説明

受信機および監視制御システム

【課題】 感知器回線の終端器としてコンデンサを含むものを用いる場合に、伝送信号を例えば1m秒以下のものにするときにも、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識することの可能な受信機を提供する。
【解決手段】 感知器回線(地区回線)K−1に接続されている感知器2を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器回線K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器が接続されることを考慮して、前記感知器監視部には、前記感知器回線K−1の終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線K−1に流す電流制御部51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機および監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は在来の一般的な自動火災報知設備(監視制御システム)の構成例を示す図である。図1を参照すると、この自動火災報知設備(監視制御システム)は、P型システムとして構成されており、P型受信機(例えばP型火災受信機)1と、P型受信機(例えばP型火災受信機)1に接続されている感知器回線(L−C線)K−1〜K−nとを有している。ここで、感知器回線(L−C線)K−1〜K−nは、警報区域(地区)に対応して電源兼信号線となる回線(地区回線)であって、各感知器回線K−1〜K−nには(すなわち、各感知器回線K−1〜K−nのL−C線には)、いわゆるオン・オフ型の火災感知器2が接続されている。また、各感知器回線K−1〜K−nの終端には(すなわち、各感知器回線K−1〜K−nのL−C線の終端には)、各感知器回線K−1〜K−nの断線を検知するために終端器3が接続されている。
【0003】
このような自動火災報知設備(監視制御システム)では、P型受信機1には、各感知器回線(L−C線)K−1〜K−nに接続されている火災感知器2が火災を検出したか否かを検知する火災検出部と、各感知器回線(L−C線)K−1〜K−nに接続されている各火災感知器2の状態(感知器故障や感知器脱落(感知器が接続されていない状態)など)を感知器情報として取得したりする感知器監視部と、各感知器回線K−1〜K−nの終端に(すなわち、各感知器回線K−1〜K−nのL−C線の終端に)終端器3を接続して、各感知器回線K−1〜K−nの断線を検知する断線検出部とが設けられている。
【0004】
ここで、火災検出部では、各感知器回線(L−C線)K−1〜K−nに通常24Vの電圧(電源電圧)を供給しており(通常時には感知器回線電圧を24Vにしており)、ある感知器回線(L−C線)に接続された火災感知器2が火災を検出すると発報作動してその感知器回線の感知器回線電圧をおよそ5Vに降下させる(発報時の残り電圧)ことにより、この感知器回線電圧の変化を監視しており、この感知器回線電圧の降下を検出するといわゆる蓄積処理等を行った後、火災を確定すると警報表示部や音響警報部等を作動して火災警報を行うようになっている。
【0005】
また、P型受信機1の断線検出部は、所定期間毎に感知器回線への電圧印加(24Vの電圧印加)を遮断することにより、感知器回線に断線検出パルスを送信し、この断線検出パルス送信時の感知器回線電圧の変化を検出して、断線の有無を監視、判断している。
【0006】
なお、断線を検知するための終端器3として、従来では、特許文献1に示されているように、図2(a)に示すようなコンデンサを含むもの(具体的には、コンデンサ(4.7μF)と突入電流対策用の抵抗(10Ω))を直列接続したもの)を用いる方式と、特許文献2に示されているように、図2(b)に示すような抵抗のみからなるものを用いる方式とがある。
【0007】
また、P型受信機1の感知器監視部は、各感知器回線(L−C線)K−1〜K−nに接続されている感知器2へ伝送信号(一般には、0〜12V間でのパルス信号)を送信し、この伝送信号に対する各感知器2からの感知器返送信号(感知器応答信号)に基づいて、感知器故障や感知器脱落などの感知器情報を取得したりするようになっている。
【0008】
図3(a)、(b)は、感知器監視部において、各感知器回線(L−C線)K−1〜K−nに接続されている感知器2へ送信される伝送信号の一例を示す図である。図3(a)を参照すると、感知器2へ送信される伝送信号は、送信基本フォーマット部と、返送要求部とから構成されている。ここで、送信基本フォーマット部は、ウェイクアップ、スタートビット、アドレス、コマンド、パラメータ、チェックXORからなっている。なお、アドレスには、アドレッシングを開始する感知器アドレス(開始感知器アドレス)が設定され、コマンドには、「感知器故障」や「感知器脱落」などのコマンドがコード化されて設定される。また、返送要求部は、感知器回線(L−C線)に接続されている各感知器2をアドレッシングするための「返送要求」からなっている。すなわち、1つの感知器回線(L−C線)、例えばK−1には、例えば32個の感知器2を接続可能であり、32個の各感知器2には、自己のアドレスとして、「1」〜「32」までのアドレスが設定されており、32個の各感知器2は、返送要求部からの「返送要求」の個数を計数し、「返送要求」の個数が自己のアドレスと一致したときに、自己が呼び出されたと認識し、送信基本フォーマット部のコマンドを実行して、所定の期間内に(1つの「返送要求」と次の「返送要求」との間の「返送受信待ち」の期間内に)これに応答して受信機1に返送するようになっている(コマンドが例えば「感知器故障」である場合には、自己の感知器2が故障していないか否かを返送信号としてY「1」またはN「0」で応答して受信機1に返送するようになっている)。
