説明

取付具

【課題】支柱に対する線材の取付け及び取外しが容易でありながら、支柱に取り付けられた線材が簡単に外れてしまうことがない取付具を提供することにある。
【解決手段】支柱101の所定位置に線材102を取り付けるための取付具10であって、支柱101に接合される接合部11が設けられた本体1と、本体1の外周面に設けられ、線材101が掛けられる第一フック2aと、本体1の外周面に設けられ、第一フック2aに掛けられた線材102が掛けられる第二フック2bと、を備え、第一フック2a及び第二フック2bが、基部21a、21bと、基部21a、21bから突出する掛止部22a、22bをそれぞれ有し、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの掛止部22a、22bの突出方向が互いに逆向きである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱の所定位置に線材を取り付けるための取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹、野菜、花卉などの植物を栽培する際、これらの植物が害獣や害鳥によって食い荒らされてしまうおそれがある。このような被害の発生を回避するための防獣・防鳥対策として、植物の栽培地等に金属パイプ等の支柱を設置し、この支柱にネットやシートを取り付ける設備が知られている。これにより、害獣や害鳥が栽培地に侵入するのを防ぐことができる。
【0003】
下記特許文献に、植物の栽培地等に設置される支柱にネットを取り付けるための取付具が開示されている(特許文献1参照)。かかる取付具は、支柱と連結される連結部材にネットを掛けるためのフックが複数設けられている。この取付具によれば、フックにネットを掛けるだけで支柱にネットを取り付けることができるので、防獣・防鳥対策設備の設置が容易であるという利点がある。また、ネットの取外しも容易であるため、設備の撤去を効率的に行うことができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の取付具は、複数のフックが全て同じ向きで連結部材に設けられている。このため、ネットにかかった害獣や害鳥が暴れた際にフックの向きと同じ方向に強い力がかかると、ネットがフックから簡単に外れてしまうおそれがある。フックがネットから外れてしまうと、防獣・防鳥対策設備としての機能が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−278952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、支柱に対する線材の取付け及び取外しが容易でありながら、支柱に取り付けられた線材が簡単に外れてしまうことがない取付具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支柱の所定位置に線材を取り付けるための取付具であって、前記支柱に接合される接合部が設けられた本体と、前記本体の外周面に設けられ、前記線材が掛けられる第一フックと、前記本体の外周面に設けられ、前記第一フックに掛けられた前記線材が掛けられる第二フックと、を備え、前記第一フック及び前記第二フックが、基部と、該基部から突出する掛止部をそれぞれ有し、前記第一フック及び前記第二フックそれぞれの前記掛止部の突出方向が互いに逆向きであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の取付具は、前記第一フックの掛止部と前記第二フックの掛止部とが、前記本体の周方向に視たとき互いに重なることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の取付具は、前記本体に複数の前記接合部が設けられていてもよい。
【0010】
さらに、本発明の取付具は、前記本体と前記第一フック及び前記第二フックとを樹脂により一体成形してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る取付具によれば、線材を第一フック及び第二フックに掛けるだけで線材を取付具に取り付けることができるので、支柱に対する線材の取付け及び取外しが非常に容易である。これに加えて、第一フック及び第二フックそれぞれの基部から突出する掛止部の突出方向が互いに逆向きであるため、一方の掛止部の突出方向と同じ方向に強い力がかかっても、他方の掛止部に線材が引っ掛かることになる。このため、各掛止部のうちいずれの突出方向に強い力がかかっても、支柱と接合された取付具に取り付けられた線材が簡単に外れてしまうことがない。
