説明

受け手によって認識される情報を含む信号の品質を評価するための方法及びデバイス

本発明は、受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すためのデータを伝える信号OFxについての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す量PQの評価の方法に関し、前記信号の空間的品質及び時間的品質を表すパラメータSqm及びTqmを定量化するステップを含む。本発明による方法は、パラメータSqmとTqmの重み付け積が計算されて、その積が1以下のCを指数としてべき乗され、すなわち(Sqm.Tqm)Cを得る、重み付けのステップを備える。本発明は、リアルタイムでおこなう自動化技術を適用して、前記情報にさらされる人によって形成される、その空間的品質と時間的品質の相関関係を考慮するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すためのデータを伝える信号についての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す値の評価の方法に関する。前記方法は、それぞれ前記信号の空間的品質及び時間的品質を表す第1のパラメータ及び第2のパラメータを定量化するステップを含む。
【背景技術】
【0002】
受け手であると具体的に識別された個人のために具体的に意図された情報をターゲット配信するシステムが開発されてきているために本発明のような方法が研究されて注目を集めており、そのようなターゲット配信は、例えば、無線で送信される無線電気信号によって伝えられるオーディオビジュアルプログラム等の情報の無差別放送を伴う従来の配信システムの機能と比較して新しいものである。
【0003】
本従来技術において、その使用が可能であるターゲット配信システムは、一般に、送信すべき情報を表すアナログ信号をディジタルデータ信号へ変換して使用する。この変換では、通常、その変換がこのデータを著しく悪化させることがないようにして、前記データの符号化が後から行われて可能な限り容量が減らされる。符号化されたデータは、インターネットIPv4またはIPv6プロトコル等の標準送信プロトコルに従って、パケットによって送信されるように作られる。しかし、それらのパケット送信プロトコルは、プロトコルの成功が示すようにかなりの利点を提示するが、該利点が、本質的に、一定のデータパケットを必然的に失う劣化の源となっていることは忘れてはならない。さらに、選択される符号化技術が何であっても、その目的となるのは、符号化される情報のいくつかの特性のうち不必要であると考えられるものを除去すること以外によっては達成し得ない圧縮である。そのような圧縮は、符号化された形態で送信される情報の受取り手が有することができる認識に対して、悪影響を及ぼす可能性がある損失を必然的に生じさせる。
【0004】
現在、例えば、オーディオビジュアルプログラムの供給サービスに加入している個人は、契約により使用する権利を与えられて、彼または彼女に送信される最低限のレベルの画像及び音声の品質を期待するので、この提供サービスのプロバイダは、そのような要求が適切に満たされるようにしなければならない。これは、送信後、該受け手において復元される該信号の品質の関連のある評価を実行すること以外には実現することができない。この評価は、この受け手の認識能力の特定の人的特徴を考慮して行わなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動画や音声等の情報を有する信号の空間的品質及び時間的品質を別々に行う評価に対しては、既に、様々な方法が考えられている。それらの方法は、例えば、情報の受け手となる観察者のグループを用いて、各人が情報を認識した際に、その空間的品質(例えば、画像のシャープネス、または音声におけるディストーションの不足)または時間的品質(例えば、動画の流動性、またはステレオ信号の2つのチャネル間の位相シフトの不足)に指標の階級を割当ててもらうことである。しかし、このような方法では、割当てられた階級の統計的平均が平均的認識を有効に示すものとなるよう、十分な人数を試験研究所等の管理された環境内に集めなければならないため大規模に人を手配(logistics)する必要があり、そのため、実施するのにコストがかかる。さらに、このような方法は、加入者が指示した情報のストリームの受取り手時において、該加入者によって認識される品質をリアルタイムに測定するためには用いることができない。そのため、これらの方法は、上述した情報のターゲット配信のためのシステムにおけるそのような品質制御の用途には適していない。
【0006】
また、そのような方法を実施するにあたり、ある情報についての空間的品質の認識としてある人が持つ可能性のあるものは、その人によって認識される全体的な品質の評価の間において、その情報の時間的品質の認識のうちこの同じ人が持つものとの間で相関を完全に除去し得ないことが、その逆についても同様に、留意されてきた。例えば、大きな動きを有する被写体を伴うビデオシーケンスを観ている人の場合、前記シーケンスのイメージ周波数の低減は、この人によって認識される全体的な品質を改善することはない。
