反応容器
【課題】少なくとも一つの反応部が高温下での反応を行うためのものである、複数の反応部を有する反応容器において、一つの反応容器の光熱下での反応時に他の反応部また試薬収容部などに熱的な影響を与えることのない反応容器を提供することを目的とする。
【解決手段】同一基板に、第一の反応部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器とするものである。また、放熱機構が空洞形状であることを特徴とするものである。
【解決手段】同一基板に、第一の反応部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器とするものである。また、放熱機構が空洞形状であることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば抗原抗体反応による抗原の検出及びDNAの検出等の生化学反応に用いられる反応容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化学反応やDNA反応、たんぱく質反応などをチップ上にて行うμ−Total Analysis System技術やLab−on−Chip技術が研究され実現してきており、今まで大型の実験装置や大量の試薬が必要であった反応実験が数ミリ角以下のチップで少量の試薬で行えるようになってきている。
【0003】
このようなチップとしては、例えばDNAチップとして、スライドガラス上にプローブDNAを配置し、検体を作用させ、DNAの検出を行うものや、ガラスなどにウェルと呼ばれる微小な穴やくぼみを形成し、ウェル内で検出反応を行うものなどが知られていた。
【0004】
また、前述のDNAチップの検体の調整法であるPCR法をチップ状で行うことも研究されている。例えば、特許文献1、2に示すような、チップ上に設けたウェル状の反応部を用いてPCR反応(遺伝子増幅反応)を行う方法が知られている。
また、近年では、このようなチップ上で検体の調整から反応まで連続して行うことが注目されてきている。
【0005】
しかし、複数の反応を同一のチップ上で行う場合、ある一つの反応時における、他の部分への影響が問題となることがある。例えば、同一のチップ上に、試薬を保存する部分と、PCR反応を行う部分、そしてハイブリダイゼーション法でDNAの反応検出を行う部分を設け、これらの反応を連続して行うことを想定してみる。一般的にPCR反応は90〜100℃に加熱する工程、50〜70℃程度に保温する工程がある。またハイブリダイゼーション反応はおよそ60〜70℃程度に加熱する工程がある。このように、同一チップ状で多数の反応を行うと、ある一つの反応を行っているときに、他の反応部分または試薬などの保存部分に熱的な影響を与える。
【0006】
【特許文献1】特開平09−099932号公報
【特許文献2】特開平05−317030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、少なくとも一つの反応部が高温下での反応を行うためのものである、複数の反応部を有する反応容器において、一つの反応容器の光熱下での反応時に他の反応部また試薬収容部などに熱的な影響を与えることのない反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、同一基板に、第一の反応部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器である。
【0009】
請求項2の発明は、同一基板に、第一の反応部、試薬収容部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部及び/又は試薬収容部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器である。
【0010】
請求項3の発明は、前記第一の反応部がPCR反応部であり、かつ第二の反応部が核酸反応検出部であることを特徴とする請求項1または2に記載の反応容器である。
【0011】
請求項4の発明は、前記放熱機構が、空洞形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反応容器である。
【0012】
請求項5の発明は、前記第一の反応部が酵素反応用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反応容器である。
【0013】
請求項6の発明は、前記第一の反応部がPCR反応用でありかつ、第一の反応部がDNAの反応検出用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反応容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同一の基板上に複数の反応部や試薬収容部などを有する反応容器において、高熱下での反応を行う反応部における高い温度域の加熱工程時に、それ以外の反応部や試薬収容部などに熱的な影響のない反応容器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明では、少なくとも一つの反応部が高温下での反応を行うためのものである、複数の反応部を有する反応容器において、高温反応を行う反応部と他の反応部や試薬収容部との間に放熱機構を設けることにより、他の反応部や試薬収容部に高温反応を行う反応部からの熱的な影響を与えないことを特徴とするものである。
【0016】
以下、同一基板上で第一の反応部としてPCR反応を行うPCR反応部と第二の反応部として核酸の反応検出を行う反応検出部を備える例で説明する。
図1に、本発明における一実施形態を示す図を示す。図1は、略長方形の板状の基板に、試薬を収容する試薬収容部とPCR反応をおこなうPCR反応部とPCR反応に調整された核酸検体を反応検出するための反応検出部が複数形成されており、PCR反応部と試薬収容部の間及びPCR反応部と反応検出部の間に空洞形状の放熱機構を備える。
【0017】
本発明に用いる基板は、反応系に悪影響を与えないものであればよい。また、反応を検出する際、基板下方より光学検出する場合は透明性が高い方が好ましい。
このようなものとして、例えば、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコーン樹脂などを用いることができる。
透明性、耐熱性、耐薬品性や反応系に対する影響などの点からシクロオレフィン系樹脂(ゼオノア(日本ゼオン株式会社製))やメチルペンテン系樹脂(TPX(三井化学株式会社製))を用いることが好ましい。
【0018】
