説明

反応空間の電気的処理のための方法及び装置

本発明は、電荷を蓄積するための少なくとも1つの電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための方法に関する。本発明によれば、この方法は、第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを反応空間に印加すると同時に第2の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電することを含む。さらに、本発明は、少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための装置(1)であって、電荷を蓄積するための少なくとも2つの電荷蓄積ユニット(10、11)、電荷蓄積ユニット(10、11)を充電するための少なくとも1つの電源ユニット(12)、及び/又は、電荷蓄積ユニット(10、11)を部分的に放電するための少なくとも1つの放電装置を備える装置に関する。本発明によれば、電荷蓄積ユニット(10、11)のうちの少なくとも2つが、いつでも放電可能な共通の蓄積モジュールを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷を蓄積するための少なくとも1つの電荷蓄積ユニットを放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための方法に関する。本発明は、さらに、少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための装置であって、電荷を蓄積するための少なくとも2つの電荷蓄積ユニット、電荷蓄積ユニットを充電するための少なくとも1つの電源ユニット、及び/又は、電荷蓄積ユニットを部分的に放電するための少なくとも1つの放電装置を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA、RNA、又はタンパク質のような生物活性分子の生細胞への導入は、これらの分子の生物学的機能を調べるための重要な手段の代表例である。外来分子を細胞に導入するための好適な方法として、電気穿孔法が挙げられ、この方法は、化学的な方法とは対照的に、他の生物活性分子の同時輸送に頼らない。電気穿孔法では、外来分子は、瞬間的な電流フローにより、細胞又は細胞培地に適合した緩衝溶液から細胞に導入され、そのために、電圧パルス又は電界及びそれによって生じる電流フローの効果により、細胞膜を外来分子が透過できるようにする。細胞懸濁液を、電圧印加用の2つの対向する平行電極を側壁に備える検体空間を有するいわゆるキュベットすなわち細い開放容器に入れることがよくある。細胞膜に瞬間的にあけられた「穴」により、生物活性分子は、まず、細胞質に到達し、細胞質内で適宜その調査機能を発揮することができ、その後、ある一定の条件であれば細胞の核にも到達する。強い電界の瞬間的な印加すなわち瞬間的な高電流密度の電圧パルスにより、細胞、細胞誘導体、細胞内粒子、及び/又は、小胞を融合させることがさらに可能である。このいわゆる電気融合法では、細胞を、例えば、不均一な交流電界によって、まず、密接に膜接触させる。次いで、電界パルスを印加すると、膜の一部が相互作用し始め、最終的に融合に至る。電気融合法に用いられる装置は、電気穿孔法に用いられる装置と同様であり得る。また、生細胞を電界によって刺激して性質を変化させるようにすることもある。
【0003】
生細胞の電気穿孔、電気融合、又は電気刺激、並びに、出発溶液を電界及び電流にさらすことが必要な用途のためのいくつかの反応空間を備えた容器は、とりわけ生化学及び製薬用途において、複数の出発溶液を同時に試験しなければならない場合に用いられる。その目的は、特にHT分析(HT=ハイスループット)のために、1つの容器において最大数の反応空間、例えば96又は384の反応空間を利用可能にすることである。これは、この場合には複数の検体を可能な限り短時間で試験するからである。この種の容器は、概して、多孔プレート、マイクロタイタープレート、又はマルチウェルである。通常、これらの容器は、2つの電極をそれぞれが備えたいくつかの反応空間からなり、2つの電極は反応空間内部の例えば細胞懸濁液の出発溶液と接触している。反応空間の2つの電極は、反応空間内部に電圧が印加されると電界を生じさせる。導電性物質があれば、異なる極性の周囲電極によって電界のほかに電流が生じる。異なる反応空間の同じ極性の電極、すなわち例えばすべての陰極及び/又はすべての陽極は、一体形成されているか、又は電気的に相互結合され、共通の電気接点を介して電圧源へ接続可能となっている。
【0004】
このようなマイクロタイタープレートを電気的に処理するとき、個々の反応空間に1つ又はいくつかの電圧パルスを印加するのにかかる時間が非常に長いという事に1つの問題がある。その理由は、特に反応槽を個別に処理するときに、非常に多くの電圧パルスを連続して放出しなければならず、そのことにより、特に電気パルスの高い電圧値及び/又はエネルギーのために、使用される電荷蓄積ユニットつまりコンデンサの容量及び充電時間に非常に高い要求が課されるからである。
【0005】
反応空間にいくつかの電圧パルスを印加するための方法及び装置が知られている。例えば、米国特許第6,150,148号(特許文献1)には、いくつかの電圧パルスを発生させて反応空間に進入させる電気穿孔法のための方法及び装置が開示されている。この装置は、2つのコンデンサをそれぞれ分圧器と1つのトランジスタとを介して充電することができる電圧源を備える。コンデンサは、いくつかの連続した電圧パルス、例えば、比較的高い電圧振幅を有する少なくとも1つの電圧パルスと、より低い電圧振幅を有する少なくとも1つの電圧パルスとを反応空間に印加できるように、制御可能なスイッチを介して放電される。しかし、この装置には、このような電圧パルスシーケンスをいくつかの反応空間に連続して印加するとき、各反応空間を処理するたびに又は少なくともほんの少数の反応空間を処理するたびに上記2つのコンデンサを再充電しなければならず、そのために休止期間が何度も繰り返し発生し、全体としてプロセス所要時間を長引かせるという欠点がある。
【0006】
さらに、米国特許第6,010,613号(特許文献2)には、電圧パルスのシーケンスを発生させるための方法及び装置が開示されている。ここでは、1つのパルスシーケンスを発生させるのに十分な容量を有する単一のコンデンサをほぼ完全に放電することによって電圧パルスを発生させる。次のパルス又は次のパルスシーケンスを発生させるためには、まず、コンデンサを所要の電圧振幅まで再充電しなければならない。多くの反応空間を処理する場合、このことにかかる時間が合計プロセス時間に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,150,148号
【特許文献2】米国特許第6,010,613号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、最小限の時間内で反応空間にそれぞれ1つ又はいくつかの電圧パルスを印加することができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、電荷を蓄積するための少なくとも1つの電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための方法であって、
a)第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加すると同時に第2の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
b)上記第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを同じ反応空間又はさらなる反応空間に印加すると同時に、工程a)で放電された上記第1の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
を含む方法によって達成される。
【0010】
本発明に係る方法を用いれば、第1又は第2の電荷蓄積ユニットを並行して又は同時に少なくとも部分的に充電及び放電することにより、連続して行われる電気的処理の間で電荷蓄積ユニットの充電に時間が無駄にされることがなく、その結果、合計プロセス時間が著しく削減される。1つの電荷蓄積ユニットの放電と、それと同時の別の電荷蓄積ユニットの充電又は部分的な放電とを周期的に行うことにより、常に少なくとも1つの充電済みの電荷蓄積ユニットを次の放電動作に利用可能であり、そのため、電荷蓄積ユニットの充電又は部分的な放電が放電動作よりも短いとすると、2つの放電動作の間で電荷蓄積ユニットの充電又は部分的な放電のために追加の時間が必要とされない。従って、本発明に係る方法により、多数のパルスが用いられる用途であろうといくつかの反応空間に連続してかつ/又は同時に電圧パルスを印加しなければならない用途であろうと、非常に高速の電圧パルスシーケンスを達成することができる。特にハイスループットプロセスの場合、これによりプロセス時間を著しく削減することができる。