【0007】
従って、空間的品質と時間的品質の相関の技術は、考慮される情報の受取り手が感じる相関を考慮するようになされてきた。この技術は、これらの空間的品質と時間的品質を分離して表すパラメータ間の積をとることにあする。しかし、このような乗算アプローチの厳密な有効性は、従来技術においては確認されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかし、本発明者らによる研究によって、それらの空間的品質と時間的品質を分離して表すパラメータの単純な乗算が、人間の受取り手によって行われている相関プロセスを十分に考慮していないことが実証された。この研究によって、特に、品質パラメータの変動の人による認識が、他のパラメータを一定にした場合に線形ではないことに気付くことができた。このことは、上で説明したこの乗算アプローチが適切でないことを実証するのに十分である。
【0009】
本発明は、特に、情報にさらされた人によって形成された、その人によって認識される空間的品質と時間的品質との間の相関関係を考慮するために用いることができる該情報の品質の評価の方法を提案する際に、上述の欠点を克服することを目的とする。また、前記方法は、前記情報を表すデータのキャリアである信号の送信および/または受信中に、自動的にかつリアルタイムで実施することができる。
【0010】
実際、その第1の態様において、本発明は、前記第1のパラメータと第2のパラメータの積を計算するステップを含む導入のパラグラフによる評価の方法に関し、その間に、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの積を底として1以下の指数によってべき乗してある重み付け積が計算される重み付けのステップをさらに含むことを特徴とする。
【0011】
従って、Sqmが信号の空間的品質を表す第1のパラメータを示し、Tqmが前記信号の時間的品質を表す第2のパラメータを示す場合、本発明は、該信号によって表される情報の受取り手によって認識される該信号の品質に対して利用可能な測定量Qm1を、C<1、例えば、C=0.7の場合、測定の第1の形態、すなわち、Qm1=(Sqm.Tqm)Cに従って書き表すことができることを可能にする。本発明者らは、確認実験を実際に実行し、空間的品質Sqmと時間的品質Tqmとを相互に相関させる該測定量の重み付け積によるこのような式を選択することにより、前記空間的品質と時間的品質の単純な積の選択によって得られる結果よりも、統計的に有意な母集団の平均的認識にはるかに近い結果が提示されることを示さした。さらに、その重み付け積は、それら自体を、人の介在なしに、当業者にはすでに既知である技術に従って生成することができる該第1及び第2のパラメータの値を用いて、単に自動的にかつリアルタイムで計算することができる。そのため、本発明の方法に用いられる測定量は、特に、冒頭で記述した情報のターゲット配信のためのシステムにおける品質管理用途に適している。
【0012】
しかし、本発明者らは、それ自体が従来技術を超えるかなりの改善であるこの結果を、該測定量のより複雑な定式化を行うことによってさらに改善することができることに気付いている。それは、その後、Qm2と表され相互作用変数と呼ばれ、上記の重み付け積の一次方程式によって定義される変数を用いる本発明の実施の第2のモデルによって表される。前記相互作用変数は、場合により、Qm2=dと書き表される。Qm1+1、ただし、d及びeは実数であり、例えば、d=0.2及びe=0.9の場合に得られる上述した人の認識のメカニズムによって生成される結果に近い結果を生じる。この関数は、見た目は一次関数であるが、その変数Qm1=(Sqm.Tqm)C自体は、空間的品質及び時間的品質Sqm及びTqmの測定値の関数としての非線形展開の法則に従うため、当然、1ではない。この相互作用変数Qm2を測定量として選択すると、動画や音声等の情報の認識の人のメカニズムの特定の特徴をより具体的に考慮することを可能にする。
【0013】
しかし、品質の測定量の式のそのような選択によって得られる結果は、それら自体において、十分に満足のいくものであり、従来技術において得られる結果に優る目覚しい効果を提供するが、本発明者らは、より有利な式を確認しており、該式は、上述した相互作用変数Qm2に制限を与える関数による本発明の第3の実施の態様において説明する。前記制限の関数は、単調であり、認識される品質の最小値と最大値との間で有界である。このような制限は、本発明者らが観察したところ、情報の品質の解析のヒューマンプロセス、すなわち、特定のしきい値を超えるまたは超えない品質の変動が考慮されないプロセスの動作の実際的状況に対応する。その結果、該制限の関数は、互いに最小値及び最大値に相当する段階をつなぐ1つ以上の線形部分で構成することができる。しかし、該制限の関数は、単調関数として数学的に定義され、無制限に導出可能でかつ有界である、認識しきい値を示すように較正することができる2つの漸近線を本質的に有する、シグモイド型関数によって有利に構成される。このようなシグモイド型関数は、その漸近線に近い形態によって、本発明者らによって既に確認されている以下の認識メカニズムのモデリングに実際にうまく適合する。
