説明

反応性プリント染料、およびその水性組成物の応用

【課題】高いpH値安定性、低い染料強度変性、高い着色(強度)、および高い染料濃度などの優れた特性を有する、反応性プリント染料組成物を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも一つの反応性染料;(b)有機バッファー、および(c)芒硝または分散剤を含む、反応性プリント染料組成物に関する。反応性プリント染料組成物は、編地染色、例えば、木綿、麻、シルク、レーヨン、ウールの染色、混色などに使用することが可能である。高いpH値安定性、高い保存安定性、および低い染料強度変性において有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性染料組成物に関し、さらに詳細には、セルロース繊維のプリントに好適な、反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、pH値を4から8の範囲に維持するために有機バッファーを使用する、染料組成物を開示した。少なくとも一つの反応性染料、および1,2-プロピレングリコールまたはN-メチル-2-ピロリドンを含む染料組成物が、特許文献2に開示された。特許文献2によって開示される染料組成物では、着色力および定着の向上が見られるが、保存安定性が劣る。さらに、特許文献3は、反応性染料、スルフォラン、およびバッファーシステムを含み、保存安定性が改善された染料組成物を開示した。残念ながら、その塩素漂白耐性、着色(強度)、および可溶性は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,780,229号
【特許文献2】米国特許第6,015,454号
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0172840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高いpH値安定性、低い染料強度変性、高い着色(強度)、および高い染料濃度などの優れた特性を有する、反応性プリント染料組成物を提供することは、当業者にとって重要な目標である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、セルロース繊維、または他の繊維ブレンド編地のプリント、またはディジタルスプレイプリントにおいて使用することが可能であり、かつ、pH値安定性の向上、保存安定性の強化、および、染料強度変性の抑制において有利な、反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物を提供することである。
【0006】
本発明は、反応性プリント染料組成物であって、
(a)少なくとも一つの反応性染料を45から99.85重量部、
(b)有機バッファーを0.05から10重量部、および、
(c)芒硝(ミラビル石)(硫酸ナトリウム)または分散剤を0.1から50重量部、
含む組成物を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、反応性プリント染料水性組成物であって、
(a)少なくとも一つの反応性染料を1から50重量部として、
(b)有機バッファーを0.05から10重量部として、および、
(c)水を40から98.95重量部として、
含む水性組成物を提供する。
【0008】
本発明による、反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物においては、該反応性染料の反応基における加水分解の可能性は、着色力変性の問題を解消するよう抑制することが可能であり、そのため、優れた着色強度、良好な保存安定性、沈殿抑制、およびプリント安定性の向上などの利点の実現が可能となる。
【0009】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物によって調製されるプリント生地は、優れた特性を示す。
【0010】
プリントの際都合がよいように、本発明の反応性プリント染料組成物は、水性形状として調製されてもよい。
【0011】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物においては、前述の成分(a)、すなわち、反応性染料は、水溶性であってもよく、かつ、モノクロロトリアジニル誘導体成分を有する。その例示の態様を、下式(I-1)から(I-16)に示す:
【化1】




【0012】
これらの反応性染料は、カラーインデックス(C.I.)から選ばれてもよい、例えば、C.I.反応性レッド3:1、C.I.反応性レッド31、C.I.反応性レッド33、C.I.反応性レッド24、C.I.反応性レッド45、C.I.反応性レッド218、C.I.反応性バイオレット5、C.I.反応性イェロー2、C.I.反応性イェロー18、C.I.反応性イェロー33、C.I.反応性イェロー85、C.I.反応性イェロー95、C.I.反応性ブルー15、C.I.反応性ブルー5、C.I.反応性ブルー49、C.I.反応性ブルー71、C.I.反応性ブルー176、C.I.反応性オレンジ5、C.I.反応性オレンジ12、C.I.反応性オレンジ13、C.I.反応性オレンジ99、C.I.反応性グリーン19、C.I.反応性ブラウン17、C.I.反応性ブラック8、またはC.I.反応性ブラック5から選ばれてもよい。
【0013】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物は、個別に使用されてもよいし、あるいは、前述の反応性染料、またはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩と一緒に混ぜ合わされてもよい。組成物が水性である場合には、添加される塩の量は低くなければならない。言い換えると、反応性染料の重量に対し、塩の含量は、好ましくは、0.5重量%未満である。製造プロセスにおいて生産される塩、および、付加的に添加される希釈剤は、例えば、膜分離、限外濾過、逆浸透、または透析によって除去することが可能である。
【0014】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物においては、成分(b)、すなわち、有機バッファーの例は、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルフォン酸(BES)であり、その構造は、式(II-1)のように示される:
【化2】

