説明

取水装置

【課題】 取水口における取水量を所定量以下に保持する。
【解決手段】 水路2に固定され、水路2を流れる水Wの全量が通過する流路を有する取水体11と、取水体11に回転可能に支持され、少なくとも取水体11を通過する水Wの流量を所定量以下に制限する羽根板122、123、124、125を有する水車ゲート12と、水車ゲート12と当接可能に設けられ、水Wの流れによる水車ゲート12の回転を許容するとともに、逆回転するのを阻止するストッパ13、14とを備える。水車ゲート12は、水路2の水位が通常水位La以下である場合は、水Wによって回転し、水位が設定値を超えた場合は、羽根板123に作用する水圧によって逆回転してロックされ、前記ストッパ13、14と当接した羽根板123を通過する水Wの流量が所定量以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、渓流などの小規模な水路に配置する取水装置に関し、とくに水位が上昇した場合でも取水量を所定量以下に維持することが可能な取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川における水利使用に関しては、農業用水や、水力発電所などで使用する発電用水などに使用目的が限定され、取水量などについて河川管理者の許可が必要であることが法令等で定められている。そのため、河川からの取水量は、法令を順守し所定量(許可取水量)を超過しないよう、自動で制御されている。
【0003】
ところで、小規模河川(渓流など)では、電源の確保が困難な山間部であることも多いため、取水量制御を自動で行うことは困難である。そこで、小規模河川では、現地に人が赴いて取水を開始することや、洪水水位(洪水時)でも所定量を超過しないように、取水口の開度を小さく設定することが行われている。しかしながら、現地に人が赴く方法は、人が現地にいない間は取水ができないので、水資源を有効活用できない。また、取水口の開度を小さく設定する方法は、洪水時を考慮して取水口ゲートの開度を小さく定めるので、通常水位(通常時)ではごく少量の取水しかできず、結果として目的とする発電量が得られないという問題がある。
【0004】
そこで、河川の流量および水位の変化に対応して所定の取水量を得ることができる無電源式ゲート制御装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、取水口に設けた水門の上流側の水位が上昇したことを自動的に検出して、水門の扉を下降させる水門の扉落下指令装置に関する技術(例えば、特許文献2参照。)や、放水量や取水量の制御を浮力を利用して高精度に行うことができる無電源自動制御による放流又は取水装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、隧道の水位の上限値と下限値を設定して、その間の水位にあるときにのみ、本取水口以外の取水を可能にする取水制御装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−133653号公報
【特許文献2】特開2000−129660号公報
【特許文献3】特開2004−353197号公報
【特許文献4】特開2007−277808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された無電源式ゲート制御装置は、取水口ゲートの開閉動力を発生させる水量が必要であるので、設置可能な河川が限定され、小規模河川には設置することができない。また、特許文献2に記載された水門の扉落下指令装置は、水位が上昇し水門の扉を閉じた後、水位が下がって取水を再開する場合には、手動操作が必要となる。つまり、河川の水位に応じて取水口を開閉させ、自動で取水と取水の停止を切り替えることができない。したがって、所定の水位が検出され止水された後、水位が下がった場合であっても、取水を再開するまでにタイムラグが生じ、取水できない時間が長期化してしまうので、河川水の有効活用が十分にはできない。
【0007】
また、特許文献3に記載された無電源自動制御による放流又は取水装置は、機構が複雑で既存の取水口ゲートを改修する必要があるため、設置の工期、コストが増加する。特許文献4に記載された取水制御装置は、隧道水位が所定範囲内の場合にのみ取水し、隧道水位が所定範囲外の場合には取水しないので、河川水の有効活用が十分にはできない。さらに、特許文献1から4に記載されたいずれの技術でも、既設ゲート装置に設置するには、水路の改修工事を伴うので、既設の水路に容易に適用できないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、構造が簡単で、水路の水位が上昇した場合でも素早く取水量を所定量以下に維持することが可能な取水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、水路に設けられ、該水路を流れる水の流量を所定量以下に維持する取水装置であって、水路に固定され、水路を流れる水の全量が通過する流路を有する取水体と、取水体に回転可能に支持され、少なくとも取水体を通過する水の流量を所定量以下に制限する羽根板を有する水車ゲートと、水車ゲートと当接可能に設けられ、水の流れによる水車ゲートの回転を許容するとともに、水車ゲートが逆回転するのを阻止するストッパと、を備え、水車ゲートは、水路の水位が通常水位以下である場合は、水路の水流によって回転し、水路の水位が設定値を超えた場合は、羽根板に作用する水圧によって逆