このような合成樹脂を用いて基板を作成すれば、耐熱性、耐薬品性、成形加工性などに優れているため好ましい。さらに、2種類以上の樹脂を接合して用いてもよい。この場合、それぞれの樹脂の特徴を活かして基板を作成することにより、試薬及び試料等の特性に応じた多様な基板とすることが可能となり、用途ごとに使い分けることができる。例えば、基板の上半分と下半分とで材料を分けたりすることも可能となる。また、後述の試薬収容部やPCR反応部など部分ごとに材料を分けることもできる。
なお、基板の素材としてガラスを用いてもよい。
【0019】
本発明では、反応時に高熱環境下に置かれる反応部と他の反応部又は試薬収容部の間に、放熱機構を備える。反応を行う場合、実際には、加熱機構などを備える装置を用いて反応を行うことになる。加熱機構は高熱環境下に置かれる反応部の上部又は下部に接して又は近傍に配置される。前記放熱機構は、反応時に高熱環境下に置かれる反応部と他の反応部又は試薬収容部の間あればよいが、具体的には反応容器上において加熱機構と接する部分又は近傍にある部分と熱の影響を避けたい反応部又は試薬収容部の間にあればよい。
【0020】
前記放熱機構は、空洞形状であることが好ましい。空洞形状であれば、熱の通り道に空気をはさむため、熱の伝導を抑えることができる。また、空洞形状であれば、作成が容易である。
空洞形状は基板を厚さ方向に貫通していても良いし、凹部形状のものでも良い(図5(b)、6(b)、7(b)参照)。
また、放熱機構は複数有していても良い。
【0021】
また、放熱機構は、熱の影響を考慮し、各反応部、試薬収容部間に設ければよく、例えば、長尺状基板に、試薬収容部、PCR反応部、反応検出部を順に備える図1のような構成である場合、PCR反応部と試薬収容部の間及びPCR反応部と反応検出部の間に放熱機構を備えることができる。また、同様の構成において、基板の熱伝導率などによっては、PCR反応部と試薬収容部の間のみに放熱機構を設けても良い(図2参照)。
また、長尺状基板に、PCR反応部、反応検出部を順に備える図3の構成においては、PCR反応部と反応検出部の間に放熱機構を備えることができる。
また、長尺状基板に、PCR反応部、試薬収容部、反応検出部を順に備える図4のような構成である場合、PCR反応部と試薬収容部の間に放熱機構を備えることができる。この場合、反応検出部での反応検出は最後に行うので、反応検出部での反応時に発生する熱の試薬収容部への影響は考慮しなくて良く、そのため、PCR反応部と反応検出部の間には放熱機構は備えなくても良い。
【0022】
PCR反応部は、血液から抽出したDNA又は市販の鋳型DNAなどの検体試薬からDNAの増幅反応をおこなうところで、PCR反応させたものを検体としてDNA反応検出に用いる。
PCR反応部の形状は特に限定はなく、ウェル状の反応部でも流路状でもかまわない。
【0023】
ウェル状である場合、形状は限定するものではなく、円錐台形、角錐台形、円錐、角錐や先端部が半球状であるものなど、加工成形性、溶液の注入性などにより様々な形状を取ることができる。
また、ウェル状PCR反応部は、切削加工、金型成型などにより形成することができる。
【0024】
大きさは特に限定するものではなく、用いる検体試薬の量などを考慮して決められるが、一般的に開口径0.1〜10mm、深さ0.1〜10mmの範囲内である。
また、ウェル状反応部内面には親水処理などの表面処理をしてもかまわない。
【0025】
PCR反応部は、基材がプラスチック、合成樹脂系であれば切削加工、成型加工により形成することができる。ガラスであれば切削加工により形成することができる。
【0026】
流路形状の反応部である場合、形状は特に限定するものではない。例えば、基板内に流路状PCR反応部を形成し、流路の一部に少なくとも開口部を設けてなる構造や、溝部を有する基材と他の基材を張り合わせることにより流路状PCR反応部を形成し、少なくとも一部に開口部を設ける構造や、開口形状を有する基板とフィルムを貼り合わせて流路状PCR反応部を形成する方法などが挙げられる。
流路、溝の形成は切削加工、金型成型などにより形成することができる。
【0027】
また、前記流路の一部をなすフィルムとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などのフィルム又はこれらを含む積層フィルムを用いることができる。また、アルミ、銅などの金属箔との積層フィルムでもかまわない。
溝部を有する基材との張り合わせは、接着剤による貼り合わせ又はヒートシール性のフィルムであればヒートシールにより貼り合わせることができる。
接着剤としては、特に限定はしないが、例えばポリ酢酸ビニル系、ポリアミド系などの熱可塑性樹脂接着剤を用いることができる。
【0028】
この場合、流路の内径は0.1〜5mmの範囲内であることが好ましく、また開口部の開口径0.1〜5mmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
PCR反応は、前述のウェル状または流路状のPCR反応部内で以下のように行われる。
PCR反応は、酵素を用いたDNAの増幅反応であり、一般的な増幅工程は、初めに鋳型DNAを熱変性させ、その後、鋳型DNAを変性させる熱変性工程、各種プライマーを正確にアニーリングさせるアニーリング工程、アニールしたプライマーからDNA鎖合成する伸長工程、という3つの工程のサイクルを繰り返し、伸長工程で終了させるものである。各工程の時間や温度などの条件は、適宜設定するのが好ましい。
【0030】
具体的には、血液から抽出したDNAまたは市販の鋳型DNA、ポリメラーゼ酵素、各塩基の材料であるdNTP、pH、濃度調整のための水、バッファー液を用い、上述の変性工程、アニーリング工程、伸長反応工程をおこなうことにより遺伝子を増幅する。
変性工程は90〜100℃、5〜25秒、アニーリング工程は50〜60℃、15〜60秒、伸長工程は65〜75℃、1〜5分で行うのが一般的である。また、アニーリング工程、伸長反応工程は同時におこなっても良く、その場合は50〜70℃、1〜5分で行うのが一般的である。
このPCR反応は、マルチプレックスPCRでも良い。その場合は、ホットスタート法(プライマーのミスアニーリングやオリゴマー化を防止する目的で、反応液が高温になってから伸長反応を開始させる手法)を適用することが好ましい。
【0031】
基板上には、試薬収容部及び/又は反応検出部を有する。
試薬収容部は、前記PCR反応処理に用いる検体試薬やその他の試薬、その後の検出反応に用いる試薬、バッファー、希釈液などを収容しておくことができるところである。
反応検出部はPCR反応部で調整した検体をプローブDNAやその他の試薬と反応させることにより、DNAの配列を分析するところである。
