を開始して反応容器1内のバッファを吸引して排出する。この結果、集磁装置14aによって集磁されている磁性粒子31のみが反応容器1内に残る。続いて、図7に示すように、過剰量の検体を吸引した検体用の分注装置の分注ノズル122bが反応容器1の導入口3の上方位置に移動して導入口3内に下降する。また、検体用の分注装置のオーバーフローノズル123bがオーバーフロー液溜め7の上方位置に移動し、吸引を開始してオーバーフロー液溜め7内に下降する。そして、分注ノズル122bが検体を吐出する。このとき、集磁装置14aは、反応容器1内の磁性粒子31を集磁したままである。そして、反応容器1内に導入された検体のうちのオーバーフロー液が排出口5からオーバーフロー液溜め7に溢れ出る。オーバーフローノズル123bは、このオーバーフロー液を吸引する。この結果、反応容器1の内部空間に検体が充填され、正確量の検体が反応容器1内に分注される。
【0035】
次に、図4に示すように、制御部21が攪拌処理を行うことで反応容器1内の液体が攪拌され(ステップS13)、必要な反応時間の反応を経て(ステップS15)、検体内の抗原または抗体と磁性粒子とが結合した反応物が生成される。具体的には、図8に示すように、攪拌部17を構成する検体分注後用の攪拌装置18aが反応容器1内の磁性粒子を分散させ、検体と磁性粒子とを混合する。
【0036】
次に、図4に示すように、制御部21が集磁処理を行うことで反応容器1内の磁性粒子を含む反応物(検体を担持した磁性粒子担体)が集磁され(ステップS17)、反応容器1内の反応物が集磁された状態で1回目のBF洗浄(第1BF洗浄処理)が行われる(ステップS19)。その後、反応容器1内の反応物が集磁された状態で制御部21が吸引処理を行うことで反応容器1内のBF液が吸引・排出される(ステップS21)。
【0037】
なお、第1BF洗浄処理に先立ち、反応容器1内の反応物が集磁された状態で反応容器1内の液体が吸引・排出される。そして、図9に示すように、集磁部13を構成する第1BF洗浄処理時用の集磁装置14bが反応容器1内の磁性粒子を含む反応物33を集磁する。続いて、BF洗浄部15のBF液吐出ノズル151が反応容器1の導入口3の上方位置に移動して導入口3内に下降する。また、BF液吸引ノズル153がオーバーフロー液溜め7の上方位置に移動し、吸引を開始してオーバーフロー液溜め7内に下降する。そして、BF液吐出ノズル151がBF液を吐出する。このとき、BF液吸引ノズル153が、排出口5からオーバーフロー液溜め7に溢れ出たオーバーフロー液を吸引する。続いて、図10に示すように、BF液吸引ノズル153が排出口5の上方位置(排出路6の直上位置)に移動して排出口5内に下降する。そして、BF液吸引ノズル153は、吸引を開始して反応容器1内のBF液を吸引して排出する。このとき、集磁装置14bは、反応容器1内の反応物33を集磁したままである。これによってBF分離が実施され、反応容器1内の未反応物質が除去される。
【0038】
次に、図4に示すように、制御部21が分注処理を行うことで分注部11を構成する第2試薬用の分注装置によって反応容器1内に第2試薬が分注され(ステップS23)、制御部21が排出処理を行うことで分注に伴うオーバーフロー液が吸引される(ステップS25)。
【0039】
ここで、反応容器1の内部空間に第2試薬が充填されるように、反応容器1内に過剰量の第2試薬が分注されるようになっている。すなわち、図11に示すように、過剰量の第2試薬を吸引した第2試薬用の分注装置の分注ノズル122cが反応容器1の導入口3の上方位置に移動して導入口3内に下降する。また、第2試薬用の分注装置のオーバーフローノズル123cがオーバーフロー液溜め7の上方位置に移動し、吸引を開始してオーバーフロー液溜め7内に下降する。そして、分注ノズル122cが第2試薬を吐出する。このとき、集磁装置14bは、反応容器1内の反応物33を集磁したままである。そして、オーバーフローノズル123cが、排出口5からオーバーフロー液溜め7に溢れ出たオーバーフロー液を吸引する。この結果、反応容器1の内部空間に第2試薬が充填され、正確量の第2試薬(標識抗体を含む標識試薬)が反応容器1内に分注される。
【0040】
次に、図4に示すように、制御部21が攪拌処理を行うことで反応容器1内の液体の攪拌が攪拌され(ステップS27)。必要な反応時間の反応を経て(ステップS29)、反応物と標識抗体とが結合した免疫複合体が生成される。具体的には、図12に示すように、第2試薬分注後用の攪拌装置18bが反応容器1内の磁性粒子(反応物)を分散させ、第2試薬と反応物とを混合する。
【0041】
次に、図4に示すように、制御部21が集磁処理を行うことで反応容器1内の磁性粒子を含む免疫複合体が集磁され(ステップS31)、反応容器1内の免疫複合体が集磁された状態で2回目のBF洗浄(第2BF洗浄処理)が行われる(ステップS33)。その後、反応容器1内の免疫複合体が集磁された状態で制御部21が吸引処理を行うことで反応容器1内のBF液が吸引・排出される(ステップS35)。
【0042】
