説明

収穫機

【課題】クラッチ切りの操作が容易であり、クラッチ切りを行うと水平搬送部への動力伝達が完全に遮断される収穫機を提供する。
【解決手段】収穫機の一例であるねぎ収穫機は、圃場から収穫したねぎを水平方向に搬送する水平搬送部と、これに動力を伝達する動力伝達機構30を備える。動力伝達機構30には、伝達された動力によって回転する第3中間プーリ42を有した回転支持部41が設けられ、この回転支持部41に遊星減速機50が接続される。遊星減速機50の太陽歯車51が入力側要素であり内歯車が出力側要素である。遊星減速機50には、操作によって入力側要素に伝達された動力を遊星減速機50の出力側要素への伝達を遮断可能なクラッチ機構70が取り付けられる。クラッチ機構70は遊星減速機50の第1キャリア54に設けられたセレーション穴54aに沿ってスライド自在に支持されたセレーション軸71を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場から収穫した長尺作物を収穫して搬送する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような収穫機のうち、長尺作物の一例であるねぎを掘取って搬送し、その搬送過程で根部に付着している土を落とし、不要な根や葉を切断するなど調製して収容、あるいは結束するねぎ収穫機が知られている。
【0003】
このねぎ収穫機は、ねぎが植えられた圃場を進行する機体と、機体に装備され、圃場から収穫されたねぎを略水平方向に搬送する水平搬送部、水平搬送部から搬送されたねぎを下降させながら搬送して圃場の地面に対し機体の進行方向と交差する横姿勢で排出してねぎの地干しを可能にする下降搬送部及び駆動源からの動力を水平搬送部及び下降搬送部に伝達する動力伝達機構とを備えたものがある。このようなねぎ収穫機は、ねぎの地干しを行わずに水平搬送部上でねぎの結束作業を行う場合には、水平搬送部上に搬送されたねぎが移動しないように、水平搬送部を停止状態にする必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されているように、駆動源からの動力を水平搬送部に伝達する伝動ベルトを付勢するテンションローラの位置を後退させて伝動ベルトの緊張を解除して水平搬送部への動力伝達を遮断可能な動力伝達機構が提案されている。
【0005】
この動力伝達機構90は、図8(側面図)に示すように、ベルト伝動系91を介して油圧無断変速装置5aから出力される動力を回転支持部41に伝達
し、この動力を回転支持部41に設けられたプーリと水平搬送部17(文献では水平搬送ベルト)に設けられた従動プーリ21(文献では伝動プーリ)との間に掛け回された伝動ベルト43を介して水平搬送部17に伝達する。回転支持部41にはクラッチノブ92が回動自在に取り付けられており、クラッチノブ92には伝動ベルト43側へ延びるクラッチアーム93が接続され、クラッチアーム93の先端部にテンションロ−ラ46が回転自在に取り付けられ、クラッチアーム93の中間部に引っ張りばね94が取り付けられてテンションロ−ラ46を伝動ベルト43側に付勢している。クラッチノブ92は、これを回動すると、テンションロ−ラ46を伝動ベルト43に付勢して伝動ベルト43を緊張させるクラッチ入りの位置と、テンションロ−ラ46を伝動ベルト43から離反させて伝動ベルト43の緊張を解除するクラッチ切りの位置に移動可能に構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−176784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このクラッチノブに接続された引っ張りばねは、テンションロ−ラにより付勢された伝動ベルトの付勢方向前方側に伸張状態で配置されている。このため、クラッチ切りにするには、クラッチノブを回転してクラッチアームを介して引っ張りばねをさらに伸張させる方向に伸ばす必要がある。このため、増大する引っ張りばねの戻り力に逆らってクラッチノブを回さなければならず、クラッチ切りの操作が煩わしいという問題がある。
【0008】
