説明

口座管理装置、および口座管理方法

【課題】口座への振込を受ける人の個人情報の漏洩に対するセキュリティを向上させるとともに、振込を行う人や振込を受ける人の手間を低減することができる口座管理装置を提供する。
【解決手段】正規口座は、運転免許証や、パスポート等の証明書類によって確認した口座開設者の氏名、住所等を名義人情報として登録した口座である。匿名口座は、口座開設者が任意に設定した氏名、住所等を名義人情報として登録した口座である。口座管理装置1は、匿名口座に対する出金取引、および入金取引を拒否する。また、口座管理装置1は、匿名口座に対する振込取引については、その取引を許可する。さらに、口座管理装置1は、関連付けられている正規口座と、匿名口座と、の間しか、振替取引を許可しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行等の金融機関に開設されている口座を管理する口座管理装置、および口座管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インタネット等を利用して、個人間で物品を売買することが行われている。例えば、売り主は、売りたい物品をインタネット上の掲示板に掲載したり、オークションに出品し、この売りたい物品を不特定多数の人に通知する。売り主は、その物品について購入を希望する買い主からの連絡を待つ。売り主は、物品の買い主が決まると、その買い主との間で物品を売買する。このような個人間での物品の売買では、売り主は、銀行等の金融機関に開設している自分の口座を買い主に連絡し、この口座に物品の売買にかかる代金の振込を要求する。売り主は、買い主から代金が振り込まれたことを確認すると、物品を買い主が指定した宛先に送付する。
【0003】
また、金融機関に開設されている口座を管理する方法として、支払者の口座の一部を分割し、受取者口座として用いることが提案されている(特許文献1参照)。この方法は、支払者からの要求に基づいて、支払対象となる受取者に対する受取専用の受取者口座を支払者の口座内に開設する。支払者口座から開設された受取者口座に対する資金移動は、支払者からの指示に基づいて行われる。受取者は、受取者口座に対する認証を行うことにより、この受取者口座を元口座とする出金取引等が行える。
【特許文献1】特開2006−260494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、売り主は、売りたい物品をインタネット上の掲示板に掲載したり、オークションに出品するときに、ハンドルネームを使用して、自分の本名を隠すことができるが、買い主に対しては、代金の振込先の口座を知らせるときに、その口座の名義を通知しなければならない。一般に、金融機関では、開設されている口座が犯罪等に利用されることがないように、口座の開設時に、運転免許証やパスポート等の身分証明書で口座開設者の身元を確認し、口座の名義を口座開設者の本名にしている。また、売り主は、買い主の素性を知らない。したがって、売り主は、素性を知らない買い主に対して通知した自分の本名から、自分の個人情報(氏名、住所、電話番号、性別、年齢等)が漏洩するというリスクを負担することになる。また、このリスクの負担を、避けるために、インタネットを利用して物品を販売することに消極的な人も多い。
【0005】
一方、上述した特許文献1で提案されている口座管理であれば、買い主が自分の口座の一部を分割し、売り主を受取者とする受取者口座を開設すれば、売り主は自分の本名を買い主に開示することなく、代金を受け取ることができる。しかし、この場合には、買い主が、物品を購入する毎に、受取者口座を開設しなければならず、また一度開設した受取者口座については、その受取者口座の残高が0になるまで、無くすことができない。このため、買い主の口座に多数の受取者口座ができることになり、口座の管理が複雑になる。さらに、売り主は、売買した物品毎に、その物品の買い主によって開設された受取者口座から代金を受け取ることになる。すなわち、売り主は、売買した物品毎に、その物品の売買に対して開設された受取者口座から代金を受け取らなければならず、代金の受け取りに多大な手間がかかる。
【0006】
このように、従来の口座管理では、口座への振込を受ける人が、自分の本名を振込人に開示しなければならず、個人情報の漏洩に対するセキュリティに不安を感じるという問題があった。また、特許文献1で提案されている口座管理であれば、振込を行う人の口座管理にかかる手間や、振込を受ける人の振込金の受け取りにかかる手間が増大するという問題あった。