【0015】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物においては、分散剤は、デモール(Demol) RN、デモール(Demol) SS、レベノール(Levenol) V、またはレベノール(Levenol) TDであってもよいが、ただし、それらに限定されない。
【0016】
本発明による反応性プリント染料組成物においては、該染料組成物の総重量に対し、反応性染料の量は45重量%から99.85重量%の範囲にあってもよく、有機バッファーの量は0.05から10重量%の範囲にあってもよく、芒硝、すなわち分散剤の量は、0.1重量%から50重量%の範囲にあってもよい。好ましくは、反応性染料の量は45重量%から99.8重量%の範囲にあり、有機バッファーの量は0.1重量%から5重量%の範囲にあり、芒硝、すなわち分散剤の量は、0.1重量%から50重量%の範囲にある。より好ましくは、反応性染料の量は47重量%から99.7重量%の範囲にあり、有機バッファーの量は0.2重量%から3重量%の範囲にあり、芒硝、すなわち分散剤の量は、0.1重量%から50重量%の範囲にある。もっとも好ましくは、反応性染料の量は47重量%から90重量%の範囲にあり、有機バッファーの量は0.2重量%から3重量%の範囲にあり、芒硝、すなわち分散剤の量は、9.8重量%から50重量%の範囲にある。しかしながら、これらの成分の量は、上記に限定されない。
【0017】
本発明による反応性プリント染料水性組成物においては、該水性染料組成物の総重量に対し、反応性染料の量は1重量%から50重量%の範囲にあってもよく、有機バッファーの量は0.05から10重量%の範囲にあってもよく、水の量は、40重量%から98.95重量%の範囲にあってもよい。好ましくは、反応性染料の量は3重量%から45重量%の範囲にあり、有機バッファーの量は0.1重量%から8重量%の範囲にあり、水の量は、47重量%から96.9重量%の範囲にある。より好ましくは、反応性染料の量は3重量%から45重量%の範囲にあり、有機バッファーの量は0.2重量%から8重量%の範囲にあり、水の量は、47重量%から96.8重量%の範囲にある。もっとも好ましくは、反応性染料の量は5重量%から40重量%の範囲にあり、有機バッファーの量は0.2重量%から8重量%の範囲にあり、水の量は、52重量%から94.8重量%の範囲にある。しかしながら、これらの成分の量は、上記に限定されない。
【0018】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物においては、上述の化合物は全て遊離酸として表される。実際には、本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物において使用される化合物は、金属塩またはアンモニウム塩であってもよく、好ましくは、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。本発明の染料組成物は、水に溶解した上記成分を、一般的手順にしたがって混ぜ合わせることによって調製することが可能である。
【0019】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物は、木綿、麻、セルロース、合成繊維などの、セルロース繊維を含む材料、および、ヒドロキシル繊維を含む材料に対するプリントに応用することが可能である。
【0020】
本発明による、反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物においては、該反応性染料の反応基における加水分解の可能性は、着色力変性の問題を解消するよう抑制することが可能であり、そのため、優れた着色力、良好な保存安定性、沈殿抑制、およびプリント安定性の向上などの利点の実現が可能とされる。
【0021】
本発明による反応性プリント染料組成物および/または反応性プリント染料水性組成物によって調製されるプリント生地は、優れた特性、例えば、強力な繊維・染料結合安定性、くっきりとした特徴点(高解像度)、高度の混和性と良好な色彩強度、光および湿度に対する耐性、例えば、洗濯、真水、海水、染め直し、湿度、塩素処理、手もみ、アイロン掛け、および襞形成に対する良好な耐性など、優れた特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
下記の実施例は、本発明を具体的に説明するために使用されるもので、外にも多くの可能な改変および変異態様が、種々の概念および用途に基づいて、本発明の精神を逸脱することなく実行することが可能である。下記の実施例は、より具体的な記述のために例示されるものであって、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。具体的に言及しない場合、これらの実施例に使用される部およびパーセントの単位は、重量として計算され、温度は、摂氏度(℃)によって表される。重量部および容量部の間の関係は、キログラムとリットルの間の関係とまったく同じである。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
50部の化合物(I-1)、50部の化合物(I-2)、および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部の化合物(II-1)をこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて、本実施例の反応性プリント染料組成物を得る。
【0024】
[実施例2]
100部の化合物(I-3)、および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。精製後、5部の化合物(II-1)および30部の芒硝をそれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて、本実施例の反応性プリント染料組成物を得る。
【0025】
[実施例3]
100部の化合物(I-4)、および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部の化合物(II-1)、および20部のDemol RNをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて、本実施例の反応性プリント染料組成物を得る。
【0026】
[実施例4]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-5)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0027】
[実施例5]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-6)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0028】
[実施例6]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-7)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0029】
[実施例7]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-8)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0030】
[実施例8]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-8)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0031】
[実施例9]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-10)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0032】
[実施例10]
20部の化合物(I-13)、80部の化合物(I-14)、および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。精製後、2部の化合物(II-1)、10部のDemol RN、および30部の芒硝をそれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて、本実施例の反応性プリント染料組成物を得る。
[実施例11]
【0033】
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-15)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0034】
[実施例12]
化合物(I-3)の代わりに化合物(I-16)を用いたことを除いては、実施例2に記載される方法にしたがって、本実施例の反応性プリント染料組成物を調製する。
【0035】
[実施例13]
実施例10に記載される方法にしたがって、2部の化合物(II-1)、および0.2部のプロセクスル(Procexl)をそれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、それに水を、溶液が100部に達するまで加え、反応性プリント染料水性組成物を得る。
【0036】
[実施例14]
3.2部の化合物(I-13)、12.8部の化合物(I-14)、および60部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部の化合物(II-1)、1部の尿素、および0.2部のProcexlをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、それに水を、溶液が100部に達するまで加え、反応性プリント染料水性組成物を得る。
【0037】
[比較例1]
100部の化合物(I-1)および100部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部のリン酸二ナトリウムおよび20部のDemol RNをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0038】
[比較例2]
50部の化合物(I-13)、50部の化合物(I-14)、および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。精製後、2部のリン酸二ナトリウム、10部のDemol RN、および30部の芒硝をそれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0039】
[比較例3]
100部の化合物(I-4)および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、20部のDemol RNをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0040】
[比較例4]
100部の化合物(I-4)および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部のリン酸二ナトリウムおよび20部のDemol RNをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0041】
[比較例5]
100部の化合物(I-4)および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部のN,N-ジエチルアニリンスルフォン酸(DEAS)、および20部のDemol RNをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0042】
[比較例6]
100部の化合物(I-4)および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次いで、2部のN-モルフォリノールプロパンスルフォン酸(MOPS)をこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0043】
[比較例7]
50部の化合物(I-1)、50部の化合物(I-2)、および300部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節し、次に、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0044】
[比較例8]
3.2部の化合物(I-13)、2.8部の化合物(I-14)、および60部の水を十分に混ぜ合わせ、次いで、pH値を5.5から8.5の範囲に調整する。逆浸透によって、塩が0.5重量%未満となるように調節する。次に、0.2部のProcexlをこれに加え、次いで、攪拌し、pH値を6.0から8.5の範囲に調整する。最後に、この溶液をスプレイ乾燥させて染料組成物を得る。
【0045】
[比較例9]
化合物(II-1)の代わりにN,N-ジエチルアニリンスルフォン酸(DEAS)を用いたことを除いては、実施例13に記載される方法にしたがって本比較例の染料組成物を調製する。
【0046】
[比較例10]
化合物(II-1)の代わりにN-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジンエタンスルフォン酸(HEPES)を用いたことを除いては、実施例13に記載される方法にしたがって本比較例の染料組成物を調製する。
【0047】
[比較例11から13]
比較例11では化合物(II-1)を加えないこと、比較例12では化合物(II-1)の代わりにDEASを用いたこと、比較例13では化合物(II-1)の代わりにHEPESを用いたことを除いては、実施例14に記載される方法にしたがってこれらの比較例の染料組成物を調製する。
【0048】
試験結果
A. 染料組成物
上述の実施例および比較例による染料組成物について、2%の、本発明による染料組成物、および、2%のリン酸二ナトリウム(業者から購入)の添加後、高温におけるスプレイ乾燥、それに続く保存前後におけるpH値の変化を表1に記録する。さらに、0.5%の、本発明による染料組成物、および、0.5%のリン酸二ナトリウム(業者から購入)添加の場合の結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