【0012】
また、前記第一フックの掛止部と前記第二フックの掛止部とが、前記本体の周方向に視たとき互いに重なるように構成すれば、軸方向における第一フックの基部と第二フックの基部との間に所定形状の隙間が形成される。第一フック及び第二フックそれぞれに掛けられた線材は、この隙間に配置されるので、線材が軸方向へ移動可能な範囲を当該隙間の範囲内に制限することができる。
【0013】
また、前記本体に複数の前記接合部を設ければ、複数の支柱を互いに接合する継手として本発明の取付具を使用することができる。この継手に第一フック及び第二フックが設けられているので、線材を掛けることが可能な箇所が増加する。このような取付具は、例えば、ネットのような網体を支柱に取り付ける際、特に有効であり、取付け時の安定性を更に向上させることができる。
【0014】
さらに、前記本体と前記第一フック及び前記第二フックとを樹脂により一体成形すれば、本体と第一フック及び第二フックとの間に接合部が存在しないため、各フックの外力に対する強度を高めることができる。また、本発明の取付具を機械的に大量生産できるので、生産効率及び製品完成時の寸法精度が向上するとともに、生産コストが低減され、歩留りを効果的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る取付具を示す(a)上面斜視図、及び(b)底面斜視図である。
【図2】本実施形態に係る取付具を示す(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図、及び(d)底面図である。
【図3】本実施形態に係る取付具の使用例を説明するための全体図、及び部分拡大図である。
【図4】他の実施形態に係る取付具を示す上面斜視図である。
【図5】他の実施形態に係る取付具の使用例を説明するための全体図、及び部分拡大図である。
【図6】さらに他の実施形態に係る取付具を示す正面図である。
【図7】またさらに他の実施形態に係る取付具、及び当該取付具の使用例を説明するための全体図、及び部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る取付具の実施形態について図面を用いて説明する。本明細書において、同一の符号で示されている場合は、同一の構成を示すものとする。
【0017】
本実施形態の取付具10は、金属パイプ、樹脂パイプ等の中空棒材から成る支柱101(図3参照)の先端部に配置され、支柱101の先端部に可撓性を有する線材102(図3参照)を取り付けるために用いられるものである。図1及び図2に示すように、本実施形態の取付具10は、本体1と、本体1の外周面にそれぞれ設けられた第一フック2a及び第二フック2bと、を備える。
【0018】
本体1は、支柱101の先端部に取り付けられる取付部材である。本体1の形状は、外周面に第一フック2a及び第二フック2bを設けることが可能な形状であればよく、特に限定されない。本実施形態では、本体1は円柱状(又は円筒状)に形成されており、以下の説明において「周方向」とは取付具10の本体1の軸心O(図1(a)参照)周りに本体1の外周面に沿った方向(図1実線矢印参照)を指し、「軸方向」とは取付具10の本体1の軸心Oに平行な方向(図1点線矢印参照)を指すものとする。本体1の他の形状としては、例えば、四角柱、五角柱などの多角柱状、あるいは複数の立体形状の組合せから成る形状であってもよい。本体1の大きさ(例えば、径寸法、軸方向の長さ等)は特に限定されず、支柱101の外形寸法(例えば、太さ、長さ等)に応じて適宜設計される。
【0019】
本体1の一端には、支柱101に接合される接合部11が設けられている。本実施形態では、接合部11は円筒状に形成されており、接合部11を支柱101の中空部に挿入することで、取付具10が支柱101の先端部に接合される。接合部11の外径は、支柱101の挿入時に支柱101の内面との間に形成される隙間が最小限になる寸法であるのが好ましい。また、接合部11の長さは、少なくとも本体1の軸方向の長さの1/3程度の長さを有することが好ましい。これにより、取付具10を支柱101に対して安定的に接合することができる。
【0020】
また、接合部11の周縁部には、支柱101の先端部が収容される環状凹部12が形成されている。環状凹部12の外径から内径までの距離は、支柱101の先端部が収容されたときに支柱101の内面及び外面との間に形成される隙間が最小限になる寸法であるのが好ましい。また、環状凹部12の深さは、少なくとも接合部11の長さの1/3程度の深さを有することが好ましい。これにより、取付具10を支柱101に取り付けた際の安定性を更に向上させることができる。特に支柱101が金属製である場合には、防錆効果を得ることもできる。
