説明

取り外し可能な部分を備えた舌側歯科矯正装具

美的な、部分的に取り外し可能な歯科矯正装具が記載され、同装具は、舌側軟組織に一致するポリマー本体と、同ポリマー本体から延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含む。各ワイヤ部材は、ポリマー本体が概ね歯肉方向に移動されて、舌側軟組織と当接関係となる際に、対応するアンカーと解放可能に接続し、同アンカーは対応する歯の舌側表面に接続している。本装具の他の特徴は、自己案内性の磁気カップリング、及び取り外し可能な部分とアンカーとの間に解放可能な係合を提供する連結する機械的構造に基づくカップリング、並びにこの装具の製造及び使用方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、歯科矯正治療において使用される装具に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも部分的に取り外し可能な美的歯科矯正装具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正学は、歯列不正の管理、指導及び適正な位置への矯正に関連する歯科学の領域及び専門分野である。歯科矯正治療は、患者の咬み合わせ(咬合とも呼ぶ)の欠陥を矯正するとともに、より良好な衛生状態を促進し、全般的な歯の美観及び健康を改善する上で有用である。
【0003】
歯科矯正治療は、多くの場合、ブラケットとして知られる小さなスロット付きの装具の使用を伴い、その装具は一般に、患者の前歯、犬歯、及び小臼歯に固定される。ブラケットが歯上に置かれた後、アーチワイヤが各ブラケットのスロットの中に受容され、歯科学的に正しい位置への各歯の移動を誘導するトラックとして働く。アーチワイヤの末端部は典型的には、患者の大臼歯に固定される、バッカルチューブとして知られる装具内に捕捉される。ブラケット、アーチワイヤ、及びバッカルチューブは通常、総じて「ブレース」と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のブレースは特有の限界を有している。例えば、口内のブラケット及びワイヤは、特にアーチワイヤの背部とブラケットのタイウィングの領域内で食物及びプラークを捕捉する傾向がある。プラークの蓄積から生じる乏しい口腔衛生は、今度は、中でも虫歯、歯肉炎、歯周病を含む他の問題の宿主に繋がり得る。特にブラケット付近でのプラークの蓄積は、エナメル質表面上の脱灰と、治療の終了時にブレースが除去された後でも残留するいわゆる「白斑(white spot)」病変とを生じる場合がある。
【0005】
取り外し可能な装具は、食事及び/又は歯磨きの間に歯科矯正装具を口から除去する能力を提供することにより、これらの問題のいくつかを有意に軽減することができる。取り外し可能な装具は、歯のメンテナンス及び洗浄を容易にするだけでなく、装具の洗浄も容易にする。人気のある取り外し可能な装具としては、Align Technology(Santa Clara,CA)により製造されているポリマーアライナーシェルが挙げられ、この装具は、歯を所望の配列に増加的かつ進行的に再配置することが意図されている。他の種類の装具には、Hawleyリテーナー又はCrozat装具に基づくもの等、ワイヤを埋め込んだ装具が挙げられ、これらは一般に、歯表面に受動的に接触する金属ワイヤを使用する。これらの装具を使用して歯の矯正移動を達成できるが、これらは最も通常には矯正が完了した後の歯の保持のために使用されている。スプリングリテーナーとも称されるスプリングアライナーは、透明なアライナーと、ワイヤを埋め込んだリテーナーとの両方の特徴を組み合わせており、歯科矯正用に使用することができる。しかしながら、スプリングアライナーも、これらが歯上に適用できる力の種類において限界を有し、このことは、治療し得る歯科不正咬合の幅に影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
現在の取り外し可能な装具は、所定の衛生的利点を提供する一方で、治療有効性に関する欠点も有している。例えば、ポリマーシェルは、特定の歯科不正咬合を矯正する能力において限界を有する傾向がある。押し出し、隙間閉鎖、及び大臼歯の移動は、この装具がシェルと歯との間の比較的弱い機械的保持力に依存するため、達成が困難又は不可能であり得る。更に、ポリマーアライナーは、透明な場合であっても、該アライナーが尚、顔側歯表面を覆い、またコーヒー等の暗色の液体で染色され又は該液体を捕捉し得るため完全には美的ではない。一方、歯と係合するスプリング又はクラスプを使用するリテーナー状の装具は、ポリマーアライナーと同一の多数の欠点を有する。総じてこれらの装具は、精密なトルク、角度付け(angulation)、回転、及び並進の調整が可能となるよう歯と積極的に係合しない。更に、これらの装置の多数は、歯の顔側表面上に存在する顔側ワイヤにより歯の前突(proclination)を阻止するため、一般に美的ではない。更により重大なこととして、上記の装具のいずれも、治療中に変化しない「固定物(anchorage)」を使用して口蓋等の歯科構造の一部から個々の歯のそれぞれに指向される力を制御することができない。
【0007】
本発明は、美的な舌側歯科矯正装具と、同装具の製造及び使用方法とに関する。この歯科矯正装具は、固定装具と同等の、歯に適用される力に対する一定レベルの制御を提供する。しかしながら、この装具は少なくとも部分的に取り外し可能であり、それにより取り外し可能な装具により付与される改善された口腔衛生の利点を提供する。更なる利点として、この装具は、歯からの容易な接続解除を可能にすると共に、調整されかつ確固とした接続を装具と歯との間に提供する。
【0008】
一態様において、本発明は、ポリマー本体と、その本体から外方向へ延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含む取り外し可能な部分であって、各ワイヤ部材が外側末端部を含み、本体が患者の舌側軟組織の形態に概ね一致する形態を有する外部表面を含む、取り外し可能な部分と、少なくとも1つのアンカーであって、各アンカーが同アンカーを歯の舌側表面に接続するための基部を有し、各ワイヤ部材の外側末端部が、各アンカーが歯科患者の対応する歯に接続され、取り外し可能な部分が概ね歯肉方向に移動されて患者の舌側軟組織と当接関係となる際に、対応するアンカーに解放可能に接続される、アンカーと、を有する歯科矯正装具に関する。
【0009】