(1) ΔpHは、試験前後のpH値の差を意味する。
(2) |ΔpH|は小さければ小さいほどよい。
【0049】
B. スクリーンプリント
50-100部の尿素、10-20部の還元抑制剤、10-30部の炭酸水素ナトリウム、60部のアルギン酸ナトリウム、または400-600部の増粘剤(4-12%のアルギン酸ナトリウムを含む)、および温水を、合計1000部として混ぜ合わせ、補助ペーストを得る。3部のC.I.反応性オレンジ13を、97部の補助ペースト中に拡散させ、次いで速やかに攪拌する。45度、100メッシュの斜文網版を、マーセル処理した木綿綾織物に載せ、次いで、その上に、カラーペーストをプリンターを介して塗布する。次に、この編地を、オーブンにて、100℃で5分乾燥させる。次に、この乾燥編地を、スチーマーにおいて102-105℃の飽和蒸気によって常圧で5-15分スチーム処理する。最後に、この乾燥編地を、冷水、沸騰水で10分、沸騰する非イオン洗剤で10分、および冷水で1回から2回洗浄し、次いで乾燥する。それとは別に、乾燥のために、乾燥加熱定着を使用することも可能である。
【0050】
カラー試験
前述の乾燥編地の各パラメータおよび相対的強度は、ICS GAIN分光光度計、CIE (Commission International del'Eclairage 国際照明委員会) L*a*b* and CMC 2.00:1カラー試験システムD65標準光源登載、によって測定する。本発明および比較例の染料組成物による結果を表3に示す。冷却保存で保存された染料によって得られる染め編地を標準として用いる。
【表3】