【0007】
この発明の目的は、口座への振込を受ける人の個人情報の漏洩に対するセキュリティを向上させるとともに、振込を行う人や振込を受ける人の手間を低減することができる口座管理装置、および口座管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の口座管理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0009】
この口座管理装置では、口座関連付情報記憶手段が、口座開設者が同じ人物であり、本人の氏名で開設された第1の口座と、任意に設定された氏名で開設された第2の口座と、を関連付けて記憶する。取引要求受付手段が、金融機関の口座に対する取引要求を受け付ける。取引要求は、金融機関の店舗に設置されているATMや、窓口端末、さらには利用者のパソコン等で入力される。前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振込先口座とする振込取引要求を受け付けると、振込取引処理手段がこの振込取引要求に基づく振込取引を処理する。また、前記取引要求受付手段が前記第2の口座を出金口座とする出金取引要求を受け付けると、出金取引拒否手段がこの出金取引要求に基づく出金取引を拒否する。さらに、前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振替元口座とする口座間の振替取引要求を受け付けると、振替先口座判定手段が前記口座関連付情報記憶手段が振替元口座である第2の口座に関連付けて記憶している第1の口座が振替先口座であるかどうかを判定する。そして、振替取引処理手段は、前記振替先口座判定手段が関連付けられている第1の口座と第2の口座とであると判定した場合、今回受け付けた振替取引要求に基づく振替取引を処理する。一方、前記振替取引処理手段は、前記振替先口座判定手段が関連付けられていない第1の口座と第2の口座とであると判定した場合、今回受け付けた振替取引要求に基づく振替取引を拒否する。
【0010】
したがって、口座への振込を受ける人は、任意に設定した名義の口座を、振込を行う人に伝えることで、自分の氏名を開示することなく、振込を受けることができる。このため、口座への振込を受ける人の個人情報の漏洩に対するセキュリティの向上が図れる。
【0011】
また、第2の口座は、この第2の口座を開設した人の名義で開設されている第1の口座に関連付けられている。この第1の口座は、口座開設時に運転免許証やパスポート等の身分証明書で口座開設者の身元を確認して開設した口座である。そして、この第2の口座を出金元口座とする出金取引は、出金取引拒否手段によって拒否される。また、第2の口座から、この第2の口座に関連付られていない第1の口座への振替取引は、振替取引処理手段によって拒否される。このため、すでに開設されている他人の口座を不正に利用して、第2の口座を開設しても、この第2の口座を不正に開設した者が、第2の口座から資金を引き出すことはできない。ただし、第2の口座から、この第2の口座に関連付られている第1の口座への振替取引は、振替取引処理手段によって処理される。すなわち、適正に開設された第2の口座であれば、一旦、関連付られている第1の口座に振り替えることにより、資金を引き出すことができる。このように、第2の口座が犯罪等に利用されることに対するセキュリティも確保し、且つ、振込を行う人や振込を受ける人の手間を低減することができる。
【0012】
また、以下に示す差額算出手段、および振込取引処理手段を加えてもよい。
【0013】
差額算出手段は、前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振込元口座とする口座間の振込取引要求を受け付けたとき、この第2の口座について管理している取引履歴に基づいて、今回の振込取引要求にかかる振込先口座から第2の口座への振込金額の合計金額から、この第2の口座から振込先口座への振込金額の合計金額を差し引いた差額を算出する。振込取引処理手段は、今回受け付けた振込取引要求に基づく振込金額が、前記差額算出手段が算出した差額以下であれば、この振込取引要求に基づく振込取引を処理し、今回受け付けた振込取引要求に基づく振込金額が、前記差額算出手段が算出した差額以下でなければ、この振込取引要求に基づく振込取引を拒否する。このようにすれば、第2の口座に振込を行った人に対して、その振込金額を、この第2の口座から返金することができる。したがって、第2の口座に振込を行った人に対する返金が、この第2の口座を開設した人の個人情報を通知することなく行える。
