説明

取鍋内壁のノロのハツリ装置

【課題】取鍋の内壁に付着残留したノロを作業者がブレーカを用いて削るに当たり、作業者を補助することが可能な取鍋内壁のノロのハツリ装置を提供する。
【解決手段】ドラムがモータの正逆回転駆動によって正逆回転されかつ電磁ブレーキによって回転を停止され、ワイヤーロープがドラムに巻かれた巻上げ手段4と;巻上げ手段のワイヤーロープの下端に装着され、作業者が錘19によって垂直方向の力を付与されながらノロを削るブレーカ20を備えたハツリ手段5とを具備する。モータ11を正転駆動してハツリ手段5を昇降させることができ、ブレーカ20を所要の位置のノロに接触させてモータ11を停止し、錘19により下方向の力を付与してノロを削ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋内壁のノロのハツリ装置に係り、より詳しくは、作業者が機械的補助を受けながらブレーカを用いて、取鍋の内壁に付着残留したノロを削り除去するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取鍋の内壁に付着残留したノロの除去は、一般に、作業者がブレーカを用いて削る方法によって行われていた。しかしこの作業は重いブレーカを手で支えながら行う重労働であるため、その軽減策が求められていた。そこで本発明者等は、パワーアシスト手段を用いた取鍋内壁のノロのハツリ装置を開発し、特許文献1として提案済みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−149167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、自動車の製造現場では、一定重量の手工具を容易にハンドリングするために、この手工具をスプリングバランサーで吊り下げて作業者を補助することが多い。そこで、スプリングバランサーで吊り下げたブレーカを作業者がハンドリングして取鍋内壁のノロのハツリ作業を試みると、ブレーカのハンドリングは容易になるが、ブレーカが取鍋の内壁を突っついた途端、その反発力がスプリングバランサーに作用してブレーカが上昇せしめられ、作業者がハツリ作業を行うことが不可能になる問題があった。また、特許文献1の装置ではブレーカを取鍋の内壁に接触させた後にパワーアシスト手段を硬直させた状態にしてハツリ作業を行うので、ハツリ作業中はパワーアシストを受けられないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、作業者が機械的補助を受けるブレーカによって取鍋内壁のノロを削り除去する作業を容易に行うことができる取鍋内壁のノロのハツリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためになされた本発明の取鍋内壁のノロのハツリ装置は、作業者が機械的補助を受けながらブレーカを用いて取鍋の内壁に付着残留したノロを削るための装置であって;ドラムがモータの正逆回転駆動によって正逆回転されかつ電磁ブレーキによって回転を停止され、ワイヤーロープが前記ドラムに巻かれた巻上げ手段と;この巻上げ手段のワイヤーロープの下端に装着され、作業者が所望の重量の錘によって垂直方向の力を付与されながらノロを削るブレーカを備えたハツリ手段と;を具備し;前記モータが正転駆動して前記ハツリ手段を昇降させ、ブレーカを所要の位置のノロに接触させて、前記モータを停止し、所望の重量の錘により下方向の力を付与してノロを削ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、巻上げ手段のモータが正転駆動して前記ハツリ手段を上昇させることができるのみならず、ハツリ手段には所望の重量の錘が設けられているため、作業者は錘によって垂直方向の力を付与されながらノロを削ることができる。このため、作業者が機械的補助を受けながら取鍋内壁のノロを適確に削り除去することが可能になり、作業者の負担の軽減することができる実用的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した取鍋内壁のノロのハツリ装置の一実施例を示す模式図である。
【図2】図1のA部拡大詳細図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】図1における主要部の拡大詳細図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図5】スイッチ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した取鍋内壁のノロのハツリ装置の実施形態を、図1から図5に基づき詳細に説明する。
【0010】
本取鍋内壁のノロのハツリ装置は、図1に示すように、上下方向へ指向して固定配設された支柱1と、この支柱1の上端にその一端付近が水平回動自在にして装着されたアーム2と、このアーム2にこれに沿って走行自在に装着された走行手段としてのトロリー3と、このトロリー3に搭載された巻上げ手段4と、巻上げ手段4に垂設されたハツリ手段5とで構成してある。
【0011】
そしてアーム2は水平に延び、かつ支柱1の上端に装着された上下方向へ指向する支持軸6に、その左端付近で水平回動自在に環装して装着してある。さらに、アーム2における支持軸6には、支持軸6の上端に嵌着された円板7と、円板7を挟持可能な電磁石とで成る電磁ブレーキ(図示せず)が装着してあって、電磁石が円板7を挟持することによりアーム2を支持軸6に固定することも可能である。また、アーム2の支持軸6側の先端には、錘8が装着してある。
【0012】
また、巻上げ手段4においては、図2および図3に示すように、トロリー3の下部に、コの字状のフレーム9の中央部が保持部材10を介して揺動自在に保持してあり、フレーム9の下端間には、水平方向へ連なったモータ11と、ドラム12と、電磁ブレーキ13とが装着してある。そして、ドラム12にはワイヤーロープ14が巻いてあり、ワイヤーロープ14の下端には、図1に示すように、ハツリ手段5が装着してある。また。ドラム12はモータ11の正逆回転駆動によって正逆回転するようになっている。
【0013】
また、巻上げ手段4には、ハツリ手段5がワイヤーロープ14によって吊下げられており、モータ11を正転駆動するとハツリ手段5が上昇するようになっている。なお、図中22は取鍋である。
【0014】
また、ハツリ手段5は、図4に示すように、その上部が支持軸を介して支持部材17の上部外面に相対向して突設されて作業者が把持可能な2個のグリップ18・18と、支持部材17の上面部に装着された錘19と、支持部材17の上面下部にこれに沿うように延びて装着されたブレーカ20と、で構成してある。取鍋22に付着したノロの硬さとブレーカ20の力を考慮して、ブレーカ20に取り付けた錘19の重量を所望に調整可能としてある。
【0015】
グリップ18に隣接した起動・停止スイッチは図5に示すように、グリップに隣接してモータ上昇手段を作業者がオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチ31と、モータ下降手段を作業者がオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチ33と、ハツリ手段を作業者がオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチ32と、イネーブルスイッチ30と、で構成してある。
