説明

収納ケース

【課題】小型で簡易な構造の収納ケースであって、収納及び取出し作業を容易且つ迅速に行うことができるうえ、収納ケースとしての耐久性を備え、収納物を確実に保護できる収納ケースを提供する。
【解決手段】開口部5を設けた筐体2と、収納物を着脱自在に保持する保持盤3と、該保持盤3が前記筐体2内で転動して直線状に移動するように案内し、前記保持盤3を前記筐体2内に収容した収納位置と、前記保持盤3を前記開口部5から前記筐体2の外方へ突出させた取出位置とに、位置切換え可能とする転動案内手段4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコンパクトディスク(以下、CDと称する)、メモリカード等の記憶媒体やゲームソフトを整理して収納し、持ち歩くための収納ケースに関わり、更に詳しくは、収納物の出し入れを容易に行うことができ、コンパクトなサイズで耐久性にも優れた収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、収納物を容易に収納及び取出し可能とする収納ケースとして、左右に設けた側板間に記憶媒体の収納部を形成し、前記収納部に記憶媒体を裸体のまま保持可能な保持部材を回動可能に取り付けたことを特徴とする記憶媒体収納ケースが提案され(例えば、特許文献1及び2参照。)、これに似た構成で連装式のCD収納ケースも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
また、外筐体に平行移動可能に取り付けられたテーブル部を、外筐体から突出するようにバネを用いて付勢し、テーブル部の移動をロックする解除自在なロック手段を設け、収納物を収納している時にはロック手段を機能させてテーブル部を外筐体内に収容した状態とし、収納物の収納及び取出作業時にはこのロック手段を解除してバネによりテーブル部が外筐体の外方に突出することにより、収納物を容易に収納及び取出し可能とするもの(例えば、特許文献4及び5参照。)等も提案されている。
【0004】
さらに、外筐体から収納物が突出するようにバネで付勢させるものであって、ディスクを載置するためのトレイを使用しないディスク収納装置として、ケース本体と保持部材と付勢部材と留め具とを有し、ケース本体はディスクの収納室と、収納室に連通するディスク挿入口と、収納室に収納されるディスクの縁を挟んでディスクをディスク挿入口から収納室の内部まで案内するガイド溝とを有し、保持部材はディスク挿入口から挿入されたディスクを収納室に収納した状態で保持する収納位置と、ディスクの一部をディスク挿入口から突出させてディスクを取出し可能に保持する取出位置との間で移動可能に収納室に設けられ、付勢部材は保持部材を収納位置から取出位置に付勢するよう収納室に設けられ、留め具は保持部材を収納位置で着脱可能に固定するよう収納室に設けられていることを特徴とするものも提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−71191号公報
【特許文献2】実用新案登録第2524964号公報(図4及び図5)
【特許文献3】実開平9−22号公報(図1)
【特許文献4】特開平11−189285号公報(図1、図5及び図7)
【特許文献5】特開平8−161846号公報(図1、図4及び図5)
【特許文献6】特開2009−91025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2記載の記録媒体収納ケースは、側板(前蓋及び後蓋)に対してビス(回転軸)を用いて回動自在に取り付けた保持部材(保護盤)に、記憶媒体を裸体のまま保持させておき、必要に応じて前記保持部材を回動させることにより、記憶媒体を容易に収納及び取り出すことができるものである。
従って、特許文献1のような記録媒体収納ケースは、ケースの前端下部の角付近に保持部材を回動自在に取り付ける構造であり、ビスを中心に回動する保持部材の軌道に対応させて側板のサイズを設定する必要があるため、収納する記録媒体に比して収納ケースがかなり大きなサイズとなっていた。
また、収容物の収納及び取出しの際、保持部の回転によりビス(回転軸)を介して側板(前蓋及び後蓋)の角部に位置する孔周縁部分が疲労したり磨耗したりすること、保持部材が取出位置にある状態で保持部材の回転軸方向に外力を受けた場合に、ビスの取付部分が破損する恐れがあることにより、耐久性が低くなるという問題があった。