【0009】
図3(b)には、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号の具体例が示されている。図3(b)において、伝送信号は負論理となっており、送信基本フォーマット部には、コマンドのデータの一部が示されている。図4(a)、(b)は、コマンドのデータ(負論理)のビット表現を説明するための図であり、図4(a)のように例えば1m秒のロウレベル「L」に続いて例えば2m秒のハイレベル「H」のときにビット「0」、図4(b)のように例えば2m秒のロウレベル「L」に続いて例えば1m秒のハイレベル「H」のときにビット「1」と表現される。また、返送要求部において、「返送要求」は例えば1m秒の長さであり、図3(b)の例では、「返送受信待ち」の期間は例えば3m秒である。なお、後述のように、感知器2からの返送信号(Y「1」またはN「0」の応答)は例えば1m秒の長さである。
【0010】
このように、感知器監視部において、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号は、基本的には1m秒を単位とした長さになっている。図5には、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号の通信の所要時間が概略的に(図5では便宜上、伝送信号が正論理で)示されている。既存受信機の制約により、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号の通信は、例えば400m秒以内で終了する仕様となっていることから、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号を上記のように基本的には1m秒を単位とした長さにする構成は、既存受信機の制約による仕様を満たしている。
【0011】
図6には、感知器監視部の従来の構成例が示されている。なお、図6では、説明を簡単にするため、1つの感知器回線(L1−C線)K−1と、これに対応した感知器監視部の回路とが示されている。ここで、1つの感知器回線(L1−C線)K−1の回線抵抗RLは最大50Ωとなっている。また、1つの感知器回線(L1−C線)K−1の線間容量は最大0.1μFとなっている。
【0012】
図6を参照すると、この感知器監視部は、例えばCPUから、伝送モード信号MD、伝送信号TMが入力するようになっている。そして、図7(a)に示すように伝送モード信号MDがハイレベル「H」のときにインバータIV1を介してスイッチング素子SWがオンとなり、感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2が応答していないときには、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは、図7(b)に示すような伝送信号TMを反映した0〜12Vの電圧となる(図7(c))。すなわち、伝送信号TMがロウレベル「L」のときは、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは0Vとなり、伝送信号TMがハイレベル「H」のときは、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは12Vとなる。なお、図6において、R1は抵抗(270Ω)、D1はダイオードである。また、IV2、IV3はそれぞれインバータである。また、CMPはその出力が感知器返送信号(応答信号)RPとなるコンパレータであり、−側の端子にツェナーダイオードZDによる閾値電圧VTH(8.2V)が加わり、+側の端子にL1の電圧VLが加わって、電圧VLが閾値電圧VTH(8.2V)よりも大きいときに、ハイレベル「H」の感知器返送信号(応答信号)RPを出力し、電圧VLが閾値電圧VTH(8.2V)よりも小さいときに、ロウレベル「L」の感知器返送信号(応答信号)RPを出力するようになっている。いまの場合、図7(d)に示すように、伝送信号TMがロウレベル「L」のときは、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは0Vとなることから、ロウレベル「L」の感知器返送信号(応答信号)RPが出力され、また、伝送信号TMがハイレベル「H」のときは、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは12Vとなることから、ハイレベル「H」の感知器返送信号(応答信号)RPが出力される。なお、R2は抵抗(10kΩ)である。
