説明

受信器、及び該受信器を備えた映像信号伝送装置

【課題】 シフト状態が解消された映像信号を抽出する。
【解決手段】映像信号に同期信号やブラックレベル信号を重畳した重畳信号を受信器1が受信し、後縁検知部105により同期信号のパルス後縁部を検知する。そして、後縁検知部105からの信号に基づきサンプルホールド部108がブラックレベル信号のサンプルホールドを行い、信号シフト部101がそのサンプルホールド値に基づき重畳信号全体をシフトさせてブラックレベル信号がGNDレベルになるようにする。一方、第1タイミング検知部104は同期信号のパルス前縁部が出力される直前のタイミングを検知し、ビデオスイッチ部106は該第1タイミング検知部104及び後縁検知部105からの信号に基づき、重畳信号から同期信号を除去する。これにより、シフト状態が解消された映像信号を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期信号や映像信号を重畳させた形の重畳信号を受信すると共に該重畳信号から映像信号等を抽出する受信器、及び該受信器を備えた映像信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信器と送信器とツイストペアケーブルにて接続しておき、送信器から受信器に映像信号等を伝送するようにした映像信号伝送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来の映像信号伝送装置の構成の一例を示す模式図である。図中の符号203は、映像信号(例えば、R信号やG信号やB信号)や他の信号(例えば、垂直同期信号VDや水平同期信号HD等の同期信号や、左右の音声信号SLA,SRA)を送信するための送信器を示し、符号204は、それらの信号が伝送されるツイストペアケーブルを示し、符号201は、該ツイストペアケーブル204により伝送されてきた信号を受信するための受信器を示す。また、符号205は、映像信号R,G,Bや同期信号HD,VDや音声信号SLA,SRAを送信器203に入力するためのパソコンを示し、符号206は、受信した信号により動画像を再生するディスプレイ装置を示す。
【0004】
このような映像信号伝送装置においては、少ない信号線数のツイストペアケーブル204(例えば、LAN接続に用いられるCategory5 Unshielded Twisted Pair cable)にて多種類の信号を伝送できるようにするため、送信器203においては複数種類の信号を重畳した信号(以下、重畳信号とする)を生成し、それを受信器側に伝送し、受信器201においては該重畳信号を分離して元の信号を再生することが行われていた。
【0005】
重畳信号としては、映像信号(R信号やG信号やB信号等)に同期信号(垂直同期信号VDや水平同期信号HD等)が重畳されたものが挙げられる。図5(a)は、そのような重畳信号Aの一例を示す波形図であり、
・ 符号A1は、一の極性B1の同期信号
・ 符号A2は、該同期信号A1の後に出力されるブラックレベル信号
・ 符号A3は、該ブラックレベル信号A2の後に出力される、他の極性B2の映像信号
を示す。R信号やG信号やB信号の各ブラックレベル信号のレベルを同じにしておくことで、ディスプレイ装置206において色合いズレの無い画像を再生することができる。
【特許文献1】特開2004−328661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような重畳信号Aは、送信器においては、ブラックレベル信号A2はGNDレベルにあって、映像信号A3も正常な電圧レベルにあるが、受信器に伝送される過程で一の極性B1の側や他の極性B2の側に重畳信号全体がシフトしてしまうことがある。図5(b)は重畳信号全体が極性B2の側にδだけシフトした状態を示す波形図である。なお、本明細書においては、シフトしていない状態の信号と、シフトした状態の信号とを区別する必要があるときは、シフトしていない状態の各信号をA,A1,A2,A3の符号で示し、シフトした状態の各信号をAδ,A1δ,A2δ,A3δの符号で示すこととし、両者を特に区別しないときには、A,A1,A2,A3の符号で示すものとする。
【0007】