別の態様において、本発明は歯科矯正装具の製造方法に関し、該方法は、少なくとも1つのアンカーを物理的歯科模型上の1つ以上の対応する歯に接続し、ポリマー本体を、同ポリマー本体の外側表面が物理的歯科模型の舌側軟組織の形態に概ね一致するように、物理的歯科模型に対して形成し、ポリマー本体に少なくとも1つのワイヤ部材を取り付けて、取り外し可能な部分を形成し、ここで各ワイヤ部材は外側末端部を含み、各ワイヤ部材を、取り外し可能な部分が概ね歯肉方向に移動されてレプリカ舌側軟組織と当接関係となる際に、ワイヤ部材の外側末端部が対応するアンカーと解放可能に接続するよう構成する、ことを含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、物理的歯科模型上の歯科矯正装具を確認する方法に関し、該方法は、少なくとも1つのアンカー及び取り外し可能な部分を有する歯科装具を提供し、ここで取り外し可能な部分は、ポリマー本体と、その本体から外方向に延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含み、各ワイヤ部材は外側末端部を有し、本体は患者の舌側軟組織の形態に概ね一致する形態を有する外側表面を含み、各アンカーを物理的歯科模型上の対応する歯に接続し、取り外し可能な部分を物理的歯科模型に対して着座させ、取り外し可能な部分が物理的歯科模型に対して着座されるにつれて、各ワイヤ部材の外側末端部が、対応するアンカーに解放可能に接続することを観察する、ことを含む。
【0011】
尚別の態様において、本発明は歯科矯正治療の方法に関し、該方法は、少なくとも1つのアンカーを対応する歯の舌側表面に取り付け、ポリマー本体とその本体から外方向に延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含む取り外し可能な部分を提供し、各ワイヤ部材は外側末端部を含み、取り外し可能な部分が概ね歯肉方向に移動されるにつれて、各ワイヤ部材の外側末端部を対応するアンカーに解放可能に接続する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】物理的歯科模型に取り付けられた、本発明の実施形態による上顎アーチ装具の斜視図。
【図2】物理的歯科模型から分離された、図1の装具の分解斜視図。
【図3】取り外し可能な部分の外側ワイヤ部分と、対応するアンカーとの間の解放可能なカップリングの一タイプの部分分解図。
【図4】取り外し可能な部分の外側ワイヤ部分と、対応するアンカーとの間の解放可能なカップリングの別のタイプの部分分解図。
【図5】取り外し可能な部分の外側ワイヤ部分と、対応するアンカーとの間の解放可能なカップリングの更なる別のタイプの部分分解図。
【図6】取り外し可能な部分の外側ワイヤ部分と、対応するアンカーとの間の解放可能なカップリングの尚更なる別のタイプの部分分解図。
【図7】物理的歯科模型に取り付けられた、本発明の実施形態による取り外し可能な下顎アーチ装具の斜視図。
【図8】物理的歯科模型から分離された、図7の装具の取り外し可能な部分の分解斜視図。
【図9】図1又は図7の装具を作製する例示的な工程を示すフローチャート。
【0013】
定義
本明細書で使用する用語を以下に定義する。
【0014】
「近心側(mesial)」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心に向かう方向を意味する。
【0015】
「遠心側(distal)」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心から遠ざかる方向を意味する。「咬合側(occlusal)」は、患者の歯の外側先端に向かう方向を意味する。
【0016】
「歯肉側(gingival)」は、患者の歯茎又は歯肉に向かう方向を意味する。
【0017】
「顔側(顔)」とは、患者の唇又は頬に向かう方向を意味する。
【0018】
「舌側(舌)」とは、患者の舌に向かう方向を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、患者にカスタマイズ(customize)され、少なくとも部分的に取り外し可能であり、また上顎又は下顎歯列弓の1つ以上の歯の位置を維持し、若しくは代替的に、変化させるよう使用され得る舌側装具に関する。本発明の一実施形態による例示的な装具は、図1及び図2において上顎歯列弓に関して示され、概して数字10により指定されている。上顎アーチ装具10は、取り外し可能な部分14と、複数の対応するアンカー48(図1では不可視)とを備え、アンカーは次に物理的歯科模型12の舌側歯表面に接続されている。矯正模型用石膏(焼き石膏)又はエポキシ樹脂で構成されていてもよい歯科模型12は、患者の上顎中切歯20、側切歯22、犬歯24、第1小臼歯26、第2小臼歯28、第1大臼歯40及び第2大臼歯42、並びに集合的に29で示される歯肉及び舌側軟組織の正のレプリカである。患者に応じて、歯20、22、24、26、28の1つ以上が、治療の開始時に不在であり得ることが可能である。図2にも取り外し可能な部分14とアンカー48を示すが、分解図で示し、明確さのため歯科模型12が除去されている。装具10の以下の詳細な説明は、説明及び例を目的として歯科模型12を参照しているが、同一の記載が装具10の口腔内適用にも同様に適用し得ることを理解するべきである。以下の記載において、例えば、装具10は、歯科矯正治療を受けている患者の歯科構造を参照して記載されるのが適切であり得る。
【0020】
取り外し可能な部分14は、歯科模型12の口蓋構造と係合するポリマー本体を含む。ポリマー本体16は、ポリメチルメタクリレート等の剛性のアクリルポリマー、ポリジメチルシロキサン等の軟質ポリマー、又はポリカーボネート等の熱成形ポリマーを含む様々な材料から構成されてもよい。好ましくは、図示するように、ポリマー本体16は特注形成された外側表面を有し、該表面は、歯科模型12の舌側軟組織29の形態の少なくとも一部と正確に一致し、かつ嵌合するようフィットする形態を有する。本明細書で使用されるとき、舌側軟組織29は、例えば、取り付けられた上顎アーチの歯肉及び口蓋、並びに取り付けられた下顎アーチの歯肉及び隣接組織を含む、歯に関して舌方向に位置する口腔内の任意の粘膜表面を含んでもよい。
【0021】
場合により、図示するように、ポリマー本体16は、歯の歯肉側の縁から間隙15により舌方向に離間された顔側の縁を有する。歯とポリマー本体16との間に開放空間を形成することにより、間隙15は、歯を舌方向に向かって内側に並進させ又は傾ける自由を有利に提供する。一方、歯の舌側移動が必要ない場合、ポリマー本体は歯肉の縁まで延びて、いくつかの又は全部の歯の切下げ又は歯頸領域と舌側で係合してもよい。歯の切下げの係合、特に、矯正を必要としない歯の切下げの係合は、口内に配置された際に取り外し可能な部分14を軟組織29に対して固定し、追加の固定物を提供するのに有用であり得る。図1において、ポリマー本体16は馬蹄形状を有するが、代替として、歯科模型12の口蓋領域全体を実質的に覆っていてもよい。所望であれば、ポリマー本体16は、口蓋の異なる部分に対してフィットする2つ以上の別個の部分から形成されてもよい。別個の部分が使用される場合、それらはワイヤコネクタ等を使用して互いに取り付けられてもよい。
【0022】
複数のワイヤ部材18がポリマー本体16に取り付けられ、歯科模型12の歯に向かって外方向に延びている。各ワイヤ部材18の外側末端部は、第1のカップリング30に接続されている。ワイヤ部材18のそれぞれは、歯科模型12の上顎中切歯20、側切歯22、犬歯24、第1小臼歯26及び第2小臼歯28のうちの1つに対応している。図1及び図2に示す1つ以上のワイヤ部材18は、歯20、22、24、26、28の数個が不在か、又は矯正を必要としない場合、除外されてもよい。1つ以上のワイヤ部材18は、舌側歯表面の数個が、隣接する歯による妨害を原因としてアクセスできない場合も除外され得る。ワイヤ部材18は、矩形、円形、楕円形、又は任意の他の形状である断面を有してもよい。しかしながら、これらのワイヤは歯の舌側に位置するため、ワイヤ部材18は、治療中の患者の心地よさのため、円形の表面輪郭を有することが好ましい。