【0011】
本発明において「少なくとも部分的に放電する」とは、電圧パルスの放出時に各電荷蓄積ユニットを必ずしも完全に放電する必要はなく、電圧パルスに必要な電圧差を放出するだけであることを意味する。すなわち、放電後の電荷蓄積ユニットに残留電圧が残っていてもよい。
【0012】
本発明において「同時の」とは、充電動作及び放電動作が少なくとも部分的に時間的に一致して進行することを意味する。すなわち、これら2つの動作を時間的に一致して進行させてもよく、互いに時間をずらしてもよく、後者の場合には、ある動作が依然として又は既に進行している一方で、他方の動作は既に終了しているか又はまだ開始されていないということになる。電圧パルス放出の際の少なくとも部分的な放電動作は非常に短時間の事象になることがあるため、その場合、各電荷蓄積ユニットは、当該放電動作の開始前及び/又は終了後の「同時の」充電動作又は部分的な放電動作の間、より長く続くこの充電動作又は部分的な放電動作が完了するまで停止していることになる。
【0013】
本発明において「充電又は部分的に放電する」とは、電荷蓄積ユニットを、次のつまり後続の電圧パルスを放出する準備ができた状態にすることを意味する。このことは、電荷蓄積ユニットにおける電圧レベルを次の電圧パルスに必要な電圧に合わせることを意味する。このことは、一方では、電荷蓄積ユニットを次の電圧パルスに必要な電圧まで充電することによって、他方では、次の電圧パルスに対して予測される電圧まで部分的に放電することによって、行われ得る。2番目の場合には、放電装置、例えば、電気負荷、好ましくは放電抵抗によって電荷蓄積ユニットを部分的に放電することにより、電荷蓄積ユニットにおける電圧レベルを次の反応空間のための新たなより低い電圧レベルに合わせる。
【0014】
プロセスの完了までの全工程が必要なだけ繰り返されると、かつ/又は、最後の工程の実施後にプロセスが完了すると、特に有利である。本発明に係る方法は数回繰り返されるのが好ましい。すなわち、例えば非常に多くの反応空間を連続して電気的に処理することを可能にする数サイクルのプロセス工程が行われ、そのことにより、処理対象の反応空間のすべてに少なくとも1つの電圧パルスが印加されるまではプロセスは完了しない。従って、例えば、本発明に係る方法を、マルチウェルプレート、好ましくは96ウェルプレート又は384ウェルプレートを用いたハイスループットプロセスにおいて問題なく採用することができる。
【0015】
本発明の有利な発展形態において、本方法は、
a)2つの第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも2つの反応空間に印加すると同時に2つの第2の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
b)前記2つの第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを同じ反応空間又はさらなる2つの反応空間に印加すると同時に、工程a)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
を含み得る。
【0016】
従って、本発明に係る方法を、いくつかの電圧パルスを単一の反応空間もしくはキュベットに印加するため、又はいくつかの反応空間を電気的に処理するために採用することができる。後者の場合は、電圧パルスを短時間に多くの反応空間に連続して印加し得、それにより、常に少なくとも2つの反応空間を同時に処理することができる。従って、本発明に係る方法を用いれば、本発明の有利な発展形態においては少なくとも2つの反応空間に同時に電圧パルスを印加することができるので、いくつかの反応空間を処理する速度が著しく上がる。
【0017】
本発明のさらなる有利な発展形態において、本方法は、
a)第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加する工程と、
b)前記第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つのさらなる電圧パルスを前記反応空間に印加すると同時に、さらなる第2の電荷蓄積ユニットと工程a)で放電された前記第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
c)工程a)で少なくとも部分的に放電され、工程b)で再充電又は部分的に放電された前記第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを別の反応空間又は同じ反応空間に印加する工程と、
d)工程b)で充電又は部分的に放電された前記さらなる第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つのさらなる電圧パルスを工程c)の前記反応空間に印加すると同時に、工程b)で少なくとも部分的に放電された前記第2の電荷蓄積ユニットと工程c)で少なくとも部分的に放電された前記第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
を含み得る。
【0018】
本発明に係るこの解決手段は、特に、比較的高い電圧振幅及び/又は比較的低いエネルギーを有する短い電圧パルスと、より低い電圧振幅及び/又はより高いエネルギーを有するより長い電圧パルスとからなる電圧パルスを発生させる場合に有利である。このようなデュアル電圧パルスを比較的短時間にいくつかの反応空間に連続して印加する場合、例えば、ハイスループットプロセスにおいてマルチウェルプレートを用いる場合、長い方の電圧パルス用の単一のコンデンサを用いれば、個々の反応空間の処理間の時間間隔が比較的長くなる。これは、放電され、その後、再充電又は部分的に放電されたコンデンサを、まず、次の電圧パルスのために指定された電圧に合わせなければならず、このことに大量の電気エネルギーが必要となるからである。これに対して、本発明に係る方法を用いれば、常に2つの電荷蓄積ユニットのうちの一方が放電されている一方で、他方の電荷蓄積ユニットが充電又は部分的に放電されており、これにより、短時間に非常に多くの反応空間に電圧パルスを印加することが可能となる。低い方のエネルギー必要量のために第1の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電することは、時間を制約する要因とはならない。これは、2つの第2の電荷蓄積ユニットのうちの一方のより長く続く放電動作の間、第1の電荷蓄積ユニットを例えば再充電又は部分的に放電するからである。
【0019】
本発明に係る方法のさらなる特に有利な発展形態において、本方法は、
a)2つの第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも2つの反応空間にそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスを印加する工程と、
b)2つの第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって工程a)の前記2つの反応空間にそれぞれ少なくとも1つのさらなる電圧パルスを印加すると同時に、2つのさらなる第2の電荷蓄積ユニットと工程a)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
c)工程a)で少なくとも部分的に放電され、工程b)で再充電又は部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって同じ反応空間又は2つのさらなる反応空間にそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスを印加する工程と、
d)工程b)で充電又は部分的に放電された前記2つのさらなる第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって工程c)の前記2つの反応空間に少なくとも1つのさらなる電圧パルスを印加すると同時に、工程b)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第2の電荷蓄積ユニットと工程c)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
を含み得る。
【0020】
