説明

取水装置

【課題】取水筒の目詰りを防ぎ、取水能力の増大を図ることを課題とする。
【解決手段】中心孔4を有する上部のフランジ環5と、同じく中心孔6を有する下部のフランジ環7と、これらフランジ環5,7の外周近傍位置間、および内周近傍位置間に環状配置されて各フランジ環5,7に固着される連結杆8,11とで骨格筒9を形成し、この骨格筒9の前記連結杆8,11群により構成される仮想円筒の外周および内周に網体11,12を張装して取水筒1を形成し、この取水筒を地中の帯水層に位置させてケーシング3に接続するようにしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は深井戸方式の取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水または伏流水を取水する取水装置として従来から井戸装置が用いられている。
【0003】
上記取水装置の一つとして深井戸方式によるものがある。この深井戸方式による従来の取水装置は、図7にその概要の断面図を示すように、地表(G.L)からオーガー等により掘削孔aを掘削し、この掘削孔aの内周壁面の崩壊を防ぐためベントナイト等の補強材bを塗着して補強し、予定の深度まで掘進したのち、掘削孔a内に、周面に多数の通水孔cを有するケーシングdおよび帯水地層以外の部位に対応する位置には集水孔を有しないケーシングeを順次接続して建て込む。
【0004】
次にケーシングdと掘削孔aの内周壁面との間に砂利等の裏込め材fを充填し、帯水層より上部には粘土g等を充填して上水が入り込まないように遮水する構造とされている。
【0005】
上記のように構成される取水装置においては、地下水の流入を妨げないよう、揚水に先立って掘削孔aの内周壁面に施されているベントナイトや粘土等の補強材bを洗浄して除去する必要があるが、十分な除去の成果が挙げられていない現状にある。
【0006】
すなわちその理由としては、掘削孔aの内周壁面の補強材bを除去するためにケーシングd内からその通水孔cを通じて圧力水または高圧空気を噴射し、その圧力により補強材bを剥離させて除去しようとするときケーシングdと補強材bとの間に詰納されている裏込め材f,f…間の隙間を通過して補強材bに到達する時点ではその圧力が著しく弱められてしまい、帯水層の奥部まで付着含浸している補強材bを完全に排除することができないことによる。
【0007】
またケーシングdの通水孔cが不定形の砂利等の裏込め材fにより塞がれやすいので、通水孔cの開口率が実質上減少し、ケーシングd内から洗浄水や高圧空気を噴射させる際に大量噴射ができないことも不完全洗浄の原因となっている。
【0008】
これらにより、以後ケーシングdを通じて揚水を開始すると、掘削孔aの内周壁面の深部に残存していた粘土や泥等が徐々に溶け出してこれらが内周壁面に近い位置にある裏込め材f,f…間の隙間に入り込んで固化し、目詰りを起こして集水能力を大きく減退させたり、集水不能の事態を招くことになる。
【0009】
上記において、集水能力の減退や集水不能の事態を招いている最も大きな原因として、ケーシングd内に地下水を流入させるための小孔群、スリット群からなる通水孔cが土圧や水圧に耐え得る強度範囲内に開口率が定められる関係上、通水孔c以外の部分は壁面(強度維持部分)として存在しており、それ故集水能力に限界があるばかりでなく、目詰りを起こしやすい要因となっている。
【0010】
上記の点に着目しこれを改善することを目的として、本件出願人は先きに特許文献1に示される集水装置を提供した。
【0011】
この特許文献1に示される集水装置は、ケーシングdの外周面に対し所要の間隔を有せしめて通水性篭体を外嵌し、これによってケーシングdの通水孔と篭体との間に空間を作り、また篭体の外周と掘削孔の内周壁面との間に裏込め材を充填するようにして裏込め材がケーシングの通水孔に接触しないようにしたものである。
【0012】
これによりケーシングの通水孔が裏込め材によって塞がれることがなく、集水能力を持続させることができる。
【0013】
しかしながら上記取水装置によっても、集水はケーシングの通水孔を通じてのみ行われるので図8に例示する種々の形態の通水孔c以外の壁面hは依然として存在しており、そのため開口率には自ずと限界があることから集水能力もやはり限界が生じることは避けられないという問題を残していた。
【特許文献1】特開2005−120738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこれに鑑み、ケーシングを通じて集水する集水部分の構成を抜本的に改め、目詰りを生じることなく補強材の洗浄除去と集水能力の増大を図り、集水量の大幅な向上を図ることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する手段として本発明は、地表から掘削された掘削孔内に建て込まれるケーシングを通じ集水して揚水する取水装置であって、中心孔を有する上部のフランジ環と、同じく中心孔を有する下部のフランジ環と、これらフランジ環の外周近傍位置間に環状配置して該フランジ環に固着された複数本の連結杆とで骨格筒を形成し、その前記連結杆群により構成される仮想円筒の外周に網体を嵌装して取水筒となし、この取水筒をそのフランジ環により帯水層以外の地層部に位置するケーシング間に接続して取水装置を構成するようにしたことにある。