【0021】
第一フック2aは、線材102を掛けるためのものである。第一フック2aは、基部21aと、基部21aから突出する掛止部22aと、を有する。本実施形態では、第一フック2aは、基部21aと掛止部22aとが一体的に形成されており、本体1の軸方向に開口部が形成されている。基部21aは本体1の外周面に設けられており、本体1の一端側に配置されている。掛止部22aは本体1の一端側から他端側へ向かって軸方向に突出している。
【0022】
第一フック2aの形状に関しては特に限定されないが、基部21aの線材102と対向する部分の形状は円弧状であるのが好ましい。また、掛止部22aの線材102と対向する部分の形状は本体1の周方向の幅ができるだけ広い平面状又は曲面状であるのが好ましい。これにより、第一フック2aが線材102と接触した時に線材102にかかる力を一点に集中させずに分散させることができるので、第一フック2aとの接触時に線材102が受ける損傷を低減することができる。また、必要に応じて角部に面取り加工が施されていてもよい。
【0023】
第一フック2aの大きさは、以下の条件に応じて適宜設計変更することができる。例えば、基部21aの高さH(図2(b)参照)や周方向の幅の寸法などは、本体1の大きさ、線材102の太さ、及び第一フック2aの材質等に応じて適宜設計される。掛止部22aの厚み、長さ等についても同様である。
【0024】
第二フック2bは、上述した第一フック2aに掛けられた線材102を掛けるためのものである。第二フック2bは、基部21bと、基部21bから突出する掛止部22bと、を有する。なお、第二フック2bの構成は、以下に示す相違点を除き、ほとんどが第一フック2aの構成と共通している。よって、以下の説明では、第一フック2aとの共通点に関する説明は省略し、相違点に関する説明のみを行うものとする。
【0025】
第二フック2bと第一フック2aとの相違点は、掛止部22bの突出方向が、掛止部22aの突出方向に対して逆向きであるという点である。さらに具体的に言えば、第二フック2bは、基部21bが本体1の他端側に配置されており、掛止部22bが本体1の他端側から一端側へ向かって軸方向に突出している点が第一フック2aと異なっている。
【0026】
第一フック2aと第二フック2bの相対的な位置関係については、第一フック2aと第二フック2bとが本体1の周方向に交互に配置されていればよく、第一フック2aの基部21aが軸方向に対して第二フック2bの基部21bよりも上方に配置されていればよい。本実施形態では、本体1の周方向に所定の間隔D(図2(c)参照)を隔てて配置され、且つ、第一フック2aの基部21aが軸方向に対して第二フック2bの基部21bよりも上方に配置された第一フック2a及び第二フック2bから成る一組のフックが、本体1の外周面に二組設けられている。本実施形態では、この二組のフックの周方向に対する相対的な位置関係は、取付具10の軸心O回りに回転対称となっている。
【0027】
第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの数については、第一フック2a及び第二フック2bが本体1の外周面に少なくとも一組設けられていればよい。本実施形態では、第一フック2a及び第二フック2bから成る一組のフックが二組(つまり、それぞれ二ずつ合計四のフックが)設けられているが、第一フック2aの数と第二フック2bの数とが必ずしも同数である必要はない。つまり、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの数は、使用目的等に応じて設計上許容される範囲で所望の数だけ設けることができる。
【0028】
また、本実施形態では、第一フック2aの掛止部22aと第二フック2bの掛止部22bとが、本体1の周方向に視たとき互いに重なるように配置されている。このとき、軸方向における第一フック2aの基部21aと第二フック2bの基部21bとの間には、所定形状の隙間Sが形成される。隙間Sの形状は、第一フック2a及び第二フック2bの形状等によって異なる。本実施形態では、基部21a、21bそれぞれの円弧状に形成された部分の間に円形の隙間S(図2(b)参照)が形成されている。取付具10に取り付けられた線材102はこの隙間Sに配置されるので、線材102が軸方向へ移動可能な範囲を隙間Sの範囲内に制限することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの基部21a、21bが、本体1の一端側から他端側に亘って本体1の外周面の一定範囲に設けられたベース部Bに形成されている。このように、それぞれの基部21a、21bをベース部Bに形成することにより、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの剛性が高められるため、各フックの外力に対する強度を向上させることができる。また、ベース部Bを利用すれば、第一フック2a及び第二フック2bを形成するための位置決めを容易に行うことができるという利点があるので、これらを切削加工により形成する場合には特に有効である。