またクラッチ切りの操作を行うと、伝動ベルトの緊張が解除されて伝動ベルトとプーリとの間の摩擦が小さくなり、プーリは空回りして伝動ベルトへの動力伝達は遮断される。しかしながら、伝動ベルトはプーリと非接触状態になるわけではないので、プーリの回転に伴って伝動ベルトが回動する場合がある。伝動ベルトが回動すると、水平搬送部上のねぎが移動してねぎの結束作業がし難くなるという問題が発生する。
【0009】
本発明は、クラッチ切りの操作が容易であり、クラッチ切りを行うと水平搬送部への動力伝達を完全に遮断することができる収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の収穫機(例えば、実施形態におけるねぎ収穫機1)は、長尺作物(例えば、実施形態におけるねぎN)が植えられた圃場を進行する機体と、該機体に装備され、圃場から収穫された長尺作物を略水平方向に搬送する水平搬送部及び駆動源からの動力を水平搬送部に伝達する動力伝達機構とを備えた収穫機において、動力伝達機構に遊星減速機を設けたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、水平搬送部に動力を伝達する動力伝達機構に遊星減速機を設けることにより、遊星減速機に入力された動力の伝達を遊星減速機内で遮断することが可能になる。このため、遊星減速機を介して水平搬送部への動力伝達の遮断を行うことができる。
【0012】
また本発明は、長尺作物が植えられた圃場を進行する機体と、該機体に装備され、圃場から収穫された長尺作物を略水平方向に搬送する水平搬送部と、該長尺作物を機体から下降させながら搬送し、地面に対し機体の移動方向と交差する横姿勢で排出する下降搬送部及び駆動源からの動力を各搬送部に伝達する動力伝達機構とを備えた収穫機において、動力伝達機構に遊星減速機を設けたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、水平搬送部及び下降搬送部に動力を伝達する動力伝達機構に遊星減速機を設けることにより、遊星減速機に入力された動力の伝達を遊星減速機内で遮断することが可能になる。このため、遊星減速機を介して水平搬送部及び下降搬送部への動力伝達の遮断を行うことができる。
【0014】
また本発明は、遊星減速機にクラッチ機構を設け、遊星減速機は、クラッチ機構のオン・オフ操作により、該遊星減速機の入力側要素に入力された動力を遊星減速機の出力側要素に伝達し若しくは入力側要素から出力側要素への動力伝達を遮断することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、遊星減速機にクラッチ機構を設けることにより、クラッチ機構がオン・オフ操作されると、遊星減速機は、遊星減速機の入力側要素に入力された動力を遊星減速機の出力側要素に伝達し若しくは入力側要素から出力側要素への動力伝達を遮断する。このため、水平搬送部への動力伝達を確実に接続及び遮断することができる。その結果、水平搬送部上で長尺作物の結束作業を行う場合に、水平搬送部を確実に停止状態にすることができ、結束作業の作業性を向上させることができる。
【0016】
また本発明は、遊星減速機の太陽歯車の回転軸を該遊星減速機の入力側要素とし、遊星減速機の内歯車を該遊星減速機の出力側要素としたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、遊星減速機の太陽歯車の回転軸を入力側要素とし、内歯車を出力側要素とすることにより、入力側要素に入力された動力を大きな減速比で減速して出力側要素から出力することができる。
【0018】