本発明に係るプロセスの開始時に、好ましくは少なくとも2つの第1の電荷蓄積ユニットがまず同時に又は連続して充電される。充電動作が終了すると、これら2つの第1の電荷蓄積ユニットは放電され、これにより、電圧パルス、好ましくは、比較的高い電圧振幅を有する短い電圧パルスが、少なくとも2つの反応空間にそれぞれ印加される。次いで、1つのさらなる電圧パルス、好ましくは、より低い電圧振幅を有するより長い電圧パルスが、短い休止時間の後で又は中断なしでこれら2つの反応空間にそれぞれ印加されるが、これらの電圧パルスは、第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって発生させる。これらの第2の電荷蓄積ユニットが放電されるのと同時に、少なくとも2つのさらなる第2の電荷蓄積ユニットと前記2つの第1の電荷蓄積ユニットとが充電又は部分的に放電されるので、充電動作又は放電動作によって合計プロセス時間が長引くことはなく、各電荷蓄積ユニットは、次の反応空間を処理しなければならないときに再び直ちに利用可能である。次いで、前記2つの第1の電荷蓄積ユニットを放電することによって、同じ反応空間又は2つのさらなる反応空間をそれぞれ電圧パルスで処理することができる。その後、先に充電又は部分的に放電された第2の電荷蓄積ユニットが再び少なくとも部分的に放電され、その一方で、これと時間的に並行して、先に放電された電荷蓄積ユニットが再充電又は部分的に放電される。前述の充電動作及び放電動作を必要なだけ繰り返すことができ、これにより、非常に多くの電圧パルスを比較的短時間に放出することが可能となる。このようにして、電圧パルス、特にデュアルパルスを、比較的短時間に複数の反応空間に印加することができる。
【0021】
本発明の有利な発展形態においては、プロセスの初めに工程a)に先立ってすべての電荷蓄積ユニットを充電することができ、これにより、必要に応じてすべての電荷蓄積ユニットを放電することが可能となる。あるいは、それぞれの電荷蓄積ユニットを放電直前に充電することができる。
【0022】
少なくとも2つの電荷蓄積ユニットがそれぞれ蓄積モジュールを形成し、使用時に常に電荷蓄積ユニットのうちの一方が少なくとも部分的に放電されるか又は放電の準備ができた状態にあり、その一方で、他方の電荷蓄積ユニットが充電又は部分的に放電され、そのために、蓄積モジュールが、次の電圧パルスのために合計で必要とされる電圧を準備ができた状態に保持し、ひいては少なくとも部分的に放電できれば、特に有利である。充電動作及び放電動作は、時間的に一致させて実施することもでき、時間を互いにずらすこともできる。
【0023】
本方法の有利な発展形態においては、第1の電荷蓄積ユニットの容量が少なくとも10μF、好ましくは少なくとも50μF、特に少なくとも100μFであり、かつ/又は、2μs〜40ms、好ましくは5μs〜20ms、特に10μs〜10msのパルス持続時間にわたって10〜1500V、好ましくは20〜1200V、特に50〜1000Vの初期電圧で放電されることが考えられる。
【0024】
本方法の有利な発展形態においては、第2の電荷蓄積ユニットの容量が少なくとも100μF、好ましくは少なくとも500μF、特に少なくとも1000μFであり、かつ/又は、1ms〜500ms、好ましくは2ms〜350ms、特に4ms〜250msのパルス持続時間にわたって10〜240V、好ましくは20〜200V、特に50〜150Vの初期電圧で放電され得ることがさらに考えられる。
【0025】
特に、ハイスループットプロセスにおいては、工程c)及び工程d)又は工程b)〜工程e)を少なくとも6回、8回、16回、24回、32回、48回、64回、96回、128回、192回、256回、384回、1536回、3456回、又は6144回繰り返すことが可能であり有利である。
【0026】
いくつかの反応空間を備えた容器を短い間隔で次々と、好ましくは6回、8回、16回、24回、32回、48回、64回、96回、128回、192回、256回、384回、1536回、3456回、又は6144回、それぞれ少なくとも1つの電圧パルスで処理することが可能である。
【0027】
互いに大きく離間させた反応空間を連続して処理すると、特に有利である。これは、このようにすることで、電圧パルスによって生じる発熱による悪影響をよりよく分散できるからである。
【0028】
さらに、電荷蓄積ユニットの放電が、少なくとも2つの反応空間が異なる電圧の電圧パルスで連続して処理され、第1の反応空間の処理後に各電荷蓄積ユニットに残っている電圧がその後に放出される電圧パルスの電圧に可能な限り近くなるように制御されると、特に有利である。理想的には、各電荷蓄積ユニットに残っている電圧は、その後に放出される電圧パルスの電圧と比べてやや小さいか、やや大きいか、又はほぼ等しい電圧であるべきである。言い換えれば、好ましくはいわゆる「充電ストローク」の最小化が図られるべきである。すなわち、次の電圧パルスに対して1つの反応空間がそれぞれ選択され、その反応空間に、後続の電圧の方がやや高いにせよやや低いにせよそれとは無関係に、電荷蓄積ユニットに残っている電圧に最も近い電圧振幅が印加されるべきである。重要な点は、2つの電圧パルス間で必要な充電動作又は放電動作が最小限に抑えられるべきであるということである。好ましくは、本実施の形態では、パルシングは昇順に行なわれるべきである。すなわち、最初の電圧パルスの電圧の方が後続の電圧パルスの電圧よりも低い電圧であるべきである。このようにして電圧パルス間の放電動作を回避することができる。電圧パルスを順に処理することによって、プロセス時間を有利な方法でさらに短縮することができる。
【0029】
本発明は、電荷を蓄積するための少なくとも1つの電荷蓄積ユニットを放電することによって少なくとも2つの反応空間にそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスを印加するための方法であって、前記電荷蓄積ユニットの放電が、異なる電圧の電圧パルスが少なくとも2つの反応空間に連続して印加され、第1の反応空間の処理後に電荷蓄積ユニットに残っている電圧がその次に放出される電圧パルスの電圧に可能な限り近くなるように制御される方法にも関する。本発明によって提案されるように電圧パルスを順に処理することにより、プロセス時間を有利な方法で著しく削減することができる。これは、2つの電圧パルス間で充電動作もしくは放電動作のための時間が必要とされないから、又はこの時間が少なくとも著しく削減されるからである。各電荷蓄積ユニットに残っている電圧は、その後に放出される電圧パルスの電圧と比べてやや小さいか、やや大きいか、又はほぼ等しいのが好ましい。つまり、好ましくはいわゆる「充電ストローク」の最小化が図られるべきである。すなわち、次の電圧パルスに対して1つの反応空間がそれぞれ選択され、その反応空間に、後続の電圧の方がやや高いにせよやや低いにせよそれとは無関係に、電荷蓄積ユニットに残っている電圧に最も近い電圧振幅が印加されるべきである。重要な点は、2つの電圧パルス間で必要な充電動作又は放電動作が最小限に抑えられるべきであるということである。本発明の有利な発展形態において、パルシングは昇順に行われるべきである。すなわち、最初の電圧パルスの電圧の方が後続の電圧パルスの電圧よりも低い電圧であるべきである。このようにして電圧パルス間の放電動作を回避することができる。
【0030】
電荷蓄積ユニット、例えば、給電コンデンサバンクは、パルシングの際にエネルギーを放出するので、電荷蓄積ユニットにおける電圧が低減する。従って、次の反応空間に関して、電荷蓄積ユニットを次の反応空間に必要な電圧に合うように充電しなければならない。接触部内の電圧パルスが例えば初期電圧の低下に応じて蓄積されると、充電ストローク及び放電ストロークを最小化することができ、ひいては効率を高めることができる。
【0031】
さらに、接触部内で反応空間が処理される順序は、温度に敏感な実験に対しては、直前にパルス印加された反応空間の隣の反応空間の温度上昇をこの反応空間を電圧パルスで処理する前に可能な限り迅速に収まらせるために容器内の隣接する反応空間が互いに可能な限り長い時間間隔でパルス印加されるように選択することができる。
【0032】
さらに、本発明の目的は、電荷蓄積ユニットのうちの少なくとも2つが共通の蓄積モジュールを形成し、当該共通の蓄積モジュールがいつでも放電可能であり、これにより、これらの電荷蓄積ユニットが中間の時間のかかる充電動作又は放電動作を実施する必要なく第1の充電動作後に要求に応じて常に放電できるユニットを形成している装置によって達成される。
【0033】
前記少なくとも2つの電荷蓄積ユニットは、共通のインターフェースを介してパルス発生ユニット、切換ユニット、及び/又は、電圧パルスの分配装置に電気的に結合されているのが好ましい。
【0034】
本発明において「電気的に結合される」とは、電気的切換構成の2つの構成要素又は素子が互いに直接に、つまり両者間で切り換えられる素子なしに電気的に結合されること、又は、間接に、つまり両構成要素間で切り換えられる素子があって、電気的に結合されることを意味する。
【0035】
さらに、さらなるインターフェースを介してパルス発生ユニット、切換ユニット、及び/又は、電圧パルスの分配装置と電気的に結合されるのが好ましい少なくとも1つのさらなる電荷蓄積ユニットを設けてもよい。このようにして、少なくとも2つの反応空間を同時に処理すること、又は、少なくとも1つの反応空間に印加するためのデュアルパルスを発生させることが可能である。
【0036】