非常に劣化した情報においてなされた品質のわずかな改善は、単に、前記情報の人の受取り手によって非常にわずかにのみ認識される。
かなり劣化した情報においてなされた品質のわずかな改善は、前記情報の人の受取り手によって強く認識される。
わずかに劣化した情報においてなされた品質の大幅な改善は、前記情報の人の受取り手によって弱々しく認識される。
【0014】
上述した相互作用変数の変動に制限を与える関数を構成するのに、シグモイド関数の種々の選択が可能である。この目的を達成するため、実施例に対して、y=1/(1+exp(−x))の関係によって定義される指数シグモイド関数、またはy=tanh(x)の関係によって定義されるタンジェントシグモイド関数を用いて想定することが可能である。
【0015】
しかし、本発明の好ましい実施形態においては、該シグモイド関数は、
【数1】

の形態を有し、ただし、b及びSは実数であり、Mmax及びMminはそれぞれ、上述した認識しきい値に相当する認識される品質の最小値及び最大値になり、前記値は、実施例に対して、場合により、最大及び最小のグレードの品質になる90及び10に等しくなるように選定される。従って、Qm3で表される、この好ましい実施形態に従って評価される測定量は、
【数2】

のような、b=80及びS=2の場合に、上述した人の認識のメカニズムによって生成されるのと非常に近い結果を得るのに用いることができる式で表される。
【0016】
上述したように、本発明は、その品質が測定される信号の自動分析によって、リアルタイムで測定量を定量化するのに用いることができ、そのため、冒頭に記載した、情報のターゲット配信のシステムにおける品質管理オペレーションに特によく適している。
【0017】
従って、本発明の別の態様によれば、本発明は、受け手に対して生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すデータの送信の方法にも関し、該方法は、
送信に適する符号化信号を生成するようになされた少なくとも1つの設定パラメータについての関数として前記データを符号化するステップと、
上記の説明に適合する評価の方法を実施する際に実行されるようになされた符号化信号の品質の測定量を評価するステップと、
該評価ステップの実行中に生成される測定量の少なくとも1つの値の関数として、前記設定パラメータを設定するステップと
を含む。
【0018】
本発明のこのような使用は、このように符号化された該信号の受信時に生成される最低限の品質の情報を保証するとともに、場合により、それでも使用可能な帯域幅等の該システムに対して特有の制限を考慮できるように、設定パラメータの値、例えば、圧縮レートまたは送信ビットレートを最適化する。
【0019】
また、その第1のハードウェア態様によれば、本発明は、受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すためのデータを伝える信号についての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す量を評価するデバイスに関し、前記デバイスは、前記信号の空間的品質及び時間的品質をそれぞれ表す第1のパラメータ及び第2のパラメータを定量化する手段と、前記第1のパラメータと第2のパラメータの積を計算する手段とを含み、前記デバイスは、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの積を底として1未満の指数によってべき乗してある重み付け積を計算するようになされた重み付けの手段をさらに含む。
【0020】
この種の評価デバイスの特定の実施形態において、該重み付け手段は、有利には、該重み付け積の一次方程式によって定義される相互作用変数の値を判断する手段を含む。
【0021】
この種の評価デバイスの好ましい実施形態において、該重み付け手段は、該相互作用変数のシグモイド関数の値を計算するようになされた変動を制限する手段を含む。
【0022】
また、別のハードウェア態様によれば、本発明は、受け手に対して生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すデータの送信のシステムに関し、前記システムは、
送信に適応したフォーマットで符号化された信号内の前記データを符号化する手段と、
該符号化された信号の品質の測定量を評価するためのデバイスであって、上記の説明に適合する該デバイスと、
を含む。
【0023】