【0016】
なお、イネーブルスイッチ30は中間位置でオンとするスイッチを採用することで、作業中に危険を判断して手を離しても、あるいは反射的に強く押してもオフとなる構造を成すことができる。そして、イネーブルスイッチ30を設けることにより、作業者に対する安全性の確保や、誤動作防止や、後述の取鍋に対する損害の縮小化を図ることができる。上昇起動、前記下降起動、ブレーカ起動は、イネーブルスイッチ30も同時に起動するようにしておく。
【0017】
次に、このように構成したノロのハツリ装置を用いて取鍋22の内壁のノロをハツリ除去する手順について述べる。
巻上げ手段4によって吊下げられて所用の高さにあるハツリ手段5の2個のグリップ18・18を作業者が把持して、アーム2および巻上げ手段4よる補助を受けながら、まず、ハツリ手段5を水平面内で牽引して取鍋22の真上に移動させ、続いて、モータ11を逆転駆動してハツリ手段5を下降させる。
【0018】
ハツリ手段5が取鍋22の内壁の所要位置まで下降した時点で作業者が下降スイッチをオフにして止め、ハツリ手段5の下降を停止するとともにその高さを維持する。なお、ハツリ手段5の上昇または下降を停止した際には、同時に電磁ブレーキ13が作動するようになっている。次いで、錘19によりハツリ手段5に下向きの力を作用させながら、ブレーカ20によって取鍋22のノリのハツリ作業を行う。また、ハツリ作業中にノロが破砕されると所望の力がノロに作用しなくなるため、ハツリ作業中にモータ下降スイッチも同時に起動して、ハツリ手段5を下降させて、所望の力をノロに作用させることができる。このように本発明の装置は、錘19とモータ下降スイッチによるハツリ手段5の下降とを併用することにより、作業者は機械的補助を受けながらも取鍋内壁のノロに所望の力を加え、適確に削り除去することが可能になる。
【0019】
なお、上記の実施形態では、巻上げ手段4は、支柱1とアーム2とトロリー3とによって搬送するようにしてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーンなどのような慣用の搬送手段によって搬送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
4 巻上げ手段
5 ハツリ手段
11 モータ
19 錘
20 ブレーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が機械的補助を受けながらブレーカを用いて取鍋の内壁に付着残留したノロを削るための装置であって;
ドラムがモータの正逆回転駆動によって正逆回転されかつ電磁ブレーキによって回転を停止され、ワイヤーロープが前記ドラムに巻かれた巻上げ手段と;
この巻上げ手段のワイヤーロープの下端に装着され、作業者が所望の重量の錘によって垂直方向の力を付与されながらノロを削るブレーカを備えたハツリ手段と;
を具備し;
前記モータが正転駆動して前記ハツリ手段を昇降させ、ブレーカを所要の位置のノロに接触させて、前記モータを停止し、所望の重量の錘により下方向の力を付与してノロを削ることを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
作業者が前記巻上げ手段の搬送を補助する搬送補助手段によって移動可能に構成され、この搬送補助手段は、
上下方向へ指向して固定配設された支柱と;
この支柱の上端にその一端付近が水平回動自在にして装着されかつ電磁ブレーキによって前記支柱に固定可能なアームと;
このアームにこれに沿って走行自在に装着された走行手段と;
を具備し;
これにより、作業者が前記アームによる補助を受けながら前記ハツリ手段を水平面内で牽引して前記取鍋の真上に搬送し、続いて、作業者が前記モータを起動させたのち前記ハツリ手段を下方へ押圧して下降させてこのハツリ手段を前記取鍋内壁の所要位置に移動させ、その後、作業者が前記モータを停止させたのち前記ハツリ手段によってノロのハツリ作業を可能にしたことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
前記ハツリ手段は、
前記ワイヤーロープの下端に装着された支持部材と、
この支持部材の上部の外面に相対向して突設されて作業者が把持可能な2個のグリップと、
前記支持部材における前記2個のグリップの下方位置に装着された所望の重量の錘と、
前記支持部材における前記錘の下方位置に装着されたブレーカと、
少なくとも1個の前記グリップに隣接して設けられて、巻上げ手段のモータを正転方向にオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチと、
逆転方向にオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチと、
を含むことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
前記巻上げ手段のモータを停止した際に、同時に、電磁ブレーキが作動するようにしたことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項5】
請求項3に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
イネーブルスイッチを設け、前記上昇起動、前記下降起動、前記ブレーカ起動時には、前記イネーブルスイッチも同時に起動することを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項6】
請求項4に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
ハツリ手段を起動中にも巻上げ手段のモータを起動可能としたことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項7】
請求項3に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
取鍋に付着したノロの硬さとブレーカの力を考慮して、ブレーカに取り付けた錘の重量を所望に調整可能としたことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項8】
請求項5に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
前記イネーブルスイッチは、中間位置で、起動するものであることを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−24825(P2012−24825A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167792(P2010−167792)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)