収差補正方法、および該方法を用いた眼底撮像方法、および眼底撮像装置
【課題】 補償光学付き眼底撮像装置においては一般的に波面センサーと波面補正デバイスを用いたフィードバック制御により収差補正が行われるが、高分解能撮像レベルまでに収差を補正するまでの時間短縮が求められている。
【解決手段】 被検者毎に前回撮影時の収差補正情報を記憶しておき、記憶されている補正値を用いて収差の補正を実行することにより収差補正完了までの時間を短縮する。また、記憶された情報が存在しない場合には、予め設定した基準の収差量に対しての補正値を用いる。
【解決手段】 被検者毎に前回撮影時の収差補正情報を記憶しておき、記憶されている補正値を用いて収差の補正を実行することにより収差補正完了までの時間を短縮する。また、記憶された情報が存在しない場合には、予め設定した基準の収差量に対しての補正値を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底撮像方法、および眼底撮像装置に関し、特に、被検眼の収差を測定して補正する補償光学機能を有し、撮像画像の取得状況に応じて収差を補正する収差補正方法および該方法により収差の補正が可能な眼底撮像方法、および眼底撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科用の撮像装置として、眼底に2次元的にレーザ光を照射してその反射光を受光して画像化するSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope:走査レーザ検眼鏡)や、低コヒーレンス光の干渉を利用したイメージング装置が開発されている。低コヒーレンス光の干渉を利用したイメージング装置は、OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層装置あるいは光干渉断層法)と呼ばれ、特に、眼底あるいはその近傍の断層像を得る目的で用いられている。OCTの種類としては、TD−OCT(Time Domain OCT:タイムドメイン法)や、SD−OCT(Spectral Domain OCT:スペクトラルドメイン法)等を含め、種々のものが開発されてきている。
【0003】
特に、このような眼科用の撮像装置は、近年において、照射レーザの高NA化等によってさらなる高解像度化が進められている。
【0004】
しかしながら、眼底を撮像する場合には、角膜や水晶体等の眼の光学組織を通して撮像をしなければならない。そのため、高解像度化が進むに連れて、これら角膜や水晶体の収差が撮像画像の画質に大きく影響するようになってきた。
【0005】
そこで、眼の収差を測定し、その収差を補正する補償光学(Adaptive Optics:AO)機能を光学系に組み込んだ、AO−SLOやAO−OCTの研究が進められている。例えば、非特許文献1に、AO−OCTの例が示されている。これらAO−SLOやAO−OCTは、一般的にはシャックハルトマン波面センサー方式によって眼の波面を測定する。シャックハルトマン波面センサー方式とは、眼に測定光を入射し、その反射光をマイクロレンズアレイを通してCCDカメラに受光することによって波面を測定するものである。測定した波面を補正するように可変形状ミラーや、空間位相変調器を駆動し、それらを通して眼底の撮像を行うことにより、AO−SLOやAO−OCTは高解像度な撮像が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Zhang et al,Optics Express,Vol.14,No.10,15May2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
眼科装置に用いるAOにおいては、一般的に波面センサーで測定した収差をZernike関数のような関数でモデル化し、その関数を用いて波面補正器の補正量を計算する。複雑な形状を補正するためには、多くの次数を持つ関数で収差をモデル化して補正量を算出し、波面補正器を制御する必要がある。
【0008】
しかし、補正量を算出することは非常に計算負荷が高く、計算時間の増大が大きな問題となっている。特に、眼科装置に対しては、病気の経過観察を行うために定期的に患部の観察を行うことが求められているため、撮像時間を少しでも短縮することが眼科医療の効率を向上させるためには不可欠となっている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、AOを用いる眼科装置において、眼の収差補正に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る収差補正方法は、被検眼の収差を補正する収差補正方法であって、前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定手段により判定する工程と、 選択手段によって、前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されている場合には前記情報を選択し、且つ記憶されていない場合には前記情報とは異なる他の情報を選択する工程と、選択された前記情報或いは前記他の情報に基づいて、収差補正手段により前記被検眼の収差の補正を行う工程と、前記補正が行われた前記被検眼の収差に関する新たな情報を、新たな予め記憶されている収差に関する情報として記憶手段が記憶するする工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前回撮影したときの情報を利用することにより、収差補正を高速化することが可能となり、診察に要する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1における補償光学系を備えたSLOによる眼底撮像装置の構成例の模式図。
【図2】本発明の実施例1における波面補正デバイスの一例を示す模式図。
【図3】波面補正デバイスの他の例を示す模式図。
【図4】シャックハルトマンセンサーの構成を示す模式図。
【図5】波面を測定する光線がCCDセンサー上に集光された状態を示す模式図。
【図6】球面収差を持つ波面を測定した際の模式図。
【図7】固視灯を説明する図。
【図8】コントローラを説明する図。
【図9】眼底を格子状に分割した撮像領域を説明する図。
【図10】本発明の実施例1における眼底撮像装置の制御ステップを示すフローチャート。
【図11】収差補正回数と収差量の関係を表したグラフ。
【図12】本発明の実施例2における眼底撮像装置の制御ステップを示すフローチャート。
【図13】本発明の実施例3における補償光学系を備えたSLOによる眼底撮像装置の構成例の模式図。
【図14】本発明の実施例3における眼底撮像装置の制御ステップを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。但し、本発明は以下の実施例の構成によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
実施例1として、本発明を適用した眼底撮像装置の構成について図1を用いて説明する。
なお、本実施例においては、測定対象である被検査物を眼とし、眼で発生する収差を補償光学系で補正し、眼底を撮像するようにした一例について説明する。
【0015】
図1において、101は光源であり、波長840nmのSLD光源(Super Luminescent Diode)を用いた。光源101の波長は特に制限されるものではないが、眼底撮像用としては被検者の眩しさの軽減と解像度維持のために、800〜1500nm程度が好適に用いられる。本実施例においてはSLD光源を用いたが、その他にレーザ等も用いられる。本実施例では眼底撮像と波面測定のための光源を共用しているが、それぞれを別光源とし、光路の途中で合波する構成としても良い。
【0016】
光源101から照射された光は、単一モード光ファイバー102を通って、コリメータ103により、平行光線(測定光105)として照射される。
【0017】
照射された測定光105はビームスプリッタからなる光分割部104を透過し、補償光学の光学系に導光される。
【0018】
補償光学系は、光分割部106、波面センサー115、波面補正デバイス108および、それらに導光するための反射ミラー107−1〜4から構成される。
ここで、反射ミラー107−1〜4は、少なくとも眼111の瞳と波面センサー115、波面補正デバイス108とが光学的に共役関係になるように設置されている。また、光分割部106として、本実施例ではビームスプリッタを用いた。
【0019】
光分割部106を透過した測定光105は、反射ミラー107−1と107−2で反射されて波面補正デバイス108に入射する。波面補正デバイス108で反射された測定光105は、反射ミラー107−3に出射される。