さらに本発明のクラッチ機構は、遊星減速機のキャリアに設けられたセレーション穴に沿ってスライド自在で且つ軸方向に回動自在に支持されたセレーション軸と、該セレーション軸の移動を操作する操作レバーと、セレーション軸の移動を規制する移動規制手段とを有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、クラッチ機構はセレーション軸と操作レバーと移動規制手段とを有することにより、セレーション軸をセレーション穴に挿着する場合には、移動規制手段による移動規制を解除し、操作レバーを把持してセレーション軸をセレーション穴側にスライド移動してセレーション穴に挿入し、移動規制手段によりセレーション軸の回動を規制する。その結果、遊星減速機のキャリアの回動が規制されるので、入力側要素に伝達された動力は太陽歯車に伝達されて太陽歯車を回転させて遊星歯車を自転させ、内歯車を回転させる。このため、動力は内歯車から伝動ベルトを介して水平搬送部に伝達される。つまり、セレーション軸をセレーション穴に挿着してセレーション軸の回動を規制することで、入力側要素に伝達された動力を水平搬送部に伝達することができる。一方、セレーション穴に挿着されたセレーション軸を抜脱する場合には、移動規制手段による移動規制を解除し、操作レバーを介してセレーション軸をセレーション穴から抜脱する方向にスライド移動させる。その結果、遊星減速機のキャリアの回動規制が解放され、入力側要素に伝達された動力は太陽歯車に伝達されて太陽歯車を回転させるとともに、遊星歯車を介してキャリアを回転させる。つまり、複数の遊星歯車は太陽歯車の周りを公転する。このため、内歯車は停止状態となり、入力側要素に伝達された動力は複数の遊星歯車と内歯車との間で遮断される。つまり、セレーション軸をセレーション穴から抜脱することにより、入力側要素に伝達された動力の出力側要素への伝達が完全に遮断される。このようにセレーション軸のセレーション穴への挿抜操作や移動規制手段の規制操作又は規制解除操作をするだけで、入力側要素に伝達された動力を水平搬送部に伝達し、又は水平搬送部への動力伝達を遮断できるので、動力伝達の切替え操作を容易にすることができる。
【0020】
また本発明の移動規制手段は、操作レバーに設けられた係止突起部(例えば、実施形態における係止ピン79)と、セレーション軸を支持する支持部に設けられて係止突起部と嵌合する係合孔部(例えば、実施形態における第1係合孔部62a、第2係合孔部62b)と、該係合孔部から延出する係止突起部の先端部に装着されて係止突起部が係合孔部から抜脱されるのを規制する抜脱規制部(例えば、実施形態における抜け止めピン80)を有することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、移動規制手段は係止突起部と係合孔部と抜脱規制部とを有して構成されることにより、セレーション穴から抜脱された状態のセレーション軸を支持部に固定することができ、クラッチ切りの状態を確実に維持することができる。このため、駆動源からの動力が水平搬送部に伝達される事態を確実に防止して、停止状態にある水平搬送部が動き出す事態を確実に防止することができる。またセレーション軸がセレーション穴に挿着された状態に維持することができ、クラッチ入りの状態を確実に維持することができる。このため、遊星減速機を介して水平搬送部に伝達される動力が途中で遮断される事態を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係わる収穫機によれば、動力伝達機構に遊星減速機を設け、この遊星減速機にクラッチ機構を設けることにより、クラッチ切りの操作が容易であり、クラッチ切りを行うと水平搬送部又は水平搬送部及び下降搬送部への動力伝達を完全に遮断可能な収穫機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の収穫機の好ましい実施の形態を図1から図7に基づいて説明する。本実施の形態は、長尺作物の収穫機のうち、ねぎ収穫機を例にして以下説明する。なお、説明の都合上、図1(側面図)及び図2(平面図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0024】
ねぎ収穫機1は、図1及び図2に示すように、機体2の左右両側にスピン旋回を可能にしたクローラ3,3を装備している。機体2の後部左側にはカバーにより覆われたエンジン部4が設けられ、その中に図示しないエンジンと油圧装置が搭載されている。油圧装置はエンジンから動力を受けて駆動するようになっている。クローラ3,3間の機体2の後部には、図3に示すHST(油圧無断変速装置)5aを備えたトランスミッション5が設けられ、このトランスミッション5及びHST5aにより変速された動力が、クローラ3,3及び後述する回転駆動部分に伝達されて駆動するようになっている。