【0016】
前記取水筒は、前記連結杆とは別に、上下部のフランジ環の内周近傍位置間に複数本の内側連結杆を環状配置して該フランジ環に固着し、こちら内側連結杆群により構成される仮想円筒の内周に内側網体を張装して前記外側の網体と内側網体との間に裏込め材充填用空間部を形成し、これに裏込め材を充填する構成とすることができる。
【0017】
この場合、上部のフランジ環を相互間に所要の間隔をおいて2枚とし、これらフランジ環を結合する結合部材の少くとも1本を中空結合材で構成して外側フランジ環の上面に中空結合材の上端を開口し、この開口部を通じ前記裏込め材充填用空間部に裏込め材を充填するようにすることが好ましい。
【0018】
また取水筒の外側のみに網体を配設した場合には、その網体と掘削孔の内周壁面との間に裏込め材を充填して取水装置を構成することができる。
【0019】
一方、前記裏込め材は、砂利に代るものとして、プラスチックにより真球乃至多角球状に形成し、その周面部に複数条の溝を形成した構成とされる。
【0020】
上記溝は、球体の一半部と他半部とで90°位相を異らせて形成することが好ましく、また各溝の底部に小孔を形成して一半部の溝と他半部の溝を連通させる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上下部のフランジ環を複数本の連結杆により結合した骨格筒を設け、この骨格筒の連結杆により形成される仮想円筒の外周に網体を嵌装した構成の取水筒を用いるので、その骨格筒が外圧に対し強靱であると同時に従来のスクリーンのように壁面部分を有しないので殆んど網体の開口がフルに活用され、地下水の流入する流入域が90%に近い値を得る構成とすることが可能となり、取水効率のよい取水筒となって集水能力を著しく増大させることができ、かつ目詰りを最小限度に抑えることができる。
【0022】
また骨格筒の上下部のフランジ環によりパイプ状のケーシングにダイレクトに結合して接続することができるので、取水装置の施工時にも煩雑さがなく、高能率に施工することができる。
【0023】
一方、上下部のフランジ環の内周近傍位置に複数本の内側連結杆を環状配置して結合し、これら連結杆により形成される仮想円筒の内周に内側網体を張装すれば、前記外側の網体と上記内側網体との間に裏込め材充填用空間部を作ることができ、これに裏込め材を充填することにより濾過機能を付加することができるので、土砂等が混入しない地下水を集水することができる。
【0024】
また掘削孔の内周壁面に施される補強材の除去に際しても、大量の洗浄水や圧力空気を内周壁面に衝接させることができ、これにより内周壁面の深部に浸透している粘土や泥を完全に排除することができる。
【0025】
前記取水筒と併用する裏込め材をプラスチックにより球状に形成し、かつその周面に多数条の溝を形成した構成とすれば、球形なるが故に相互間に大きな隙間が出来るので、裏込め材間の目詰りを生じにくく、そのうえ溝を通じて洗浄水や圧力空気の通路が確保され、一層目詰りを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明による取水装置の概要を示し、図2は本発明における取水装置を構成する主要部である取水筒1の一実施形態の断面図を示している。
【0027】
上記取水筒1は、図1に示すように地表(G.L)から掘削された掘削孔2に建て込まれるケーシング3に接続して組み込まれるもので、その構成は、図2〜図4に例示するように、中心孔4を有する上部フランジ環5と、同じく中心孔6を有する下部フランジ環7との各外周近傍位置間に環状配置された複数本の連結杆8,8…が該フランジ環5,7に固着されて剛体である骨格筒9が構成され、これら連結杆8,8…群で構成される仮想円筒の外周に網体10が嵌装されて取水筒1が構成されている。
【0028】
図示の実施形態では、前記連結杆8とは別に前記フランジ環5,7の中心孔に近い位置に複数本の内側連結杆11,11…が環状配置されて該フランジ環5,7に固着され、これら連結杆11,11…群で構成される仮想円筒の内周に内側網体12が張装されて前記外側の網体10と内側網体12との間に裏込め材充填用空間部13が形成され、これに裏込め材14が充填されるようになっている。
【0029】
また上部フランジ環5は、所要の間隔をおいて設けられる第1、第2の2枚のフランジ環5,5で構成され、これらフランジ環5,5を結合する結合材の少くとも1本が中空結合材15とされており、この中空結合材15の上端が第1フランジ環5の上面に開口され、下端が前記裏込め材充填用空間部13に臨んで開口されていて、上端開口部15aから前記空間部13内に裏込め材14を投入するように構成されている。
【0030】
上記取水筒1の実際の寸法例としては、軸方向長さが1000mm、フランジ環5,7の外径が540mm、中心孔4,6の内径が320mm程度である。また連結杆8,11の外径は24mm、その本数は外側8本、内側8本の計16本とされる。さらに網体10,12は、太さ2mmのステンレス材で12mm角に編成されたメッシュ材が用いられている。
【0031】
なおこれらの寸法に関しては、取水装置の規模に応じ適宜選定される。
【0032】
上記取水筒1に用いる裏込め材14は、プラスチックにより多角球状乃至は球形に形成されるもので、その球体16の周面には複数条の溝17が形成されている。
【0033】