◎:優れた可溶性(水を加え、次いで僅かな攪拌後に溶解させることが可能)
○:良好な可溶性(水を加え、次いで攪拌後に溶解させることが可能)
△:受容可能な可溶性(その速度は比較的速く、それを溶解するのに、長期の攪拌が必要とされる)
△Str:試験前後の強度の差(マイナス符号の後の数字は小さければ小さいほどよい。なぜなら、それは、強度劣化がより少ないことを表すものであるから)
【0051】
C. 保存安定性試験
実施例および比較例による染料組成物を、耐候試験器の中に設置する。各特性について高温における1週間保存後の変化を観察するために、温度を60℃に設定する。結果を表4に示す。さらに、実施例および比較例による染料組成物の各特性の変化を観察するために、温度を、-10℃から50℃・2ヶ月間に周期変化させる。
【表4】

(1) ΔpHは、試験前後のpH値の差(|ΔpH|は小さければ小さいほどよい)。
(2) 陰イオンの増加量:この数値は小さければ小さいほどよい(これは、反応基の加水分解がより低いことを表す)。
(3) ΔStr:マイナス符号の後の数字は小さければ小さいほどよい(これは、強度劣化がより低いことを表す)。
【表5】

【0052】
これまで本発明をその好ましい実施態様に関連して説明してきたわけであるが、他にも多くの可能な改変および変異態様を、下記に請求する本発明の特許範囲から逸脱することなく実行可能であることを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性プリント染料組成物であって:
(a)少なくとも一つの反応性染料を45から99.85重量部;
(b)有機バッファーを0.05から10重量部;および、
(c)芒硝(硫酸ナトリウム)または分散剤を0.1から50重量部、
含む組成物。
【請求項2】
前記反応性プリント染料組成物において、成分(a)の量が、45重量%から99.8重量%の範囲にあり、成分(b)の量が、0.1重量%から5重量%の範囲にあり、成分(c)の量が、0.1重量%から50重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記反応性プリント染料組成物において、成分(a)の量が、47重量%から99.7重量%の範囲にあり、成分(b)の量が、0.2重量%から3重量%の範囲にあり、成分(c)の量が、0.1重量%から50重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記反応性プリント染料組成物において、成分(a)の量が、47重量%から90重量%の範囲にあり、成分(b)の量が、0.2重量%から3重量%の範囲にあり、成分(c)の量が、9.8重量%から50重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記反応性プリント染料組成物において、成分(a)が、下式(I-1)から(I-15):
【化1】