【0030】
本実施形態の取付具10は、上述した本体1と第一フック2a及び第二フック2bとが樹脂により一体成形されている。使用する樹脂材料としては、外力に対する強度が高く、温度変化による変形が発生し難い合成樹脂を用いるのが好ましい。本実施形態では、樹脂材料としてポリカーボネート樹脂が用いられているが、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂など他の種類の合成樹脂を用いることもできる。本実施形態の取付具10の製造方法としては、例えば、専用の金型を用いた射出成形、切削加工、あるいはこれらの組み合わせによる方法が挙げられる。
【0031】
次に、本実施形態の取付具10の作用及びその効果について説明する。なお、以下の説明では、図3に示す防獣対策設備100に本実施形態の取付具10を使用する場合を例示して具体的に説明する。
【0032】
防獣対策設備100は、栽培地Gで栽培されている果樹、野菜、花卉などの植物を食い荒らす害獣が栽培地Gに侵入するのを防ぐためのものである。図3に示すように、防獣対策設備100は、栽培地Gに設置された複数の支柱101に線材102で形成されたネットNを取り付けることにより形成される。本実施形態では、ネットNは、ナイロン等の合成繊維を束ねて形成した柔軟な線材102により形成されている。このような防獣対策設備100で栽培地Gの周囲を囲むことにより、栽培地Gと他の土地とを仕切ることができる。
【0033】
防獣対策設備100において、ネットNのサイズ(例えば、長手方向及び幅方向の長さ等)は、支柱101の長さや栽培地Gの広さ等に応じて適宜設計変更できる。また、ネットNの網目部分の形状、大きさ等、及びネットNを構成する線材102の太さ、材質等に関しても、防獣対策の対象となる害獣の種類などに応じて適宜設計変更できる。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の取付具10は、栽培地Gに設置された複数の支柱101の先端部にそれぞれ配置されている。本実施形態では、各支柱101に接合された取付具10に設けられた第一フック2a及び第二フック2bから成る一組のフックは、隣接する支柱101の取付具10に設けられた第一フック2a及び第二フック2bから成る一組のフックと互いに対向している。言い換えれば、第一フック2a及び第二フック2bは、各支柱101の両端を通る平面に対してそれぞれ平行になるように配置されている。
【0035】
次に、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれに、ネットNの上端部に位置する線材102が掛けられる。本実施形態では、第一フック2a及び第二フック2bから成る一組のフックが本体1の外周面に二組設けられているので、図3の部分拡大図に示すように、線材102は、初めに、一方の第一フック2a及び第二フック2bの各掛止部22a、22bに掛けられる。各掛止部22a、22bの突出方向が互いに逆向きであるため、線材102は各掛止部22a、22bそれぞれの突出方向に対して交互に掛けられる。
【0036】
その後、線材102は、本体1の外周面に沿わせるようにして、さらに他方の第一フック2a及び第二フック2bの各掛止部22a、22bに掛けられる。このときも、線材102は上記と同様に、各掛止部22a、22bそれぞれの突出方向に対して交互に掛けられる。このようにして第一フック2a及び第二フック2bそれぞれに掛けられた線材102は、実質的には、自重によって第二フック2bにのみ掛けられている状態になる。つまり、通常、第二フック2bは、主に線材102を支持する支持手段として機能する。
【0037】
上述のような手順で第一フック2a及び第二フック2bに線材102を掛ける作業を栽培地Gに設置されたすべての支柱101に接合された取付具10に対して行い、ネットNの下端部を任意の固定手段で栽培地Gに固定することにより、防獣対策設備100が完成する。このとき、ネットNは実質的には各第二フック2bのみによって支柱101に取り付けられている状態である。
