説明

反応性アゾ染料

【課題】 新規反応性アゾ染料の提供。
【解決手段】 一般式I:
【化1】


[式中、nは1又は2を表し、R1は水素又はヒドロキシを表し、かつDは、それぞれ式SO2−Y(ここでYはビニル又は置換エチルを表す)の固定基少なくとも1つを有するジアゾ−又はテトラアゾ成分の残基を表す]の反応性染料並びにその使用。
【効果】 ヒドロキシ基又は窒素原子を有する有機支持体を染色又はプリントするために優れた反応性アゾ染料の獲得。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は一般式I:
【0002】
【化4】


【0003】[式中、nは1又は2を表し、R1は水素又はヒドロキシを表し、かつDは、nが1である場合、式:
【0004】
【化5】


【0005】の基を表し、又はnが2である場合、式:
【0006】
【化6】


【0007】の基を表し、ここで環Aはベンゼン環縮合していてよく、R2、R3及びR4は相互に独立し、それぞれ水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、ハロゲン又はヒドロキシスルホニルを表し、Eは水素、複素環式固定基又は脂肪族列からの固定基を表し、Yはビニル又は式C24−Qを表し、ここでQはアルカリ性反応条件下に脱離可能な基の意味を有し、かつTは架橋構成員を表す、ただし、nが1、R1がヒドロキシ及びR2、R3及びR4がそれぞれ水素を表す場合、Eは水素も表さず、かつ式SO2−Y、W1−SO2−Y又はCONX−W1−SO2−Y(ここでYはそれぞれ前記のものを表し、かつW1はそれぞれC1〜C4−アルキレンを表し、かつXは水素又はC1〜C4−アルキルを表す)の基も表さない]の新規反応性染料並びにヒドロキシ基又は窒素原子を有する有機支持体の染色又はプリントのための使用に関する。
【0008】
【従来の技術】EP−A−637615からは、式I(n=1、R1=ヒドロキシ)と同様な骨組みを有する染料が公知である。しかしながら、そこに記載された染料はジアゾ成分中の置換パターンが異なる。
【0009】従前のドイツ特許出願第 P 4434989.0は特に環の7位に置換アミノ基を有し、かつ付加的にヒドロキシ基及びスルホン酸基を有する3−ヒドロキシスルホニルナフタリンの列からなるカップリング成分を有する反応性染料を課題としている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題はフェニル−又はナフタリンアゾナフタリン染料から誘導された新規反応性染料を提供することであった。この新規染料は優れた適用特性を有していなければならない。
【0011】
【課題を解決するための手段】こうして、冒頭に詳細に記載した一般式Iの新規反応性染料が見出された。
【0012】式Iの新規反応性染料はそれぞれ遊離酸の形で記載されている。もちろん請求項に記載された化合物の塩も包含される。
【0013】好適なカチオンは金属イオン又はアンモニウムイオンから誘導される。金属イオンは特にリチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオンである。本発明におけるアンモニウムイオンは非置換又は置換アンモニウムカチオンである。置換アンモニウムカチオンは、例えばモノアルキル−、ジアルキル−、トリアルキル−、テトラアルキル−又はベンジルトリアルキルアンモニウムカチオン又は窒素原子含有5−又は6員環飽和複素環から誘導された、例えば、ピロリジニウム−、ピペリジニウム−、モルホリニウム−又はピペラジニウムカチオン又はそのN−モノアルキル−、又はN,N−ジアルキル置換生成物から誘導されたカチオンである。ここでアルキルとは、ヒドロキシ基により置換されていてよいか、かつ/又はエーテル官能基の形の酸素原子により中断されていてよい直鎖又は分枝鎖のC1〜C20−アルキル基であると一般的に理解する。本発明でアルキル基及びアルキレン基は直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。
【0014】本発明において置換アルキル基との記載のある場合、これは一般に置換基1又は2個を有する。
【0015】本発明において置換されたフェニレン基との記載のある場合、他に記載のない限り、例えばC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシスルホニル、スルファモイル又はC1〜C4−モノ−又はジアルキルスルファモイルが置換基として考慮される。この基は一般に置換基1〜3個、有利に1又は2個を有する。
【0016】基R2、R3及びR4は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ又はsec−ブトキシである。
【0017】基Qはアルカリ性反応条件下に脱離可能な基を表す。そのような基としては、例えば塩素、臭素、C1〜C4−アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、OSO3H、SSO3H、OP(O)(OH)2、C1〜C4−アルキルスルホニルオキシ、場合により置換されたフェニルスルホニルオキシ、C1〜C4−アルカノイルオキシ、C1〜C4−ジアルキルアミノ又は一般式:
【0018】
【化7】