【0025】
クローラ3,3間の機体2の下部前方には、先端部に掘取り刃6を有してこの掘取り刃6により掘り取られたねぎNの根部を縦姿勢に載置して揚上しながら後方斜め上方に向け搬送する無端バーコンベア7を備えた掘取り・搬送コンベア装置8が設けられている。この掘取り・搬送コンベア装置8の基端部は、機体2から前方に突出した伝動ケースを兼ねる支持フレーム10に対して上下に回動可能に枢支されている。また、掘取り・搬送コンベア装置8のフレームの後部下側にはブラケット8aが設けられ、このブラケット8aと機体2との間に介装された油圧シリンダ11の伸縮動により、掘取り・搬送コンベア装置8が上下方向に回動するようになっている。
【0026】
掘取り・搬送コンベア装置8の上方位置には、圃場から掘り取られたねぎNの茎葉部を縦姿勢で挟持して搬送して、掘取り・搬送コンベア装置8より長尺の挟持搬送ベルト9,9が対向して配設されている。この挟持搬送ベルト9,9は、弾性支持された複数のアームの各先端に軸支された填圧ローラ9aより填圧されて、ねぎNの茎葉部を傷つけることなく挟持して搬送するようになっている。
【0027】
掘取り・搬送コンベア装置8の上側にはねぎNに付着している土を落とす耕耘ロータ状の土落としロ−タ14が設けられ、この土落としロ−タ14の後方で挟持搬送ベルト9,9の下方位置には土落とし装置15が設けられている。この土落とし装置15は、回転しながらねぎNの根部に直接接触して、根部に付着している土を取り除く。
【0028】
挟持搬送ベルト9,9の搬送終端部の下側には、始端部が配置されて斜め上方へ延びる第2の挟持搬送ベルト16,16が設けられている。この第2の挟持搬送ベルト16,16は、その始端部で挟持搬送ベルト9,9により挟持搬送されてきたねぎNの茎葉部を継承し、縦姿勢のまま搬送しつつ順次斜め横姿勢に変換し、終端部でほぼ45度捻った状態で排出する。また、第2の挟持搬送ベルト16,16の搬送終端部側方には、第2の挟持搬送ベルト16,16により挟持搬送されてくるねぎNの葉部を支持して搬送する葉部搬送ベルト16aが、第2の挟持搬送ベルト16,16の終端回転支持部と同軸に設けられている。
【0029】
第2の挟持搬送ベルト16,16の搬送終端部の下方には、第2の挟持搬送ベルト16,16から排出されたねぎNを載置してほぼ水平状態で後方に向け搬送する水平搬送部17が設けられている。水平搬送部17は左右に対向配置された一対の無端Vベルト17a,17aを有してなる。
【0030】
第2の挟持搬送ベルト16,16の搬送終端部と水平搬送部17の搬送始端部との間には、上下に延びる段差が設けられている。この段差部分には、第2の挟持搬送ベルト16,16の搬送終端部から排出されたねぎNを一時的にストックし、ねぎNを整列して姿勢を整え、水平搬送部17の搬送始端部上に落下させるようにしたストックレーキ18が設けられている。
【0031】
水平搬送部17の搬送終端部には、これに連続して機体2から斜め下方へ延びる下降搬送部19が設けられている。この下降搬送部19は、左右方向に対向配置された一対の無端Vベルト19a,19aを有する。無端Vベルト19aには、ねぎNを係止して搬送するためのねぎ係止用突起19bが所定間隔を有して多数設けられている。この無端Vベルト19aは、水平搬送部17により搬送されてきたねぎNを承継して、機体2から後方に下降させながら搬送し、その搬送終端において地面Gに対し機体2の移動方向と交差する横姿勢で排出して、ねぎNの地干しを可能にする。
【0032】
水平搬送部17と下降搬送部19の駆動プーリ17b,19cは、同じ駆動回転軸20に取付けられ、駆動プーリ17bに無端Vベルト17aが、駆動プーリ19cに無端Vベルト19aがそれぞれ掛け回されて、水平搬送部17と下降搬送部19は同期して回転する。駆動回転軸20の軸端には図3(側面図)に示す従動プーリ21が取り付けられ、従動プーリ21は図3に示す動力伝達機構30から伝達される動力によって回転する。
【0033】