【0038】
このように、本実施形態の取付具10によれば、ネットNの上端部に位置する線材102を、各支柱101の先端部に配置された各取付具10に設けられた第一フック2a及び第二フック2bに掛けるだけで、ネットNを支柱101に取り付けることができる。したがって、支柱101に対するネットNの取付け及び取外しの作業が非常に容易である。これにより、防獣対策設備100の設置及び撤去を短時間で効率よく行うことができる。
【0039】
このような防獣対策設備100において、例えば、ネットNにかかった害獣が暴れたりすると、ネットNに外力が加えられる。このとき、外力が加えられる方向は不規則に変化するが、ある一方向に強い力がかかることもある。一方向に強い力がかかることによりネットNが簡単に外れてしまうようであれば、たとえネットNの取付け及び取外しが容易であったとしても、本来の目的である防獣対策設備100としての機能性が損なわれてしまう。
【0040】
一般的に、フックに線材102を掛けた場合において、フックの向き(つまりフックの掛止部の突出方向)と同じ方向に対して強い力がかかると線材102がフックから外れ易い。これを本実施形態の取付具10に置き換えれば、掛止部22a、22bそれぞれの突出方向と同じ方向に対して強い力がかかると、線材102は第一フック2a及び第二フック2bから外れ易いことになる。
【0041】
しかしながら、本実施形態の取付具10によれば、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの掛止部22a、22bの突出方向が互いに逆向きである。このため、例えば、掛止部22aの突出方向と同じ方向に強い力がかかっても、第二フック2bに線材102が掛かることになる。これとは逆に、掛止部22bの突出方向と同じ方向に強い力がかかれば、第一フック2aに線材102が掛かることになる。つまり、掛止部22a、22bのうち、一方の突出方向と同じ方向に強い力がかかっても、他方の第一フック2a又は第二フック2bのいずれかに線材102が掛かることになるのである。
【0042】
また、本実施形態の取付具10によれば、第一フック2aの掛止部22aと第二フック2bの掛止部22bとが、本体1の周方向に視たとき互いに重なるように配置されている。このとき、軸方向における基部21a、21bそれぞれの円弧状に形成された部分の間に円形の隙間Sが形成される。取付具10に取り付けられた線材102はこの隙間Sに配置されるので、線材102が軸方向へ移動可能な範囲は隙間Sの範囲内に制限される。一方、線材102は、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれの開口部に対して開放されているので、軸方向にあそびを持たせることができる。これにより、軸方向にかかる力を逃がすことができる。
【0043】
このように、本実施形態の取付具10は、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれに掛けられた線材102に対して、掛止部22a、22bそれぞれの突出方向に強い力がかかった場合には、第一フック2a及び第二フック2bを、線材102の軸方向への移動を制限する制限手段として機能させることができる。したがって、本実施形態の取付具10を用いれば、支柱101に対する線材102の取付け及び取外しが容易でありながら、支柱101に取り付けられた線材102が簡単に外れてしまうことがない。
【0044】
また、本実施形態の取付具10によれば、本体1と第一フック2a及び第二フック2bとを樹脂により一体成形することができる。この場合、本体1と第一フック2a及び第二フック2bそれぞれとの間には接合部が存在しない。このため、第一フック2a及び第二フック2bの外力に対する強度を高めることができる。また、取付具10を射出成形、切削加工、あるいはこれらの組み合わせによる製造方法により製造すれば、機械的な大量生産により、生産効率及び製品完成時の寸法精度が向上するとともに、生産コストが低減され、歩留りを効果的に向上させることが可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態に係る取付具10について説明したが、本発明の取付具は、その他の形態で実施することができる。
【0046】
例えば、図4に示す取付具20ように、本体1に複数の接合部11が設けられている実施形態であってもよい。本実施形態では、本体1の両端部に上述した接合部11が形成されている。なお、接合部11が複数設けられている点を除き、取付具20の各構成は上記取付具10の各構成と共通しているため、詳細な説明は省略する。