なお、試薬収容部とPCR反応部からなる反応容器であれば、PCR反応チップとして用いることができるが、PCR反応部と反応検出部、又はPCR反応部と反応検出部及び試薬収容部からなる反応容器であれば、PCRによる検体の調整からDNAの分析まで同一チップ状で連続して行うことができる。
【0032】
試薬収容部、反応検出部の形状は特に限定するものではないが、ウェル形状などの形状をとることができる。具体的には円錐台形、角錐台形、円錐、角錐や先端部が半球状であるものなど、加工成形性、溶液の注入性などにより様々な形状を取ることができる。
また、反応検出部は流路形状で、流路内で反応させ、流路内又は流路に接続されているウェル状検出部で検出してもかまわない。またウェル状の反応検出部を複数備え、それらを流路により接続してもかまわない(図9参照)。
【0033】
試薬収容部、反応検出部は、基材がプラスチック、合成樹脂系であれば切削加工、成型加工により形成することができる。ガラスであれば切削加工により形成することができる。
【0034】
試薬収容部の大きさは収容する試薬の量に応じて決められるが、開口径0.1〜10mm、深さ0.1〜10mm範囲内である。反応検出部の大きさも試薬の量に応じて決められるが、一般的にDNAの分析に用いる試薬の量は微量であるため、開口径0.01mm〜5mm、深さ0.01mm〜5mm範囲内であることが好ましい。
また、試薬収容部、反応検出部の内面は親水化または撥水化などの表面処理を施していてもかまわない。
【0035】
また、試薬収容部は用いる試薬の数等により、複数設けてもかまわない。反応検出部も分析するDNAの数に応じて複数設けてもかまわない。
また、PCR反応部、試薬収容部、反応検出部は流路を用いて接続してもかまわない。これら流路を形成することにより、連続した反応を行わせることが可能となる。これにより、検査時間の短縮が図れるとともに微量な試料及び試薬で各種の分析を行うことができ、コストの削減を実現することができる。
【0036】
反応検出部では、例えば、後述するようなハイブリダイゼーション反応によるDNAの検出またはインベーダー反応法を用いたDNA、SNPの検出に用いることができる。これらは一般に40〜70℃、数十分〜数十時間の範囲で反応させることが多い。
【0037】
また、PCR反応部、試薬収容部、反応検出部はそれぞれ、被覆フィルムで被覆しても良い。
被覆フィルムは、試薬収容部内の溶液の蒸発を防ぐことができ、また埃など外部からの汚染を防ぐものである。
被覆フィルムとしては、被覆フィルムとしては、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、TPXフィルム(三井化学株式会社製)などのメチルペンテン系フィルム、ゼオノア(日本ゼオン株式会社製)などのシクロオレフィン系フィルム、シリコン樹脂フィルム、フッ素系ポリマーフィルムなどの樹脂フィルムなどが挙げられる。
被覆フィルムの形成は、接着剤により貼り合わせるか、ヒートシールにより貼り合わせることができる。
接着剤としては、反応系に悪影響を与えないものであれば良く、ポリ酢酸ビニル系、ポリアミド系などの熱可塑性樹脂接着剤を用いることができる。
ポリエチレン(PE)フィルムなどのフィルムはヒートシール性であるため、接着剤を用いずに基材と貼り合わせることができる。
【0038】
本発明の容器は、様々な生化学系の反応用として用いることができ、例えば抗原抗体反応及びDNA反応の検出などに用いることができる。
抗原抗体反応による抗原検出の場合、例えば、予め各ウェル状反応部内に抗原を含む試料を入れておき、後から抗体を含む試薬を添加し、抗原または抗体に標識物質を付けておくことで、反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光などの発光物質が一般的に用いられる。なおこの場合、基板上に試薬収容部を設けて置き、抗体を収容しておいてもよい。
【0039】
DNAの検出の場合、例えば、予めウェル状反応検出部内に核酸プローブを用意しておく。次に検体DNAをウェル状反応検出部に供給し、核酸プローブと検体DNAとのハイブリダイゼーション反応により、DNAの検出を行うことができる。その際、検体DNAに標識物質を付けておけば、その標識物質の有無を検出することにより検出が可能となる。また、検体DNAとして、血液等から抽出したDNAをPCR法、LAMP法などにより調整しておいたものを用いることができる。また、配列の異なる核酸プローブを複数用意することで検体DNAがどのような配列であるかを検出することができる。なおこの場合、基板上に試薬収容部を設けて置き、検体DNAを収容しておいてもよい。
【0040】
また、基板上にPCR反応部を設けておき、チップ上で連続して、血液などから抽出したDNAをPCR反応により増幅させ、それを検体DNAとし、反応部で核酸プローブとの反応の有無を検出してもよい。具体的には、例えばウェル状試薬収容部に血液などから抽出したDNAを収容しておき、分注動作により、PCR反応部へ分注し、PCR反応により調整した検体DNAをウェル状の反応検出部へ分注すればよい。ウェル状試薬収容部からPCR反応部、ウェル状反応検出部へは流路を用いて送液しても良い。
【0041】
また、一塩基遺伝子多型(SNP)の解析にも用いることができる。なお、その場合、プローブ核酸やそのた検出に用いる物質は複数あってもよく、それらの物質のひとつが標識されていればよい。
【0042】
また、標識物質は、結合したプローブ核酸と検体DNAに特異的に作用するものを、反応後に加えることもできる。このようなものとしては、インターカレーターなどがある。また、ここでいう標識物質とは間接的なものも含む。すなわち、蛍光物質などに結合する物質を標識物質として認識物質または検出物質に結合させておき、後から蛍光物質を加えても良い。
【0043】
また、多段階反応を行ってSNPまたはDNAを検出してもよい。
例えば、インベーダー・アッセイ法(サードウェイブテクノロジーズ,Inc(米国ウィスコンシン州マディソン市)を用いても良い。これによりSNP解析の具現化を図ることが可能となる。
【0044】
この場合、検出DNAの検出に用いるプローブ核酸などの試薬が複数種でもよく、予めウェル状反応部内に少なくとも1種の試薬を入れておき、その後、検出DNAと他の試薬を同時または順次注入し、反応をおこなっても良い。
【0045】
また、ウェル状反応部、PCR反応部には、反応用液の乾燥を防ぐ目的でミネラルオイルなどの反応用液より比重の軽い溶液を加えても良い。
また、検体DNA又は抗原などはウェル状反応部内に固定してもよいし、固定させずに保持させておくだけでもよい。
【0046】