【0020】
本実施例では、波面補正デバイス108として液晶素子を用いた空間位相変調器を用いた。図2に反射型液晶光変調器の模式図を示す。本変調器はベース部122とカバー123に挟まれた空間に液晶分子125が封入されている構造となっている。ベース部122には複数の画素電極124を有し、カバー123には不図示の透明な対向電極を有している。電極間に電圧を印加していない場合には、液晶分子は125−1のような配向をしており、電圧を印加すると125−2のような配向状態に遷移し、入射光に対する屈折率が変化する。各画素電極の電圧を制御して各画素の屈折率を変化させることにより、空間的な位相変調が可能となる。例えば入射光126が本変調器に入射した場合、液晶分子125−2を通過する光は液晶分子125−1を通過する光よりも位相が遅れ、結果として図中127で示すような波面を形成する。一般的に反射型液晶光変調器は、数万〜数十万個の画素から構成されている。また、液晶光変調器は偏光特性を有するため、入射光の偏光を調整するための偏光素子を具備することもある。
【0021】
波面補正デバイス108の他の例としては、可変形状ミラーがある。可変形状ミラーとは、局所的に光の反射方向を変えることができるものであり、様々な方式のものが実用化されている。その一例として、他の波面補正デバイス108の断面を図3に示す。入射光を反射する変形可能な膜状のミラー面129と、ベース部128と、これらに挟まれて配置されたアクチュエータ130と、ミラー面129を周囲から支持する不図示の支持部から構成されている。アクチュエータ130の動作原理としては、静電力や磁気力、圧電効果を利用したものがあり、動作原理によってアクチュエータ130の構成は異なる。アクチュエータ130はベース部128上に二次元的に複数配列されていて、それらを選択的に駆動することにより、ミラー面129を自在に変形できるようになっている。一般的に可変形状ミラーは数十〜数百のアクチュエータで構成されている。
【0022】
図1において、反射ミラー107−3、4で反射された光は、走査光学系109によって、1次元もしくは2次元に走査される。本実施例では走査光学系109に主走査用(眼底水平方向)と副走査用(眼底垂直方向)として2つのガルバノスキャナーを用いた。より高速な撮像のために、走査光学系109の主走査用に共振スキャナーを用いることもある。走査光学系109内の各スキャナーを光学的な共役状態にするために、各スキャナーの間にミラーやレンズといった光学素子を用いる装置構成の場合もある。図9は眼底撮像装置が、被検眼の眼底を分割して撮像する様子を示したもので、161は眼底の2次元画像であり、162は黄斑、163は視神経乳頭である。164は眼底161を格子状に分割した状態を表したもので、水平方向、垂直方向にはそれぞれa〜p、1〜16のアドレスが割り振られており、眼底は16×16の256個に分割されて領域毎に撮像される。更に、格子一つは、走査光学系109により、主走査方向、副走査方向それぞれに、3μm角の画素256×256に分割されて読み取られる。
【0023】
走査光学系109で走査された測定光105は、接眼レンズ110−1および110−2を通して眼111に照射される。111−1は、眼のレンズに相当する水晶体である。眼111に照射された測定光は眼底で反射もしくは散乱される。接眼レンズ110−1および110−2の位置を調整することによって、眼111の視度にあわせて最適な照射を行うことが可能となる。ここでは、接眼部にレンズを用いたが、球面ミラー等で構成しても良い。
【0024】
119はビームスプリッタである光分光器、120は固視灯である。ビームスプリッタ119は、被検眼に対して固視灯120からの光を、測定光105と共に被検眼に導くものである。固視灯120は、被検者に対して視線をどこに向けるかを指示するためのもので、液晶ディスプレイ、LEDを平面に格子状に並べたもの等で構成される。図7に、固視灯120を構成する液晶ディスプレイ141の拡大図を示す。図7に示すように、液晶ディスプレイ141上には142で示されるような十字形が点灯される。被検者には、十字形142の交点を見てもらうことにより、被検眼の動きを停止させることができる。また、十字形142の点灯位置を、液晶ディスプレイ141上で上下左右に移動させることにより、被検者の視線をコントロールし、被検眼の所望の領域を観察することが可能となる。
【0025】
眼111の網膜から反射もしくは散乱された反射光は、入射した時の経路を逆向きに進行し、光分割部106によって一部は波面センサー115に反射され、光線の波面を測定するために用いられる。
【0026】
本実施例では、波面センサー115としてシャックハルトマンセンサーを用いた。図4にシャックハルトマンセンサーの模式図を示す。131が波面を測定する光線であり、マイクロレンズアレイ132を通して、CCDセンサー133上の焦点面134に集光される。図4の(a)のA-A‘で示す位置から見た様子を示す図が図4の(b)であり、マイクロレンズアレイ132が、複数のマイクロレンズ135から構成されている様子を示したものである。光線131は各マイクロレンズ135を通してCCDセンサー133上に集光されるため、光線131はマイクロレンズ135の個数分のスポットに分割されて集光される。図5にCCDセンサー133上に集光された状態を示す。各マイクロレンズを通過した光線はスポット136に集光される。そして、この各スポット136の位置から、入射した光線の波面を計算する。図6(a)に球面収差を持つ波面を測定した場合の模式図を示す。光線131は137で示すような波面で形成されている。光線131はマイクロレンズアレイ132によって、波面の局所的な垂線方向の位置に集光される。この場合のCCDセンサー133の集光状態を図6(b)に示す。光線131が球面収差を持つため、スポット136は中央部に偏った状態で集光される。この位置を計算することによって、光線131の波面が検出できる。本実施例では波面センサーにシャックハルトマンセンサーを用いたが、それに限定されるものではなく、曲率センサーのような他の波面測定手段や、結像させた点像から逆計算で求めるような方法を用いても良い。
【0027】
図1において、光分割部106を透過した反射光は光分割部104によって一部が反射され、コリメータ112、光ファイバー113を通して光強度センサー114に導光される。光強度センサー114で光は電気信号に変換され、制御部117によって眼底画像として画像に構成されて、ディスプレイ118に表示される。
【0028】
波面センサー115は、補償光学制御部116に接続され、受光した波面を補償光学制御部116に伝える。波面補正デバイス108も補償光学制御部116に接続されており、補償光学制御部116から指示された変調を行う。補償光学制御部116は波面センサー115の測定結果による取得された波面を基に、収差のない波面へと補正するような変調量(補正量)を計算し、波面補正デバイス108にそのように変調するように指令する。波面の測定と波面補正デバイスへの指示は繰り返し処理され、常に最適な波面となるようにフィードバック制御が行われる。
【0029】
本実施例では、測定した波面をZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を算出し、その係数を元に波面補正デバイス108の変調量を算出する。変調量の算出においては、波面補正デバイスがZernike各次数の形状を形成するための基準変調量を元に、測定された全てのZernike次数の係数に関して基準変調量を乗算し、さらにそれらをすべて積算することによって最終的な変調量を得る。
【0030】
以上のように、本発明では、収差量としてこれに対応する波面を所定の関数であるZernike関数を用いて表すこととする。なお、Zernike関数は一例であり、波面を表す他の種々の関数を用いることも可能である。
【0031】