このように、伝送後の重畳信号Aδがシフトしてしまっていると、該重畳信号Aδから分離した映像信号A3δもシフトしてしまっていて正常な電圧レベルを示さず、再生した画像の色合いもずれてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、色合いズレの無い画像を再生できる受信器及び映像信号伝送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、一の極性(図5(a)(b)の符号B1参照)の同期信号(同図の符号A1,A1δ参照)、該同期信号(A1,A1δ)の後に出力される基準信号(同図の符号A2,A2δ参照)、及び該基準信号(A2,A2δ)の後に出力される他の極性(B2)の映像信号(同図のA3,A3δ参照)からなる重畳信号(同図の符号A,Aδ参照)、を受信する受信器(1)において、
前記同期信号(A1,A1δ)のパルス前縁部が出力されるタイミングを検知する第1タイミング検知部(104)と、
前記同期信号(A1,A1δ)のパルス後縁部が出力されるタイミングを検知する第2タイミング検知部(105)と、
前記第1タイミング検知部(104)及び/又は前記第2タイミング検知部(105)からの信号に基づき前記基準信号(A2,A2δ)の電圧レベルをサンプルホールドするサンプルホールド部(108)と、
該サンプルホールド部(108)からの信号に基づき駆動されて前記基準信号(A2,A2δ)が所定電圧レベルとなるように前記重畳信号(A,Aδ)の全体を一の極性(B1)側又は他の極性(B2)側にシフトさせる信号シフト部(101)と、
前記第1タイミング検知部(104)及び/又は前記第2タイミング検知部(105)からの信号に基づき駆動され、前記信号シフト部(101)によりシフト状態が解消された後の重畳信号(A)をGND又はディスエーブルして前記映像信号(A3)を抽出するビデオスイッチ部(106)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1タイミング検知部(104)が、
前記同期信号(A1,A1δ)のパルス前縁部が出力されることに伴いトリガ信号を発生させるトリガ信号発生部(1041)と、
該トリガ信号発生部(1041)からのトリガ信号を検出するまでアップカウントを継続し、該トリガ信号を検出した時点のカウント値を出力した後にカウントリセットするアップカウント部(1042)と、
前記カウント値からダウンカウントを開始するダウンカウント部(1043)と、
該ダウンカウント部(1043)のカウント値に基づき、次の同期信号(A1,A1δ)が出力される直前のタイミングを検知するタイミング検知部(1044)と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記重畳信号(A,Aδ)から前記一の極性(B1)の側の信号のみを抽出する第1抽出部(102)と、
該第1抽出部(102)にて抽出された信号から所定幅以上の信号だけを抽出する第2抽出部(103)と、を備え、
前記第1タイミング検知部(104)は、該第2抽出部(103)にて抽出された信号に基づき、前記同期信号(A1,A1δ)のパルス前縁部の出力タイミングを検知し、
前記第2タイミング検知部(105)は、該第2抽出部(103)にて抽出された信号に基づき、前記同期信号(A1,A1δ)のパルス後縁部の出力タイミングを検知する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記第2抽出部(103)にて抽出された信号のパルス幅を検知するパルス幅検知部(109)、を備え、前記サンプルホールド部(108)は、前記パルス幅検知部(109)の検知したパルス幅が所定幅以上の場合にサンプルホールドを中止する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記重畳信号(A)を送信する送信器(図3の符号3参照)と、該重畳信号(A又はAδ)を受信してなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受信器(1)と、を備えた映像信号伝送装置(2)についてのものである。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び5に係る発明によれば、同期信号と映像信号とを1つの信号(重畳信号)に合成させた状態で伝送することができるため、合成しない状態で伝送する場合に比べて伝送に使用するケーブルの本数を少なくすることができる。