説明

取付部材、外設部材の取付構造、及びその施工法

【課題】新設、既設を問わず建築物の屋根等の外装面に施工される多種の縦葺き(縦張り)外装構造に適用でき、ハゼ部等の突状部に容易に取り付けることができ、各種外設部材を取り付けることができる取付部材、外設部材の取付構造、及びその施工法を提供する。
【解決手段】取付部材1は、凹部21を有する第1部材2と凸部31を有する第2部材3とを枢着してなり、第1部材2は、外装材の突状部の一方側に係止する第1係止部22と、締着具2xを挿通させる通孔24と、外設部材を支持する支持部23とを有し、第2部材3は、突状部の他方側に係止する第2係止部32と、締着具2xの下端が当接する当接受部33とを有し、第1部材2と第2部材3とを枢着した状態の取付部材1を外装面の突状部に配設し、締着具2xを締め付けて第2部材3を回動させ、第1部材2の第1係止部22と第2部材3の第2係止部32とで突状部に係止する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新設、既設を問わず建築物の屋根等の外装面に施工される多種の縦葺き(縦張り)外装構造に適用でき、ハゼ部等の突状部に容易に取り付けることができ、太陽電池モジュール等の各種外設部材を取り付けることができる取付部材、外設部材の取付構造、及びその施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的情勢及び政治的情勢が相俟って太陽エネルギー変換モジュールへの期待はますます高まっており、既設の構造物や建築物の屋根面への太陽電池パネルの取り付け要請もまた高まっている。
上述の要請に鑑み、縦葺き屋根上に太陽電池を設置する構造として、例えば特許文献1等に示されるような、取付対象の屋根構造におけるハゼ部にボルトナット等の締着具にて持出金具を取り付ける構造が提案されている。
このうち、特許文献1には、逆U字状に成形した取り付け部材1の下端に延長部26,26を配し、該延長部26,26にて、ハゼ部201wの基端となる起立片201を左右から挟んだ状態で、略水平状に配したボルトナット23にて固定した構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−17175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のように略水平状に配したボルトナットを締め付けるには、締め付け治具もそれに応じて横方向に用いる必要があり、締め付け作業が困難となるケースもあった。
さらに、これらの構造におけるボルトナットは、ハゼ部の上方に配されるため、最も締め付け応力が作用する部位とハゼ部を係止する部位との間に距離(少なくとも突状部の高さ以上)が生ずるため、締め過ぎが部材の変形を生じ易いものであった。
【0005】
そこで、本発明は、新設、既設を問わず建築物の屋根等の外装面に施工される多種の縦葺き(縦張り)外装構造に適用でき、ハゼ部等の突状部に容易に取り付けることができ、太陽電池モジュール等の各種外設部材を取り付けることができる取付部材、外設部材の取付構造、及びその施工法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、外装面を構成する外装材にて形成される突状部に固定する取付部材であって、凹部又は凸部を有する第1部材と凸部又は凹部を有する第2部材とを枢着してなり、前記第1部材は、突状部の一方側に係止する第1係止部と、外設部材又は外設部材を取り付ける支持材を支持する支持部と、締着具を挿通させる通孔と、を有し、前記第2部材は、突状部の他方側に係止する第2係止部と、締着具の下端が当接する当接受部と、を有し、第1部材と第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせると共に、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止できることを特徴とする取付部材に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記取付部材において、第2部材の通孔には、締着具と螺合する雌螺子部が形成されていることを特徴とする取付部材をも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記取付部材において、支持部には、締着手段をスライド可能に保持する溝部が形成され、締着手段の頭部を収納した状態で締着手段の位置調整を可能としたことを特徴とする取付部材も提案する。
【0009】