また、本実施例では波面補正デバイス108として画素数600×600の反射型液晶空間位相変調器を用いたので、360000画素それぞれの変調量を上記の算出方法に従って算出する。例えばZernike関数の1次〜4次までの係数を用いた計算を行う場合には、Z1-1、Z1+1、Z2-2、Z2-0、Z2+2、Z3-3、Z3-1、Z3+1、Z3+3、Z4-4、Z4-2、Z4-0、Z4+2、Z4+4の14の係数に関して基準変調量との乗算を、上記360000画素に対して行う。また、Zernike関数の1次〜6次までの係数を用いた計算を行う場合には、Z1-1、Z1+1、Z2-2、Z2-0、Z2+2、Z3-3、Z3-1、Z3+1、Z3+3、Z4-4、Z4-2、Z4-0、Z4+2、Z4+4、Z5-5、Z5-3、Z5-1、Z5+1、Z5+3、Z5+5、Z6-6、Z6-4、Z6-2、Z6-0、Z6+2、Z6+4、Z6+6の27の係数に関して基準変調量との乗算を、上記360000画素に対して行う。眼の収差の大部分を占めるのは、近視や遠視、乱視といった低次の収差であるが、それ以外に眼の光学系の微小な凹凸や涙液層の乱れに起因するより高次の収差が存在する。眼の収差をZernike関数系で表現する場合、近視、遠視や乱視であるZernike2次関数が大部分を占め、Zernike3次関数やZernike4次関数が若干含まれ、さらにはZernike5次や6次といった高次の関数がわずかに含まれる。Zernike1〜4次関数は、近視、遠視や乱視が急激に進むような場合を除いては、時間が経過しても大きな部分はあまり変化しない。また、収差の原因が近視、遠視や乱視である場合、Zernike1〜4次関数は、撮像する領域が近接している場合には、領域間で大きな差は生じない。
【0032】
以上述べたように、本発明においては、波面計測により得られる収差量は所定の関数によって表され、且つその場合高次関数により示される収差量は計算速度等の観点から含まないことが好ましい。また、計算上除外する次数は5次以上の高次の関数とすることがより好ましい。光学系の一部に被検眼が含まれていることで光学系が不確定な状態であるため、一般的に1回の収差測定と補正では低い収差の波面に到達することは困難で、収差測定と補正を繰り返して撮像可能な収差まで補正する。
【0033】
図1に示された眼底撮像装置はすべて不図示のコントローラで制御される。図8はコントローラのブロック図である。図8に示すように、コントローラ151は、CPU152、I/O制御部153、メモリ154で構成されている。CPU152では、CPU152に内蔵されるプログラムに従って、眼底撮像装置を制御する。メモリ154には、既に眼底撮像装置で撮像した被検者の眼の収差情報が、被検眼の撮像領域ごとに格納されている。具体的には、被検者のIDと図9の165で示したような撮像領域のアドレス(f、6)、更にその領域を撮像した時の収差量が格納される。
【0034】
I/O制御部153では、CPU152からの命令に従って、不図示のマウス、キーボード、バーコードリーダ、走査光学系109、補償光学制御部116、制御部117等を駆動、もしくは通信制御する。
【0035】
以上のような構成の眼底撮像装置において、本発明の動作を図10のフローチャートを用いて説明する。最初に、図示しないマウス、キーボード、更にはバーコードリーダ等を用い、被検者に対する被検眼の撮像領域を指定する(ステップ101、以下S101)。ここで、この被検者に対して、S101で指定した撮像領域を撮像したことがあるか否かを判断する(S102)。該ステップにより為される工程は、本発明における被検眼の収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定する工程に対応し、該工程はコントローラ151において本発明における判定手段として機能する領域により実行される。過去に指定した領域の撮像をしたことがある場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されている場合には、指定した領域に対する前回撮像した時の収差量、すなわちZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を補償光学制御部116にセットする(S103)。また、指定した領域の撮像を過去にしたことが無い場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されていない場合には、予め設定されている基準収差量および該収差量に関する情報を補償光学制御部116にセットする(S104)。この被検者の撮像が初めての場合にも、指定した領域を過去に撮像したことが無い場合と同様に処理される。なお、以上の工程は、本発明における、被検眼の収差に関する情報が予め記憶されている場合には該情報を選択し、且つ記憶されていない場合には該情報とは異なる他の情報を選択する工程に対応し、当該工程はコントローラ151における選択手段として機能する領域により実行される。
【0036】
次に補償光学制御部116は、セットされた収差量を補正するような変調量(補正量)を計算し(S105)、波面補正デバイス108にそのように変調するように指令する(S106)。次に、S106で変調された状態で、被検者の指定された領域の収差量を波面センサー115によって測定する(S107)。ここで、測定された収差量が基準値よりも小さいか否かを判断(S108)する。収差量が基準値以上の場合には、この状態での収差量を補正するような変調量(補正量)を計算し(S105)、以下収差量が基準値よりも小さくなるまでこの工程を繰り返す。収差量が基準値よりも小さくなった段階で、被検眼の指定された領域を撮像し(S109)、最後に、指定された領域に対する最新の収差量をメモリ154に記憶して(S110)撮像を終了する。以上の収差量の補正を行う工程は、本発明における選択された情報或いは他の情報に基づいて被検眼の収差の補正を行う工程に対応し、当該工程は補償光学制御部116、波面センサー115、およびコントローラ151におけるこれらを制御する領域によって実行され、これら構成は本発明における収差補正手段として機能する。また、収差量が基準値よりも小さくなったか否かの判断は、本発明における補正後の被検眼の収差と基準値とを比較する工程に対応し、当該工程はコントローラ151において比較手段として機能する領域によって実行される。さらに、指定された領域に対する最新の収差量を記憶するS110の工程は、本発明での、補正が行われた被検眼の収差に関する新たな情報を、新たな予め記憶されている収差に関する情報として記憶するする工程に対応し、当該工程はコントローラ151によって実行される。
【0037】
なお、以上に述べた、本発明において収差に関する情報は、被検眼の画像において特定の画素によって規定される領域と、該画素による撮像画像の解像度、および収差量を含む。
【0038】
図11は、収差補正回数と収差量の関係を表したグラフである。横軸が収差補正回数、すなわち図10のフローチャートのS105〜S108のループの回数であり、収差補正に要する時間を表している。縦軸は、収差量を表している。173は従来の方法で収差補正を行ったときの状態を表す曲線であり、172は本発明の方法で収差補正を行ったときの状態を表す曲線である。また、171はS108で収差量の大きさを比較する基準値である。図11に示すように本発明の方法で収差補正を行った場合には、補正時間aで撮像が開始され、従来の方法で収差補正を行った時には、補正時間bで撮像が開始される。
【0039】
このように、本実施例によれば、過去に撮像した時の収差情報を用いることにより、収差補正に要する時間が短縮することが可能になり、短時間で撮像することが可能となる。
【実施例2】
【0040】
実施例2として、図12のフローチャートを用いて、本発明を適用した実施例1とは異なる形態の眼底撮像装置の制御方法の例について説明する。本実施例において、基本的な装置構成は実施例1と同様である。また、実施例1と同じ動作に関しては、説明を省略する。
【0041】
本実施例では、撮像しようとしている領域を過去には撮像したことはないが、近接する領域は撮像したことがある場合に有効な方法を説明する。
【0042】
最初に、図示しないマウス、キーボード、更にはバーコードリーダ等を用い、被検者に対する被検眼の撮像領域を指定する(S201)。ここで、この被検者に対して、S201で指定した撮像領域を撮像したことがあるか否かを判断する(S202)。過去に、指定した領域の撮像をしたことがある場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されている場合には、指定した領域に対する前回撮像した時の収差量、すなわちZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を補償光学制御部116にセットする(S203)。
【0043】
また、指定した領域を過去に撮像したことが無い場合には、近接する領域の撮像をしたことがあるか否かを判断する(S204)。ここでは、指定された領域を中心に、上下左右に5×5領域分の領域を近接する領域と定義する。具体的には、図9に示すように指定された領域165のアドレスが(f、6)の場合、近接する領域は、アドレス(d、4)、(h、4)、(d、8)、(h、8)の領域で囲まれた領域166となる。近接した領域を撮像したことがある場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されている場合には、その近接する領域のうち一番近い領域を撮像した時の収差量、すなわちZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を補償光学制御部116にセットする(S205)。また、指定した領域に近接する領域の撮像を過去にしたことが無い場合、すなわち指定した領域に近接する領域の収差情報がメモリ154に格納されていない場合には、基準収差量を補償光学制御部116にセットする(S206)。この被検者の撮像が初めての場合にも、指定した領域、および指定した領域に近接した領域を過去に撮像したことが無い場合と同様に処理される。以降、S207〜S212の工程は、実施例1と同様である。
