説明

取手引き出し開口目隠し構造、及びこれを備える画像形成装置

【課題】 目隠しのための部材を取り外したり、剥がしたりせずに画像形成装置の取手を出し入れできるようにする。
【解決手段】 筐体10に引き出し式に設ける取手20を引き出すための引き出し開口12bの上縁周りや側縁周りで筐体10に、引き出し開口12bを目隠しするためのシート材30の上辺を粘着材等で固定する。シート材30は、他の辺を筐体10に固定しないで自由に動けるようにする。取手20を筐体10から引き出す時は、取手20の移動にはほとんど抵抗とならずにめくれ、シート材30を剥がすことなく取手20が引き出せ、取手20が筐体10内に収納されると、シート材30のめくれが戻って引き出し開口12bを塞ぎ、外部からの目隠しになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置筺体に引き出し式に取り付ける取手の引き出し開口を塞ぐための目隠し構造と、これを用いて運搬性やリサイクル性等を改良した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、運搬用に引き出し式の取手を備えたものが多い。この取手は、複写機等を所要の場所に設置した後は不要となり、またオプション増設時に画像形成装置の筺体から突出していると邪魔になることがある。

【0003】
そのため、このような取手を使用しない時には自然に画像形成装置筺体内の格納位置へ退避する機構を設けたものがある。また外観品質を向上させるため、取手が出てくる個所に目隠し部材を設けたものもある。
【0004】
例えば、画像形成装置、その他の比較的重量の大きい機器を運搬する際に使用する出し入れ可能な取手において、運搬中に取手が機器内に引っ込んで把持しにくくなったり、取手の使用を終了した時に取手が突出したままであることによるけがや物品破損等の発生、更には安全規格を満たす為に取手の強度を増強する必要が発生する、という不具合を解消するために、機器に装備された運搬用の取手を、機器本体内の退避位置から機器側方外部へ出没可能に支持されると共に、機器本体から側方へ突出した取手を突出状態に維持する力を解除した時には取手に外力を加えなくても機器本体内に退避するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また低コストの取手構造を有する装置構造体を提供するため、枠体の一部に中空パイプを使用し、その中空パイプの開口部に取手を出没自在に設け、板ばね9により、取手には外方に向かう弱い力を付勢させ、外装部に設けたキャップが閉じられているときは、取手は機外への飛び出しを阻止されているが、キャップを開くと、僅かに機外に飛び出すようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、画像形成装置本体に対して出し入れ可能な取手部材を設けることができ、しかも取手部材を設けたことによる取り付け等の制約を受けることなく付属ユニットを取り付けられる画像形成装置を提供するため、画像形成装置本体に設けられ、ガイド部が該装置本体内からその一外側面まで直線状に延びるように形成された一対のガイド部材と、該ガイド部材のガイド部にそれぞれ挿入される腕部と該腕部の一端を連結してなる把持部とを備え、把持部が前記画像形成装置本体の一側面に近接した収納位置と一側面より外方へ飛び出した使用位置との間で移動可能な取手部材と、使用位置に引き出される該取手部材の前記腕部に係合して当該取手部材を使用位置で停止させるとともに、当該取手部材の前記ガイド部からの抜けを防止する抜け防止部材とを有し、該抜け防止部材は前記ガイド部材に取り外し可能に取り付けられていることと、前記止め部材及び取手部材が取り外された前記ガイド部材には案内部材を備えた付属ユニットが装着され、その際前記案内部材が前記ガイド部に挿入されるようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、運搬用取手使用時に画像形成装置の自重を支えるためのブラケットをなくすことで、コストダウンと軽量化を実現可能な画像形成装置を提供するために、装置本体をなす側板にコ字状の断面の平面端部を形成し、平面端部と側板とで両持支持されるようにネジを貫通させ、平面端部とネジで運搬用取手に掛かる画像形成装置の自重を支える構造とし、側板に運搬用取手を平面端部と側板との間の空所に差し込むための穴部を設け、運搬用取手に穴部の縁に嵌合させる切り欠き溝を設け、抜け止め、入り込み止めとしたものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2000−258969号公報
【特許文献2】特開2000−094790号公報
【特許文献3】実公平6−008597号公報