【0014】
さらに、取引要求拒否手段が、前記第2の口座を元口座とする取引要求については、生体情報による認証が行われていない場合、この取引要求を拒否する構成とすれば、この第2の口座が犯罪等に利用されることに対するセキュリティの一層の向上が図れる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、口座への振込を受ける人の個人情報の漏洩に対するセキュリティを向上させるとともに、振込を行う人や振込を受ける人の手間を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態である口座管理装置について説明する。
【0017】
図1は、この口座管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。口座管理装置1は、銀行等の金融機関のセンタに設置される。この口座管理装置1は、開設されている口座毎に、残高や取引履歴等を管理する。口座管理装置1が管理する口座には、正規口座と匿名口座とがある。正規口座、および匿名口座については後述する。また、口座管理装置1は、いずれかの口座に対する取引の要求があると、その取引要求に基づく取引の可否を判定する。口座管理装置1は、取引を許可する毎に、その取引にかかる口座残高や取引履歴等を更新し、口座を管理する。
【0018】
口座管理装置1は、図1に示すように、制御部2と、口座管理データベース3(以下、口座管理DB3と言う。)と、口座関連付情報記憶部4と、通信部5と、を備えている。制御部2は、本体各部の動作を制御し、各種処理を実行する。口座管理DB3は、開設されている口座毎に、口座管理情報を記憶するデータベースである。口座管理情報には、口座番号、その口座の名義、名義人の住所、電話番号等の名義人情報、正規口座であるか匿名口座であるかを示す口座種別情報、その口座の残高を示す残高情報や、その口座に対する取引履歴を示す履歴情報等が含まれている(図2参照)。匿名口座は、すでに正規口座を開設している利用者が開設できる口座である。言い換えれば、正規口座を開設していない利用者は、匿名口座を開設することができない。口座種別情報が、「1」であれば正規口座であり、「0」であれば匿名口座である。正規口座がこの発明で言う第1の口座に相当し、匿名口座がこの発明で言う第2の口座に相当する。口座関連付情報記憶部4は、正規口座と、匿名口座と、の関連付けを示す関連付情報を記憶する(図3参照)。関連付情報は、同一の利用者が開設した正規口座の口座番号と、匿名口座の口座番号と、を対応付けた情報である。上述したように、匿名口座は、すでに正規口座を開設している利用者が開設できる口座であるので、いずれかの正規口座に関連付けられる。
【0019】
図2、および図3では、口座番号が「111111」である口座は、名義人「山田 太郎」が正規に開設した正規口座であり、口座番号が「111222」である口座は、この名義人「山田 太郎」が口座番号「111111」である正規口座に関連付けて開設した匿名口座である、ことを示している。この匿名口座の名義は、「佐藤 和子」である。
【0020】
通信部5は、公衆回線、専用回線、インタネット等を介して接続された機器とのデータ通信を制御する。通信部5に接続される機器は、金融機関の店舗に設置されているATMや、係員が操作する窓口端末、さらには、利用者のパソコン等である。口座管理装置1は、通信部5に接続された機器から、管理している口座に対する取引の要求等を受け付ける。
【0021】
ここで、正規口座と、匿名口座とについて説明する。正規口座は、運転免許証や、パスポート等の証明書類によって確認した口座開設者の氏名、住所等を名義人情報として登録した口座である。匿名口座は、口座開設者が任意に設定した氏名、住所等を名義人情報として登録した口座である。したがって、匿名口座については、その口座の名義人にかかる情報が漏洩しても、実際の口座開設者の個人情報が漏洩することはない。一方、金融機関では、匿名口座の口座開設者を、関連付けられている正規口座の名義人情報によって特定することができる。このため、匿名口座が犯罪等に利用されることに対するセキュリティを低下させることもない。
【0022】
また、匿名口座は、その口座に対して行える取引に制限をかけている。正規口座は、その口座に対して、入金取引、出金取引、振込取引、振替取引等、各種取引が行える口座である。これに対して、匿名口座は、図4に示すように、行える取引の種別に制限がある。図4は、匿名口座で行える取引の種別を概念的に示した図である。匿名口座は、入金取引や出金取引については行えない。振替取引には、匿名口座を振替元口座とする取引と、匿名口座を振替先口座とする取引と、がある。匿名口座と、この匿名口座に関連付けられている正規口座との間であれば、匿名口座が振替元口座、または振替先口座のどちらであっても、振替取引が行える。一方、匿名口座と関連付けられていない正規口座との間の振込取引については、匿名口座が振替元口座、または振替先口座のどちらであっても、振替取引が行えない。すなわち、適正に開設された匿名口座であれば、利用者は、匿名口座の資金を、関連付けられている正規口座に振り替えることにより、この正規口座から出金することができる。また、正規口座から匿名口座に振り替えることにより、匿名口座に対する入金が行える。したがって、適正に開設された匿名口座であれば、匿名口座に対して入金取引や出金取引が行えなくても、利用者は関連付けられている正規口座を利用することによって、匿名口座に対する入金や出金が行える。
【0023】
振込取引には、匿名口座を振込元口座とする振込取引と、匿名口座を振込先口座とする振込取引と、がある。さらに、匿名口座を振込先口座とする振込取引には、現金による振込取引と、口座間の振込取引と、がある。匿名口座は、振込先口座である場合、現金による振込取引であっても、口座間の振込取引であっても行える。このように、匿名口座を振込先とする振込取引については、特に制限されないので、匿名口座で不特定多数の人からの振込を受け付けることができる。一方、匿名口座は、振込元口座である場合、予め設定された条件を満たす場合に、振込取引が行える。この条件は、振込金額が、今回の振込取引における振込先口座から匿名口座にこれまでに振り込まれた振込金額の合計から、この匿名口座からこの振込先口座にこれまでに振り込んだ振込金額の合計を差し引いた金額(差額)以下であれば振込取引が行え、振込金額が差額以下でなければ行えないというものである。すなわち、匿名口座は、振り込まれた金額を振込元の口座に対して返金することはできるが、別の口座に対して、その口座から振り込まれていない資金を振り込むことはできない。
【0024】
この匿名口座は、例えば、インタネット等を利用した個人間での物品の売買等で、買い主側からの代金の振込を受け付ける口座として利用される。この場合、売り主は、買い主に対して、代金の振込先口座として、匿名口座の名義を開示すればよい。このため、自分の本名を見ず知らずの買い主に開示することなく、この買い主からの代金の振込を受け付けることができる。
【0025】
次に、匿名口座を開設するときの手続について説明する。上述したように、匿名口座は、すでに正規口座を開設している利用者が開設でき、正規口座を開設していない利用者が開設できない口座である。匿名口座の開設にかかる手続は、金融機関の店舗の窓口で手続する係員対応と、金融機関に設置されているATMで手続する本人対応と、の2つがある。
【0026】
まず、窓口対応で匿名口座を開設する場合について説明する。匿名口座の開設を希望する利用者は、窓口で、すでに開設している正規口座の通帳やカードを提示するとともに、身分証明書を提示し、窓口の係員に匿名口座の開設を要求する。係員は、提示された正規口座の名義人と、今回匿名口座の開設を希望している利用者と、が同一人物であるかどうかを確認する。この確認は、今回提示された正規口座の通帳やカード、身分証明証、さらには口座管理装置1で管理している当該正規口座の名義人情報等を用いて行う。係員は、窓口端末を操作して、口座管理装置1が記憶する該当する口座の口座管理情報を確認することができる。係員は、同一人物であることを確認すると、匿名口座の名義等の名義人情報を利用者に確認する。利用者は、匿名口座の名義人情報を任意に決められる。係員は、窓口端末を操作して、利用者から確認した名義人情報で匿名口座を開設する。このとき、口座管理装置1は、窓口端末から送信されてきた情報に基づいて、今回開設した匿名口座にかかる口座管理情報を口座管理DB3に登録するとともに、今回開設した匿名口座にかかる口座関連付情報を口座関連付情報記憶部4に記憶する。また、係員は、今回開設した匿名口座の通帳やカードを利用者に発行する。
【0027】
なお、係員は、正規口座の開設者と、匿名口座の開設を希望している利用者と、が同一人物であることが確認できない場合、匿名口座を開設しない。