【0013】
一方、感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2が応答するときには、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは、次のようになる。すなわち、コマンドが例えば「感知器故障」である場合、自己の感知器2が故障していない旨の応答を行う場合、感知器2は、その電圧(L1端子側の電圧)を5Vにする。これにより、感知器回線(L1−C線)K−1には、(12V―5V)/(270Ω+50Ω)=22mAの電流が流れ、この電流により、感知器回線(L1−C線)K−1の回線抵抗RL(最大50Ω)には、22mA×50Ω=1.1Vの電圧が発生し、L1の電圧VLは、5V+1.1V=6.1Vとなる。従って、この場合、L1の電圧VLは、閾値電圧VTH(8.2V)よりも小さいことから、コンパレータCMPは、図7(d)にYで示すように、ロウレベル「L」の感知器返送信号(応答信号)RPを出力する。一方、自己の感知器2が故障している旨の応答を行う場合、感知器2の電圧(L1端子側の電圧)は12Vとなる。これにより、L1の電圧VLは、12Vとなり、閾値電圧VTH(8.2V)よりも大きくなることから、コンパレータCMPは、図7(d)にNで示すように、ハイレベル「H」の感知器返送信号(応答信号)RPを出力する。
【0014】
このようにコンパレータCMPから感知器返送信号(応答信号)RPが出力されるとき、P型受信機1のCPUでは、コンパレータCMPからの感知器返送信号(応答信号)RP(図7(d))と伝送信号TM(図7(b))とを比較し、その差DF(図7(e)参照)から、32個の各感知器2が故障していない(Y)か、故障している(N)かを、検知することができる。なお、図7の例では、アドレスA1、A2の感知器2が故障しておらず(Y)、アドレスA32の感知器2が故障している(N)場合が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実公昭57−38777号公報
【特許文献2】特開昭63−136195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上述した自動火災報知設備(監視制御システム)において、終端器3として、図2(a)に示すようなコンデンサを含むもの(具体的には、コンデンサ(4.7μF)と突入電流対策用の抵抗(10Ω))を直列接続したもので、以下、CREという)を用いる場合に、主にコンデンサ(4.7μF)の容量の影響によって、図7(c)に示すような感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLの波形(0〜12V間でのパルス信号の波形)が、図8に示すように、なまってしまい、伝送信号TMを1m秒以下のものにした場合に、感知器2側において伝送信号TMを認識できなくなるという問題があった。具体的に、感知器2側において、0〜12V間でのパルス信号の認識閾値は、ロウレベル「L」が例えば3V以下、ハイレベル「H」が例えば8V以上となっていることから、伝送信号TMが3〜8V間となるようになまってしまうと、感知器2側において伝送信号TMを認識できなくなってしまう。
【0017】
本発明は、感知器回線の終端器としてコンデンサを含むもの(CRE)を用いる場合に、伝送信号を例えば1m秒以下のものにするときにも、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識することの可能な受信機および監視制御システムを提供することを目的としている。
【0018】
さらに、本発明は、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識可能にするときにも、感知器返送信号(応答信号)への影響を低減し、受信機側において、感知器返送信号(応答信号)を認識することの可能な受信機および監視制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、感知器回線(地区回線)に接続されている感知器を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器監視部には、前記感知器回線にコンデンサを含む終端器が接続されているときに前記終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線に流す電流制御手段が設けられており、前記受信機から前記感知器回線に接続されている感知器への伝送信号の送信時に前記電流制御手段を作動させることを特徴としている。
【0020】