さらに、本発明は、外装面を構成する外装材にて形成される突状部に、前記構成の取付部材を固定し、該取付部材に直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付けたことを特徴とする外設部材の取付構造をも提案するものである。
【0010】
さらに、本発明は、外装面を構成する外装材にて形成される突状部に、前記構成の取付部材を固定し、該取付部材に外設部材を取り付ける外設部材の施工法であって、第1部材と第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせる第1の工程と、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止する第2の工程と、固定した取付部材の支持部に、直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付ける第3の工程と、を含むことを特徴とする外設部材の施工法をも提案するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の取付部材は、凹部又は凸部を有する第1部材と凸部又は凹部を有する第2部材とを枢着し、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止できる。
また、締着具の先端と第2係止部とは極めて近いので、最も締め込み応力が作用する部位と突状部を係止する部位との間の距離が短いため、締め込み応力が直接的に係止圧力となり、締め過ぎが生じ難く、部材の変形も生じ難いものである。
したがって、従来の略水平状に配されたボルトナットを締め付ける取付部材などに比べて作業を上方から実施できるため、作業が極めて容易である。
【0012】
また、第2部材の通孔に締着具と螺合する雌螺子部が形成されている場合には、締着具の締め込み作業が安定に行われるものとなる。さらに、予め第2部材に緩く締着具を嵌め付けて一体状としておくこともできる。
【0013】
また、支持部には、締着手段をスライド可能に保持する溝部が形成され、締着手段の頭部を収納した状態で締着手段の位置調整を可能とした場合には、支持部に取り付ける太陽電池モジュール等の外設部材、又は該外設部材を支持する支持材を取り付ける際に、適宜に位置調整して取付を実施することができる。
【0014】
さらに、前記構成の取付部材を用いた外設部材の取付構造は、各種の外設部材を、前記取付部材の支持部又は該支持部に取り付けた支持材に取り付けた構成であり、外装材にて形成される突状部を備える屋根等の外装面に対し、太陽電池モジュール等を簡易な構造にて取り付けることができる。
【0015】
さらに、前記構成の取付部材を用いた外設部材の取付構造は、取付部材を外装面の突状部に配設して第1係止部を突状部の一方側に沿わせる第1の工程も、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させて第2係止部を突状部の他方側に係止する第2の工程も、固定した取付部材の支持部に、直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付ける第3の工程も、それぞれに容易に実施できるので、全体的に施工性に優れ、実用的価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)本発明の取付部材の一実施例(第1実施例)を示す断面図、(b)第1部材及び締着具を示す分解断面図、(c)第2部材の断面図、(d)第1部材と第2部材との長さを同じにした取付部材の斜視図である。
【図2】(a)第1実施例の取付部材を外装面の突状部に取り付けた取付構造を示す断面図、(b)その施工手順において第2部材を回動する状態を示す断面図、(c)その施工手順において締着具を締め込んで第2部材を回動する状態を示す断面図、(d)第1実施例の取付部材を他の外装面の突状部に取り付けた取付構造を示す断面図、(e)その施工手順において締着具を締め込んで第2部材を回動する状態を示す断面図である。
【図3】(a)第1実施例の取付部材を用いた太陽電池モジュールの取付構造の一実施例を示す断面図、(b)その側断面図である。
【図4】(a)本発明の取付部材の他の一実施例(第2実施例)を示す断面図、(b)第1部材と第2部材との長さを同じにした取付部材の斜視図、(c)第2実施例の取付部材を屋根面の一態様に取り付けた状態を示す断面図、(d)第2実施例の取付部材を他の屋根面に取り付けた状態を示す断面図、(e)第2実施例の取付部材を他の屋根面に取り付けた状態を示す断面図、(f)第2実施例の取付部材を他の屋根面に取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】(a)第2実施例の取付部材を用いた太陽電池モジュールの取付構造の一実施例を示す断面図、(b)その側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の取付部材は、外装面を構成する外装材にて形成される突状部に固定する部材であって、凹部又は凸部を有する第1部材と凸部又は凹部を有する第2部材とを枢着して、即ち凸部と凹部で回動自在に一体化してなる。