動力伝達機構30は、図3及び図4(部分断面図)に示すように、HST5aに取り付けられた駆動プーリ32、機体2に回動自在に設けられた第1中間プーリ33及び機体2に設けられた支持部34に回転自在に支持された第2中間プーリ35とこれらのプーリ間に掛け回された伝動ベルト36,37を有してなる第1動力伝達機構部31と、支持部34に回転自在に支持された回転支持部41に設けられた第3中間プーリ42と前述した従動プーリ21とこれらのプーリ間に掛け回された伝動ベルト43を有してなる第2動力伝達機構部40とを有してなる。
【0034】
回転支持部41は第2中間プーリ35と同軸上に配設されており、回転支持部41の中間部に第3中間プーリ42が形成されている。この第3中間プーリ42と前述した従動プーリ21との間に張りプーリ44を介装して伝動ベルト43が掛け回されている。この伝動ベルト43には支持部34に回動可能に取り付けられたアーム45の先端に軸支されたテンションローラ46が圧接されており、伝動ベルト43を緊張させている。
【0035】
回転支持部41の一方側端部には遊星減速機50が取り付けられている。遊星減速機50は、図4及び図5(分解斜視図)に示すように、中央部に配置されて回転自在に支持された太陽歯車51と、この太陽歯車51の外側に配置されて太陽歯車51と噛み合う複数の遊星歯車52と、太陽歯車51の回転軸51aと同軸上に配設されて回転可能に支持されて、複数の遊星歯車52を太陽歯車51の周りに公転させる第1キャリア54及び第2キャリア55と、複数の遊星歯車52の外側に回転自在に支持されてこれらの遊星歯車52と噛み合う内歯車56を備えてなる。太陽歯車51の回転軸51aは前述した第2中間プーリ35の回転軸35aに連結されている。つまり、太陽歯車51の回転軸51aが遊星減速機50の入力側要素となっている。また内歯車56の他方側端部にはボルト57を介して回転支持部41の一方側端部に接続されている。つまり、内歯車56は遊星減速機50の出力側要素となっており、回転支持部41と一体的に取り付けられている。
【0036】
第1キャリア54及び第2キャリア55は、複数の遊星歯車52を中央にしてその両側に対向配置されて一体的に取り付けられ、複数の遊星歯車52を自転可能に支持するとともに、太陽歯車51の周りを公転可能に支持する。第1キャリア54の中央部にはセレーション穴54aが形成され、このセレーション穴54aに後述するクラッチ機構70のセレーション軸71が挿抜される。
【0037】
遊星減速機50の一方側にはクラッチ機構70が設けられている。クラッチ機構70は、図4及び図6(a)(側面図)及び図6(b)(背面図)に示すように、第1キャリア54に設けられたセレーション穴54aに沿ってスライド自在で且つ軸方向に回動自在に支持されたセレーション軸71と、セレーション軸71に設けられてセレーション軸71を回動及びスライド移動の操作が可能な操作レバー73と、セレーション軸71の回動及びスライド移動を規制する移動規制手段77とを有してなる。
【0038】
セレーション軸71は、軸本体部71aとこの先端部に形成されたセレーション71bとセレーション基部側の軸本体部71aに突設された移動規制板71cとを有してなる。支持部34にはセレーション軸71を摺動自在に支持する筒部60が設けられ、筒部60の先端部には第1キャリア54の先端側を覆うカバー部61が取り付けられている。筒部60内の一方側には軸本体部71aを摺動自在に支持する孔部60aが形成され、筒部60内の他方側には孔部60aに繋がって孔部60より径の大きい大径孔部60bが設けられている。この大径孔部60b内に前述した移動規制板71cが摺動し、孔部60aと大径孔部60bの境に形成された段部に移動規制板71cが当接することで、セレーション軸71が孔部60aから抜脱されるのを規制する。
【0039】
操作レバー73は、セレーション軸71の一方側端部に溶接等によって固着されてセレーション軸71の延びる方向に対して直交する方向に延びる。このため、操作レバー71を把持してセレーション軸71の軸方向に力を加えると、セレーション軸71をセレーション穴54aに沿ってスライド移動させることができ、操作レバー73を把持してセレーション軸71を回動支点としてセレーション軸周方向に力を加えると、セレーション軸71を回動させることができる。