また、重畳信号からの映像信号の抽出は、重畳信号のシフト状態を解消した後で行うようにしているため、基準信号の電圧レベルは基準電位に一致する。これにより、色合いズレの無い画像を再生することができる。さらには、映像信号の抽出は、既設のビデオスイッチ部により行うようになっているため、同期信号の除去専用のための素子を新たに設ける必要がなく、それに伴う部品点数の増加や、コストアップを回避することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、同期信号のパルス前縁部より少し手前でビデオスイッチ部を作動させて、同期信号を確実に除去することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、同期信号より幅狭のノイズを除去し、適正なタイミングを検知することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、幅広のノイズを同期信号と判断し、誤ってサンプルホールドをしてしまうおそれを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
本発明に係る受信器は、図5(a)に例示するような重畳信号A、すなわち、
・ 一の極性B1の同期信号A1
・ 該同期信号A1の後に出力される基準信号A2
・ 該基準信号A2の後に出力される、他の極性B2の映像信号A3
からなる重畳信号(シフト状態に無い重畳信号)、或いは、伝送状態によって一の極性B1の側や他の極性B2の側にシフトしてしまった重畳信号を受信するものである。図5(b)は、上述したように、他の極性B2の側にδだけシフトした状態にある重畳信号Aδの波形の一例を示すものであり、
・ 符号A1δは、一の極性B1の同期信号を、
・ 符号A2δは、該同期信号A1δの後に出力される基準信号を
・ 符号A3δは、該基準信号A2δの後に出力される、他の極性B2の映像信号を、
それぞれ示している。なお、シフトしていない状態の基準信号A2は基準電位Vに等しく設定されている。ここで、同期信号A1,A1δとしては垂直同期信号VDや水平同期信号HDを挙げることができ、映像信号A3,A3δとしてはR信号やG信号やB信号を挙げることができる。
【0021】
本発明に係る受信器は、図1に符号1で例示するように、
・ 前記同期信号A1,A1δのパルス前縁部が出力されるタイミング(詳細は後述する)を検知する第1タイミング検知部104と、
・ 前記同期信号A1,A1δのパルス後縁部が出力されるタイミング(詳細は後述する)を検知する第2タイミング検知部105と、
・ 前記第1タイミング検知部104及び/又は前記第2タイミング検知部105からの信号に基づき前記基準信号A2,A2δの電圧レベルをサンプルホールドするサンプルホールド部108と、
・ 該サンプルホールド部108からの信号に基づき駆動されて前記基準信号A2が所定電圧レベルとなるように前記重畳信号Aの全体を一の極性B1側又は他の極性B2側にシフトさせる信号シフト部101と、
・ 前記第1タイミング検知部104及び/又は前記第2タイミング検知部105からの信号に基づき駆動され、前記信号シフト部101によりシフト状態が解消された後の重畳信号AをGND又はディスエーブルして前記映像信号A3を抽出するビデオスイッチ部106と、
を少なくとも備えている。
【0022】
本発明によれば、同期信号A1と映像信号A3とを1つの信号(重畳信号)に合成させた状態で伝送することができるため、合成しない状態で伝送する場合に比べて伝送に使用するケーブルの本数を少なくすることができる。また、重畳信号からの映像信号の抽出は、重畳信号のシフト状態を解消した後で行うようにしているため、基準信号A2の電圧レベルは基準電位Vに一致する。これにより、色合いズレの無い画像を再生することができる。さらには、映像信号A3の抽出は、既設のビデオスイッチ部106により行うようになっているため、同期信号の除去専用のための素子を新たに設ける必要がなく、それに伴う部品点数の増加や、コストアップを回避することができる。例えば、高価なDC− estored video amplifierとVoltage Limiting Amplifierを使う必要がない。
【0023】