【0023】
図2の部分分解図に示すように、取り外し可能な部分14の第1のカップリング30のそれぞれは、対応するアンカー48に接続された第2のカップリング50に接続する。第1のカップリング30と第2のカップリング50との間の接続経路を、破線で示す。各アンカー48は、歯科模型12上の対応する上顎中切歯20、側切歯22、犬歯24、第1小臼歯26又は第2小臼歯28の対応する舌側表面に接続している。アンカー48と対応する歯との間の接続は、例えば、好適な接着剤又はセメントを使用した接着により接続されてもよい。アンカー48は接着剤により接着される必要はない。例えば、アンカー48は歯科矯正バンドに溶接されてもよく、バンドは次に好適なバンドセメントを使用して対応する歯に固定される。いくつかの実施形態において、アンカー48は、接着可能な舌側ボタン、又は他の市販の既成の接着可能な装具である。更なる代替物として、アンカー48全体がTRANSBONDブランドの光硬化型接着剤等の硬化性複合歯科材料から形成されてもよく、米国特許出願第2007/0031774号に記載されているもの等の技術を用いて、インビボにて患者の歯上で硬化されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、アンカー48は、患者の舌側歯表面の精密な、予め選択された位置に正確に配置され接着される。この目的のために、交付済み米国特許第7,020,963号(Cleary,et al.)、米国特許公開第2006/0166160号(Cleary,et al.)及び同第2006/0177791号(Cinader,et al.)に記載されているもの等の間接的方法を使用するのが有利であり得る。
【0025】
ワイヤ部材18は、例えば剛性及び弾力性等の広い範囲の材料特性を有する様々な材料から構成することができる。ワイヤ部材18は、治療する専門家の必要性に基づいて個々に構成することもでき得る。例えば、所定のワイヤ部材18は、高いレベルの矯正力が所望される場合はステンレス鋼から、比較的低いレベルの力が所望される場合はニッケルチタンから、中間レベルの力が所望されるβチタンから形成されてもよい。ワイヤ部材18の数個又は全部は、ポリマー又は充填複合材料(filled composite)等の非金属材料を含む他の材料から形成されてもよい。更に、各ワイヤ部材18の長さ及び厚さを調整して、所望の剛性を提供することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ワイヤ部材18は、取り外し可能な部分14に解放可能に接続するモジュール式構成要素である。例えば、ワイヤ部材18は、摩擦嵌合(friction-fit)カップリングを提供する一方、高い牽引力が適用された際にポリマー本体16から個々のワイヤ部材18を除去できるようにもする寸法の孔に挿入されてもよい。代替的に、解放可能なラッチ又は他の機械的カップリングを使用してもよい。好ましくは、通常の治療過程中にワイヤ部材18が経験する力は、ワイヤ部材18をポリマー本体16から移動又は除去するのに要する最小の力レベルを十分下回る。ワイヤ部材18をポリマー本体16から除去し、新しいワイヤ部材で置き換える手段を提供することにより、治療中、必要に応じて歯上の力を調整又は再起動することが可能である。交換ワイヤ部材は、例えば、元のワイヤ部材18とは異なる形状を有し、又は元のワイヤ部材18と比較して短く、又は長く、又は剛性を有し、又は軟性を有して、治療の進行に応じて装具10の任意の数の異なる形態を可能とする。ポリマー本体16は、治療全体において概ね同一の形状を維持する患者の口腔構造にフィットするため、同一のポリマー本体16を再構成する必要がないことは注目に値する。
【0027】
場合により、図示するように、ワイヤ部材18は可撓性スプリング36を含み、該スプリングは、ワイヤ部材18の外側末端部のポリマー本体16に関連した長手方向の(即ち、ポリマー本体16から離れるワイヤ部材18の伸長方向に概ね沿った方向における)動きを可能にする。スプリング36は更に、ワイヤ部材18の可撓性を増大させる。スプリング36は、弾性を有し、長手方向に引張又は圧縮力を供給できることが好ましい。Z−スプリング、コイルスプリング、オメガループ、プッシュロッド、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々な種類のスプリング36を使用することができる。スプリング36はワイヤ部材18の可撓性を増大させ、長手方向の撓みを可能にすることにより、歯が不正咬合の場合にワイヤ部材18をアンカー48と接続させることを容易にすることができる。スプリング36は、引っ張り及び圧縮の両方で機能することにより、装具10が歯に対して侵入力及び突き出し力の両方を付与することも可能にする。これは、歯を把持して侵入及び突き出しの歯矯正を提供するのが通常困難な、当技術分野の取り外し可能な他の装具を超える重要な利点である。患者の治療計画に基づいて、スプリング36はワイヤ部材18の数個又は全部に提供され得る。図1では、スプリング36は中切歯20に接続されたワイヤ部材18に存在するが、第1小臼歯26又は第2小臼歯28に接続されたワイヤ部材には存在しない。
【0028】
場合により、図示するように、クラスプ38がポリマー本体16に接続され、取り外し可能な部分14の後部範囲を歯科模型12の第1大臼歯40に固定する。クラスプ38は、一般に金属ワイヤループであり、該ループは、第1大臼歯40の近心側及び遠心側の歯間間隙の咬合面上に延び、第1大臼歯40の顔側表面と係合して、取り外し可能な部分14を歯科模型12に対して固定する。図1及び図2に示すクラスプ38はアダムスクラスプの種類であるが、アローヘッドクラスプ、ボールクラスプ、円周クラスプ(circumferential clasp)及びδクラスプを含む他のタイプの形態も可能である。所望であれば、クラスプ38を更に延長して、第2大臼歯42の片方又は両方と係合させてもよい。第2大臼歯42をクラスプ38と係合させることにより、取り外し可能な部分14の口内への着座が容易になる可能性があり、後部の歯に矯正力を適用する追加の固定物源が提供される。
【0029】
取り外し可能な部分14が概ね歯肉方向に移動されて歯科模型12の舌側軟組織29と当接関係となるにつれて、各ワイヤ部材18の外側末端部が、対応する歯に接続された対応するアンカー48と解放可能に接続する。図3〜図6は、所定のワイヤ部材18の外側末端部を対応する所定のアンカー48と接続するのに使用し得る、様々な幾何学的構造を示す。これらの各図において、ワイヤ部材18の外側末端部が対応する歯表面から剥がされて、嵌合表面と、湾曲した黒い矢印で示される接続への経路とを現している。図3において、ワイヤ部材18aの外側末端部は第1のカップリング30aに接続されており、該カップリングは矩形断面を有する空洞32aを含む。場合により、空洞32aはカップリング30aを完全に貫通して延びて、孔を形成する。図3に示すように、アンカー48aは基部52aから外方向に延び、基部は、対応する歯20aの舌側表面に取り付けられている。
【0030】