【0044】
すなわち、本実施例では、被検眼の収差の補正を開始する際に、予め記憶された収差に関する情報を取得する工程において、眼底像を得ようとする被検眼における領域についての予め記憶された情報が存在しない場合には、該領域に最も近い領域について予め記憶された前収差に関する情報を他の情報として選択し、以降の工程を行っている。
【0045】
このように、本実施例2によれば、指定した領域に近接する領域を過去に撮像した時の収差情報を用いることにより、収差補正に要する時間が短縮することが可能になり、短時間で撮像することが可能となる。
【実施例3】
【0046】
実施例3では、解像度変更部を設けた装置について説明する。図13に示すように解像度変更部121は、反射ミラー107−4と走査光学系109の間に配置されている。解像度変更部121は複数のレンズから構成され、不図示のコントローラからの制御信号に応じて水晶体122に入射させる測定光105の光束径を変更させることにより、眼底上のビームスポット径、すなわち撮像画像の解像度を変更させる。具体的には、眼底上のビームスポット径を小さくする、すなわち解像度を大きくする場合には、水晶体111−1を通過する測定光の光束径を大きくする。また、眼底上のビームスポット径を大きくする、すなわち解像度を小さくする場合には、水晶体111−1を通過する測定光105の光束径を小さくする。測定光105が水晶体111−1を通過する光束径が変更されると、それに伴い収差量も多少変化することになる。なお、本実施例に示すような装置では、コントローラ151を構成するメモリ154には、既に眼底撮像装置で撮像した被検者の眼の収差情報が、被検眼の撮像領域、撮像時の解像度ごとに格納されている。
【0047】
次に、図13で示すような構成の眼底撮像装置において、本発明の動作を図14のフローチャートを用いて説明する。なお、実施例1、および実施例2と同じ動作に関しては、説明を省略する。
【0048】
最初に、図示しないマウス、キーボード、更にはバーコードリーダ等を用い、被検者に対する被検眼の撮像領域、撮像画像の解像度を指定する(S301)。ここで、この被検者に対して、S301で指定した撮像領域を撮像したことがあるか否かを判断する(S302)。過去に、指定した領域を撮像したことがある場合には、指定した領域で指定した解像度で撮像したことがあるか否かを判断する(S303)。指定した解像度で撮像したことがある場合には、指定した領域、指定した解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S304)。また、指定した解像度で撮像したことがない場合には、指定した領域、異なる解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S305)。
【0049】
次に、指定した領域を撮像したことがない場合には、今度は指定した領域と近接した領域で撮像したことがあるか否かを判断する(S306)。近接した領域で撮像したことがない場合には、基準収差量を補償光学制御部116にセットする(S307)。近接した領域で撮像したことがある場合には、次に指定した解像度で撮像したことがあるか否かを判断する(S308)。指定した解像度で撮像したことがある場合には、近接した領域、指定した解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S309)。また、指定した解像度で撮像したことがない場合には、近接した領域、異なる解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S310)。この被検者の撮像が初めての場合にも、指定した領域、および指定した領域に近接した領域を過去に撮像したことが無い場合と同様に処理される。以降、S311〜S316の工程は、実施例1,2と同様である。
【0050】
このように、本実施例3によれば、指定した領域に近接する領域、更には指定した解像度における過去に撮像した時の収差情報を用いることにより、収差補正に要する時間が短縮することが可能になり、短時間で撮像することが可能となる。
【0051】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0052】
101:光源
102:光ファイバー
103:コリメータ
104:光分割部
105:測定光
106:光分割部
107:反射ミラー
108:波面補正デバイス
109:走査光学系
110:接眼レンズ
111:眼
112:コリメータ
113:光ファイバー
114:光強度センサー
115:波面センサー
116:補償光学制御部
117:制御部
118:ディスプレイ
119:光分割部
120:固視灯
121:解像度変更部
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底撮像方法、および眼底撮像装置に関し、特に、被検眼の収差を測定して補正する補償光学機能を有し、撮像画像の取得状況に応じて収差を補正する収差補正方法および該方法により収差の補正が可能な眼底撮像方法、および眼底撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科用の撮像装置として、眼底に2次元的にレーザ光を照射してその反射光を受光して画像化するSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope:走査レーザ検眼鏡)や、低コヒーレンス光の干渉を利用したイメージング装置が開発されている。低コヒーレンス光の干渉を利用したイメージング装置は、OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層装置あるいは光干渉断層法)と呼ばれ、特に、眼底あるいはその近傍の断層像を得る目的で用いられている。OCTの種類としては、TD−OCT(Time Domain OCT:タイムドメイン法)や、SD−OCT(Spectral Domain OCT:スペクトラルドメイン法)等を含め、種々のものが開発されてきている。
【0003】
特に、このような眼科用の撮像装置は、近年において、照射レーザの高NA化等によってさらなる高解像度化が進められている。
【0004】
しかしながら、眼底を撮像する場合には、角膜や水晶体等の眼の光学組織を通して撮像をしなければならない。そのため、高解像度化が進むに連れて、これら角膜や水晶体の収差が撮像画像の画質に大きく影響するようになってきた。
【0005】
そこで、眼の収差を測定し、その収差を補正する補償光学(Adaptive Optics:AO)機能を光学系に組み込んだ、AO−SLOやAO−OCTの研究が進められている。例えば、非特許文献1に、AO−OCTの例が示されている。これらAO−SLOやAO−OCTは、一般的にはシャックハルトマン波面センサー方式によって眼の波面を測定する。シャックハルトマン波面センサー方式とは、眼に測定光を入射し、その反射光をマイクロレンズアレイを通してCCDカメラに受光することによって波面を測定するものである。測定した波面を補正するように可変形状ミラーや、空間位相変調器を駆動し、それらを通して眼底の撮像を行うことにより、AO−SLOやAO−OCTは高解像度な撮像が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Zhang et al,Optics Express,Vol.14,No.10,15May2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
眼科装置に用いるAOにおいては、一般的に波面センサーで測定した収差をZernike関数のような関数でモデル化し、その関数を用いて波面補正器の補正量を計算する。複雑な形状を補正するためには、多くの次数を持つ関数で収差をモデル化して補正量を算出し、波面補正器を制御する必要がある。
【0008】