【0047】
取付具20によれば、本体1の両端部に複数の接合部11が設けられているので、複数の支柱101を互いに接合する継手として使用することができる。例えば、図5に示すように、防獣対策設備200では、取付具20の両端部にそれぞれ支柱101の一端を接合して複数の支柱101を連結した連結体が栽培地Gに設置されている。取付具20を用いれば、この連結体の継手部分に上述の第一フック2a及び第二フック2bが設けられているので、線材102を掛けることができる箇所が増加する。したがって、ネットNのような網体を連結体に取り付ける際に取付具20と上述の取付具10を併用すれば、ネットNが連結体に取り付けられたときの安定性を更に向上させることができる。このように、取付具20は、ネットNのような網体を連結体から成る支柱に取り付ける際、特に有効である。
【0048】
また、図6に示す取付具30のように、第一フック2aの掛止部22a全体と、第二フック2bの掛止部22b全体とが、本体1の周方向に視たとき互いに重なるように構成されている実施形態であってもよい。本実施形態では、掛止部22a、22b全体が本体1の周方向に互いに重なっているが、掛止部22a、22bの一部が本体1の周方向に互いに重なるように構成することもできる。各掛止部22a、22b全体が本体1の周方向に互いに重なる場合、掛止部22a、22bは、本体1の軸方向に対して略同じ位置にそれぞれ配置される。一方、掛止部22a、22bの一部が本体1の周方向に互いに重なる場合、掛止部22a、22bは、本体1の軸方向に対してそれぞれ異なる位置にそれぞれ配置される。このとき、軸方向における第一フック2'aの基部21aと第二フック2'bの基部21bとの間には、両短辺が円弧状である略長方形状の隙間S'が形成される。
【0049】
取付具30によれば、第一フック2'a及び第二フック2'bそれぞれに掛けられた線材102がこの隙間S'に配置されるので、線材102が本体1の軸方向へ移動可能な範囲が隙間S'の範囲内に制限される。この隙間S'は軸方向へのあそびが大きいので、線材102の軸方向に対する自由度が高い。このため、軸方向にかかる力をより効果的に逃がすことができる。これにより、軸方向にかかる力が線材102を介して支柱101に与える影響を大幅に低減することができる。したがって、取付具30を防獣対策設備100、200に用いれば、対策対象の害獣が大型の動物であったとしても、ネットNにかかった害獣が暴れて、支柱101が栽培地Gから抜けて倒れてしまうような事態を防止することができる。あるいは、線材102に替えて、隙間S'の長手方向の長さと略同じ幅寸法の帯状体を取付具30に取り付けることもできる。
【0050】
さらに、図7に示す取付具40のように、本体1が中空部を有する円筒状に形成されており、本体1の中空部に挿入された支柱101に本体1を固定する固定手段3をさらに備えた実施形態であってもよい(部分拡大図参照)。本実施形態では、円筒状に形成された本体1の内周面が支柱101との接合部に相当する。また、本実施形態では、固定手段3としてネジが用いられており、本体1には、外周面から内周面まで貫通するネジ孔が形成されている。本体1を支柱101に固定する際、支柱101がネジの先端部によって押圧されるため、ネジの先端部形状は平先や丸先であるのが好ましい。これにより、支柱101の損傷を抑えることができる。ネジの数、ネジ孔を設ける位置等については特に限定されない。固定手段3はネジに限定されず、例えば、本体1の両端側から本体1の内周面と支柱101の外面の間に円筒状のブッシュを取り付けて取付具40を固定してもよい。
【0051】
取付具40によれば、支柱101の軸方向の任意の位置に本体1を固定することができる。例えば、図7に示すように、防獣対策設備300では、複数の支柱101を連結した連結体の末端部に本実施形態の取付具40が固定手段3により固定されている。この取付具40に設けられた第一フック2a及び第二フック2bそれぞれにネットNの下端部に位置する線材102を掛けることで、ネットNの下端部を支柱1に取り付けることができる。これにより、上述したようなネットNの下端部を栽培地Gに固定するための固定手段が不要になる。また、支柱101又はこの連結体の長さよりもネットNのサイズ(上端部から下端部までの長さ)が小さい場合であっても、ネットNの下端部の位置に合わせて取付具40を固定することができる。したがって、多様なサイズのネットNに対応することが可能となる。
【0052】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【0053】