このハードウェア態様の特に有利な変形例によれば、該符号化手段は、少なくとも1つの設定パラメータによって定義される処理のデータに対する用途のためになされており、該システムはさらに、該評価手段によって生成される測定量の少なくとも1つの値の関数として前記設定パラメータを設定する手段を含む。
【0024】
このような変形例は、このデータの受け手によって認識される品質レベルを伴うデータ符号化手段の動作の状況に対してフィードバック制御を設定する際に、品質管理ループを形成するのに用いることができる。
【0025】
該評価方法は、様々な方法で、特に、ハードウェア形態またはソフトウェア形態で実施することができる。そのため、本発明は、電気通信ネットワークを介してダウンロード可能な、および/または中央処理演算処理装置のメモリ内に格納された、および/または前記中央演算処理装置のリーダと協働するようになされ、かつ受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すためのデータを伝える信号についての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す量を評価することができるようになされたメモリキャリア内に格納されたコンピュータプログラムプロダクトにも関し、前記プログラムは、前記信号の空間的品質及び時間的品質をそれぞれ表す第1のパラメータ及び第2のパラメータの計算を定義する少なくとも1つの命令と、前記第1のパラメータ及び第2のパラメータの積の計算を定義する少なくとも1つの命令とを含み、前記コンピュータプログラムプロダクトは、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの積を底として1以下の指数によってべき乗して、重み付け積の計算を定義する少なくとも1つの命令を含むことを特徴とする。
【0026】
このようなプログラムは、該重み付け積の一次方程式によって定義される相互作用変数の計算の処理手順と、場合により、その間に、該相互作用変数に制限を与える関数の値で計算が行われるこの相互作用変数の変動を制限する処理手順とを定義する命令をさらに含むことができ、前記制限の関数は、単調であり、認識される品質の最小値と最大値の間で有界であり、また、特に、次の形式をとることが可能である。
【数3】

ただし、Mmax及びMminはそれぞれ、認識される品質の最大値及び最小値であり、b及びSは、実数である。
【0027】
最終的に、別のハードウェア態様によれば、本発明は、上記の説明によるソフトウェアプログラムが格納されているデータキャリアに関する。
【0028】
本発明の上述した特徴ならびに他の特徴は、添付図面を参照してなされる、例示的な実施形態の以下の説明からより明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、例えば、コンピュータにつながっていてもいなくてもよく、かつ好ましくは、少なくとも1つのスピーカを備えている、携帯電話またはスクリーンからなる端末DISPを用いてシステムSYSTのユーザに対して生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表す入力データストリームと呼ばれるディジタルデータストリームIFxの生成の手段SRCを含むデータ送信システムSYSTを概略的に示し、該送信される情報は、場合により音声及びイメージ、または別法として、それらの組合せである。システムSYSTは、配信手段IPS、例えば、配信手段IPSによって配信され、かつ配信によって劣化する可能性がある、出力データストリームと呼ばれるディジタルデータストリームOFxを受取るようになされた受取り手モジュールRECに接続されているユーザの端末DISPに対する入力ストリームIFxに含まれるデータのターゲットディスパッチを実現するように駆動可能な複数のルータを含む通信ネットワークを含む。本発明の特定の実施の態様においては、該受取り手モジュールRECは、有線または無線リンクを介して端末DISPと通信することが可能なデコーダによって構成することができる。本発明の他の実施態様においては、受取り手モジュールRECは、端末DISPに一体化することができる。本明細書に記載したシステムSYSTは、出力データストリームOFxの品質の測定量を評価する評価デバイスQMMをさらに含む。この評価デバイスQMMは、本発明に適合しており、前記ストリームの内容の自動分析により、出力ストリームOFxの宛先によって認識される品質のリアルタイム測定を表す値を有する測定信号PQを生成することが可能である。ここで示した実施例において、測定信号PQの値は、0〜100の変動の範囲を示す値QSCの絶対目盛に関連する。以下を見て分かるように、システムSYSTのユーザによって認識される該値のこのような絶対的及び客観的定量化は、数ある効果の中でも特に、該ユーザに対して、生成される情報の最低限の品質を保証するようになされた、システムSYSTの該ユーザに送信されたデータストリームの生成の最適化を可能にする。
【0030】