【特許文献4】特開2002−307781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、自然に機器内部の格納位置へ退避する機構を設けたものは、それ専用の機構が必要になるため、後から付加することが難しい。また取手が出てくる個所に目隠し部材を設けているものは、取手を使用したい時にその部材を取り外したり、剥がしたりしなければならず、取り扱いが面倒である。
【0010】
本発明は上記従来の諸問題について改善するものであり、目隠しのための部材を取り外したり、剥がしたりせずに取手を出し入れできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る取手引き出し開口目隠し構造は、画像形成装置筺体に引き出し式に取り付ける取手の引き出し開口を塞ぐための目隠し構造であって、前記引き出し開口を塞ぐための弾性体からなるシート材を用い、該シート材の一辺の縁部を前記画像形成装置筐体に固定し、他の辺の縁部を固定せず、前記取手を前記引き出し開口から引き出す際に前記シート材がめくれ得るようにしてなることを特徴とする。
【0012】
同請求項2に係るものは、請求項1の取手引き出し開口目隠し構造において、前記画像形成装置筐体に固定する前記シート材の一辺の縁部が、該シート材の上辺あるいは横辺であることを特徴とする。
【0013】
同請求項3に係るものは、請求項1または2の取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材がPET材からなることを特徴とする。
【0014】
同請求項4に係るものは、請求項3の取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材の厚さが50μ〜300μであることを特徴とする。
【0015】
同請求項5に係るものは、請求項3または4の取手引き出し開口目隠し構造において、前記取手を引き出した際に前記シート材がめくれる最小曲率半径を該シート材の厚さの50倍以上としてなることを特徴とする。
【0016】
同請求項6に係るものは、請求項1ないし5のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材が自然に反る方向を、前記取手を引き出す際に前記シート材がめくれる方向と反対方向として取り付けることを特徴とする。
【0017】
同請求項7に係るものは、請求項1ないし6のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材の色を、前記画像形成装置筺体の前記引き出し開口周りの部位の外観色と実質的に同色としてなることを特徴とする。

【0018】
同請求項8に係るものは、請求項1ないし6のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材の光沢を、前記画像形成装置筺体の前記引き出し開口周りの部位の外観光沢と実質的に同じとしてなることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9に係る画像形成装置は、請求項1ないし8のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、目隠しのためのシート材がめくれることにより、目隠しのための部材を取り外したり、剥がしたりせずに取手を出し入れできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明に係る機器運搬用取手装置の一例を利用する画像形成装置の構成を示す縦断面略図である。この画俊形成装置は、画像読取部1、給紙部2、縦搬送部3、書き込み部4、画像形成部5、定着部6、排紙部7、及び電装部品格納部8等を備えている。この画像形成装置による電子写真式画像形成工程については周知であるため、説明を省略する。筐体(構造体)10は、底部に位置するベース11、前側板12、後側板13、前後側板間に設ける図示しないステー類、画像読取部1を構成するスキャナーを支えるための図示しない支柱、左側板14、及び右側板15からなる。上記した各構成要素は、筐体10に設置することによりその姿勢、位置を保つことができる。
【0023】
図中20は取手で、長尺棒状(例えば、板金を断面コ字状に加工したもの)であり、図1に示すように機器本体内の適所、例えば上下の給紙トレイ2a、2b間の間隙に図1の紙面垂直方向で一対配置してある。そして、図に点線で示した退避位置(格納位置)から図中矢印で示す側方へ向けて直線的な経路で進退(出没)可能となるように図示しないガイドにより支持してある。即ち、取手20が左右の側板14、15に設けた穴から突出することにより運搬時にこれを把持して使用可能となり、突出状態を維持する力を解除した場合には弾性体21の引っ張り力によって退避位置に復帰する。弾性体21の引っ張り力による自動復帰は、取手20の近傍に一対一の組合せで設けるストッパ16の上下動により、するかしないかが決まる。
【0024】