【0028】
次に、本人対応で匿名口座を開設する場合について説明する。利用者は、ATM等の機器を操作して、匿名口座の開設にかかる処理を選択する。まず、ATM等の機器は、正規口座のカードを受け付け、利用者を認証するための認証情報を受け付ける。認証情報には、暗証番号や、生体情報がある。ATM等の機器は、正規口座の口座番号や、認証情報等を含む匿名口座の開設要求を口座管理装置1に送信する。
【0029】
なお、生体情報による認証では、利用者から読み取った生体情報との照合に用いる照合用生体情報を、センタ、またはカードに記憶させている。ATM等の機器は、カードが照合用生体情報を記憶している場合は、カードから読み取った照合用生体情報を用いて、利用者を認証し、利用者が認証できなかったときには、匿名口座の開設要求を口座管理装置1に送信することなく本処理を終了する。
【0030】
口座管理装置1は、通信部5において匿名口座の開設要求を受信すると、図5に示す処理を実行する。図5は、匿名口座の開設処理を示すフローチャートである。口座管理装置1は、匿名口座の開設要求に含まれている認証情報に基づいて、利用者を認証する(s1)。s1では、暗証番号の一致、不一致によって利用者を認証する。また、利用者の生体情報をセンタで記憶している場合であれば生体情報の照合による利用者の認証も行う。口座管理装置1は、s1で利用者の認証が行えないと、その旨をATM等の機器に返信し(s2)、本処理を終了する。口座管理装置1は、s1で利用者の認証が行えると、匿名口座の名義等の名義人情報の入力要求を、今回匿名口座の開設要求を送信してきたATM等の機器に送信する(s3)。
【0031】
ATM等の機器は、口座管理装置1から名義人情報の入力要求を受信すると、利用者による名義人情報の入力を受け付ける。利用者は、匿名口座の名義人情報を任意に決められる。そして、ATM等の機器は、今回受け付けた名義人情報を口座管理装置1に返信する。口座管理装置1は、名義人情報を受信すると(s4)、受信した名義人情報に基づいて匿名口座を開設し(s5)、開設した匿名口座の口座番号等をATM等の機器に通知する(s6)。s5では、今回開設した匿名口座にかかる口座管理情報を口座管理DB3に登録するとともに、今回開設した匿名口座にかかる口座関連付情報を口座関連付情報記憶部4に記憶する。
【0032】
なお、ATM等の機器は、口座管理装置1から匿名口座の口座番号等が通知されると、今回開設された匿名口座の通帳やカードを利用者に発行し、本処理を終了する。
【0033】
このように、すでに正規口座を開設している者は、匿名口座を開設することができる。また、匿名口座の開設時に、正規口座の名義人と、匿名口座を開設する利用者と、が同一人物であることを確認しているので、名義人が特定できない匿名口座が不正に開設されるのを防止できる。特に、匿名口座を開設することができる利用者を、指静脈等の生体情報による認証が必要な正規口座を開設している利用者に限定すれば、正規口座の名義人と、匿名口座を開設する利用者と、が同一人物であるかどうかの判定がより確実に行え、名義人が特定できない匿名口座が不正に開設されるのを防止できる。また、匿名口座についても、生体情報による認証が必要な口座とすれば、すでに開設されている匿名口座を不正に取得した他人が犯罪等に利用することに対するセキュリティを十分に高めることができる。すなわち、正規口座、および匿名口座については、生体情報による認証が必要な口座とするのが望ましい。
【0034】
次に、匿名口座に対する取引について説明する。この匿名口座は、自分の素性を知られたくない他人からの振込を受け付ける口座として利用される。例えば、インタネット等を利用した個人間での物品の売買で、売り主が代金の振込先口座として匿名口座を利用する。この場合、売り主は、買い主に対して、任意に設定した匿名口座の名義を提示すればよく、本名等を通知しなくても、買い主の振込を受け付けることができる。
【0035】
図6は、口座管理装置における取引処理を示すフローチャートである。口座管理装置1は、ATM、窓口端末、パソコン等の機器からの取引要求を通信部5で受信すると、この図6に示す処理を実行する。通信部5で受信する取引要求には、利用者を認証する認証情報(暗証番号等)、取引の種別、取引の対象となる口座の口座番号等が含まれている。口座管理装置1は、利用者の認証を行う(s11)。s11では、今回受信した取引要求に含まれている認証情報により利用者を認証する。口座管理装置1は、利用者を認証できなければ、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し(s12)、本処理を終了する。s12では、取引を拒否する理由も通知する。