また、請求項2記載の発明は、感知器回線(地区回線)に接続されている感知器を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器監視部には、前記感知器回線にコンデンサを含む終端器が接続されているときに前記終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線に流す電流制御手段が設けられており、前記感知器回線に、前記受信機からの伝送信号に対して応答可能な感知器が接続されているときに、前記受信機から前記感知器回線に接続されている感知器への伝送信号の送信時において前記伝送信号の波形の立ち上がり時に、前記電流制御手段を作動させ、感知器応答時には、前記電流制御手段を作動させないことを特徴としている。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の受信機において、受信機から感知器回線に接続されている感知器へ伝送信号を送信するか否かを、前記感知器回線毎に設定可能となっていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の受信機を備えていることを特徴とする監視制御システムである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1、請求項3、請求項4記載の発明によれば、感知器回線(地区回線)に接続されている感知器を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器監視部には、前記感知器回線にコンデンサを含む終端器が接続されているときに前記終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線に流す電流制御手段が設けられており、前記受信機から前記感知器回線に接続されている感知器への伝送信号の送信時に前記電流制御手段を作動させるので、伝送信号を例えば1m秒以下のものにするときにも、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識することができる。
【0024】
また、請求項2乃至請求項4記載の発明によれば、感知器回線(地区回線)に接続されている感知器を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器監視部には、前記感知器回線にコンデンサを含む終端器が接続されているときに前記終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線に流す電流制御手段が設けられており、前記感知器回線に、前記受信機からの伝送信号に対して応答可能な感知器が接続されているときに、前記受信機から前記感知器回線に接続されている感知器への伝送信号の送信時において前記伝送信号の波形の立ち上がり時に、前記電流制御手段を作動させ、感知器応答時には、前記電流制御手段を作動させないので、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識可能にするときにも、感知器返送信号(応答信号)への影響を低減し、受信機側において、感知器返送信号(応答信号)を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】在来の一般的な自動火災報知設備(監視制御システム)の構成例を示す図である。
【図2】終端器の例を示す図である。
【図3】感知器監視部において、各感知器回線に接続されている感知器へ送信される伝送信号の一例を示す図である。
【図4】コマンドのデータ(負論理)のビット表現を説明するための図である。
【図5】送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号の通信の所要時間を概略的に示す図である。
【図6】感知器監視部の従来の構成例を示す図である。
【図7】図6の感知器監視部の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】終端器としてコンデンサを含むものを用いる場合に、図6の感知器監視部における伝送信号の波形を示す図である。
【図9】本発明の監視制御システムの受信機の構成例を示す図である。
【図10】図9の監視制御システムの受信機の地区回路の構成例を示す図である。
【図11】本発明の感知器監視部の構成例を示す図である。
【図12】終端器としてコンデンサを含むものを用いる場合に、図11の感知器監視部における伝送信号の波形を示す図である。
【図13】図11の感知器監視部において、感知器からの「返送受信待ち」の期間にも電流制御部を作動させるときの伝送信号の波形を示す図である。
【図14】感知器からの「返送受信待ち」の期間にも電流制御部を作動させるときの図11の感知器監視部の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図15】伝送信号の波形の立ち上がり時に、電流制御部を作動させ、感知器応答時には、電流制御部を作動させないようにするときの図11の感知器監視部の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図16】図11の感知器監視部において、伝送信号の波形の立ち上がり時に、電流制御部を作動させ、感知器応答時には、電流制御部を作動させないようにするときの伝送信号の波形を示す図である。