これらの場合、前記少なくとも1つのさらなる電荷蓄積ユニットが電源ユニットと電気的に結合されること、及び、少なくとも2つの電荷蓄積ユニットが共通の電源ユニットと電気的に結合されることが考えられる。この実施の形態は、比較的高い電圧振幅を有する短い電圧パルスと、より低い電圧振幅を有するより長い電圧パルスとからなる電圧パルスを発生させなければならない場合に特に有利である。この場合、電荷蓄積ユニットが短い電圧パルスをさせることができる一方、2つの電荷蓄積ユニットからなる蓄積モジュールがより長い電圧パルスを提供する。従って、本発明に係る装置を用いれば、蓄積モジュールの2つの電荷蓄積ユニットのうちの一方が常に放電可能であり、その一方で、他方の電荷蓄積ユニットが充電されるので、短時間に非常に多くの反応空間を電圧パルスで処理することができる。個々の電荷蓄積ユニットの充電は時間を制約する要因とはならない。これは、蓄積モジュールのより長く続く放電動作の間に、この電荷蓄積ユニットを充電することができるからである。電源ユニット(パワーパック)が十分に強力ではなく十分に高速ではないかもしれない場合であっても、本発明に係る方法により、充電動作に必要な時間を最小限に抑えることができる。
【0037】
本発明に係る装置の特に有利な実施の形態においては、合計で少なくとも2つの蓄積モジュールを形成する4つもの電荷蓄積ユニットが設けられ得る。
【0038】
蓄積モジュールが単一の又は共通のインターフェースを介してパルス発生ユニット、切換ユニット、及び/又は、電圧パルスの分配装置と電気的に結合されていると、特に有利である。例えば、4つの電荷蓄積ユニットが合計で2つのそれぞれにいつでも放電可能な蓄積モジュールを形成し得るため、本発明に係る装置により、常に2つの反応空間を同時にそれぞれ1つの電圧パルスで処理し得る。2つの連続した電圧パルス間で単一のコンデンサを充電するための時間を必要としないため、本発明に係る装置を用いて、比較的短時間に非常に多くの反応空間を電圧パルスで処理することができる。従って、本発明に係る装置は、短時間に非常に多くの反応空間をそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスで処理しなければならないハイスループットプロセスにおける使用に特に適している。
【0039】
本発明によれば、少なくとも2つの電源ユニットが設けられ得、各電源ユニットはそれぞれ1つの蓄積モジュールと電気的に結合される。
【0040】
しかし、本発明によれば、少なくとも4つの電源ユニットと少なくとも6つの電荷蓄積ユニットを設けてもよい。本発明に係る装置のこの実施の形態は、特に、短時間に多くの反応空間をデュアル電圧パルスで処理しなければならないハイスループットプロセスにおいて非常に有利に用いることができ、有利である。本発明に係る装置を用いれば、常に2つの反応空間を同時に電圧パルスで処理し得る。このため、例えば、2つの電荷蓄積ユニットが比較的高い電圧振幅を有する短い電圧パルスを同時に放出し得、その電圧パルスは次いで中断なく、より低い電圧振幅を有するより長い電圧パルスに変化する。長い方の電圧パルスは2つの蓄積モジュールによって提供され得、これにより、常に蓄積モジュールの2つの電荷蓄積ユニットのうちの一方が放電される。
【0041】
電荷蓄積ユニットは、少なくとも4つのインターフェースを介して、パルス発生ユニット、切換ユニット、及び/又は、分配装置と電気的に結合され得る。
【0042】
電荷蓄積ユニットのうちの少なくとも2つがそれぞれ1つの電源ユニットと電気的に結合され得、少なくとも2つの電荷蓄積ユニットをそれぞれが備える少なくとも2つの蓄積モジュールが設けられ得、これにより、蓄積モジュールのうちの少なくとも2つがそれぞれ共通の電源ユニットと電気的に結合される。
【0043】
本発明に係る装置の特に有利な実施の形態においては、少なくとも1つの電荷蓄積ユニットが、好ましくは切換ユニットを介して電圧パルスの分配装置と電気的に結合されるのが好ましいパルス発生ユニットと電気的に結合されることが考えられる。
【0044】
本発明の有利な実施の形態においては、電荷蓄積ユニットのうちの少なくとも1つの容量が少なくとも10μF、好ましくは少なくとも50μF、特に少なくとも100μFであることが考えられる。
【0045】
あるいは、電荷蓄積ユニットのうちの少なくとも1つの容量が少なくとも100μF、好ましくは少なくとも500μF、特に少なくとも1000μFであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明に係る方法の第1の特に有利な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。
【図2】図2は、本発明に係る方法のさらなる実施の形態における時間の経過を模式的に示す。
【図3】図3は、基本的には図2に係る方法に対応する、本発明に係る方法の特別な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。
【図4】図4は、本発明に係る方法の特に有利な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。
【図5】図5は、本発明に係る方法のさらなる実施の形態における時間の経過を模式的に示す。
【図6】図6は、基本的に図5の実施の形態に対応する、本発明に係る方法の特別な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。
【図7】図7は、少なくとも1つの反応空間を電圧パルスで処理するための本発明に係る装置の構成を模式的に示す。
【図8】図8は、本発明に係る装置のさらなる実施の形態の構成を模式的に示す。
【図9】図9は、本発明に係る装置のさらなる実施の形態の構成を模式的に示す。
【図10】図10は、本発明に係る装置のさらなる実施の形態を模式的に示す。
【図11】図11は、原則的に図10の装置に構成が対応する、本発明に係る装置のさらなる特別な実施の形態を示す。
【図12】図12は、基本的には図10の本発明に係る装置に対応する、本発明に係る装置の特別な実施の形態の構成を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
ここで、図面を参照しながら、本発明について詳細に例示的に説明する。
【0048】
図1〜図6はそれぞれ、本発明に係る方法の特に有利な実施の形態における時間の経過を模式的に示す(R=反応空間)。
【0049】
図7〜図12はそれぞれ、本発明に係る装置の特に有利な実施の形態の構成を模式的に示す。
【0050】
図1は、本発明に係る方法の第1の特に有利な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。本実施の形態は、少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するのに特に適している。処理開始時に、CHV2A2と示した電荷蓄積ユニットがまず充電される。次いで、この電荷蓄積ユニットが放電され、その結果、少なくとも1つの電圧パルスが第1の反応空間R1に印加される。第1の電荷蓄積ユニットCHV2A2が少なくとも部分的に放電されるのと並行して、第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1が充電又は部分的に放電される。「部分的に放電される」とは、電荷蓄積ユニットが次のつまり後続の電圧パルスを放出する準備ができた状態にされること、すなわち、電荷蓄積ユニットにおける電圧レベルが次の電圧パルスに必要な電圧に合わせられることを意味する。これは、電荷蓄積ユニットを次の電圧パルスに必要な電圧まで充電するか又は次の電圧パルスのために指定された電圧まで部分的に放電することによって達成され得る。2番目の場合、電荷蓄積ユニットにおける電圧レベルは、放電装置によって、例えば電気負荷を介して、好ましくは放電抵抗によって部分的に放電されるという点で、次の反応空間のための新たなより低い電圧レベルに合わせられる。その結果、第1の電荷蓄積ユニットCHV2A2が放電されると直ちに第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1を次の放電動作に利用可能である。従って、第1の放電動作の直後に休止期間なしで次の放電動作を開始することができるので、2つの電圧パルス間で電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電するための時間が必要とされることもなく無駄にされることもない。従って、第1の電荷蓄積ユニットCHV2A2が少なくとも部分的に放電された直後に、本実施の形態においては、第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1の放電が中断なく直ちに行われる。この放電動作により、本実施の形態においては、さらなる反応空間R2が電圧パルスで処理される。あるいは、第1の反応空間R1がさらなる電圧パルスで処理されることもあり得る。第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1の放電と同時に第1の電荷蓄積ユニットCHV2A2が再充電又は部分的に放電されるため、本発明に係る方法は中断なくさらに継続され得、その結果、同じ又はさらなる反応空間を電圧パルスで処理することができる。電荷蓄積ユニットの放電と充電又は部分的放電とを同時に行うことにより、常に1つの電荷蓄積ユニットを電圧パルスの発生に利用可能であるので、個々の電圧パルスを次々とすぐに放出することができる。従って、複数の電圧パルスを次々に放出しなければならない場合には、1つの反応空間をいくつかの電圧パルスで処理しなければならない場合であろうといくつかの反応空間をそれぞれ1つの電圧パルスで処理しなければならない場合であろうと、本発明に係る方法を用いることによって合計プロセス時間を著しく削減することができる。従って、本発明に係る方法は、流通型(throughflow)又はハイスループットプロセスにおける電気穿孔法、電気融合法、又は同様の方法に特に適している。本明細書において電荷蓄積ユニットの「同時の」充電又は放電とは、充電動作及び放電動作が、少なくとも部分的に時間的に一致して進行することを意味する。従って、充電動作及び放電動作は、並行して進行することも可能であり、時間を互いにずらすことも可能である。「時間を互いにずらす」とは、ある動作が依然として又は既に進行している一方で、他方の動作が既に終了しているか又はまだ開始されていないということを意味する。