【0036】
なお、取引要求を送信する機器が、生体情報による利用者の認証を行う場合には、この機器が生体情報で利用者が認証できなかった場合、取引要求を口座管理装置1に送信することなく処理を終了する。
【0037】
口座管理装置1は、利用者の認証が行えると、取引の対象となる全ての口座が正規口座であるかどうかを判定する(s13)。出金取引や入金取引では取引の対象となる口座は1つであるが、口座間の振込取引や振替取引は、取引の対象となる口座が2つである。口座管理装置1は、取引の対象となる全ての口座が正規口座であれば、今回要求された取引が行えるかどうかを判定する(s14)。例えば、口座残高以内の出金取引であるかどうかや、振込元口座の口座残高以内の振込取引であるかどうかや、振替元口座の口座残高以内の振替取引であるかどうか、を判定する。口座管理装置1は、今回要求された取引が行える場合、その取引を処理するとともに(s15)、取引許可を今回取引要求を送信してきた機器に通知し(s16)、本処理を終了する。s15では、口座管理DB3が記憶する該当する口座について、今回の取引にかかる取引履歴の追加や、口座残高の更新等を行う。口座管理装置1から取引許可が通知された機器は、利用者に対する貨幣の出金や、通帳、カードの返却等を必要に応じて行う。口座管理装置1は、s14で取引が行えないと判定すると、s12で、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し、本処理を終了する。
【0038】
口座管理装置1は、s13で取引の対象となる口座に匿名口座が含まれていると判定すると、今回要求された取引の種別が、匿名口座に対する出金取引であった場合(s17)、または匿名口座に対する入金取引であった場合(s18)、s12で、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し、本処理を終了する。すなわち、口座開設者本人であっても、匿名口座に対する出金取引や、入金取引については行えない。
【0039】
また、口座管理装置1は、今回要求された取引の種別が振込取引であると(s19)、現金による振込取引であるか、口座間の振込取引であるかを判定する(s20)。口座管理装置1は、現金による振込取引(この場合、振込先口座が匿名口座である。)であれば、今回要求された振込取引を処理するとともに(s21)、取引許可を今回取引要求を送信してきた機器に通知し(s22)、本処理を終了する。s21では、口座管理DB3が記憶する該当する口座について、今回の取引にかかる取引履歴の追加や、口座残高の更新等を行う。
【0040】
また、口座管理装置1は、口座間の振込取引であると判定すると、振込元口座が匿名口座であるかどうかを判定する(s23)。口座管理装置1は、振込元口座が匿名口座でなく正規口座であれば(この場合、振込先口座が匿名口座である。)、今回要求された振込取引が行えるかどうかを判定する(s24)。s24では、振込金額が振込元口座の残高以内であれば取引が行えると判定し、振込金額が振込元口座の残高以内でなければ取引が行えないと判定する。口座管理装置1は、s24で取引が行えると判定すると、s21で今回要求された振込取引を処理し、さらに、s22で取引許可を今回取引要求を送信してきた機器に通知し、本処理を終了する。また、s24で取引が行えないと判定すると、s12で、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し、本処理を終了する。
【0041】
また、口座管理装置1は、s23で振込元口座が匿名口座であると判定した場合、これまでに、今回の振込取引の振込先口座から、この匿名口座に振り込まれた振込金額の合計金額から、これまでに、この匿名口座から、今回の振込取引の振込先口座に振り込んだ振込金額の合計金額を差し引いた差額を算出する(s25)。口座管理装置1は、今回の振込取引にかかる振込金額が、s25で算出した差額以下であるかどうかを判定する(s26)。口座管理装置1は、s25で算出した差額以下でなければ、s12で、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し、本処理を終了する。口座管理装置1は、s25で算出した差額以下であると判定すると、s24で今回要求された振込取引が行えるかどうかを判定する。この場合には、振込金額が振込元口座である匿名口座の残高以内であれば取引が行えると判定し、振込金額が振込元口座である匿名口座の残高以内でなければ取引が行えないと判定する。