機器底部(この場合ベース11)が設置面に当接しているときは、ストッパ16下端も設置面に当接し上方に押し上げられているため、取手20に対するストッパ機能が働かない。そのため、取手20は機器から引き出しても、手を離せば自動的に機器内に格納される。そして、取手20を持って機器を持ち上げ、機器底部が設置面から離れると、ストッパ16下端も設置面から離間して自重で下がる。このときにストッパ16上部にあるロック部が引き出されている取手20に引っ掛かり、取手20は機器内部に格納されずに突出状態を維持できる。なお取手20の配置場所は、図示の位置に限定されるわけではない。
【0025】
図2は、取手20及びその支持構造例の詳細を示す斜視図である。取手20は、夫々必要時に左右水平方向に引き出すことができ、ベース11上に立設された前側板12あるいは後側板13(この例では前側板12)の一部を切り曲げた横曲げ部12aに設けた穴、すなわち取手20の引き出し開口12bから水平方向へ出没可能となっている。図中22は、取手20の基端寄りの適所から突設した抜け止め用のストッパであり、このストッパ22が引き出し開口12bの内側端縁に引っ掛かることにより取手の脱落が防止してある。また引き出し開口12bを支点として取手20の奥部が下降しないように、取手20の奥部下面を押さえ、スライド動作をガイドする取手押さえステー23が側板の適所に設けてある。この取手20を前側板12外に引き出して突出させた状態で、これを人手により把持して持ち上げることにより、機器を持ち上げることができる。弾性体21は、運搬時に取手20を機外に引き出すことを許容する一方で、取手20から手を離すと元の退避位置に取手を戻すことができる。弾性体21としては、コイルスプリング等、種々のものを使用することができる。なお、組み付け時には前側板12の横曲げ部12aと平行となるように右側板15(あるいは左側板14)がベース11上に固定されるので、取手20は右側板15等に設けた穴から出没することとなる。
【0026】
なお本発明は引き出し式の取手、すなわち上述のような付勢を利用する構造のものだけでなく、操作者が手動で出し入れするような構造の取手についても適用できるので、図1、2に示す構造のものには限定されない。
【0027】
図3は上述した取手20を利用して画像形成装置を運搬する状態を示す斜視図である。図示のように、画像形成装置の筐体10から4個の取手20を引き出し、運搬操作者が手で持ち上げ、降ろす、移動させる等の操作を行う。なお図示の例では、取手20の向きを、筐体10の手前側に設けてある操作部1a側に位置する2個については、断面コ字状の取手20が横向きとなるように、また筐体10の奥側のものについては取手20が上向きとなるように設けてあるが、取手20は特にこのような向きに設けなければならないと言うわけではない。
【0028】
図4(A)は、筐体10の手前側に設けてある取手20を、図4(B)は筐体10の奥側の取手20を、それぞれ引き出し開口12bから引き出した状態を示す。図4(A)においては、引き出し開口12bの上縁周りで筐体10に引き出し開口12bを目隠しするためのシート材30の上辺を粘着材等で固定してある。また図4(B)においては、引き出し開口12bの側縁周りで筐体10に引き出し開口12bを目隠しするためのシート材30の上辺を、これも粘着材等で固定してある。これらシート材30は、他の辺を筐体10に固定しないで自由に動けるようにしてある。
【0029】
そのため、図5(A)に示すように、取手20を筐体10から引き出す時は、取手20の移動にはほとんど抵抗とならずにめくれ、シート材30を剥がすことなく取手20の引き出しを可能とし、取手20が筐体10内に収納されると、図5(B)に示すようにめくれが戻って引き出し開口12bを塞ぎ、外部からの目隠しになる。図6は、目隠しの効果を示すための図で、(A)はシート材30がなく、引き出し開口12bと取手20が見えている状態の外観図、(B)はシート材30があるために引き出し開口12bと取手20が見えない状態の外観図である。
【0030】
なお、シート材30を筐体10に固定する辺は、図4に示すように上部や側部が好ましい。取手20を収納した時にシート材30が元の位置に戻りやすいからである。下部は自重でシート材30がめくれる方向になるためあまり好ましくはないが、シート材30の素材によっては可能である。
【0031】
シート材30の素材としては、PET材は白化しにくく、コシがあり、めくれたり、もどったりする目隠しシートに適している。またその厚さは、50μ〜300μが適している。50μ以下では弱くてくしゃくしゃになりやすいし、300μ以上ではコシが強すぎてめくりにくく、またエッジでけがをする危険性が生じるからである。なお、エッジは丸める加工をしておければ上述の危険性を小さくできるので好ましい。
【0032】
またシート材30をめくった時の最小曲率半径部分(図5Aに矢印Xで示す)を、PET材を用いる場合においてシート厚の50倍以上とすると永久変形を防ぐことができる。
【0033】