【0051】
図2は、本発明に係る方法のさらなる実施の形態における時間の経過を模式的に示す。本実施の形態は、特に、少なくとも2つの反応空間をそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスで処理するのに適している。プロセス開始時に、CHV2A2及びCHV2B2と示した電荷蓄積ユニットがまず充電される。これらの第1の電荷蓄積ユニットは、次に少なくとも部分的に放電され、その結果、少なくとも2つの反応空間、ここではR1及びR2がそれぞれ1つの電圧パルスで処理される。第1の2つの電荷蓄積ユニットが放電されるのと同時に、2つの第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1及びCHV2B1が充電されている。本発明において「同時に」とは、充電動作又は放電動作が少なくとも部分的に同時間的に一致して(同調して)進行することを意味する。すなわち、両動作は時間的に一致して進行してもよく、時間を互いにずらしてもよく、後者の場合には、1つの動作が依然として又は既に進行している一方で、他方の動作は既に終了しているか又はまだ開始されていないことになる。これらの充電動作及び放電動作の完了後、先に充電された第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1及びCHV2B1が放電され、それと同時に、先に放電された第1の電荷蓄積ユニットCHV2A2及びCHV2B2が再充電又は部分的に放電される。これにより、さらなる反応空間R3及びR4がそれぞれの電圧パルスで処理され得、その一方で、次の電圧パルスの準備が既に行われている。これらの工程は必要なだけ繰り返され得る。少なくとも2つの電荷蓄積ユニットの充電及び放電を同時に行うことにより、少なくとも2つの反応空間をそれぞれの電圧パルスで同時に処理することができ、これにより、電荷蓄積ユニットの再充電又は部分的な放電のために時間を無駄にすることなく、すぐに続けて次の2つの反応空間を電圧パルスで処理することができる。そして、このことは、複数の反応空間を電圧パルスで処理しなければならないときに特に有利である。これは、すべての反応空間を電圧パルスで処理するのにかかる合計時間がかなり短縮されるからである。
【0052】
図3は、基本的には図2に係る方法に対応する、本発明に係る方法の特別な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。図2に係る方法との違いは、図3に係る本実施の形態においては同じ反応空間R1及びR2がいくつかの電圧パルスで処理される点にある。図2の実施の形態では反応空間R1及びR2の後にさらなる反応空間R3及びR4が電気的に処理されるが、図3の実施の形態では、反応空間R1及びR2のみが、互いに続くいくつかの電圧パルスで処理されることが示されている。当然ながら、いくつかの反応空間をそれぞれいくつかの電圧パルスで次々に処理することができるように図2及び図3の実施の形態を組み合わせることも可能である。
【0053】
図4は、本発明に係る方法の特に有利な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。本発明に係る方法の本実施の形態は、少なくとも1つの反応空間を少なくとも2つの電圧パルスで処理するのに特に適している。プロセス開始時に、CHV1Aと示した電荷蓄積ユニットがまず充電される。この電荷蓄積ユニットは、次いで少なくとも部分的に放電され、これにより、第1の反応空間R1が1つの電圧パルスで処理される。電荷蓄積ユニットCHV1Aの充電動作又は放電動作中のある時点で、第2の電荷蓄積ユニットCHV2A2が充電される。この電荷蓄積ユニットCHV2A2は、第1の電荷蓄積ユニットCHV1Aの放電後直ちに少なくとも部分的に放電され、これにより、これと共に、反応空間R1も対応する電圧パルスで処理される。このため、反応空間R1は、互いに続く2つの電圧パルスで連続して処理され、これにより、これら2つの電圧パルスは、好ましくは中断なく、互いに直接に移行する(merge into)。本発明の好適な実施の形態においては、第1の電圧パルスは、比較的高い電圧振幅を有する短いパルスであり得、第2の電圧パルスは、より低い電圧振幅を有するより長いパルスであり得る。あるいは、中断のあるデュアルパルスが発生するように、2つの電圧パルスをいくぶん短い休止期間をはさんで連続して放出してもよい。第2の電荷蓄積ユニットCHV2A2の放電と同時に、さらなる第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1が充電される。第2の電荷蓄積ユニットCHV2A2を放電する間、第1の電荷蓄積ユニットCHV1A及びさらなる第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1が充電される。結果として、第2の電荷蓄積ユニットCHV2A2の放電完了後直ちに、2つの電荷蓄積ユニットCHV1A及びCHV2A1を次の放電に再び利用可能である。従って、その後直ちに、休止期間をはさまずに、次の反応空間R2をデュアル電圧パルスで処理することができる。このことは、まず第1の電荷蓄積ユニットCHV1Aを少なくとも部分的に放電し、その直後に中断なしでさらなる第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1を少なくとも部分的に放電することによって起こる。あるいは、第1の電荷蓄積ユニットCHV1Aとさらなる第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1とを新たに少なくとも部分的に放電することによって同じ反応空間R1をさらなる電圧パルスで処理することができる。さらなる第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1を少なくとも部分的に放電するのと同時に、第1の電荷蓄積ユニットCHV1A及び第2の電荷蓄積ユニットCHV2A2を再充電又は部分的に放電し、次のデュアル電圧パルスを遅延なく放出させる。上記の充電動作及び放電動作が必要なだけ繰り返され得、これにより、比較的短時間に非常に多くの電圧パルスを放出させることが可能になる。多くの反応空間を電気的に処理する場合であっても、個々の電圧パルスの間又は連続した反応空間の処理の間で電荷蓄積ユニットの充電又は部分的な放電のために時間が無駄にされることがないため、プロセス時間が最小限に抑えられる。
【0054】
図5は、本発明に係る方法のさらなる実施の形態における時間の経過を模式的に示す。本実施の形態は、特に、少なくとも2つの反応空間をそれぞれ少なくとも2つの電圧パルスで同時に処理するのに適している。プロセス開始時に、まず少なくとも4つの電荷蓄積ユニットが同時に又は連続して充電される。これら4つの電荷蓄積ユニットを本実施の形態ではCHV1A、CHV2A2、CHV1B、及びCHV2B2とする。充電動作完了後、まず2つの第1の電荷蓄積ユニットCHV1A及びCHV1Bが少なくとも部分的に放電され、これにより、少なくとも2つの第1の反応空間、ここではR1及びR2がそれぞれ1つの電圧パルスで処理される。これら2つの反応空間は、短い休止時間後に又は中断なしに、さらなる電圧パルスでそれぞれ処理され、これらの電圧パルスは、第2の電荷蓄積ユニットCHV2A2及びCHV2B2を少なくとも部分的に放電することによって発生させたものである。これらの第2の電荷蓄積ユニットの放電と同時に、ここではCHV2A1及びCHV2B1と示した少なくとも2つのさらなる第2の電荷蓄積ユニット、並びに、2つの第1の電荷蓄積ユニットCHV1A及びCHV1Bが充電又は部分的に放電される。次に2つの第1の電荷蓄積ユニットCHV1A及びCHV1Bを少なくとも部分的に放電することにより、同じ反応空間(R1及びR2)又は、ここで図示するように、2つのさらなる反応空間R3及びR4をそれぞれ1つの電圧パルスで処理することができる。次に(中断の有無に関わらず)、2つの先に充電した第2の電荷蓄積ユニットCHV2A1及びCHV2B1が再び放電され、一方で、これと時間的に並行して、2つの先に放電した電荷蓄積ユニットCHV2A2及びCHV2B2が再充電又は部分的に放電される。上記の充電動作及び放電動作はその後必要なだけ繰り返され得、これにより、比較的短時間に非常に多くの電圧パルスを放出させことが可能になる。このようにして、複数の反応空間を比較的短時間に電圧パルス、特にデュアルパルスで処理することができる。