しかし、補正量を算出することは非常に計算負荷が高く、計算時間の増大が大きな問題となっている。特に、眼科装置に対しては、病気の経過観察を行うために定期的に患部の観察を行うことが求められているため、撮像時間を少しでも短縮することが眼科医療の効率を向上させるためには不可欠となっている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、AOを用いる眼科装置において、眼の収差補正に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る収差補正方法は、被検眼の収差を補正する収差補正方法であって、前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定手段により判定する工程と、 選択手段によって、前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されている場合には前記情報を選択し、且つ記憶されていない場合には前記情報とは異なる他の情報を選択する工程と、選択された前記情報或いは前記他の情報に基づいて、収差補正手段により前記被検眼の収差の補正を行う工程と、前記補正が行われた前記被検眼の収差に関する新たな情報を、新たな予め記憶されている収差に関する情報として記憶手段が記憶するする工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前回撮影したときの情報を利用することにより、収差補正を高速化することが可能となり、診察に要する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1における補償光学系を備えたSLOによる眼底撮像装置の構成例の模式図。
【図2】本発明の実施例1における波面補正デバイスの一例を示す模式図。
【図3】波面補正デバイスの他の例を示す模式図。
【図4】シャックハルトマンセンサーの構成を示す模式図。
【図5】波面を測定する光線がCCDセンサー上に集光された状態を示す模式図。
【図6】球面収差を持つ波面を測定した際の模式図。
【図7】固視灯を説明する図。
【図8】コントローラを説明する図。
【図9】眼底を格子状に分割した撮像領域を説明する図。
【図10】本発明の実施例1における眼底撮像装置の制御ステップを示すフローチャート。
【図11】収差補正回数と収差量の関係を表したグラフ。
【図12】本発明の実施例2における眼底撮像装置の制御ステップを示すフローチャート。
【図13】本発明の実施例3における補償光学系を備えたSLOによる眼底撮像装置の構成例の模式図。
【図14】本発明の実施例3における眼底撮像装置の制御ステップを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。但し、本発明は以下の実施例の構成によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
実施例1として、本発明を適用した眼底撮像装置の構成について図1を用いて説明する。
なお、本実施例においては、測定対象である被検査物を眼とし、眼で発生する収差を補償光学系で補正し、眼底を撮像するようにした一例について説明する。
【0015】
図1において、101は光源であり、波長840nmのSLD光源(Super Luminescent Diode)を用いた。光源101の波長は特に制限されるものではないが、眼底撮像用としては被検者の眩しさの軽減と解像度維持のために、800〜1500nm程度が好適に用いられる。本実施例においてはSLD光源を用いたが、その他にレーザ等も用いられる。本実施例では眼底撮像と波面測定のための光源を共用しているが、それぞれを別光源とし、光路の途中で合波する構成としても良い。
【0016】
光源101から照射された光は、単一モード光ファイバー102を通って、コリメータ103により、平行光線(測定光105)として照射される。
【0017】
照射された測定光105はビームスプリッタからなる光分割部104を透過し、補償光学の光学系に導光される。
【0018】
補償光学系は、光分割部106、波面センサー115、波面補正デバイス108および、それらに導光するための反射ミラー107−1〜4から構成される。
ここで、反射ミラー107−1〜4は、少なくとも眼111の瞳と波面センサー115、波面補正デバイス108とが光学的に共役関係になるように設置されている。また、光分割部106として、本実施例ではビームスプリッタを用いた。
【0019】
光分割部106を透過した測定光105は、反射ミラー107−1と107−2で反射されて波面補正デバイス108に入射する。波面補正デバイス108で反射された測定光105は、反射ミラー107−3に出射される。
【0020】
本実施例では、波面補正デバイス108として液晶素子を用いた空間位相変調器を用いた。図2に反射型液晶光変調器の模式図を示す。本変調器はベース部122とカバー123に挟まれた空間に液晶分子125が封入されている構造となっている。ベース部122には複数の画素電極124を有し、カバー123には不図示の透明な対向電極を有している。電極間に電圧を印加していない場合には、液晶分子は125−1のような配向をしており、電圧を印加すると125−2のような配向状態に遷移し、入射光に対する屈折率が変化する。各画素電極の電圧を制御して各画素の屈折率を変化させることにより、空間的な位相変調が可能となる。例えば入射光126が本変調器に入射した場合、液晶分子125−2を通過する光は液晶分子125−1を通過する光よりも位相が遅れ、結果として図中127で示すような波面を形成する。一般的に反射型液晶光変調器は、数万〜数十万個の画素から構成されている。また、液晶光変調器は偏光特性を有するため、入射光の偏光を調整するための偏光素子を具備することもある。
【0021】
波面補正デバイス108の他の例としては、可変形状ミラーがある。可変形状ミラーとは、局所的に光の反射方向を変えることができるものであり、様々な方式のものが実用化されている。その一例として、他の波面補正デバイス108の断面を図3に示す。入射光を反射する変形可能な膜状のミラー面129と、ベース部128と、これらに挟まれて配置されたアクチュエータ130と、ミラー面129を周囲から支持する不図示の支持部から構成されている。アクチュエータ130の動作原理としては、静電力や磁気力、圧電効果を利用したものがあり、動作原理によってアクチュエータ130の構成は異なる。アクチュエータ130はベース部128上に二次元的に複数配列されていて、それらを選択的に駆動することにより、ミラー面129を自在に変形できるようになっている。一般的に可変形状ミラーは数十〜数百のアクチュエータで構成されている。
【0022】
図1において、反射ミラー107−3、4で反射された光は、走査光学系109によって、1次元もしくは2次元に走査される。本実施例では走査光学系109に主走査用(眼底水平方向)と副走査用(眼底垂直方向)として2つのガルバノスキャナーを用いた。より高速な撮像のために、走査光学系109の主走査用に共振スキャナーを用いることもある。走査光学系109内の各スキャナーを光学的な共役状態にするために、各スキャナーの間にミラーやレンズといった光学素子を用いる装置構成の場合もある。図9は眼底撮像装置が、被検眼の眼底を分割して撮像する様子を示したもので、161は眼底の2次元画像であり、162は黄斑、163は視神経乳頭である。164は眼底161を格子状に分割した状態を表したもので、水平方向、垂直方向にはそれぞれa〜p、1〜16のアドレスが割り振られており、眼底は16×16の256個に分割されて領域毎に撮像される。更に、格子一つは、走査光学系109により、主走査方向、副走査方向それぞれに、3μm角の画素256×256に分割されて読み取られる。
【0023】
走査光学系109で走査された測定光105は、接眼レンズ110−1および110−2を通して眼111に照射される。111−1は、眼のレンズに相当する水晶体である。眼111に照射された測定光は眼底で反射もしくは散乱される。接眼レンズ110−1および110−2の位置を調整することによって、眼111の視度にあわせて最適な照射を行うことが可能となる。ここでは、接眼部にレンズを用いたが、球面ミラー等で構成しても良い。
【0024】
119はビームスプリッタである光分光器、120は固視灯である。ビームスプリッタ119は、被検眼に対して固視灯120からの光を、測定光105と共に被検眼に導くものである。固視灯120は、被検者に対して視線をどこに向けるかを指示するためのもので、液晶ディスプレイ、LEDを平面に格子状に並べたもの等で構成される。図7に、固視灯120を構成する液晶ディスプレイ141の拡大図を示す。図7に示すように、液晶ディスプレイ141上には142で示されるような十字形が点灯される。被検者には、十字形142の交点を見てもらうことにより、被検眼の動きを停止させることができる。また、十字形142の点灯位置を、液晶ディスプレイ141上で上下左右に移動させることにより、被検者の視線をコントロールし、被検眼の所望の領域を観察することが可能となる。