いくつかの実施形態において、基部52aは歯に面する表面輪郭を有し、該輪郭は、歯20aの舌側表面にフィットするようカスタマイズされている。カスタマイズされた基部52aを有することにより、患者の心地よさのためにアンカー48をより低い断面を有するよう構成することを有利に可能にし得る。更なる利点として、歯20aの舌側表面に対する基部52aのカスタマイズは、基部52aがアンカー48aを歯20a上の唯一の明確な位置及び配向のみに装着できる輪郭を有する自己位置決めの「鍵と鍵穴」機構を提供し得る。カスタマイズされた接着可能な舌側装具の形成に使用される関連した方法は、交付済み米国特許第6,776,614号(Wiechmann,et al.)並びに米国特許出願公開第2005/0158686号(Wiechmann,et al.)、同第2005/0003321号(Wiechmann,et al.)、及び同第2005/0277084号(Cinader,et al.)に記載されている。
【0031】
基部52aから外方向に突出し、略矩形の断面を有する第2のカップリング50aが、アンカー48aの舌側上に配置されている。取り外し可能な部分14が歯肉方向に移動されて歯科模型12の舌側軟組織29と当接関係となるにつれて、第2のカップリング50aは歯肉方向に摺動し、歯20aの舌側表面を横切る。第2のカップリング50aが摺動して第1のカップリング30aと整合したら、第2のカップリング50aは唇側へ下って第1のカップリング30aの矩形空洞32a内へ入り、該空洞としっかり係合する。図示するように、第1のカップリング30a及び第2のカップリング50aは、ワイヤ部材18aの外側末端部と、対応するアンカー48aとを互いに精密に合わせる相補的な嵌合表面を有する。場合により、矩形空洞32aは漏斗状の入り口を有して、カップリング30a、50aの互いの整合及び係合を容易にする。第1のカップリング30aと第2のカップリング50aとが互いに接続した際に、ワイヤ部材18aの外側末端部の位置及び配向が、アンカー48aに関して3つの空間面と3つの回転軸において精密に規定されることが好ましい。
【0032】
場合により、図示するように、カップリング30a、50aの一方又は両方は磁気カップリングである。例えば、第1のカップリング30a、第2のカップリング50a、又は両方は、少なくとも部分的に強磁性材料−即ち、外部磁場の不在下で磁場を生成する物体又は材料から構成されてもよい。カップリング30a、50aの磁気部分は、磁気引力がカップリング30a、50aの対向する表面間に形成されるように配向された極性を有することが好ましい。例えば、第1のカップリング30aの唇側表面が正の極性を有し得る一方、第2のカップリング50aの舌側表面が、負の極性を有し得る。磁気カップリング30a、50aは、カップリング30a、50aが概して顔側−舌側参照軸に沿って互いに向かって強制的に移動(urge)され、互いに閾値近接(threshold proximity)に到達した際に、第1のカップリング30aと第2のカップリング50aとが自発的に完全に「かちっと嵌り」、適切な接続となるよう構成されることが更に好ましい。磁気カップリング30a、50aの一方又は両方が、治療過程中、それらの磁気特性を維持することが好ましい。
【0033】
磁気カップリング30a、50aは、非磁気の機械的カップリングを超える数個の利点を有する。第1に、カップリング30aとカップリング50aとの間に物理的接触がないときでも、磁気カップリング30a、50aにより生成される磁場が作用する。ある距離からでも、これらの磁場は、カップリング30a、50aを互いに引き寄せる力を提供し、それにより患者の口内での取り外し可能な部分14の着座を容易にする。磁気カップリング30a、50aはまた、磁石が通常磁場と整合する傾向に基づいて自己整合性である。磁気カップリング30aと磁気カップリング50aとの間に十分な引力が存在することを条件として、患者又は治療専門家は、それらを任意の角度又は方向(近心、遠心、咬合及び歯肉を含む)から互いに向かって強制的に移動することのみによりカップリング30a、50aを互いに都合よく接続することができる。複数のワイヤ部材と、対応するアンカーとが存在する場合は特に、磁気係合は、純粋に機械的な係合を超えるかなりの使用の容易さ及び時間の節約を提供する。
【0034】
更なる利点として、カップリング30aとカップリング50aとの間の磁気引力は、カップリング50aの突出部をカップリング30aの空洞内に維持する力を提供する。このようにして、カップリング30a、50aは、互いからの自発的又は偶発的な離脱を能動的に抵抗する。これは、カップリング30a、50aが通常の会話、咀嚼動作(装具10が食事中に装着される場合)、舌突出等の過程中に接続された状態を維持するよう十分堅固でなければならないため、装具10が歯科矯正治療中に患者に装着されている場合の重要な利点である。
【0035】
他の利点として、カップリング30aとカップリング50aとの間の磁気維持力により、ワイヤ部材18は、治療中、「押す」(顔側)力と「引く」(舌側)力との両方を歯に付与することができる。その結果として、装具10は、一般に歯に「押す」力のみを適用する従来のワイヤ埋め込み装具を超える、多様性及び調整における主な利点を有する。これら従来の装具が舌方向に力を適用するために、ワイヤは典型的には歯の唇側を横切って案内され、これは美的な理由により好ましくない。
【0036】
尚他の利点として、磁気カップリング30a、50aは、互いの機械的維持を必要とせず、したがってアンダーカットが存在しない嵌合表面を有するよう構成されることができる。このことは、アンダーカット表面が食物及び歯垢を捕捉する傾向があるため、患者にとって実質的に有益である。これらのアンダーカットの排除は、洗浄が困難であり得る舌側装具において特に有益である。同一の理由で、アンカー48の舌側表面がアンダーカットを有さないよう構成されることが好ましい。
【0037】
図4及び図5に、他の有利な幾何学的構造を示す。例えば、図4に、第1のカップリング30b及び第2のカップリング50bが角錘の嵌合表面を有するよう構成された代替的実施形態を示す。この実施形態では、第1のカップリング30bは、第2のカップリング50bの角錐突出と解放可能に接続する角錘空洞32bを有する。角錐空洞32bのテーパ状の壁は、自己案内性であり、カップリング30b、50b係合の際のずれを少なくし得るため有利である。角錐空洞32bのテーパ状の壁は、アーチ全体に亘るカップリング30b、50bの対での接続を容易にすることにより、取り外し可能な部分14を迅速かつ容易にアンカー48に接続し、またアンカー48から接続解除することを可能にする。
【0038】
図5は、交差形状の空洞32cを有する第1のカップリング30cが、これと一致する、概ね交差形状の突出を有する第2のカップリング50cと接続する代替的実施形態を示す。図6は、開放末端の矩形空洞32dを有する第1のカップリング30dと、対応する第2のカップリング50dとを含む更なる別の代替的実施形態を示す。第1のカップリング30dは、空洞32dが歯肉側の壁を有さず、カップリング30dを咬合方向からカップリング50dに向けて摺動させることにより側方接続できる点で上記のカップリングとは異なる。これは、患者の装着中、ワイヤ部材18の外側末端部が概して咬合方向からアンカー48に接近するため、使用の容易さの見地から有利である。場合により、図示するように、カップリング30dは、漏斗状の咬合入り口60を含んで、カップリング50d内の突出のカップリング30dの空洞内への挿入を容易にする。上記の実施形態は単に例示的な目的で示され、嵌合表面の他の結合構造も可能である。
