説明

反応性ポリウレタンビーズ及びその製造方法

【課題】不飽和結合を有する樹脂と反応可能な反応性ポリウレタンビーズ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の反応性ポリウレタンビーズの製造方法は、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを含有するビーズ原材料を、懸濁安定剤を含む水中に粒子状に分散し、加熱して、ポリウレタンビーズ懸濁液を調製する工程と、該ポリウレタンビーズ懸濁液を固液分離し、洗浄し、乾燥する工程とを有する反応性ポリウレタンビーズの製造方法であって、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーが、3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーに(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルを付加反応させて得たものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ポリウレタンビーズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、プラスチック、接着剤、化粧品等のフィラーとして、ポリウレタンビーズを用いることがある。例えば、塗料のフィラーとしてポリウレタンビーズを用いた場合には、ポリウレタンビーズは艶消し剤、触感改良剤、意匠性付与着色剤などとして機能して、塗膜に柔らか味やソフト感等を与えることができる。
【0003】
ポリウレタンビーズの製造方法としては、円筒型攪拌槽を備えた攪拌機を用いて、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを含有する有機相を、水と分散剤とを含有する水相中に粒子状に分散させて反応させる方法や(特許文献1参照)、懸濁安定剤を含む水中にポリイソシアネートプレポリマーを粒子状に分散させて反応させる方法などが知られている(特許文献2参照)。
攪拌機を用いる方法によると、分散剤の量、円筒型撹拌翼の回転速度等を調整することにより、また、懸濁安定剤を用いる方法では、懸濁安定剤の種類、添加量等を調整することにより、ポリウレタンビーズの粒子径を調整することができる。従って、これらの方法によれば、用途に応じて、適切な粒子径を持ったポリウレタンビーズを製造することができる。
【0004】
しかしながら、従来のポリウレタンビーズでは、塗料や成型材料等にフィラーとして添加しても、擦れなどの外部からの力によって脱落することがあった。また、ポリウレタンビーズを添加しても、目的の効果を充分に発揮しないことがあった。これは、従来のポリウレタンビーズでは、マトリックス樹脂と化学的に結合していないため、あるいは、マトリックス樹脂とポリウレタンビーズとの界面の接着力が不充分であるためと考えられる。そこで、マトリックス樹脂と化学的に結合でき、また、界面の接着力を向上させることができるポリウレタンビーズを用いることが考えられる。例えば、特許文献3には、水酸基を有する反応性ポリウレタンポリ尿素架橋粒子が開示されている。
【特許文献1】特開2004−107476号公報
【特許文献2】特許第3100977号公報
【特許文献3】特許第3102442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の反応性ポリウレタンポリ尿素架橋粒子は、不飽和結合を有する樹脂と反応するものではないから、マトリックス樹脂として不飽和結合を有する樹脂を用いた場合には、化学的に結合することは困難であった。
本発明は、不飽和結合を有する樹脂と反応可能な反応性ポリウレタンビーズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を包含する。
[1] ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを含有するビーズ原材料を、懸濁安定剤を含む水中に粒子状に分散し、加熱して、ポリウレタンビーズ懸濁液を調製する工程と、該ポリウレタンビーズ懸濁液を固液分離し、洗浄し、乾燥する工程とを有する反応性ポリウレタンビーズの製造方法であって、
ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーが、3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーに(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルを付加反応させて得たものであることを特徴とする反応性ポリウレタンビーズの製造方法。
[2] ビーズ原材料が、ポリオール成分をさらに含有することを特徴とする[1]に記載の反応性ポリウレタンビーズの製造方法。
[3] (メタ)アクリロキシ基を有する反応性ポリウレタンからなることを特徴とする反応性ポリウレタンビーズ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の反応性ポリウレタンビーズの製造方法によれば、不飽和結合を有する樹脂と反応可能な反応性ポリウレタンビーズを製造できる。