さらに、縦方向のサイズを収納物とほぼ同じものとするために記録媒体収納ケースの上側に大きな開口を設ける必要があり、該上側の開口からゴミや埃が侵入するという問題があった。
【0007】
一方、特許文献3〜5記載の収納ケースでは、収納ケース体に水平移動自在に取り付けられたトレイを収納ケース体から外方へ突出するように付勢するバネを設けるとともに、収納位置で収納ケース体に対してトレイを固定するロック手段を設け、このロック手段のロック機能を作動又は解除することにより、収納物を収納又は取り出しできるものである。
従って、トレイの両側における収納ケース体との摺動部分の成形精度が高くないと、トレイが収納ケース体との摩擦によりガタつき、スムーズに収納及び取り出すことができない。これに加えてバネを用いるためこれらの構造は複雑となるため、耐久性、製造コストにおいて改善すべき問題があった。
【0008】
また、特許文献3及び4記載の収納ケースにおいては、収納物を収納又は取り出す場合に、トレイの大部分を収納ケース体から外方へ突出させる必要があり、これらの作業を行うために、収納物の大きさと略同等のスペースが開口の前側に必要となるうえ、トレイの移動距離が長く作業が煩雑となっていた。さらに、収納物の収納及び取出し作業は収納ケース体から略全部分が引き出された状態のトレイに対して垂直方向に行うため、その力が増大されてトレイを介してトレイと収納ケース本体との係合部分に作用することとなり、収納及び取出し作業中のトレイの不安定化や、耐久性の著しい低下に繋がっていた。
特許文献5記載の収納ケースにおいては、収納物がケース本体から外方に飛び出さないように、回転自在な保持部材に設けたストッパー部をバネにより内側へ付勢させ、ディスク移動経路を遮っているため、ディスク挿入時にはこのストッパー部をバネの付勢力に抗して外側へ押し出しながらディスクを挿入する必要があり、作業が煩雑になるとともに保護すべきディスクを傷つける恐れがあるうえ、ディスク挿入口から収納室の内部まで案内するガイド溝に沿って収納物を収納及び取出しを行うため、収納物のガイド溝との摺動部分が磨耗し、ディスクを保護するための収納ケースとして改善すべき問題点があった。また、バネと留め具(浮出ラッチ)が必要であり、構造が複雑化するため、重量が増すこと及び製造コストが嵩むこと等の問題があった。
【0009】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み解決しようとするところは、小型で簡易な構造の収納ケースであって、収納及び取出し作業を容易且つ迅速に行うことができるうえ、収納ケースとしての耐久性を備え、収納物を確実に保護できる収納ケースを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る収納ケースは、前記課題解決のために、開口部を設けた筐体と、収納物を着脱自在に保持する保持盤と、該保持盤が前記筐体内で転動して直線状に移動するように案内し、前記保持盤を前記筐体内に収容した収納位置と、前記保持盤を前記開口部から前記筐体の外方へ突出させた取出位置とに、位置切換え可能とする転動案内手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記転動案内手段が、前記筐体に設けられ、前記保持盤の転動方向に延びるラックギアと、前記保持盤に設けられ、前記ラックギアに噛合するピニオンギアとを備えたものであると好ましい実施の形態である。
【0012】
また、前記保持盤が収納物を保持する掛止部を有し、前記収納位置では該掛止部の全部又は一部が収納物よりも該収納物の取出方向の前方側に位置し、前記取出位置では前記掛止部の全部が収納物よりも該収納物の取出方向の前方側に位置しないものとすると好ましい実施の形態である。
【0013】
さらに、前記筐体に、前記保持盤の周縁部を前記収納位置と前記取出位置との間に渡って直線状に案内する案内溝を設けると好ましい。
【0014】
さらにまた、前記筐体に複数の前記保持盤を積層状に内装することができる。
【0015】