方向に回動しストッパとの当接により回転がロックされ、前記ストッパと当接した羽根板を通過する水の流量が所定量以下である、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、水車ゲートは、水路の水位が通常水位以下である場合は、水路の水流によって回転し、水路の水位が設定値を超えた場合は、羽根板に作用する水圧によって逆方向に回動しストッパとの当接により回転がロックされる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の取水装置において、前記取水体は、既設の取水口ゲートによる押圧によって前記水路に固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の取水装置において、前記水車ゲートの羽根板は、前記水の通過を阻止する遮水羽根板と、前記取水体を通過する水の流量を所定量以下に制限する流路を有する取水制限羽根板と、を有し、前記遮水羽根板と前記取水制限羽根板は、前記水車ゲートの回転中心に対して互いに対向するように設けられており、前記ストッパは、前記遮水羽根板と前記取水制限羽根板との少なくともいずれかに当接可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の取水装置において、水車ゲートには、発電機が連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、水路の水位が設定値を超えた場合は、羽根板に作用する水圧によって水車ゲートが逆方向に回動し、ストッパとの当接により回転がロックされるので、羽根板を通過する水の流量は所定量以下に制限され、水路の水位が上昇した場合でも適正量の取水が可能となる。したがって、水路の水位が著しく上昇しても、取水量について確実に法令を順守することができる。
【0015】
また、水路を流れる水の水位の変化を利用して水車ゲートの回転方向を切替えるようにしているので、取水量の調整に電源は不要となり、電源の確保が困難な山間部でも使用が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、取水体は、既設の取水口ゲートによる押圧よって水路に固定されるので、水路自体の改修工事が不要となり、工期の短縮および設置コストを低減することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、水車ゲートの羽根板は、水の通過を阻止する遮水羽根板と、取水体を通過する水の流量を所定量以下に制限する取水制限羽根板とを有しているので、取水量を制限するための設計が容易となる。すなわち、水位上昇時における取水は、取水制限羽根板を介して行われるので、取水制限羽根板のみに水の流量を所定量以下に制限する流路を確保すればよく、取水装置の設計が容易となる。このように、簡単な構造で水の流量を所定量以下に制限することが可能なので、故障が少なく、取水量の減少を最小限に抑え、河川水を有効活用することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、水車ゲートに連結された発電機によって電力を得ることができるので、例えば取水体の上流側に設置された除塵機の駆動や、記録計の稼動や照明および管理センタとの情報通信も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係る取水装置を水路に設置した状態を示す断面図である。
【図2】図1の取水装置の正面図である。
【図3】図1の取水装置における通常水位時の水車ゲートの動きを示す拡大断面図である。
【図4】図1の取水装置における通常水位時の水車ゲートとストッパとの当接状態を示す拡大断面図である。
【図5】図1の取水装置における水位上昇時の水車ゲートの動きを示す拡大断面図である。
【図6】図1の取水装置における水車ゲートの回転がロックされた状態を示す拡大断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る取水装置の取水制限羽根板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1ないし図6は、この発明の実施の形態1を示している。ここで、符号Laは水路の水位が通常水位である場合を示し、符号Lbは水路の水位が許可取水量の取水水位(設定水位)である場合を示す。
【0022】
取水装置1は、水路2を流れる水Wの流量を所定量以下に維持するための装置である。取水装置1は、図1および図2に示すように、例えば、水力発電所において小規模な河川などの水路2の取水口3から取水するために、ハンドル4aの操作によって昇降可能な取水口ゲート4と、水路2の底面2aとの間に設置されている。取水装置1は、主として、水路2から水Wを取り込む取水体11と、取水体11を通過する水Wの流量を所定量以下に制限する水車ゲート12とを有している。
【0023】
取水体11は、水路2を流れる水Wの全量が通過する流路を有するものである。この取水体11は、鉄鋼製やFRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)製などの筒状体から構成されている。取水体11の下面11aは、水路2の底面2aと平行な平面に形成されている。取水体11の上面11bには、下流側が上流側よりも低くなる段差面11cが形成されている。取水体11の上面11b(段差面11c)の下流側には、クッション体5が設けられている。