【0025】
眼111の網膜から反射もしくは散乱された反射光は、入射した時の経路を逆向きに進行し、光分割部106によって一部は波面センサー115に反射され、光線の波面を測定するために用いられる。
【0026】
本実施例では、波面センサー115としてシャックハルトマンセンサーを用いた。図4にシャックハルトマンセンサーの模式図を示す。131が波面を測定する光線であり、マイクロレンズアレイ132を通して、CCDセンサー133上の焦点面134に集光される。図4の(a)のA-A‘で示す位置から見た様子を示す図が図4の(b)であり、マイクロレンズアレイ132が、複数のマイクロレンズ135から構成されている様子を示したものである。光線131は各マイクロレンズ135を通してCCDセンサー133上に集光されるため、光線131はマイクロレンズ135の個数分のスポットに分割されて集光される。図5にCCDセンサー133上に集光された状態を示す。各マイクロレンズを通過した光線はスポット136に集光される。そして、この各スポット136の位置から、入射した光線の波面を計算する。図6(a)に球面収差を持つ波面を測定した場合の模式図を示す。光線131は137で示すような波面で形成されている。光線131はマイクロレンズアレイ132によって、波面の局所的な垂線方向の位置に集光される。この場合のCCDセンサー133の集光状態を図6(b)に示す。光線131が球面収差を持つため、スポット136は中央部に偏った状態で集光される。この位置を計算することによって、光線131の波面が検出できる。本実施例では波面センサーにシャックハルトマンセンサーを用いたが、それに限定されるものではなく、曲率センサーのような他の波面測定手段や、結像させた点像から逆計算で求めるような方法を用いても良い。
【0027】
図1において、光分割部106を透過した反射光は光分割部104によって一部が反射され、コリメータ112、光ファイバー113を通して光強度センサー114に導光される。光強度センサー114で光は電気信号に変換され、制御部117によって眼底画像として画像に構成されて、ディスプレイ118に表示される。
【0028】
波面センサー115は、補償光学制御部116に接続され、受光した波面を補償光学制御部116に伝える。波面補正デバイス108も補償光学制御部116に接続されており、補償光学制御部116から指示された変調を行う。補償光学制御部116は波面センサー115の測定結果による取得された波面を基に、収差のない波面へと補正するような変調量(補正量)を計算し、波面補正デバイス108にそのように変調するように指令する。波面の測定と波面補正デバイスへの指示は繰り返し処理され、常に最適な波面となるようにフィードバック制御が行われる。
【0029】
本実施例では、測定した波面をZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を算出し、その係数を元に波面補正デバイス108の変調量を算出する。変調量の算出においては、波面補正デバイスがZernike各次数の形状を形成するための基準変調量を元に、測定された全てのZernike次数の係数に関して基準変調量を乗算し、さらにそれらをすべて積算することによって最終的な変調量を得る。
【0030】
以上のように、本発明では、収差量としてこれに対応する波面を所定の関数であるZernike関数を用いて表すこととする。なお、Zernike関数は一例であり、波面を表す他の種々の関数を用いることも可能である。
【0031】
また、本実施例では波面補正デバイス108として画素数600×600の反射型液晶空間位相変調器を用いたので、360000画素それぞれの変調量を上記の算出方法に従って算出する。例えばZernike関数の1次〜4次までの係数を用いた計算を行う場合には、Z1-1、Z1+1、Z2-2、Z2-0、Z2+2、Z3-3、Z3-1、Z3+1、Z3+3、Z4-4、Z4-2、Z4-0、Z4+2、Z4+4の14の係数に関して基準変調量との乗算を、上記360000画素に対して行う。また、Zernike関数の1次〜6次までの係数を用いた計算を行う場合には、Z1-1、Z1+1、Z2-2、Z2-0、Z2+2、Z3-3、Z3-1、Z3+1、Z3+3、Z4-4、Z4-2、Z4-0、Z4+2、Z4+4、Z5-5、Z5-3、Z5-1、Z5+1、Z5+3、Z5+5、Z6-6、Z6-4、Z6-2、Z6-0、Z6+2、Z6+4、Z6+6の27の係数に関して基準変調量との乗算を、上記360000画素に対して行う。眼の収差の大部分を占めるのは、近視や遠視、乱視といった低次の収差であるが、それ以外に眼の光学系の微小な凹凸や涙液層の乱れに起因するより高次の収差が存在する。眼の収差をZernike関数系で表現する場合、近視、遠視や乱視であるZernike2次関数が大部分を占め、Zernike3次関数やZernike4次関数が若干含まれ、さらにはZernike5次や6次といった高次の関数がわずかに含まれる。Zernike1〜4次関数は、近視、遠視や乱視が急激に進むような場合を除いては、時間が経過しても大きな部分はあまり変化しない。また、収差の原因が近視、遠視や乱視である場合、Zernike1〜4次関数は、撮像する領域が近接している場合には、領域間で大きな差は生じない。
【0032】
以上述べたように、本発明においては、波面計測により得られる収差量は所定の関数によって表され、且つその場合高次関数により示される収差量は計算速度等の観点から含まないことが好ましい。また、計算上除外する次数は5次以上の高次の関数とすることがより好ましい。光学系の一部に被検眼が含まれていることで光学系が不確定な状態であるため、一般的に1回の収差測定と補正では低い収差の波面に到達することは困難で、収差測定と補正を繰り返して撮像可能な収差まで補正する。
【0033】
図1に示された眼底撮像装置はすべて不図示のコントローラで制御される。図8はコントローラのブロック図である。図8に示すように、コントローラ151は、CPU152、I/O制御部153、メモリ154で構成されている。CPU152では、CPU152に内蔵されるプログラムに従って、眼底撮像装置を制御する。メモリ154には、既に眼底撮像装置で撮像した被検者の眼の収差情報が、被検眼の撮像領域ごとに格納されている。具体的には、被検者のIDと図9の165で示したような撮像領域のアドレス(f、6)、更にその領域を撮像した時の収差量が格納される。
【0034】
I/O制御部153では、CPU152からの命令に従って、不図示のマウス、キーボード、バーコードリーダ、走査光学系109、補償光学制御部116、制御部117等を駆動、もしくは通信制御する。
【0035】
以上のような構成の眼底撮像装置において、本発明の動作を図10のフローチャートを用いて説明する。最初に、図示しないマウス、キーボード、更にはバーコードリーダ等を用い、被検者に対する被検眼の撮像領域を指定する(ステップ101、以下S101)。ここで、この被検者に対して、S101で指定した撮像領域を撮像したことがあるか否かを判断する(S102)。該ステップにより為される工程は、本発明における被検眼の収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定する工程に対応し、該工程はコントローラ151において本発明における判定手段として機能する領域により実行される。過去に指定した領域の撮像をしたことがある場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されている場合には、指定した領域に対する前回撮像した時の収差量、すなわちZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を補償光学制御部116にセットする(S103)。また、指定した領域の撮像を過去にしたことが無い場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されていない場合には、予め設定されている基準収差量および該収差量に関する情報を補償光学制御部116にセットする(S104)。この被検者の撮像が初めての場合にも、指定した領域を過去に撮像したことが無い場合と同様に処理される。なお、以上の工程は、本発明における、被検眼の収差に関する情報が予め記憶されている場合には該情報を選択し、且つ記憶されていない場合には該情報とは異なる他の情報を選択する工程に対応し、当該工程はコントローラ151における選択手段として機能する領域により実行される。
【0036】