また、前記保持盤における前記収納位置の開口部側に、前記保持盤を操作する操作部と形成し、隣接する前記保持盤の操作部が周方向にズラして配設されていると好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る収納ケースによれば、保持盤が収納位置と取出位置との間を直線状に移動するため、保持盤と同じ大きさの開口部があれば外方へ突出させることができる。このため、収納位置における収納物と筐体との隙間を最小限とすることができ、収納ケースのサイズを小さくすることができるという顕著な効果を奏する。また、保持盤が転動することにより位置切替がなされるため、収納位置と取出位置間における保持盤の移動がスムーズなものとなり、円滑な位置切換操作を実現でき、しかも位置切替作業における収納ケースに対する負荷を分散させ、結果、収納ケースの耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、前記転動案内手段が、前記筐体に設けられ、前記保持盤の転動方向に延びるラックギアと、前記保持盤に設けられ、前記ラックギアに噛合するピニオンギアとを備えたものであると、簡単な構造で保持盤を収納位置から取出位置、又は取出位置から収納位置へ滑ることなく確実に移動させることができる。
【0018】
さらに、前記保持盤が収納物を保持する掛止部を有し、前記収納位置では該掛止部の全部又は一部が収納物よりも該収納物の取出方向の前方側に位置し、前記取出位置では前記掛止部の全部が収納物よりも該収納物の取出方向の前方側に位置しないものによれば、 保持盤を収納位置から取出位置に転動して移動させるだけで、保持盤を筐体よりも外方へ突出させると共に、掛止部を収納物よりも開口部側に位置しないように移動させることができ、収納物を容易に取り出すことができる。
また、収納物の全部又は大部分が筐体から外側に位置させない位置でも収納物を収納及び取出し作業を行うことができるため、収納位置と取出位置との距離を短くすることにより、収納ケースの前側に大きなスペースを設ける必要がなく、しかも収納物の出し入れを迅速且つ容易に行える。
【0019】
さらに、前記筐体に、前記保持盤の周縁部を前記収納位置と前記取出位置との間に渡って直線状に案内する案内溝を設けたものによれば、保持盤の回転軸方向の移動が規制され、収納位置と取出位置間において保持盤を直線状にスムーズに移動することができる。
【0020】
さらにまた、前記筐体に複数の前記保持盤を積層状に内装したものによれば、多数の収納物を効率よく収納してコンパクトに整理できる。
【0021】
また、前記保持盤における前記収納位置の開口部側に、前記保持盤を操作する操作部を形成し、隣接する前記保持盤の操作部を周方向にズラして配設すると、複数設けられた保持盤の中から、選択した保持盤の操作部のみを確実に操作することができ、収納物を連装するタイプの収納ケースの操作性を向上でき、商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る収納ケースの構成を示す斜視図である。
【図2】同じく保持盤の構成を示す斜視図である。
【図3】同じく保持盤が収納位置にある状態での縦断面図である。
【図4】同じく保持盤が収納位置から取出位置への移動途中にある状態での縦断面図である。
【図5】同じく保持盤が取出位置にある状態での縦断面図である。
【図6】同じく保持盤と筐体との係合部分を説明図であり、(a)は取出位置の保持盤と筐体との上側係合部分の説明図、(b)は下側係合部分の説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る収納ケースの他の例の構成を示す説明図であり、(a)は収納位置の縦断面図、(b)は取出位置の縦断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る収納ケースのさらに他の例の構成を示す説明図であり、(a)は収納位置の縦断面図、(b)は取出位置の縦断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る収納ケースの構成を示す説明図である。
【図10】同じく収納ケースの構成を示す説明図であり、(a)は収納位置の縦断面図、(b)は取出位置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
添付図面の図1〜図8は本発明の第1実施形態、図9及び図10は第2実施形態を示し、図中符号1(1A、1B)は収納ケース、2は筐体、3は保持盤、4は転動案内手段をそれぞれ示している。
また、本明細書においては、図1を基準に上下方向を定義し、筐体の開口部よりも外側を外、筐体の開口部よりも内側を内とし、内から外を向く方向を外方、外方の逆方向を内方とする。
【0024】