【0019】[式中、L1、L2及びL3は相互に独立してそれぞれ、C1〜C4−アルキル又はベンジル基を表し、Anはそれぞれアニオンの当量の意味を有する。この際、アニオンとしては例えば、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、モノ−、ジー又はトリクロルアセテート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート又は2−又は4−メチルベンゼンスルホネートを挙げることができる。
【0020】基Eは1つの分子において、相互に同一であっても又は相互に異なっていてもよい。固定基Eは処理すべき支持体のヒドロキシ基又は窒素原子を含有する基と置換的に又は付加的に反応するものである。この際、C24−Q−基はアルカリ性反応条件下に反応し、ビニル基となる。
【0021】固定基が支持体中の該当する基と、例えばセルロースのヒドロキシ基と置換的に反応するということは、固定基中の脱離基又は脱離原子(例えば、フッ素又は塩素)がセルロースのヒドロキシ基により次の反応式に従って置換されるということを意味します:
【0022】
【化8】


【0023】固定基が支持体中の該当する基と、例えばセルロースのヒドロキシ基と付加的に反応するとは、セルロースのヒドロキシ基が次の反応式により固定基に付加するということを意味します:
【0024】
【化9】


【0025】複素環式固定基Eは、例えば1,3,5−トリアジン、キノキサリン、フタラジン、ピリミジン又はピリダジンのハロゲン置換基又は2−アルキルスルホニルベンズチアゾール基である。
【0026】次の複素環基を例として挙げる:
【0027】
【化10】


【0028】
【化11】


【0029】[式中、Xは水素原子又はC1〜C4−アルキル基を表し、Halはフッ素又は塩素を表し、U1は水素又はニトロを表し、かつU2及びU3は相互に独立してそれぞれ、水素、場合によりヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシスルホニル又は式SO2−Y(ここでYは前記のものを表す)により置換されていてよく、かつエーテル官能基の形の酸素原子、イミノ−又はC1〜C4−アルキルイミノ基1又は2個により中断されていてもよい、C1〜C6−アルキルを表すか、又はU2とU3とがこれらが結合する窒素と一緒になってピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル又はN−(C1〜C4−アルキル)ピペラジニルを表すか、又はU2は式:
【0030】
【化12】


【0031】を表し、この際、環B及びKはそれぞれヒドロキシスルホニル1個又は2個により置換されていてもよいし、かつベンゼン縮合していてもよく、環Kはそれとは独立して、塩素、ニトロ、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、シアノ、カルボキシル、アセチルアミノ、ヒドロキシスルホニルメチルにより、又は式CH2−SO2−Y、SO2−Y、NH−CO−Y又はNU2−CO−NU2−Z−SO2ーY(ここで、Y及びU2はそれぞれ前記のものを表し、かつZは場合によりヒドロキシ、塩素、シアノ、カルボキシル、C1〜C4−アルコキシカルボニル、C1〜C4−アルカノイルオキシ又はスルファトにより置換されていてよく、かつエーテル官能基の形の酸素原子又はイミノ−又はC1〜C4−アルキルイミノ基1又は2個により中断されていてよいC2〜C6−アルキレンを表してよい)1又は2個により置換されていてよい]。
【0032】脂肪族列からの固定基Eは例えばアクリロイル−、モノ−、ジ−又はトリクロルアクリロイル、モノ−、ジ−又はトリブロムアクリロイル、−CO−CCl=CH−COOH、−CO−CH=CCl−COOH、2−クロルプロピオニル、1,2−ジクロルプロピオニル、1,2−ジブロムプロピオニル、3−フェニルスルホニルプロピオニル、3−メチルスルホニルプロピオニル、2−スルファトエチルアミノスルホニル、2−クロル−2,3,3−トリフルオルシクロブチルカルボニル、2,2,3,3−テトラフルオルシクロブチルカルボニル、2,2,3,3−テトラフルオルシクロブチルスルホニル、2−(2,2,3,3−テトラフルオルシクロブチル)アクリロイル、1−又は2−アルキル−又は−アリールスルホニルアクリロイル、例えば1−又は2−メチルスルホニルアクリロイル、又は式SO2−Y、W1−SO2−Y、CONX−W2−SO2−Y又はNXCONX−W2−SO2−Y(ここで、X及びYはそれぞれ前記のものを表し、W1はC1〜C4−アルキレン及びW2はC1〜C4−アルキレン基又は場合により置換されていてよいフェニレン基を表す)。
【0033】基W1及びW2は、例えばCH2、(CH22、(CH23、(CH24、CH(CH3)CH2又はCH(CH3)CH(CH3)である。
【0034】基W2は更に例えば1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンである。
【0035】式I中のTは架橋構成員を示す。好適な架橋構成員は例えば式:
【0036】
【化13】