そして、前記第1部材は、突状部の一方側に係止する第1係止部と、外設部材又は外設部材を取り付ける支持材を支持する支持部と、締着具を挿通させる通孔と、を有する構成であり、前記第2部材は、突状部の他方側に係止する第2係止部と、締着具の下端が当接する当接受部と、を有する構成である。
【0018】
前記第1部材は、外装面に形成される突状部の一方側に配する部材であって、特に限定するものではないが、取付時に回動させる第2部材に対し、この第1部材は突状部の一方側に固定(不動)するものであり、第2部材の回動の支点(軸)である凹部を有する。
この第1部材の凹部又は凸部は、第2部材の凸部又は凹部と枢着(凸部と凹部で回動自在に一体化)されるものであれば、特にその具体的な形状を限定するものではない。
【0019】
また、この第1部材の第1係止部は、突状部の一方側に係止するものであれば特にその形状等を限定するものではなく、例えば突状部の基端(起立部)の側面に沿うものでも、突状部の側面(但し係止される受け形状を備える)に沿うものでもよい。
さらに、この第1部材の支持部は、外設部材又は外設部材を取り付ける支持材を支持するものであればよく、溝がない略平坦状であっても、外設部材を取り付けるために溝部等を設けたものでもよい。この支持部には、後述する図示実施例のように締着手段をスライド可能に保持する溝部を形成してもよい。この締着手段としては、ボルトに限定されず、ナットでもよく、この場合、締着手段の頭部を収納した状態で締着手段の位置調整が可能となる。
また、この第1部材の通孔は、締着具を挿通させるものであって、締着具を締め込む際に容易に取り付けることができ、安定な締め込み作業を果たすことができる。この通孔には、後述する図示実施例のように締着具と螺合する雌螺子部を形成してもよく、この雌螺子部としては、通孔内面に螺子溝を刻設したタップでもよいし、部材に一体化させたナットでもよく、この場合には、締着具の締め込み作業がより安定に行われ、予め(=取付に先立って)第1部材に緩く締着具を嵌め付けて一体状としておくこともできる。
さらに、この第1部材には、後述する図示実施例のように外装面に接地する定着面を備えることが望ましい。
【0020】
前記第2部材は、外装面に形成される突状部の他方側に配する部材であって、特に限定するものではないが、取付時に回動させるものであり、回動の支点(軸)である凸部又は凹部を有する。
この第2部材の凸部又は凹部は、第1部材の凹部又は凸部と枢着(凸部と凹部で回動自在に一体化)されるものであれば、特にその具体的な形状を限定するものではない。
【0021】
また、この第2部材の第2係止部は、前記第1部材の第1係止部と同様であって、突状部の他方側に係止するものであれば特にその形状等を限定するものではなく、例えば突状部の基端(起立部)の側面に沿うものでも、突状部の側面(但し係止される受け形状を備える)に沿うものでもよい。
また、この第2部材の当接受部は、締着具の下端が当接するものであって、当該当接受部にて受けた締着具の締め込み応力がこの第2部材を回動させ、前記第2係止部を突状部の他面側に係止させる。
【0022】
そして、前記第1部材と前記第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせると共に、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止することができる。
即ちこの取付部材の施工法は、第1部材と第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせる第1の工程と、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止する第2の工程とからなる。
【0023】
なお、前記第1部材と第2部材との枢着を安定させる目的で、凹部に凸部を嵌め付けた後に凹部の端縁を潰す(凹部の内径を凸部の外径より小さくする)ように加工することにより、凸部の脱離を防止することができる。