先ず、図1〜図8に基づき、本発明に係る第1実施形態の収納ケース1Aの構成について詳細に説明する。
【0025】
本実施形態の収納ケース1Aは、CDやDVD等の円盤状記憶媒体(以下、ディスクという。)を収納するためのものであり、図1に示すように、ディスクDを保持する6枚の保持盤3が積層状に筐体2内に収容され、構成されている。
筐体2は、2枚の側板が平行に上側、下側及び奥側の板により連結されることで構成され、前側に開口部5を有し、上側及び下側の内面には、直線状に平行に延びる夫々6本の案内溝2c、2c、・・・が形成されているとともに、下側の内面には、案内溝2cに沿って6本のラックギア4aが形成されている。
保持盤3は、ラックギア4aとピニオンギア4bとからなる転動案内手段4により、筐体2内に収容された収納位置と、保持盤3を収納ケース1Aの開口部5から外方へ突出させて保持盤3のディスクDの出し入れが可能な取出位置とに、転動して直線状に移動するように案内される状態で、筐体2内に設けられている。なお、転動案内手段4の具体的な構成については後述する。
上述の構成により、保持盤3が筐体2の下側内面に沿って転動することで、保持盤3は外方又は内方に向かって直線状に回転しながら移動することとなる。このため、筐体2の保持盤3の出し入れのために必要な開口部5は保持盤3と同じであれば足りるが、本実施形態では使い易さを考慮し、保持盤3よりも少し大きいものとしている。
保持盤3を収納位置から取出位置へ位置切り替えする場合に、保持盤3開口部5側の操作部3aに指を掛けて保持盤3を操作する。この操作部3aは隣接する保持盤3で異なった高さ位置に設けられているとともに、筐体2と保持盤3の操作部3aに近接する部分には凹部2a、3nが形成されており、保持盤3を略隙間なく積層しつつ選択した保持盤3の操作部3aのみに指を掛け易く、取出作業が容易となっている。
【0026】
図2に示すように、収納ケース1Aでは、6枚の保持盤3、3、・・・が、積層状に1個の筐体2に内設されている。ただし、6枚以外枚数の保持盤3を筐体2に内装するように構成することも可能である。
保持盤3は、転動案内手段4により、各々が筐体2に対して一定範囲内で転動自在に取り付けられており、これらの保持盤3は他の保持盤3、3、・・・の動きに影響を受けず、単独で転動可能となっているため、ディスクDを収納する目的の一枚の保持盤3のみを取出位置とすることに加えて、2枚以上の保持盤3、3、・・・を取出位置とすることも可能である。
また、保持盤3は、形状外周の一部に切欠部3bと、切欠部3b以外の一部に周縁部3jとを有する略円盤状であって、ディスクDの外周に沿う円弧状の周壁部3iと、この周壁部3iの開口側端部に設けた、ディスクDを保持する掛止爪3cと、ディスクDのガタツキ及び取出位置における飛び出しを防止する遊動防止部3dと、保持盤3が取出位置よりも外方へ突出することを防止するストッパー部3eと、収納位置と取出位置で保持盤3の移動を一時的にロックする外周上に設けられた凸部3fと、この凸部3fのロック及び解除機能を保持盤3の素材の弾性を利用して十分に発揮させるための孔3gと、ディスクDの記憶部分が保持盤3と接触しないように無記憶部分を支持する支持部3hとよりなる。
【0027】
上述のように、保持盤3は略円盤状であり、保持盤3を筐体2の下側内面上を円盤外周部により転動させることができる。また、収納位置の保持盤3の外方側上部に切欠部3bを有し、この切欠部3bが取出位置で外方を向くため、ディスクDを保持盤3からつまんで抜き出し易い。
【0028】
ここで、周縁部3jは、筐体2の上側内面及び下側内面に取出方向に延びる案内溝2cに嵌め込まれている。これにより、保持盤3が収納位置から取出位置の間で回転軸方向に移動せず安定して転動するように案内される。
また、周壁部3iは、保持盤3に略半円状に設けられた凸条で構成され、周壁部3iには、3個の掛止爪3c、3c、・・・と、一端部に遊動防止部3dと、他端部付近にストッパー部3eと、外周の一部にピニオンギア4bが設けられている。
3個の掛止爪3c、3c、・・・は、周壁部3iから保持盤3の中央部側へ突出されて、ディスクDの回転軸方向への移動を規制するものであり、これらのうち収納位置で最も開口部5に近い掛止爪3cは、収納位置でディスクDよりも開口部5側に位置し、取出位置でディスクDよりも取出し方向に位置しないように配置されているため、収納位置でディスクDが外方向に突出することを防止するとともに、取出位置でディスクDの収納及び取出し作業を邪魔しない。