次に補償光学制御部116は、セットされた収差量を補正するような変調量(補正量)を計算し(S105)、波面補正デバイス108にそのように変調するように指令する(S106)。次に、S106で変調された状態で、被検者の指定された領域の収差量を波面センサー115によって測定する(S107)。ここで、測定された収差量が基準値よりも小さいか否かを判断(S108)する。収差量が基準値以上の場合には、この状態での収差量を補正するような変調量(補正量)を計算し(S105)、以下収差量が基準値よりも小さくなるまでこの工程を繰り返す。収差量が基準値よりも小さくなった段階で、被検眼の指定された領域を撮像し(S109)、最後に、指定された領域に対する最新の収差量をメモリ154に記憶して(S110)撮像を終了する。以上の収差量の補正を行う工程は、本発明における選択された情報或いは他の情報に基づいて被検眼の収差の補正を行う工程に対応し、当該工程は補償光学制御部116、波面センサー115、およびコントローラ151におけるこれらを制御する領域によって実行され、これら構成は本発明における収差補正手段として機能する。また、収差量が基準値よりも小さくなったか否かの判断は、本発明における補正後の被検眼の収差と基準値とを比較する工程に対応し、当該工程はコントローラ151において比較手段として機能する領域によって実行される。さらに、指定された領域に対する最新の収差量を記憶するS110の工程は、本発明での、補正が行われた被検眼の収差に関する新たな情報を、新たな予め記憶されている収差に関する情報として記憶するする工程に対応し、当該工程はコントローラ151によって実行される。
【0037】
なお、以上に述べた、本発明において収差に関する情報は、被検眼の画像において特定の画素によって規定される領域と、該画素による撮像画像の解像度、および収差量を含む。
【0038】
図11は、収差補正回数と収差量の関係を表したグラフである。横軸が収差補正回数、すなわち図10のフローチャートのS105〜S108のループの回数であり、収差補正に要する時間を表している。縦軸は、収差量を表している。173は従来の方法で収差補正を行ったときの状態を表す曲線であり、172は本発明の方法で収差補正を行ったときの状態を表す曲線である。また、171はS108で収差量の大きさを比較する基準値である。図11に示すように本発明の方法で収差補正を行った場合には、補正時間aで撮像が開始され、従来の方法で収差補正を行った時には、補正時間bで撮像が開始される。
【0039】
このように、本実施例によれば、過去に撮像した時の収差情報を用いることにより、収差補正に要する時間が短縮することが可能になり、短時間で撮像することが可能となる。
【実施例2】
【0040】
実施例2として、図12のフローチャートを用いて、本発明を適用した実施例1とは異なる形態の眼底撮像装置の制御方法の例について説明する。本実施例において、基本的な装置構成は実施例1と同様である。また、実施例1と同じ動作に関しては、説明を省略する。
【0041】
本実施例では、撮像しようとしている領域を過去には撮像したことはないが、近接する領域は撮像したことがある場合に有効な方法を説明する。
【0042】
最初に、図示しないマウス、キーボード、更にはバーコードリーダ等を用い、被検者に対する被検眼の撮像領域を指定する(S201)。ここで、この被検者に対して、S201で指定した撮像領域を撮像したことがあるか否かを判断する(S202)。過去に、指定した領域の撮像をしたことがある場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されている場合には、指定した領域に対する前回撮像した時の収差量、すなわちZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を補償光学制御部116にセットする(S203)。
【0043】
また、指定した領域を過去に撮像したことが無い場合には、近接する領域の撮像をしたことがあるか否かを判断する(S204)。ここでは、指定された領域を中心に、上下左右に5×5領域分の領域を近接する領域と定義する。具体的には、図9に示すように指定された領域165のアドレスが(f、6)の場合、近接する領域は、アドレス(d、4)、(h、4)、(d、8)、(h、8)の領域で囲まれた領域166となる。近接した領域を撮像したことがある場合、すなわち指定した領域の収差情報がメモリ154に格納されている場合には、その近接する領域のうち一番近い領域を撮像した時の収差量、すなわちZernike関数にモデル化して各次数にかかる係数を補償光学制御部116にセットする(S205)。また、指定した領域に近接する領域の撮像を過去にしたことが無い場合、すなわち指定した領域に近接する領域の収差情報がメモリ154に格納されていない場合には、基準収差量を補償光学制御部116にセットする(S206)。この被検者の撮像が初めての場合にも、指定した領域、および指定した領域に近接した領域を過去に撮像したことが無い場合と同様に処理される。以降、S207〜S212の工程は、実施例1と同様である。
【0044】
すなわち、本実施例では、被検眼の収差の補正を開始する際に、予め記憶された収差に関する情報を取得する工程において、眼底像を得ようとする被検眼における領域についての予め記憶された情報が存在しない場合には、該領域に最も近い領域について予め記憶された前収差に関する情報を他の情報として選択し、以降の工程を行っている。
【0045】
このように、本実施例2によれば、指定した領域に近接する領域を過去に撮像した時の収差情報を用いることにより、収差補正に要する時間が短縮することが可能になり、短時間で撮像することが可能となる。
【実施例3】
【0046】
実施例3では、解像度変更部を設けた装置について説明する。図13に示すように解像度変更部121は、反射ミラー107−4と走査光学系109の間に配置されている。解像度変更部121は複数のレンズから構成され、不図示のコントローラからの制御信号に応じて水晶体122に入射させる測定光105の光束径を変更させることにより、眼底上のビームスポット径、すなわち撮像画像の解像度を変更させる。具体的には、眼底上のビームスポット径を小さくする、すなわち解像度を大きくする場合には、水晶体111−1を通過する測定光の光束径を大きくする。また、眼底上のビームスポット径を大きくする、すなわち解像度を小さくする場合には、水晶体111−1を通過する測定光105の光束径を小さくする。測定光105が水晶体111−1を通過する光束径が変更されると、それに伴い収差量も多少変化することになる。なお、本実施例に示すような装置では、コントローラ151を構成するメモリ154には、既に眼底撮像装置で撮像した被検者の眼の収差情報が、被検眼の撮像領域、撮像時の解像度ごとに格納されている。
【0047】
次に、図13で示すような構成の眼底撮像装置において、本発明の動作を図14のフローチャートを用いて説明する。なお、実施例1、および実施例2と同じ動作に関しては、説明を省略する。
【0048】
最初に、図示しないマウス、キーボード、更にはバーコードリーダ等を用い、被検者に対する被検眼の撮像領域、撮像画像の解像度を指定する(S301)。ここで、この被検者に対して、S301で指定した撮像領域を撮像したことがあるか否かを判断する(S302)。過去に、指定した領域を撮像したことがある場合には、指定した領域で指定した解像度で撮像したことがあるか否かを判断する(S303)。指定した解像度で撮像したことがある場合には、指定した領域、指定した解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S304)。また、指定した解像度で撮像したことがない場合には、指定した領域、異なる解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S305)。
【0049】
次に、指定した領域を撮像したことがない場合には、今度は指定した領域と近接した領域で撮像したことがあるか否かを判断する(S306)。近接した領域で撮像したことがない場合には、基準収差量を補償光学制御部116にセットする(S307)。近接した領域で撮像したことがある場合には、次に指定した解像度で撮像したことがあるか否かを判断する(S308)。指定した解像度で撮像したことがある場合には、近接した領域、指定した解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S309)。また、指定した解像度で撮像したことがない場合には、近接した領域、異なる解像度に対する前回撮像した時の収差量を補償光学制御部116にセットする(S310)。この被検者の撮像が初めての場合にも、指定した領域、および指定した領域に近接した領域を過去に撮像したことが無い場合と同様に処理される。以降、S311〜S316の工程は、実施例1,2と同様である。
【0050】