【0024】
クッション体5が設けられた取水体11の上面11bの下流側は、既設の取水口ゲート4によって上方から押圧されている。また、取水体11の下面11aには、クッション体6が設けられている。このように、取水体11は、取水口ゲート4の押圧によって下面11a側が水路2の底面2aに密着し、かつ、水路2に対して着脱可能に固定されている。また、取水体11の段差面11cは、取水体11が取水口ゲート4の下流に流されないようする機能を有している。ここで、クッション体5、6は、水密ゴムなどの弾性体から構成されており、取水体11を水路2に対して弾性支持するとともに、取水体11の外周部からの水漏れを防止するシール部材の役目を果たしている。
【0025】
図2に示すように、取水体11の外側面と取水口ゲート4の側壁との間には、隙間調節材7、8が配設されている。隙間調節材7、8は、取水体11の外側面と取水口ゲート4の側壁との隙間からの水漏れを防止する機能を有し、水平方向の長さが調整可能で、水平方向の両端部にはシール部材(図示略)が設けられている。
【0026】
取水体11は、上流側開口部111と下流側開口部112が連通している。この取水体11は、上流側開口部111の面積が下流側開口部112の面積より大きく、水流方向の断面形状が略L字型に設定され、取水体11の軸方向が水流方向と一致するように配置されている。取水体11の上流側開口部111は、水位が上昇した際には水路2の水Wによって浸漬する高さに設定されている。また、上流側開口部111を超える水位時においては、水路2を流れる水Wは、取水口ゲート4によって制限されるようになっている。
【0027】
取水体11の上流側開口部111には、水車ゲート12が設けられている。水車ゲート12は、図3に示すように、取水体11に回転可能に支持されている。水車ゲート12は、回転軸121と、遮水羽根板122、123と、取水制限羽根板124、125とを有している。遮水羽根板122、123は、板状体で水Wの通過を阻止する機能を有している。取水制限羽根板124、125は、網状体(スクリーン状体)で取水体11を通過する水Wの流量を所定量以下に制限する多数の網目状(スクリーン状)流路Sを有している。すなわち、取水制限羽根板124、125の多数の流路Sを通過する水Wの流量の合計が所定量以下に制限されるようになっている。遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125は、回転軸121に所定の間隔をもって取付けられている。
【0028】
遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125は、例えば、FRPなどの軽量かつ高強度な材料で構成され、同重量に設定されている。また、遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125は、水車ゲート12の回転がロックされた状態では、取水体11の上流側開口部111を覆うようになっている。さらに、取水制限羽根板124、125は、水車ゲート12の回転がロックされた状態で、通過する水Wの流量(取水量)が所定量以下、つまり許可取水量(法定量)以下となるように、流路Sの面積が設定されている。この実施の形態においては、取水制限羽根板124、125の
網目サイズを適宜選定することにより流路Sの面積が確保されている。
【0029】
遮水羽根板122と取水制限羽根板124は、水車ゲート12の回転中心に対して互いに対向するように回転軸121に固定されている。遮水羽根板123と取水制限羽根板125は、水車ゲート12の回転中心に対して互いに対向するように回転軸121に固定されている。すなわち、水車ゲート12の各羽根板は、回転方向に4等分された位置に配置されており、隣接する羽根板同士が略直角をなすように回転軸121に固定されている。
【0030】
水車ゲート12は、水路2の水位が通常水位La以下である場合には、少なくとも、回転軸121より下方の羽根板が水中に位置し、水路2の水位が設定水位Lb以上である場合には、略全体が水中に位置するように配設されている。このため、遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125のいずれもが水中に位置する場合は、遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125に作用する力が異なるようになっている。つまり、取水制限羽根板124、125は、流路Sを有しているので、取水制限羽根板124、125には流路Sを除いた面積にのみ水圧が作用し、遮水羽根板122、123に作用する力は、取水制限羽根板124、125に作用する力よりも大となっている。これにより、水路2の水位が通常水位La以下である場合には、水車ゲート12は反時計回りに回転し、水位の上昇によって遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125のいずれもが水中に位置する場合は、水圧によって水車ゲート12は時計回り方向に動くことが可能となっている。
【0031】