さらに、遊動防止部3dがディスクD側に常時付勢されるように設けられているため、取出位置においても遊動防止部3dが確実にディスクを保持してディスクDの遊動を防止し、また、ディスクDが保持盤3から容易に外れることがない。
また、ストッパー部3eが取出位置で筐体2の上側内面の段部2dに当接するため、保持盤3も筐体2からの飛び出しを防止でき、さらに、収納位置及び取出位置で保持盤3外周部の凸部3fが筐体2の内側凹部2bに嵌り込むことで保持盤3の移動が一時的にロックされ、使い勝手がよく、持ち運ぶ収納ケースとして好適なものとなっている。
支持部3hは、図示するように保持盤3の保持面に設けるとともに、掛止爪3cのディスクD接触側にも設けられている(図示せず)。これにより、ディスクDの記憶面を裏表の何れを向けて収納した場合でも、ディスクDの記憶部分が保持盤3に接触せず、ディスクDを安全に保管できる。
【0029】
次に、図3〜図5に沿って収納ケース1Aの構成、取出し及び収納動作について説明する。
【0030】
図3には、収納ケース1Aの保持盤3が収納位置にある状態を示す。
図示するように、転動案内手段4は、筐体2の下側内面に形成されたラックギア4aと、保持盤3の周壁部3iの外周の一部に形成されたピニオンギア4bとよりなる。
ラックギア4aは、筐体2の下側内面の開口部5側の約半分の長さに渡って形成されており、ピニオンギア4bは、保持盤3の収納位置における下側の外周の約6分の一の長さに渡って形成されている。
上記構成の転動案内手段4により、収納ケース1Aは、保持盤3が所定範囲で滑ることなく、筐体の下側内面に沿って転動をする。また、図示するように収納ケース1Aを立てた状態で使用する場合、保持盤3の自重がピニオンギア4bに加わることにより、ラックギア4aとピニオンギア4bとの係合が、より確実なものとなる。
なお、ラックギア4a及びピニオンギア4bは、筐体2の下側内面に形成されたもの及びこれに係合するものとしているが、これに限られず、保持盤3が筐体2内で滑ることなく転動するように案内することができるものであって、保持盤3が収納位置から取出位置まで変位可能な範囲に渡り形成されているものであればよく、例えば、筐体2内の上下方向中央に近い位置に形成することにより、ピニオンギア4bを小径としてもよい。
【0031】
この収納位置において、ディスクDを保持する保持盤3は、操作部3aが操作可能な状態でが筐体2内に収納されている。また、保持盤3の周縁部3jが筐体2の案内溝2cによって筐体2の内外方向に案内され、保持盤3回転軸方向へ保持盤3が移動しないように規制されている。この位置では、保持盤3の開口部5側の凸部3fが筐体2の略中央に位置する内側凹部2bに嵌合して一時的な位置決めがされる。この凸部3fは、これよりも保持盤3中心側に位置する孔3gにより、弾性力を有して内側凹部2bに係合しており、外力が加わると保持盤3中心側へ逃げる構成となっている。
このような構成により、収納ケース1Aは凸部3fと内側凹部2bが嵌合することにより保持盤3を一時的に収納位置に保持でき、また、操作部3aを保持盤3が回転するように下方へ操作することで、このロックを解除するとともに、保持盤3を取出位置側へ筐体2側のラックギア4aに沿って転動させることができる。
【0032】
図4に示すように、操作部3aに指を掛けて下側へ操作することにより、保持盤3は収納位置から取出位置への移動を開始する。このとき、保持盤3の回転軸方向への移動は案内溝2cに保持盤3の周縁部3jが係合することにより規制されると共に、転動案内手段4により保持盤3の転動時におけるスベリが防止されるため、保持盤3は筐体2内の収納位置から取出位置に円滑に移動することになる。さらに、上記操作により、保持盤3がラックギア4a側に押し下げられるため、保持盤3と筐体2との上側の係合部分に生ずる摩擦力が小さくなることで、よりスムーズな取出動作を実現している。
【0033】
図5に示すように、保持盤3が取出位置にある状態では、保持盤3のストッパー部3eが筐体2側の段部2dに当接して、保持盤3がこれ以上外方へ突出しない。また、この取出位置でも上記収納位置と同様に、保持盤3の開口部5側でない凸部3fが筐体2の開口部5近傍の内側凹部2bに嵌合して、保持盤3が筐体2に対して一時的にロックされる。