また、第1部材と第2部材との長さ(流れ方向の長さ寸法)は、第1部材より第2部材を短くすることが多いが、特に限定するものではなく、適宜に設定することができる。そして、第2部材の長さに応じて締着具の本数を適宜に設定すればよく、例えばピース状の第2部材では、締着具は1箇所(ボルト材では1本)でもよいが、比較的長尺な第2部材の場合には、所定間隔を隔てて締着具を複数箇所用いて締め込み圧力を増強してもよい。
【0024】
前記屋根面は、外装面を構成する外装材にて形成されるものであって、後述する図示実施例に示すように外装材の側縁を略垂直状に立ち上げてカシメて形成したものでも、その外側にキャップ状のカバー材を配したものでも、一方の側縁に他方の側縁を重合させて形成したものでもよく、特にその構成を限定するものではない。
【0025】
また、本発明は、前記構成の取付部材を用いた外設部材の取付構造をも提案するものであり、外装面を構成する突状部に、前記構成の取付部材を固定し、該取付部材に直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付けたものである。
【0026】
前記外設部材としては、太陽電池パネルや緑化パネル(構造)、或いは新設の屋根材(構造)等の屋根面の大きな面積を占めるものであっても、雪止め金具や避雷針、アンテナ等の部分的に設けるものであってもよい。また、太陽電池パネルにおいても、太陽電池モジュールの周縁にフレーム材を配したものも、太陽電池を外装材に一体的に設けたものであってもよくその構成は特に問わない。
【0027】
外設部材を支持する支持材としては、前記第1部材の支持部に直接的に取り付けてもよいし、所用な補助部材を介して間接的に取り付けてもよい。
この支持材は、特にその形状や構成等を限定するものではないが、後述する図示実施例のように桁行き方向に連続する逆U字状の長尺材(横桟材)又は定尺材でもよいし、流れ方向に連続する長尺材(縦桟材)又は定尺材でもよい。
【0028】
また、本発明の外設部材の取付施工方法は、以下に説明する第1〜第3の工程を含む。
第1の工程及び第2の工程については前述の取付部材の施工法と全く同様である。即ち第1の工程は、第1部材と第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせる工程であり、第2の工程は、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止する工程である。
第3の工程は、固定した取付部材の支持部に、直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付ける工程である。
【0029】
第3の工程は、外装面の突状部に固定された取付部材の支持部に、外設部材を直接的、又は間接的に取り付けるものである。
取付部材の支持部は、前述のように略平坦状でもよいし、締着手段をスライド可能に保持する溝部を形成したものでもよいので、例えば前者の場合には、外設部材を上方から押さえる押さえ具を配した状態で上方からビス等の固定具を支持部に打ち込んで取り付けてもよい。例えば後者の場合には、溝部に締着手段として上向きボルトの頭部を保持させ、該上向きボルトを前記構成の押さえ具に挿通させた状態でナット等を締め付けて固定してもよい。
【0030】
このように第1〜第3の各工程は、何れも容易に実施できるものであって、全体的に施工性に優れ、実用的価値が高い。
なお、本発明の取付部材を設置する屋根面は、前述のように外装材にて形成される突状部を備えるものであればよく、新築でも既設でもよい。
【実施例】
【0031】
図1(a)に示す本発明の取付部材1の第1実施例は、凹部21を有する第1部材2と凸部31を有する第2部材3とを枢着してなり、前記第1部材2は、図2に示すように外装面4に形成される突状部40の一方側(図面左側)に配され、前記第2部材3は、突状部40の他方側(図面右側)に配されるものである。
なお、前記第1部材2と第2部材3とは、図3(b)に示すように第1部材2より第2部材3の方が短い態様が多いが、特に限定するものではなく、例えば図1(d)では両部材2,3を同じ長さとした(=取付部材1')が、第2部材3が長くてもよい。
【0032】
前記第1部材2は、取付時に回動させる第2部材3に対し、突状部40の一方側に固定(不動)するものであり、第2部材3の回動の支点(軸)である凹部21を有し、突状部40の一方側に係止する第1係止部22と、太陽電池モジュール等を支持する支持部23と、ボルト材である締着具2xを挿通させる通孔24と、を有する構成である。
図示実施例の第1部材2は、図1(b)に示すように下端が屋根面4に接地する接地面25である縦片2Aの上方へ延在する首状部2Bを介して上面が支持部23である頭状部2Cを備え、前記首状部2Bの右側には、下方へ向かう傾斜部2Dが形成される成形体であって、突状部40の一方側を包囲状に覆うように配される。