このように、本実施例3によれば、指定した領域に近接する領域、更には指定した解像度における過去に撮像した時の収差情報を用いることにより、収差補正に要する時間が短縮することが可能になり、短時間で撮像することが可能となる。
【0051】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0052】
101:光源
102:光ファイバー
103:コリメータ
104:光分割部
105:測定光
106:光分割部
107:反射ミラー
108:波面補正デバイス
109:走査光学系
110:接眼レンズ
111:眼
112:コリメータ
113:光ファイバー
114:光強度センサー
115:波面センサー
116:補償光学制御部
117:制御部
118:ディスプレイ
119:光分割部
120:固視灯
121:解像度変更部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の収差を補正する収差補正方法であって、
前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定手段により判定する工程と、
選択手段によって、前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されている場合には前記情報を選択し、且つ記憶されていない場合には前記情報とは異なる他の情報を選択する工程と、
選択された前記情報或いは前記他の情報に基づいて、収差補正手段により前記被検眼の収差の補正を行う工程と、
前記補正が行われた前記被検眼の収差に関する新たな情報を、新たな予め記憶されている収差に関する情報として記憶手段が記憶する工程と、を有する
ことを特徴とする収差補正方法。
【請求項2】
前記収差に関する情報とは、前記被検眼の収差を測定した領域と、前記領域における収差量とであることを特徴とする請求項1に記載の収差補正方法。
【請求項3】
前記収差に関する情報とは、前記被検眼の収差を測定した領域と、前記測定した画像の解像度と、前記領域における収差量と、であることを特徴とする請求項1に記載の収差補正方法。
【請求項4】
前記収差量は、所定の関数を用いて表されることを特徴とする請求項2或いは3の何れかに記載の収差補正方法。
【請求項5】
前記新たな情報を記憶する工程では、前記収差量を前記所定の関数で表した場合における高次の収差量を含まない情報のみを記憶することを特徴とする請求項4に記載の収差補正方法。
【請求項6】
前記高次の収差量とは、5次よりも高次の関数で表された収差量であることを特徴とする請求項5に記載の収差補正方法。
【請求項7】
前記他の情報は、予め設定された基準収差量に関する情報であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の収差補正方法。
【請求項8】
前記被検眼の前記収差の補正を開始する際に、前記予め記憶された前記収差に関する情報を取得する工程において、前記収差に関する情報を得ようとする前記被検眼における領域についての前記予め記憶された情報が存在しない場合には前記領域に最も近い領域について予め記憶された前記収差に関する情報を前記他の情報として選択することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の収差補正方法。
【請求項9】
前記被検眼の眼底像を取得する眼底撮像方法であって、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の収差補正方法により補正された前記被検眼の収差と基準値とを比較する比較工程と、
前記比較工程において前記被検眼の収差が前記基準値よりも小さいと判断された場合には、前記収差を補正した状態にて前記被検眼の眼底像を撮像する工程と、を有することを特徴とする眼底撮像方法。
【請求項10】
被検眼の眼底像を撮像する際に被検眼の収差を補正する眼底撮像装置であって、
前記被検眼の前記収差に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記被検眼の前記収差に関する予め記憶された情報と、前記情報とは異なる他の情報との何れを用いるかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記情報或いは前記他の情報に基づいて前記被検眼の収差の補正を行う収差補正手段と、を有し、
前記記憶手段は、前記補正が行われた前記被検眼の収差に関する新たな情報を前記予め記憶された情報として記憶することを特徴とする眼底撮像装置。
【請求項1】
被検眼の収差を補正する収差補正方法であって、
前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定手段により判定する工程と、
選択手段によって、前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されている場合には前記情報を選択し、且つ記憶されていない場合には前記情報とは異なる他の情報を選択する工程と、
選択された前記情報或いは前記他の情報に基づいて、収差補正手段により前記被検眼の収差の補正を行う工程と、
前記補正が行われた前記被検眼の収差に関する新たな情報を、新たな予め記憶されている収差に関する情報として記憶手段が記憶する工程と、を有する
ことを特徴とする収差補正方法。
【請求項2】
前記収差に関する情報とは、前記被検眼の収差を測定した領域と、前記領域における収差量とであることを特徴とする請求項1に記載の収差補正方法。
【請求項3】
前記収差に関する情報とは、前記被検眼の収差を測定した領域と、前記測定した画像の解像度と、前記領域における収差量と、であることを特徴とする請求項1に記載の収差補正方法。
【請求項4】
前記収差量は、所定の関数を用いて表されることを特徴とする請求項2或いは3の何れかに記載の収差補正方法。
【請求項5】
前記新たな情報を記憶する工程では、前記収差量を前記所定の関数で表した場合における高次の収差量を含まない情報のみを記憶することを特徴とする請求項4に記載の収差補正方法。
【請求項6】
前記高次の収差量とは、5次よりも高次の関数で表された収差量であることを特徴とする請求項5に記載の収差補正方法。
【請求項7】
前記他の情報は、予め設定された基準収差量に関する情報であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の収差補正方法。
【請求項8】
前記被検眼の前記収差の補正を開始する際に、前記予め記憶された前記収差に関する情報を取得する工程において、前記収差に関する情報を得ようとする前記被検眼における領域についての前記予め記憶された情報が存在しない場合には前記領域に最も近い領域について予め記憶された前記収差に関する情報を前記他の情報として選択することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の収差補正方法。
【請求項9】
前記被検眼の眼底像を取得する眼底撮像方法であって、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の収差補正方法により補正された前記被検眼の収差と基準値とを比較する比較工程と、
前記比較工程において前記被検眼の収差が前記基準値よりも小さいと判断された場合には、前記収差を補正した状態にて前記被検眼の眼底像を撮像する工程と、を有することを特徴とする眼底撮像方法。
【請求項10】
被検眼の眼底像を撮像する際に被検眼の収差を補正する眼底撮像装置であって、
前記被検眼の前記収差に関する情報を記憶する記憶手段と、
前記被検眼の前記収差に関する情報が予め記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記被検眼の前記収差に関する予め記憶された情報と、前記情報とは異なる他の情報との何れを用いるかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記情報或いは前記他の情報に基づいて前記被検眼の収差の補正を行う収差補正手段と、を有し、
前記記憶手段は、前記補正が行われた前記被検眼の収差に関する新たな情報を前記予め記憶された情報として記憶することを特徴とする眼底撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−235834(P2012−235834A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105386(P2011−105386)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
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