また、この取出位置では、掛止爪3cがディスクDよりも外方に存在しない。従って、保持盤3の収納位置から取出位置までの移動は、掛止部3cが収納位置においてはディスクDを取り出せない位置に有り、取出位置においてはディスクDの取出しを邪魔しない範囲まで移動すれば良い。よって、収納ケース1Aの取出し作業は迅速かつ容易に行うことができるとともに、取出位置にある保持盤3に外力が加わった場合でも破損等の不都合が生じ難い。
【0034】
図6には、収納ケース1Aの保持盤3が取出位置にある状態(図5)の部分拡大縦断面図を示す。
【0035】
筐体2と保持盤3との上側では、(a)に示すように、保持盤3の周縁部3jと筐体2の案内溝2cとが係合している。また、筐体2と保持盤3の下側では、(b)に示すように、上側と同様に保持盤3の周縁部3jと筐体2の案内溝2cとが係合するとともに、ピニオンギア4bとラックギア4aとが噛合している。このため、保持盤3は、保持盤の回転軸方向に対して移動できないように規制されるとともに、筐体2の下側内面を滑ることなく適切な位置関係を維持して、筐体2の下側内面に沿って転動するようにし、内方又は外方に直線状に移動することができる。
また、ディスクDは、外周縁に存在する無記憶部分(データが入力されない部分)を保持盤3の支持部3hによって、支持されるため、無記憶部分よりも内側に存在する記憶部分(データが入力される部分)が保持盤3と接触せず、ディスクDに傷を与えない。
【0036】
なお、第1実施形態の説明においては、筐体2に設けられ、保持盤3の転動方向に延びるラックギア4aと、保持盤3に設けられ、ラックギア4aに噛合するピニオンギア4bとを備えたものである収納ケース1Aを例に挙げて説明したが、これに限られず、転動案内手段4は保持盤3を筐体2に対して滑らず転動して移動するように案内するものであればよく、図7に示すようにバネ材4c、又は図8に示すように紐部材4dを用いて構成してもよい。また、保持盤3の掛止爪3c内側にバネを設けて、保持盤3が取出位置に移動したときにディスクDが取出方向へ飛び出すものとしてもよい。
【0037】
ここで、図7のようにバネ材4cを用いた収納ケース1Aは、筐体2と保持盤3との間に、直線状に延びる方向に付勢力を発揮するバネ材4cを介装しており、このバネ材4cの一端を筐体2の開口部5付近に固定するとともに、他端を保持盤3の円弧部に沿った状態で保持盤3に固定することにより、保持盤3の転動を案内して収納位置から取出位置、又は取出位置から収納位置に移動させることができるうえ、バネ材4cの付勢力を保持盤3が内方又は外方に移動する力としているため、使い勝手が良い。
【0038】
また、図8のように、2本の紐部材4d、4dを用いた収納ケース1Aは、収納位置において一本の紐部材4dの約半分が保持盤3の周壁部3iの外周に沿うようにして外方側の一端を周壁部3iに固定し、残りの半分を筐体2の下側内面に沿うようにして内方側の他端を筐体2に固定するとともに、もう一本の紐部材4dの半分を筐体2の下側内面に沿うようにして内方側の他端を筐体2に固定し、残りの約半分が保持盤3の周壁部3iの外周に沿うようにして外方側の一端を周壁部3iに固定している。このため、これらの2本の紐部材4d、4dにより保持盤3は筐体2の内面に沿って転動して直線状に移動するように案内され、収納位置から取出し位置、又は取出し位置から収納位置に位置切替することができる。
なお、紐部材4dは、上記構成に限らず、一端部を筐体2に沿うように固定し、もう一端部を取出位置において、ディスクDの抜き差しに影響が無く、且つ、保持盤3が回動する範囲において、紐部材4dが保持盤3の周壁部を離れない位置に固定されるものであればよく、弾性力を有するバネ材を用いてもよい。
【0039】
また、図7及び図8に示す収納ケース1Aのその他の構成については、上記第1実施形態と同様であり、同一構造については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
次に、図9及び図10に基づき、本発明に係る第2実施形態の収納ケース1Bの構成について詳細に説明する。
【0041】
本実施形態の収納ケース1Bは、ゲームソフトを格納した正面視略矩形の板状のメモリカードSを収納するためのものであり、図1に示すように、メモリカードSを保持する4枚の保持盤3が左右に各2枚ずつ、積層状に筐体2内に配置され、構成されている。また、メモリカードSは、保持盤3に設けた左右の掛止アーム3mにより着脱自在に挟持され収納される。