【図17】図11の感知器監視部において、伝送信号の波形の立ち上がり時に、電流制御部を作動させ、感知器応答時には、電流制御部を作動させないようにするときの、伝送信号の通信の所要時間を概略的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図9は本発明の監視制御システムの受信機の構成例を示す図である。また、図10は図9の監視制御システムの受信機の地区回路の構成例を示す図である。なお、図9、図10の例では、監視制御システムはP型システムとして構成され、受信機はP型受信機(例えばP型火災受信機)として構成されており、図9、図10において、図1と同様の箇所には同じ符号を付している。
【0028】
図9を参照すると、この監視制御システムは、受信機11と、受信機11に接続されている地区回線K−1〜K−nとを有している。
【0029】
ここで、受信機11は、地区回線K−1〜K−nが接続される地区回路12と、防排煙回路13と、地区音響回路14と、移信回路15と、全体を制御するCPU21と、ROM22と、RAM23と、EEPROM24と、操作部27と、表示部28と、警報音響部29と、地区回路12、防排煙回路13、地区音響回路14、移信回路15のそれぞれのI/OインターフェースとなるI/O部31、32、33、34とを有し、接続されている地区回線K−1〜K−nを監視制御する機能を備えている。
【0030】
また、図10を参照すると、地区回路12は、各地区回線K−1〜K−nのそれぞれに対応したn個の地区回路部12−1〜12−nを備えており、各地区回路部12−1〜12−n、例えば12−1は、感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている火災感知器2が火災を検出したか否かを検知する火災検出部41と、感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている各火災感知器2の状態(感知器故障や感知器脱落(感知器が接続されていない状態)など)を感知器情報として取得したりする感知器監視部42と、感知器回線K−1の終端に(すなわち、感知器回線K−1のL1−C線の終端に)終端器3を接続して、感知器回線K−1の断線を検知する断線検出部43とが設けられている。
【0031】
図11には、感知器監視部42の構成例が示されている。なお、図11では、説明を簡単にするため、1つの感知器回線(L1−C線)K−1と、これに対応した感知器監視部42の回路とが示されており、図11において図6と同様の箇所には同じ符号を用いている。また、図11において、1つの感知器回線(L1−C線)K−1の回線抵抗RLは最大50Ωとなっている。また、1つの感知器回線(L1−C線)K−1の線間容量は最大0.1μFとなっている。
【0032】
図11に示す感知器監視部42は、図6に示した感知器監視部の回路に、抵抗R1(270Ω)、ダイオードD1と並列に、電流制御部51、ダイオードD2が付加されたものとなっている。ここで、電流制御部51は、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器(CRE)が接続されることを考慮して、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3のコンデンサを充電するための電流を感知器回線(L1−C線)K−1に流すのに設けられており、図11の例では、抵抗R3(2.2kΩ)と、トランジスタQ1と、トランジスタQ2と、抵抗R4(5.1Ω)とにより構成されている。より詳細に、電流制御部51のトランジスタQ1のベースには、例えばCPUから電流制御信号CCTLが入力し、電流制御信号CCTLがハイレベル「H」のときに、電流制御部51は、感知器回線(L1−C線)K−1に定電流117mAを流すようになっている。すなわち、図11の例では、電流制御部51は定電流回路として構成されている。実際、当初トランジスタQ2がオフの状態で、電流制御信号CCTLがハイレベル「H」のときには、トランジスタQ1がオンとなり、トランジスタQ2のベース電圧が12Vとなり、抵抗R4には電流が流れ、抵抗R4の両端間の電位差は0.6V以上となる。そして、トランジスタQ2は、ベース電圧とエミッタ電圧との差が0.6V以上となるときに(トランジスタQ2のエミッタ電圧が11.4V以下となるときに)、オンとなる。トランジスタQ2がオンとなると、トランジスタQ1はオフとなり、抵抗R4には電流が流れなくなり、抵抗R4の両端間の電位差は0.6V以下となって、トランジスタQ2がオフとなる。トランジスタQ2がオフとなると、再びトランジスタQ1がオンとなり、抵抗R4には電流が流れ、抵抗R4の両端間の電位差は0.6V以上となる。このようにして、大局的には、電流制御信号CCTLがハイレベル「H」のときには、抵抗R4には、0.6V/5.1Ω=117mAの電流が流れ、感知器回線(L1−C線)K−1に定電流117mAを流すことができる。この定電流117mAは、抵抗R1(270Ω)による電流22mAの約5倍の大きさのものとなっている。
【0033】