そして、前記縦片2Aの下端に内側へ突出する第1係止部22が設けられている。
また、前記頭状部2Cの頂部に設けられる支持部23の略中央には、上方が開放する溝部231が設けられている。
前記傾斜部2Dの基端には、断面が略円弧状の凹部21が形成されている。この凹部21は、内径が、後述する第2部材3の凸部31の外径より僅かに大きく、且つ下方が開放する形状としたが、その開放幅は、凸部31の外径よりも小さく形成している。そのため、凹部21に凸部31を嵌め付けた状態では、脱落することが無く、回転自在に枢着される。
前記傾斜部2Dの略中央には、斜め上方が開放する溝部26が設けられ、その底部には通孔24が形成されている。この溝部26には、雌螺子部としてナット2yが装着されている。
【0033】
前記第2部材3は、突状部40の他方側に配する部材であって、取付時に回動させるものであり、回動の支点(軸)である凸部31を有し、突状部40の他方側に係止する第2係止部32と、締着具2xの下端が当接する当接受部33と、を有する構成である。
図示実施例の第2部材3は、図1(c)に示すように略イ状の成形体であって、その上端に設けられる凸部31は、断面略円形状であり、その下端に設けられる第2係止部32は、内側へ突出する突出片状であり、その下面が屋根面4に接地する接地面34である。また、その高さの中程に設けられる当接受部33は、受け溝状であって、締着具2xの下端を位置規制する規制部331が形成されている。
【0034】
なお、図1(a)に示す取付部材1には、ボルト材である締着具2xを溝部26の外側に配設したナット2zを貫通させて溝部26内に装着したナット2yに取り付けたが、このナット2zは、ボルトの緩み止めの作用を果たす。即ち地震等に起因する外力が作用した場合にも締め込んだ締着具2xが緩むことにより突状部40から脱離するような事故を防止することができる。
【0035】
そして、前記第1部材2(の凹部21)と前記第2部材3(の凸部31)とを枢着した状態の取付部材1を、図2に示すように外装面4の突状部40に配設し、第1部材2の第1係止部21を突状部40の一方側(図面左側)に沿わせると共に、上方から締着具2xを締め付けて第2部材3を回動させ、第2部材3の第2係止部31を突状部40の他方側(図面右側)に係止することができる。
詳しくは、第1の工程として、図2(c),(e)に示すように第1部材2と第2部材3とを枢着した状態の取付部材1を外装面4,4IIの突状部40,4iiに臨ませる。
この状態で第2の工程として、上方から各種治具を用いて締着具2xを締め付ける(締め込む)と、図示するように締着具2xの先端が当接受部33を押圧するため、第2部材3が軸21,31に対して次第に回動する。
その結果、図2(a),(d)に示すように第2部材3の第2係止部32が突状部40の他方側に係止する。
【0036】
なお、図2では、突状部40,40iiの構成が異なる2種の外装面4,4IIに前記構成の取付部材1を取り付けた例を示したが、図2(a),(c)における突状部40は、左右の外装材4A,4Aの側縁を略垂直状に立ち上げ、該立ち上げ部分の上端をカシメて形成したものである。この外装面4では、外装材4A,4Aの平坦状の面板部が前記取付部材1の接地面25,34を受支する受部である。したがって、前記第2の工程において、締着具2xを締め込んだ際に、図2(b)に示するように、第2部材3は、接地面34が外装材4Aの面板部上を滑るように回動する。
【0037】
また、図2(d),(e)における突状部40iiは、左右の外装材4B,4Bの側縁を略垂直状に立ち上げ、該立ち上げ部分を吊子4Cにて保持すると共に、その外側に、下端(弾性嵌合部)を略く字状に成形したキャップ状のカバー材4Dを取り付けて形成したものである。この外装面4IIでは、外装材4B,4Bの面板部に設けた隆状台部41,41が前記取付部材1の接地面25,34を受支する受部である。したがって、前記第2の工程において、締着具2xを締め込んだ際には、図示しないが、第2部材3は、接地面34が外装材4Aの隆状台部41上を滑るように回動し、取付部材1の第1係止部22及び第2係止部32は突状部40iiの前記弾性嵌合部に係止する。
【0038】
このように、本発明の取付部材1では、上方から締着具2xを締め込むことにより、当接受部33が押圧応力を受けて第2部材3が回動し、第2係止部32が突状部40の他方側に係止するものである。
これに対し、図2(f)に示すような従来の取付部材9では、略水平状に配されたボルトナット91,92を締め付けて左右の各部材9a,9bの下端に形成した係止部93,94を突状部40'に係止するものである。