【0040】
移動規制手段77は、セレーション軸71から延出する操作レバー73の基部側から回転支持部41側へ延びる突出板部78と、突出板部78の裏面側に突設された係止ピン79と、係止ピン79の先端部に設けられた孔部に挿着される抜け止めピン80とを有してなる。突出板部78は支持部34に設けられたストッパ部材62に沿って延びる。ストッパ部材62には、セレーション軸71がセレーション穴54aに挿着された位置で係止ピン79と嵌合する第1係合孔部62aと、セレーション軸71がセレーション穴54aから抜脱された位置で係止ピン79と嵌合する第2係合孔部62bが設けられている。係止ピン79は、第1係合孔部62a又は第2係合孔部62bに挿着されると、これらの係合孔部から突出して前述した孔部が係合孔部より外側位置にくるような長さを有して、抜け止めピン80の挿抜操作が容易である。
【0041】
このように構成されたクラッチ機構70によって、セレーション軸71をセレーション穴54aに挿着して第1係合孔部62aに嵌合する係止ピン79に抜け止めピン80を挿着すると、セレーション軸71のスライド移動が規制されるとともに、操作レバー73の回動が規制され、その結果、図4、図5及び図7(a)に示すように、一体化された第1キャリア54及び第2キャリア55の回動が規制される。このため、第2中間プーリ35に動力が伝達されると、太陽歯車51が回転して遊星歯車52が自転し、内歯車56が回転する。このため、動力は内歯車56から第3中間プーリ42に伝達され、伝動ベルト43を介して図3に示す水平搬送部17に伝達される。つまり、セレーション軸71をセレーション穴54aに挿着してセレーション軸71の回動を規制すると、即ち、クラッチ機構70をクラッチ入りの状態にすると、入力側要素(太陽歯車51)に伝達された動力を水平搬送部17に伝達することができる。
【0042】
一方、セレーション穴54aに挿着されたセレーション軸71を抜脱するには、図4、図6(a)及び図7(b)に示すように、抜け止めピン80を係止ピン79から抜脱し、操作レバー73を介してセレーション軸71を回動させて係止ピン79を第1係止孔部62aから抜脱し、操作レバー73を介してセレーション軸71をセレーション穴54aから抜脱方向にスライド移動させる。そして、第2係合孔部62bに係止ピン79を嵌合し、係止ピン79の先端部に抜け止めピン80を挿着する。その結果、第1キャリア54及び第2キャリア55の回動規制が解除される。このため、太陽歯車51に伝達された動力によって太陽歯車51が回転すると、遊星歯車52を介して第1キャリア54及び第2キャリア55が回転する。このため、複数の遊星歯車52は太陽歯車51の周りを公転し、その結果、内歯車56は停止状態となり、入力側要素(太陽歯車51)に伝達された動力は複数の遊星歯車52と内歯車56との間で遮断される。つまり、セレーション軸71をセレーション穴54aから抜脱することにより、即ち、クラッチ機構70をクラッチ切りの状態にすると、入力側要素に伝達された動力の出力側要素への伝達を完全に遮断することができる。
【0043】
このように操作レバー73の操作によるセレーション軸71のセレーション穴54aへの挿抜操作や移動規制手段77による規制操作又は規制解除操作をするだけで、入力側要素に伝達された動力を水平搬送部17に伝達し、又は水平搬送部17への動力伝達を遮断できるので、水平搬送部17への動力伝達の切替え操作を容易にすることができる。
【0044】
また動力伝達機構30に遊星減速機50を設け、さらに遊星減速機50にクラッチ機構70を設けることにより、水平搬送部17への動力伝達を完全に遮断することができる。このため、圃場から収穫したねぎを地干ししないで、水平搬送部17上でねぎNを結束する作業を行う場合には、クラッチ切りの状態にするだけで水平搬送部17への動力伝達が完全に遮断されて水平搬送部17を停止状態にすることができる。その結果、水平搬送部17上でのねぎの結束作業をし易くすることができる。
【0045】