【0042】
このように、匿名口座は、現金や他の口座からの振込を受けることができる。すなわち、匿名口座の名義を開示するだけで、他人からの振込を受けることができる。このため、他人からの振込を受ける者が、自分の本名を明かす必要がなく、個人情報の漏洩に対するセキュリティを向上させられる。また、匿名口座から別の口座に振り込める金額の合計が、この別の口座から匿名口座に振り込まれた金額の合計以下である。したがって、匿名口座は、この匿名口座に振込を行った人の口座に対して、振り込まれた金額を返金することはできるので、匿名口座を開設した利用者の利便性を低下させることはない。さらに、振込取引で、匿名口座から別の口座に自由に資金を移動することはできないので、匿名口座が犯罪等に使用されることに対するセキュリティも確保できる。
【0043】
また、口座管理装置1は、口座間の振替取引であると判定すると(s27)、関連付情報記憶4が記憶する関連付情報で、関連付られている正規口座と匿名口座との間における振替取引であるかどうかを判定する(s28)。s28では、振替元口座が正規口座であってもよいし、匿名口座であってもよい。口座管理装置1は、関連付けられている正規口座と匿名口座との間における振替取引でないと判定すると、s12で、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し、本処理を終了する。口座管理装置は、関連付けられている正規口座と匿名口座との間における振替取引であると、今回要求された振替取引が行えるかどうかを判定する(s29)。s29では、振替金額が振替元口座の残高以内であれば取引が行えると判定し、振替金額が振替元口座の残高以内でなければ取引が行えないと判定する。口座管理装置1は、s29で取引が行えると判定すると、今回要求された振替取引を処理し(s30)、さらに今回取引要求を送信してきた機器に取引許可を通知し(s31)、本処理を終了する。また、s29で取引が行えないと判定すると、s12で、今回受信した取引要求を送信してきた機器に対して取引拒否を通知し、本処理を終了する。
【0044】
このように、匿名口座は、関連付けられている正規口座との間で振替取引を行うことができないので、上述した振込取引と同様に、振替取引であっても、匿名口座から別の口座に自由に資金を移動することはできない。したがって、匿名口座が犯罪等に使用されることに対するセキュリティも確保できる。
【0045】
なお、口座管理装置1は、匿名口座に対する取引の種別が、上述した出金取引、入金取引、振込取引、振替取引以外の取引であった場合、例えば残高照会取引、通帳記入取引であった場合、要求された種別の取引に応じた処理を実行する(s32)。
【0046】
また、犯罪等に使用されることに対するセキュリティの面から、正規口座、および匿名口座については、生体情報による認証が必要な口座とするのが望ましい。すなわち、生体情報によって利用者の認証が行われていることを前提にして、匿名口座に対する取引を行うのが望ましい。言い換えれば、生体情報によって利用者の認証が行われていないと、匿名口座に対する取引を拒否するのが望ましい。
【0047】
さらに、匿名口座を開設した利用者のメールアドレス等の連絡先を予め登録しておき、この匿名口座に対する利用者の認証が失敗した時などに、その旨を通知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】口座管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】口座管理情報を示す図である。
【図3】関連付情報を示す図である。
【図4】匿名口座で行える取引の種別を概念的に示した図である。
【図5】匿名口座の開設処理を示すフローチャートである。
【図6】口座管理装置の取引処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1−口座管理装置
2−制御部
3−口座管理データベース(口座管理DB)
4−口座関連付情報記憶部
5−通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開設されている口座毎に、取引履歴を記憶し管理する口座管理装置において、