【0055】
図6は、基本的に図5の実施の形態に対応する、本発明に係る方法の特別な実施の形態における時間の経過を模式的に示す。図5に示す本発明に係る方法との違いは、ここではデュアル電圧パルスのそれぞれの第1の電圧パルスを、同時に(時間的に一致して)ではなく、連続的に発生させることである。つまり、第1の電荷蓄積ユニットCHV1A及びCHV1Bの放電がそれぞれ連続して起こり、反応空間R1及びR2又はR3及びR4を同時にではなく交互に第1の電圧パルスで処理することを可能にする。その結果、1つのデュアル電圧パルスのうちの第2の電圧パルスも、並行してではなく、少しずらされて重複するように放出される。従って、この特別な実施の形態では、図5の実施の形態とは対照的に、少なくとも2つの反応空間が、同時にではなく、連続して又は時間を少しずらして処理される。この構成により、ある一定の状況下では合計プロセス時間が長引くかもしれないが、本実施の形態は、電圧パルスからの望ましくない副次的な悪影響を回避しなければならない場合に有利であり得る。このような望ましくない副次的な悪影響とは、例えば、過度の発熱であり得る。
【0056】
図7は、少なくとも1つの反応空間を電圧パルスで処理するための本発明に係る装置の構成を模式的に示す。本発明に係る装置1は、基本的にモジュール構造のものであり、少なくとも1つの電源モジュール2と、1つのパルス分配モジュール3と、1つの制御モジュール4とを備える。制御モジュール4は、マイクロプロセッサを含む制御ユニットを備え、例えば、従来のパーソナルコンピュータ、好ましくはラップトップコンピュータであり得る。パルス分配モジュール3は、容器制御ユニット5を備え、このユニットは、1つ又は複数の反応空間を含む容器のための制御装置を備える。パルス分配モジュール3は、中央制御ユニット6(主制御装置)をさらに備え、このユニットは、個々の電圧パルスの1つ又は複数の反応空間への分配を制御する。パルス分配モジュール3は、パルス発生ユニット7及び切換ユニット8も有する。パルス発生ユニット7は、アナログ素子及びデジタル素子を含む混合切換回路のような、連続した電圧パルスの遷移を可能にするか又は制御する素子を備える。切換ユニット8は、電圧パルス用の測定回路と、電荷蓄積ユニットを放電するためのスイッチ(例えば、IGBT又はMOSFET)とを備える。切換ユニット8は、電圧パルスの分配装置9と結合される。分配装置9は、電圧パルスを分配するための切換装置(例えば、継電器)と、反応空間を含む1つ又は複数の容器の移動及び位置決めを行うための機械装置とを備える。
【0057】
図7に示す本発明に係る装置の実施の形態における電源モジュール2は、基本的に、2つの電荷蓄積ユニット10、11を備え、これらのユニットは、共通の電源ユニット12から充電することができる。電源ユニット12は、電源制御装置15によって制御される。さらに、ここでは図示しない少なくとも1つの放電装置が設けられ、この装置を介して電荷蓄積ユニット10、11を部分的に放電することができる。放電装置は、例えば、放電抵抗であってもよい。本実施の形態において、電源モジュール2は、装置1全体における電圧供給を確保する中央主電源ユニット13をさらに備える。2つの電荷蓄積ユニット10、11は、共通のインターフェース14を介してパルス分配ユニット3に接続された蓄積モジュールを形成する。これにより、蓄積モジュールすなわち電荷蓄積ユニット10及び11が、本実施の形態においては、パルス発生ユニット7と切換ユニット8とを介して分配装置9と電気的に結合される。2つの電荷蓄積ユニット10、11が蓄積モジュールを形成し、その中で常に2つの電荷蓄積ユニット10、11のうちの一方が電源ユニット12によって充電され、他方の電荷蓄積ユニット10、11が充電又は部分的に放電可能であることにより、蓄積モジュールは、電圧パルスを準備ができた状態に保持するためにいつでも完全に利用可能である。この種の構成により、比較的短時間に非常に多くの電圧パルスを放出させることが可能になる。これは、単一の電荷蓄積装置(charge store)と比較して、電荷蓄積装置を再充電又は部分的に放電するのに時間が無駄にされることがないからである。電荷蓄積ユニット10、11は、個々のコンデンサ、又は並列及び/もしくは直列で切り換えられるいくつかのコンデンサからそれぞれがなるすべてのコンデンサバンク(whole banks of capacitors)であり得る。
【0058】
高電圧、特に1000Vを超える電圧の発生は、電子機器側に一定の費用がかかることに関連している。これは、電子機器の高い絶縁耐力を確保するために、特に優れた耐電圧性の素子を用いなければならず、基板上の通電しているプリント高圧線間に一定の距離を固守しなければならないからである。第二に、電気穿孔法において必要とされる高電圧のための十分な電荷ひいてはエネルギー量を提供することが可能な高電圧パワーパックの製造は、非常に煩雑であり費用がかかる。しかし、他方では、このような高電圧(特に>1000V)を発生させることは、効率的な電気穿孔にとって、又は電気穿孔装置の特別な構造(例えば、電極間の大きな距離)によって、有利又は必要でさえあり得る。従って、エネルギー蓄積装置(例えば、コンデンサ又はコンデンサ電池)の充電(及び放電)装置にかかるこれらのコストを最小限まで削減する必要性がある。パルス側(エネルギー蓄積装置による反応空間へのパルス放出)では高電圧を発生させるが、充電側(電流グリッドからエネルギーを取り出すパワーパックからエネルギー蓄積装置への充電)ではこれらの電圧を回避するために、いくつかの独立して相互接続可能なコンデンサ(又は他の蓄積ユニット)を、例えばそれらをある電圧Uまで充電するときに、それらのすべてをパワーパックによって並列に相互接続し、直列の相互接続と比べてn倍の充電電流ひいてはn倍の電荷量n*Qを受け入れるように、用いることができる。充電動作完了時にこれらの充電ユニットが直列に相互接続されていると、電圧n*Lade(ULade=充電電圧)が得られ、この電圧を反応空間へのパルス放電の際に利用することができる。充電側の電子機器及び個々のコンデンサ自体は比較的低い電圧ULade、例えば1000V用に設計されているだけでよい。つまり、コスト、そしてまたスペースが著しく節約される(例えば、プリント回路基板上のプリント配線間の火花連絡(spark-over)に対する抵抗は、より大きい距離、又は、可能でありかつ合理的である場合には、追加の絶縁対策(insulation measures)ということになる)。n*Ladeに対して相応に電圧安定でなければならないのは二次放電側だけである。
【0059】
図8は、本発明に係る装置のさらなる実施の形態の構成を模式的に示す。装置20は、少なくとも1つの反応空間を少なくとも2つの電圧パルスで処理するのに適している。装置20は、モジュール構造と基本的な構成要素に関しては図7の装置1に対応する。このため、図8における同一の構成要素は、図7と同じ参照番号で示している。図8の本発明に係る装置20は、さらなる電荷蓄積ユニット21が設けられている点で図7の装置1と異なり、このユニットは、さらなるインターフェース22を介して分配装置9と結合されている。電荷蓄積ユニット21は、さらなる電源ユニット23から供給を受け、1つ又は複数の反応空間を、互いに移行するデュアル電圧で、高速で連続して又は中断なしで処理することを可能にする。本実施の形態は、特に、比較的高い電圧振幅を有することが好ましい短い電圧パルスと、より低い電圧振幅を有することが好ましいより長い電圧パルスとからなる電圧パルスを発生させる場合に有利である。この場合、電荷蓄積ユニット21が短い電圧パルスを発生させることができ、その一方で、電荷蓄積ユニット10及び11からなる蓄積モジュールがより長い電圧パルスを提供する。デュアル電圧パルスを形成するために個々の電圧パルスを組み合わせるつまり移行させることは、パルス発生ユニット7内で行われる。いくつかの反応空間を比較的短時間にこのようなデュアル電圧パルスで連続して処理しなければならない場合、例えば、ハイスループットプロセスにおいてマルチウェルプレートを用いるとき、長い方の電圧パルス用の単一のコンデンサを用いれば、コンデンサを放電した後にまず再充電することが必要なため、個々の反応空間の処理間隔が比較的長くなる。しかし、本発明に係る装置20を用いれば、常に2つの電荷蓄積ユニット10、11のうちの一方を部分的に放電することができ、その一方で、他方の電荷蓄積ユニット10、11が充電又は放電され、これにより、非常に多くの反応空間を短時間に電圧パルスで処理することが可能になる。蓄積モジュールのより長く続く放電動作の間に電荷蓄積ユニット21を充電又は部分的に放電することができるため、電荷蓄積ユニット21の充電又は部分的な放電は時間を制約する要因とはならない。