なお、この第2BF洗浄処理に先立ち、反応容器1内の免疫複合体が集磁された状態で反応容器1内の液体が吸引・排出される。そして、図13に示すように、集磁部13を構成する第2BF洗浄処理時用の集磁装置14cが反応容器1内の磁性粒子を含む免疫複合体35を集磁する。続いて、BF洗浄部15のBF液吐出ノズル151が反応容器1の導入口3の上方位置に移動して導入口3内に下降する。また、BF液吸引ノズル153がオーバーフロー液溜め7の上方位置に移動し、吸引を開始してオーバーフロー液溜め7内に下降する。そして、BF液吐出ノズル151がBF液を吐出する。このとき、BF液吸引ノズル153が、排出口5からオーバーフロー液溜め7に溢れ出たオーバーフロー液を吸引する。続いて、図14に示すように、BF液吸引ノズル153が排出口5の上方位置(排出路6の直上位置)に移動して排出口5内に下降する。そして、BF液吸引ノズル153は、吸引を開始して反応容器1内のBF液を吸引して排出する。このとき、集磁装置14cは、反応容器1内の免疫複合体35を集磁したままである。これによってBF分離が実施され、反応容器1内から反応物(磁性粒子担体)と結合していない標識抗体が除去される。
【0043】
次に、図4に示すように、制御部21が分注処理を行うことで分注部11を構成する基質液用の分注装置によって反応容器1内に基質液が分注され(ステップS37)、制御部21が排出処理を行うことで分注に伴うオーバーフロー液が吸引される(ステップS39)。
【0044】
ここで、反応容器1の内部空間に基質液が充填されるように、反応容器1内に過剰量の基質液が分注されるようになっている。すなわち、図15に示すように、過剰量の基質液を吸引した基質液用の分注装置の分注ノズル122dが反応容器1の導入口3の上方位置に移動して導入口3内に下降する。また、基質液用の分注装置のオーバーフローノズル123dがオーバーフロー液溜め7の上方位置に移動し、吸引を開始してオーバーフロー液溜め7内に下降する。そして、分注ノズル122dが基質液を吐出する。このとき、集磁装置14cは、反応容器1内の免疫複合体35を集磁したままである。そして、オーバーフローノズル123dが、排出口5からオーバーフロー液溜め7に溢れ出たオーバーフロー液を吸引する。この結果、反応容器1の内部空間に発光基質を含む基質液が充填され、正確量の基質液が反応容器1内に分注される。
【0045】
次に、図4に示すように、制御部21が攪拌処理を行うことで反応容器1内の液体の攪拌が攪拌され(ステップS41)、必要な反応時間の反応(酵素反応)を経て(ステップS43)、測光に移り、制御部21が測光処理を行う(ステップS45)。すなわち先ず、図16に示すように、基質液分注後用の攪拌装置18cが反応容器1内の磁性粒子(免疫複合体)を分散させ、基質液と免疫複合体とを混合し、酵素反応させる。酵素反応を経た基質は、免疫複合体の酵素作用により光を発する。測光部19は、図17に示すように、反応容器1底面の測光用の窓を利用して基質から発せられた発光量を測定する。
【0046】
最後に、図4に示すように、分析部23によって測定値が分析される(ステップS47)。例えば、分析部23は、測光部19によって測定された発光量をもとに検出対象の抗原または抗体の量を算出する等の処理を行う。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、所定量の容積を有する反応容器1の内部空間に検体や第1試薬、第2試薬、基質液を充填することができるので、これらの液体を反応容器1内に正確に分注することができる。これによれば、分注装置による分注量を正確にする必要がなくなる。また、反応容器1内に検体や第2試薬、基質液等を充填する際には、反応容器1内の磁性粒子を集磁した状態でこれらの液体を反応容器1内に充填することができる。反応容器1内の液体を排出する場合も同様に、反応容器1内の磁性粒子を集磁した状態で吸引を行い、反応容器1内に磁性粒子を残すことができる。これによれば、第1試薬の量(磁性粒子の量)に対して検体や第2試薬を正確な比率で分注することが可能となる。したがって、分注装置の構成を複雑にすることなく、反応容器に対する正確な分注を実現することができるという効果を奏する。
【0048】
なお、上記した実施の形態では、オーバーフロー液が排出される排出口5の隣接位置にオーバーフロー液溜め7を形成し、排出口5からオーバーフロー液溜め7に排出されたオーバーフロー液をオーバーフローノズルによって吸引する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、反応容器の構成は、排出口から溢れ出たオーバーブロー液が反応容器内に戻らないような構成であればよい。
【0049】
図18は、変形例における反応容器1bの構成を示す断面図である。上記した実施の形態と同様に、反応容器1bの鉛直上面には、内部空間に液体を導入する導入口3bと導入された液体のうちの余剰量を排出する排出口5bとが形成されている。本変形例では、排出口5bの隣接位置に形成されたオーバーフロー液溜め7bが、排出口5bを頂上とし、この排出口5bから廃液排出口71に向けて傾斜した傾斜面73を有する。本構成の反応容器1bによれば、排出口5bから排出されたオーバーフロー液は、反応容器1b内に戻ることなく、オーバーフロー液溜め7bの傾斜面73を伝って廃液排出口71から外部に排出される。これによれば、オーバーフロー液を吸引するためのオーバーフローノズルや吸排部等の吸排機構が不要となり、分析処理も簡略化できる。
【0050】
また、図1に示した実施の形態の反応容器や図18に示した変形例の反応容器において、排出口から排出されたオーバーフロー液が反応容器内に戻り難いように、排出口の周囲に撥水性領域を形成することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】反応容器の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した反応容器を用いる分析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】分注装置の構成を示す概念図である。
