説明

収納機能を有する鏡装置

【課題】副鏡及び収納部を有する回動体の回転支持構造を簡略化すると共に、副鏡及び収納部の使い勝手を共に良好にすること。
【解決手段】主鏡1と、該主鏡1の側方に隣接配置される回動体2と、該回動体2を1軸回りに回動自在に軸支する支持手段3とを備えた収納機能を有する鏡装置10である。上記回動体2はその回動方向に異なる複数の面2a,2bを有し、少なくとも一面2aに副鏡4が設けられると共に該副鏡4が設けられる面2aとは異なる少なくとも一面2bに小物入れ用の収納部5が設けられる。上記副鏡4を前方Aに向けて主鏡1と副鏡4とで一連の鏡面を形成する第1の回動位置P1と、上記収納部5を前方Aに向けて主鏡1と隣接する位置で収納部5を開放する第2の回動位置とを任意に選択できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納機能を有する鏡装置に関し、詳しくは副鏡と収納部とを選択的に使用できるようにするための鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三面鏡を備えるミラーキャビネットにおいて、キャビネット本体の空間を有効利用して収納量の増加を図るために、ミラーキャビネット本体を大型化することなく収納量を増加する構成が求められていた。
【0003】
その一例として従来から、センターミラーと左右一対のサイドミラー扉とを備えた扉体付きミラーキャビネットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1では図6に示すように、センターミラー19の側方に配置されるサイドミラー扉20は、ミラー前扉21と後扉22との2枚扉で構成され、後扉22の一端を内側軸23を介してキャビネット本体25側に回動自在に取り付け、後扉22の他端に外側軸24を介してミラー前扉21の一端を回動自在に取り付け、ミラー前扉21と後扉22とを重ねた状態で両者を内側軸23を中心に外側に開くことにより後扉22の背後に設けた収納棚26を使用できるようにし(図6の状態)、一方、後扉22を閉じたままでミラー前扉21だけを外側軸24を中心に内側に開くことにより三面鏡として使用できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−189950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが前記特許文献1の従来例では、内側軸23と外側軸24との2軸でミラー前扉21と後扉22とを回転支持しているため、支持構造が複雑になる。また仮りにサイドミラー扉20の外側方に壁パネルとか建具などの障害物がある場合は、後扉22を外側へ開くときにその開き角度θが90°以下に規制されてしまい、この場合、後扉22の背面に設けた収納棚26を大きく開くことができず、使いづらいものである。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、副鏡及び収納部を有する回動体を簡易な1軸回転支持構造にでき、しかも副鏡及び収納部の使い勝手を共に良好にできるようにした収納機能を有する鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、主鏡1と、該主鏡1の側方に隣接配置される回動体2と、該回動体2を1軸回りに回動自在に軸支する支持手段3とを備えた収納機能を有する鏡装置である。上記回動体2はその回動方向に異なる複数の面2a,2bを有し、少なくとも一面2aに副鏡4が設けられると共に該副鏡4が設けられる面2aとは異なる少なくとも一面2bに小物入れ用の収納部5が設けられる。上記副鏡4を前方Aに向けて主鏡1と副鏡4とで一連の鏡面を形成する第1の回動位置P1と、上記収納部5を前方Aに向けて主鏡1と隣接する位置で収納部5を開放する第2の回動位置P2とを任意に選択できるようにしたことを特徴としている。
【0009】
このような構成とすることで、従来の2軸回転支持構造と比較して簡易な1軸回転支持構造で、回動体2を回動させて、副鏡4を使用する第1の回動位置P1と収納部5を使用する第2の回動位置P2とを任意に選択できるようになり、しかも回動体2の外側方に仮りに壁パネルなどの障害物が存在していても、回動体2の回動角度が規制されないようにしながら角度調整ができ、これにより副鏡4の使用時には、主鏡1では目配りが届かぬ横顔や側頭部などが見やすくなり、一方、収納部5の使用時には、収納部5への収納物の出し入れが容易となる。
【0010】