なお、ここでは同一チップ上でPCR反応と核酸の反応検出を行う例で説明したが、これに限るものではない。また、ここでは、PCR反応部を第一の反応部、核酸の反応検出部を第二の反応部として説明したが、さらに第三の又はそれ以上の反応部を有するような系にも適用できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の一実施例として、第一反応部であるPCR反応部、試薬収容部、第二反応部である核酸反応検出部を有するチップを図10を参照しながら説明する。
本実施例では、図10に示すような長尺状基板のチップであって、中央にあるPCR反応部と4個のウェル状試薬保存収容部との間、およびPCR反応部と24個のウェル状反応検出部との間にそれぞれ放熱機構を備えている。
【0048】
基板は、PP(ポリプロピレン)を用い、射出成型による金型成型で作成した。本発明にて用いたPPはTm160℃、検出波長での光線透過率は80%(0.5mm)であり、PCR反応部での耐熱性、反応検出部での透明性を満足している。また、PPの熱伝導率は0.20W/mKである。
【0049】
チップは、長辺120mm短辺25mmの長尺状であり、PCR反応部は長辺方向の中央部に配置され、ウェル状反応検出部は右端より45mmまでの範囲に配置され、試薬保存収容部は左端45mmまでの範囲に配置されている。
放熱機構は、長辺方向4mm短辺方向3mmの貫通空洞がPCR反応部より5mmの位置にそれぞれ3個ずつ計6個配置されている。
【0050】
PCR反応部は、幅1mm深さ1mmの流路両端部に直径φ1mmの開口部を設けた流路形状構造とし、流路は溝部を有する基材にABI PRISM Opticalcover(ABI社製)をヒートシールにより貼りあわせて形成した。
【0051】
反応検出部はウェル形状であって、開孔径3mm、深さ1.7mmの円錐台形形状であり、隣接するウェルはそれぞれ5mm間隔で配置されている。ウェル容量は8μlである。親水化処理を施した該ウェル24個には、24種類の核酸プローブが乾燥状態で保持されており、インベーダ・アッセイ法を用いて反応検出する。
【0052】
試薬収容部は、親水処理を施した開孔径6mm深さ5mmのウェルが4個配置されている。ウェル容量は140μlである。各ウェルにはインベーダ・アッセイ法用反応試薬、PCR反応用試薬、乾燥防止用ミネラルオイルが収容されており被覆フィルムが貼りあわせてある。被覆フィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂フィルムをポリ酢酸ビニル系の被覆フィルムがヒートシールにより接着されている。
また、1個のウェルは、血液から抽出したDNAを導入するために空きの状態となっている。
【0053】
前記チップのPCR反応部を縦8mm横8mmの2組のペルチェ素子(ゼーベック素子)にてPCR反応試薬の導入された流路を上下から挟み、熱変性工程、アニーリング工程、伸長工程の3つの工程を30サイクル繰り返した。各工程の温度および時間は、熱変性工程は95℃5秒、アニーリング工程は60℃15秒、伸長工程は70℃1分にて行った。
【0054】
前記3工程の30サイクルを経た後のチップ上温度分布は定常状態となっている。温度分布は、放熱機構がない場合、熱源であるペルチェ素子で挟まれた流路PCR反応部が中心となる温度勾配となり、遠ざかるほど温度が低くなる。PCR反応部に最も近い試薬収容部は、PCR反応部から15mmの位置にあり最も高温となる。
【0055】
実施例のチップはPCR反応部から15mmの位置にある最も近い試薬収容部の温度は46℃であった
【0056】
PCR反応終了後、PCR反応終了液を反応検出部に分注し、60℃30分でインベーダ・アッセイ反応を行った。
実施例のチップを用いた場合、インベーダ・アッセイ反応が正常に行われた。
【0057】
<比較例>
図11に示すように、放熱構造を持たないチップを比較検討のために用意した。該チップは、放熱構造を持たないこと以外については全て実施例1のチップと同じ形状、配置、構成である。
【0058】
比較例のチップでは、PCR反応部から15mmの位置にある最も近い試薬収容部の温度は54℃であった。
【0059】
PCR反応終了後、PCR反応終了液を反応検出部に分注し、60℃30分でインベーダ・アッセイ反応を行った。
比較例のチップを用いた場合、PCR反応時に試薬収容部内の試薬に熱的な影響があり、インベーダ・アッセイ反応時の反応効率が低下し、結果検出感度が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図2】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図3】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図4】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図5】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図6】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図7】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図8】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図9】流路を用いた反応検出部の接続の一例を示す概要図である。
【図10】実施例の反応容器を示す概要図である。
【図11】比較例の反応容器を示す概要図である。
【符号の説明】
【0061】
1 反応容器
2 PCR反応部
3 試薬収容部
4 反応検出部
5 放熱機構
6 ペルチェ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば抗原抗体反応による抗原の検出及びDNAの検出等の生化学反応に用いられる反応容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化学反応やDNA反応、たんぱく質反応などをチップ上にて行うμ−Total Analysis System技術やLab−on−Chip技術が研究され実現してきており、今まで大型の実験装置や大量の試薬が必要であった反応実験が数ミリ角以下のチップで少量の試薬で行えるようになってきている。
【0003】
このようなチップとしては、例えばDNAチップとして、スライドガラス上にプローブDNAを配置し、検体を作用させ、DNAの検出を行うものや、ガラスなどにウェルと呼ばれる微小な穴やくぼみを形成し、ウェル内で検出反応を行うものなどが知られていた。
【0004】
また、前述のDNAチップの検体の調整法であるPCR法をチップ状で行うことも研究されている。例えば、特許文献1、2に示すような、チップ上に設けたウェル状の反応部を用いてPCR反応(遺伝子増幅反応)を行う方法が知られている。