図示の実施形態では、前記球体16の一半部と他半部とにそれぞれ複数条の溝17,17が互に90°位相を異ならせて形成され、その溝17,17の交差する部位の底部にはそれぞれ小孔18が穿孔されていて溝17,17内が連通されている。
【0034】
したがってこの裏込め材14を空間部13に充填したとき、裏込め材14が同じ大きさであることと球形乃至多角球形を有していることにより裏込め材14の相互間に大きな隙間が形成されること、およびいずれの方向からの水も裏込め材14の溝17,17、小孔18を通って流動することにより地下水の集水の妨げにならずして濾過機能を十分に果す。
【0035】
また掘削孔2の内周壁面の補強材の洗浄に際しても、洗浄水や圧力空気の通過を妨げず、洗浄効果を高めることができる。
【0036】
前記取水筒1の組み込みは、図1に示したように地中の帯水層19の位置に取水筒1が位置するようケーシング3,3間に接続される。その接続にはフランジ環5,7の接続用ボルト孔20,20を用いてボルト結合される。
【0037】
こうして組み込んだうちは、地下水は帯水層19から掘削孔2内へ流入するが、その地下水は外側の網体10、裏込め材14、内側網体12を通って取水筒内へ流入して貯溜され、ポンプにより適宜揚水される。
【0038】
上記において、取水筒1は内部に骨格筒9の連結杆8,11が存在するのみであるから、周面に壁面が全く存在しないに等しく、これにより開口率が実質上90%近い高い値が得られ、集水能力が著しく高められる。
【0039】
これは集水能力ばかりでなく、掘削孔2の内周壁面の補強材の洗浄除去に際しても、洗浄水や圧力空気の通過を良好とし、効率よく洗浄を行うことができる。
【0040】
図5は取水筒1と掘削孔2の内周壁面との間に裏込め材14を充填するようにした場合の一例を示すもので、この場合には取水筒1の下部フランジ環7の外径を大きくして裏込め材14を受けるようにし、また取水筒1の内側網体12は省略される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による取水装置の概要を示す図。
【図2】本発明における取水筒の一実施形態を示す断面図。
【図3】図2における取水筒の骨格をなす骨格筒の斜視図。
【図4】(A)は骨格筒の平面図、(B)は正面図。
【図5】取水装置の他の実施形態を示す断面図。
【図6】本発明における裏込め材の一例を示し、(A)は斜視図、(B)は平面図。
【図7】従来の取水装置を示す断面図。
【図8】従来のケーシングの通水孔の種類を示す説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 取水筒
2 掘削孔
3 ケーシング
4,6 中心孔
5(5,5) 上部フランジ環
7 下部フランジ環
8 連結杆
9 骨格筒
10 網体
11 内側連結杆
12 内側網体
13 裏込め材充填用空間部
14 裏込め材
15 中空結合材
16 球体
17 溝
18 小孔
19 帯水層
20 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から掘削された掘削孔内に建て込まれるケーシングを通じ集水して揚水する取水装置であって、中心孔を有する上部のフランジ環と、同じく中心孔を有する下部のフランジ環と、これらフランジ環の外周近傍位置間に環状配置して該フランジ環に固着された複数本の連結杆とで骨格筒が形成され、この骨格筒の前記連結杆群により構成される仮想円筒の外周に網体を嵌装して取水筒とされ、この取水筒をそのフランジ環により帯水層以外の地層部に位置するケーシング間に接続して構成されていることを特徴とする取水装置。
【請求項2】
前記取水筒は、前記上下部のフランジ環の内周近傍位置間に複数本の内側連結杆を環状配置して該フランジ環に固着し、これら内側連結杆群により構成される仮想円筒の内周に内側網体を張装して前記外側の網体と内側網体との間に裏込め材充填用空間部が形成されている請求項1記載の取水装置。
【請求項3】
前記上部フランジ環は、相互間に所要の間隔をおいて設けられる2枚のフランジ環で構成され、これらフランジ環を結合する結合部材の少くとも1本を中空結合材で構成して外側フランジ環の上面に中空結合材の上端が開口され、この中空結合材を通じて前記外側の網体と内側網体との間の裏込め材充填用空間部に裏込め材を充填するように構成されている請求項2記載の取水装置。
【請求項4】
前記取水筒の外周の網体と掘削孔の内周壁面との間に裏込め材が充填されている請求項1記載の取水装置。
【請求項5】
前記裏込め材はプラスチックにより球体に形成され、その周面部に複数条の溝が形成されている請求項4記載の取水装置。
【請求項6】
前記球体の一半部および他半部にそれぞれ複数条の溝が形成されており、一半部の溝と他半部の溝が90°位相を異にされているとともに両溝の底部に小孔が各溝に対応して形成されている請求項5記載の取水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−162273(P2007−162273A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357908(P2005−357908)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(593113732)株式会社アジア (4)