【0039】
レール、スロット、あり、アンダーカット、又は他の連結構造等の機械的カップリングを使用して、カップリング30、50を互いに解放可能に接続してもよい。いくつかの実施形態において、カップリング30、50の一方又は両方がクリップ、ラッチ、又は他の可撓性部分を含んで機械的接続を提供する。例えば、第1のカップリング30は、弾性的に拡大して第2のカップリング50を取り囲み、かつ該カップリングに係合した後、続いて弛緩してカップリング30の元の形状に戻ってカップリング30、50を互いにしっかり接続させる可撓性の孔又は空洞を使用してもよい。代替的に、第1のカップリング30は、取り外し可能な部分14が概ね歯肉方向に移動されて歯科模型12の舌側軟組織29と当接関係となるにつれて、弾性的に撓んで開放し、第2のカップリング50を受容する略C形のクリップを含んでもよい。次いで、第1のカップリング30は弛緩してその元の位置に戻って、カップリング30、50を互いに固定し得る。解放可能なカップリングの例は、交付済み米国特許第6,302,688号(Jordan,et al.)、同第6,582,226号(Jordan,et al.)、同第7,014,460号(Lai,et al.)、同第7,252,505号(Lai)及び係属中の米国特許出願公開第2005/0277084号(Cinader et al.)に記載されている。上記の機械的カップリングはいずれも、所望であれば磁気カップリングと組み合わせて使用されてもよい。
【0040】
カップリング30、50を互いに接続及び接続解除するのに必要な力は、患者による取り外し可能な部分14の挿入及び除去を容易にするよう十分小さくなければならない。しかしながら、これらの力は取り外し可能な部分14が、治療中、患者の歯科構造にしっかり接続し、いずれのアンカー48からも非意図的に分離しないことも好ましい。即ち、カップリング30、50は、通常の矯正力及び治療中に遭遇する他の力に供された場合でも、接続した状態を維持する必要がある。好ましい実施形態において、カップリング30、50は、可能な限り小さい係合力を提供するよう構成される。磁気カップリングの使用は、カップリング30、50が本質的に「自己係合性」であるよう形成され、カップリング30、50を互いに近接させるのに必要な力以外の追加の力を使用者から必要としない点で有利である。好ましい実施形態において、離脱力は、離脱が患者に不快感を与える程大きすぎず、治療中に自発的な離脱が生じる程小さすぎない。係合及び離脱力の最適値は、歯によってかなり異なり、ワイヤ部材18の形態にも一部依存し得る。
【0041】
有利には、装具10は、様々な種類の歯の動きを生み出すことができる。ワイヤ部材18を構成する自由さと、取り外し可能な部分14がアンカー48に接続する際の精密さとが一緒になって、装具10が従来のアライナー及びワイヤ埋め込み装具の使用では非常に困難な歯の動きを可能にする。個々の各ワイヤ部材18を無限の数の形態に操作できるため、装具10は入−出及び近心側−遠心側の歯の動き、並びに歯を傾ける及び回転させる動きの任意の組み合わせを生み出す可能性を有する。前述したように、ワイヤ部材18に1つ以上の可撓性スプリング36を組み込むことにより、ワイヤ部材18の長手方向軸に平行な侵入及び突き出しの歯の動きでさえも可能となる。
【0042】
以下、図7及び図8に示す実施形態を参照すると、本発明の別の態様による下顎アーチの歯科矯正用の下顎装具70が構成されている。下顎アーチ装具70は多数の点において上顎アーチ装具10と構造的に類似しており、取り外し可能な部分72とアンカー80とを含み、アンカー80は歯科模型76の歯に接続している。装具70は、図7にて歯科模型76の舌側歯表面に接続して示され、図8では歯科模型76が除去されて分解組立図で更に示されている。取り外し可能な部分72は、概ね馬蹄形状のポリマー本体74を有し、該ポリマー本体は、下顎アーチの舌側軟組織79に対してフィットすると共に、下顎アーチの歯との接触を避けるよう適合されていることが好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態において、ポリマー本体74は、舌と下顎切歯の切下げとの間の、ポリマー本体が取り付けられた歯肉の形態に概ね一致する形態を有する外側表面を含む。ここで、ポリマー本体が取り付けられた歯肉は、粘膜歯肉境界線により、その下方の、ポリマー本体が取り付けられていない歯肉と区別される。ポリマー本体74は、これらの軟組織の会話及び嚥下中の動きが、患者の不快感、擦過及び/又は潰瘍の原因となり得るため、ポリマー本体が取り付けられていない歯肉上に延びないことが好ましい。ポリマー本体が取り付けられた歯肉は固定され、それによりこの現象に抵抗を示す。装具70の他の特徴は装具10の特徴と類似し、ここでは繰り返さない。
【0044】
他の実施形態も考えられる。例えば、上顎及び下顎アーチ装具10、70は、口蓋又は顎骨内に移植される一時的固定装置(「TAD」)と組み合わせて使用されてもよい。これはポリマー本体16、74を1つ以上のTADに連結し、又は代替的に1つ以上のワイヤ部材18を対応するTADに解放可能に接続するよう構成することによって達成することができる。移植されたTAD等の装置と係合することにより、治療専門家が利用可能な更なる固定物を補い、またヘッドギアで提供されるもの等の口腔外固定物の必要性を低減することが可能である。TADの歯科矯正用途の例は、米国特許第6,716,030号(Bulard et al.)及び同第6,726,475号(Lin)、公開された米国特許出願第2007/264607号(Olavarria)、並びにPCT出願第2007/128969号(Cousley)に提供されている。
【0045】
尚別の実施形態において、アンカー48、80自体を歯科アーチに沿って2つ以上の隣接する歯の舌側表面を横切って伸長及び延長してもよい。アンカー48、80は更に、歯科アーチに沿って2つ以上の隣接する歯に接着剤により接着され又は別様に接続されてもよい。2つ以上の歯を互いに接続することにより、アンカー48、80は依然として歯を一単位として一緒に移動できると共に、接続された歯の位置を互いに関して有利に固定する。代替的に、2つの異なる歯上に位置するアンカー48、80は、舌側ワイヤセグメント又は舌側ストラップ等の堅い構造により一緒に連結されてもよい。アンカー48、80の間に1つ以上の歯がアーチに沿って位置する場合、ワイヤセグメント又はストラップは、これらの歯の舌側への動きを抑制するのに有利に使用され得る。
【0046】
アンカー48、80とワイヤ部材18との間に1対1の相関は必要ない。2つ以上のワイヤ部材18を2つ以上の対応する位置で単一のアンカー48、80に接続することが可能である。代替的に、単一のワイヤ部材18をアンカー48、80に接続することが可能であり、該アンカーは次に、前記の段落に記載したように、1つ以上の他のアンカー48、80と連結される。これらの可能性は、装具10、70の構成においてより大きい多様性を治療専門家に提供して、歯を維持し又は歯に直接的な矯正力を指向させる。更なる利点として、これらの形態は、患者の口内のワイヤ部材18及び/又はアンカー48、80の総数を低減することにより治療中の患者の心地よさを改善し得る。