【0037】[式中、pは0又は1を表し、かつHal、W2、X及びZはそれぞれ前記の意味を有する]のものである。
【0038】特に、架橋構成員としては式:
【0039】
【化14】


【0040】の基を挙げることができるが、この際CO又はSO2が優れている。
【0041】nが2を表す場合、Dは有利に式:
【0042】
【化15】


【0043】[式中、E、Y及びTはそれぞれ前記のものを表す]のものを表す。
【0044】更に有利であるのは、式中R1がヒドロキシを表す一般式Iの反応性染料である。
【0045】更に有利であるのは、式中R2、R3及びR4がそれぞれ水素を表す一般式Iの反応性染料である。
【0046】更に有利であるのは、式中Eが水素を表し、固定基が1,3,5−トリアジン列又は式SO2−Y(ここでYは前記のものを表す)の基からなる式Iの反応性染料である。
【0047】更に有利であるのは、式中、nが2である場合、Tが式CO又はSO2を表す式Iの反応性染料である。
【0048】更に有利であるのは、式中、nが1である式Iの反応性染料である。
【0049】更に有利であるのは、環Aがベンゼン環縮合していない式Iの反応性染料である。
【0050】特に有利であるのは、式中、Eが水素又は式SO2−Y(ここでYは前記のものを表す)の基を表す式Iの反応性染料である。
【0051】更に特に有利であるのは、式中、式SO2−Yの基がアゾ基に対してオルト位である式Iの反応性染料である。
【0052】更に、特に有利であるのは式Ia:
【0053】
【化16】


【0054】[式中、R2及びR3は相互に独立して、それぞれ水素又はヒドロキシスルホニルを表し、かつE及びYはそれぞれ前記のものを表す]の反応性染料である。
【0055】特に重要であるのは、一般式Ia中のEが水素原子又は式SO2−Yの基を表す反応性染料であり、この際水素は特に重要であり、かつR2及びR3はそれぞれヒドロキシスルホニルを表す一般式Iaの反応性染料である。
【0056】一般式Iの新規反応性染料は公知の方法で得られる。
【0057】例えば、式IIa又はIIb:
【0058】
【化17】


【0059】[式中、環A、R2、R3、R4、E、Y及びTはそれぞれ前記のものを表す]のアニリンを公知法でジアゾ化又はテトラアゾ化し、かつ式III
【0060】
【化18】


【0061】[式中、R1はそれぞれ前記のものを表す]のアミノナフタリンとカップリングさせることができる。
【0062】式IIbのアニリンは、例えば従前のドイツ特許出願 P 19508311.3に記載されているように公知法で得ることができる。
【0063】一般式Iの新規反応性染料はヒドロキシ基又は窒素原子を有する有機支持体の優れた方法での染色又はプリントのために好適である。そのような支持体は例えば、皮革又は繊維材料であり、これは主に天然又は合成ポリアミド又は天然又は再生セルロースを包含する繊維材料である。新規染料は羊毛又は特に木綿をベースとする繊維材料の染色及びプリントのために好適である。赤色色調の染め上げが得られる。
【0064】特に、セルロースをベースとする支持体上に非常に高い定着収率を有する色の強い染色が得られ、これは非常に良好な耐光性、並びに優れた耐湿潤性、例えば耐洗浄性、耐塩素漂白性、耐過酸化物漂白性、耐アルカリ性、耐海水性又は耐汗性、を有する。
【0065】
【実施例】次の実施例は本発明をより詳細に説明する。
【0066】実施例1:3−(2−スルファトエチルスルホニル)アニリン−4,6−ジスルホン酸33.1gを氷水100ml中に混入撹拌し、10N塩酸10mlを添加し、温度0〜5℃で撹拌下に23重量%亜硝酸ナトリウム水溶液15mlを滴加することにより、ジアゾ化した。遊離亜硝酸の僅かな過剰をアミドスルホン酸の添加により分解し、かつこのジアゾニウム塩溶液をカップリングするまで0〜5℃に保持した。
【0067】1−ヒドロキシ−7−アミノナフタリン−3,6−ジスルホン酸16.9gを氷水100ml中に混入撹拌した。ジアゾニウム塩をこの溶液に滴加し、かつこの際、酢酸ナトリウムでpH値を2.5〜3に保持した。反応の終了後室温に温度上昇させ、次いで炭酸水素ナトリウムによりpH値を4.5〜5に調節した。その後、反応溶液を塩化ナトリウム50gと共に混合し、4時間後撹拌した。生じた沈殿を濾別し、かつ乾燥した。式:
【0068】
【化19】