したがって、従来の取付部材9では、ボルトナット91,92が、突状部40'の上方に配されるのに対し、本発明の取付部材1では、締着具2xが突状部40,4A'の高さに関係なく配されるという相違がある。そのため、従来では、最も締め付け応力が作用する部位(=ボルト91の頭部やナット92が当接する部分)と突状部4'を係止する部位(=係止部93,94)との間に距離(少なくとも突状部4'の高さ以上)が生じ、本発明では、そのような制限がないため、図示するように突状部4,4'の高さに満たない近接しているため、応力の伝搬が直接的であり、また締め過ぎが部材の変形を生じ難いという効果を生ずる。
【0039】
図3は、前記構成の取付部材1を、太陽電池モジュール5の取付構造に用いた実施例であって、前記取付部材1の支持部23に、太陽電池モジュール5を直接的に固定し、支持部23に設けた溝部231に取り付けられた締着手段(ボルト1a,ナット1b)にて押さえ材6を固定した構成である。
図示実施例の太陽電池モジュール5は、太陽電池50の周縁に所定形状のフレーム(枠)5b,5cを一体的に固定したパネル状であって、該太陽電池モジュール5,5の流れ方向の側縁を、断面形状が逆ハット状の押さえ材6にて押さえる構成である。
この実施例における押さえ材6は、前述のように断面逆ハット状のピース材であり、前記ボルト1aの取付孔を有する底状部62の両側縁を立ち上げ、その上端を外方へ延在させて押さえ部61,61とした構成である。
前記取付部材1の支持部23に設けられた溝部231に、締着手段としてボルト1aをスライド可能に保持させ、該ボルト1aにナット1b,1cを取り付けて位置調整すると共に押さえ材6を任意(所定)の位置に締着することができる。
【0040】
このような構成を有する太陽電池モジュール5の取付構造は、前記取付部材1の支持部23に太陽電池モジュール5を取り付けた構成であり、突状部40を備える外装面4に対し、太陽電池モジュール5を簡易な構造にて取り付けることができる。
特に図示実施例では、支持部23に、締着手段1aをスライド可能に保持する溝部231が形成され、締着手段1aの頭部を収納した状態で位置調整を可能としたので、支持部23に取り付ける太陽電池モジュール5を取り付ける際に、適宜に位置調整して取付を容易に実施することができる。
【0041】
図4(a)に示す第2実施例の取付部材1IIは、前記第1実施例の取付部材1における第1部材2の首状部4bがない第1部材2IIを用いた以外は、ほとんど同様であって、図面に同一符号を付して説明を省略する。
なお、図4(b)では、両部材2II,3を同じ長さとした(=取付部材1II')が、前述のように前記第1部材2IIと第2部材3とは、図5(b)に示すように第1部材2IIより第2部材3の方が短い態様が多いが、特に限定するものではなく、第2部材3が長くてもよい。
【0042】
図4(c)〜(f)には、突状部40,40ii,40iii,40ivの構成が異なる2種の外装面4,4II,4III,4IVに前記構成の取付部材1IIを取り付けた例を示した。ここで、図4(c)に示す外装面4及び突状部40は、前述の図2(a),(c)における外装面4及び突状部40と全く同様であり、図4(d)に示す外装面4II及び突状部40iiは、前述の図2(d),(e)における外装面4II及び突状部40iiと全く同様であるから説明を省略する。
【0043】
図4(e)における突状部40iiiは、縦長状であって、左右の外装材4E,4Eの側縁を略垂直状に立ち上げ、該立ち上げ部分を吊子4Fにて保持すると共にその外側に、下端(弾性嵌合部)を略円弧状に成形したキャップ状のカバー材4Gを取り付けて形成したものである。
【0044】
図4(f)左右の外装材4H,4Hの側縁を略傾斜状に立ち上げ、該立ち上げ部分に設けた略く字状の被保持部分を吊子4Iに弾性的に保持させると共に、一方の側縁(=図では左側に配した外装材4Hの側縁)を他方の側縁(=図では右側に配した外装材4Hの側縁)に重合させて弾性的に嵌合させて形成したものである。この外装面4IVでは、外装材4H,4Hの面板部に設けた第2立ち上がり部42,42の頂部が前記取付部材1IIの接地面25,34を受支する受部である。また、取付部材1IIの第1係止部22及び第2係止部32は、突状部40ivの前記被保持部分に係止する。
【0045】
図5は、前記構成の取付部材1IIの支持部23に、横桟7Aを介して太陽電池モジュール5を間接的に固定した取付構造の実施例であって、この太陽電池モジュール5は、前記図3における太陽電池モジュール5と全く同様であって、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この実施例における横桟7Aは、図5(b)に示すように略中央に最も高い塔状部71を、その流れ方向の前後に次に高い台状の支持受部72,72を、その更に流れ方向の前後に、最も低い略J字状の固定受部73,73を有する構成であり、前記塔状部71の頂部には、上方が開放する溝部711が設けられている。