本発明の反応性ポリウレタンビーズを、不飽和結合を有するマトリックス樹脂にフィラーとして添加した際には、ポリウレタンビーズとマトリックス樹脂とが反応して一体化するため、ポリウレタンビーズが脱落しにくくなる。また、塗膜の構造が安定化するため、耐スクラッチ性、硬化時の収縮防止、応力緩和等の効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の反応性ポリウレタンビーズの製造方法は、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを含有するビーズ原材料を、懸濁安定剤を含む水中に粒子状に分散し、加熱して、ポリウレタンビーズ懸濁液(以下、懸濁液と略す。)を調製する工程(以下、懸濁重合工程という。)と、その後、該懸濁液を固液分離し、洗浄し、乾燥する工程(以下、後処理工程という。)とを有する。
【0009】
(懸濁重合工程)
[ビーズ原材料]
ビーズ原材料に含まれるビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーは、3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーに(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルを付加反応させて得たものである。
【0010】
本発明でいうポリイソシアネートプレポリマーとは、イソシアネートを用いて得られ、末端がイソシアネート基である化合物、または、イソシアネートのことである。
3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーとしては、特に制限はないが、一般的に使用されるジイソシアネートを3量体化したイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ビュウレット型ポリイソシアネートなどが挙げられる。
ジイソシアネートのタイプとしては、黄変タイプ、無黄変タイプ、難黄変タイプのいずれでもよく、目的物性に応じて選択される。具体的には、脂肪族系ジイソシアネート化合物、芳香族系ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートを3量体化したイソシアヌレート型ポリイソシアネートが挙げられる。
【0011】
また、3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーとして、一般的な3官能以上のイソシアネートを利用してもよく、例えば、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等が挙げられる。
【0012】
本発明でいう(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルとは、アクリル酸ヒドロキシエステル及びメタクリル酸ヒドロキシエステルの一方または両方のことである。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルとしては、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどを使用することもできる。
【0013】
3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーに(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルを付加反応させる際には、触媒を添加してもよい。
触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。触媒の添加量は、反応の際に仕込まれる全成分の合計の質量に対して0.1〜5000ppmであることが好ましく、1〜1000ppmであることがより好ましい。触媒の添加量が0.1ppm以上であれば、付加反応を促進させることができ、5000ppm以下であれば、後の懸濁重合にて容易に重合反応を制御できるため、粒子径を容易に調整できる。
【0014】
また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル由来のビニル基の開裂を防ぐために、ジブチルヒドロキシトルエン等の重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の添加量は、反応の際に仕込まれる全成分の合計の質量に対して10〜10000ppmであることが好ましく、50〜5000ppmであることがより好ましい。重合禁止剤の添加量が10ppm以上であれば、ビニル基の開裂を充分に抑制できるため、得られるビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー中のビニル基量を充分に確保できる。一方、重合禁止剤添加量が10000ppm以下であれば、得られた反応性ポリウレタンビーズを硬化性樹脂に添加した際に、硬化性樹脂の硬化阻害を防止できる。
【0015】
3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルとの割合は、イソシアネート当量に対する水酸基当量比が1/1000〜2/3になる割合であることが好ましい。イソシアネート当量に対する水酸基当量比が1/1000より小さい割合であると、導入されるビニル基の量が少なくなる傾向にあり、2/3を超える割合であると、イソシアネート基を消失してウレタン化しない分子が多くなる傾向にある。
【0016】
ビーズ原材料としては、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーの他に、ビニル基を有さないポリイソシアネートプレポリマーが含まれていてもよい。ビニル基を有さないポリイソシアネートプレポリマーをビーズ原材料に含ませることにより、得られる反応性ポリウレタンビーズのビニル基含有量を用途に応じて調節することができ、反応性を調整することができる。