例えば、第一フック2aの掛止部22a及び第二フック2bの掛止部22bそれぞれの突出方向は、必ずしも軸方向である必要はない。つまり、掛止部22aと掛止部22bの突出方向が互いに逆向きであれば、上述した取付具10、20、30と同一の作用又は効果が生じる範囲内で、本体1の外周面に沿った任意の方向に突出していてもよい。
【0054】
また、第一フック2a及び第二フック2bが、ある程度の可撓性を有していても外力に対する強度を十分に確保できる場合(例えば、対策対象の害獣が小型の動物である場合など)は、掛止部22a、22bの形状を湾曲させたり、あるいは、掛止部22a、22bの先端部に線材102の外れ防止のためのツメを設けたりしてもよい。これにより、掛止部22a、22bの突出方向に対して、線材102が簡単に外れ難くなる。
【0055】
また、本体1に設ける接合部11の形態としては、例えば、上述した円筒状のものに替えて、本体1の一端又は両端に中空棒材の先端部を挿入するために十分な深さの凹部を設けた形態を採用することができる。この場合、本体1の一端又は両端に設けられた凹部の内周面が接合部11を構成する。したがって、この凹部の内周面の形状は、中空棒材の先端部の形状に応じた形状に形成される。かかる形態を採用すれば、支柱101として中空棒材を用いる場合に加えて、金属製等の棒材を用いる場合にも対応することができる。接合部11が、このような形態であっても、上記取付具10、20、30、40と同様の作用又は効果を得ることができる。
【0056】
さらに、第一フック2a及び第二フック2bそれぞれに掛けられる線材102は必ずしも柔軟である必要はない。例えば、金網などを形成する金属線材のような可撓性が低いものであってもよい。上述した防獣対策設備100において、可撓性が低い金属線材を各取付具10に取り付ける場合は、金網が取り付けられる面に対して垂直方向に第一フック2a及び第二フック2bを配置すればよい。この場合、各基部21a、21bの間に金属線材を配置し、取付具10を反時計回りに回転させることで、金属線材を鉤状突起部2に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の取付具は、支柱に線材を取り付ける必要がある設備の構成部品として好適なものである。例えば、害鳥の栽培地への侵入を防ぐ防鳥対策設備、つる性の植物を栽培するためのフェンスなどの他の園芸用設備、多目的グランドでソフトボール等を行う際に簡易的に設置するバックネット、ロープパーティション、ベルトパーティション、あるいは、養生シートの取付けなど、多種の分野において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10、20、30、40:取付具
1:本体
2a、2'a:第一フック
2b、2'b:第二フック
11:接合部
21a、21b:基部
22a、22b:掛止部
101:支柱
102:線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の所定位置に線材を取り付けるための取付具であって、
前記支柱に接合される接合部が設けられた本体と、
前記本体の外周面に設けられ、前記線材が掛けられる第一フックと、
前記本体の外周面に設けられ、前記第一フックに掛けられた前記線材が掛けられる第二フックと、を備え、
前記第一フック及び前記第二フックが、基部と、該基部から突出する掛止部をそれぞれ有し、前記第一フック及び前記第二フックそれぞれの前記掛止部の突出方向が互いに逆向きであることを特徴とする取付具。
【請求項2】
前記第一フックの掛止部と前記第二フックの掛止部とが、前記本体の周方向に視たとき互いに重なることを特徴とする、請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記本体に複数の前記接合部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の取付具。
【請求項4】
前記本体と前記第一フック及び前記第二フックとが樹脂により一体成形されていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−147683(P2012−147683A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6726(P2011−6726)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(391008168)上西産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】