また、近年では、このようなチップ上で検体の調整から反応まで連続して行うことが注目されてきている。
【0005】
しかし、複数の反応を同一のチップ上で行う場合、ある一つの反応時における、他の部分への影響が問題となることがある。例えば、同一のチップ上に、試薬を保存する部分と、PCR反応を行う部分、そしてハイブリダイゼーション法でDNAの反応検出を行う部分を設け、これらの反応を連続して行うことを想定してみる。一般的にPCR反応は90〜100℃に加熱する工程、50〜70℃程度に保温する工程がある。またハイブリダイゼーション反応はおよそ60〜70℃程度に加熱する工程がある。このように、同一チップ状で多数の反応を行うと、ある一つの反応を行っているときに、他の反応部分または試薬などの保存部分に熱的な影響を与える。
【0006】
【特許文献1】特開平09−099932号公報
【特許文献2】特開平05−317030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、少なくとも一つの反応部が高温下での反応を行うためのものである、複数の反応部を有する反応容器において、一つの反応容器の光熱下での反応時に他の反応部また試薬収容部などに熱的な影響を与えることのない反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、同一基板に、第一の反応部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器である。
【0009】
請求項2の発明は、同一基板に、第一の反応部、試薬収容部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部及び/又は試薬収容部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器である。
【0010】
請求項3の発明は、前記第一の反応部がPCR反応部であり、かつ第二の反応部が核酸反応検出部であることを特徴とする請求項1または2に記載の反応容器である。
【0011】
請求項4の発明は、前記放熱機構が、空洞形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反応容器である。
【0012】
請求項5の発明は、前記第一の反応部が酵素反応用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反応容器である。
【0013】
請求項6の発明は、前記第一の反応部がPCR反応用でありかつ、第一の反応部がDNAの反応検出用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反応容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同一の基板上に複数の反応部や試薬収容部などを有する反応容器において、高熱下での反応を行う反応部における高い温度域の加熱工程時に、それ以外の反応部や試薬収容部などに熱的な影響のない反応容器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明では、少なくとも一つの反応部が高温下での反応を行うためのものである、複数の反応部を有する反応容器において、高温反応を行う反応部と他の反応部や試薬収容部との間に放熱機構を設けることにより、他の反応部や試薬収容部に高温反応を行う反応部からの熱的な影響を与えないことを特徴とするものである。
【0016】
以下、同一基板上で第一の反応部としてPCR反応を行うPCR反応部と第二の反応部として核酸の反応検出を行う反応検出部を備える例で説明する。
図1に、本発明における一実施形態を示す図を示す。図1は、略長方形の板状の基板に、試薬を収容する試薬収容部とPCR反応をおこなうPCR反応部とPCR反応に調整された核酸検体を反応検出するための反応検出部が複数形成されており、PCR反応部と試薬収容部の間及びPCR反応部と反応検出部の間に空洞形状の放熱機構を備える。
【0017】
本発明に用いる基板は、反応系に悪影響を与えないものであればよい。また、反応を検出する際、基板下方より光学検出する場合は透明性が高い方が好ましい。
このようなものとして、例えば、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素ポリマー、シリコーン樹脂などを用いることができる。
透明性、耐熱性、耐薬品性や反応系に対する影響などの点からシクロオレフィン系樹脂(ゼオノア(日本ゼオン株式会社製))やメチルペンテン系樹脂(TPX(三井化学株式会社製))を用いることが好ましい。
【0018】
このような合成樹脂を用いて基板を作成すれば、耐熱性、耐薬品性、成形加工性などに優れているため好ましい。さらに、2種類以上の樹脂を接合して用いてもよい。この場合、それぞれの樹脂の特徴を活かして基板を作成することにより、試薬及び試料等の特性に応じた多様な基板とすることが可能となり、用途ごとに使い分けることができる。例えば、基板の上半分と下半分とで材料を分けたりすることも可能となる。また、後述の試薬収容部やPCR反応部など部分ごとに材料を分けることもできる。
なお、基板の素材としてガラスを用いてもよい。
【0019】
本発明では、反応時に高熱環境下に置かれる反応部と他の反応部又は試薬収容部の間に、放熱機構を備える。反応を行う場合、実際には、加熱機構などを備える装置を用いて反応を行うことになる。加熱機構は高熱環境下に置かれる反応部の上部又は下部に接して又は近傍に配置される。前記放熱機構は、反応時に高熱環境下に置かれる反応部と他の反応部又は試薬収容部の間あればよいが、具体的には反応容器上において加熱機構と接する部分又は近傍にある部分と熱の影響を避けたい反応部又は試薬収容部の間にあればよい。
【0020】
前記放熱機構は、空洞形状であることが好ましい。空洞形状であれば、熱の通り道に空気をはさむため、熱の伝導を抑えることができる。また、空洞形状であれば、作成が容易である。
空洞形状は基板を厚さ方向に貫通していても良いし、凹部形状のものでも良い(図5(b)、6(b)、7(b)参照)。
また、放熱機構は複数有していても良い。
【0021】
また、放熱機構は、熱の影響を考慮し、各反応部、試薬収容部間に設ければよく、例えば、長尺状基板に、試薬収容部、PCR反応部、反応検出部を順に備える図1のような構成である場合、PCR反応部と試薬収容部の間及びPCR反応部と反応検出部の間に放熱機構を備えることができる。また、同様の構成において、基板の熱伝導率などによっては、PCR反応部と試薬収容部の間のみに放熱機構を設けても良い(図2参照)。