【0060】
図9は、本発明に係る装置のさらなる実施の形態の構成を模式的に示し、本実施の形態は、少なくとも2つの反応空間をそれぞれ1つの電圧パルスで処理する本発明に係る方法を実施するのに特に適している。本発明に係る装置30も、そのモジュール構造及び基本的な構成要素に関しては図7の装置1に対応し、ここでもやはり、同一の構成要素をそれぞれ同じ参照番号で示している。発明に係る装置30は、電源モジュール2が2つの追加の電荷蓄積ユニット31、32と追加の電源ユニット33とを備える点で図7の装置1とは異なる。電荷蓄積ユニット31、32は、蓄積モジュールを形成し、このモジュールは、共通の電源ユニット33から充電することができ、共通のインターフェース34及びパルス発生ユニット7又は切換ユニット8を介して分配装置9と電気的に結合される。全部で電荷蓄積ユニット10、11、31、32がいつでもそれぞれ放電可能な2つの蓄積モジュールを形成するため、本発明に係る装置30によって常に2つの反応空間を同時にそれぞれ電圧パルスで処理することができる。上記のように、2つの連続した電圧パルス間で単一のコンデンサを充電するための時間を必要としないため、本発明に係る装置30によって比較的短時間に非常に多くの反応空間を電圧パルスで処理することができる。従って、本発明に係る装置30は、特に、非常に多くの反応空間を短時間にそれぞれ1つの電圧パルスで処理しなければならないハイスループットプロセスにおける使用に適している。
【0061】
図10は、本発明に係る装置のさらなる実施の形態を模式的に示し、これは、原則的に、図8に示したような本発明に係る装置20及び図9に示したような本発明に係る装置30の構成要素からなる。従って、ここでもやはり、同一の構成要素は同じ参照番号で示している。本発明に係る装置40は、電源モジュール2内にさらなる電荷蓄積ユニット41を追加的に備え、この電荷蓄積ユニットは、独自の電源ユニット42から充電することができ、独自のインターフェース43を介して分配装置9と電気的に結合される。これにより、本発明に係る装置40は、合計で4つのインターフェース14、22、34、43を介して分配装置9に結合された合計で6つの電荷蓄積ユニット10、11、21、31、32、41を電源モジュール2内に有する。それぞれ2つの電荷蓄積ユニット10及び11又は31及び32は合計で2つの蓄積モジュールを形成し、これらの蓄積モジュールは、上記のようにいつでも放電可能である。電荷蓄積ユニット10、11、21、31、32、41は、合計で4つの電源ユニット12、23、33、42を介して充電され、そのことにより、各蓄積モジュールがそれぞれ電源ユニット12、33に関連付けられる。あるいは、電荷蓄積ユニット10、11、21、31、32、41を電圧供給装置から、例えば電源ユニットのうちの1つ12、23、33又は42から直接に充電することが可能である。本発明に係る装置40は、短時間に多くの反応空間をデュアル電圧パルスで処理しなければならないハイスループットプロセスにおいて特に有利に用いることができる。本発明に係る装置40によって常に2つの反応空間を同時に電圧パルスで処理することができる。これにより、例えば、電荷蓄積ユニット21及び41それぞれが比較的高い電圧振幅を有する短い電圧パルスを放出することができ、電圧パルスはその後中断なしでより低い電圧振幅を有するより長い電圧パルスへと変化する。長い方の電圧パルスは2つの蓄積モジュールによって利用可能になり得、これにより、常に蓄積モジュールの2つの電荷蓄積ユニット10、11又は31、32のうちの一方を放電することができる。本実施の形態においては、デュアル電圧パルスはパルス発生ユニット7内で作られる。
【0062】
図11は、原則的に図10の装置40に構成が対応する、本発明に係る装置のさらなる特別な実施の形態を示す。図11の本発明に係る装置50は、電源モジュール2の構成要素が2倍になっている点で図10の装置40とは異なる。従って、本発明に係る装置50を用いて、4つの反応空間を同時に電圧パルスで処理することができる。本発明に係る装置50は、電荷蓄積ユニット51及び52又は53及び54によって形成される2つのさらなる蓄積モジュールを追加的に備え、これら2つのさらなる蓄積モジュールは、それぞれインターフェース55又は56を介して分配装置9と電気的に結合される。追加の蓄積モジュールのそれぞれが、独自の電源ユニット57又は58を介して充電される。4つの反応空間を同時に電圧パルスで処理できるようにするために、2つのさらなる電荷蓄積ユニット60及び63が設けられ、これらのユニットは、それぞれ別個のインターフェース61又は64を介して分配装置9と結合され、それぞれ独自の電源ユニット62又は65を介して充電可能である。従って、図10の本発明に係る装置40と比較すると、本発明に係る装置50によって、同数の反応空間の処理時間を著しく削減することができるか又は処理対象の反応空間の数を著しく増加させることができる。当然ながら、電荷蓄積ユニット又は蓄積モジュールの数は、よりいっそう多くの反応空間を同時に電圧パルスで処理できるようにするために、さらに増加させることができる。
【0063】
図12は、基本的には図10の本発明に係る装置40に対応する、本発明に係る装置の特別な実施の形態の構成を模式的に示す。ここでもやはり、同一の構成要素を同じ参照番号で示してある。図12の装置70は、パルス発生ユニット7がここでは電源モジュール2の内部に配置されている点で、図10の実施の形態とは異なる。このため、本実施の形態におけるパルス発生ユニット7は、パルス分配モジュール3の内部に切換ユニット8を備えたユニットとして配置されてはいない。従って、本実施の形態における電荷蓄積ユニット10、11、21、31、32、41はパルス発生ユニット7と直接結合されている。この利点は、反応空間を処理するデュアル電圧パルスを、電圧パルスが切換ユニット8を介して分配装置9へ送られる前に、電源モジュール2内で作っておくことができることである。パルス発生ユニット7の内部で、電荷蓄積ユニット21又は41によって利用可能になった第1の電圧パルスと、それぞれ電荷蓄積ユニット10又は11及び31又は32によって利用可能になった第2の電圧パルスとからデュアル電圧パルスを発生させる。完成したデュアル電圧パルスは、その後、インターフェース71及び72又は73及び74を介して切換ユニット8へ送られる。パルス発生ユニット7は、例えば、アナログ素子及びデジタル素子を含み第1及び第2の電圧パルスを組み合わせてデュアル電圧パルスを形成することができる混合切換回路を備え得る。本実施の形態において特に有利であるのは、装置ユニット間に配置される高圧ケーブルが削減されることである。これらのケーブル及び関連の接続技術は費用がかかるため、全体としての複雑性を低減することができ、特にハイスループットプロセスにおいて、信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 装置
2 電源モジュール
3 パルス分配モジュール
4 制御モジュール
5 容器制御ユニット
6 制御ユニット(主制御装置)
7 パルス発生ユニット
8 切換ユニット
9 分配装置
10 電荷蓄積ユニット
11 電荷蓄積ユニット
12 電源ユニット
13 パワーパック
14 インターフェース
15 パワーパック制御装置
20 装置
21 電荷蓄積ユニット
22 インターフェース
23 電源ユニット
30 装置
31 電荷蓄積ユニット
32 電荷蓄積ユニット
33 電源ユニット
34 インターフェース
40 装置
41 電荷蓄積ユニット
42 電源ユニット
43 インターフェース
50 装置
51 電荷蓄積ユニット
52 電荷蓄積ユニット
53 電荷蓄積ユニット
54 電荷蓄積ユニット
55 インターフェース
56 インターフェース
57 電源ユニット
58 電源ユニット
60 電荷蓄積ユニット
61 インターフェース
62 電源ユニット
63 電荷蓄積ユニット
64 インターフェース
65 電源ユニット
70 装置
71 インターフェース
72 インターフェース
73 インターフェース
74 インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷を蓄積するための少なくとも1つの電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための方法であって、
a)第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加すると同時に第2の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
b)前記第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを同じ反応空間又はさらなる反応空間に印加すると同時に、工程a)で放電された前記第1の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