図2は、本明細書に記載した実施例において、上述した受取り手モジュールに直接一体化することができる、出力データストリームOFxの品質の測定量を評価するためのデバイスQMMの実行可能な実施形態を示す。この評価デバイスQMMは、出力データストリームOFxを伝達する信号の空間的品質(例えば、写真のシャープネス、または、音声のディストーションの不足)及び時間的品質(例えば、動画の流動性、または、ステレオ信号の2つのチャンネル間の位相シフトの不足)をそれぞれ表す第1のパラメータSqm及び第2のパラメータTqmの第1及び第2の定量化モジュールSM及びTMを含む。これらの第1及び第2のパラメータは、好ましくは、同じスケールの値、例えば、0〜100の値を参照して定量化され、その結果、これらのパラメータは、相互に矛盾のないものとなる。本明細書において示した特定の実施形態において、第1及び第2の定量化モジュールSM及びTMの各々は、データストリームOFxを受取るようになされている。点線で示すデータチャネルは、必要に応じて、入力データストリームIFxを定量化モジュールSM及びTMへ伝達するように設計することができる。その結果、この入力データストリームIFxは、例えば、前記ストリーム間のやりとりの不足によって明らかになる劣化の定量化を可能にする入力IFxと出力OFxとの間の相関関係を容認する比較基準として用いることができる。本明細書に示していない他の実施形態においては、出力データストリームOFxは、データストリームOFxの理論的に相当する部分との相関を実行するために、データストリームIFxの代わりに定量化モジュールSM及びTMによって用いられる透かしインジケータまたはリファレンスデータシーケンスを含むことができ、このことは、これらの定量化モジュールに、生成手段SRCに関連する全体的な作動自律性を与える。このような技術は、それ自体、当業者に知られている。
【0031】
本発明によれば、評価デバイスQMMは、出力ストリームOFxの受け手によって認識される品質のリアルタイム測定を表す値を有する測定信号PQを送るようになされた重み付け手段CCMBを含む。この値は、前記ストリームの内容の自動分析によって得られる。選択されている本発明の実施形態によれば、測定信号PQは、冒頭で説明した対応する角効果を伴って、重み付けされた積Qm1の値、相互作用変数の値Qm2、または、この相互作用変数のシグモイド関数の値Qm3をとるものとなることができる。使用する測定量の式を定義するため、重み付け手段CCMBは、ハードワイアードされた論理回路として選択された実施の態様に必要な計算を実行するために、適切に構成されたプログラマブル論理回路を含むことができる。このソリューションは、高速の処理速度を提供するが、再構成するためには困難を伴う。そのため、重み付け手段CCMBは、好ましくは、データキャリアMM内に格納された命令Instr及びデータDatを受取るようになされた中央演算処理装置CPUを含む。この命令Instr及びデータDatは、中央演算処理装置CPUによる実行が、重み付け手段CCMBが、所望の測定信号PQを生成することを可能にする計算ステップを定義する。これらの命令Instrは、必要であることがわかった場合には容易に変更することができ、また、場合によりリアルタイムで、測定信号PQが、それに対して表される変数Qm1、Qm2またはQm3の値の選択を可能にする代替の命令からなるいくつかのセットの形態で示すことができる。
【0032】
その結果、そのような命令からなるセットは、ハードディスクドライブ、CD−RW、DVD−RAMまたは光磁気ディスクの場合の実施例と同様に、それが書き換え可能であれば、データキャリアMMにダウンロードすることができるソフトウェアプログラムを形成する。データキャリアMMはさらに、取外し可能にすることができ、また、例えば、プログラム提供サービスプロバイダによって該システムユーザに供給される、CD−ROMまたはDVD−ROMタイプの読出し専用ディスクで構成することができる。
【0033】
図3は、次の式
【数4】

および
x=d.(Sqm.Tqm)C+e
によって定義される測定信号PQの展開を表し、ただし、C=0.7、d=0.2およびe=0.9であり、Sqm及びTqmは、その品質が、測定信号PQの品質によって表される信号の空間的品質(例えば、写真のシャープネスまたは音声のディストーションの不足)及び時間的品質(例えば、動画の流動性またはステレオ信号の2つのチャンネル間の位相シフトの不足)をそれぞれ表す、制限の関数PQ=f(x)の実施例を示す。
【0034】
その結果、この測定信号PQによって表される測定量は、上記のように定義された量Qm3に相当する。これは、変数xによって表された相互作用変数Qm2の制限の関数f(x)の値を計算することによって得られ、前記制限の関数f(x)は、単調であり、最小値と最大値との間で有界である。この特定の実施例においては、関数f(x)は、シグモイド型関数であり、すなわち、無制限に導出可能で有界である増加関数として定義される。この特定のタイプは、品質の変動が考慮されない未満または以上の認識しきいちを構成する値を表す2つの漸近線によって表される最大値Mmax=90及びMmin=10間の相互作用変数Qm2=d.(Sqm.Tqm)C+eの変動の制限を実現できるようにする。