また、長尺状基板に、PCR反応部、反応検出部を順に備える図3の構成においては、PCR反応部と反応検出部の間に放熱機構を備えることができる。
また、長尺状基板に、PCR反応部、試薬収容部、反応検出部を順に備える図4のような構成である場合、PCR反応部と試薬収容部の間に放熱機構を備えることができる。この場合、反応検出部での反応検出は最後に行うので、反応検出部での反応時に発生する熱の試薬収容部への影響は考慮しなくて良く、そのため、PCR反応部と反応検出部の間には放熱機構は備えなくても良い。
【0022】
PCR反応部は、血液から抽出したDNA又は市販の鋳型DNAなどの検体試薬からDNAの増幅反応をおこなうところで、PCR反応させたものを検体としてDNA反応検出に用いる。
PCR反応部の形状は特に限定はなく、ウェル状の反応部でも流路状でもかまわない。
【0023】
ウェル状である場合、形状は限定するものではなく、円錐台形、角錐台形、円錐、角錐や先端部が半球状であるものなど、加工成形性、溶液の注入性などにより様々な形状を取ることができる。
また、ウェル状PCR反応部は、切削加工、金型成型などにより形成することができる。
【0024】
大きさは特に限定するものではなく、用いる検体試薬の量などを考慮して決められるが、一般的に開口径0.1〜10mm、深さ0.1〜10mmの範囲内である。
また、ウェル状反応部内面には親水処理などの表面処理をしてもかまわない。
【0025】
PCR反応部は、基材がプラスチック、合成樹脂系であれば切削加工、成型加工により形成することができる。ガラスであれば切削加工により形成することができる。
【0026】
流路形状の反応部である場合、形状は特に限定するものではない。例えば、基板内に流路状PCR反応部を形成し、流路の一部に少なくとも開口部を設けてなる構造や、溝部を有する基材と他の基材を張り合わせることにより流路状PCR反応部を形成し、少なくとも一部に開口部を設ける構造や、開口形状を有する基板とフィルムを貼り合わせて流路状PCR反応部を形成する方法などが挙げられる。
流路、溝の形成は切削加工、金型成型などにより形成することができる。
【0027】
また、前記流路の一部をなすフィルムとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などのフィルム又はこれらを含む積層フィルムを用いることができる。また、アルミ、銅などの金属箔との積層フィルムでもかまわない。
溝部を有する基材との張り合わせは、接着剤による貼り合わせ又はヒートシール性のフィルムであればヒートシールにより貼り合わせることができる。
接着剤としては、特に限定はしないが、例えばポリ酢酸ビニル系、ポリアミド系などの熱可塑性樹脂接着剤を用いることができる。
【0028】
この場合、流路の内径は0.1〜5mmの範囲内であることが好ましく、また開口部の開口径0.1〜5mmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
PCR反応は、前述のウェル状または流路状のPCR反応部内で以下のように行われる。
PCR反応は、酵素を用いたDNAの増幅反応であり、一般的な増幅工程は、初めに鋳型DNAを熱変性させ、その後、鋳型DNAを変性させる熱変性工程、各種プライマーを正確にアニーリングさせるアニーリング工程、アニールしたプライマーからDNA鎖合成する伸長工程、という3つの工程のサイクルを繰り返し、伸長工程で終了させるものである。各工程の時間や温度などの条件は、適宜設定するのが好ましい。
【0030】
具体的には、血液から抽出したDNAまたは市販の鋳型DNA、ポリメラーゼ酵素、各塩基の材料であるdNTP、pH、濃度調整のための水、バッファー液を用い、上述の変性工程、アニーリング工程、伸長反応工程をおこなうことにより遺伝子を増幅する。
変性工程は90〜100℃、5〜25秒、アニーリング工程は50〜60℃、15〜60秒、伸長工程は65〜75℃、1〜5分で行うのが一般的である。また、アニーリング工程、伸長反応工程は同時におこなっても良く、その場合は50〜70℃、1〜5分で行うのが一般的である。
このPCR反応は、マルチプレックスPCRでも良い。その場合は、ホットスタート法(プライマーのミスアニーリングやオリゴマー化を防止する目的で、反応液が高温になってから伸長反応を開始させる手法)を適用することが好ましい。
【0031】
基板上には、試薬収容部及び/又は反応検出部を有する。
試薬収容部は、前記PCR反応処理に用いる検体試薬やその他の試薬、その後の検出反応に用いる試薬、バッファー、希釈液などを収容しておくことができるところである。
反応検出部はPCR反応部で調整した検体をプローブDNAやその他の試薬と反応させることにより、DNAの配列を分析するところである。
なお、試薬収容部とPCR反応部からなる反応容器であれば、PCR反応チップとして用いることができるが、PCR反応部と反応検出部、又はPCR反応部と反応検出部及び試薬収容部からなる反応容器であれば、PCRによる検体の調整からDNAの分析まで同一チップ状で連続して行うことができる。
【0032】
試薬収容部、反応検出部の形状は特に限定するものではないが、ウェル形状などの形状をとることができる。具体的には円錐台形、角錐台形、円錐、角錐や先端部が半球状であるものなど、加工成形性、溶液の注入性などにより様々な形状を取ることができる。
また、反応検出部は流路形状で、流路内で反応させ、流路内又は流路に接続されているウェル状検出部で検出してもかまわない。またウェル状の反応検出部を複数備え、それらを流路により接続してもかまわない(図9参照)。
【0033】
試薬収容部、反応検出部は、基材がプラスチック、合成樹脂系であれば切削加工、成型加工により形成することができる。ガラスであれば切削加工により形成することができる。
【0034】
試薬収容部の大きさは収容する試薬の量に応じて決められるが、開口径0.1〜10mm、深さ0.1〜10mm範囲内である。反応検出部の大きさも試薬の量に応じて決められるが、一般的にDNAの分析に用いる試薬の量は微量であるため、開口径0.01mm〜5mm、深さ0.01mm〜5mm範囲内であることが好ましい。
また、試薬収容部、反応検出部の内面は親水化または撥水化などの表面処理を施していてもかまわない。
【0035】
また、試薬収容部は用いる試薬の数等により、複数設けてもかまわない。反応検出部も分析するDNAの数に応じて複数設けてもかまわない。
また、PCR反応部、試薬収容部、反応検出部は流路を用いて接続してもかまわない。これら流路を形成することにより、連続した反応を行わせることが可能となる。これにより、検査時間の短縮が図れるとともに微量な試料及び試薬で各種の分析を行うことができ、コストの削減を実現することができる。