取水体11の上流側開口部111の内面には、ストッパ13、14が設けられている。ストッパ13、14は、水車ゲート12と当接可能に設けられ、図3、4に示すように、水の流れによる水車ゲート12の反時計回り方向の回転を許容するとともに、図5、6に示すように、水車ゲート12が逆回転するのを阻止する機能を有している。上部ストッパ13は、取水体11の天面113に固定され、上部戸当り131、揺動支点132、規制体133を有している。上部戸当り131は、揺動支点132を中心として上流側へのみ揺動可能となっており、規制体133との当接によって下流側への揺動が規制されている。これにより、水車ゲート12は反時計回り方向に回転可能であり、逆回転が規制されるようになっている。また、上部戸当り131は、先端部に設けられた重鎮体131aと、羽根板123との当接部に設けられたゴム製などの緩衝材131bとを有している。重鎮体131aは、その自重によって上部戸当り131が揺動支点132よりも下方に位置するように構成されている。緩衝材131bは、水車ゲート12がロックした状態では、遮水羽根板122または遮水羽根板123とストッパ13との接触部分の水密性を高める機能を有している。
【0032】
下部ストッパ14は、取水体11の底面114に固定され、下部戸当り141、揺動支点142、規制体143を有している。下部戸当り141は、揺動支点142を中心として下流側へのみ揺動可能となっており、規制体143との当接によって上流側への揺動が規制されている。これにより、水車ゲート12は反時計回り方向に回転可能であり、逆回転が規制されるようになっている。また、下部戸当り141は、先端部に設けられた浮力体141aと、羽根板125との当接部に設けられたゴム製などの緩衝材141bとを有している。浮力体141aは、その浮力によって下部戸当り141が揺動支点142よりも上方に位置するように構成されている。緩衝材141bは、水車ゲート12がロックした状態では、取水制限羽根板124または取水制限羽根板125とストッパ14との接触部分の水密性を高める機能を有している。
【0033】
このような構成の水車ゲート12には、図1に示すように、ベルトなどの動力伝達手段21を介して発電機22が連結されている。発電機22からの電力は、取水体11の上流側に配置された除塵機23に供給されるようになっている。除塵機23は、水面に浮遊している木の葉や流木などの異物を除去する機能を有しており、取水体11の下流側に位置する発電所へ異物が流れるのを防止するようになっている。
【0034】
次に、取水装置1の水路2への固定手順について説明する。
【0035】
取水装置1は、事前に工場などで組み立てられ、動作の試験や調整などを行った後に、設置現場へ運搬される。設置現場では、既存の取水口ゲート4を取水装置1が入る程度にまで上昇させる。そして、取水装置1を取水口ゲート4の直下に配置し、この状態で取水口ゲート4を取水体11の上面11bの下流側と密着するまで下降させる。このようにして、取水装置1は、水路2の取水口3に着脱自在に固定される。取水体11の水路2への固定が完了すると、図2に示すように、取水装置1の外側面と取水口ゲート4の側壁との間に隙間調節材7、8が取付けられる。
【0036】
つぎに、取水装置1の動作、作用について説明する。
【0037】
水路2の水位が通常水位La以下である場合は、図3に示すように、回転軸121より下方の羽根板124、125のみが水中に位置し、水による圧力を受けることで、水車ゲート12は反時計回りに回転(正回転)する。また、図4に示すように、羽根板122、124がストッパ13、14に当接しても、ストッパ13、14は揺動し、これにより水車ゲート12は正回転を継続する。さらに水車ゲート12が回転し、羽根板122、124がストッパ13、14と当接しなくなると、ストッパ13、14は自重、浮力により元の位置に戻る。このようにして、水車ゲート12は正回転を継続し、適正量が取水される。
【0038】
大雨によって水路2を流れる水Wの流量が増加した場合は、水路2の水位が上昇し、遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125が水中に位置することになる。ここで、取水制限羽根板124、125は、流路Sを有しているので、取水制限羽根板124、125には流路Sを除いた面積にのみ水圧が作用し、遮水羽根板122、123に作用する力は、取水制限羽根板124、125に作用する力よりも大となっている。これにより、水車ゲート12が逆回転し、図6に示すように、遮水羽根板123がストッパ13に当接するとともに、取水制限羽根板125がストッパ14に当接し、水車ゲート12の回転がロックされる。この状態では、取水体11内を流れる水Wは、取水制限羽根板125のみを通過することになり、適正量が取水される。
【0039】
その後、水路2を流れる水Wの水位が下がり、再び水路2の水位が通常水位La以下となった場合には、再び水車ゲート12は反時計回りに回転するようになる。
【0040】
このようにして、水路2の水位が通常水位La以下の場合は、水車ゲート12は水流によって正回転し、水路の水位が設定水位Lb以上の場合は、水車ゲート12は作用する水圧によって逆方向に回動し、ストッパ13、14との当接により回転がロックされる。
【0041】
この実施の形態においては、上述したように、水位上昇時における取水は、取水制限羽根板124、125を介して行われるので、取水制限羽根板124、125のみに水の流量を所定量以下に制限する流路Sを確保すればよく、取水装置1の設計が容易となる。つまり、簡単な構造で水の流量を所定量以下に制限することが可能なので、故障が少なく、取水量の減少を最小限に抑え、河川水を有効活用することができる。さらに、クリーンエネルギーを有効に利用し、環境負荷の軽減に寄与することが可能となる。
【0042】