【0047】
製造方法
治療専門家又は検査技師が従う装具10、70を作製する例示的なプロセスは、図9のフローチャートにより記載される。最初の工程は、フローチャート上のブロック100に示されるように、装具10、70の形成に使用する物理的歯科模型12、76を提供することである。歯科模型12、76の形態は、治療専門家が認める標的歯列を表すことが好ましい。本明細書で定義されるとき、「標的歯列」は、治療専門家が想定する用途に応じて、患者の現在の歯列、所望の最終的な歯列、又は予想される中間の歯列であってもよい。
【0048】
標的歯列が患者の現在の歯列として定義される場合、歯科模型12、76は、例えば、患者の歯列のアルギネート印象から準備されたエポキシ樹脂又は石膏鋳物から提供されてもよい。標的歯列が中間又は最終的な歯列として定義される場合、上記の鋳物を個々の模型歯要素に分割し、歯要素を再配列して所望の歯列を形成し、歯要素を蝋で一緒に固めて歯科模型12、76を提供してもよい。代替的に、歯科模型12、76は再構成可能な歯科模型であってもよく、それにより個々の歯を分割せずに再配列することができる。再構成可能な歯科模型の例は、例えば、交付済み米国特許第6,227,851号(Chishti et al.)及び同第6,394,801号(Chishti et al.)に記載されている。
【0049】
歯科模型12、76は、提供された後、装具10、70の形成及び構成用のテンプレートとして使用することができる。このプロセスはブロック102に継続し、ここでアンカー48、80が歯科模型12、76の対応する舌側歯表面に接続される。次いで、ブロック104に示されるように、好適な熱可塑性樹脂又は硬化性アクリル系樹脂(acrylic)を使用してポリマー本体16が歯科模型12、76のレプリカ舌側軟組織29、79に対して形成される。それらの材料の例としては、Dentsply International(York,PA)製のTRIAD TRANSHEETブランドの光硬化性アクリル系樹脂及びGreat Lakes Orthodontics(Tonawanda,NY)製のBIOCRYLブランドの冷硬化性アクリル樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー本体16の形状及び外側表面が適切に形成されたら、ブロック106に示すように、ワイヤ部材18がポリマー本体16内に挿入される。
【0050】
ブロック108に示すように、次いで、取り外し可能な部分14、72が移動して歯科模型12、76のレプリカ舌側軟組織29、79と当接関係となるにつれて、各ワイヤ部材18がアンカー48、80と解放可能に接続するように、各ワイヤ部材18が構成される。場合により、ブロック110に示すように、ポリマー本体16、74は、適切な硬化(即ち、架橋結合)反応によりその最終的な形状に硬化される。ブロック110の硬化工程は、所望であればワイヤ部材18の構成に先だって行われてもよい。取り外し可能な部分14、72が完全に構成された後、該部分はアンカー48、80から接続解除され、取っておかれる。
【0051】
装具10、70を使用するために、アンカー48、80は歯科模型12、76から患者の歯へ移動される必要がある。アンカー48、80の対応する歯に関する精密な位置を保存するために、この工程は間接的なボンディングトレー又は他の移動器具を使用して行われることが好ましい。アンカー48、80が患者の歯の舌側表面にカスタマイズされることにより自己位置決め性を有する場合、直接接着も実現性のある代替物であり得る。次いで、取り外し可能な部分14、72を患者の口内に配置し、アンカー48、80に接続して歯科矯正治療を開始してもよい。
【0052】
前記の一節は、装具10、70の形成及び使用の例示的な方法を記載しているが、多数の他の実施形態が可能である。例えば、ブロック100、102、104、106、108及び110のうちの1つ以上の工程を、デジタル方法の補助により実行してもよい。仮想世界で操作を実行することにより、これらの工程の1つ以上を強化することも、又は排除さえすることも可能である。以下に更に記載する様々なデジタル方法は、装具設計の精密さを改善し、また従来手により行われていた作製プロセスの態様を容易にする可能性があり得る。
【0053】
そのような方法の1つは、デジタル走査である。デジタル口腔内走査を用いて、又は印象若しくは歯科模型をデジタル的に走査することによって、患者の歯科構造を表す仮想歯科模型を捕捉し得る。そこから、例えば治療専門家がコンピュータ上で仮想歯科模型を操作して、ブロック100で言及した標的歯列に到達することができる。標的歯列の誘導に使用し得るソフトウェア及びプロセスの更なる詳細は、例えば、米国特許第6,739,870号(Lai,et al.)、米国特許出願公開第2005/0170309号(Raby,et al.)、同第2006/0073435、同第2006/0073436(Raby,et al.)、及び同第2006/0105286(Raby,et al.)、並びに米国特許出願公開第2008/0233531号(Raby et al.)に開示されている。
【0054】
歯科模型12、76の準備を容易にし得る他のデジタル方法は、ラピッドプロトタイピングである。上記の任意の方法を用いて仮想歯科模型を形成した後、この仮想歯科模型からラピッドプロトタイピング法により歯科模型12、76を直接作製することができる。有利には、アルギネート印象を取ったり、又は石膏模型を鋳込む必要がない。ラピッドプロトタイピング法の例としては、3次元(3D)印刷法、選択領域レーザ積層法又は粉末焼結造形(SLS)法、電気泳動積層法、ロボキャスティング法、溶融積層造形(fused deposition modeling, FDM)法、紙積層(laminated object manufacturing, LOM)法、ステレオリソグラフィ(SLA)法、及びフォトステレオリソグラフィ法などが挙げられるが、これらに限定されない。走査されたデジタルデータから正の歯科模型を形成するこれら及び他の方法は、係属中の米国仮特許出願第60/975687号(Puttler,et al.)に開示されている。理解し得るように、ブロック100で歯科模型12、76を提供する工程は、デジタル走査及びラピッドプロトタイピング法を用いて大幅に援助されることができる。
【0055】
別の実施形態では、アンカー48、80は、印象の採取又は口腔内走査に先立って患者の歯に接続される。アンカー48、80は患者の歯に直接接着されるため、このことは、ブロック102でアンカー48、80を物理的歯科模型12、76に接着する必要性、及びアンカー48、80を患者の歯に移動する必要性を排除することによりプロセスを簡略化する。前記のように、不正咬合歯列から標的歯列への歯科模型12、76の操作は、コンピュータにより行うことができる。他の潜在的な利益が存在する。例えば、アンカー48、80と患者の歯とが口腔内走査にて一緒に捕捉される場合、アンカー48、80と患者の歯との相対的な位置に基づいて、ワイヤ曲げ器具又はロボットを使用して取り外し可能な部分14、72のワイヤ部材18をデジタル的に構成することが可能である。