【0035】
上記のように示された特定の式において、測定信号PQの展開を定義する関数f(x)は、漸近線Mmax=90とMmin=10の近くにおけるその展開の形態を介して、本発明者らによって既に確認されている認識に関する以下のメカニズムのモデリングに特に適合していることが分かる。
非常に劣化した情報(変動Aの範囲参照)において形成された品質のわずかな改善は、単に、前記情報の人の受け手によってわずかに認識される。
かなり劣化した情報(変動Bの範囲参照)において形成された品質のわずかな改善は、前記情報の人の受け手によって強く認識される。
わずかに劣化した情報において形成された品質の高度な改善は、単に、前記情報の人の受け手によって弱々しく認識される(変動Cの範囲参照)。
【0036】
図4は、本発明の第1の変形例によるデータ送信システムSYST1の概略図である。このシステムSYST1は、少なくとも1つの情報を表すデータストリームの、送信者側TRMEと受信者側RECEとの間での送信のために作られている。この目的のため、入力データストリームIFxは、符号化手段ENCにより、配信手段IPSを介して、それを出力データストリームOFxの形態で受取る受信者側RECEに送信されるようになされた符号化データストリームEFx内で符号化される。該符号化手段は、少なくとも1つの設定パラメータEp、例えば、圧縮レート、または、符号化パラメータEPGMのジェネレータによって決められるその値が、データ符号化が行われる状況を定義する送信ビットレートを用いて構成されるようになされている。ここで示したシステムSYST1は、本明細書に図示されていない、受信デコーダと同一である送信デコーダTDECと呼ばれるデコーダをさらに含み、受信者側RECEは、出力ストリームOFxの復号化を目的として、該デコーダを備えている。最終的に、システムSYST1は、符号化されたデータストリームEFxの品質を表す測定量を評価するためのデバイスQMMを含み、前記デバイスQMMは、上記の説明に適合するものであり、また、測定信号PQを生成するようになされている。
【0037】
本発明のこの第1の変形例は、システムSYST1のユーザに対して、該ユーザを対象とする情報を生成するために、受信者側RECEによって有効に使用されるデータストリームを表す復号されたデータストリームDFxを生成する該送信デコーダに、符号化されたデータストリームEFxを供給する際に、該符号化された信号の品質の評価を実行するのに用いることができる。本明細書に示した実施例において、復号されたデータストリームDFxと入力データストリームの比較分析は、符号化パラメータEPGMのジェネレータを駆動する測定信号PQの値を生成する。これは、出力信号OFxの受け手に対して生成される情報に対して最低限の品質を保証すると同時に、帯域幅等の、該システムに対する何らかの特性が、まだ使用可能である場合等の制約を考慮するために、設定パラメータEpの値を最適化するために行われ、該信号は、本明細書に図示されていない信号の形態で、符号化パラメータEPGMのジェネレータへ伝達することもできる。例えば、測定信号PQの値によって表される品質が、必要とされる最低限の品質に対して不十分であると思われる場合、圧縮レートを定義する設定パラメータEpの値は、前記圧縮が、より少ない情報損失をもたらすように、低くされる。
【0038】
図5は、本発明の第2の変形例によるデータ送信システムSYST2の概略図である。このシステムSYST2は、送信者側TRMEと受信者側RECEとの間での、少なくとも1つの情報を表すデータストリームの送信のためになされている。このシステムSYST2は、上述したのと共通する要素を備え、前記共通する要素は、同じ参照記号を有する。本明細書で示したシステムSYST2は、受信者側RECEが出力ストリームOFxの復号を目的として備えている受信デコーダRDECを含む。システムSYST2は、受信デコーダRDECによって生成される復号データストリームDFxの品質、およびそれに伴って、符号化されたデータストリームEFxの品質を表す測定量を評価するための評価デバイスQMMをさらに含む。前記デバイスQMMは、上記の説明に適合しており、測定信号PQを生成するようになされている。
【0039】
本明細書に示した実施例においては、前記入力ストリームが使用可能でない場合、受信者側RECEにおける復号したデータストリームDFx及び入力データストリームIFxの比較分析を実行することは困難であり、そのため、出力信号OFxは、好ましくは、それ自体が当業者に知られている技術を用いて、該QMMデバイスに含まれている空間的品質及び時間的品質を定量化するモジュールによって分析されるリファレンスインジケータRiを含む。その結果、このデバイスは、測定信号PQの値を生成することができ、該信号は、一方において、この値が返信として、配信手段IPSを介してそれに送信される符号化パラメータジェネレータEPGMと、他方において、復号されたデータストリームDFxの受信時に、例えば、バッファメモリのサイズ、または、復号中に用いられるエラーフィルタの選択性を調整して生成される情報の品質をさらに改善する目的で、受信デコーダRDECの構成を最適化することを可能にする復号化パラメータDpジェネレータDPGMを駆動する。