そして、各固定受部73には、それぞれ固定板7bが被覆するように配設され、該固定板7bは前記取付部材1IIの溝部231に取り付けられた締着手段(ボルト1d,ナット1e)にて固定されるので、この横桟7Aは前記取付部材1IIの支持部23に取り付けられるものとなる。
また、この横桟7Aの溝部711には、締着手段としてボルト7cがスライド可能に保持させ、該ボルト7cに取り付けてスライド可能であって、該ボルト7cを挿通させた押さえ材6'を任意(所定)の位置に調整してナット7dを締着して固定できる。
なお、この実施例における押さえ材6'は、底状部62の両側縁の立ち上げ高さが前記図3などの実施例における押さえ材6と比べて低いが、同様に押さえ部61,61にて太陽電池モジュール5の流れ方向の側縁を押さえる構成である。
【符号の説明】
【0046】
1,1',1II,1II' 取付部材
2,2II 第1部材
2A 縦片
2B 首状部
2C 頭状部
2D 傾斜部
2x 締着具(ボルト材)
2y ナット
21 凹部
22 第1係止部
23 支持部
231 溝部
24 通孔
25 接地面
26 溝部
3 第2部材
31 凸部
32 第2係止部
33 当接受部
331 規制部
34 接地面
4,4II,4III,4IV 外装面(屋根面)
40,40ii,40iii,40iv 突状部
5 太陽電池モジュール
50 太陽電池
51a,51b (端縁)フレーム
6,6' 押さえ材
61 底状部
62 立ち上げ部
63 押さえ部
7A 横桟
7b 固定板
71 塔状部
72 支持受部
73 固定受部
9 従来の取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装面を構成する外装材にて形成される突状部に固定する取付部材であって、
凹部又は凸部を有する第1部材と凸部又は凹部を有する第2部材とを枢着してなり、
前記第1部材は、突状部の一方側に係止する第1係止部と、締着具を挿通させる通孔と、外設部材又は外設部材を取り付ける支持材を支持する支持部と、を有し、
前記第2部材は、突状部の他方側に係止する第2係止部と、締着具の下端が当接する当接受部と、を有し、
第1部材と第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせると共に、上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止できることを特徴とする取付部材。
【請求項2】
第2部材の通孔には、締着具と螺合する雌螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
支持部には、締着手段をスライド可能に保持する溝部が形成され、締着手段の頭部を収納した状態で締着手段の位置調整を可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の取付部材。
【請求項4】
外装面を構成する外装材にて形成される突状部に、請求項1〜3の何れか一項に記載の取付部材を固定し、該取付部材に直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付けたことを特徴とする外設部材の取付構造。
【請求項5】
外装面を構成する外装材にて形成される突状部に、請求項1〜3の何れか一項に記載の取付部材を固定し、該取付部材に外設部材を取り付ける外設部材の施工法であって、
第1部材と第2部材とを枢着した状態の取付部材を外装面の突状部に配設し、第1部材の第1係止部を突状部の一方側に沿わせる第1の工程と、
上方から締着具を締め付けて第2部材を回動させ、第2部材の第2係止部を突状部の他方側に係止する第2の工程と、
固定した取付部材の支持部に、直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付ける第3の工程と、
を含むことを特徴とする外設部材の施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68012(P2013−68012A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207688(P2011−207688)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000165505)元旦ビューティ工業株式会社 (159)