【0017】
また、ビーズ原材料として、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーの他に、原材料中のビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーのイソシアネート当量以下のポリオール成分が適宜含まれてもよい。
ビーズ原材料にポリオール成分が含まれると、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーにポリオール成分が付加するため、得られる反応性ポリウレタンビーズの硬さを調整することができる。ポリオール成分が少ないと硬い粒子が得られ、ポリオール成分が多いと、軟らかい粒子が得られやすい。
ポリオール成分としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリルポリオール系等のいずれでもよい。またその併用も可能である。
【0018】
また、ビーズ原材料には、染料、顔料などの着色剤が含まれてもよい。ただし、ここで用いる着色剤はウレタン化反応を阻害しないものである。
着色剤が含まれると、着色した反応性ポリウレタンビーズを得ることができる。着色した反応性ポリウレタンビーズを塗料に添加すれば、ビロード調やスウェード調などの意匠性を有する塗膜が得られる。
また、懸濁液の粘度が高く、取り扱いにくくなる場合には、ビーズ原材料に希釈溶剤を配合することが好ましい。希釈溶剤としては、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを溶解し、重合反応を阻害しないものであればよい。
また、得られる反応性ポリウレタンビーズの諸物性を改良するために、ビーズ原材料に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属粉、香料、触媒等が含まれてもよい。
【0019】
[懸濁安定剤を含む水]
上述したビーズ原材料は、懸濁安定剤を含む水に添加される。懸濁安定剤を含む水は、水に懸濁安定剤を溶解または分散させることによって調製される。
【0020】
懸濁安定剤としては、懸濁重合で一般に用いられているものであれば特に制限されず、有機系、無機系を問わない。懸濁安定剤の具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂,ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド系、第三燐酸塩類などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、懸濁安定剤に界面活性剤を併用してもよい。懸濁安定剤に併用する界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0021】
懸濁安定剤の添加量はビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー100質量部に対して1〜30質量部が好ましい。懸濁安定剤の添加量が前記範囲であれば、反応性ポリウレタンビーズの平均粒子径がフィラーとして適切な1〜500μmの範囲になりやすい。
なお、懸濁安定剤の量が30質量部より多くなると、平均粒子径が1μmより小さくなる傾向があり、且つ懸濁液の粘度が上がり、固液分離や洗浄が困難になる傾向にある。また、懸濁安定剤の量が1質量部より少ないと粒子同士の凝集がおこりやすく、且つ粒径が500μmより大きくなる傾向にある。
【0022】
懸濁安定剤を溶解または分散させる水の量は、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー100質量部に対して水30〜1000質量部であることが好ましい。水の量が30質量部以上であれば、ビーズ原材料を安定に分散させることができ、1000質量部以下であれば、一回の懸濁重合あたりの反応性ポリウレタンビーズの製造量を充分に確保することができる。
【0023】
[懸濁重合条件]
ビーズ原材料を、懸濁安定剤を含む水中に添加した後、粒子状に分散するためには、通常、攪拌する方法が採られる。その際の攪拌速度は、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー分散粒子が所定の粒子径になるように適宜調節することが好ましい。
ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー分散粒子の粒子径の調整が終了した後、温度30〜90℃に加熱し、1〜6時間懸濁重合させて懸濁液を得る。
ビーズ原材料にポリオール成分が含まれない場合には、前記懸濁重合にて、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー分散粒子が水と反応して、ポリウレタンビーズを形成する。
ビーズ原材料にポリオール成分が含まれる場合には、前記懸濁重合にて、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマー分散粒子が水及びポリオール成分と反応して、ポリウレタンビーズを形成する。
【0024】
(後処理工程)
後処理工程における固液分離では、例えば、ろ過や遠心分離などが適用される。
洗浄では、分離回収された反応性ポリウレタンビーズを、さらに水等で洗浄して、ポリウレタンビーズに残留している懸濁安定剤を取り除く。