また、上記支持手段3による回動体2の軸支部6と該軸支部6から最も離れた回動体2の外端部2fとの間の最大横幅寸法Dが、該軸支部6から主鏡1の前縁部1aまでの最小横幅距離Eよりも短く設定され、且つ、該軸支部6から最も離れた回動体2の外端部2fを境にして両隣の異なる面2a,2bに副鏡4又は収納部5のいずれかを設けるのが好ましく、この場合、回動体2を主鏡1と干渉しない範囲で且つ主鏡1にできる限り近づけた位置で回動可能となるので、副鏡4の使用時には主鏡1と副鏡4とを連続する一連の鏡面として形成でき、一方、収納部5の使用時には主鏡1に隣接した位置で収納部5内への収納物の出し入れを一層容易にできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、副鏡と収納部とを有する回動体を、従来の2軸回転支持構造と比較して簡易な1軸回転支持構造とすることができるものであり、しかも、副鏡の使用時には主鏡では目配りが届かぬ横顔や側頭部などが見やすくなり、一方、収納部の使用時には収納部への収納物の出し入れが一層容易となり、使い勝手を共に良好にできるものである。
【0012】
また本発明は、上記回動体を主鏡と干渉しない範囲で且つ主鏡にできる限り近づけた位置で回動させることにより、副鏡の使用時には主鏡と副鏡とを連続する一連の鏡面として形成でき、一方、収納部の使用時には主鏡に隣接した位置で収納部内への収納物の出し入れを一層容易にできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の収納機能を有する鏡装置の一例を示し、(a)は回動体を副鏡を使用する第1の回動位置に回動させた状態を示す平面図であり、(b)は(a)の前方から見た斜視図である。
【図2】(a)は同上の回動体を収納部を使用する第2の回動位置に回動させた状態を示す平面図であり、(b)は(a)を前方から見た斜視図である。
【図3】(a)は同上の回動体を軸支するステー部材の側面断面図、(b)は斜視図である。
【図4】同上の回動体の他の実施形態を示す平面図である。
【図5】同上の回動体の更に他の実施形態を示す平面図である。
【図6】従来のミラーキャビネットのサイドミラー扉を開いた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
図1(a)は洗い場11の壁面12中央に固定される主鏡1と、その両側に隣接して配置される一対の回動体2とを備えた収納機能を有する鏡装置10の一例を示している。
【0016】
本例の一対の回動体2は左右対称構造を有しており、図1(b)に示すように、主鏡1と略同じ上下寸法を有する三角筒形をした箱体で構成されており、異なる三面2a,2b,2cのうちの少なくとも一面2aに副鏡4が取り付けられ、少なくとも他の一面2bに棚板5bで仕切られた小物入れ用の収納部5が設けられている。
【0017】
上記回動体2は、支持手段3を構成する上下のステー部材3Aを用いて1軸回りに回動自在に軸支されており、副鏡4を前方Aに向けて主鏡1と副鏡4との間で一連の鏡面を形成する第1の回動位置P1(図1)と、収納部5を前方Aに向けて主鏡1と隣接する位置で収納部5を開放する第2の回動位置P2(図2)とを任意に選択できるようにしている。本例では、回動体2の第1の回動位置P1における主鏡1と副鏡4となす平面視角度θ1、及び、上記第2の回動位置P2における主鏡1と収納部5の前面開口部5aとのなす平面視角度θ2は、いずれも、90°よりも広角度に設定される。
【0018】
上下のステー部材3Aは、図3(a)に示すように、その一端9aが洗い場11の壁面12に対して固定され、他端9bが回動体2の上下両端部に設けた上孔7と下孔8にそれぞれ嵌め込まれている。さらにステー部材3Aの他端9bに対して上孔7及び下孔8がそれぞれ抜き差し可能となるように、呑み込み代Fの深さが決められている。
【0019】
ここで、図3(b)において、上記ステー部材3Aによる回動体2の軸支部6と該軸支部6から最も離れた回動体2の外端部2f(三角筒の頂部)までの寸法を最大横幅寸法Dとし、該軸支部6から主鏡1の前縁部1aまでの距離を最小横幅距離Eとしたとき、DがEより短く設定され且つEがステー部材3Aの壁面12からの突出長Gよりも小さくなるように決められている。さらに、上記回動体2の三面2a,2b,2cのうち、上記最大横幅寸法Dとなる外端部2fを境にして前後両隣の二面2a,2bの一方に副鏡4、他方に収納部5が設けられている。これら三面2a,2b,2cはいずれも軸支部6からの寸法が上記最大横幅寸法Dよりも小さいものであり、これにより壁面12や主鏡1の前縁部1aに当たらないように回動体2を回動させることができる。なお、回動体2の別の面2cには副鏡4又は収納部5のいずれか一方を設ける場合、或いは、両方とも設けない場合のいずれでもよい。
【0020】
しかして、上記構成の回動体2は、従来の2軸回転支持構造と比較して簡易な1軸回動支持構造であるので、回動体2を回動させるだけで、副鏡4を使用する第1の回動位置P1(図1)と収納部5を使用する第2の回動位置P2(図2)とを任意に選択できるようになり、しかも回動体2の外側方に側壁12a(図1(a))が存在していても、この側壁12aによって回動体2の回動角度が規制されないようにしながら角度調整が自在にできるようになる。