【0069】の染料24.6gが得られた。
【0070】実施例2:3−(2−スルファトエチルスルホニル)アニリン15.5gを氷水100ml中に混入撹拌し、10N塩酸10mlを添加し、温度0〜5℃で撹拌下に23重量%亜硝酸ナトリウム水溶液15mlを滴加することにより、ジアゾ化した。温度0〜5℃で2時間撹拌した後、遊離亜硝酸の僅かな過剰をアミドスルホン酸の添加により分解し、かつジアゾニウム塩溶液をカップリングするまで0〜5℃に保持した。
【0071】2−アミノナフタリン−3,6−ジスルホン酸27.6gを氷水100ml中に混入撹拌した。ジアゾニウム塩溶液をこの溶液に滴加し、かつこの際、炭酸ナトリウム水溶液でpH値を2.5〜3に保持する。反応の終了後室温に温度上昇させ、次いで炭酸水素ナトリウムによりpH値を4.5〜5に調節する。その後、反応溶液を塩化ナトリウム25gと共に混合し、4時間後撹拌する。生じた沈殿を濾別し、かつ乾燥した。式:
【0072】
【化20】


【0073】の染料24.2gが得られた。
【0074】同様にして、次の表中に記載した染料が得られた。
【0075】
【表1】


【0076】実施例9:3,3−ジアミノ−4,4′−ビス(2−スルファトエチルスルホニル)ベンゾフェノン30.2gを氷水200ml中に混入撹拌し、10N塩酸30ml及び氷酢100mlを添加し、温度0〜5℃で撹拌下に23重量%亜硝酸ナトリウム水溶液31mlでテトラアゾ化した。0から5℃で3時間撹拌した後、遊離亜硝酸の僅かな過剰をアミドスルホン酸の添加により分解した。2−アミノナフタリン−3,6−ジスルホン酸57.5gを添加し、かつ炭酸ナトリウムでpH値を3〜3.5に保持した。反応の終了後、室温に上昇させ、かつpH値を炭酸ナトリウムで5〜5.5に調節した。この反応溶液を塩化ナトリウム50gと共に混合し、4時間後撹拌した。赤色沈殿を濾別し、かつ乾燥した。式:
【0077】
【化21】


【0078】の染料が得られた。
【0079】実施例10:実施例9と同様に実施したが、当量の2−アミノ−8−ヒドロキシナフタリン−3,6−ジスルホン酸を使用し、かつ式:
【0080】
【化22】


【0081】の染料が得られた。
【0082】実施例11:実施例9と同様に実施したが、テトラアゾ成分としてカルボニル化合物の代わりに相応するスルホニル化合物を、カップリング成分として実施例10中に挙げたナフタリン誘導体を使用した。式:
【0083】
【化23】


【0084】の染料が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式I:
【化1】


[式中、nは1又は2を表し、R1は水素又はヒドロキシを表し、かつDは、nが1である場合、式:
【化2】


の基を表し、又はnが2である場合、式:
【化3】


の基を表し、ここで環Aはベンゼン環縮合していてよく、R2、R3及びR4は相互に独立し、それぞれ水素、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、ハロゲン又はヒドロキシスルホニルを表し、Eは水素、複素環式固定基又は脂肪族列からの固定基を表し、Yはビニル又は式C24−Qを表し、ここでQはアルカリ性反応条件下に脱離可能な基の意味を有し、かつTは架橋構成員を表す、ただし、nが1、R1がヒドロキシ及びR2、R3及びR4がそれぞれ水素を表す場合、Eは水素も表さず、かつ式SO2−Y、W1−SO2−Y又はCONX−W1−SO2−Y(ここでYはそれぞれ前記のものを表し、かつW1はそれぞれC1〜C4−アルキレンを表し、かつXは水素又はC1〜C4−アルキルを表す)の基も表さない]の反応性アゾ染料。