乾燥では、例えば、加熱乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法、赤外線乾燥法などが適用される。例えば、加熱乾燥法を適用した場合には、乾燥温度は40〜110℃とすることが好ましく、乾燥時間は2〜40時間とすることが好ましい。
【0025】
懸濁液を固液分離、洗浄する際は、懸濁安定剤を分解するセルロース分解酵素、ポリビニルアルコール分解酵素などの酵素、次亜塩素酸塩などの試薬等で懸濁液を処理してもよい。前記試薬で処理することにより、懸濁液の粘度を下げて固液分離作業を容易にでき、また、洗浄もしやすくなる。
【0026】
(ポリウレタンビーズ)
本発明のポリウレタンビーズの製造方法によると、(メタ)アクリロキシ基を有する反応性ポリウレタンからなる反応性ポリウレタンビーズを得ることができる。
反応性ポリウレタンビーズの平均粒子径は使用する目的に応じて適宜選択されるが、フィラーとして適切な1〜500μmであることが好ましい。
反応性ポリウレタンビーズの平均粒子径は、懸濁安定剤の量を調節することにより簡便に調整できる。具体的には、懸濁安定剤の量を多くする程、平均粒子径が小さくなり、少なくする程、平均粒子径が大きくなる。
反応性ポリウレタンビーズのヨウ素価は0.2以上であることが好ましい。ヨウ素価が0.2以上であれば、マトリックス樹脂と充分に結合できる。
【0027】
本発明の反応性ポリウレタンビーズは、(メタ)アクリロキシ基を有しているため、不飽和結合を有する樹脂と反応できる。本発明の反応性ポリウレタンビーズと不飽和結合を有する樹脂とが反応すると、ポリウレタンビーズと樹脂とが強固に結合する。そのため、ポリウレタンビーズの脱落を防止できる。また、樹脂とビーズ界面の構造が安定化するため、耐スクラッチ性、硬化時の収縮防止、応力緩和によるクラック抑制及び破壊防止を図ることができる。
【0028】
本発明の反応性ポリウレタンビーズは、例えば、エネルギー線硬化型樹脂からなる塗料組成物、成型材料組成物、シール剤組成物等にフィラーとして添加されて、塗料、成型材料、シール剤としての性能を向上させることができる。
【実施例】
【0029】
<合成例1>
窒素ガスで充分に置換し、乾燥させた2Lオートクレーブに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアネート基含有量22.0質量%)1000gと2−ヒドロキシプロピルアクリレート227g、ジブチル錫ジラウレート0.012g、ジブチルヒドロキシトルエン0.614gを仕込んだ。さらに窒素ガスにて前記オートクレーブ内を充分に置換した後、密閉し、600℃で12時間攪拌・混合して反応させた。その後、トルエンを加えて、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを含み、不揮発分80質量%のトルエン溶液である合成物(I)を得た。合成物(I)は、イソシアネート含有量9.6質量%で、粘度430mPa・s(25℃)であった。
【0030】
<合成例2>
窒素ガスで充分に置換し、乾燥させた2Lオートクレーブに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアネート基含有量22.0質量%)1000gと2−ヒドロキシプロピルメタクリレート251g、ジブチル錫ジラウレート0.012g、ジブチルヒドロキシトルエン0.614gを仕込んだ。さらに窒素ガスにて前記オートクレーブ内を充分に置換した後、密閉し、60℃で12時間攪拌・混合して反応させた。その後、トルエンを加えて、ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを含み、不揮発分80質量%のトルエン溶液である合成物(II)を得た。合成物(II)は、イソシアネート含有量9.4質量%で、粘度420mPa・s(25℃)であった。
【0031】
<実施例1>
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水800gを仕込み、この中にメトローズ90SH−100(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業株式会社製)32gを溶解して分散媒を調製した。該分散媒を600rpmで攪拌しながら、合成物(I)475g、ポリオールとしてPTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、水酸基価112mgKOH/g、三菱化学株式会社製)20gの混合物を加え、懸濁液を調製した。次いで、攪拌継続下に懸濁液を60℃に昇温し、4時間反応させた後、室温まで冷却して、懸濁液を得た。この懸濁液を固液分離し、水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、平均粒子径10μmのポリウレタンビーズを得た。
このポリウレタンビーズについて、赤外吸収スペクトルを測定したところ、ビニル基に由来する812cm−1付近の吸収ピークを示した。また、ヨウ素価を測定したところ14.4であった。
【0032】
<実施例2>
合成物(I)の代わりに合成物(II)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、平均粒子径10μmのポリウレタンビーズを得た。
このポリウレタンビーズについて、赤外吸収スペクトルを測定したところ、ビニル基に由来する812cm−1付近の吸収ピークを示した。また、ヨウ素価を測定したところ14.2であった。
【0033】
<実施例3>