【0040】
図6は、オーディオ情報及びビデオ情報の両方を表すデータストリームAVFxの品質を評価するモジュールQMDを概略的に示す。従って、このようなストリームは、オーディオビジュアルプログラムのキャリアである。この評価モジュールQMDは、それぞれビデオデータ及びオーディオデータを伝える第1のストリームVFx及び第2のストリームAFxの、データストリームAVFxからの抽出のためになされたストリームセパレータSPLTを含み、評価モジュールQMDは、各々が、受け手によって別々に認識される、前記第1及び第2のストリームVFx及びAFxの品質を表す量PQV及びPQAを評価するようになされた第1及び第2の評価デバイスQMV及びQMAを含む。この目的のため、第1及び第2の評価デバイスQMV及びQMAは、上述した評価デバイスと同様のものであり、それぞれ、対応する定量化モジュール(SMV,TMV)及び(SMA,TMA)によって生成される空間的品質(Vsq,Vtq)及び時間的品質(Asq,Atq)のパラメータの値の相互関係のためになされた重み付け手段CV及びAVを含み、各相関は、空間的品質及び時間的品質のパラメータの値の間で計算される積Vsq.Vtq及びAsq.Atqを、1以下の指数C1及びC2によってべき乗する際に行われる。上述したように、各相関はさらに、対応する重み付け積(Vsq,Vtq)C1及び(Asq,Atq)C2の一次方程式によって定義される相互作用変数を計算するステップと、必要に応じて、前記相互作用変数のシグモイド関数を実施することによって、前記相互作用変数の変動を制限するステップとを含むことができる。
【0041】
最終的に、品質評価モジュールQMDは、ビデオデータ及びオーディオデータの第1及び第2のストリームVFx及びAFxの品質の測定量PQV及びPQAの値を受取ることが可能で、このデータによって定義されるオーディオビジュアルプログラムの視聴者によって認識されるデータストリームAVFxの品質の全体的な評価を表す信号GPQを生成するために、当業者には知られている技術に従って、これらの値を混合することが可能なミキサAVCBを備える。従って、この信号GQPは、次の形態で表すことができる。
GPQ=α.PQV+β.PQA+γ.(PQV.PQA)+ε
ただし、α、β、γ及びεは、研究室内において、データストリームAVFxによって伝達されるオーディオビジュアル情報のオーディオ及びビデオ品質の変動にさらされる人のグループの認識の統計分析によって一度だけ得られる実数である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明が用いられるデータ送信のシステムを示す機能図である。
【図2】このようなシステムにおいて実施することが可能な評価の手段を示す機能図である。
【図3】このようなシステムにおいて送信された信号の空間的品質及び時間的品質を示すパラメータの相関関係の好ましい実施形態を示す伝達曲線である。
【図4】本発明の第1の変形例が用いられるデータ送信システムを示す機能図である。
【図5】本発明の第2の変形例が用いられるデータ送信システムを示す機能図である。
【図6】オーディオビジュアルプログラムの品質の評価に対する本発明の可能性のある適用を示す機能図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け手側において生成されるように意図された少なくとも1つの情報を含むデータを伝える信号についての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す量を評価する方法であって、
前記信号の空間的品質及び時間的品質をそれぞれ表す第1のパラメータ及び第2のパラメータを定量化するステップと、
前記第1のパラメータと第2のパラメータの積を計算するステップと
を含み、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの積を底として1未満の指数によってべき乗してある重み付け積が計算される重み付けのステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重み付け積の一次方程式によって定義された相互作用変数の値を判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
その間に、前記相互作用変数に制限を与える関数の値が計算される変動を制限するステップをさらに含み、前記制限の関数が、単調であり、かつ認識される品質の最小値と最大値の間で有界であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制限の関数が、