本発明の第1の形態では、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器(CRE)が接続されているときに、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時に電流制御部51を作動させるようにしている。なお、伝送信号TMは図3(a)、(b)に示したものと同様のものであるとする。
【0034】
このように、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器(CRE)が接続されているときに、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時に電流制御部51を作動させ、抵抗R1(270Ω)による電流22mAの約5倍の大きさのものとなっている定電流117mAを感知器回線(L1−C線)K−1に流すことにより、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3のコンデンサが迅速に充電され、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLの波形(0〜12V間でのパルス信号の波形)は、図12に示すようになる。図12に示す感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLの波形(0〜12V間でのパルス信号の波形)を図8に示す波形と比べれば明らかなように、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時に電流制御部51を作動させ、抵抗R1(270Ω)による電流22mAの約5倍の大きさのものとなっている定電流117mAを感知器回線(L1−C線)K−1に流すことにより、伝送信号を例えば1m秒以下のものにするときにも、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識することが可能となる。
【0035】
しかしながら、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時において、感知器2からの「返送受信待ち」の期間にも電流制御部51を作動させると、感知器返送信号(応答信号)RPに影響が出てしまう。具体的に、感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2が応答するときには、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLは、次のようになる。すなわち、コマンドが例えば「感知器故障」である場合、自己の感知器2が故障していない旨の応答を行う場合、感知器2は、その電圧(L1端子側の電圧)を5Vにする。また、感知器2からの「返送受信待ち」の期間にも電流制御部51を作動させると、定電流117mAにより、感知器回線(L1−C線)K−1の回線抵抗RL(最大50Ω)には、117mA×50Ω=5.8Vの電圧が発生し、L1の電圧VLは、5V+5.8V=10.8Vとなる。従って、この場合、L1の電圧VLは、閾値電圧VTH(8.2V)よりも大きくなってしまうことから、コンパレータCMPは、ハイレベル「H」の感知器返送信号(応答信号)RP(自己の感知器2が故障している旨の応答)を出力してしまう。このように、感知器2からの「返送受信待ち」の期間にも電流制御部51を作動させると、図13に示すように、本来、閾値電圧VTH(8.2V)よりも小さくなるべきL1の電圧VL(自己の感知器2が故障していない旨の応答の電圧VL)が閾値電圧VTH(8.2V)よりも大きくなって、受信機11側に自己の感知器2が故障している旨の応答として返送されてしまう不具合が生じる。
【0036】
図14(a)、(b)、(c)、(d)、(e)には、感知器監視部42が図11に示す構成となっており、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時に電流制御部51を作動させるようにするときの、伝送モード信号MD、伝送信号TM、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VL、電流制御信号CCTL、感知器返送信号(応答信号)RPのタイムチャートが示されている。図14(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の例では、図14(d)の電流制御信号CCTLからわかるように、感知器2からの「返送受信待ち」の期間にも電流制御部51を作動させている(電流制御信号CCTLをハイレベル「H」にしている)。これにより、図14(c)に示すように、自己の感知器2が故障していない旨の応答Yの電圧レベルが閾値電圧VTH(8.2V)よりも小さくならなくなり(落ちきらなくなり)、図14(e)に示すように、誤った感知器返送信号(応答信号)RPが受信機11側に返送されてしまう。
【0037】
このような不具合が生じるのを防止するため、本発明の第2の形態では、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器(CRE)が接続され、感知器回線(L1−C線)K−1に、受信機11からの伝送信号TMに対して応答可能な感知器2が接続されているときに、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時において前記伝送信号TMの波形の立ち上がり時に、電流制御部51を作動させ、感知器応答時には、電流制御部51を作動させないようにしている。
【0038】
図15(a)、(b)、(c)、(d)、(e)には、感知器監視部42が図11に示す構成となっており、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時において前記伝送信号TMの波形の立ち上がり時に、電流制御部51を作動させ、感知器応答時には、電流制御部51を作動させないようにするときの、伝送モード信号MD、伝送信号TM、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VL、電流制御信号CCTL、感知器返送信号(応答信号)RPのタイムチャートが示されている。図15(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の例では、図15(d)の電流制御信号CCTLからわかるように(図14(d)と比べればわかるように)、感知器2からの「返送受信待ち」の期間には電流制御部51を作動させないようにしている(電流制御信号CCTLをロウレベル「L」にしている)。これにより、定電流117mAによる感知器回線(L1−C線)K−1の回線抵抗RL(最大50Ω)間の電圧(117mA×50Ω=5.8Vの電圧)の発生がなくなることから、図15(c)に示すように、自己の感知器2が故障していない旨の応答Yの電圧レベルが閾値電圧VTH(8.2V)よりも小さくなり、図15(e)に示すように、正しい感知器返送信号(応答信号)RPが受信機11側に返送することができる。
【0039】
図16には、このときの感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLの波形が示されている。図16を図13と比べれば明らかなように、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時において前記伝送信号TMの波形の立ち上がり時に、電流制御部51を作動させ、感知器応答時には、電流制御部51を作動させないようにすることにより、伝送信号がなまるのを低減し、感知器側において伝送信号を認識可能にするときにも、感知器返送信号(応答信号)への影響を低減し、受信機側において、感知器返送信号(応答信号)を認識することが可能となる。
【0040】
図17には、受信機11から感知器回線(L1−C線)K−1に接続されている感知器2への伝送信号TMの送信時において前記伝送信号TMの波形の立ち上がり時に、電流制御部51を作動させ、感知器応答時には、電流制御部51を作動させないようにする場合において、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている基本的には1m秒を単位とした長さの伝送信号の通信の所要時間が概略的に(図17では便宜上、伝送信号が正論理で)示されている。既存受信機の制約により、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号の通信は、例えば400m秒以内で終了する仕様となっていることから、送信基本フォーマット部と返送要求部とから構成されている伝送信号を上記のように基本的には1m秒を単位とした長さにする構成は、既存受信機の制約による仕様を満たしている。
【0041】
なお、上述した説明では、伝送信号が負論理であるとしたが、伝送信号が正論理である場合にも、同様にして本発明を適用できる。
【0042】
また、上述の例では、コマンドが「感知器故障」である場合について説明したが、コマンドが「感知器故障」以外のもの(例えば「感知器脱落」や、どの感知器が発報したかを検知する「感知器発報」など)である場合についても、同様にして本発明を適用できる。
【0043】
また、上述の例では、感知器回線(L1−C線)K−1間の電圧(L1の電圧)VLが、0〜12Vの電圧となるようにしているが、12Vに限らず、任意の電圧(例えば15Vなど)に設定することもできる。
【0044】
また、上述の例では、電流制御部51は、抵抗R3(2.2kΩ)と、トランジスタQ1と、トランジスタQ2と、抵抗R4(5.1Ω)とにより構成され、感知器回線(L1−C線)K−1に定電流117mAを流すようになっているが、感知器回線(L1−C線)K−1に所定の定電流(117mAに限らず、終端器(CRE)のコンデンサを迅速に充電可能な電流)を流すことができるものであれば、任意の構成のものを用いることもできる。
【0045】
また、上述した本発明の第1、第2の形態では、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器(CRE)が接続されているときに、電流制御部51を作動させるとしたが、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3として抵抗だけの終端器が接続されているときにも、コンデンサを含む終端器(CRE)が接続されている場合と同様にして、電流制御部51を作動させることもできる。但し、好適には、感知器回線(L1−C線)K−1の終端器3としてコンデンサを含む終端器(CRE)が接続されているときにのみ、電流制御部51を作動させるのが好ましい。
【0046】
また、上述した本発明の第1、第2の形態の受信機において、受信機から感知器回線に接続されている感知器へ伝送信号を送信するか否かを、前記感知器回線毎に設定可能にすることもできる。すなわち、受信機の伝送仕様と異なる伝送仕様をもつ感知器(例えば他メーカー品)が、ある感知器回線に接続される場合があり、このような状態でこの感知器回線に接続されている上記感知器(すなわち、受信機の伝送仕様と異なる伝送仕様をもつ感知器(例えば他メーカー品))に受信機から伝送信号を送信すると、感知器誤報等や受信機の火災検出に影響が出る可能性がある。そこで、受信機から感知器回線に接続されている感知器へ伝送信号を送信するか否かを、前記感知器回線毎に設定可能にすることで、接続感知器に応じて必要な回線のみ自動試験などを行うことができる。また、リニューアル工事による受信機交換時の感知器交換は、自動試験する回線のみでよいので、感知器交換は必要最低限で済む。
【0047】
また、上述の例では、感知器が火災感知器であり、受信機が火災受信機であり、監視制御システムが火災検出を目的としたものである(防災システムである)として説明したが、感知器が例えば防犯用感知器であり、受信機が防犯用受信機であり、監視制御システムが防犯を目的としたものである(防犯システムである)場合にも、本発明を適用できる。
【0048】
また、上述の例では、地区回線が、感知器の接続されている感知器回線であるとしたが、本発明は、終端器が接続されている回線であれば、感知器回線に限らず、任意の回線、システムなどにも適用可能である。例えば、中継器内の終端器が接続されているシステムなどにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、防災システムや防犯システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
2 感知器
3 終端器
11 受信機
12 地区回路
13 防排煙回路
14 地区音響回路
15 移信回路
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 EEPROM
27 操作部
28 表示部
29 警報音響部
31、32、33、34 I/O部
41 火災検出部
42 感知器監視部
43 断線検出部
51 電流制御部
K−1〜K−n 地区回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知器回線(地区回線)に接続されている感知器を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器監視部には、前記感知器回線にコンデンサを含む終端器が接続されているときに前記終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線に流す電流制御手段が設けられており、前記受信機から前記感知器回線に接続されている感知器への伝送信号の送信時に前記電流制御手段を作動させることを特徴とする受信機。
【請求項2】
感知器回線(地区回線)に接続されている感知器を監視制御する感知器監視部を備えた受信機であって、前記感知器監視部には、前記感知器回線にコンデンサを含む終端器が接続されているときに前記終端器のコンデンサを充電するための電流を前記感知器回線に流す電流制御手段が設けられており、前記感知器回線に、前記受信機からの伝送信号に対して応答可能な感知器が接続されているときに、前記受信機から前記感知器回線に接続されている感知器への伝送信号の送信時において前記伝送信号の波形の立ち上がり時に、前記電流制御手段を作動させ、感知器応答時には、前記電流制御手段を作動させないことを特徴とする受信機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の受信機において、受信機から感知器回線に接続されている感知器へ伝送信号を送信するか否かを、前記感知器回線毎に設定可能となっていることを特徴とする受信機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の受信機を備えていることを特徴とする監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−25688(P2013−25688A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162152(P2011−162152)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000111074)ニッタン株式会社 (93)
【Fターム(参考)】