【0056】
ラピッドプロトタイピングは、装具10、70を作製するための物理的歯科模型12、76の必要性をも排除し得る。ラピッドプロトタイピングが歯科模型12、76の作製に使用できることが示された一方、ラピッドプロトタイピングを装具10、70の少なくとも一部の直接的な作製に使用し得ることも考えられる。ブロック104及びブロック110のポリマー本体16、74の形成、ブロック106及びブロック108のワイヤ部材18の構成、並びに/又はアンカー48、80及びカップリング30、50の構成は、ラピッドプロトタイピング法の補助により実行できる可能性がある。直接的な作製は、装具10、70作製の中間工程を排除することにより、費用及び時間を節約できる可能性がある。
【0057】
装具10、70が仮想歯科模型から直接作製された場合、物理的歯科模型12、76は依然として、品質管理を目的として装具10、70を確認するのに有用であり得る。これは取り外し可能な部分14、72を物理的歯科模型12、76に着座させ、各ワイヤ部材18の外側末端部が、取り外し可能な部分14、72が物理的歯科模型12、76に着座されるにつれて、対応するアンカー48、80に解放可能に接続することを観察することにより実行され得る。装具10、70が適切に構成され、歯科模型12、76が標的歯列を表すと仮定すれば、ワイヤ部材18のそれぞれは、取り外し可能な部分14、72が着座された際に弛緩する筈である。上記の手順は、各ワイヤ部材の外側末端部が、その対応するアンカー48、80と適切に接続できることを確実にするために、不正咬合(又は望ましくない)の歯列を表す歯科模型上の装具10、70を確認するよう使用することもできる。この場合、装具10、70は起動しているため、取り外し可能な部分14、72が着座すると、少なくとも1つのワイヤ部材18が力伝達係合にて作用する。
【0058】
更なる利益として、装具10、70の取り外し可能な部分14、72を治療経過中に再構成することも可能である。取り外し可能な部分14、72の再構成は、一連の取り外し可能な部分14、72の作製の効率的な、費用効率が高い代替物であり得る。例えば、取り外し可能な部分14、72は、1つ以上のワイヤ部材18に手による調整(例、屈曲)を行うことにより再構成されて、治療過程中に歯を2つ以上の歯列を経過するよう案内することができる。これは、装具10、70の再起動にも有利に使用され得る。例えば、現在の装具10、70がもはや歯を移動するのに十分な力を付与しない程、患者の歯が移動された場合、治療専門家は、ワイヤ部材18に適切な調整を行うことによって装具10、70により適用される矯正力を回復させる自由を有する。ワイヤ部材18がモジュール式の場合、この調整は、取り外し可能な部分14、72の1つ以上の個々のワイヤ部材18の置き換えにより行うことができる。場合により、口腔内走査又は他の走査技術を用いてアンカー48、80の位置が前もって捕捉され、この情報はワイヤ屈曲器具又はロボットを使用して自動的に代替ワイヤを構成するのに使用される。
【0059】
応用例
装具10、70に関する様々な応用例が想定される。一つの応用例において、装具10、70は患者の歯をそれらの現在の位置に維持するリテーナーとして機能する。この応用例では、装具10、70の作製に使用される歯科模型12、76は、患者の現在の歯科構造の正確なレプリカである。歯科模型12、76は患者の歯科構造と同一の形態を有するため、装具10、70は、口内に配置された際に、本質的にゼロ力を歯に適用するであろう。1つ以上の歯が逆戻りし、又は位置若しくは配向が変化した場合、装具10、70は歯をそれらの元の位置に強制的に戻す。
【0060】
第2の応用例では、装具10、70は歯を現在の不正咬合位置から最終的な所望の位置へ能動的に移動するよう構成される。より詳細には、装具10、70の取り外し可能な部分14、72が患者の柔らかい舌組織と当接関係となるよう移動され、アンカー48、80と接続されるにつれて、少なくとも1つのワイヤ部材18が弾性的に撓む。次いで、ワイヤ部材18が弛緩してそれらの通常の形態に戻るにつれて、弾性の、撓んだワイヤ部材18の固有の記憶が歯上に矯正力を提供するであろう。したがって、この応用例では、装具10、70の作製に使用される歯科模型12、76は、治療専門家により想像される最終的な歯列を表す。
【0061】
第3の応用例では、装具10、70は、歯を中間の、非最終的な歯列に移動するよう構成される。この状況は、不正咬合の程度又は複雑さが、歯を最初の位置から最終的な位置へ再配置するのに単一の装具では不十分な場合に遭遇され得る。これらの場合、治療は多段階にて行われてもよく、2つ以上の一連の取り外し可能な部分14、72が、単一セットのアンカー48、80と共に連続的に使用されて、歯を不正咬合歯列から最終的な矯正歯列へ増加的かつ進行的に移動する。ここで、装具10、70の作製に使用される歯科模型12、76は、治療過程中に観察され得る中間歯列を表す。
【0062】
第3の応用例の例示的な実施形態では、第1の取り外し可能な部分14、72がアンカー48、80に接続されて、患者の不正咬合歯を中間歯列に再配置する。次いで、第1の取り外し可能な部分14、72を口腔から除去する。次いで、弛緩された際に第1の取り外し可能な装具部分とは異なる形態を有する第2の取り外し可能な部分を同様に使用して、患者の歯を中間歯列から最終的な歯列に再配置し得る。所望であれば、上記のプロセスを2つ以上の中間歯列に拡張してもよい。
【0063】
前記のように、中間又は最終的な歯列を表す歯科模型12、76は、物理的歯科鋳物を手で形成、切断及び再組立することにより作製することができる。デジタル方法を使用することもできる。例えば、最終的な歯列は、コンピュータアルゴリズム又は治療する専門家からの入力により決定され、治療を一連の別個の工程に亜分割することにより、1つ以上の中間歯列を誘導することができる。そのようにして中間又は最終的な歯列のそれぞれが誘導されたら、対応する歯科模型12、76はラピッドプロトタイピング法を用いて直接作製することができる。対応する中間又は最終的な取り外し可能な部分14、72のそれぞれは、既に記載した方法のいずれかを用いて、歯科模型12、76から製作することができる。
【0064】
上記の発明は、明瞭さ及び理解を目的として図及び実施例によってある程度詳細に述べたものである。しかしながら、様々な代替例、改変例、及び均等物の使用が可能であり、上記の説明は発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。また、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正装具であって、
ポリマー本体と、該本体から外方向へ延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含み、該ワイヤ部材のそれぞれが外側末端部を含み、前記本体が患者の舌側軟組織の形態と概ね一致する形態を有する外側表面を含む、取り外し可能な部分と、