【0021】
また本例では、副鏡4の使用位置を主鏡1に対して90°以上の広角度θ1としているので、通常の三面鏡を形成でき、主鏡1では目配りが届かぬ横顔や側頭部等が左右の副鏡4により見やすくなり、例えば、浴室内で毛染めをする際は仕上がりなどが容易に確認できるようになり、またこのとき毛染め液が壁面12側に向いた収納部5内面や収納物を汚したりする心配もないため、仕上がり具合を確認しながら衛生的に毛染めをしたいというユーザのニーズにも十分に応えることができる。
【0022】
一方、収納部5の使用時には、収納部5の前面開口部5aを主鏡1に対して90°以上の広角度θ2となるので、収納物の出し入れに最適となり、一方、収納部5を使用しないときは背面側(壁面12側)に向けられるので、中の収納物が隠れて見栄えを良くできると共に、洗髪、洗体時の泡やシャワー散水が収納部5内に浸入しにくくなり、濡れやカビ発生を防止できるものである。
【0023】
さらに本例では、回動体2を主鏡1と干渉しない範囲で且つ主鏡1にできる限り近づけた位置で回動させることができるので、副鏡4の使用時には主鏡1と副鏡4とを連続する一連の鏡面として形成でき、一方、収納部5の使用時には主鏡1に隣接した位置で収納物の出し入れ操作をより簡単に行なうことができる。
【0024】
また、回動体2は水平に回転するので、回動時或いは静止時の安定性が良く、収納部5内の収納物が倒れたり、落下することがないものであり、また清掃等のメンテナンス時には上下のステー部材3Aから回動体2を簡単に取り外すことができ、メンテナンスが容易になる利点もある。
【0025】
また、左右の回動体2は主鏡1とは独立して設けられるので、洗い場11の壁面12に既設の一枚鏡(主鏡1)の側方位置に、回動体2を後付けするだけで、低コストでしかも簡単に、収納部5を有する二面鏡或いは三面鏡としての機能を持たせることができる。しかも左右の回動体2,2を独立して回動させることができるので、三面鏡としての使用形態と、二面鏡として使用形態と、主鏡1のみによる一面鏡としての使用形態とを任意に選択することができる。また、左右両方の収納部5を使用する形態と、左右いずれか一方の収納部5のみを使用する形態とを任意に選択できるようになる。
【0026】
なお、回動体2の形状として、収納部5の収納量を広げるためには、三角筒状に形成するのが好ましいが、勿論これに限らず、他の形状として、例えば図4に示すように、一部に平坦面2dを有する略半円筒状とし、平坦面2dに副鏡4を設け、円弧面2eに収納部5の前面開口部5aを設けたものであってもよい。さらに図5に示すように、回動体2を四角筒状とし、4面のうち少なくとも一面2aに副鏡4、少なくとも一面2bに収納部5を設けたものであってもよい。
【0027】
前記実施形態では、回動体2を主鏡1の両側に配置したが、主鏡1の片側のみに配置したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の収納機能を有する鏡装置10は、洗い場11の壁面12に取り付ける場合に限らず、従来例で説明したミラーキャビネットのような洗面ドレッシングに取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 主鏡
1a 前縁部
2 回動体
2a,2b 異なる面
2f 外端部
3 支持手段
3A ステー部材
4 副鏡
5 収納部
6 軸支部
7 上孔
8 下孔
10 鏡装置
A 前方
D 最大横幅寸法
E 最小横幅距離
P1 第1の回動位置
P2 第2の回動位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鏡と、該主鏡の側方に隣接配置される回動体と、該回動体を1軸回りに回動自在に軸支する支持手段とを備え、上記回動体はその回動方向に異なる複数の面を有し、少なくとも一面に副鏡が設けられると共に該副鏡が設けられる面とは異なる少なくとも一面に小物入れ用の収納部が設けられ、上記副鏡を前方に向けて主鏡と副鏡とで一連の鏡面を形成する第1の回動位置と、上記収納部を前方に向けて主鏡と隣接する位置で収納部を開放する第2の回動位置とを任意に選択できるようにしたことを特徴とする収納機能を有する鏡装置。
【請求項2】
上記支持手段による回動体の軸支部と該軸支部から最も離れた回動体の外端部との間の最大横幅寸法が、該軸支部から主鏡の前縁部までの最小横幅距離よりも短く設定され、且つ、該軸支部から最も離れた回動体の外端部を境にして両隣の異なる面に副鏡又は収納部のいずれかを設けたことを特徴とする請求項1記載の収納機能を有する鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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