a)2つの第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも2つの反応空間に印加すると同時に2つの第2の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
b)前記2つの第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを同じ反応空間又はさらなる2つの反応空間に印加すると同時に、工程a)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットを充電又は部分的に放電する工程と、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加する工程と、
b)前記第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つのさらなる電圧パルスを前記反応空間に印加すると同時に、さらなる第2の電荷蓄積ユニットと工程a)で放電された前記第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
c)工程a)で少なくとも部分的に放電され、工程b)で再充電又は部分的に放電された前記第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを別の反応空間又は同じ反応空間に印加する工程と、
d)工程b)で充電又は部分的に放電された前記さらなる第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも1つのさらなる電圧パルスを工程c)の前記反応空間に印加すると同時に、工程b)で少なくとも部分的に放電された前記第2の電荷蓄積ユニットと工程c)で少なくとも部分的に放電された前記第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)2つの第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって少なくとも2つの反応空間にそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスを印加する工程と、
b)2つの第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって工程a)の前記2つの反応空間にそれぞれ少なくとも1つのさらなる電圧パルスを印加すると同時に、2つのさらなる第2の電荷蓄積ユニットと工程a)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
c)工程a)で少なくとも部分的に放電され、工程b)で再充電又は部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって同じ反応空間又は2つのさらなる反応空間にそれぞれ少なくとも1つの電圧パルスを印加する工程と、
d)工程b)で充電又は部分的に放電された前記2つのさらなる第2の電荷蓄積ユニットを少なくとも部分的に放電することによって工程c)の前記2つの反応空間に少なくとも1つのさらなる電圧パルスを印加すると同時に、工程b)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第2の電荷蓄積ユニットと工程c)で少なくとも部分的に放電された前記2つの第1の電荷蓄積ユニットとを充電又は部分的に放電する工程と、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの電荷蓄積ユニットがそれぞれ蓄積モジュールを形成し、使用時に前記電荷蓄積ユニットのうちの一方が少なくとも部分的に放電され、その一方で、他方の電荷蓄積ユニットが充電又は部分的に放電され、これにより、前記蓄積モジュールが、次の電圧パルスに必要な電圧をいつでも準備ができた状態に保持でき、少なくとも部分的に放電できることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
互いに最大限に離間された反応空間を連続して処理することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
電荷を蓄積するための少なくとも1つの電荷蓄積ユニットを放電することによって少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも2つの反応空間に印加するための方法であって、前記電荷蓄積ユニットの放電が、異なる電圧の電圧パルスが少なくとも2つの反応空間に印加され、第1の反応空間の処理後に前記電荷蓄積ユニットに残っている電圧が次に放出される電圧パルスの電圧に可能な限り近くなるように制御されることを特徴とする方法。
【請求項8】
少なくとも1つの電圧パルスを少なくとも1つの反応空間に印加するための装置(1、20、30、40、50、70)であって、電荷を蓄積するための少なくとも2つの電荷蓄積ユニット(10、11)、前記電荷蓄積ユニット(10、11)を充電するための少なくとも1つの電源ユニット(12)、及び/又は、前記電荷蓄積ユニット(10、11)を部分的に放電するための少なくとも1つの放電装置を備え、前記電荷蓄積ユニット(10、11)のうちの少なくとも2つが、いつでも放電可能な共通の蓄積モジュールを形成することを特徴とする装置。
【請求項9】
少なくとも2つの電荷蓄積ユニット(10、11)が共通のインターフェース(14)を介してパルス発生ユニット(7)、切換ユニット(8)、及び/又は、電圧パルスの分配装置(9)と電気的に結合されていること、並びに、少なくとも1つのさらなるインターフェース(22)を介して前記パルス発生ユニット(7)、前記切換ユニット(8)、及び/又は、前記電圧パルスの分配装置(9)と電気的に結合されているのが好ましい少なくとも1つのさらなる電荷蓄積ユニット(21)が設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのさらなる電荷蓄積ユニット(21)が電源ユニット(23)と電気的に結合されていること、及び、少なくとも前記少なくとも2つの電荷蓄積ユニット(10、11)が共通の電源ユニット(12)と電気的に結合されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも4つの電荷蓄積ユニット(10、11、31、32)が設けられていること、並びに、前記電荷蓄積ユニット(10、11、31、32)のうちの少なくとも2つが、それぞれ、共通のインターフェース(14、34)を介して前記パルス発生ユニット(7)、前記切換ユニット(8)、及び/又は、前記電圧パルスの分配装置(9)と電気的に結合された蓄積モジュールを形成することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも2つの電源ユニット(12、33)が設けられ、各電源ユニット(12、33)がそれぞれ1つの蓄積モジュールと電気的に結合されていることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記電荷蓄積ユニット(10、11、21、31、32、41)が少なくとも4つのインターフェース(14、22、34、43)を介して前記パルス発生ユニット(7)、前記切換ユニット(8)、及び/又は、前記分配装置(9)と電気的に結合されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記電荷蓄積ユニットのうちの少なくとも2つ(21、41)が少なくとも1つの電源ユニット(23、42)と電気的に結合されていること、並びに、少なくとも2つの電荷蓄積ユニット(10、11、31、32)をそれぞれが含む少なくとも2つの蓄積モジュールが設けられ、前記蓄積モジュールのうちの少なくとも2つがそれぞれ共通の電源ユニット(12、33)と電気的に結合されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つの電荷蓄積ユニット(10、11、21、31、32、41)が、好ましくは切換ユニットを介して電圧パルスの分配装置(9)と電気的に結合されたパルス発生ユニット(7)と電気的に結合されていることを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−515529(P2012−515529A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545701(P2011−545701)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000295
【国際公開番号】WO2010/083985
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(503147734)ロンザ ケルン ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】