少なくとも1つのアンカーであって、各アンカーは該アンカーを歯の舌側表面に接続するための基部を有し、各ワイヤ部材の前記外側末端部は、各アンカーが歯科患者の対応する歯に接続され、前記取り外し可能な部分が概ね歯肉方向に移動されて患者の舌側軟組織と当接関係となる際に、対応するアンカーに解放可能に接続する、アンカーと、を備える、歯科矯正装具。
【請求項2】
患者の舌側軟組織の形態に概ね一致する形態を有する前記外側表面が、患者の口蓋に概ね一致する請求項1に記載の装具。
【請求項3】
患者の舌側軟組織の形態に概ね一致する形態を有する前記外側表面が、患者の下顎の取り付けられた歯肉に概ね一致する、請求項1に記載の装具。
【請求項4】
各ワイヤ部材の前記外側末端部が第1のカップリングを含み、前記対応するアンカーが、前記第1のカップリングと解放可能に接続するよう適合された第2のカップリングを含む、請求項1に記載の装具。
【請求項5】
前記第1のカップリング及び第2のカップリングが磁気カップリングを含む、請求項4に記載の装具。
【請求項6】
前記第1のカップリング及び第2のカップリングが、各ワイヤ部材の前記外側末端部と、前記対応するアンカーとを互いに合わせる嵌合表面を含む、請求項4に記載の装具。
【請求項7】
前記第1のカップリング及び第2のカップリングは、該第1のカップリング及び第2のカップリングが互いに接続されるにつれて、顔側−舌側参照軸に概ね沿う方向で互いに向かって移動する、請求項4に記載の装具。
【請求項8】
前記第1のカップリング及び第2のカップリングの少なくとも一方が、係合を容易にするよう漏斗状に形成されている、請求項4に記載の装具。
【請求項9】
接続された際に、前記第1のカップリング部材が前記第2のカップリング部材を包囲する、請求項4に記載の装具。
【請求項10】
各ワイヤ部材の前記外側末端部を、前記対応するアンカーに開放可能に接続するためのラッチを更に含む、請求項1に記載の装具。
【請求項11】
前記ラッチが略C形のクリップを含む、請求項10に記載の装具。
【請求項12】
前記少なくとも1つのワイヤ部材が、前記ワイヤ部材の前記外側末端部を、前記ポリマー本体から離れて前記ワイヤ部材の延長方向に概ね沿った方向に移動させる可撓性スプリングを含む、請求項1に記載の装具。
【請求項13】
前記取り外し可能な部分に解放可能に接続された一時的固定装置を更に含む、請求項1に記載の装具。
【請求項14】
前記アンカーが接着可能な舌側ボタンを含む、請求項1に記載の装具。
【請求項15】
前記アンカーが硬化性複合歯科材料を含む、請求項1に記載の装具。
【請求項16】
前記アンカーの舌側表面がアンダーカットを有さない、請求項1に記載の装具。
【請求項17】
前記少なくとも1つのワイヤ部材が、前記取り外し可能な部分に解放可能に接続する、請求項1に記載の装具。
【請求項18】
前記基部が歯に面した表面輪郭を有し、前記表面輪郭は前記歯の舌側表面にフィットするようにカスタマイズされている、請求項1に記載の装具。
【請求項19】
歯科矯正装具の製造方法であって、
少なくとも1つのアンカーを、物理的歯科模型上の1つ以上の対応する歯に接続し、
ポリマー本体の外側表面が前記物理的歯科模型の前記舌側軟組織の形態に概ね一致するように、前記ポリマー本体を前記物理的歯科模型に対して形成し、
少なくとも1つのワイヤ部材を前記ポリマー本体に取り付けて取り外し可能な部分を形成し、各ワイヤ部材は外側末端部を含み、
前記取り外し可能な部分が概ね歯肉方向に移動して、前記物理的歯科模型の前記舌側軟組織と当接関係となる際に、前記ワイヤ部材の前記外側末端部は、前記対応するアンカーに解放可能に接続するよう各ワイヤ部材を構成する、ことを含む、方法。
【請求項20】
前記物理的歯科模型が標的歯列を表す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー本体を前記物理的歯科模型に対して形成する行為が、熱成形、光硬化及び化学的硬化からなる群より選択されるプロセスを用いて行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
物理的歯科模型上で歯科矯正装具を確認する方法であって、
少なくとも1つのアンカーと取り外し可能な部分とを有する歯科装具を提供し、前記取り外し可能な部分は、ポリマー本体と、該本体から外方向に延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含み、各ワイヤ部材は外側末端部を含み、前記本体は、患者の舌側軟組織の形態に概ね一致する形態を有する外側表面を含み、
各アンカーを、前記物理的歯科模型上の対応する歯に接続し、
前記取り外し可能な部分を前記物理的歯科模型に対して着座させ、
前記取り外し可能な部分が前記物理的歯科模型に対して着座されるにつれて、各ワイヤ部材の前記外側末端部が、対応するアンカーに解放可能に接続することを観察する、ことを含む、方法。
【請求項23】
前記物理的歯科模型が標的歯列を表す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記物理的歯科模型が不正咬合歯列を表す、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
歯科矯正治療の方法であって、
少なくとも1つのアンカーを、対応する歯の舌側表面に取り付け、
ポリマー本体と、該本体から外方向に延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含む取り外し可能な部分を提供し、各ワイヤ部材は外側末端部を含み、
前記取り外し可能な部分が概ね歯肉方向に移動するにつれて、各ワイヤ部材の前記外側末端部を対応するアンカーに解放可能に接続する、ことを含む、方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのアンカーを歯の舌側表面に接続する行為が、間接的なボンディングトレーを使用して行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記取り外し可能な装具部分が、第1の取り外し可能な装具部分であり、更に、前記第1の装具部分を口腔から除去し、
第2の取り外し可能な装具部分を患者の口腔内で概ね歯肉方向に移動し、前記第2の取り外し可能な装具部分は、ポリマー本体と、前記第2の取り外し可能な装具部分の前記ポリマー本体から外方向へ延びる少なくとも1つのワイヤ部材とを含み、前記第2の取り外し可能な装具部分は、弛緩した際に、弛緩した際の前記第1の取り外し可能な装具部分とは異なる形態を有し、
前記第2の取り外し可能な装具部分が概ね歯肉方向に移動されるにつれて、前記第2の取り外し可能な装具部分の各ワイヤ部材の外側末端部を、対応するアンカーに接続する、ことを含む、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−517603(P2011−517603A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504049(P2011−504049)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038157
【国際公開番号】WO2009/126433
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】