【図4】分析処理手順を示すフローチャートである。
【図5】分析処理手順の工程を説明する図である。
【図6】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図7】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図8】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図9】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図10】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図11】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図12】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図13】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図14】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図15】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図16】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図17】分析処理手順の他の工程を説明する図である。
【図18】変形例における反応容器の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 反応容器
2 液体保持空間
3 導入口
4 導入路
5 排出口
6 排出路
7 オーバーフロー液溜め
10 分析装置
11 分注部
12 分注装置
121 ノズル部
122 分注ノズル
123 オーバーフローノズル
124,125 吸排部
126 ノズル駆動部
127 分注制御部
13 集磁部
15 BF洗浄部
17 攪拌部
19 測光部
21 制御部
23 分析部
25 入力部
27 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に液体を分注する分注部を備え、該分注部によって前記反応容器内に分注された液体を光学的に測定して分析する分析装置で用いられる反応容器であって、
所定量の容積を有する内部空間が形成されるとともに、前記分注部によって分注される液体を前記内部空間内に導入する導入口および前記内部空間内に導入された液体を排出する排出口が鉛直上面に形成されており、
前記導入口から導入された液体のうちの余剰量が前記排出口から排出されて前記液体が前記内部空間内に充填されることを特徴とする反応容器。
【請求項2】
前記排出口の隣接位置に、前記排出口から排出された液体を保持する液溜めが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項3】
前記液溜めは、前記排出口を頂上とする傾斜面を有することを特徴とする請求項2に記載の反応容器。
【請求項4】
前記排出口の周囲に撥水性領域を形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の反応容器。
【請求項5】
前記反応容器の底面は光学的に透明な素材で成形され、前記分析装置によって当該反応容器内の液体が底面側から測定可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の反応容器。
【請求項6】
磁性粒子を含む試薬および検体を反応容器内に分注する分注部と、
前記反応容器内の液体を吸引する吸引部と、
前記反応容器内の前記磁性粒子を集磁する集磁部と、
分注処理を行って前記分注部に前記磁性粒子を含む試薬および前記検体を分注させ、吸引処理を行って前記吸引部に前記反応容器内の液体を吸引させ、集磁処理を行って前記集磁部に前記内部空間内の前記磁性粒子を集磁させる制御部と、
を備え、前記反応容器内で前記磁性粒子を含む試薬および前記検体を反応させて分析する分析装置であって、
前記反応容器には、所定量の容積を有する内部空間が形成されるとともに、前記分注部によって分注される液体を前記内部空間内に導入する導入口および前記内部空間内に導入された液体を排出する排出口が鉛直上面に形成されており、
前記制御部は、前記分注処理を行って前記導入口から前記内部空間内に前記磁性粒子を含む試薬を導入することで、該導入した前記磁性粒子を含む試薬のうちの余剰量を前記排出口から排出させて前記磁性粒子を含む液体を前記内部空間内に充填させた後、前記集磁処理を行って前記内部空間内の前記磁性粒子を集磁させた状態で、前記吸引処理を行って前記導入口または前記排出口から前記内部空間内の液体を吸引させるとともに、前記分注処理を行って前記導入口から前記内部空間内に前記検体を導入することで、該導入した液体のうちの余剰量を前記排出口から排出させて、前記磁性粒子が集磁された前記内部空間内に前記検体を充填させることを特徴とする分析装置。
【請求項7】
前記反応容器の底面は光学的に透明な素材で成形されており、
前記反応容器内の液体を前記反応容器の底面側から光学的に測定する測定部を備えることを特徴とする請求項6に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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