本発明においては、上述した基準信号A2は、重畳信号生成時にGNDレベルにしておくこと(つまり、基準電位VをGNDレベルにしておくこと)が好ましいが、GNDレベル以外のレベルのものを本発明の権利範囲から排除するものではない。
【0024】
ところで、上述した“同期信号A1,A1δのパルス前縁部”とは、図5(a)(b)に符号Cで示す部分を意味し、“同期信号A1,A1δのパルス後縁部”とは、図5(a)(b)に符号Cで示す部分を意味する。ここで、第1タイミング検知部104が検知する“前記同期信号A1,A1δのパルス前縁部が出力されるタイミング”や、第2タイミング検知部105が検知する“前記同期信号A1,A1δのパルス後縁部が出力されるタイミング”は、パルス前縁部や後縁部が出力される瞬間のタイミングだけ(前縁部そのもののタイミングや、後縁部そのもののタイミングだけ)を意味するのではない。サンプルホールド部108によるサンプルホールドや、ビデオスイッチ部106による映像信号A3の抽出を可能にするものであればどのようなタイミングでも良い。以下、具体的に説明する。例えば、同期信号A1を除去することにより映像信号A3の抽出を行う場合には、
・ 同期信号A1のパルス前縁部より少し手前でビデオスイッチ部106を作動させて該同期信号A1の除去を開始し、
・ 同期信号A1のパルス後縁部より少し後のタイミングでビデオスイッチ部106を作動させて該同期信号A1の除去を終了する、
必要があるが、その場合、
・ “パルス前縁部より少し手前のタイミング”そのものを第1タイミング検知部104により検知するようにしても、
・ “パルス前縁部より少し手前のタイミング”以外のタイミングを第1タイミング検知部104により検知するようにしておき、“パルス前縁部より少し手前のタイミング”自体はカウンタを作動させて(つまり、第1タイミング検知部104からの信号に基づきカウンタを作動させて)検知するようにしても、
・ “パルス後縁部より少し後のタイミング”そのものを第2タイミング検知部105により検知するようにしても、
・ “パルス後縁部の出力タイミング”を第2タイミング検知部105により検知するようにしておき、“パルス後縁部より少し後のタイミング”自体はカウンタを作動させて(つまり、第2タイミング検知部105からの信号に基づきカウンタを作動させて)検知するようにしても、
・ “パルス後縁部の出力タイミング”を第2タイミング検知部105により検知するようにしておき、その検知信号が前記ビデオスイッチ部106に到達して該スイッチ部106が作動されるタイミングが(信号伝送の自然的な遅れにより)“パルス後縁部より少し後のタイミング”であるようにしても、
いずれでも良い。
【0025】
上述のように同期信号A1のパルス前縁部より少し手前でビデオスイッチ部106を作動させるため、第1タイミング検知部104は、
・ 前記同期信号のパルス前縁部が出力されることに伴いトリガ信号を発生させるトリガ信号発生部1041と、
・ 該トリガ信号発生部1041からのトリガ信号を検出するまでアップカウントを継続し、該トリガ信号を検出した時点のカウント値を出力した後にカウントリセットするアップカウント部1042と、
・ 前記カウント値からダウンカウントを開始するダウンカウント部1043と、
・ 該ダウンカウント部1043のカウント値に基づき、次の同期信号が出力される直前のタイミングを検知するタイミング検知部1044と
により構成すると良い。そのように構成した場合、同期信号A1のパルス前縁部より少し手前でビデオスイッチ部106を作動させて、同期信号A1を確実に除去することができる。
【0026】
ところで、前記重畳信号A,Aδから前記一の極性B1の側の信号のみを抽出する第1抽出部102と、該第1抽出部102にて抽出された信号から所定幅以上の信号だけを抽出する第2抽出部103と、を設けておいて、
・ 前記第1タイミング検知部104は、該第2抽出部103にて抽出された信号に基づき、前記同期信号A1のパルス前縁部の出力タイミングを検知し、
・ 前記第2タイミング検知部105は、該第2抽出部103にて抽出された信号に基づき、前記同期信号A1のパルス後縁部の出力タイミングを検知する、
ようにすると良い。これにより、同期信号A1より幅狭のノイズを除去し、適正なタイミングを検知することができる。
【0027】