なお、前述した実施例では、ねぎ収穫機1はクローラ3を装備して自走可能なものを示したが、ねぎ収穫機1はトラクター等に牽引されて進行する牽引式でもよい。また前述した実施例では、収穫機の一例としてねぎ収穫機1を示したが、ニンジン、甘しょ、バレイショ等を収穫する収穫機でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるねぎ収穫機の側面図を示す。
【図2】このねぎ収穫機の平面図を示す。
【図3】ねぎ収穫機の水平搬送部及び動力伝達機構の側面図を示す。
【図4】遊星減速機が設けられた回転支持部の部分断面図を示す。
【図5】遊星減速機の分解斜視図を示す。
【図6】クラッチ機構を示し、同図(a)はクラッチ機構の側面図であり、同図(b)はクラッチ機構の背面図である。
【図7】遊星減速機の内部構造を示し、同図(a)はクラッチが入った状態の遊星減速機の動作図であり、同図(b)はクラッチが切れた状態の遊星減速機の動作図である。
【図8】従来のねぎ収穫機の水平搬送部及び動力伝達機構の側面図を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 ねぎ収穫機(収穫機)
2 機体
17 水平搬送部
19 下降搬送部
30 動力伝達機構
34 支持部
50 遊星減速機
51 太陽歯車
51a 回転軸
52 遊星歯車
54 第1キャリア(キャリア)
54a セレーション穴
55 第2キャリア(キャリア)
56 内歯車
70 クラッチ機構
71 セレーション軸
73 操作レバー
77 移動規制手段
79 係止ピン(係止突起部)
80 抜け止めピン(抜脱規制部)
N ねぎ(長尺作物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺作物が植えられた圃場を進行する機体と、該機体に装備され、前記圃場から収穫された長尺作物を略水平方向に搬送する水平搬送部及び駆動源からの動力を前記水平搬送部に伝達する動力伝達機構とを備えた収穫機において、
前記動力伝達機構に遊星減速機を設けたことを特徴とする収穫機。
【請求項2】
長尺作物が植えられた圃場を進行する機体と、該機体に装備され、前記圃場から収穫された長尺作物を略水平方向に搬送する水平搬送部と、該長尺作物を前記機体から下降させながら搬送し、地面に対し前記機体の移動方向と交差する横姿勢で排出する下降搬送部及び駆動源からの動力を各搬送部に伝達する動力伝達機構とを備えた収穫機において、
前記動力伝達機構に遊星減速機を設けたことを特徴とする収穫機。
【請求項3】
前記遊星減速機にクラッチ機構を設け、
前記遊星減速機は、前記クラッチ機構のオン・オフ操作により、該遊星減速機の入力側要素に入力された動力を前記遊星減速機の出力側要素に伝達し若しくは前記入力側要素から前記出力側要素への動力伝達を遮断することを特徴とする請求項1又は2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記遊星減速機の太陽歯車の回転軸を該遊星減速機の入力側要素とし、前記遊星減速機の内歯車を該遊星減速機の出力側要素としたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の収穫機。
【請求項5】
前記クラッチ機構は、前記遊星減速機のキャリアに設けられたセレーション穴に沿ってスライド自在で且つ軸方向に回動自在に支持されたセレーション軸と、該セレーション軸の移動を操作する操作レバーと、前記セレーション軸の移動を規制する移動規制手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の収穫機。
【請求項6】
前記移動規制手段は、前記操作レバーに設けられた係止突起部と、前記セレーション軸を支持する支持部に設けられて前記係止突起部と嵌合する係合孔部と、該係合孔部から延出する係止突起部の先端部に装着されて前記係止突起部が前記係合孔部から抜脱されるのを規制する抜脱規制部を有することを特徴とする請求項5に記載の収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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