口座開設者が同じ人物であり、本人の氏名で開設された第1の口座と、任意に設定された氏名で開設された第2の口座と、を関連付けて記憶する口座関連付情報記憶手段と、
金融機関の口座に対する取引要求を受け付ける取引要求受付手段と、
前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振込先口座とする振込取引要求を受け付けたとき、この振込取引要求に基づく振込取引を処理する振込取引処理手段と、
前記取引要求受付手段が前記第2の口座を出金口座とする出金取引要求を受け付けたとき、この出金取引要求に基づく出金取引を拒否する出金取引拒否手段と、
前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振替元口座とする口座間の振替取引要求を受け付けたとき、前記口座関連付情報記憶手段が振替元口座である第2の口座に関連付けて記憶している第1の口座が振替先口座であるかどうかを判定する振替先口座判定手段と、
前記振替先口座判定手段が振替元口座である第2の口座と、振替先口座である第1の口座と、が関連付けられていると判定した場合、今回受け付けた振替取引要求に基づく振替取引を処理し、前記振替先口座判定手段が振替元口座である第2の口座と、振替先口座である第1の口座と、が関連付けられていないと判定した場合、今回受け付けた振替取引要求に基づく振替取引を拒否する振替取引処理手段と、を備えた口座管理装置。
【請求項2】
前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振込元口座とする口座間の振込取引要求を受け付けたとき、この第2の口座について管理している取引履歴に基づいて、今回の振込取引要求にかかる振込先口座から第2の口座への振込金額の合計金額から、この第2の口座から振込先口座への振込金額の合計金額を差し引いた差額を算出する差額算出手段と、
今回受け付けた振込取引要求に基づく振込金額が、前記差額算出手段が算出した差額以下であれば、この振込取引要求に基づく振込取引を処理し、今回受け付けた振込取引要求に基づく振込金額が、前記差額算出手段が算出した差額以下でなければ、この振込取引要求に基づく振込取引を拒否する振込取引処理手段と、を備えた請求項1に記載の口座管理装置。
【請求項3】
前記第2の口座を元口座とする取引要求については、生体情報による認証が行われていない場合、この取引要求を拒否する取引要求拒否手段を備えた請求項1、または2に記載の口座管理装置。
【請求項4】
開設されている口座毎に、取引履歴を記憶し管理する口座管理装置が実行する口座管理方法であって、
この口座管理装置は、口座開設者が同じ人物であり、本人の氏名で開設された第1の口座と、任意に設定された氏名で開設された第2の口座と、を関連付けて口座関連付情報記憶手段に記憶し、
取引要求受付手段が、金融機関の口座に対する取引要求を受け付け、
振込取引処理手段が、前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振込先口座とする振込取引要求を受け付けたとき、この振込取引要求に基づく振込取引を処理し、
出金取引拒否手段が、前記取引要求受付手段が前記第2の口座を出金口座とする出金取引要求を受け付けたとき、この出金取引要求に基づく出金取引を拒否し、
前記取引要求受付手段が前記第2の口座を振替元口座とする口座間の振替取引要求を受け付けたとき、振替先口座判定手段が前記口座関連付情報記憶手段が振替元口座である第2の口座に関連付けて記憶している第1の口座が振替先口座であるかどうかを判定し、
振替取引処理手段が、前記振替先口座判定手段が振替元口座である第2の口座と、振替先口座である第1の口座と、が関連付けられていると判定した場合、今回受け付けた振替取引要求に基づく振替取引を処理し、前記振替先口座判定手段が振替元口座である第2の口座と、振替先口座である第1の口座と、が関連付けられていないと判定した場合、今回受け付けた振替取引要求に基づく振替取引を拒否する、口座管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−140198(P2009−140198A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315425(P2007−315425)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)