なお、受信器が受信する重畳信号は、その伝送状態により異なるものであって、図5(b)に符号Aδで示すようにシフトしていたり、図5(a)に符号Aで示すようにシフトしていなかったりするので、信号シフト部101にはどちらの信号Aδ,Aが入力されてくるか分らず、また、シフト状態にある重畳信号Aδが入力されたとしても、該信号シフト部101の作用によりシフト状態が解消されるので、信号シフト部101から出力されて前記第1抽出部102や第2抽出部103に入力される信号は、シフト状態にある重畳信号Aδだったり、シフトされていない状態の重畳信号Aだったりする。いずれの信号についても、各抽出部102,103は信号抽出を随時実行し、各タイミング検知部104,105はタイミング検知を随時実行することとなる。例えば、シフト状態の解消されていない信号に関して前記第1又は第2タイミング検知部104,105が検知したタイミングは、サンプルホールドのタイミングを決定してシフト状態の解消に役立つし、シフト状態の解消された信号に関して前記第1又は第2タイミング検知部104,105が検知したタイミングは、映像信号A3の抽出に役立つこととなる。
【0028】
ところで、上述した第2抽出部103は、同期信号A1δよりもパルス幅の狭いノイズを除去するだけなので、同期信号A1δよりもパルス幅の広いノイズが存在している場合が問題となるが、前記第2抽出部103にて抽出された信号のパルス幅を検知するパルス幅検知部(図1の符号109参照)を設けておいて、前記サンプルホールド部108は、前記パルス幅検知部109の検知したパルス幅が所定幅以上の場合にサンプルホールドを中止する、ようにすると良い。例えば、図1に示すように、サンプルホールド部108がサンプルホールド制御部110により制御されるように構成されている場合には、サンプルホールド制御部110とサンプルホールド部108との間に、サンプルホールド制御部110からサンプルホールド部108への信号を遮断するための制御信号遮断部111を設けておき、同期信号A1よりもパルス幅の広い信号を検知するとパルス幅検知部109が信号を該制御信号遮断部111に送信し、それにより、サンプルホールド制御部110からサンプルホールド部108への信号が遮断されて、サンプルホールド等の制御が中止されるようにすると良い。これにより、幅広のノイズを同期信号と判断し、誤ってサンプルホールドをしてしまうおそれを回避できる。
【0029】
ところで、上述した第1タイミング検知部104及び第2タイミング検知部105とビデオスイッチ部106との間にビデオスイッチ制御部107を設けておいて、このビデオスイッチ制御部107が、第1及び/又は第2タイミング検知部104,105からの信号に基づきビデオスイッチ部106をGND又はディスエーブルするように構成すると良い。
【0030】
なお、上述した受信器1と、該受信器1に重畳信号Aを送信する送信器(図3の符号3参照)と、により映像信号伝送装置(同図の符号2参照)を構成しても良い。
【0031】
次に、本発明に係る受信器の作用について説明する。
【0032】
いま、シフト状態にある重畳信号Aδ、或いはシフト状態にない重畳信号Aが受信器1に伝送されてくると、前記第1タイミング検知部104は、同期信号A1又はA1δのパルス前縁部が出力されるタイミングを検知し、前記第2タイミング検知部105は、前記同期信号A1又はA1δのパルス後縁部が出力されるタイミングを検知する。そして、前記サンプルホールド部108は、前記第1タイミング検知部104及び/又は前記第2タイミング検知部105からの信号に基づき前記基準信号A2,A2δの電圧レベルをサンプルホールドする。これらのサンプルホールド値は信号シフト部101に送られるが、シフト状態にある基準信号A2δのサンプルホールド値に基づき重畳信号A(正確には、シフト状態にある重畳信号Aδ)の全体が該信号シフト部101により一の極性B1側又は他の極性B2側にシフトされ、そのシフト状態が解消される(正確には、シフト状態が解消されるまで、このフィードバックループによる制御が繰り返される)。一方では、前記第1タイミング検知部104及び/又は前記第2タイミング検知部105からの信号に基づきビデオスイッチ部106がオン・オフされているが、前記信号シフト部101により重畳信号のシフト状態が解消された時点で、シフト状態にない正常な映像信号A3が抽出されることとなる。
【実施例1】
【0033】
本実施例では、送信器3と受信器1とツイストペアケーブル4とにより、図3に示す構成の映像信号伝送装置2を作製した。そして、送信器3には、図4に符号205で示すようにパソコンを接続しておいて、
・ R信号やG信号やB信号の映像信号(図3の符号R,G,B参照)
・ 垂直同期信号や水平同期信号(図3の符号HD,VD参照)
・ 左右の音声アナログ信号(図3の符号SLA,SRA参照)
等が入力されるようにした。また、受信器1には、図4に符号206で示すようにディスプレイ装置を接続しておいて、該送信器3からツイストペアケーブル4を経由して送られてきた信号により動画像を再生できるようにした。
【0034】
送信器3は、図示のようにAD変換部30や同期信号有無・正負判定部31や同期信号負極性化部32やデータ加工部33や同期信号付加部34等にて構成した。このうち、同期信号有無・正負判定部31は、パソコンから入力された同期信号HD,VDの極性を判定すると共に、その極性情報PIを出力するもので、同期信号負極性化部32は、同期信号有無・正負判定部31の判定結果が正極性の場合には同期信号の極性を反転させ、その判定結果が負極性の場合には極性反転させないようにするためのものである。また、同期信号付加部34は、入力されてきたB信号と、同期信号負極性化部32からの同期信号とによって重畳信号(詳細は後述する)を生成するものである。一方、AD変換部30は、入力された音声アナログ信号SLA,SRAをデジタル信号SLD,SRDに変換するもので、データ加工部33は、そのデジタル信号SLD,SRDや極性情報PIなどをシリアル化するものである。
【0035】
また、他方の受信器1は同期信号分離部10や音声信号復元部11や同期信号復元部12やDA変換部13にて構成した。このうち、同期信号分離部10は、伝送されてきた重畳信号から同期信号や映像信号を分離するためのもので、音声信号復元部11は、伝送されてきたシリアル変調信号SDMから音声デジタル信号SLD,SRD及び上述の極性情報PIを分離するものである。また、同期信号復元部12は、該極性情報PIに基づき、負極性の同期信号HD、VDを出力するものであり、DA変換部13は、該復元された音声デジタル信号SLD,SRDをアナログ信号SLA,SRAに変換するためのものである。
【0036】
ところで、上述した同期信号分離部10は、図1に示すように、信号シフト部101や第1抽出部102や第2抽出部103や第1タイミング検知部104や後縁検知部(第2タイミング検知部)105やビデオスイッチ部106やビデオスイッチ部107やサンプルホールド部108やパルス幅検知部109やサンプルホールド制御部110や制御信号遮断部111にて構成した。
【0037】
なお、本実施例においては、送信器側の同期信号付加部34は、入力されてきたB信号と、同期信号負極性化部32からの同期信号とによって図5(a)に例示するような重畳信号A(すなわち、負極性B1の同期信号A1と、その後に出力されるブラックレベル信号(基準信号)A2と、その後に出力される正極性B2のB信号(映像信号)A3)が生成される。伝送状態によっては、この重畳信号Aがそのままシフトしない状態で受信器1に到達することもあるが、負極性B1又は正極性B2の側にシフトした状態で受信器1に到達することもある。以下、図5(b)に示すように、正極性B2の側にδだけシフトした重畳信号Aδが入力されてきた場合について説明する。
【0038】
受信器1に伝送されてきた重畳信号Aδは、信号シフト部101に入力され、さらに、ビデオスイッチ部106及びサンプルホールド部108の側と、第1抽出部102の側とに送信される。
【0039】
このうち、第1抽出部102は、重畳信号Aδから負極性B1の側の信号のみを抽出するものである(図2(b)参照)。該抽出した信号には、同期信号A1δだけでなくノイズ(例えば、図2(a)の符号A4δ参照)が含まれる場合もあるが、減衰補償のための2値化処理を行うとノイズA4δの電圧レベルと同期信号A1δの電圧レベルとが一致する。なお、所定電圧レベル以下のノイズは、この2値化処理の際に除去されることとなる。また、第2抽出部103は、2値化処理後の信号から、同期信号A1δよりパルス幅の狭いノイズA4δを除去するものである(図2(c)参照)。なお、本実施例においては、この抽出信号を極性反転させている(図2(d)参照)。
【0040】
第2抽出部103の出力(つまり、パルス幅の狭いノイズが除去された後の信号であって、同期信号A1δ、及び該同期信号A1δよりパルス幅の広いノイズを含む信号)は後縁検知部105に送られ、後縁検知部105では、それらのパルス(同期信号A1δやノイズのパルス)の後縁部が出力されたタイミング(正確には、少し後のタイミング)が検知されるようになっている(図2(f)参照。同図には、ノイズは不図示)。そして、後縁検知部105の出力信号に基づき、サンプルホールド制御部110がサンプルホールド部108を作動させ、該タイミング(つまり、前記パルス後縁部の少し後のタイミング)でサンプルホールドがなされる(図2(h)参照)。このとき、第2抽出部103の出力(つまり、パルス幅の狭いノイズが除去された後の信号であって、同期信号A1δ、及び該同期信号A1δよりパルス幅の広いノイズを含む信号)はパルス幅検知部109にも入力されており、パルス幅検知部109は、同期信号A1δよりパルス幅の広いノイズを検知したときに制御信号遮断部111に信号を送り、サンプルホールド制御部110からサンプルホールド部108への制御信号の送信を遮断して、サンプルホールドを強制休止させるようになっている。したがって、ノイズの影響は排除され、ブラックレベル信号A2δがサンプルホールドされることとなる。
【0041】
そして、そのサンプルホールド信号は、上述した信号シフト部101に入力され、該シフト部101においては、該ブラックレベル信号A2δがGNDレベルとなるように重畳信号Aδの全体をシフトさせて、シフト状態は解消する。なお、この信号シフト部101とサンプルホールド部108はフィードバックループを形成しているので、ブラックレベル信号A2δを精度良くGNDレベルに一致させることができる。
【0042】
このため、信号シフト部101から出力される重畳信号は、図5(a)に符号Aで示すようにシフト状態が解消された状態のものとなり、該重畳信号Aは、ビデオスイッチ部106及びサンプルホールド部108の側と、第1抽出部102の側とに送信される。そして、第1抽出部102や第2抽出部103においては、上述と同様の信号処理が行われ、第2抽出部103の出力(つまり、同期信号A1を含む信号)は後縁検知部105に入力され、パルス後縁部が検知されるようになっている(図2(f)参照)。その信号はビデオスイッチ制御部107に入力される。
【0043】
他方、第2抽出部103の出力はトリガ信号発生部1041に入力されるので、同期信号A1のパルス前縁部が出力されるタイミングでトリガ信号が出力されることとなる(図2(e)参照)。そして、アップカウント部1042は、該トリガ信号を検出するまでアップカウントを継続し、該トリガ信号を検出した時点でそのときのカウント値を出力すると共にカウントリセットし、そのカウント値を検出したダウンカウント部1043がそのカウント値からのダウンカウントを開始し、該ダウンカウント値に基づき、次の同期信号が出力される直前のタイミングがタイミング検知部1044により検知される。そして、その信号が、タイミング検知部1044からビデオスイッチ制御部107に入力される。そして、ビデオスイッチ制御部107は、タイミング検知部1044及び後縁検知部105からの信号に基づきビデオスイッチ106を制御し、重畳信号のラインをその期間だけGNDラインに接続する(図2(g)参照)。これにより、ビデオスイッチ部106は、同期信号A1だけを除去し、それ以外の信号を出力することとなる。つまり、重畳信号Aから映像信号A3が抽出されることとなる。この映像信号A3は、信号伝送に伴うシフト状態が信号シフト部101により解消されているので、ディスプレイ装置により再現される画像は良質であり、色再現性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明に係る受信器の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、シフト状態にある重畳信号の波形の一例を示す波形図であり、(b)は、該重畳信号から一の極性側を抽出した状態を示す波形図であり、(c)は、幅狭のノイズを除去した状態を示す波形図であり、(d)は、極性を反転させた状態を示す波形図であり、(e)は、同期信号のパルス前縁部に対応するタイミングで出力される信号を示す波形図であり、(f)は、同期信号のパルス後縁部に対応するタイミングで出力される信号を示す波形図であり、(g)は、ビデオスイッチ制御部のための制御信号を示す波形図であり、(h)は、サンプルホールド部にサンプルホールドを指示するためのサンプルホールド信号を示す波形図である。