の内のいずれか一つ、その組み合わせ、またはその塩として示される反応性染料であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記反応性プリント染料組成物において、成分(a)の反応性染料が、C.I.反応性レッド3:1、C.I.反応性レッド31、C.I.反応性レッド33、C.I.反応性レッド24、C.I.反応性レッド45、C.I.反応性レッド218、C.I.反応性バイオレット5、C.I.反応性イェロー2、C.I.反応性イェロー18、C.I.反応性イェロー33、C.I.反応性イェロー85、C.I.反応性イェロー95、C.I.反応性ブルー15、C.I.反応性ブルー5、C.I.反応性ブルー49、C.I.反応性ブルー71、C.I.反応性ブルー176、C.I.反応性オレンジ5、C.I.反応性オレンジ12、C.I.反応性オレンジ13、C.I.反応性オレンジ99、C.I.反応性グリーン19、C.I.反応性ブラウン17、C.I.反応性ブラック8、C.I.反応性ブラック5、およびそれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記反応性プリント染料組成物において、成分(b)が、下式(II-1):
【化2】

またはその塩として示される有機バッファーであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(a) 少なくとも一つの反応性染料を、1から50重量部の量;
(b) 有機バッファーを、0.05から10重量部の量;および、
(c) 水を40から98.95重量部の量、
含む、反応性プリント染料水性組成物。
【請求項9】
前記反応性プリント染料水性組成物において、成分(a)の量が、3重量%から45重量%の範囲にあり、成分(b)の量が、0.1重量%から8重量%の範囲にあり、成分(c)の量が47重量%から96.9重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項8に記載の水性組成物。
【請求項10】
前記反応性プリント染料水性組成物において、成分(a)の量が、3重量%から45重量%の範囲にあり、成分(b)の量が、0.2重量%から8重量%の範囲にあり、成分(c)の量が47重量%から96.8重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項9に記載の水性組成物。
【請求項11】
前記反応性プリント染料水性組成物において、成分(a)の量が、5重量%から40重量%の範囲にあり、成分(b)の量が、0.2重量%から8重量%の範囲にあり、成分(c)の量が52重量%から94.8重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載の水性組成物。
【請求項12】
前記反応性プリント染料水性組成物において、成分(a)が、下式(I-1)から(I-15):
【化3】




の内のいずれか一つ、その組み合わせ、またはその塩として示される反応性染料であることを特徴とする、請求項8に記載の水性組成物。
【請求項13】
前記反応性プリント染料水性組成物において、成分(a)の反応性染料が、C.I.反応性レッド3:1、C.I.反応性レッド31、C.I.反応性レッド33、C.I.反応性レッド24、C.I.反応性レッド45、C.I.反応性レッド218、C.I.反応性バイオレット5、C.I.反応性イェロー2、C.I.反応性イェロー18、C.I.反応性イェロー33、C.I.反応性イェロー85、C.I.反応性イェロー95、C.I.反応性ブルー15、C.I.反応性ブルー5、C.I.反応性ブルー49、C.I.反応性ブルー71、C.I.反応性ブルー176、C.I.反応性オレンジ5、C.I.反応性オレンジ12、C.I.反応性オレンジ13、C.I.反応性オレンジ99、C.I.反応性グリーン19、C.I.反応性ブラウン17、C.I.反応性ブラック8、またはC.I.反応性ブラック5、およびそれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の水性組成物。
【請求項14】
前記反応性プリント染料水性組成物において、成分(b)が、下式(II-1):
【化4】

またはその塩として示される有機バッファーであることを特徴とする、請求項8に記載の水性組成物。

【公開番号】特開2011−80038(P2011−80038A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−184959(P2010−184959)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(598062332)エバーライト ユーエスエー、インク (13)