以上のように、この取水装置1によれば、遮水羽根板122、123および取水制限羽根板124、125に作用する水圧によって水車ゲート12が逆方向に回動しストッパ13、14との当接により回転がロックされるので、取水制限羽根板125を通過する水の流量は所定量以下に制限され、水路2の水位が上昇した場合でも適正量の取水が可能となる。したがって、水路2の水位が著しく上昇しても、取水量について確実に法令を順守することができる。また、水路2を流れる水Wの水位の変化を利用して水車ゲート12の回転方向を切替えるようにしているので、取水量の調整に電源は不要となり、電源の確保が困難な山間部でも使用が可能となる。
【0043】
取水体11は、既設の取水口ゲート4による押圧よって水路2に固定されるので、水路2自体の改修工事が不要となり、工期の短縮および設置コストを低減することができる。さらに、水車ゲート12に連結された発電機22によって電力を得ることができるので、外部の電力がなくとも、例えば、取水体11の上流側に設置された除塵機23の駆動や、記録計の稼動や照明および管理センタとの情報通信も可能となる。
【0044】
(実施の形態2)
図7は、この発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、取水制限羽根板126の構成であり、その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、準じる部分の説明を省略する。
【0045】
取水制限羽根板126(127)は、板状体に複数の小孔(流路)Tを有し、取水体11を通過する水Wの流量を所定量以下に制限するようになっている。すなわち、取水制限羽根板126、127は、水車ゲート12の回転がロックされた状態で、通過する水Wの流量(取水量)が所定量以下、つまり許可取水量(法定量)以下となるように、流路Tの面積が設定されている。この実施の形態においては、取水制限羽根板126、127の小孔の径、間隔などを適宜選定することにより流路Tの面積が確保されている。この取水制限羽根板126、127および遮水羽根板122、123が、回転軸121に所定の間隔をもって取付けられている。
【0046】
この実施の形態2においては、取水制限羽根板126、127の小孔の径、間隔などを適宜選定することにより流路Tの面積が確保されるので、流量の調整が容易である。
【0047】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、水車ゲート12は遮水羽根板122、123、取水制限羽根板124、125を2枚ずつ90°間隔で有しているが、遮水羽根板と取水制限羽根板の枚数や間隔は上記に限定されない。また、水車ゲート12の逆回転を阻止するためのストッパ13、14は、いずれ一方のみを設置してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 取水装置
2 水路
3 取水口
4 取水口ゲート
5、6 クッション体
7、8 隙間調節材
11 取水体
12 水車ゲート
13、14 ストッパ
21 ベルト(動力伝達手段)
22 発電機
23 除塵機
122、123 遮水羽根板(羽根板)
124、125 取水制限羽根板(羽根板)
La 通常水位
Lb 設定水位
S 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に設けられ、該水路を流れる水の流量を所定量以下に維持する取水装置であって、
前記水路に固定され、前記水路を流れる水の全量が通過する流路を有する取水体と、
前記取水体に回転可能に支持され、少なくとも前記取水体を通過する水の流量を所定量以下に制限する羽根板を有する水車ゲートと、
前記水車ゲートと当接可能に設けられ、前記水の流れによる前記水車ゲートの回転を許容するとともに、前記水車ゲートが逆回転するのを阻止するストッパと、
を備え、
前記水車ゲートは、前記水路の水位が通常水位以下である場合は、前記水路の水流によって回転し、前記水路の水位が設定値を超えた場合は、前記羽根板に作用する水圧によって逆方向に回動し前記ストッパとの当接により回転がロックされ、前記ストッパと当接した羽根板を通過する水の流量が所定量以下である、ことを特徴とする取水装置。
【請求項2】
前記取水体は、既設の取水口ゲートによる押圧よって前記水路に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の取水装置。
【請求項3】
前記水車ゲートの羽根板は、前記水の通過を阻止する遮水羽根板と、前記取水体を通過する水の流量を所定量以下に制限する流路を有する取水制限羽根板と、を有し、
前記遮水羽根板と前記取水制限羽根板は、前記水車ゲートの回転中心に対して互いに対向するように設けられており、前記ストッパは、前記遮水羽根板と前記取水制限羽根板との少なくともいずれかに当接可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の取水装置。
【請求項4】
前記水車ゲートには、発電機が連結されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の取水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−7312(P2012−7312A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141899(P2010−141899)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)