【図3】図3は、本発明に係る映像信号伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図4は、従来の映像信号伝送装置の構成の一例を示す模式図である。
【図5】図5(a)は、シフトしていない状態の重畳信号の波形の一例を示す波形図であり、(b)は、シフト状態にある重畳信号の波形の一例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0045】
1 受信器
2 映像信号伝送装置
3 送信器
101 信号シフト部
102 第1抽出部
103 第2抽出部
104 第1タイミング検知部
1041 トリガ信号発生部
1042 アップカウント部
1043 ダウンカウント部
1044 タイミング検知部
105 第2タイミング検知部
106 ビデオスイッチ部
108 サンプルホールド部
109 パルス幅検知部
A 重畳信号
A1 同期信号
A2 基準信号
A3 映像信号
B1 一の極性
B2 他の極性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の極性の同期信号、該同期信号の後に出力される基準信号、及び該基準信号の後に出力される他の極性の映像信号からなる重畳信号、を受信する受信器において、
前記同期信号のパルス前縁部が出力されるタイミングを検知する第1タイミング検知部と、
前記同期信号のパルス後縁部が出力されるタイミングを検知する第2タイミング検知部と、
前記第1タイミング検知部及び/又は前記第2タイミング検知部からの信号に基づき前記基準信号の電圧レベルをサンプルホールドするサンプルホールド部と、
該サンプルホールド部からの信号に基づき駆動されて前記基準信号が所定電圧レベルとなるように前記重畳信号の全体を一の極性側又は他の極性側にシフトさせる信号シフト部と、
前記第1タイミング検知部及び/又は前記第2タイミング検知部からの信号に基づき駆動され、前記信号シフト部によりシフト状態が解消された後の重畳信号をGND又はディスエーブルして前記映像信号を抽出するビデオスイッチ部と、
を備えたことを特徴とする受信器。
【請求項2】
前記第1タイミング検知部は、
前記同期信号のパルス前縁部が出力されることに伴いトリガ信号を発生させるトリガ信号発生部と、
該トリガ信号発生部からのトリガ信号を検出するまでアップカウントを継続し、該トリガ信号を検出した時点のカウント値を出力した後にカウントリセットするアップカウント部と、
前記カウント値からダウンカウントを開始するダウンカウント部と、
該ダウンカウント部のカウント値に基づき、次の同期信号が出力される直前のタイミングを検知するタイミング検知部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の受信器。
【請求項3】
前記重畳信号から前記一の極性の側の信号のみを抽出する第1抽出部と、
該第1抽出部にて抽出された信号から所定幅以上の信号だけを抽出する第2抽出部と、を備え、
前記第1タイミング検知部は、該第2抽出部にて抽出された信号に基づき、前記同期信号のパルス前縁部の出力タイミングを検知し、
前記第2タイミング検知部は、該第2抽出部にて抽出された信号に基づき、前記同期信号のパルス後縁部の出力タイミングを検知する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の受信器。
【請求項4】
前記第2抽出部にて抽出された信号のパルス幅を検知するパルス幅検知部、を備え、
前記サンプルホールド部は、前記パルス幅検知部の検知したパルス幅が所定幅以上の場合にサンプルホールドを中止する、
ことを特徴とする請求項3に記載の受信器。
【請求項5】
前記重畳信号を送信する送信器と、
該重畳信号を受信してなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受信器と、
を備えた映像信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−304227(P2006−304227A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127003(P2005−127003)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】