筐体2には、上方から見てL字状の取付具6が左右に設けられており、この左右の取付具6がバネ(図示せず)により内側に向かって付勢されている。従って、この取付具6をバネの付勢力に抗して外側に広げてゲーム機Gに挟むように取り付けることで、収納ケース1Bをポータブルゲーム機(以下、ゲーム機という。)Gに固定することができる。また、取付具6の内側及び筺体2のゲーム機G側にはスポンジ等の保護部材(図示せず)を設けてゲーム機Gが傷付くことを防止している。
【0042】
図10に示すように、収納ケース1BからメモリカードSを取り出す場合は、筐体2から外方に突出した操作部3aを外方斜め下に押し下げ、又は外方向斜め上に押し上げて保持盤3を転動させればよい。
【0043】
上記構成により、ゲーム機Gに収納ケース1Bを取り付けることで、5個のメモリカード(ゲーム機Gに取り付けたものを含む。)を持ち歩くことができ、ゲーム機Gと別のケース等を持ち歩くことなく、気分に合わせてメモリカードを選択することができる。
第2実施形態に係る収納ケース1Bのその他の構成については、上記第1実施形態と同様であり、同一構造については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態では、何れも保持盤の片面に収納物を保持して収納するものとしたが、これに限られず、保持盤の両面に収納物を保持させるものとして構成してもよく、この収納ケースによれば、よりコンパクトで製造コストを低廉化することができるものとなる。
また、開口部に開閉自在の蓋を設けて収納ケースとしての収納物の安全性を高めたものとしてもよい。
さらに、単又は複数の保持盤を筐体に収容して1個の収納ケースを構成するとともに筐体の側面に連結手段を設けて、他の筐体と連結固定できるものとしてもよい。
さらにまた、収納物としては、上述のような円盤状のCDやDVD、正面視矩形の板状のメモリカードに限られず、各種形状の記憶媒体やその他の物品を収納することができる。
また、筐体内の保持盤は、第1実施形態のように積層状に設けたもの、又は第2実施形態のように積層状に設け、且つ1対の開口部間に2列並設したものだけでなく、上下方向に並設されたもの、又はこれらを組み合わせて複数の保持盤を設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1A、1B 収納ケース
2 筐体
2a 凹部
2b 内側凹部
2c 案内溝
2d 段部
3 保持盤
3a 操作部
3b 切欠部
3c 掛止爪
3d 防止部
3e ストッパー部
3f 凸部
3g 孔
3h 支持部
3i 周壁部
3j 周縁部
3k 巻付部
3m 掛止アーム
3n 凹部
4 転動案内手段
4a ラックギア
4b ピニオンギア
4c バネ材
4d 紐部材
5 開口部
6 取付具
D ディスク
G ゲーム機
S メモリカード




【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を設けた筐体と、
収納物を着脱自在に保持する保持盤と、
該保持盤が前記筐体内で転動して直線状に移動するように案内し、前記保持盤を前記筐体内に収容した収納位置と、前記保持盤を前記開口部から前記筐体の外方へ突出させた取出位置とに、位置切換え可能とする転動案内手段とを備えたことを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
前記転動案内手段が、前記筐体に設けられ、前記保持盤の転動方向に延びるラックギアと、前記保持盤に設けられ、前記ラックギアに噛合するピニオンギアとを備えたものである請求項1記載の収納ケース。
【請求項3】
前記保持盤が収納物を保持する掛止部を有し、前記収納位置では該掛止部の全部又は一部が収納物よりも該収納物の取出方向の前方側に位置し、前記取出位置では前記掛止部の全部が収納物よりも該収納物の取出方向の前方側に位置しない請求項1又は2の何れかに記載の収納ケース。
【請求項4】
前記筐体に、前記保持盤の周縁部を前記収納位置と前記取出位置との間に渡って直線状に案内する案内溝を設けた請求項1〜3の何れか1項記載の収納ケース。
【請求項5】
前記筐体に複数の前記保持盤を積層状に内装した請求項1〜4の何れか記載の収納ケース。
【請求項6】
前記保持盤における前記収納位置の開口部側に、前記保持盤を操作する操作部を形成し、隣接する前記保持盤の操作部が周方向にズラして配設されている請求項5記載の収納ケース。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate