説明

口の健康のための代謝産物およびその使用

本発明は、歯周疾患の診断、歯周疾患に関する療法剤に対する応答者および、または非応答者の識別、試験化合物の歯周疾患を予防する有効性を試験するための方法のために歯周疾患または健康な口の状態と相関する代謝産物プロフィールを用いる様々な方法を提供する。本発明は、対照歯磨組成物と比較して代謝産物レベルのより大きな変化を引き起こす有効量の代謝産物療法剤を含む歯磨組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周疾患における代謝産物の差次的発現プロフィールおよびこれらの差次的発現プロフィールに基づいて歯周疾患を診断する方法に関する。本発明はさらに、その差次的発現プロフィールに基づいて歯周疾患に関する療法剤の有効性を予測および/または評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周疾患はヒトにおける最も一般的な感染症の1つである(Pihlstrom et al., 2005)。口の組織を冒すことに加えて、歯周疾患は様々な全身性疾患とも関係してきた(Seymour et al., 2007)。その疾患の軽度型である歯肉炎は宿主組織の炎症および歯肉縁の周辺の細菌性プラークの蓄積により特性付けられる。向上した口腔衛生の実行による歯肉炎の処置は疾患の状態をかなり逆行させることができる。しかし、未処置のままにしておくと、歯肉炎はより重篤かつ不可逆的な歯周炎につながる可能性があり、それは歯の周囲の歯槽骨の進行性の喪失を含み、もし未処置のままにしておくと、ゆるみ(loosening)およびそれに続く歯の喪失につながる可能性がある。
【0003】
歯周疾患における宿主組織および細菌の間の複雑な相互作用の大部分は、付着上皮および歯肉溝上皮において起こる。細菌により放出される多くの物質、例えばエンドトキシン、プロテアーゼ、リパーゼおよびシアリダーゼは宿主組織の損傷において重要な役割を果たしていることが示されている(Smalley et al., 1994)。しかし、その疾患が細菌に対する宿主の炎症性応答によっても仲介されていることを示唆する証拠がますます増えている(Van Dyke and Serhan, 2003)。様々な化学的シグナルの活性化の下、宿主組織は細菌と戦うためのある範囲の複雑な応答を編成する。多形核白血球は増大するレベルの活性酸素種(ROS)およびタンパク質分解酵素を産生する。この応答の活動過剰は宿主組織の損傷に意図せず寄与する可能性がある。
【0004】
上皮および細菌性プラークの接触面に、血漿由来の歯肉溝滲出液(GCF)がある。GCFは非侵襲的に集めることができ、部位特異的であるため、それは宿主−細菌相互作用を研究するために理想的な基質(matrix)である(Embery and Waddington, 1994)。様々な標的化された生化学的分析を用いることで、次のものを含む多くの歯周疾患に関する可能性のあるGCFマーカーが提案されてきた:宿主および細菌の酵素、エンドトキシン、核酸、タンパク質、炭水化物および脂質、コラーゲンおよび骨からの分解産物、免疫グロブリン、サイトカインならびにホルモン(Embery and Waddington, 1994; Prapulla et al., 2007; Karthikeyan and Pradeep, 2007; Akalin et al., 2007; Pradeep et al., 2007)。しかし、公表された情報の豊富さにもかかわらず、宿主−細菌相互作用の広い範囲および細胞の生化学的代謝に基づく疾患の進行の機構的詳細はまだ明確さを欠いている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pihlstrom et al., 2005
【非特許文献2】Seymour et al., 2007
【非特許文献3】Smalley et al., 1994
【非特許文献4】Van Dyke and Serhan, 2003
【非特許文献5】Embery and Waddington, 1994
【非特許文献6】Prapulla et al., 2007
【非特許文献7】Karthikeyan and Pradeep, 2007
【非特許文献8】Akalin et al., 2007
【非特許文献9】Pradeep et al., 2007
【発明の概要】
【0006】
本発明は、対象において口の健康を診断する方法であって、その対象から歯肉溝滲出液試料を集め、その歯肉溝滲出液試料中の1種類以上の代謝産物のレベルを検出する方法を提供する。対象は検出された代謝産物のレベルに基づいて歯周疾患または健康な口の状態を有すると診断される。
【0007】
本発明は、対象において口の健康を診断するための方法であって、その対象から歯肉溝滲出液試料を集め、その歯肉溝滲出液試料中の1種類以上の代謝産物のレベルを検出する方法も開示する。その歯肉溝滲出液試料中の検出された代謝産物のレベルを代謝産物の参照レベルと比較し、それにより差次的レベルを生成する。その代謝産物の参照レベルは次のものの1種類以上に対応する:歯周の参照レベルまたは健康な参照レベル。1態様において、検出された代謝産物および歯周の参照レベルの間の差次的レベルは歯周疾患と相関する。別の態様において、検出された代謝産物および健康な参照レベルの間の差次的レベルは健康な口の状態と相関する。
【0008】
そのような態様において、その検出される代謝産物は以下のものから選択されてよい:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子。
【0009】
本発明は、標準的なケアプロトコルに従う際の歯周疾患のための療法剤を用いることに対する対象の応答、例えば応答者または非応答者を予測するための方法も提供する。試験対象から集めた歯肉溝滲出液試料の代謝産物プロフィールを生成し、ここでその代謝産物プロフィールは代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルを含む。その試験対象の代謝産物プロフィールを参照代謝産物プロフィールと比較する。その参照代謝産物プロフィールには、次のものの1種類以上が含まれていてよい:参照応答者代謝産物プロフィールおよび参照非応答者代謝産物プロフィール。その比較の結果を、その試験対象を療法剤に対する応答者または非応答者として識別するために用いることができる。その参照代謝産物プロフィールは、歯周疾患の退行または歯周疾患の予防を有する、標準的な療法剤で利益を得た対象から得ることができる。この方法は、試験対象が試験療法剤(単数または複数)の臨床試験に参加するのに適した対象であるかどうかを決定するために用いることができるであろう。
【0010】
本発明は、標準的な非ケア(non−care)プロトコルに従う際の歯周疾患の発現に対する試験対象の応答、例えば応答者または非応答者を予測するための方法にも関係する。その対象から集めた歯肉溝滲出液試料の代謝産物プロフィールを生成し、ここでその代謝産物プロフィールは代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルを含む。その試験対象の代謝産物プロフィールを参照代謝産物プロフィールと比較し、ここでその参照代謝産物プロフィールは参照応答者の対象および参照非応答者の対象から生成される。その参照代謝産物プロフィールは参照代謝産物のアイデンティティおよび参照代謝産物のレベルを含む。その比較の結果を、その試験対象を歯周疾患の発現に対する応答者または非応答者として識別するために用いることができる。
【0011】
本発明はさらに、使用者にその使用者の口の健康状態の指標を提供することができる口腔ケア試験キットを提供する。そのキットは1種類以上の歯肉炎溝滲出液(gingivitis crevicular fluid)収集細片(strips)およびその対象の口の健康状態の診断法を含んでいてよい。その歯肉炎溝滲出液収集細片は、歯肉溝滲出液試料を集めるために、および歯肉溝滲出液試料中に含まれる代謝産物の回収のために用いることができる。対象の口の健康の診断は、この発明の方法に基づいていてよい。
【0012】
本発明はさらに、歯磨組成物を提供する。その組成物は、有効量の代謝産物療法剤を含んでいてよい。その療法剤は少なくとも1ヶ月の期間にわたって代謝産物レベルの変化をもたらし、ここでその代謝産物レベルの変化は対照歯磨組成物により影響を及ぼされる代謝産物参照レベルの対応する変化よりも大きい。
【0013】
さらに別の観点に従って、本発明は代謝産物を示す歯磨剤(metabolite indicating dentifrice)およびそれの使用の方法を提供し、ここでその歯磨剤は代謝産物を示す組成物を含み、それは歯周疾患と関係する代謝産物および代謝産物レベルへの曝露の際に使用者に識別可能な指標を提供する。1態様において、その使用者に識別可能な指標は歯磨剤の色の変化に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
全体において用いられるように、範囲はその範囲内にあるそれぞれおよび全ての値を記述するための略記として用いられる。範囲内のあらゆる値は、範囲の末端として選択することができる。加えて、本明細書において引用される全ての参考文献をそのまま本明細書に援用する。
【0015】
定義:
本明細書で用いられる用語である、代謝産物の“差次的レベル”は、あらゆる増大した、または減少したレベルを含んでいてよい。1態様において、差次的レベルは少なくとも5%;少なくとも10%;少なくとも20%;少なくとも30%;少なくとも40%;少なくとも50%;少なくとも60%;少なくとも70%;少なくとも80%;少なくとも90%;少なくとも100%;少なくとも110%;少なくとも120%;少なくとも130%;少なくとも140%;少なくとも150%;またはより多く増大したレベルを意味する。別の態様において、差次的レベルは少なくとも5%;少なくとも10%;少なくとも20%;少なくとも30%;少なくとも40%;少なくとも50%;少なくとも60%;少なくとも70%;少なくとも80%;少なくとも90%;少なくとも100%(すなわちその代謝産物は存在しない)減少したレベルを意味する。代謝産物は、統計学的に有意である差次的レベルで発現している(すなわち、StudentのT検定、WelchのT検定またはWilcoxonの順位和検定のいずれかを用いて決定された、0.05未満のp値および/または0.10未満のq値)。
【0016】
本明細書で用いられる“歯肉溝滲出液”は、支持線維組織を有し、顎の歯を支える境界を覆う粘膜である歯茎を含む歯肉の周辺で見つかる流体を意味する。
本明細書で用いられる“歯肉炎”は、歯茎および歯の間の小さな間隙に蓄積する細菌性のプラークにより、ならびに歯の上に形成される歯石により引き起こされる歯茎の刺激を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる“健康な口の状態”は、歯肉炎および/または歯周疾患が存在しないことを意味する。
本明細書で用いられる用語である、1種類以上の代謝産物の“レベル”は、試料中の代謝産物の絶対的または相対的な量または濃度を意味する。
【0018】
本明細書で用いられる用語“代謝産物”は、代謝により生成される、または個々の代謝プロセスに必要な、もしくはそれに参加しているあらゆる物質を意味する。その用語は大きな高分子、例えば大きなタンパク質(例えば2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、または10,000を超える分子量を有するタンパク質);大きな核酸(例えば2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、または10,000を超える分子量を有する核酸);または大きな多糖類(例えば2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、または10,000を超える分子量を有する多糖類)を含まない。代謝産物という用語には、シグナル伝達分子および食物に由来するエネルギーを利用可能な形に変換する化学反応における中間体が含まれ、それには次のものが含まれるがそれらに限定されない:糖類、脂肪酸類、アミノ酸類、ヌクレオチド類、抗酸化物質、ビタミン類、補因子、脂質類、細胞のプロセスの間に形成される中間体、および他の小分子。
【0019】
本明細書で用いられる“歯周疾患”は、歯肉、または歯茎組織;セメント質、または歯の根の外側の層;歯槽骨、またはその中に歯が据えつけられている(anchored)骨性窩(bony sockets);ならびにセメント質および歯槽骨の間を通っている結合組織線維である歯周靭帯を含む歯周組織の炎症を意味し、歯肉炎を含む。
【0020】
本明細書で用いられる用語である、代謝産物の“参照レベル”は、特定の疾患状態、口の状態、表現型、またはそれらの欠如、および疾患状態、表現型、またはそれらの欠如の組み合わせを示す代謝産物のレベルを意味する。1態様において、代謝産物の歯周の参照レベルは、対象における歯周疾患の陽性の診断結果を示す代謝産物のレベルを意味する。別の態様において、代謝産物の“健康な参照レベル”は、対象における健康な口の状態の陽性の診断結果を示す代謝産物のレベルを意味する。
【0021】
1態様において、代謝産物の“参照レベル”は、次のものの1種類以上であってよい:その代謝産物の絶対的または相対的な量または濃度;その代謝産物の存在または不在;その代謝産物の量または濃度の範囲;その代謝産物の最小および/または最大の量または濃度;その代謝産物の平均の量または濃度;および/またはその代謝産物の量または濃度の中央値。別の態様において、代謝産物の組み合わせに関する“参照レベル”は、2種類以上の代謝産物の絶対的または相対的な量または濃度の互いに関する比率であってもよい。特定の疾患状態、表現型、またはそれらの欠如に関する代謝産物の適切な陽性および陰性の参照レベルは、1人以上の適切な対象において望まれる代謝産物のレベルを測定することにより決定されてよく、そのような参照レベルは特定の対象の集団に合わせてよい(例えば、参照レベルは、特定の年齢の対象からの試料中の代謝産物のレベルと特定の年齢のグループにおける特定の疾患状態、表現型、またはそれらの欠如に関する参照レベルの間で比較をすることができるように年齢を合わせてよい)。別の態様において、その参照レベルは生物学的試料中の代謝産物のレベルを測定するために用いられる特定の技法(例えばLC−MS、GC−MS等)に合わせることができ、ここでその代謝産物のレベルは用いられる特定の技法に基づいて異なっていてよい。
【0022】
別のそのような態様において、“参照代謝産物”は、次のものから選択される少なくとも1種類の化合物を含んでいてよい:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子。別の態様において、その“参照レベル”は、表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上を含んでいてよい。さらに別の態様において、その“参照レベル”は、次の化合物の1種類以上を含んでいてよい:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、N−アセチルノイラミン酸、尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。さらになお別の態様において、その“参照代謝産物”は表5においてリストされている未知の化合物の1種類以上を含んでいてよい。
【0023】
本明細書で用いられる用語“試料”または“生物学的試料”は、対象から分離された生物学的物質を意味する。その生物学的試料は、望まれる代謝産物を検出するのに適したあらゆる生物学的物質を含んでいてよく、その対象からの細胞性および/または非細胞性物質を含んでいてよい。1態様において、その試料はあらゆる適切な歯肉溝滲出液(GCF)から分離することができる。
【0024】
本明細書は、歯周疾患における代謝産物の異なる発現プロフィール、およびこれらの差次的発現プロフィールに基づく方法に関する。
I.差次的発現プロフィール
A.代謝産物
本明細書で記述される歯周疾患の代謝産物は、メタボロミクスプロファイリングの技法を用いて発見された。そのようなメタボロミクスプロファイリングの技法は、下記で述べる実施例において、ならびに米国特許第7,005,255号および米国特許出願一連番号11/357,732、10/695,265(公開番号2005/0014132)、11/301,077(公開番号2006/0134676)、11/301,078(公開番号2006/0134677)、11/301,079(公開番号2006/0134678)、および11/405,033においてより詳細に記述されており、その内容全体を本明細書に援用する。
【0025】
表1〜5は、健康な口の状態または歯周疾患と相関する一連の代謝産物を表にしている。
その代謝産物および代謝産物では無い化合物の一部のアイデンティティはこの時点では未知であるが、その“名前の無い”化合物はそのような同定を可能にする分析的技法により十分に特性付けられているため、そのようなアイデンティティは、対象からの生物学的試料中の代謝産物または代謝産物では無い化合物の同定には必要では無い。全てのそのような“名前の無い”化合物の分析的特性付けを表5においてリストする。そのような“名前の無い”代謝産物および代謝産物では無い化合物は、本明細書では“Dental”の後に特定の化合物番号を付ける命名法を用いて指定する。表5は、健康な口の状態または歯周疾患と相関する未知の代謝産物のグループをリストしている。
【0026】
B.発現プロフィール
概して、歯周疾患を有すると診断されたヒトの対象から、および健康なヒトの対象からの生物学的試料に関して代謝産物プロフィールを決定する。歯周疾患の対象からの生物学的試料に関する発現プロフィールを、健康な対象から集められた生物学的試料に関する発現プロフィールと比較する。統計学的に有意であるレベルで差次的に発現している分子または化合物を含め、疾患では無い試料と比較した場合に歯周疾患の試料の発現プロフィールにおいて差次的に発現している分子または化合物を同定する。
【0027】
実験の設計、代謝産物発現プロファイリングのプラットフォーム、統計学的方法および分析、ならびに結果を実施例においてさらに詳細に論じる。
II.代謝産物プロフィールに基づく方法
一部の態様において、本発明は、以下のものを含むがそれらに限定されない、歯周疾患に関する代謝産物プロフィールに基づく分析および診断法に関する:歯周疾患の診断のための方法、歯周疾患の進行/退行を監視する方法、歯周疾患を処置するための組成物の有効性を評価する方法、歯周疾患を処置する方法、および同様のもの。1態様において、その代謝産物プロフィールは試料の歯肉溝滲出液から生成されてよい。
【0028】
A.口の健康または歯周疾患の診断のための方法
本発明の1観点は、歯周疾患の発現の診断に関する。1態様において、その診断は疾患の発現の臨床徴候の出現の前になされてよい。1態様において、本発明は、対象において口の健康を診断するための方法であって、その対象から歯肉溝滲出液試料を集め、その歯肉溝滲出液試料中の1種類以上の代謝産物のレベルを検出する方法を提供する。その対象は、検出された代謝産物(単数または複数)のレベルに基づいて歯周疾患または健康な口の状態を有すると診断される。1つのそのような態様において、その検出される代謝産物は以下のものから選択される少なくとも1種類の化合物である:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子。別の態様において、その検出される代謝産物は表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上を含んでいてよい。1態様において、歯周疾患の診断は次の化合物の1種類以上の上方制御に対応する:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸。別の態様において、歯周疾患の診断は次の化合物の1種類以上の下方制御に対応する:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。
【0029】
別の態様において、本発明は、対象において口の健康を診断するための方法であって、その対象から歯肉溝滲出液試料を集め、その歯肉溝滲出液試料中の1種類以上の代謝産物のレベルを検出する方法を開示する。その歯肉溝滲出液試料中の検出された代謝産物のレベルを代謝産物の参照レベルと比較し、ここでその代謝産物の参照レベルは次のものの1種類以上と相関する:歯周疾患または健康な口の状態。1つのそのような態様において、その検出された代謝産物のレベルを次のもの:歯周の参照レベル;および健康な参照レベルの1種類以上と比較し、その対象が歯周疾患を有するか、または健康な口の状態を有するかを診断するのを助ける、またはそれを診断する。1態様において、その1種類以上の代謝産物の検出されたレベルを単純な比較(例えば人手による比較)を用いて比較してよい。別の態様において、その1種類以上の代謝産物の検出されたレベルを1種類以上の統計学的分析(例えばt検定、Welchのt検定またはWilcoxonの順位和検定、ランダムフォレスト)を用いて比較することもできる。
【0030】
1つのそのような態様において、その試料は対象の口腔から得られた歯肉溝滲出液であることができる。1つのそのような態様において、その検出される代謝産物は次のものから選択される化合物であってよい:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子。別の態様において、その代謝産物は表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上を含んでいてよい。
【0031】
別の態様において、その比較の段階は、その検出された代謝産物のレベルを歯周の参照レベルまたは健康な参照レベルと比較することを含んでいてよい。1つのそのような態様において、歯周の参照レベルに対応する試料中の1種類以上の代謝産物の検出されたレベルは、次のものの1種類以上であってよい:歯周の参照レベルと同じである検出されたレベル;歯周の参照レベルと実質的に同じである検出されたレベル;歯周の参照レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である検出されたレベル;および/または、歯周の参照レベルの範囲内である検出されたレベル。そのような検出されたレベルは、その対象における歯周疾患の診断結果を示している可能性がある。別のそのような態様において、健康な参照レベルに対応する試料中の1種類以上の代謝産物の検出されたレベルは、次のものの1種類以上であってよい:健康な参照レベルと同じである検出されたレベル;健康な参照レベルと実質的に同じである検出されたレベル;健康な参照レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である検出されたレベル;および/または、健康な参照レベルの範囲内である検出されたレベル。そのようなレベルは、その対象における健康な口の状態の診断結果を示している可能性がある。
【0032】
1態様において、試験対象が歯周の参照レベルと比較して(特に統計学的に有意であるレベルで)差次的に発現している1種類以上の代謝産物の検出されたレベルは、対象における歯周疾患の診断結果を示している可能性がある。別の態様において、試験対象が健康な参照レベルと比較して(特に統計学的に有意であるレベルで)差次的に発現している1種類以上の代謝産物の検出されたレベルは、対象における健康な口の状態の診断結果を示している可能性がある。
【0033】
1態様において、検出される代謝産物の組み合わせのレベルの決定は:歯周疾患または健康な口の状態の診断においてより大きな感度および特異性を可能にする;歯周疾患または健康な口の状態の診断を助ける;ならびに、類似の、または重複する代謝産物を有する可能性のある歯周疾患および健康な口の状態の間のよりよい識別を可能にすることができる。1態様において、生物学的試料中の特定の代謝産物(および代謝産物では無い化合物)の検出されるレベルの比率は:歯周疾患または健康な口の状態の診断においてより大きな感度および特異性を可能にする;歯周の口の状態の診断を助ける;ならびに、類似の、または重複する代謝産物を有する可能性のある健康な口の状態、歯肉炎の口の状態または歯周疾患の、互いからの、および他の疾患からのよりよい識別を可能にすることができる。
【0034】
B.臨床試験に関する対象の識別のための方法
本発明は、歯周疾患に関して療法剤を用いることまたは歯周疾患に関して療法剤を用いないことに対する対象の応答、例えば応答者または非応答者を予測するための方法にも関係する。
【0035】
本明細書で用いられる“応答者”は、次のことを示す対象を意味する:歯周疾患と相関する代謝産物レベルの減少;歯周疾患と相関する代謝産物レベルの増大;健康な口の状態と相関する代謝産物レベルの減少;および健康な口の状態と相関する代謝産物レベルの増大。
【0036】
本明細書で用いられる“非応答者”は、歯周疾患または健康な口の状態と相関する代謝産物レベルの変化を示さない対象を意味する。
1.療法剤に対する応答者または非応答者を識別するための方法
本発明の1観点は、対象が歯周疾患の処置のための試験療法剤(単数または複数)の臨床試験に参加するのに適しているかどうかを決定するために用いることができる方法に関する。試験療法剤に関する臨床試験の過程の間に、一部の対象はその試験の期間の間試験プロトコルに従う際にその試験療法剤への応答の証拠を示さない可能性があり、これがすなわち非応答者である。例えば、その対象の口の試験は症状、例えば:腫大した、赤い、または出血している歯茎;後退している歯肉線;緩んだ、または分離した歯、口臭等の変化を示さない可能性がある。非応答者の対象は、その非応答者の対象のその試験への参加からはたとえ得られるとしても限られた情報しか得られない可能性があるため、臨床試験における望ましい参加者では無い。臨床試験の開始時に、または臨床試験の初期段階の間に非応答者を識別し、その非応答者の対象を試験対象のグループから排除するのが好都合であろう。
【0037】
下記で記述する本発明の方法は、療法剤に対する応答者の対象および非応答者の対象の識別を提供する。1態様において、その方法は、試験プロトコルに従う際に試験対象から集められた歯肉溝滲出液試料の代謝産物プロフィールを生成し、その試験対象の代謝産物プロフィールを参照代謝産物プロフィールと比較することを含み、ここでその代謝産物プロフィールには代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルが含まれる。その参照代謝産物プロフィールは、次のものの1種類以上を含んでいてよい:参照応答者代謝産物プロフィールおよび参照非応答者代謝産物プロフィール。その比較の結果を、その試験対象を療法剤に対する応答者または非応答者として識別するために用いることができる。1態様において、その比較は単純な比較(例えば人手による比較)を用いてなされてよい。別の態様において、その比較は1種類以上の統計学的分析(例えばt検定、WelchのT検定、Wilcoxonの順位和検定、ランダムフォレスト)を用いてなされてよい。
【0038】
1つのそのような態様において、参照応答者代謝産物プロフィールは、標準的なケアプロトコルに従ってその標準的なケアプロトコルの日数の間標準的な療法剤を含む歯磨剤を用いた際に歯周疾患の退行、または歯周疾患の予防を示した1人以上の参照応答者の対象の歯肉溝滲出液試料から生成することができる。別の態様において、その参照非応答者代謝産物プロフィールは、標準的なケアプロトコルに従ってその標準的なケアプロトコルの日数の間標準的な療法剤を含む歯磨剤を用いた際に歯周疾患の変化を示さなかった1人以上の参照非応答者の対象の歯肉溝滲出液試料から生成することができる。その標準的なケアプロトコルは、ブラッシングの期間、1日あたりの回数、日数、他の口腔ケア製品の使用等の指示を含んでいてよい。
【0039】
その参照応答者の対象および/または参照非応答者の対象は、次の内の1種類以上であってよい:歯科の専門家による臨床評価に基づいて健康な口の状態を有すると識別された参照応答者の対象および/または参照非応答者の対象;歯科の専門家による臨床評価に基づいて歯肉炎を有すると識別された参照応答者の対象および/または参照非応答者の対象;ならびに、歯科の専門家による臨床評価に基づいて歯周疾患を有すると識別された参照応答者の対象および/または参照非応答者の対象。
【0040】
1態様において、その標準的な療法剤は、参照対象に関して次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御する:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸。別の態様において、その標準的な療法剤は、次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御する:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。さらに別の態様において、その標準的な療法剤は、表5においてリストされている未知のものの少なくとも1つのメンバーを上方制御または下方制御する。
【0041】
1態様において、その試験対象の代謝産物プロフィールは、標準的なケアプロトコルを開始する前に単一の収集工程でその試験対象から集めることができる1個以上の歯肉溝滲出液試料から生成することができる。別の態様において、その試験対象の代謝産物プロフィールは、その試験対象が所定の日数の間標準的なケアプロトコルに従った後に単一の収集工程でその試験対象から得ることができる1個以上の歯肉溝滲出液試料から集めることができる。1態様において、その試験対象の代謝産物プロフィールは多数の収集工程でその試験対象から集めることができる1個以上の歯肉溝滲出液試料から決定することができ、それぞれの収集工程はその試験対象が所定の日数の間標準的なケアプロトコルに従った後の異なる日において行われる。
【0042】
1つのそのような態様において、その試験対象の代謝産物のアイデンティティは次のものから選択される化合物に対応している可能性がある:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子。別の態様において、その試験対象の代謝産物のアイデンティティは表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上を含んでいてよい。
【0043】
別の態様において、その比較の段階は、その試験対象の代謝産物のレベルを参照応答者のレベルおよび参照非応答者のレベルと比較することを含んでいてよい。1つのそのような態様において、参照応答者の代謝産物レベルに対応している可能性のあるその試験対象の代謝産物レベルは、次のものの1種類以上である可能性がある:参照応答者の代謝産物レベルと同じである代謝産物レベル;参照応答者の代謝産物レベルと実質的に同じである代謝産物レベル;参照応答者の代謝産物レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である代謝産物レベル;および/または、参照応答者の代謝産物レベルの範囲内である代謝産物レベル。そのような代謝産物レベルは、その試験対象が療法剤に対する応答者であるとの識別を示している可能性がある。別のそのような態様において、参照非応答者の代謝産物レベルに対応している可能性のあるその試験対象の代謝産物レベルは、次のものの1種類以上である可能性がある:参照非応答者の代謝産物レベルと同じである代謝産物レベル;参照非応答者の代謝産物レベルと実質的に同じである代謝産物レベル;参照非応答者の代謝産物レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である代謝産物レベル;および/または、参照非応答者の代謝産物レベルの範囲内である代謝産物レベル。そのようなレベルは、その試験対象が療法剤に対する非応答者であるとの識別の診断結果を示している可能性がある。
【0044】
1態様において、その試験対象の、応答者の参照レベルと比較して(特に統計学的に有意であるレベルで)差次的に発現しているその1種類以上の代謝産物の代謝産物レベルは、対象が療法剤に対する応答者であるとの識別を示している可能性がある。別の態様において、その試験対象の、非応答者の参照レベルと比較して(特に統計学的に有意であるレベルで)差次的に発現しているその1種類以上の代謝産物の代謝産物レベルは、対象が療法剤に対する非応答者であるとの識別を示している可能性がある。
【0045】
2.歯周疾患の発現に対する応答者または非応答者を同定するための方法
1観点に従って、本発明は、対象が歯周疾患の処置のための試験療法剤(単数または複数)の臨床試験に参加するのに適しているかどうかを決定するために用いることができる方法を提供し、ここでその対象は歯周疾患の発現の影響を受けやすい。一部の場合において、試験療法剤の臨床試験はまず対象の口腔中の歯の1個以上の部分において歯肉炎を生じさせることにより実施されてよい。これは、歯の1個以上の部分の上に、歯の遮蔽された部分(単数または複数)がいかなる形の口腔衛生も受けないように遮蔽物を設置する非ケアプロトコルを用いることにより成し遂げることができる。歯肉炎の発現の後、その対象は歯肉炎を処置するためのケアプロトコルに従って試験療法剤を用いることができる。一部の場合において、対象は非ケアプロトコルの期間の間歯肉炎の証拠を示さない可能性がある。
【0046】
本発明の1態様において、方法は、標準的な非ケアプロトコルに従っている間に試験対象から集められた歯肉溝滲出液試料の代謝産物プロフィールを生成し、その試験対象の代謝産物プロフィールを参照代謝産物プロフィールと比較することを含み、ここでその代謝産物プロフィールには代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルが含まれる。その参照代謝産物プロフィールは、次のものの1種類以上を含んでいてよい:参照応答者代謝産物プロフィールおよび参照非応答者代謝産物プロフィール。その比較の結果を、その試験対象を歯周疾患の発現に対する応答者または非応答者として識別するために用いることができる。1態様において、その比較は単純な比較(例えば人手による比較)を用いてなされてよい。別の態様において、その比較は1種類以上の統計学的分析(例えばt検定、WelchのT検定、Wilcoxonの順位和検定、ランダムフォレスト)を用いてなされてよい。
【0047】
1つのそのような態様において、参照応答者代謝産物プロフィールは、そのプロトコルの期間の間非ケアの標準的なプロトコルに従って歯周疾患を発現した1人以上の参照応答者の対象の歯肉溝滲出液試料から得ることができる。別のそのような態様において、その参照非応答者代謝産物プロフィールは、標準的な非ケアプロトコルの期間の間に歯周疾患を発現しなかった1人以上の参照非応答者の対象の歯肉溝滲出液試料から得ることができる。その標準的な非口腔ケアプロトコルは、次の内の1種類以上を含んでいてよい:所定の日数ブラッシングを行わないこと、歯の1個以上の部分の上に遮蔽物を装着し、一方で歯の他の部分に関してブラッシングの期間、1日あたりのブラッシングの回数、日数、および機械的な口腔衛生装置の使用を記述したプロトコルに従ってケアを行うこと。
【0048】
1態様において、その標準的な非ケアプロトコルは、その参照対象に関して次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御する:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸。別の態様において、その標準的な非ケアプロトコルは、その参照対象に関して次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御する:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。さらに別の態様において、その標準的な療法剤は、表5においてリストされている未知のものの少なくとも1つのメンバーを上方制御または下方制御する。
【0049】
1態様において、その試験対象の代謝産物プロフィールは、標準的な非ケアプロトコルを開始する前に単一の収集工程でその試験対象から得ることができる1個以上の歯肉溝滲出液試料から生成することができる。別の態様において、その試験対象の代謝産物プロフィールは、その試験対象が所定の日数の間標準的な非ケアプロトコルに従った後に単一の収集工程でその試験対象から得ることができる1個以上の歯肉溝滲出液試料から生成することができる。1態様において、その試験対象の代謝産物プロフィールは複数の収集工程でその試験対象から得ることができる1個以上の歯肉溝滲出液試料から決定することができ、それぞれの収集工程はその試験対象が所定の日数の間標準的な非ケアプロトコルに従った後の異なる日において行われる。
【0050】
1つのそのような態様において、その試験対象の代謝産物のアイデンティティは次のものから選択される化合物に対応している可能性がある:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子。別の態様において、その試験対象の代謝産物のアイデンティティは表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上を含んでいてよい。
【0051】
別の態様において、その比較の段階は、その代謝産物のレベルを参照応答者のレベルおよび参照非応答者のレベルと比較することを含んでいてよい。1つのそのような態様において、参照応答者の代謝産物レベルに対応している可能性のあるその試験対象の代謝産物レベルは、次のものの1種類以上である可能性がある:参照応答者の代謝産物レベルと同じである代謝産物レベル;参照応答者の代謝産物レベルと実質的に同じである代謝産物レベル;参照応答者の代謝産物レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である代謝産物レベル;および/または、参照応答者の代謝産物レベルの範囲内である代謝産物レベル。そのような代謝産物レベルは、その試験対象が非ケアプロトコル、例えば歯肉炎および/または歯周疾患の発現に対する応答者であるとの識別を示している可能性がある。別のそのような態様において、参照非応答者の代謝産物レベルに対応している可能性のあるその試験対象の代謝産物レベルは、次のものの1種類以上である可能性がある:参照非応答者の代謝産物レベルと同じである代謝産物レベル;参照非応答者の代謝産物レベルと実質的に同じである代謝産物レベル;参照非応答者の代謝産物レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である代謝産物レベル;および/または、参照非応答者の代謝産物レベルの範囲内である代謝産物レベル。そのようなレベルは、その試験対象が非ケアプロトコルに対する非応答者であり、例えば歯肉炎および/または歯周疾患を発現しないとの識別の診断結果を示している可能性がある。
【0052】
1態様において、その試験対象が応答者の参照レベルと比較して(特に統計学的に有意であるレベルで)差次的に発現しているその1種類以上の代謝産物の代謝産物レベルは、対象が非ケアプロトコルに対する応答者であるとの識別を示している可能性がある。別の態様において、その試験対象が非応答者の参照レベルと比較して(特に統計学的に有意であるレベルで)差次的に発現しているその1種類以上の代謝産物の代謝産物レベルは、対象が非ケアプロトコルに対する非応答者であるとの識別を示している可能性がある。
【0053】
C.歯磨剤における試験化合物の効率を評価するための方法
本発明は、哺乳類において歯周疾患の発現を処置するのに有用な試験化合物の効率を決定する方法も提供する。1態様において、その方法は、試験化合物による処置の後に対象から集められた歯肉溝滲出液試料から処置後の代謝産物レベルを検出することを含む。その処置後の代謝産物レベルは、次のものの1種類以上と比較されてよい:その対象の処置前の代謝産物レベル;歯周の参照レベルおよび健康な参照レベル。1つのそのような態様において、その方法は、その試験化合物が次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御するかどうかを決定する段階を含んでいてよい:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸。別のそのような態様において、その方法は、その試験化合物が次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御するかどうかを決定する段階を含んでいてよい:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。さらに別の態様において、その方法は、その試験化合物が表5においてリストされている未知のものの少なくとも1つのメンバーを上方制御または下方制御するかどうかを決定する段階を含んでいてよい。
【0054】
別の態様において、その処置前の代謝産物レベルは、第1の時点においてその対象から集められた第1の歯肉溝滲出液試料の処置前の代謝産物レベルを検出することにより得ることができる。その試験化合物を含む歯磨剤は、所定のプロトコルに従ってその対象の口腔に適用することができる。その歯磨剤を適用した後の第2の時点において、第2の歯肉溝滲出液試料の処置後の代謝産物レベルを検出する。その処置前の代謝産物レベルをその処置後の代謝産物レベルと比較することができる。その比較に基づいて、その試験化合物の効率を決定することができる。1つのそのような態様において、処置後の代謝産物レベルの処置前の代謝産物レベルと比較した減少は、その試験化合物が歯周疾患を処置する有効性を有することを示している可能性がある。別のそのような態様において、処置後の代謝産物レベルの処置前の代謝産物レベルと比較した増大は、その試験化合物が歯周疾患を処置する有効性を有することを示している可能性がある。さらに別のそのような態様において、処置後の代謝産物レベルの減少または増大が無いことは、その試験化合物が歯周疾患を処置する有効性を欠いていることを示している可能性がある。
【0055】
別の態様において、その処置後の代謝産物レベルを次のものの1種類以上と比較することができる:歯周疾患の参照レベルおよび健康な口の状態の参照レベル。1態様において、その比較は単純な比較(例えば人手による比較)を用いてなされてよい。別の態様において、その比較は1種類以上の統計学的分析(例えばt検定、WelchのT検定、Wilcoxonの順位和検定、ランダムフォレスト)を用いてなされてよい。1つのそのような態様において、その処置後の代謝産物レベルが次のものの1種類以上である場合、その比較の結果はその試験化合物の有効性を示している可能性がある:歯周の参照レベルと同じである処置後の代謝産物レベル;処置後の代謝産物レベルが歯周の参照レベルと実質的に同じである;処置後の代謝産物レベルが歯周の参照レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である;および/または、処置後の代謝産物レベルが歯周の参照レベルの範囲内である。別のそのような態様において、その処置後の代謝産物レベルが次のものの1種類以上である場合、その比較の結果はその試験化合物の有効性を示している可能性がある:健康な参照レベルと同じである処置後の代謝産物レベル;処置後の代謝産物レベルが健康な参照レベルと実質的に同じである;処置後の代謝産物レベルが健康な参照レベルの最小値および/または最大値より上および/または下である;および/または処置後の代謝産物レベルが、健康な参照レベルの範囲内である。
【0056】
本発明はさらに、細胞を試験化合物と接触させ、その試験化合物が次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御するかどうかを決定することにより哺乳類において歯周疾患を処置するのに有用な試験化合物を同定する方法を提供する:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸。
【0057】
本発明はさらにその上、細胞を試験化合物と接触させ、その試験化合物が次のものから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御するかどうかを決定することにより哺乳類において歯周疾患を処置するのに有用な試験化合物を同定する方法を提供する:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。
【0058】
本発明はさらにその上、細胞を試験化合物と接触させ、その試験化合物が表5においてリストされている未知のものの少なくとも1つのメンバーを上方制御または下方制御するかどうかを決定することにより哺乳類において歯周疾患を処置するのに有用な試験化合物を同定する方法を提供する。
【0059】
D.口腔ケア試験キット
本発明はさらに、使用者にその使用者の口の健康状態の指標を提供することができる口腔ケア試験キットを提供する。そのキットは1種類以上の歯肉炎溝滲出液収集細片およびその対象の口の健康状態の診断法を含んでいてよい。その歯肉炎溝滲出液収集細片は、歯肉溝滲出液試料を集めるために、および歯肉溝滲出液試料中に含まれる代謝産物の回収のために用いることができる。対象の口の健康の診断は、この発明の方法に基づいていてよい。1つのそのような態様において、そのキットはその歯肉炎溝滲出液収集細片を用いて試料を集めるための説明書を含んでいてよい。別のそのような態様において、そのキットは集めた液体を含む歯肉炎溝滲出液収集細片を試験場所に送るための指示を含んでいてよい。
【0060】
E.歯磨組成物
本発明はさらに歯磨組成物を提供する。その組成物は有効量の口の健康の代謝産物療法剤を含んでいてよい。その療法剤は少なくとも1ヶ月の期間にわたって代謝産物レベルの変化をもたらし、ここでその代謝産物レベルの変化は対照歯磨組成物により影響を及ぼされる代謝産物参照レベルの対応する変化よりも大きい。1態様において、代謝産物レベルの変化は対照歯磨組成物により影響を及ぼされる代謝産物参照レベルの対応する変化よりも1%大きい。別の態様において、代謝産物レベルの変化は対照歯磨組成物により影響を及ぼされる代謝産物参照レベルの対応する変化よりも5%大きい。さらに別の態様において、代謝産物レベルの変化は対照歯磨組成物により影響を及ぼされる代謝産物参照レベルの対応する変化よりも20%大きい。1態様において、その対照歯磨剤は標準的な療法剤を実質的に含まない。別の態様において、その対照歯磨剤は標準的な療法剤を含む。別の態様において、その対照歯磨剤はトリクロサンを含む。その対照歯磨剤は米国特許第7,402,416号において記述されているような歯磨組成物中で典型的に見つかる成分を含んでいてもよく、それを本明細書にそのまま援用する。
【0061】
F.代謝産物を示す歯磨剤
別の観点において、本発明は歯周疾患を示す代謝産物の存在を示すための口腔用組成物を提供する。その口腔用組成物は歯磨剤、例えば練り歯磨き、ゲル、マウスウォッシュ(mouth wash)、デンタルフロス、粉末、歯肉に接着する細片、歯ブラシ等の内部に含まれていてよい。その口腔用組成物は代謝産物を示す組成物を含んでいてよい。1態様において、その代謝産物を示す組成物は表1、2、3、4および5においてリストされている1種類以上の化合物の存在を示すことができる。別の態様において、その代謝産物を示す組成物は次のものの1種類以上の上方制御の際に使用者に識別可能な指標を提供することができる:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン(lysie)、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸。別の態様において、その代謝産物を示す組成物は次のものの1種類以上の下方制御であってよい:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミン。1態様において、その代謝産物を示す組成物は、表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上に曝露された際に、結果として使用者に識別可能な指標をもたらすことができる。1態様において、その代謝産物を示す組成物は、表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上に曝露された際に、結果としその歯磨剤の色の変化をもたらすことができる。
【0062】
1態様において、その歯磨剤は、歯肉縁に接着し、代謝産物を示す組成物を含むゲルを含んでいてよい。1つのそのような態様において、そのゲルは対象の口腔の1個以上の歯の4分円(quadrants)に適用されてよく、ここでその代謝産物を示す組成物は、表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上に曝露された際に、結果として使用者に識別可能な指標の出現をもたらすことができる。1態様において、その使用者に識別可能な指標は色の変化に対応していてよい。
【0063】
別の態様において、その歯磨剤は代謝産物を示す組成物でコートされたデンタルフロスを含んでいてよい。1つのそのような態様において、その代謝産物でコートされたデンタルフロスを使用者の隣接する歯の間を通過させてよく、ここでその代謝産物を示す組成物は、結果として表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上に曝露された際に使用者に識別可能な指標を示すフロスをもたらすことができる。1態様において、その使用者に識別可能な指標はそのフロスが色の変化を示すことに対応していてよい。
【0064】
さらに別の態様において、その歯磨剤は代謝産物を示す組成物を含むマウスウォッシュを含むことができる。1つのそのような態様において、使用者はその歯をそのマウスウォッシュと接触させることができ、ここでその代謝産物を示す組成物は、表1、2、3、4および5においてリストされている化合物の1種類以上に曝露された際に、結果としてそのマウスウォッシュの使用者に識別可能な指標の出現をもたらすことができる。1態様において、その使用者に識別可能な指標はそのマウスウォッシュの色の変化に対応していてよい。
【実施例】
【0065】
下記の実施例は本発明の範囲内の一部の態様をさらに記述および実証する。これらの実施例は説明のためにのみ与えられるものであり、本発明の範囲および精神から逸脱すること無くその多くの変形が可能であるため、本発明を限定するものとして解釈されるべきでは無い。
【0066】
I.実験の手順
A.実験の設計および患者
フォーサイス研究所の歯科診療所において、22(22)人の33〜67歳(53±11)の慢性歯周炎の対象(41%が男性)を研究ボランティアから選択した。対象は、少なくとも20本の天然の無冠の歯(uncrowned teeth)、8箇所以上の、ポケットの深さが5mm以上であり臨床的アタッチメントレベル(CAL)が3mm以上である部位を有していた。対象は休薬期間の間その歯磨剤に対するアレルギーの既知の病歴が無かった(下記参照)。除外基準には次のものが含まれていた:歯科矯正装置の存在;異常な唾液機能;処方薬の使用;試験の1ヶ月前または試験の間の抗生物質の使用;鎮痛薬以外のいずれかの処方箋無しでの薬物療法の使用;ビタミンサプリメントの常用;5個以上の齲歯の部位;軟らかい、または硬い口の組織の疾患および全身性の病気。その試験プロトコルはフォーサイス研究所の施設内審査委員会により承認され、全ての試験対象は登録の前にインフォームドコンセントの用紙に署名した。最初の来診において、対象はColgate Regular歯磨剤のチューブおよび歯ブラシを受け取り、彼らの試料採取来診の前に最低1週間(休薬期間)その製品を使用するように指示された。他の機械的な口腔衛生装置はこの休薬期間の間は許可されたが、他の口腔ケア製品は許可されなかった。
【0067】
B.歯肉溝滲出液(GCF)試料の収集
唾液の混入を防ぐために巻き綿を用いて部位を分離した後、歯肉縁上のプラークをキューレットを用いて除去し、部位を穏やかに空気乾燥させ、3個の異なる部位のカテゴリーからGCF試料を得た。それぞれの対象に関して、6個の健康な部位(H;PDが3mm未満、およびプロービング(probing)の際の出血[BOP]が無い);6個の歯肉炎の部位(G;PDが3mm未満、およびBOP);および3個の歯周炎の部位(P;PDが5mm以上、およびBOP)を試料採取した。それぞれの部位から、濾紙細片(Periopaper(登録商標)、Interstate Drug Exchange、ニューヨーク州アミティービル)を用いて歯周ポケットの開口部の中に緩やかに挿入してGCF試料を集めた。Periopaperの細片をその場所に30秒間留め、集められたGCFの体積を、あらかじめ較正したPeriotron 8000(登録商標)(Oraflow Inc.ニューヨーク州プレーンビュー)を用いて決定した。それぞれの対象からの試料を異なる部位のカテゴリーの中に集め、別々のエッペンドルフチューブの中に入れ、アッセイまで−80℃で保管した。
【0068】
C.代謝産物発現プロファイリング技術
代謝産物発現プロファイリング技術を、以前に記述されたように実施した(Lawton et al., 2008)。要約すると、4段階の順次の抽出手順を用いてGCF収集細片から代謝産物を回収した。その抽出物をGC/MSおよびLC/MSにより分析した。クロマトグラフィーによる分離およびそれに続く完全スキャン質量スペクトルを行い、その試料中に存在していた全ての検出可能なイオンを記録および定量した。既知の化学構造を有する代謝産物は、そのイオンのクロマトグラフィー保持指数および質量スペクトルの断片化サインをその実験試料と同じ分析手順の下で信頼できる標準の代謝産物から作り出された参照ライブラリーの登録情報と照合することにより同定された。その標準が及ばなかったイオンに関しては、それらの固有のイオンのサイン(クロマトグラフィーおよび質量スペクトル)に基づいて追加のライブラリーの登録情報を追加した。この後、これらのイオンは型にはまった手順で検出および定量することができる。
【0069】
D,統計学的分析
Periotron(登録商標)により記録されたGSFの体積を用いてデータを標準化した。ANOVAおよびT検定を実施し、健康な部位、歯肉炎の部位および歯周炎の部位から得られたデータを比較した。それぞれの生化学的物質に関して観察された相対的濃度に対数変換を適用した。
【0070】
E.結果
合計で330人分のGCF試料を集め、結果として66個のプールされた試料を得た。そのGCF試料は0.01μlから1.15μlまでの範囲であった。健康な部位、歯肉炎の部位および歯周炎の部位のカテゴリーに関するμlでの平均体積(±SD)は、それぞれ0.18±0.10、0.25±0.13および0.42±0.19であった。
【0071】
その試料を、Metabolon, Inc.による代謝産物プロファイリングのプラットフォームにおいて分析した。次いでその化合物に関する相対的な定量された値を、試料の体積に従って調整した。228(228)種類の代謝産物が検出され、その内の103(103)種類はMetabolon化学参照ライブラリー中の既知の化学構造と一致した。マッチドペアT検定を用いて健康な部位、歯肉炎の部位および歯周炎の部位の間の違いを分析した。検出された代謝産物のおおよそ50%は、その3種類の部位の間で変化したレベルを示した(p<0.05)。既知の化学構造と一致する代謝産物を、それらのそれぞれの全体的な生化学的経路の中に位置付けた。ANOVA分析はそのt検定と異なる代謝産物のリストを生成しなかった(データは示していない)。濃度が変化した代謝産物の大部分に関して、歯肉炎の部位におけるレベルは健康な部位と歯周炎の部位におけるレベルの間にあり、これは歯肉炎により誘導される代謝の変化は歯周炎により誘導される代謝の変化への連続体(continuum)であることを示唆している。
【0072】
1.核酸
細菌は宿主の核酸を分解および代謝する。核酸分解の最終産物および中間体の上昇したレベルは、細菌感染による核酸分解経路の加速を示唆している。プリンヌクレオチドであるアデノシン1リン酸(AMP)およびグアノシン1リン酸(GMP)の分解の最終産物は尿酸である。その経路における中間体には、イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシンおよびグアニンが含まれる。下記の表1を参照、プリン分解経路中間体に関する差次的発現プロフィールを表にした。
【0073】
本試験において、イノシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でイノシンのレベルにおいて1.22倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.63倍の増大があった。ヒポキサンチンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でヒポキサンチンのレベルにおいて1.27倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.65倍の増大があった。キサンチンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でキサンチンのレベルにおいて1.15倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.15倍の増大があった。グアノシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でグアノシンのレベルにおいて1.02倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.35倍の増大があった。グアニンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でグアニンのレベルにおいて1.22倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.66倍の増大があった。本試験における疾患部位でのこれらの中間体の増大した発現−すなわち“上方制御”−は、細菌感染によるプリン分解経路の加速された代謝の流れを示している。
【0074】
その中間体の増大にも関わらず、最終産物である尿酸のレベルは疾患部位において減少していた。歯肉炎の対象および健康な対象の間で尿酸のレベルにおいて0.92倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.70倍の減少があった。しかし、尿酸は既知の細胞性抗酸化物質であり、次の節において記述されるように、その疾患部位においては酸化性のストレスも強められていたという明らかな証拠がある。尿酸の減少は、フリーラジカル類の除去(scavenging)の際のそれの枯渇の結果である可能性がある。さらに、ヒポキサンチンのキサンチンへの、次いで尿酸への変換の連続する段階は共にキサンチンオキシダーゼにより触媒される。その反応は、酸素を還元してOおよびHの形のスーパーオキシドを生成することと共役している。ここで観察されたプリン分解経路の変化は、増大した活性酸素種(ROS)の産生が歯周疾患によるこの経路の上方制御に由来する重要な結果であることを示している。
【0075】
表1
核酸の分解経路の化合物
【0076】
【表1】

【0077】
ピリミジンヌクレオチドであるシチジン1リン酸(CMP)およびウリジン1リン酸(UMP)の分解の最終産物はウラシルである。その経路の中間体はウリジンであり、疾患部位におけるそれの上方制御は、細菌感染によるピリミジン分解経路の加速された代謝の流れを示している。歯肉炎の対象および健康な対象の間でウリジンのレベルにおいて1.20倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.82倍の増大があった。ウリジンに関する差次的発現プロフィールも上記の表1において要約されている。
【0078】
2.抗酸化物質
細菌感染は酸化的ストレスおよび抗酸化物質のレベルの減少を誘導する。グルタチオンはROS(酸素イオン類、フリーラジカルおよび過酸化物を含む)および非生体物質に対する細胞の防御において中心的な役割を果たしている。本試験において、還元型および酸化型グルタチオン両方のレベルが歯肉炎および歯周炎の部位において減少していた。グルタチオンおよびグルタチオン生合成経路における関連する代謝産物のレベルの減少は、細菌感染の結果もたらされる酸化的ストレス環境の増大およびグルタチオン産生に関する能力の減少を示している。歯肉炎の対象および健康な対象の間で還元型グルタチオンのレベルにおいて0.65倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.35倍の減少があった。歯肉炎の対象および健康な対象の間で酸化型グルタチオンのレベルにおいて0.75倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.47倍の減少があった。
【0079】
加えて、2種類の他の主要な細胞性抗酸化物質であるアスコルビン酸および尿酸もその疾患部位において減少していた。歯肉炎の対象および健康な対象の間でアスコルビン酸のレベルにおいて0.87倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.39倍の減少があった。上記で論じたように、歯肉炎の対象および健康な対象の間で尿酸のレベルにおいて0.92倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.70倍の減少があった。これらの代謝産物の変化した発現プロフィールは疾患状態における酸化的ストレス環境を明確に実証しており、これを下記の表2において要約する。
【0080】
表2
抗酸化化合物
【0081】
【表2】

【0082】
3.アミノ酸
組織の損傷による宿主のタンパク質の分解と一致して、様々な遊離のアミノ酸およびアミノ酸代謝産物の発現レベルが歯周疾患により増大した。下記の表3を参照、プリン分解経路中間体に関する差次的発現プロフィールを表にした。
【0083】
本試験において、イソロイシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でイソロイシンのレベルにおいて1.21倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.92倍の増大があった。ロイシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でロイシンのレベルにおいて1.12倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.02倍の増大があった。リシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でリシンのレベルにおいて1.2倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.79倍の増大があった。フェニルアラニンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でフェニルアラニンのレベルにおいて1.09倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.61倍の増大があった。チロシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でチロシンのレベルにおいて1.04倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.41倍の増大があった。本試験における疾患部位でのこれらのアミノ酸の上方制御は、細菌による宿主タンパク質の分解を示している。
【0084】
加えて、2種類のポリアミンでありアミノ酸分解の最終産物であるプトレッシンおよびカダベリン(1,5−ジアミノペンタン)が、その歯周疾患により上方制御されていることが分かった。プトレッシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でプトレッシンのレベルにおいて1.42倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.75倍の増大があった。カダベリンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でカダベリンのレベルにおいて1.43倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.88倍の増大があった。プトレッシンは哺乳類および細菌の経路両方により産生され得るが、カダベリンはほとんど排他的に細菌由来である(Fothergill and Guest, 1977)。カダベリンは細菌のリシンデカルボキシラーゼによりリシンから合成され、上昇した発現レベルは細菌感染の程度を示している可能性がある。
【0085】
本試験におけるアミノ酸の発現の増大に対する唯一の例外はグルタミンであり、それは疾患の進行と共に明らかな減少を示した。歯肉炎の対象および健康な対象の間でグルタミンのレベルにおいて0.84倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.60倍の減少があった。1つの可能性のある説明は、グルタミンが細菌により主要な窒素源として急速に消費されたというものである。別の窒素を有するアミノ酸であるグルタミン酸もその疾患において減少を示したが、その変化は統計的カットオフ値より上であった(データは示していない)。別の説明は、タンパク質におけるそれの提示に加え、グルタミンは遊離のグルタミンジペプチドとしてかなりの量で存在しているというものである。細菌P.ジンジバリス(P. ginivalis)は単独のアミノ酸よりもむしろペプチドを代謝することが報告されており、この遊離のグルタミンの減少は、細菌によるジペプチドの、それらの単独のアミノ酸への分解の前の著しい利用と一致している。
【0086】
表3
アミノ酸
【0087】
【表3】

【0088】
4.尿素サイクル
タンパク質のアミノ酸への分解はアンモニアを放出し、次いでそれは生物によりより毒性の低い窒素の形に変換されなければならない。ヒトにおいて、その尿素サイクルはアンモニアを尿素および他の最終産物に変換するように機能している。尿素サイクルの中間体および最終産物は、プトレッシンおよび4−グアニジノブタン酸を含め、有意に上方制御されていた。上記の表3を参照、尿素経路中間体に関する差次的発現プロフィールを表にした。上記で論じたように、プトレッシンに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でプトレッシンのレベルにおいて1.42倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.75倍の増大があった。4−グアニジノブタン酸に関して、本試験において、歯肉炎の対象および健康な対象の間で4−グアニジノブタン酸のレベルにおいて1.83倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で2.33倍の増大があった。
【0089】
5.炭水化物
様々な糖類および炭水化物の代謝産物の発現の変化は、宿主の組織および細菌の間の相互作用をさらに説明する。下記の表4を参照、その疾患部位における、マルトトリオース、マルトースおよびマルトトリイトールを含む3および2糖類の減少したレベルは、循環における細菌のこれらの食物由来の栄養素の消費の結果である可能性がある。歯肉炎の対象および健康な対象の間でマルトトリオースのレベルにおいて0.90倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.59倍の減少があった。歯肉炎の対象および健康な対象の間でマルトースのレベルにおいて0.93倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.72倍の減少があった。歯肉炎の対象および健康な対象の間でマルトトリイトール(maltotriiol)のレベルにおいて0.86倍の減少があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で0.43倍の減少があった。
【0090】
これらの3および2糖類の分解は、結果としてその最終産物であるグルコースの増大したレベルをもたらす。グルコースに関して、歯肉炎の対象および健康な対象の間でグルコースのレベルにおいて1.35倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で1.96倍の増大があった。生化学経路により高度に制御されている増大したグルコースは、それにより結果としてクレブス回路の上方制御およびα−ケトグルタル酸を含む中間体の発現の増大をもたらす。歯肉炎の対象および健康な対象の間でα−ケトグルタル酸のレベルにおいて1.65倍の増大があり、歯周炎の対象および健康な対象の間で3.15倍の増大があった。
【0091】
表4
炭水化物
【0092】
【表4】

【0093】
未知のもの
様々な未知のものも観察され、表5に示したように、それは健康な口の状態、歯肉炎および歯周疾患に関して代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルの間の関係を示した。
【0094】
表5
【0095】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において口の健康を診断するための方法であって、以下の:
a.その対象から歯肉溝滲出液試料を集め;
b.その歯肉溝滲出液試料中の1種類以上の代謝産物のレベルを検出し;そして
c.その検出された代謝産物のレベルに基づいてその対象を歯周疾患または健康な口の状態を有すると診断する
ことを含み、ここでその検出される代謝産物が以下のもの:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子から選択される少なくとも1種類の化合物である、前記方法。
【請求項2】
対象において口の健康状態を診断するための方法であって、以下の:
a.その対象から歯肉溝滲出液試料を集め;
b.その歯肉溝滲出液試料中の代謝産物のレベルを検出し;
c.その歯肉溝滲出液試料中の検出された代謝産物のレベルを代謝産物の参照レベルと比較し、それにより差次的レベルを生成し、ここで、その代謝産物の参照レベルは次のものの1種類以上に対応する:歯周の参照レベルまたは健康な参照レベル、
ここで、その検出される代謝産物は以下のもの:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子から選択される少なくとも1種類の化合物である;そして
d.その比較に基づいて、その対象の口の健康状態の診断を提供する
ことを含む、前記方法。
【請求項3】
検出された代謝産物および歯周の参照レベルの差次的レベルが歯周疾患と相関する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
検出された代謝産物および健康な参照レベルの差次的レベルが健康な口の状態と相関する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
対象において歯周疾患を監視するための方法であって、以下の:
a.第1の時点においてその対象から集められた第1の歯肉溝滲出液試料中で少なくとも1種類の代謝産物の第1のレベルを検出し;
b.第2の時点においてその対象から集められた第2の歯肉溝滲出液試料中で少なくとも1種類の代謝産物の第2のレベルを検出し;
c.第1の検出された代謝産物のレベルを第2の検出された代謝産物のレベルと比較する
ことを含み、ここでその第2の検出された代謝産物のレベルの第1の検出された代謝産物のレベルと比較した差次的レベルはその対象の歯周疾患の変化を示す、前記方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、ここでその差次的レベルがその第2の検出された代謝産物のレベルの第1の検出された代謝産物のレベルと比較した減少に対応し、それがその対象の歯周疾患の減少を示しており、ここでその少なくとも1種類の代謝産物が以下のもの:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸から選択される少なくとも1つのメンバーである、前記方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、ここでその差次的レベルがその第2の検出された代謝産物のレベルの第1の検出された代謝産物のレベルと比較した増大に対応し、それがその対象の歯周疾患の減少を示しており、ここでその少なくとも1種類の代謝産物が以下のもの:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミンから選択される少なくとも1つのメンバーである、前記方法。
【請求項8】
哺乳類において歯周の発現を処置するのに有用な試験化合物の効率を決定する方法であって、以下の:
試験化合物による処置の後に対象から集められた歯肉溝滲出液試料から処置後の代謝産物レベルを検出し;
その処置後の代謝産物レベルを次のものの1種類以上と比較し:その対象の処置前の代謝産物レベル、歯周の参照レベルおよび健康な参照レベル;そして
その比較に基づいてその試験化合物の効率を決定する
段階を含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、その処置前の代謝産物レベルを以下の:
第1の時点においてその対象から集められた第1の歯肉溝滲出液試料の処置前の代謝産物レベルを検出し;そして
所定のプロトコルに従ってその対象の口腔にその試験化合物を含む歯磨剤を適用する
ことを含む段階により得ることができ、ここでその処置後の代謝産物レベルを第2の時点において検出する、前記方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、さらに以下の:
その試験化合物が以下のもの:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸から選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御するかどうかを決定する
ことを含む、前記方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、さらに以下の:
その試験化合物が以下のもの:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミンから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御するかどうかを決定する
ことを含む、前記方法。
【請求項12】
哺乳類において歯周疾患を処置するのに有用な試験化合物を同定する方法であって、その方法が細胞を試験化合物と接触させ、その試験化合物が以下のもの:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸から選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御するかどうかを決定することを含む、前記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、さらに以下の:
その試験化合物が以下のもの:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミンから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御するかどうかを決定する
ことを含む、前記方法。
【請求項14】
試験対象を標準的なケアプロトコルを用いる際の療法剤に対する応答者または非応答者として識別する方法であって、以下の:
その試験対象から集めた歯肉溝滲出液試料の代謝産物プロフィールを生成し、ここでその代謝産物プロフィールは代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルを含む;
その試験対象の代謝産物プロフィールを参照応答者代謝産物プロフィールおよび参照非応答者代謝産物プロフィールと比較し、
ここでその参照応答者代謝産物プロフィールは、標準的なケアプロトコルに従って標準的な療法剤を含む歯磨剤を用いる際に歯周疾患の退行を示した参照応答者の対象から生成され、
ここでその参照非応答者代謝産物プロフィールは、標準的なケアプロトコルに従って標準的な療法剤を含む歯磨剤を用いる際に歯周疾患の変化を示さなかった参照非応答者の対象から生成され;そして
その比較に基づいて、その試験対象を療法剤に対する応答者または療法剤に対する非応答者として識別する
段階を含む、前記方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、ここでその参照応答者の対象に関して、その標準的な療法剤が以下のもの:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸から選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御する、前記方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、ここでその参照応答者の対象に関して、その標準的な療法剤が以下のもの:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミンから選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御する、前記方法。
【請求項17】
試験対象を標準的な非ケアプロトコルに従う際の歯周疾患の発現に対する応答者または非応答者として識別する方法であって、以下の:
その試験対象から集めた歯肉溝滲出液試料の代謝産物プロフィールを生成し、ここでその代謝産物プロフィールは代謝産物のアイデンティティおよび代謝産物のレベルを含む;
その試験対象の代謝産物プロフィールを参照応答者代謝産物プロフィールおよび参照非応答者代謝産物プロフィールと比較し、
ここでその参照応答者代謝産物プロフィールは、標準的な非ケアプロトコルに従った際に歯周疾患を発現した参照応答者の対象から生成され、
ここでその参照非応答者代謝産物プロフィールは、標準的な非ケアプロトコルに従った際に歯周疾患を発現しなかった参照非応答者の対象から生成され;そして
その比較に基づいて、その試験対象を歯周疾患の発現に対する応答者または歯周疾患の発現に対する非応答者として識別する
段階を含む、前記方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、ここでその参照応答者の対象に関して、その標準的な非ケアプロトコルが以下のもの:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸から選択される少なくとも1つのメンバーを上方制御する、前記方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、ここでその参照非応答者の対象に関して、その標準的な非ケアプロトコルが以下のもの:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミンから選択される少なくとも1つのメンバーを下方制御する、前記方法。
【請求項20】
以下のもの:
歯肉溝滲出液試料を集めるための、および歯肉溝滲出液試料中に含まれる代謝産物の回収のための1個以上の歯肉炎溝滲出液収集細片;
請求項5に記載の方法に基づく対象の口の健康の診断法
を含む、口腔ケアキット。
【請求項21】
以下のもの:
有効量の口の健康の代謝産物療法剤、ここで、その療法剤は少なくとも1ヶ月の期間にわたって代謝産物レベルの変化をもたらし、ここでその代謝産物レベルの変化は対照歯磨組成物によりもたらされる代謝産物参照レベルの対応する変化よりも少なくとも5%大きい
を含む、歯磨組成物。
【請求項22】
その対照歯磨剤がトリクロサンを含む、請求項18に記載の歯磨組成物。
【請求項23】
対象の口腔において歯周疾患に対応する代謝産物を検出するための方法であって、以下の:
代謝産物を示す組成物を含む歯磨剤を口腔中の試験の1個以上の部分に適用する、ここで前記の歯磨剤は代謝産物を示す組成物を含み、それは歯周疾患と関係する代謝産物および代謝産物のレベルへの曝露の際に使用者に識別可能な指標を提供する
段階を含む、前記方法。
【請求項24】
以下のもの:
歯周疾患と関係する代謝産物および代謝産物のレベルへの曝露の際に使用者に識別可能な指標を提供する、代謝産物を示す組成物
を含む、代謝産物を示す歯磨剤。
【請求項25】
その使用者に識別可能な指標がその代謝産物を示す歯磨剤の色の変化に対応する、請求項24に記載の代謝産物を示す歯磨組成物。
【請求項26】
請求項24に記載の代謝産物を示す歯磨組成物であって、その代謝産物が以下のもの:アミノ酸代謝により生じる化合物、尿素サイクルにおいて生じる化合物;グルタチオン変換において生じる化合物;脂質代謝において生じる化合物;炭水化物代謝において生じる化合物;核酸代謝により生じる化合物;ビタミン類;および補因子から選択される少なくとも1種類の化合物である、前記の代謝産物を示す歯磨組成物。
【請求項27】
請求項24に記載の代謝産物を示す歯磨組成物であって、その代謝産物のレベルが以下のもの:イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、グアノシン、グアニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、フェニル酢酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸(α−hydroxyioscaproic acid)、5−アミノ吉草酸、コリン、グリセロール−3−リン酸、およびN−アセチルノイラミン酸の1種類以上の上方制御を示す、前記の代謝産物を示す歯磨組成物。
【請求項28】
請求項24に記載の代謝産物を示す歯磨組成物であって、その代謝産物のレベルが以下のもの:尿酸、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオン、アスコルビン酸、およびグルタミンの1種類以上の下方制御を示す、前記の代謝産物を示す歯磨組成物。

【公表番号】特表2012−522982(P2012−522982A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503390(P2012−503390)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/039184
【国際公開番号】WO2010/114537
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】