メトローズ90SH−100の量を24gとした以外は実施例1と同様の方法で、平均粒子径20μmのポリウレタンビーズを得た。
このポリウレタンビーズについて、赤外吸収スペクトルを測定したところ、ビニル基に由来する812cm−1付近の吸収ピークを示した。また、ヨウ素価を測定したところ14.0であった。
【0034】
<実施例4>
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水800gを仕込み、この中にメトローズ90SH−100を32g溶解して分散媒を調製した。該分散媒を600rpmで攪拌しながら、合成物(I)250gと、ポリオールとしてPTMG1000を20g、ビニル基を有しないポリイソシアネートプレポリマーとしてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアネート基含有量22.0質量%)180g、希釈溶剤としてトルエン45gの混合物を加えて、懸濁液を調製した。攪拌継続下に懸濁液を60℃に昇温し、4時間反応させた後、室温まで冷却して懸濁液を得た。この懸濁液を固液分離し、水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、平均粒子径10μmのポリウレタンビーズを得た。
このポリウレタンビーズについて、赤外吸収スペクトルを測定したところ、ビニル基に由来する812cm−1付近の吸収ピークを示した。また、ヨウ素価を測定したところ7.6であった。
【0035】
<実施例5>
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水800gを仕込み、この中にメトローズ90SH−100を32g溶解して分散媒を調製した。該分散媒を600rpmで攪拌しながら、合成物(I)300gと、ポリオール成分としてプラクセル312(トリメチロールプロパン・カプロラクトン付加物、水酸基価135mgKOH/g、ダイセル化学工業株式会社製)160g、希釈溶剤としてトルエン40gの混合物を加え、懸濁液を調製した。攪拌継続下に懸濁液を60℃に昇温し、4時聞反応させた後、室温まで冷却して懸濁液を得た。この懸濁液を固液分離し、水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、平均粒子径10μmのポリウレタンビーズを得た。
このポリウレタンビーズについて、赤外吸収スペクトルを測定したところ、ビニル基に由来する812cm−1付近の吸収ピークを示した。また、ヨウ素価を測定したところ9.1であった。
また、ポリオール成分としてプラクセル312を用いた実施例5のポリウレタンビーズは、実施例1〜4で得たものよりもソフトな感触を有していた。
【0036】
<実施例6>
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水800gを仕込み、この中にメトローズ90SH−100を32g溶解して分散媒を調製した。該分散媒を600rpmで攪拌しながら、合成物(I)425gと、ポリオール成分としてPTMG1000を20g、黒色顔料としてレジノブラックUD403(レジノカラー工業株式会社製)40g、希釈溶剤としてトルエン30gの混合物を加え、懸濁液を調製した。攪拌継続下に懸濁液を60℃に昇温し、4時間反応させた後、室温まで冷却して懸濁液を得た。この懸濁液を固液分離し、水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、平均粒子径10μmの黒色ポリウレタンビーズを得た。
このポリウレタンビーズについて、赤外吸収スペクトルを測定したところ、ビニル基に由来する812cm−1付近の吸収ピークを示した。また、ヨウ素価を測定したところ12.9であった。
【0037】
実施例1〜6の製造方法で得たポリウレタンビーズは、赤外吸収スペクトル及びヨウ素価の測定より、ビニル基を有していることが判明した。このようなポリウレタンビーズは、不飽和結合を有する樹脂と反応可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーを含有するビーズ原材料を、懸濁安定剤を含む水中に粒子状に分散し、加熱して、ポリウレタンビーズ懸濁液を調製する工程と、該ポリウレタンビーズ懸濁液を固液分離し、洗浄し、乾燥する工程とを有する反応性ポリウレタンビーズの製造方法であって、
ビニル基含有ポリイソシアネートプレポリマーが、3官能以上のポリイソシアネートプレポリマーに(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルを付加反応させて得たものであることを特徴とする反応性ポリウレタンビーズの製造方法。
【請求項2】
ビーズ原材料が、ポリオール成分をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の反応性ポリウレタンビーズの製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリロキシ基を有する反応性ポリウレタンからなることを特徴とする反応性ポリウレタンビーズ。

【公開番号】特開2008−280373(P2008−280373A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123387(P2007−123387)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(390028048)根上工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】