【数1】

の形態を有し、ただし、Mmax及びMminはそれぞれ、認識される品質の最大値及び最小値であり、b及びSは実数であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を含むデータの送信の方法であって、
送信に適する符号化信号を生成するようになされた少なくとも1つの設定パラメータについての関数として前記データを符号化するステップと、
請求項1〜4のいずれかに記載の評価の方法を実施するために実行されるようになされた符号化信号の品質の測定量を評価するステップと、
前記評価ステップの実行中に生成される測定量の少なくとも1つの値の関数として前記設定パラメータを設定するステップと
を含む方法。
【請求項6】
受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を表すためのデータを伝える信号についての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す量を評価するデバイスであって、前記信号の空間的品質及び時間的品質をそれぞれ表す第1のパラメータと第2のパラメータを定量化する手段と、前記第1のパラメータと第2のパラメータの積を計算する手段とを含み、
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの積を底として1未満の指数によってべき乗してある重み付け積を計算するようになされた重み付けの手段をさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項7】
前記重み付け手段は、前記重み付け積の一次方程式によって定義される相互作用変数の値を判断する手段を含むことを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記重み付け手段は、前記相互作用変数に制限を与える関数の値を計算するようになされた変動を制限する手段を含み、前記制限の関数は、単調であり、かつ認識される品質の最小値と最大値との間で有界であることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を含むデータの送信のシステムであって、
送信に適応したフォーマットで符号化された信号内の前記データを符号化する手段と、
前記符号化された信号の品質の測定量を評価するためのデバイスであって、請求項6〜8の一項に適合するデバイスと、
を含むシステム。
【請求項10】
前記符号化手段は、少なくとも1つの設定パラメータによって定義される処理のデータに対する用途のためになされており、前記システムは、前記評価手段によって生成される測定量の少なくとも1つの値の関数として前記設定パラメータを設定する手段をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のデータ送信システム。
【請求項11】
電気通信ネットワークを介してダウンロード可能な、および/または中央処理演算処理装置のメモリ内に格納された、および/または前記中央演算処理装置のリーダと協働するようになされたメモリキャリア内に格納されたコンピュータプログラムプロダクトであって、前記プログラムは、受け手側において生成されるようになされた少なくとも1つの情報を含むためのデータを伝える信号についての品質であって、前記受け手によって認識される品質を表す量を評価することができるようになされており、前記プログラムは、前記信号の空間的品質及び時間的品質をそれぞれ表す第1のパラメータ及び第2のパラメータの計算を定義する少なくとも1つの命令と、前記第1のパラメータ及び第2のパラメータの積の計算を定義する少なくとも1つの命令とを含み、
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの積を底として1未満の指数によってべき乗して、重み付け積の計算を定義する少なくとも1つの命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが格納されているデータキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−535349(P2008−535349A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503543(P2008−503543)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000494
【国際公開番号】WO2006/103323
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(591034154)フランス テレコム (290)
【Fターム(参考)】