【0036】
反応検出部では、例えば、後述するようなハイブリダイゼーション反応によるDNAの検出またはインベーダー反応法を用いたDNA、SNPの検出に用いることができる。これらは一般に40〜70℃、数十分〜数十時間の範囲で反応させることが多い。
【0037】
また、PCR反応部、試薬収容部、反応検出部はそれぞれ、被覆フィルムで被覆しても良い。
被覆フィルムは、試薬収容部内の溶液の蒸発を防ぐことができ、また埃など外部からの汚染を防ぐものである。
被覆フィルムとしては、被覆フィルムとしては、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、TPXフィルム(三井化学株式会社製)などのメチルペンテン系フィルム、ゼオノア(日本ゼオン株式会社製)などのシクロオレフィン系フィルム、シリコン樹脂フィルム、フッ素系ポリマーフィルムなどの樹脂フィルムなどが挙げられる。
被覆フィルムの形成は、接着剤により貼り合わせるか、ヒートシールにより貼り合わせることができる。
接着剤としては、反応系に悪影響を与えないものであれば良く、ポリ酢酸ビニル系、ポリアミド系などの熱可塑性樹脂接着剤を用いることができる。
ポリエチレン(PE)フィルムなどのフィルムはヒートシール性であるため、接着剤を用いずに基材と貼り合わせることができる。
【0038】
本発明の容器は、様々な生化学系の反応用として用いることができ、例えば抗原抗体反応及びDNA反応の検出などに用いることができる。
抗原抗体反応による抗原検出の場合、例えば、予め各ウェル状反応部内に抗原を含む試料を入れておき、後から抗体を含む試薬を添加し、抗原または抗体に標識物質を付けておくことで、反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光などの発光物質が一般的に用いられる。なおこの場合、基板上に試薬収容部を設けて置き、抗体を収容しておいてもよい。
【0039】
DNAの検出の場合、例えば、予めウェル状反応検出部内に核酸プローブを用意しておく。次に検体DNAをウェル状反応検出部に供給し、核酸プローブと検体DNAとのハイブリダイゼーション反応により、DNAの検出を行うことができる。その際、検体DNAに標識物質を付けておけば、その標識物質の有無を検出することにより検出が可能となる。また、検体DNAとして、血液等から抽出したDNAをPCR法、LAMP法などにより調整しておいたものを用いることができる。また、配列の異なる核酸プローブを複数用意することで検体DNAがどのような配列であるかを検出することができる。なおこの場合、基板上に試薬収容部を設けて置き、検体DNAを収容しておいてもよい。
【0040】
また、基板上にPCR反応部を設けておき、チップ上で連続して、血液などから抽出したDNAをPCR反応により増幅させ、それを検体DNAとし、反応部で核酸プローブとの反応の有無を検出してもよい。具体的には、例えばウェル状試薬収容部に血液などから抽出したDNAを収容しておき、分注動作により、PCR反応部へ分注し、PCR反応により調整した検体DNAをウェル状の反応検出部へ分注すればよい。ウェル状試薬収容部からPCR反応部、ウェル状反応検出部へは流路を用いて送液しても良い。
【0041】
また、一塩基遺伝子多型(SNP)の解析にも用いることができる。なお、その場合、プローブ核酸やそのた検出に用いる物質は複数あってもよく、それらの物質のひとつが標識されていればよい。
【0042】
また、標識物質は、結合したプローブ核酸と検体DNAに特異的に作用するものを、反応後に加えることもできる。このようなものとしては、インターカレーターなどがある。また、ここでいう標識物質とは間接的なものも含む。すなわち、蛍光物質などに結合する物質を標識物質として認識物質または検出物質に結合させておき、後から蛍光物質を加えても良い。
【0043】
また、多段階反応を行ってSNPまたはDNAを検出してもよい。
例えば、インベーダー・アッセイ法(サードウェイブテクノロジーズ,Inc(米国ウィスコンシン州マディソン市)を用いても良い。これによりSNP解析の具現化を図ることが可能となる。
【0044】
この場合、検出DNAの検出に用いるプローブ核酸などの試薬が複数種でもよく、予めウェル状反応部内に少なくとも1種の試薬を入れておき、その後、検出DNAと他の試薬を同時または順次注入し、反応をおこなっても良い。
【0045】
また、ウェル状反応部、PCR反応部には、反応用液の乾燥を防ぐ目的でミネラルオイルなどの反応用液より比重の軽い溶液を加えても良い。
また、検体DNA又は抗原などはウェル状反応部内に固定してもよいし、固定させずに保持させておくだけでもよい。
【0046】
なお、ここでは同一チップ上でPCR反応と核酸の反応検出を行う例で説明したが、これに限るものではない。また、ここでは、PCR反応部を第一の反応部、核酸の反応検出部を第二の反応部として説明したが、さらに第三の又はそれ以上の反応部を有するような系にも適用できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の一実施例として、第一反応部であるPCR反応部、試薬収容部、第二反応部である核酸反応検出部を有するチップを図10を参照しながら説明する。
本実施例では、図10に示すような長尺状基板のチップであって、中央にあるPCR反応部と4個のウェル状試薬保存収容部との間、およびPCR反応部と24個のウェル状反応検出部との間にそれぞれ放熱機構を備えている。
【0048】
基板は、PP(ポリプロピレン)を用い、射出成型による金型成型で作成した。本発明にて用いたPPはTm160℃、検出波長での光線透過率は80%(0.5mm)であり、PCR反応部での耐熱性、反応検出部での透明性を満足している。また、PPの熱伝導率は0.20W/mKである。
【0049】
チップは、長辺120mm短辺25mmの長尺状であり、PCR反応部は長辺方向の中央部に配置され、ウェル状反応検出部は右端より45mmまでの範囲に配置され、試薬保存収容部は左端45mmまでの範囲に配置されている。
放熱機構は、長辺方向4mm短辺方向3mmの貫通空洞がPCR反応部より5mmの位置にそれぞれ3個ずつ計6個配置されている。
【0050】
PCR反応部は、幅1mm深さ1mmの流路両端部に直径φ1mmの開口部を設けた流路形状構造とし、流路は溝部を有する基材にABI PRISM Opticalcover(ABI社製)をヒートシールにより貼りあわせて形成した。
【0051】
反応検出部はウェル形状であって、開孔径3mm、深さ1.7mmの円錐台形形状であり、隣接するウェルはそれぞれ5mm間隔で配置されている。ウェル容量は8μlである。親水化処理を施した該ウェル24個には、24種類の核酸プローブが乾燥状態で保持されており、インベーダ・アッセイ法を用いて反応検出する。