さらに、シ−ト材30には、その材質や製作時の状況により、面粗さが表裏で異なる等が生じ、それに起因して反り易い方向があるものがある。そこでシート材30の反り易い方向をめくれ方向と逆方向になるように筐体10に取り付け、シート材30のめくれを小さくし、シート材30が筐体10の表面から浮く度合いを少なくすることが好ましい。
【0034】
またさらに、シート材30の色を、筐体10の引き出し開口12b周りの部位の外観色外観色と実質的に同色にすると、目隠し効果をいっそう向上させ得る。また、シート材30の光沢を、筐体10の引き出し開口12b周りの部位の外観光沢と実質的に同じとすることにより、光沢差による違和感を低減させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る機器運搬用取手装置の一例を利用する画像形成装置の構成を示す縦断面略図である。
【図2】取手及びその支持構造例の詳細を示す斜視図である。
【図3】取手を利用して画像形成装置を運搬する状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例において取手を引き出し開口から引き出した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例において取手を引き出した状態の側面断面図(A)と、取手を収納した状態の断面図(B)である。
【図6】本発明の実施例における目隠しの効果を示すための図である。
【符号の説明】
【0036】
1:画像読取部
1a:操作部
2:給紙部
3:縦搬送部
4:書き込み部
5:画像形成部
6:定着部
7:排紙部
8:電装部品格納部
10:筐体(構造体)
11:ベース
12〜15:側板
12a:横曲げ部
12b:取手の引き出し開口
16:ストッパ
20:取手
21:弾性体
22:抜け止め用のストッパ
23:取手押さえステー
30:シート材
X:シート材の最小曲率半径部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置筺体に引き出し式に取り付ける取手の引き出し開口を塞ぐための目隠し構造であって、前記引き出し開口を塞ぐための弾性体からなるシート材を用い、該シート材の一辺の縁部を前記画像形成装置筐体に固定し、他の辺の縁部を固定せず、前記取手を前記引き出し開口から引き出す際に前記シート材がめくれ得るようにしてなることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項2】
請求項1の取手引き出し開口目隠し構造において、前記画像形成装置筐体に固定する前記シート材の一辺の縁部が、該シート材の上辺あるいは横辺であることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項3】
請求項1または2の取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材がPET材からなることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項4】
請求項3の取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材の厚さが50μ〜300μであることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項5】
請求項3または4の取手引き出し開口目隠し構造において、前記取手を引き出した際に前記シート材がめくれる最小曲率半径を該シート材の厚さの50倍以上としてなることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材が自然に反る方向を、前記取手を引き出す際に前記シート材がめくれる方向と反対方向として取り付けることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材の色を、前記画像形成装置筺体の前記引き出し開口周りの部位の外観色と実質的に同色としてなることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造において、前記シート材の光沢を、前記画像形成装置筺体の前記引き出し開口周りの部位の外観光沢と実質的に同じとしてなることを特徴とする取手引き出し開口目隠し構造。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの取手引き出し開口目隠し構造を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−3685(P2006−3685A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180650(P2004−180650)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】