【0052】
試薬収容部は、親水処理を施した開孔径6mm深さ5mmのウェルが4個配置されている。ウェル容量は140μlである。各ウェルにはインベーダ・アッセイ法用反応試薬、PCR反応用試薬、乾燥防止用ミネラルオイルが収容されており被覆フィルムが貼りあわせてある。被覆フィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂フィルムをポリ酢酸ビニル系の被覆フィルムがヒートシールにより接着されている。
また、1個のウェルは、血液から抽出したDNAを導入するために空きの状態となっている。
【0053】
前記チップのPCR反応部を縦8mm横8mmの2組のペルチェ素子(ゼーベック素子)にてPCR反応試薬の導入された流路を上下から挟み、熱変性工程、アニーリング工程、伸長工程の3つの工程を30サイクル繰り返した。各工程の温度および時間は、熱変性工程は95℃5秒、アニーリング工程は60℃15秒、伸長工程は70℃1分にて行った。
【0054】
前記3工程の30サイクルを経た後のチップ上温度分布は定常状態となっている。温度分布は、放熱機構がない場合、熱源であるペルチェ素子で挟まれた流路PCR反応部が中心となる温度勾配となり、遠ざかるほど温度が低くなる。PCR反応部に最も近い試薬収容部は、PCR反応部から15mmの位置にあり最も高温となる。
【0055】
実施例のチップはPCR反応部から15mmの位置にある最も近い試薬収容部の温度は46℃であった
【0056】
PCR反応終了後、PCR反応終了液を反応検出部に分注し、60℃30分でインベーダ・アッセイ反応を行った。
実施例のチップを用いた場合、インベーダ・アッセイ反応が正常に行われた。
【0057】
<比較例>
図11に示すように、放熱構造を持たないチップを比較検討のために用意した。該チップは、放熱構造を持たないこと以外については全て実施例1のチップと同じ形状、配置、構成である。
【0058】
比較例のチップでは、PCR反応部から15mmの位置にある最も近い試薬収容部の温度は54℃であった。
【0059】
PCR反応終了後、PCR反応終了液を反応検出部に分注し、60℃30分でインベーダ・アッセイ反応を行った。
比較例のチップを用いた場合、PCR反応時に試薬収容部内の試薬に熱的な影響があり、インベーダ・アッセイ反応時の反応効率が低下し、結果検出感度が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図2】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図3】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図4】本発明の反応容器の一例を示す概要図である。
【図5】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図6】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図7】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図8】本発明の反応容器の放熱機構の一例を示す概要図である。
【図9】流路を用いた反応検出部の接続の一例を示す概要図である。
【図10】実施例の反応容器を示す概要図である。
【図11】比較例の反応容器を示す概要図である。
【符号の説明】
【0061】
1 反応容器
2 PCR反応部
3 試薬収容部
4 反応検出部
5 放熱機構
6 ペルチェ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一基板に、第一の反応部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器。
【請求項2】
同一基板に、第一の反応部、試薬収容部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部及び/又は試薬収容部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器。
【請求項3】
前記第一の反応部がPCR反応部であり、かつ第二の反応部が核酸反応検出部であることを特徴とする請求項1または2に記載の反応容器。
【請求項4】
前記放熱機構が、空洞形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反応容器。
【請求項5】
前記第一の反応部が酵素反応用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反応容器。
【請求項6】
前記第一の反応部がPCR反応用でありかつ、第一の反応部がDNAの反応検出用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反応容器。
【請求項1】
同一基板に、第一の反応部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器。
【請求項2】
同一基板に、第一の反応部、試薬収容部、第二の反応部を有する反応容器であって、第一の反応部と第二の反応部及び/又は試薬収容部の間に放熱機構を有することを特徴とする反応容器。
【請求項3】
前記第一の反応部がPCR反応部であり、かつ第二の反応部が核酸反応検出部であることを特徴とする請求項1または2に記載の反応容器。
【請求項4】
前記放熱機構が、空洞形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反応容器。
【請求項5】
前記第一の反応部が酵素反応用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反応容器。
【請求項6】
前記第一の反応部がPCR反応用でありかつ、第一の反応部がDNAの反応検出用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反応容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−345798(P2006−345798A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177677(P2005−177677)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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